タグ:ベン・キングズレー

 このところ、WOWOWで録画した映画を全然観てねえなあ、ということに、ふと、昨日の夜気が付いた。まあ、実はここ数カ月、録画してから観たものの、イマイチな作品が多くて、このBlogに備忘録を記すまでもあるまい、と思った作品は何本か観ているのだが、特にこの1カ月ぐらいは、全然観ていない。恐らく、わたしの部屋がクソ暑くて、おまけにわたしが使っているTVが2008年に買った42インチのプラズマテレビであるためなのか、夏はどうもTVがクソ熱くなってさらに室温があがっているのでは? という疑惑があるため、暑い夏の夜に部屋でぼんやり2時間、クソ熱くなるプラズマTVを付けて、映画を観よう、という気にならんのが、現在のわたしの状況であった。どうでもいいけれど、今はもうプラズマってもう絶滅したんだろうか? とにかく、画面が熱いんすよね……。熱ッツ!というほどではないけれど、温かいと表現するより熱いと言うべきな程の発熱をするので、大変困る。
 しかし、昨日は、若干涼しかったし、こんな時間に寝ちまったらもう老人だよ……という時間だったので、そういう何もすることがない、けど寝るには早すぎる、という深い絶望と孤独と虚無に囚われたため、とりあえずHDDデッキを起動、どんなの録画して、まだ観てないんだっけ……と録画リストを眺めてみた。すると、おお、この作品は劇場で観たかったけど公開スクリーン数が少なくて見逃してたんだよなー、という、わたし好みのB級くさい作品がいくつか録画されていた。まあ、録画予約したのはわたし自身だが、そんなことは完璧忘れており、その中から昨日は、『SELF/LESS』(邦題:セルフレス/覚醒した記憶)という作品を観てみることにした。まあ、結論から言うと、アイディアは、今までもこういう作品はあったかもしれないけれど、十分面白い、けど、やっぱりちょっと微妙かなあ、という感想を持つに至ったのである。ちなみに調べてみると、US興行では全然売れず、評価もかなり低い残念ムービーと判定されているようである。

 物語はだいたい上記予告で示されている通りである。主人公はNYCの不動産王。しかしガンに蝕まれており、余命は幾ばくも無い。そんな彼の前に、別人の肉体に記憶を植え替える謎技術を持つ集団が現れる。そして新たな若い肉体を得た主人公だったが、徐々にその肉体は「元の記憶」を取り戻し始め―――てなお話である。
 こういった、姿と中身が別人、という映画は結構今までもあると思うが、わたしが真っ先に思い出したのは、ニコ様でお馴染みのNicolas Cage氏最高傑作とわたしが認定している『FACE/OFF』だ。あの作品はニコ様最高傑作であると同時に、John Woo監督最高傑作だとわたしは思うぐらい、大好きな作品だが、凶悪犯が仕掛けた爆弾のありかを探るために、凶悪犯の姿形に整形手術をして捜査するというトンデモストーリーで、まあ、何度観ても面白い娯楽活劇であることは間違いなかろう。
 というわけで、わたしは本作も、派手な娯楽アクションだろう、と勝手に思い込んで視聴を開始したのだが、その趣はだいぶ違っていて、SF……うーん、SFだろうけど、なんと言えばいいのか……まあ要するに、キャラクターに感情移入しにくい微妙なお話であったのである。どう微妙に思ったか、各キャラを紹介しながらまとめてみようと思う。以下、完全ネタバレ満載になるはずなので、気になる方は読まないでください。
 ◆主人公ダミアン:演じたのは、ガンジーでお馴染みのSir Ben Kingsley氏。演技自体は極めて上質なのは間違いない。NYCで不動産王として財を成したが、娘はそんな仕事一徹の父に反発して出て行ってしまい、しがない(としか言いようがない)NPOを主宰している。ダミアンとしては、死が迫る中、娘と和解したいのだが、娘は全く相手をしてくれず、実にしょんぼり。わたしは観ていて、この娘に対してまったく好感をもてなかった(そもそもあまり可愛くない)。そして、そんな「やり残したこと(=娘との和解)がある」といった思いを抱くダミアンは、とあるルートから聞いた「脱皮(=Shedding)」技術を用いて若き肉体を手に入れる。なのでSir Kingsleyの出番はそこまで。そこからは、若い肉体としてのダミアンをDEADPOOLでお馴染みのRyan Reynolds氏が演じる。
 問題は、まず、ダミアンはその若き肉体がどのように提供されたのか知らない点で、誰がどう考えたって、どっかの男が死んだか、(自らの意志で)金で提供したか、(自らの意志によらず)無理矢理ドナーとされてしまったか、どれかであろうことは想像がつくはずだ(とあるキャラは、クローン培養または試験管受精で培養された素体だと信じていた。そんなバカな!)。要するに、その提供された肉体には、その元の「記憶」はなくても「過去」があるのは当然で、遺族とか、その「過去」を知る人間がいるだろうことは、容易に想像がつく。
 わたしは、ダミアンはそれを承知で「脱皮」技術を受け入れたんだろう、と思っていたのだが、どうもそうではないようで、新たな肉体に宿る「過去」のフラッシュバックを見るようになってから、初めて、あ、元のこの体の持ち主にも奥さんや娘がいたのか、と知って動揺するのである。いやいやいや、そりゃそういうこともあり得るでしょうよ、今さら何言ってんの? とわたしはその時点で大分白けてしまったような気がする。そもそも、肉体を提供した男は、娘の難病治療のためにどうしても金が欲しくて、自らの命と引き換えに金を得た男である。覚悟は完了していたはずだ。そして妻は夫が死んだことしか知らず、その保険金と思って得た金で、娘はすっかり元気になって、新たな生活を始めていたんだから、いまさら夫の姿をした(中身はダミアンの)男が妻と娘の前に現れても、混乱を引き起こすだけで何の意味もないんじゃないの? と心の冷たいわたしは観ながら感じたのである。つまり、ダミアン自身に覚悟が足りなかったわけだな、というわけで、ラストのダミアンの選択は実に美しく泣かせる決断なのかもしれないけれど、わたしとしては、ううーーーむ……と素直には感動? できなかったす。
 わたしだったら、そうだなあ、例えばダミアンは、自ら隠した遺産目当ての連中(例えば実の息子でもいい)によって無理矢理に、事故かなんかで亡くなった若い男の体に転生させられてしまって、その遺産争奪バトルが勃発、一方では、事故で夫を亡くした未亡人と再会し(あるいはバカ息子の彼女でもいい)、よろしくやる、的な展開を考えるかなあ……はっ!? いかん、全然面白そうじゃない! ダメだ、わたしの才能ではどうすれば面白くなったか、対案が出せん……。とにかく、他人の体に記憶を植える、中身と体が別人、というアイディア自体は大変面白いけれど、どうもノれなかったす。
 ◆元の肉体の持ち主、の妻と娘:まず、妻を演じたのはNatalie Martinez嬢という方だが、知らないなあ……一応、わたしが大好きなJason Statham兄貴の『DEATH RACE』のヒロインを演じた人みたいだけど憶えてない……。そして今回のキャラとしては、とにかく主人公の話をまともに聞こうとしないでギャーギャーいうだけだったような……そりゃあ、混乱してそうなるだろうとは理解できるけれど、ほとんど物語に何の寄与もしない。そして主人公がこの妻に対してやけに同情的なのも、「娘を持つ親」という共通点ぐらいで、どうもスッキリしなかった。なにより、妻も娘も、ビジュアル的にあまりかわいくないというか……サーセン、これはわたしの趣味じゃないってだけの話ですので割愛。
 ◆謎組織の謎技術:まず組織の長であるオルブライトを演じたのが、Matthew Goode氏で、わたしは彼の特徴のあるシルエット(体形?)で、一発で、あ、この人、あの人だ! と分かった。そう、彼は、わたしのオールタイム・ベストに入る超傑作『WATCHMEN』のオジマンディアスを演じたお方ですよ。妙にひょろっとしていて、やけに背が高く、顔が小さいという特徴あるお方ですな。このオルブライトというキャラは、作中では一番ブレがなく、分かりやすかったと思う。実は彼こそが、この謎の「脱皮」技術の考案者の博士で、既に自身も弟子の若い研究者の体を乗っ取って(?)いたというのは、大変良い展開だと感じたけれど、一番のキモとなる、脱皮者が元の記憶を消すために服用し続けなければならない薬、のレシピが結構あっさりばれてしまうのは、ちょっと脚本的にいただけなかったのではなかろうか。あの薬は、主人公にとっていわば「人質」であったわけで、主人公としてはどうしてもオルブライトの支配から抜け出せない状態に置かれる鍵だったのだから、あの扱いは大変もったいないと感じた。あんな薬のレシピなんて、化学的に解明される必要はぜんぜんなく、そもそも「脱皮」自体が謎技術なんだから、薬だけちゃんと解明されるのは実に変だと思う。
 とまあ、どうやらわたしが本作を微妙だと感じたのは、1)女性キャストが可愛くない(→これは完全なわたしの言いがかりなのでごめんなさい) 2)主人公ダミアンの思考がイマイチ甘い 3)キモとなる薬が意外と現実的で世界観から浮いている。といった点から来ているのではないかと思われる。
 ただ、元の主人公ダミアンを演じたSir Kingsley氏や、若い肉体となったダミアンを演じたRyan Reynolds氏の演技ぶりは大変良くて、その点においてはまったく不満はなく、素晴らしかったと称賛したいと思う。脚本がなあ……イマイチだったすねえ……。なお、監督はインド人のTarsem Singh氏というお方で、『The Cell』で名声を挙げた監督のようです。この監督の作品でわたしが過去に観たのはその『The Cell』と『Immortals』ぐらいかな……本作においては、その演出に関してはとりわけここはすごいと思うところはなかったけれど、謎装置のセットや、あと衣装かな、そういった美術面のセンスは大変イイものをお持ちだとお見受けしました。画はスタイリッシュだと思います。

 というわけで、もう結論。
 劇場公開時にスクリーン数が少なくて見逃していた『SELF/LESS』という映画がWOWOWで放送されたので、録画して観てみたところ、まあ、結論としてはWOWOWで十分だったかな、という微妙作であった。他人の体に人格を移すというアイディアは大変面白いのだが、どうも……焦点はその元の体の持ち主の記憶、の方に寄っていて、しかもその記憶は別に特別なものではなく、普通の男の記憶であって、記憶自体ではなく、その記憶を見た主人公がどう行動するか、という点に重点が置かれている、と説明が難しいというか、軸がぶれているというか、とにかく微妙、であった。でもまあ、実際予告を見た時に気になっていたので、観ることができて大変良かったと存じます。主役のSir KingsleyもRyan Reynolds氏も、芝居としては大変な熱演でありました。以上。

↓ やっぱり「入れ替わりモノ」としてはコイツが最高だと思います。
フェイス/オフ [Blu-ray]
ジョン・トラボルタ
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2010-12-22

 昨日の夜、19時くらいに家に帰って、飯食って風呂に入り、20時くらいになったところで、もはや何もすることがなく、読む本はあるけどなんとなく本を読む気になれず、一体全体、わが生命活動は何のために機能しているのだろうか、と深刻な謎にぶち当たり、こうして生きていることを含め、何もかもがどうでもよくなったわたしだが、そういう時は映画を観るに限るので、最近どんなのをWOWOWで録画したっけ……と、さっそくHDD内を捜索してみた。
 すると、まあ録画したはいいが、ホントにオレ、これらを全部観るのだろうか……?  という完全に自らの行動を否定する思いにとらわれたわけだが、またHDDの整理しねえとな……というため息とともにスクロールしていくと、一つの映画のタイトルに目が留まった。そのタイトルは、『しあわせへの回り道』というもので、どんな映画か全く記憶にない。タイトルから想像できる物語は、おそらくは中高年を主人公として、きっと生き急いだ人生を顧みて、回り道したっていいじゃない、的な人生に気づいてめでたしめでたしであろう、というものであった。もちろんそれはわたしの完全なる予断であって、実際はわからない。とりあえず、なんでこれを録画しようとしたんだっけな? という謎を解くべく、まずは再生ボタンを押して観はじめてみた。その結果、ほぼ最初の数分で謎が解けた。この作品は、映画館で予告を観て、ふーん、面白そうかも、と思った作品だったことを思い出した。
 主役?は、イギリスが誇る名優Sir Ben Kingsley氏。元々はRoyal Shakespeare Companyで活躍していたが、映画ではほぼデビュー作の『GANDHI』において、タイトルロールのマハトマ・ガンジー氏を演じていきなりアカデミー主演男優賞を受賞し、以来数々の作品に出演している大ベテランだ。その彼が、たぶん超久しぶりにインド人役を演じた作品で、彼扮するインド人タクシードライバーが、アメリカ人中年女性に運転を教える映画だ。
 ああ、これか、というわけで、わたしは本格的に視聴を始めたのである。

 まあ、上記予告でその雰囲気は分かると思うが、実際のところ、わたしの予断はおおよそのところは合っていた。そして、すげえ感動したとか、超面白かった、というわけではないし、それなりにツッコミどころはあるのは確かなのだが、結論としてはまあまあ面白かったと思う。
 まずどんな物語かざっとまとめてみると、たしか50代(正確な年齢は忘れた)の主人公、ウェンディは売れっ子の女流書評家としてそれなりに上流な生活を送っていたのだが、ある日突然、夫から離婚を切り出される。夫曰く、君は俺より本が大事なんでしょ、俺がいなくても全く平気だし、俺もさっさと(浮気相手の)若い女とヤリまくりたいから別れようぜ、というなかなかヒドイ理由であった。勿論納得のいかないウェンディは、泣き・怒り・悲しみ、と激しい反応を示すが、残念ながら夫サイドは取り付く島もなく、離婚協議へまっしぐら。そんなしょんぼりな状態のウェンディは、夫に離婚を切り出された日に乗ったタクシーに忘れ物をしてしまうが、ドライバーは律儀にそれを翌日届けてくれる。ふと見ると、そのドライバーは、日中はドライビングスクールの先生として働いているようで、名刺をもらい、はたと、そうだ、運転を習ってみようかしら、と思いつく。というのも、ウェンディはマンハッタンのアッパー・ウェスト(ええと、セントラルパークの左側、すね)に暮らしており、これまでまったく車が必要になることがなかったため、免許を持っていなかったのだ。折しも娘は大学を休学して遠く離れた農場で働いている。いままでは、夫が運転担当だったけれど、いっちょ、娘の下に、自分が運転して行ってみようかしら、てなことである。そして、律儀なインド人ドライバーに運転を習ううちに、これまでの人生を振り返りながら、新しい道に向かって前進するのだった……的な物語である。そしてサイドでは、インド人ドライバーのこれまでの過酷だった人生や今の生活ぶりが描かれ、二人の心の交流が描かれていく、とまあそんな映画である。ええと、結構テキトーなまとめです。
 こんな物語なので、ウェンディサイドのお話と、インド人サイドのお話があるわけだが、わたしはやっぱり、Sir Kingsley氏の演じるインド人の物語に非常に興味を持った。ダルワーンという名の彼は、元々インドで大学教授として教鞭をとっていたのだが、シク教徒であり、かつてインドにおいて政治的弾圧が激しかった時に両親を殺され、自身はアメリカに政治亡命してきた過去があり、現在はれっきとしたUS-Citizenである。だけど、シク教徒はターバンが戒律上の義務なのでやたらと目立ち、US国内でも差別はあまり前のように受けてきたのだが、そんなひどい状況でも、教養ある男として法を守り真面目に生きてきた、というキャラである。そんな彼が、運転が怖くてたまらないウェンディに、「止まるな。アクセルを踏むんだ。そして前へ進め」と辛抱強く教えることで、ウェンディは運転も何とかできるようになり、さらには、人生も前へ進むに至る、とまあ、非常に美しい展開となる。なので、観ていて不快なところはほぼなく、大変気持ちの良い映画、であった。
 なお、本作は、「The New Yorker」誌上に2002年に掲載されたエッセイが原作となっているそうで、原作は小説ではなく、エッセイストの体験談なんだそうだ。へえ~。
 わたしとしては、一番の見どころは、この脚本にほれ込んだというウェンディ役のPatricia Clarkson女史と、元インド人のダルワーンを演じたSir Kngsley氏、この二人の演技の素晴らしさだろうと思う。二人とも、大変素晴らしい芝居ぶりで、とても好感が持てた。まず、Patriciaさんは、現在57歳だそうだが、たいへんお綺麗で、落ち込みまくって髪ぼさぼさでも、何となく品があるし、決めるおしゃれな服装もよく似合っているし、また、免許試験合格の時のはじける笑顔も大変良い。きっと若いころはかわいい女子だったんだろうな、という面影は十分感じられる。キャリアとしてはもちろん大ベテランで、わたしははっきり言ってこの方を全然覚えていないのだが、今さっきWikiを見たら、わたしはこの方の出演している映画を10本以上観ているようで、なんともわたしの情けない記憶力に失望である。最近では、日本で全く売れなかった『The Maze Runner』シリーズにも出てたみたい。オレ……ちゃんと観てるんだけどなあ……くそう。
 そして一方のSir Kingsleyは、もう相当な数の作品でわたしも見ているが、この人はイギリス人であり、当然Queen's Englishが母国語なのに、本作では非常に訛りの強い、いわゆるヒンディッシュで、とてもそれが、日本人的には聞き取りやすいというか、特徴ある英語をしゃべっていて、やっぱ芸達者ですなあ、と変なところがわたしの印象に強く残った。キャラクター的にも、大変良かったと思います。あ、そうだ、もう一人、わたしの知っている役者が出てました。ええと、ちょっと前に観て、このBlogにも感想を書いた、Tom Hanks氏主演の『A Hologram for the King』(邦題:王様のためのホログラム)でに出てきた女医さんを演じたSarita Choudhuryさんが、今回はダルワーンと結婚するためにはるばるインドからやってくる女性として出演されてました。この方は大変特徴ある顔なので、すぐわかったっす。そして顔、で言うと、この顔は誰かに似てるんだよな……と非常に気になったのが、ウェンディの娘として登場する若い女子で、さっきなんていう女優なんだろう、と調べたら、名をGrace Gummerさんと言い、な、なんと、大御所Meryl Streepさんの娘だよ! 確かに! 確かに顔が似てるかも! 娘が役者をやってるなんて全然知らなかったわ。
 最後、監督について記して終わりにしよう。監督は、スペイン人のIsabel Coixetという女流監督で現在54歳だそうだ。わたしも観た有名な作品としては、『My Life without Me』(邦題:死ぬまでにしたい10のこと)かな。他にも有名な作品があるけれど、わたしが観たことあるのはその1本だけみたい。画面がとても明るい光にあふれてるのが特徴かも。とても明るい(雰囲気の話じゃなくて、物理的に光量が多い)映像で、そんな点も、作品全体の雰囲気には合っていたような気もします。

 というわけで、結論。
 たまたまWOWOWで放送されたのを録画して観てみた映画、『Learning to Drive』(邦題:しあわせへの回り道)は、その邦題が非常に安直というか、それっぽすぎて若干アレですが、お話としては、まあその甘い日本語タイトルから想像できるような、いいお話でありました。激烈に感動したとか超おすすめ、というつもりは全くないけれど、ま、嫌いじゃないぜ、こういうお話も。こういう作品をぼんやり観て過ごす時間も、悪くないと思います。以上。

↓ 懐かしい……中学生だったと思います。今はなき有楽座という、現在日比谷シャンテがある場所に存在したデカイ映画館で観ましたなあ……チャリをぶっ飛ばして観に行ったような気がする……。
ガンジー [Blu-ray]
ベン・キングズレー
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2010-04-16

 わたしがマラソンや登山、自転車など、主に持久系のスポーツををたしなんでいることは既に周りにはおなじみだが、このBlogでも何度か書いたように、「なんで走るの?」「なんでそんなつらいことをわざわざやるの?」と聞かれることがかなり頻繁にある。そして、その度に、わたしは心の中で、実際に走ったり山に登らんアンタには一生分かるわけねえだろうな、と思いつつ、「まあ、気持ちいいからっすね」と、さわやか営業スマイルで答えるようにしている。それは紛れもなく事実だから、そう答えているのだが、まあ、相手に伝わったかどうかは定かではない。わたしとしてはどうでもいいことだ。
 おととい観た映画は、そんなわたしの99億倍以上の冒険野郎(?)の実話を描くもので、なんと911で破壊されたワールド・トレード・センター(WTC)ビルの間に渡したワイヤーを、命綱なしで渡った男の物語、『THE WALK』である。

 もう、物語の説明は不要だろう。1974年、まだいろいろ細かい工事中のWTCビルの間にワイヤーを渡し、地上400m以上の上空を、本当に「命綱なし」で渡った男の実話を映画化したお話である。男の名前は、Philippe Petit。1949年生まれの現在69歳のフランス人。計算すると、当時は、誕生日前だから24歳ということか。
 わたしも、それなりに冒険野郎だし、高いところもそれほど苦手ではない。バンジージャンプもしたことがある。が、これは無理だ。まったくレベルというか次元が違う。おそらくはビル屋上のヘリに立つことすらできない。絶対無理。映画を観終わった今でも、なんでまたコイツはこんなことしたのか、さっぱりわからない。恐らくはもちろん、わたしのように、「気持ちいいから」というのが根本にあって、究極的には同じなんだろうと思う。でも、いくら何でも無理だ。イカれてる。
 ここにおそらく、「平凡人のわたし」と「本当にすげえ奴」を隔てる、乗り越えられない壁があるんだろうと思う。この壁は、おそらくは「命」そのものだ。命をかけられるか否か、が大きく違っている。命を落とすかも、というリスクを背負えるかどうかという話になるが、そもそも問題なのは、なぜ命をかけないといけないのか、ということだ。もちろん、当人は死ぬつもりは全くない。だから、映画でも描かれていたように、入念な準備を行って挑む。しかし幼いころから挑戦するまでの生き様や、準備の様子を非常に丁寧に描いてくれている映画であっても、やっぱり、なんでまた主人公がWTC綱渡りをやろうと思ったのか、本当のところはどうしても理解はできない。劇中では、主人公や仲間たちが、WTC綱渡りのことを「クーデター」と表現している。その言葉が指し示す意味は、法に則った正式な手続きを踏まない、暴力による政変ということだと思う。そして確かに主人公と仲間たちは、違法な手段によってある意味暴力的に、綱渡りを成し遂げる。が、一体何を変えたかったのか? 常識? という奴だろうか? おそらく、それが何なのかがこの映画での一番のポイントだろう。観た人それぞれが何かを感じるはずだと思う。
 というわけで、わたしも、いまだに主人公の本当の心の内はさっぱりわからないものの、それでもやはり、大いに感じるものがある映画であったが、今回はやっぱり監督と役者、そして音楽がとても良かったと思う。
 まず、監督は、『Back to the Future』シリーズや『Forest Gump』などでおなじみの、Robert Zemeckisである。この監督は一時期、3DCG作品にご執心だったものの、2012年の『Flight』からやっと実写に戻って来てくれたのだが、今回はとにかくすごい映像である。まあすでにWTCタワーはないわけで、CGがバリバリなわけだが、その映像の質感はもう、本物そのもの。凄いよ。まったく実物にしか見えない。やっぱり、アメリカ人にとっての、WTCビルへの愛と、今はもうなくなってしまったことへの哀しみがささげられてるんでしょうな。そして、肝心の綱渡りシーンも度肝を抜かされる映像で、いくら高いところが平気なわたしでも、本当に、大げさでなく、ものすごい手汗をかいた。この映画は、絶対に3Dで観た方がいい。それもなるべくでかいスクリーンで。IMAXがやっぱり一番オススメでしょうな。とにかく怖い.ぞくぞくすること請け合いであります。ちなみにわたしは、主人公がまだフランスで、師匠のサーカステントで綱渡りの特訓をしている頃に、あと3歩で渡り切るというところで、落っこちそうになるシーンがある。その時、持っていた安定棒を落としてしまうのだが、その棒が3Dで画面から降って来て、思わず客席で、「あっぶねえ!!」と思って避けちゃいました。とにかく、手に汗かきますよ。すごく。
 そして役者陣は、やっぱり主人公を演じたJoseph Gordon-Levitt君でしょうな。どうもわたし、コイツが非常に気に入っているんですよね。恐ろしく人が好さそうで、インチキっぽさも併せ持っていて、非常に不思議な奴だと思う。『(500)Days of Summer』はやっぱり傑作だと思うし、Nolanの『INCEPTION』『The Dark Knight Rises』なんかも非常に良かった。この男が監督をした、『Don Jon』も、わたしは結構悪くないと思っている。なかなか才能あふれる野郎なので、今後も期待したいですね。多くの大物監督に気に入られてるっぽいので、一度Eastwood監督作品あたりに出てもらいたいものである。今回も、非常に良かった。特に、地上400mのワイヤー上で、師匠に一番最初に習った心意気を見せるシーンは、結構グッときました。また、フランス語なまりの英語がとてもよろしい。どうやらコイツ、フランス文学大好きで、フランス語が実際にできるらしいね。アカデミー賞に全くかすりもしなかったのが残念。
 ほか、主人公の綱渡りの師匠を名優Sir Ben Kingsleyが演じているがとても良かったし、主人公の彼女を演じたCherlotte Le Bon嬢も可愛かった。この人はわたしは初めて見た顔で、非常に特徴のある顔のお嬢さんですね。悪くなかったです。それから、主人公が「共犯者たち」と呼ぶ仲間が何人か出てくるのだが、その中では、重度の高所恐怖症なのに、猛烈にビビりながらも頑張って主人公をサポートした数学教師を演じたCesar Domboy君が印象的でしたね。まだほとんどキャリアはないようだけれど、今後またどこかで出会いたいですな。
 で、最後。この映画で、わたしがひょっとしたら一番良かったと言ってもいいのでは? と密かに思っているのが、音楽だ。メインテーマ(?)は非常に軽快なJAZZ調のアップテンポな曲で、これが非常に気持ちいい爽快感がある。音楽を担当したのは、Alan Silvestri。Zemeckis監督作品おなじみの作曲家で、もちろん『Back to the Future』の音楽も彼の仕事である。よく考えると、この計画は、我々には大変おなじみの「ルパン三世」っぽいのだ。特に、WTCに潜入して、ワイヤーを張って、という準備段階が、もう「ルパン」そのもので、曲もJAZZ調で非常に「ルパン」っぽいと思った。実際、犯罪そのもので、主人公たちは逮捕されるわけだけど、その背景に流れる曲は「ルパン」のような、あの軽快なJAZZである。そんなところが、わたしはなんだかとても気に入ったのだと思う。そしてもう一つ、綱渡りのクライマックスでかかるのは、かのBeethovenの、誰もが知っている曲である。この曲が何だったのか、知りたい人は今すぐチケットを予約してください。わたしはこの曲が流れるシーン、とても良かったと思う。ええと、今すぐ答えだけ知りたい人は、こちらをクリックして下さい。物凄くマッチしていて、キマってましたよ。

  というわけで、結論。
 『THE WALK』は、とにかく映像がすごい。そして音楽も非常に良い。また、主役のJoseph Gordon-Levitt君も良い。わたしは去年NYに旅した時、911の跡地にも行ったが、この映画のことは知っていたので、今、跡地の隣にあるONE WORLD TRADE CENTERビルを見上げて、うわーーー・・・と思ったが、 まさに狂気としか言えない主人公の行動は、おそらくは観た人に何かを感じさせると思う。それがどんなものか、ぜひ観に行っていただきたいと思います。以上。

↓一応、これが原作(?)ですな。本人による自叙伝というべきか?
マン・オン・ワイヤー
フィリップ プティ
白揚社
2009-06

↓ そしてこちらが、実際の映像や再現フィルムで構成したドキュメンタリー。2009年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作品です。





 ※おまけ。適当にパワポで作ってみた。東京スカイツリーと比較すると、こういう事らしいです。
WTC比較

↑このページのトップヘ