わたしの青春時代は、どう考えても小学校~中学校~高校~大学の初めを過ごした80年代だと思っている。さんざんこのBlogで書いている通り、わたしは映画オタクとして成長してきたわけだが、一方で、中学に入る頃になるといわゆる「洋楽」にハマる奴らも周りに出てきて、いろいろカセットテープ(信じられないかもしれないがCDに移行したのは大学入ってから)を借りたり教わるようになったのだが、あくまでわたしは映画中心で、洋楽に関しては、例えば映画の主題歌なんかは相当聞いていたので、それなりに知識としていろいろなバンドや曲に詳しくなったけれど、アルバムを買ったりコンサートに行ったりするほどにはバンドやアーティスト自身にハマることはなかった。
 そんなわたしでも、「Queen」というバンドにはそれなりに思い入れがある。たぶんわたしが一番最初に「Queen」なるバンドの曲を聞いたのは、夜な夜な兄貴の部屋から流れてくる『FLASH GORDON』のサントラであったと思う。「Flash! a-ah~!Savior of the Univers!」のあの歌が、兄貴の部屋からダダ洩れで聞こえてきて、もう何回聞いたことか……。当時わたしは小学生だったので、映画は劇場で観ていないけれど、すごく覚えているエピソードとしては、この映画が高校生の時にTVで放送されて、その翌日友達Y君が、サントラが欲しい!とか言い出して、あれ、兄貴が持ってたけど、おれたちが小学校んときのサントラだから、中古屋行くしかねえんじゃね? というわけで、当時、有楽町の数寄屋橋にあった「HUNTER」という中古レコード屋に行って、その友人が500円ぐらいでそのレコードを買ったのに付き合ったのをなんだか妙に覚えている。
 そしてもうひとつ、「Queen」というバンドについてわたしが思い入れがあるのは、その曲の多くがわたしの愛する『ジョジョの奇妙な冒険』でスタンドの名前として登場するためだ。Killer QueenAnother One Bites the DustSheer Heart Attack、そして「BOHEMIAN RHAPSODY」。ご存知の通りJOJOのスタンド名は様々な楽曲(やアーティスト)からとられており、いちいちその元ネタを教えてくれる友達もいたし、自分でも調べたりとしたもんだ。
 というわけで、わたしが今日観てきた映画は、まさしくバンド「Queen」のリードボーカルにして偉大なる伝説のパフォーマー、Freddie Mercurry氏の伝記映画、『BOHEMIAN RHAPSODY』であります。結論から言うと、相当駆け足だし、若干映画として、細かいツッコミは付けたくなるものの、そんな細けえことはどうでもよく、とにかく「Queen」の数々の曲がいちいちカッコいいし、ラストに描かれる1985年開催の「LIVE AID」のシーンはもう超圧巻で、鳥肌モンの感動?に酔いしれたのであります。わたしの隣に座っていた推定60代のご婦人が、さかんに涙をぬぐっておられたのが印象的だ。あの「We are the Champions」はもう、すげえ! の一言ですよ。マジで泣けそうになったすね。コイツは相当最高でした。たぶん、我々おっさんだけでなく、Queenを知らない若者が観ても、その強力なパフォーマンスシーンにかなりグッとくるのではなかろうか。

 相変わらずFOXの予告はセンスゼロだが、まあ、大体の物語は上記予告で想像できる通りだ。物語は、事実通りなのかは知らないけれど、伝説と呼ばれるFreddie Mercurry氏の生涯を追ったもので、いわゆる一つの「ジュークボックス・ミュージカル」と言っていいだろう。今後ブロードウェーでミュージカル化されてもおかしくない、とても胸に迫る物語である。
 ただ、わたしがどうもよく理解できなかったのは、Freddie氏の「バイクセクシャル」嗜好の件だ。Freddie氏は、残念ながら1991年に45歳の若さで亡くなってしまったわけだが、ご存知の通りエイズによる肺炎が死因である(と映画では語られた)。80年代終わりごろの当時、エイズはゲイのかかる病気、のような風評があって、まあFreddie氏もそっちの趣味があったわけだが、わたしは本作を見るまで全然知らなかったんだけど、Freddie氏は若い頃は普通に女性と恋に落ちていて、要するにバイセクシャルだったんですな。でも、本作では、なんだか結構唐突にゲイ嗜好に走ってしまって、それが原因で彼女と別れてしまうことになって、生涯の心の孤独、を抱えてしまうようになる。
 この、Freddie氏が生涯抱える心の孤独が一番大きなポイントなのだが、なんというか……観ていて、Freddie氏が積極的にゲイの道に向かったというより、その道にそそのかしたクソ野郎がいて、そいつが悪党だ的に描かれているのが、なんだかちょっとよくわからなかった。
 そして、そのことでバンドメンバーや彼女との距離ができてしまって、破滅的な道にまっしぐらになってしまっても、結果的には彼女の心からの説得で考えを改め、バンドメンバーにも素直に謝罪して、さらにはずっと距離のあった厳格なお父さんとの和解も果たし(お父さんとのシーンも泣ける!)、1985年の「LIVE AID」に出演するというクライマックスは、映画的にはとても美しく感動的であったように思う。まあ、ホントはそんなに美しくはなかったんだろうけど、あの圧巻のパフォーマンスは最高に心震えたっすね。とにかくカッコ良かった。
 あと、Freddie氏が大の猫好きだったことは、有名らしいすね。わたしは全然知らなかったけど、映画に現れる猫たちがとてもかわいかったすなあ。もうチョイ、映画的に猫好きエピソードはクローズアップされても良かったかもしれないすな。それとFreddie氏の親日ぶりも、何気にいろいろ描写されてたすね。あのドイツの別宅の玄関に、謎のお札が張ってあったし、部屋着としての着物もなんか雰囲気に妙に合ってたすね。わたしは全然知らなかったので、へえ~? と思ったす。パンフには、当時日本来日の際に必ず付き添っていた方々のインタビューが載っていて大変興味深いです。
 というわけで、わたしは本作にかなりハートを鷲掴みにされたわけだが、それはもう、なんといっても楽曲のすばらしさと、各キャストの熱演・パフォ―マンスのすばらしさによるものだと思う。あれって、キャストが歌ってる……んだよね? オリジナル音源に口を合わせてるんじゃないよね? もう、完全に本物ですよ。とにかく凄かったので、各キャストを紹介しておこう。
 ◆Rami Malek as Freddie Mercurry:この人が演じた役で、わたしが一番印象的なのは、WOWOWで放送された『THE PACIFIC』での兵士の役で、それ以外は正直あまり記憶にないのだが、今回のFreddie Mercurryは完璧に近かったですな。確かに、よーく見ると全然別人なんだけど、全然気にならないというか、映画の中ではもう完璧にFreddie Mercurryですよ。ビジュアル、そして歌唱、さらにピアノ演奏など、ホントに素晴らしかったと賞賛したいですな。

 ◆Gwilym Lee as Bryan May:もうとにかく、似てる! という印象です。わたしは全然知らない役者さんですが、とにかくブライアン・メイですよ。やっぱり、Queenというバンドにおける兄貴的存在なんすかね。ギターを担当するデカい人は、バンドにとってもその存在がデカイ人なんでしょうな。大変な熱演だったと思います。あの名曲「We will rock you」はブライアン作なんすね。

 ◆Ben Hardy as Roger Taylor:ドラム担当のロジャーを演じたのは、『X-MEN:Apocalypse』でアークエンジェルを演じた方ですな。この方も、確かに似てる、と思います。ドラム演奏はもう圧巻ですよ。最高でした。ロジャーの代表作は……いっぱいあるけど、本作内ではこの「RADIO GA GA」が印象的だったすね。

 ◆Joseph Mazzello as John Deacon:ベース担当のジョンを演じたのは、まさしく『THE PACIFIC』の主人公、スレッジを演じたJoseph Mazzello氏でありました。ジョンは一番若くてQueenにも一番最後に参加してくる男で、やっぱりバンド内では一歩後ろに下がっているような立ち位置なんだけど、名曲「Another One Bites the Dust」が生まれるシーンで、フレディ、ブライアン、ロジャーが喧嘩してイラついている時に、あのベースのリズムを弾きながら、さあ、どうすんの?的に煽ったら、それいいな!? とみんながノッてきちゃうという、あの誕生秘話は面白かったすね。ええと、わたしが言っているベースのリズムはこれっす。

 とまあ、もう本作はQueenの4人だけで紹介は十分だろう。とにかく熱演で素晴らしかったと思います。最後に、監督についてだけちょっとメモしておくと、本作は監督としてBryan Singer氏がクレジットされているけれど、残念ながら途中で降板となってしまい、後任としてDexter Fletcher氏が監督を引き継いでいる。そんなごたごたがあったようだけど(全米監督協会の規定でクレジットされる監督は1人のため、あくまでクレジット上ではSinger監督作品)、正直、どこまでSinger監督でここはDezter氏が撮った、なんてのはもう全然分からないデキなので、観客としてはどうでもいいことだろう。ただ、わたしは結構Singer監督の作品が好きなので、本作の途中降板など、このところかなり名声が傷ついているのは若干残念だ。
 最後に、どうでもいいことをメモしておくと、この年末は、本作と『A STAR IS BORN』の2作が音楽的に素晴らしいという点で、何かと比較されるような気がする。しかし、本作は実話ベースであくまでFreddie Mercurry氏の足跡をたどったものである一方で、『A STAR IS BORN』は完全フィクションだし、二人の男女を描いたものであるという点で全くの別物だと思う。両作に共通しているのは、とにかく音楽が素晴らしい、ぐらいじゃないかしら。そして、わたしの趣味で言うと、やっぱり『A STAR IS BORN』の方がわたし好みっすね。それは間違いないす。GAGA様とBradley Cooper氏の二人の演技の方が、わたしはグッと来たし、音楽的にも素晴らしかったと思います。

 というわけで、結論。
 偉大なるパフォーマーFreddie Mercurry氏の生涯を描いた映画『BOHEMIAN RHAPSODY』をさっそく観てきたのだが、やっぱりもう、名曲ぞろいで相当興奮するっすね。そしてキャスト陣の熱演は、ビジュアル的にも凄いし、何より演奏、歌ですよ。本物のQueenの大ファンの人が聞いたら、やっぱり違うとか思うかもしれないけれど、わたしのようなニワカには、もう本物のパフォーマンスに迫る熱と魂を感じたっすね。素晴らしかったと思う。そしてこれだけ持ち上げといてアレですが、わたしの趣味としては『A STAR IS BORN』の方が好きっすね。まあ、とは言っても両作ともに素晴らしいデキなので、ぜひ劇場で観ていただきたいと思います。両作とも、劇場の大音響&大画面じゃないとダメだと思うな。つうか、両作ともに、サントラを買おうと思います。そして車で聴きまくろう!と思うわたしであります。以上。

↓ くそう、早く日本語字幕付きで観たい! 恥ずかしながらわたしの英語力ではきちんと理解できなかったと思う……
アリー/スター誕生 サウンドトラック
レディー・ガガ
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2018-11-07