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 わたしは現代戦を描いた戦争映画は比較的よく観る方だ。わたしが好きな作品は、基本的にリアリティのある作品で、『BLACK HAWK DOWN』だとか、『LONE SURVIVOR』だとか、あの辺りの作品が好みである。そこにあるのは、なんというか、本当に「怖い」と感じるような緊張感で、絶望的な状況に陥った男たちが、任務遂行のために全力を尽くす姿に、なんだかとてもグッとくるし、大変興奮するわけである。
 というわけで、何度か劇場で予告を観て、お、これは面白そうかも? と思っていた映画が昨日から公開となったので、さっそく観てきたわたしである。しかしまあ、なんつうか、お客さんはシニアのご夫婦ばっかりだったのが妙に印象的であったが、わたしが観てきた作品のタイトルは、『12 STRONG』というもので、『ホース・ソルジャー』という邦題が付けられている。まあ、その邦題のセンスのなさは後で触れるとして、結論先に言うと、うーん、ちょっとイマイチかなあ、という気がした。というのも、若干リアリティという面では、映画的に盛り過ぎているように感じてしまったからなのだが、どうも、12人の男たちの個性が発揮されず、主役のTHOR様無双のような気もしていて、なんか……わたしにはどうもリアリティが感じられなかったのである。
 というわけで、以下ネタバレ全開になる可能性があるので、まだ観ていない人はここらで退場してください。

 まあ、物語は基本的に上記予告の通りである。2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件が発生し、その事件の首謀者たるアルカイダ引き渡しに応じなかったタリバン勢力掃討=アフガニスタン戦争の、US政府による最初の作戦を描いたものである。
 戦略目標は、敵拠点の制圧・奪取にあり、戦術としては空爆、を行うのだが、その空爆をピンポイントで誘導する地上部隊が必要で、主人公たち地上部隊であるUS-ARMY(合衆国陸軍)の12人のチームが派遣されると。そして彼らは地元の軍閥と協力し、敵拠点へ徐々に近づくのだが、軍閥にも種類があってしかも敵対しているような感情もあって、なかなかうまくいかない。おまけに、あのソ連が最終的にはさじを投げたアフガンの山岳地帯であり、寒さと峻烈な地形に当然機動兵器(車とか戦車とか)は使うことができず、馬しかない、という状況である。さらに言うと、敵勢力は5万。つまり、地の利もなく戦力差も激しいわけだ。ただし、あくまで彼らは空爆の誘導役であって、実は直接的な戦闘は主任務ではないのがポイントだ(それゆえ、12人と少数精鋭)。もちろん、敵に遭遇してしまっては戦闘にならざるを得ないわけだが、あくまでそれは遭遇戦で、突発的に起きる可能性が高い、というものである。
 何が言いたいかというと、実に地味、なのだ。作戦自体も、物語も。
 わたしは観ていて、これって……無人機RQ-1 PLEDETORを飛ばしてヘルファイアミサイルをぶっこめばいいだけじゃね? と思ったのだが、どうやら調べてみると、アフガンの寒さには弱いらしく、戦果はイマイチだったらしい。まあ、2001年当時の話なので、これが10年後だったらもっと改良されてたかもしれないけど、まあ、とにかく2001年当時、しかも冬(作戦は2001年11月~12月ごろ)にかけての作戦では投入できなかったようだ。なるほど。
 で、わたしが感じたリアリティ面で盛りすぎ、と感じたのは、ズバリ言うと、全然リロードする気配もなく撃ちまくり続けるシーンが多くて、なんだか興ざめだったのと、相当銃弾が行きかうバトルフィールドなのに、主要キャラには全く弾が当たる気配がなく、馬で突進するのも、なんかアレだなあと思うし、一方では主人公たちUS-ARMYの男たちの放つ銃弾はことごとく命中する、という、ある意味ハリウッド映画万歳的な描写が多くて、正直そういった点は微妙であった。
 なんつうか、やっぱり主人公がスーパーマンすぎたように思う。主人公のネルソン大尉は、実戦経験ゼロで、地元の将軍には、「あいつ(=他の隊員)は人を殺した眼をしている。あいつも。あいつも。でも、あんたはそうじゃない」なんて言われてしまうような指揮官なのに、妙に隊員たちからの信頼も厚くて、その辺の説得力を増すような、何かの描写があってほしかったようにも思う。なんかあったっけ? ちなみにわたしが邦題についてセンスゼロだと思うのは、その地元の将軍が、「我々はSOLDIER(兵士)じゃない。WARRIOR(戦士)だ」というシーンがあって、最終的に主人公も、戦士になったな、と認められ、なんと本作に出てきた地元将軍は後にアフガンの副大統領にもなった男で、現在も本作の主人公(のモデルとなった実在の軍人)と親友なんだそうだが、ともかく、「戦士」というのが一つポイントなのに、邦題で「ソルジャー(兵士)」はどうなんだ? と思ったからです。
 ただし、である。さんざん文句を言ってしまったが、それはあくまでこの映画に対して、であって、実際にこの作戦に動員された12人の男たちが、全員生還できたのはもう、相当奇跡的なのではないかと想像する。恐らくは、本作で描かれたよりも数倍厳しい環境だっただろうというのは想像に難くなく、平和な日本の映画館でぼんやりスクリーンを眺めていたわたしには想像を絶する戦いだったのは間違いないと思う。なので、主人公のモデルとなった軍人は本当にスーパーマン的活躍をしたのだろうと思うことにしたい。ホント、全員生還できてよかった。
 しかしまあ、その後の歴史も我々は知っているわけで、ビン=ラーディン殺害までにはその後10年もかかったことを思うと、彼らの奮闘がどのような意味があったのか……本作は、数年がかりの作戦を3週間で終わらせたことへの賛辞しか示されていなかったけれど、もう少し、この作戦がどういう重要な意味があったのかについても深く教えてほしかったと思う。ま、それは自分で調べて勉強しろってことかな。
 というわけでもう言いたいことがなくなったので、最後にキャストと監督について短くまとめて終わりにしたい。
 ◆ミッチ・ネルソン大尉:チームリーダー。実戦経験ゼロながら、部隊をまとめるリーダー。演じたのはTHOR様ことChris Hemsworth氏。まあ、いつものTHOR氏で、とりわけ熱演とか、凄かったとは思わないけれど、カッコいいのは間違いないす。つうかですね、12人ということで、人数が微妙に多すぎて、各隊員の個性がほとんど描写されないというか、印象に残る隊員が少ないんすよね。活躍度合いも隊長のネルソン大尉が前面に出過ぎてて、他の隊員の印象が薄いんだよなあ……そういう意味では、THOR氏のTHOR氏によるTHOR氏のための映画になっちゃっているようにも感じた。これは脚本的な問題かもしれないし、監督の演出的な問題かも。ちなみに、本作で大尉の奥さんを演じたElsa Patakyさんは、実生活でもChirs氏の本当の奥さんです。夫婦共演って……よく出来るもんすね。いや、皮肉じゃなくて、演技的な意味で。
 ◆スペンサー准尉:実戦経験豊富なベテランの副官・サブリーダー。被弾して重傷を負うも、ギリギリ助かった模様。しかし……冒頭に、BASED ON A TRUE STORYと出るので、まあ事実だったのだろうけれど、椎間板ヘルニアで腰を痛めてほとんど動けないってどうなんだ? 足手まといでは……。そんな准尉を演じたのは、わたし的にはゾット将軍でお馴染みのMichael Shannon氏43歳。以前も『SHAPE OF WATER』の時も書いたけど、この人、完全に50代に見えるんですが、ホントに43歳なんですか?w とてもわたしより年下には見えない……。ま、そんなことはともかく、彼は印象には残る役柄だけど、物語的にはあまり活躍しませんでしたな。
 ◆サム・デイラー:チームのムードメイカー的な明るい男。演じたのは、ANT-MANの親友だったり、いつもコミカルな役の多いMichael Peña氏。彼も……クライマックスの戦闘には参加しておらず(?)、印象には残るけれど活躍度合いは薄い。なんつうか……やっぱり演出の問題なのではなかろうか。とにかく、THOR様やメジャーな役者以外はほぼ印象に残らないのはとても残念。
 ◆ドスタム将軍北部同盟のメンバーたる有力氏族の長。妻子を殺されたことからアメリカに協力している地元将軍。演じたのはNavid Negahban氏というイラン出身のお方。かなり多くの映画やTV作品に出演されているベテランの方らしいけど、わたしは知らない人でした。将軍のキャラは非常に立ってましたな。本当に味方なのか、腹に一物抱えているのか、はっきりしないような大物としてなかなか存在感がありました。前述の通り、彼はその後2014年にアフガニスタン副大統領に就任したそうです。現職かな? わからんす。
 で、本作の監督はNicolai Fuglsig氏という方だそうですが、本作が初監督先品だそうです。WikiによればナイキやソニーのCMを撮ったり報道写真家としてコソボ紛争を取材したりした人だそうです。まあ、要するにまだド新人ですな。なので彼の演出がどうとか、よりも、結局はプロデューサーのJerry Bruckheimer氏の目印たる、ドッカンドッカン爆発するシーンばかりが目立っちゃった感じなんすかねえ……そう考えると、同じBruckheimer氏プロデュース作品なのに、あれだけ大勢のキャラクターを登場させながら、きっちり各キャラの印象を残す演出をした『BLACK HAWK DOWN』のSir Ridley Scott監督がやっぱりスゲエってことなのかな。

 というわけで、さっさと結論。
 現代戦を描く戦争映画が好きなわたしとしては、結構楽しみにしていた映画『12 STRONG』(邦題:ホース・ソルジャー)をさっそく観てきたのだが、残念ながらイマイチ、というのが結論のようだ。なにしろ、映画的に嘘っぽくて、弾切れナシ・自分の弾は当たる・けど相手の弾は当たらない、というのはやっぱりちょっとアレっすね。そして、12人の勇者たちの印象が全然残らないのが一番問題だと思う。もったいないというか……残念す。それと、アフガンの自然も、ちょっと嘘くさく見えたかもな……なんかもっと、まさしく神の見捨てた地のような荒涼とした山岳なはずなんだが……意外と行軍自体はスムーズなのも、ちょっとアレだったかもすね。なので、ええ、要するに、しつこいですがイマイチでした。以上。

↓ ああ、なるほど、原作は早川書房から出てるんすね。そして原作がそもそも「12 Strong: The Declassified True Story of the Horse Soldiers」というタイトルなんすね。それならしょうがないか。失礼しました!


【追記:アカデミー作品賞・監督賞を受賞してこの記事のPVが上がってるので、最初に書いておきますが、ネタバレも含んでいるので、まだ観ていない方は読まない方がいいと思います。何も知らないで観に行った方がいいと思うな……】
【追記その2:わたしの敬愛するとある上場企業のTOPのお方から、お前の見方は薄すぎる!と長文のメールをいただき、その解説が超・腑に落ちたため、色々追記しました。その結果、かなり読みにくくなってます】

 日本時間では明日の3月5日の月曜日、第90回アカデミー賞が発表される。
 その数々のノミネート作品の中で、ひときわ注目され、受賞の下馬評も高い作品、それが、わたしが昨日観てきた映画『THE SHAPE OF WATER』である。
 監督は、日本が大好きなデブオタ野郎(ホメ言葉)でお馴染みのGuillermo del Toro氏。メキシコ人の気のいいおっさんである。わたしは正直、del Toro氏の作品はあまり好みではないのだが、その作風は非常に特徴的な、華美な雰囲気の中に怪物的キャラの登場する独特なもので、ファンも多い監督であるのは間違いない。そんな彼が今回挑んだのは、「アマゾンの半魚人」である。具体的な年の表記なかったと思うが、どうやら冷戦期、米ソ宇宙開発競争が盛んだった50年代後半~60年代あたりのアメリカを舞台に、アマゾンから捕獲されてきた半魚人と、声帯に損傷があってしゃべることのができない女性との恋模様を描いた、ラブロマンスだ。
 こういう、いわゆるFreak(=奇形・変種=転じて「化け物」)と心優しい女性との恋といえば、80年代から90年代にかけてのTim Burton監督作品を思い出すが、del Toro氏はその遺伝子を受け継いだ正統な後継者だとわたしは常々思っているので、これは面白そうだ、と思っていた。そしてその予告の醸し出す雰囲気は極めて上質で、コイツは相当キてんな、と大いに期待し、劇場へ向かったのである。
 そして観終わった今、確かに、確かに面白かったと思う。とりわけ、役者陣の芝居ぶりは極めて上等で、非常にクオリティは高い。ただ、うーーむ……超絶賛したい気持ちにはあと1歩、わたしには届かなかったような……。その原因として、わたしが思い当たるのはただ一つ、ロマンスにおいて重要だとわたしが考えているポイントが、あまりきちんと描かれていないように思えたためだ。それは、「恋に落ちる過程」であり、ズバリ言うと、「人が恋に落ちた瞬間」が、あまりはっきりしていないためではないか、と思う。この瞬間に、人は一番グッと来るのではないかと思うのだが……。なので、わたし的には、アカデミー賞候補作としては本作よりも1カ月前に観た『THREE BILLBOARDS』の方が面白かったと思う。【※2018/03/05速報&追記:アカデミー作品賞&監督賞は本作『THE SHAPE OF WATER』が受賞! 良かったね、すごいぞ del Toro監督! ぐぬぬ……!『THREE BILLBOARDS』は主演女優賞と助演男優賞にとどまりました。脚本賞も行けると思ったのになあ!】

 というわけで、物語はほぼこの予告から連想されるとおりに進行する。
 なので、ええっ!? という予想外の展開は、ほぼない。いや、一つだけあったな。それは、全く物語には関係ないけれど、ヒロインがかなり冒頭から、素っ裸のヌードシーンがあることにはちょっと驚いた。このヌードシーンがあるためだかどうか、知らないけれど、本作は日本公開に当たってはR15+のレーティングで公開されている。なんでも、US公開Verに1か所だけボカシを入れているのだそうだ。そんなことはおっさんのわたしには何の関係もないが、とにかく、女性ヌードとSEXシーン、そして、意外と血まみれシーン(とはいえ、わたしからすれば全く大したことがない)があることで、R15+のレーティングがなされる現代社会は、実にお優しい世の中ですのう、と皮肉の一つも言いたくなってしまう。アホくさい話だけど。
 【追:アホはわたしでした! いわゆる恋愛をSEX抜きで描けるはずもなく、この映画はそこまできっちり描いているわけで、そんな点も、お子様お断りはふさわしかったんだ! ということに気が付きました。そんなこともわからなかったお子様でアホな自分に恥死しそうです……】

 で。物語についてはあまり書くことがないので、各キャラクターごとに、役者を紹介しつつ、思ったことを書き連ねてみよう。ホント、役者陣の熱演は大変素晴らしく、極めて上質であったのは声を大にして申し上げておきたい。
 ◆イライザ:主人公の女性。孤児。川辺に捨てられていたらしい。そして幼児期に虐待?を受けた後遺症で声帯に損傷があり、発話できない(※この傷はラストでポイントとなるので、実は傷ではなかったのかも……?)。なので、耳はちゃんと聞こえる。そんな彼女は音楽が大好きで、何気にタップを踊ったり、ハンディがあってもけなげに生きる女性。宇宙開発研究所の夜間清掃員として、夜中に働いている(=そのため昼間寝ているからだと思うが、寝るときはアイマスクをしている)。住んでいるのは、映画館の上階にある部屋で、絵描きのジャイルズの部屋の隣で生活している。わたしがどうしてもよくわからなかったのは、イライザとジャイルズの関係性で、この二人は……別に恋愛関係にあるわけではなく(?)、かといって疑似親子でもなく(?)、よくわからなかった。どういう関係だったんすか、この二人?
【追:おれのアホ! ジャイルズに関する、とあるシーンのことを全く忘れてました。恥ずかしい……詳しくはジャイルズの項目へ】
 また、イライザの、起きてからのルーティンにも、どういう意味があるのか、実はわたしはよくわからなかった。起きる→風呂に入る→一人Hする(だよな、アレは?)→卵をゆでる→ジャイルズへの食事と自分のお弁当を作る→出勤、というルーティンを毎日こなしているようだが……一人Hはどうでもいいとして、とりわけ、意味深に画面に描かれる「ゆで卵作り」には、どういう意味があったのか……まあ、そのゆで卵が、半魚人とのふれあいのきっかけにもなるので、重要だとは思うものの、何らかのメタファーなのか、残念ながら浅学のわたしにはわからなかったす。
【追:ここは、イライザが、ハンディがあって、しょんぼりな毎日を送っていても、ちゃんと普通に性欲のある普通の女性と何ら変わらん、という意味もあったのでは? それに、卵はメタファーではなく、いわゆるマクガフィンだろ、とご指摘いただきました。その見方にはもう、まったく異議ナシです。浅学すぎてホント嫌になるっす……自分に】
 演じたのは、Sally Hawkinsさん41歳。とりわけ超美人でもないし、本作の中では超地味っ娘。でも、その地味さがイイ! 時折見せる笑顔は大変可愛らしく、時につい踊ってしまう様子も大変イイ。演技としては極めて情感あふれるすばらしいものでありました。明日、アカデミー賞が獲れるかどうかわからないけれど、素晴らしい演技だったのは間違いないす。
 ただ、虐待を受ける半魚人に心痛め、やさしく接し、好きな音楽を通じて心触れ合わせてゆくのは十分理解できるし、じわじわとくるものがあるのは確かだなのだが……やっぱりわたしとしては、イライザが半魚人に恋に落ちる決定的なシーンと、その時のイライザの乙女な表情が観たかった! やっぱり、自分もハンディを抱え、差別されてきたわけで、それを半魚人に重ねていたってことなんすかね? お互いしゃべれない、けど、ちゃんと意思疎通はできるんだということで、わたしをちゃんと一人の人間として接してくれる初めての相手、ってことなのかなあ……。でも、ずっと一緒に暮らしていたジャイルズだっていたし、親友?のお掃除仲間のゼルダだっていたのにね……それでもやっぱり壁があったんすかねえ……。この辺の機微が、鈍感でモテない男としてはよくわからなかったす。残念す。自分が。【追:ホントに、つくづく自分が残念す……】

 ◆ジャイルズ:イライザの隣に住む画家。どうやら元々広告代理店勤務のイラストレーターだったようだが、何らかの事情で会社を解雇されている。現在フリーランスとして仕事をしながら、古巣の会社に戻れることを願っている。ひどい言葉で言うと、イライザ同様社会的弱者というか、負け組な人。おそらくは、イライザを愛してると思うのだが……イライザは全くその気ナシ、のように見えた。ここぞというプレゼンにはズラ着用。いい人。後半大活躍。演じたのは大ベテランRichard Jenkins氏70歳。大変渋く、若干モテない冴えないおじいちゃんを好演されてました。アカデミー助演男優賞ノミネートも納得の演技であったと思う。
【追:<↑ 全く話にならない感想で全部消したい……! ジャイルズは、マズいパイを売るあの店の男に恋してたわけで、イライザにとっては、ジャイルズは恋愛対象外の男=SEXの対象にはなり得ない、女子扱いだったと言えるのかもしれないすね。わたし、ジャイルズが男の手を触って拒否されるシーンで、え、そういうこと? とは思ったのに、この記事を書く時には完璧忘れてました……アホすぎる! ジャイルズがひどく拒否されるシーンは、時代背景としても、さもありなんだったのに……】

 ◆ゼルダ:イライザの同僚でお掃除仲間のおばちゃん。旦那が若干アホ。いつもイライザのことを気にかけてくれるいい人。演じたのは、『The Help』でアカデミー助演女優賞を受賞して以来、活躍著しいOctavia Spencerさん47歳。まあ、いつもこの方は、毒舌だけど超イイ人、な役が多いような気がするけれど、今回もまさにそんなお役でした。ジャイルズ同様、イライザの手話を理解できる心の友。彼女も、アカデミー助演女優賞にノミネートされてます。
【追:ご意見をくれたお方曰く、半魚人と肉体的に結ばれたイライザに、あんた、やったのね、と気が付くゼルダが超良かった、とのことでした】

 ◆ストリックランド:半魚人の警備責任者。(元?)軍人。軍からは、半魚人の生態が宇宙技術に活用できるのではと期待されていて、もうさっさと解剖しちゃえよ、と言われていることもあって、半魚人を殺して解剖したいと思っている。そういう意味では、冷血漢であっても単に職務に忠実だっただけとも思えるが、中盤で半魚人に小指と薬指を食いちぎられ、半魚人に対して怒りと恨みを抱えている。しかし、単に警備担当なのに、やけに権力者だったのはどういうことなんだろう? ちなみに、若干変態で、美人でグラマーなエロい奥さんはいるし、子供もいる幸せ家族のはずが、何か欲求不満的なものを抱えており、征服欲旺盛な彼としては、しゃべれない弱者のイライザを欲望の目で見つめ、なんとかモノにしたいと妄想している。顔が怖いので、その変態ぶりもより一層怖い。もっと、単純なる悪党としてシンプルに描いても良かったのでは……。演じたのは、わたしにとってはSUPERMANの敵ゾット将軍でお馴染みのMichael Shannon氏43歳。えっ!? 43歳? うっそお? 53歳の間違いでは!? そうか……おれより全然年下じゃんか……そうだったのね……。まあ、とにかくおっかない顔をしていて、なんか日本で言うところの遠藤憲一さん的な感じすね。遠憲さんは笑顔が何気に可愛い方ですが、本作でのShannon氏は一切笑顔はありません。とにかくずっとイラつている気の毒なおっさんでした。
 ◆半魚人:今回、半魚人は、CGでの補正は当然あるのだろうけれど、おそらくは、基本的に着ぐるみ&特殊メイクだったように思う。違うかな? 演じたのは、del Toro監督作品では常連のDoug Jonesさん57歳。ひょろっとしたのっぽなおじさんですな。若干顔つきがWilliam Fichtner氏に似てるような……。
 
 てな感じで、キャスト陣の熱演は大変素晴らしかったし、del Toro監督の本領発揮ともいえる、どこか古めかしく、ゴシックホラーめいた画面は雰囲気抜群で、実に上品で大いに素晴らしかったとは思う。そういえば、エンドクレジットでは、SPECIAL THANKSの筆頭にJames Cameron監督の名前が挙がってました。仲いいすかね。いろいろアドバイスとか協力があったんだろうな。そして、同じメキシコの盟友Alfonso Cuaron監督とAlejandro G. Iñárritu監督の名前(この3人はメキシコが誇る3アミーゴズ・オブ・シネマとして仲良し)や、Coen兄弟Edger Wright監督の名前も挙げられてました。まあ、del Toro監督は愛されキャラなんでしょうな。本作は非常に評価が高いため、明日のアカデミー賞ではどんな結果となるか、WOWOWの生放送を、会社で職権を濫用して、横眼で眺めていたいと思います。でも、わたし的には『THREE BILLBOARDS』イチオシです!

 というわけで、結論。
 わたしがそれほどファンではないGuillermo del Toro監督最新作、『THE SHAPE OF WATER』を観てきた。本作は非常に評価が高く、日本時間で明日3/5(月)に発表されるアカデミー賞でも、作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞・助演女優賞・脚本賞・衣装デザイン賞・撮影賞・録音賞・編集賞・音響編集賞・美術賞・作曲賞、と13部門でノミネートされている。もちろんわたしも、そのノミネートの価値のあるいい映画だったことに異論はない。けれど……どうしてもわたしとしては、ヒロイン・イライザが、恋に落ちる決定的な瞬間を見たかった。わたしとしては、最初怖がる>何かのきっかけで気になりだす>そしてさらに何かが起きて恋に落ちる、の段階を踏んでほしかったような気がします……。つまり、いつもしょんぼりした彼女の、乙女な表情が観たかったのである。それがあったらもう、わたしは大絶賛していたのだが……。なお、ラストはハッピーエンド、だと思います。半魚人とイライザの未来に幸あれ―――と心から願います。幸せになるんだぞ……。以上。
【追:いろいろ分かっていない点が多かったので、大いに反省しているというか、もう恥ずかしすぎて全部消したいぐらいですが、それでもやっぱり、わたしとしては『THREE BILLBOARDS』方が面白かったという結論は変えません】

↓ まあ、一応これが原典なんでしょうな。半魚人のビジュアル造形もお見事でした。
大アマゾンの半魚人 (2D/3D) [Blu-ray]
リチャード・カールソン
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2016-08-24

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