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 今を去ること35年前。わたしは中学生ですでに順調に映画オタクの道を歩んでいたわけだが、35年前の夏、わたしは臨海学校で、早く帰りてえなあ……と思いながら、それでいて海を楽しんでいた。そして海から帰ってきた翌日、わたしは一路20㎞程離れた東銀座までチャリをぶっ飛ばし、とても観たかった映画を観に行ったのである。それがまさか、後にカルト的人気作となって、「いや、オレ、中学んときに劇場で観たぜ、ほれ、これが当時のパンフレットと前売券」なんて言って見せびらかすと、若い映画オタクを名乗る小僧どもにはことごとく、うお、まじっすか!と驚かれる作品になるとは全く想像もしていなかった。その映画こそ、Sir Ridley Scott監督作品『BLADE RUNNER』である。
 ↓これが当時のパンフの表紙と、わたしは当時、表紙の内側に前売券の半券を貼りつけてた。
BLADERUNNER01
 当時、わたしは単に、Harrison Ford氏が大好きで、おまけに『Chariots of Fire』でアカデミー作曲賞を受賞して注目されつつあったVangelis氏が音楽を担当しているというので観たかったのだが(※映画『炎のランナー』は、日本では『BLADE RUNNER』と同じ年の夏公開)、35年前に初めて観た時は、『BLADE RUNNER』の描く未来のLAに大興奮し、そのやや難解な物語も何となくわかったふりをしつつ、コイツはすげえ映画だぜ、と夏休み明けに周りの友人たちに宣伝しまくった覚えがある。
 そして時は流れ―――なんとあの『BLADE RUNNER』が描いた未来、2019年はもうすぐそこに来ており、そりゃあIT技術の進歩はもの凄いけれど、実際の街並みなんかは、なんとなく何にも変わってねえなというつまらん未来を迎えようとしているわけである。日本もすっかり国際的プレゼンスを失っちまったし。
 しかし! 何を血迷ったか、元々『BLADE RUNNER』という作品はワーナー作品だが、わたしの嫌いなSONYピクチャーズが権利を買い(?)、その正当なる続編『BLADE RUNNER 2049』という作品を世に送り出した。前作から30年後を描く、本当にまったくの続編である。当然、もはやアラフィフのおっさんたるわたしは狂喜乱舞、であり、まさしく俺得ではあるものの、マーケティング的に考えれば、とうていこの作品が大歓喜をもって世に受け入れられるとは思えない。結果、US本国などでは興行数値的には若干厳しく、失敗作だとかそういう判定をしている批評を見かけるが、そんなの当たり前じゃん、というのがわたしの意見だ。だって、そりゃ無理だろ。今さらスラムダンクの続編を出したって……いや、スラムダンクなら大ヒットするか、えーと、そうだなあ、うーん、マニアックに言うと……今さら楳図かずお先生の大傑作『漂流教室』の続編を出したって、そりゃあ売れんでしょうよ。わたしは超嬉しいけど。
 しかし、そんな世の中の評価なんぞはわたしにとってはどうでもいい。
『BLADE RUNNER 2049』という映画は、わたしとしては絶対に観なくてはならない作品であるわけで、さっそく昨日の土曜日にIMAX-3D版で観てきたわけだが、間違いなく超ハイクオリティであり、実はお話としてはややツッコミたいところはあるものの、演出・撮影・音楽、すべてが満点であり、わたしとしては大満足であった。コイツはすごい。懐古厨のおっさんどもの中には、観てもいないうちから否定している人もいるようだが、紛れもなく本物の続編であるとわたしは断言したい。そしてこの映画を撮り上げたDenis Villeneuve監督は、現時点では、もはや天才Christopher Nolan監督を上回ったんじゃねえかと言うぐらいの実力があるとわたしは強く感じた。

 相変わらずSONYの予告編は字幕がいい加減だが、よーく元の英語を聞いてほしい。チラホラ、ミスリードの翻訳になっていることは一応突っ込んでおこう。だが、映像のすごい出来はこの予告編だけでも感じられると思う。スピナーの超自然な浮遊感なんかは時の流れと技術の進化が物凄く感じられますなあ!
 では、物語を軽くまとめてみよう。以下、完全にネタバレ全開になるはずなので、気になる人は絶対に読まないでください。確実に、何も知らないで観に行く方がいいと思います。
 まずは前作から説明しないとダメなので、前作から。時は2019年。地球は深刻な環境汚染によって、人類は外宇宙への移民を開始、その宇宙での過酷な環境でテラフォーミングするための労働力を確保するために、「レプリカント」という人造人間を製造し、任務にあたらせていたのだが、レプリカントの反乱がおき、数人の武闘派レプリカントが地球に潜入、その専門捜査官「ブレードランナー」がレプリカントを追う、というお話である。ええと、汚染の原因が何だったか忘れました。核戦争とかじゃなくて産業の発達によるものだったような……。
 そしてこの35年、ずっとオタクどもの議論の的になったのが、主人公デッカードもまたレプリカントなんじゃねえか説である。実は、この議論の結論はどうもオフィシャルに出ているようだが、わたしはあくまで35年前に観た「劇場版」を正典だと思っているので、納得はしていないし、その結論もここに書かない。実際どちらでもいいと思っている。
 いずれにせよ、前作『BLADE RUNNER』は、主人公デッカードが、レプリカントであるレイチェルを伴って酸性雨の降りしきるロスから脱出し、緑あふれる地へ逃走するところで終わる。このエンディングでは大変印象的なヴァンゲリス氏のシンセサイザーミュージックが流れて、実に味わい深く仕上がっているわけである。
 そして今回の『2049』は、そのタイトル通り前作から30年後の2049年が舞台だ。この30年間で何が起きたか。このことに関しては、スピンオフ的な短編が公式サイトやYouTubeで公開されているので、できれば観ておいた方がいい。一応作中でも語られるけれど、かなりざっくりとしか説明されないので。その短編は3本あるのだが、まずはこれ。2022年5月に起きた「大停電」のお話。15分もあるアニメです。タイトルは「BLADE RUNNER BLACK OUT 2022」。この「大停電」事件は本作『2049』でも重要なカギになっている。

 次がこれ。2036年に、天才科学者ウォレスが新たなレプリカントを製造した「夜明け」の話。タイトルは「BLADE RUNNER NEXUS DAWN 2036」。撮ったのはSir Ridley Scott監督の息子。

 最後がこれ。特にこれは観ておいた方がいいかも。今回の『2049』の直前のお話で、冒頭のシーンに出てくるレプリカントが何故見つかってしまったのか、が良く分かる重要なお話。地道にまじめに生きようとしても「どこにも逃げ場はない」哀しさが伝わるもので、本編に入っていてもおかしくない。タイトルは「BLADE RUNNER NOWHERE TO RUN 2048」。

 というわけで、2049年までにこういう事件が起きているのだが、もう一つ、「レプリカント」に関しても簡単にまとめておこう。
 2019年(前作):NEXUS-6型アンドロイド。寿命が短い。タイレル社製
 2022年(大停電=BLACK OUT):同じくタイレル社製のNEXUS-8型に進化していて、寿命は長く(不老不死?)なったが、相次ぐレプリカントの反乱に、「大停電」もレプリカントの犯行とされ、この事件ののちレプリカント製造は禁止になった。そのためタイレル社は破綻。
 2036年(夜明け=DAWN):食糧難を解決する発明で財を成し、破綻したタイレル社のすべての資産を2028年に買収していた天才科学者ウォレスは、反逆しない人間に完全服従の次世代レプリカント製造にとうとう成功する。
 ということになっている。はーーー長かった。以上は前振りです。以上を踏まえて、本作『2049』は始まる。依然として世は不穏な空気をはらみ、上流階級はすでに宇宙へ移住し、地球はある意味底辺であって、環境汚染されたまま、食料もウォレスの会社が作る合成たんぱくしかない状況。
 そんな世にあって、NEXUS-6はもうすでに皆、寿命が尽きて絶滅したけれど、長い寿命を持つNEXUS-8は人間に紛れて生活しており、それらの「8」に仕事は終わったよ、と「解任」を言い渡す役割を果たしている者たちがいた。人は彼らを「ブレードランナー」と呼び、主人公のKD9-3.7というコードを持つ男もまた、ウォレス・カンパニー(?)の製造したレプリカントである。彼は、人間に忠実なわけで、冒頭は命令に従って、とある違法な「8」に解任=殺処分を言い渡しに行くところから物語は始まる。そして無事に任務は完了するが、その「8」は謎の「骨」を埋葬していて、いったいこの骨は何なんだ? という物語の流れになる。検査の結果、どうやらこの骨は、古い世代のレプリカントの物らしい。そして、どうやら「妊娠・出産」しているらしい痕跡が発見される。折しも、天才ウォレスをもってしても、現在の従順な次世代レプリカントの製造には時間も金もかかり、需要に供給が追い付かない状態であり、いっそレプリカントも「生殖による繁殖」が可能だったら、と研究しているところだった。というわけで、一体この骨の正体は、そして生まれた子供は今どうしているのか、そして、主人公はいったい何者なのか―――こんなお話である。
 正直に言うと、わたしは最後まで、主人公KD6-3.7(ケーディーシックス ダッシュ スリー ドット セブン。K-9と言えば警察犬。そんな意味も込められてるのかなあ……※わたし勘違いしてKD9だと思い込んでたので、KD6に修正しました)が何者であり、なぜ命令に背いて行動できたのか、良く分からなかった。中盤までのミスリードはお見事で、ははあ、てことは……と思わせておいて、実は違ってた、という展開は美しかったけれど、じゃあ何者? という点に関しては、1度見ただけでは分からなかったです。その点だけ、わたしとしては若干モヤッとしている。また、天才ウォレスの本当の狙い? なるものがあるのかどうかも良く分からなかった。彼って、意外と普通な実業家だっただけなのでは……という気もしているのだが、これもわたしが理解できなかっただけかもしれない。
 しかし、それ以外の点はほぼ完ぺきだったとわたしは絶賛したい。役者陣の演技、演出・撮影・音楽、すべてがきわめてハイレベルで極上であった。
 役者陣は最後に回して、まず監督であるDenis Villeneuve氏の手腕を称賛することから始めよう。わたしは映画オタクとして、映像を観ただけで、これって●●監督の作品じゃね? と見分けられる監督が何人かいる。例えばDavid Fincher監督とか、Christopher Nolan監督とか、Sir Ridley Scott監督とか、画そのものに特徴がある監督たちの場合だ。わたしは本作をもって、Denis Villeneuve監督もその一人に入れられるようになったと思う。
 この監督の目印は、上手く表現できないけれど……ロングショットで画面に入るオブジェクトの巨大感が圧倒的なのと、超自然なCG、それから、「ほの暗いライティング+スポットライト」にあるような気がしている。本作では、かなり多くのシーンが薄暗く、そのほの暗さが超絶妙だ。そう言う意味では、IMAXのきれいな画面で観たのは正解だったように思う。もちろんそういった「画」そのものは、撮影およびライティングの技術の高いスタッフに支えられたものだが、今回も街の壮大さ、建造物の巨大感、そしてもはや本物にしか見えない数々のオブジェクトは完璧だったと思う。35年前のスピナー(※主人公の乗るパトカー)の動きと比較すると、もう完全に本当に飛んでいるようにしか見えないもの。さらに演出面では、そのほの暗い中からキャラクターがだんだん出てくる、と言えばいいのかな……キャラの顔の陰影が凄く印象的で、段々見えてくるような演出が多い? ように感じるが、そのため、役者の表情が非常に物語を表しているというか……苦悩、疲労感、あるいは怒り? が画から伝わるのだ。非常にわたしは素晴らしいと思う。実に上質だ。
 そして、Denis監督で、わたしが一番特徴があると思っているのは、実は音楽だ。いや、音楽というより効果音? というべきかもしれない。とにかく、常に、ビリビリビリ……ズズズズ……といった重低音が響いていて、わたしは以前、Denis監督の『SICARIO』を観た時、この音は要するにJOJOで言うところの「ドドドドド」に近い、というか、そのものだ、と思ったが、今回ももう、漫画にしたら確実に「ドドドドド」と文字化されるであろう背景音のように感じられた。そしてその背景音は、不穏な空気をもたらし、緊張感を高めることに大いに貢献していると思う。とにかくドキドキする! こういう演出は、今のところDenis監督とChristopher Nolan監督作品以外には感じたことがないような気さえする。わたしは本作が、来年2月のアカデミー賞で音響効果賞を獲るような気がしてならないね。【2018/3/6追記:くそー! 録音賞と音響編集賞はダンケルクに持っていかれた! でも、撮影賞と視覚効果賞はGET! おめでとうございます!】
  そして、役者たちの演技ぶりも、わたしは素晴らしかったと称賛したい。わたしが誉めたい順に、紹介していこう。
 わたしが本作『2049』で一番素晴らしかったと称賛したい筆頭は、Dave Batista氏である! 素晴らしかった! MCU『Guardians of the Galaxy』のドラックス役でお馴染みだし、元プロレスラーとしてもおなじみだが、今回はもう、実に疲れ、そしてそれでも心折れないレプリカント、サッパーを超熱演していたと思う。サッパーは、冒頭で主人公が「解任」を言い渡しに行くレプリカントだが(上に貼った短編の3つ目に出てくる大男)、実に、前作でのレプリカント「ロイ」と対照的でわたしは大興奮した。前作でロイは、前作の主人公デッカードに対して、過酷な宇宙での体験を「オレは地獄を見た!」と言い放ち、故にある意味サタンとなって復讐に来たわけだが、今回のサッパーは、「オレは奇蹟を見た」と宣言する。故にエンジェルとして秘密を守り、真面目に暮らしていたわけで、レイとは正反対と言っていいだろう。地獄を見たロイと奇蹟を見たサッパー。この対比はホント素晴らしかったすねえ。あ、どうでもいいけれど、サッパーが養殖している虫の幼虫を、字幕でなぜ「プロティン」としたのか……あそこは「タンパク質」とすべきだと思うんだけどなあ……。イメージが違っちゃうよ。ねえ?
 次。2番目にわたしが褒め称えたいのが、孤独に暮らす主人公の心のよりどころである(?)、3Dホログラムのジョイを演じたAnna de Armasちゃんだ。とんでもなくかわいいし、実に健気だし、最高でしたね。こういうの、早く現実に普及しないかなあ……ジョイちゃんがいれば、もう完全に一人で生きて行けますよ。最高です。Annaちゃんと言えば、わたしは『Knock Knock』しか見ていないのだが、あの映画でのAnnaちゃんは超最悪なクソビッチだったので、印象が悪かったのだけれど、本作で完全にそのイメージは払拭されました。何度も言いますが最高です。
 そして3番目が、主人公たるKD9-3.7を演じたRyan Gosling氏であろう。彼はやっぱり、無口で常に悩んでいるような役が一番しっくりきますねえ。実にシブくてカッコ良かった。KD9-3.7は、「奇蹟を見た」という言葉に、一体奇蹟って何なんだ? そして俺の記憶は……? とずっと悩んでいたわけで、その悩みが、人間の命令をも上書きしたってことなんすかねえ……その辺が良くわからないけれど、彼もまた、ラストシーンは、前作のロイと同じようでいて対照的な、実に素晴らしいエンディングショットでありました。前作でのロイは、デッカードを助け、まあいいさ、的な表情で機能停止するラストだったけれど、今回は、すべてに納得をして、実に晴れやかな、やれやれ、終わった、ぜ……的な表情でしたね。Ryan氏の若干ニヒルな、けど実は大変優し気な、実に素晴らしい表情でありました。前作は雨の中だったけれど、今回の雪の中、というのも幻想的で良かったすねえ!
 4番目はソロ船長ことHarrison Ford氏であろうか。まあ、やっぱりカッコイイですよ。もう75歳とは思えない、けれど、やっぱりおじいちゃんなわけで、実にシブいすね。デッカードは、この30年をどう過ごしてきたのか、若干謎ではあるけれど、実際に35年経っているわけで、その顔にはやっぱりいろいろなものが刻まれてますなあ……。ラストシーンの、お前なのか……? という驚きと感激の混ざった複雑な表情が忘れられないす。素晴らしかったですよ。
 最後に挙げるのは、まあ、物語上良くわからない点が多いのでアレな天才科学者ウィレスを演じたJared Leto氏である。勿論この人の演技は毎回最高レベルで素晴らしいと思うけれど、どうも、わたしには若干雰囲気イケメンのように思えて、その独特のたたずまいで相当得をしているようにも思える。どうしても、物語的に良くわからないんすよね……もう少し、物語に直接自分で介入してほしかったかな……。でもまあ、確かに非常に存在感溢れる名演であったのは間違いないと思います。

 はーーーー書きすぎた。長くなり過ぎたのでもう結論。
 35年ぶりの続編である『BLADE RUNNER 2019』をIMAX 3D版でさっそく観てきたわたしであるが、一つ断言できるのは、まったく正統な完全なる続編であることであろう。これは本物ですよ。懐古厨のおっさんも、まずは観てから文句を言ってほしい。そして前作をDVD等でしか見ていない若者も、少なくとも前作を面白いと感じるなら、本作も十分楽しめると思う。そしてその内容は、物語的には若干良くわからなかった部分があるのは素直に認めるが、それを補って余りある、極めて上質な、とにかくハイクオリティな一品であった。監督のDenis Villeneuve氏は、わたしとしては現代最強監督の一人であると思います。そしてわたしの中では、かの天才Christopher Nolan監督を上回ったんじゃねえかとすら思えてきて、今後が大変楽しみであります。ただ、興行成績的にはどうも芳しくないようで、そのことがDenis監督の今後に影響しないといいのだが……その点だけ心配です。そして最後に、ホログラムAIプログラムのジョイが一日も早く販売されることを心から願います。頼むからオレが生きているうちに実用化されてくれ……車は空を飛ばなくていいから……以上。

↓ うおっと、高いもんだなあ。80年代の映画のパンフ、ごっそりあるんだけど……売るつもりはないす。

 いやーーー。これは難しい。そして素晴らしい! 今年2017年の暫定1位だな。
 なんの話かって!? 映画『ARRIVAL』(邦題:メッセージ)を今日会社帰りに観てきたのだが、その感想である。これは相当歯ごたえあるぞ……そして、映画としての出来はものすごくイイ! 撮影、そして音楽(というより音響設計か)。実にクオリティが高い。いやはや、素晴らしかった。
 そして、わたしは実に愚かなことに、本作が有名なSF小説が原作だということを全然知らなかった。知ってれば読んでから観に行ったのに……ちくしょー! 原作小説に関するプロモーションってあったのかなあ? 有名な作品らしいが、わたし、恥ずかしながら読んだことのない小説で、その作品の名は『Story of Your Life』(邦題:あなたの人生の物語)。わたしの大好きな早川書房から発売されているので、わたしは帰りの電車内で即、電子書籍版を買いました。くっそーーー読んでから観るべきだったかもなあ……。
あなたの人生の物語
テッド チャン
早川書房
2014-09-30

 なぜそう思うかというと、冒頭に記したように、本作『ARRIVAL』は、正直かなり理解が難しい、非常に歯ごたえのある作品なのだ。もちろん、きちんとストーリーは追えるし、あ、そういうことなんだ!? という最終的なオチというか結末も、ちゃんと映画を観ていれば理解できるとは思う。しかし、ええと、ホントにオレの理解は合ってるのかな? と自信が持てないんすよね……。
 一応、パンフレットを読む限り(パンフには結構詳しい解説が何本も収録されているのでおススメ!)、わたしの理解は正解だったようだが、やっぱり、これはさっそく買った原作を読んでみた方がいいような気がしますね。多分この映画、ゆとりKIDSには全く理解できないと思う。これはホント、早川文庫が似合う、正統派なハードSFですよ。以上。
 で、終わらせるにはまだまだ語りたいことがいっぱいあるので、まずはいつも通り予告を貼り付けて、以下で少し語らせていただくッッッ!! もちろんネタバレもあると思うので、読む場合は自己責任でお願いします。

 今回は、この映画について、いくつかのポイントに絞って、その素晴らしさを記録に残しておこう。いやあ、すげえクオリティですよ。こいつは本物だ。
 【1.物語】
 まあ、物語としては、上記予告の通りである。ある日突然、地球に飛来した謎の宇宙船。しかも12機が地球の各地に「同時に」降り立った(※ちなみに日本(の北海道)にもやって来る)。しかし、地上から数メートルのところで静止し、とりわけ何もアクションを起こさない。世界各国は調査にあたるが、US国内にやってきた宇宙船の調査には、まずはコミュニケーションをとるため、言語学者のルイーズが選ばれる。そして、重力制御された宇宙船内で異星人とのコミュニケーションが始まるのだが―――というお話である。
 わたしも、上記予告はさんざん何度も見ていたので、おそらく物語のカギは、「一体全体、なにをしにやってきたのか?」という点にあるのだろうと予想していた。
 まあ、その予想は誰でもできるし、実際上記予告にもそう書いてあるのだが、最終的に明かされる「目的」について、正確な理解はちょっと難しいと思う。なにしろ、彼らは我々地球人と全く異なる思考をする生命体だ。それを、地球人の常識で計ろうとしても、そりゃあ難しいに決まっている。一番のカギになるのは「時間」の概念なのだが、我々地球人が、時間は一直線に流れ、不可逆なものと考えている一方で、異星人たちはそうではない。それがだんだんわかる仕掛けになっているのである。
 そして、それが決定的に判明するのはかなり後半だ。わたしは中盤のルイーズのある一言(「科学のことはお父さんに聞きなさい」のシーン。これは白黒反転させておきます)で、えっ!? ちょっと待った、てことは……まさか!? と仕組みが理解できたのだが、ここは相当注意深く観ていないと難しいと思う。実は冒頭から、ルイーズは愛する子を病気で亡くし、深い失意にある、というような、その愛する娘とのシーンが何度も何度もフラッシュバックで描かれるのだが、その意味が分かるラストは、やられた――!! やっぱりそういうことなのか!!! と誰しもが驚くものだと思う。
 ただ、最終的にわかっても、この作品は、そういう「理解するのが非常に難しい」という意味において、素晴らしい脚本だったと称賛すべきか、トリッキーで不親切な脚本で、もうチョイ説明が欲しかったと思うべきか、わたしとしては正直微妙だと感じた。観終わった後でも、じゃあなんで……? という疑問がわたしには結構多く残っている。ある意味、ぶった切りのエンディングと言ってもいいぐらいかもしれない。少なくとも万人向け、ではないと思う。
 しかし、だからと言ってつまらなかったとはこれっぽっちも思わない。それは、この難解な物語を支える、映画としての技術的なポイントが、おっそろしく高品位で、すさまじくクオリティが高いからである。
 【2.演出、撮影・映像そのもの】
 ちょっと前に、この作品のメイキング的な映像をチラッと観たけれど、画面は全く自然で本物そのものにしか見えないのだが、宇宙船をはじめ、実はすさまじくCGバリバリである。そして、宇宙船の全貌が画面に現れるまでの、チラ見せ具合も大変上品かつ上質だ。この映画はなるべくデカいスクリーンで観た方がいいと思う。その圧倒的な存在感は本当にそこに存在するようにしか見えないし、完璧に計算されてCG処理された風景の色味、それから雲、時にすごいスピードで画面を横切る戦闘機やヘリなど、まさしく本物にしか見えないCGは超見事である。宇宙船の巨大感も申し分なしで、これは日本の映画界では絶対に撮れない画だ。なんというか、マグリットの絵画を実写化したような、まさしく超現実(シュール・レアリスム)で、わたしはもう大興奮である。
 また、異星人の描写も、当然フルCGだと思うが、もう本当に生きているとしか思えない質感だし(デザイン的にも超秀逸!)、スモーク越しに現れる映像・演出も実に品がある。重要なキーとなる、異星人の描く文字も、そのデザインや描かれた方も、書道をたしなむ我々日本人には完璧に美しく、お見事だ。
 とにかく、本物そのもの、圧倒的な存在感。そして、全編に漂う、尋常ではない「緊張感」。わたしはこの映画を撮ったDenis Villeneuve監督の作品を観るのは4本目だが、去年、Denis監督の前作『SICARIO』を観た時もこのBlogで書いたけれど、その映像には、まるでJOJOで言うところの「ゴゴゴゴゴ」「ドドドドド」という書き文字が見えるような、あの緊張感が常に感じられるのが、Denis Villeneuve監督の作品に共通する特徴であろう。これは、観てもらわないと伝わらないだろうなあ。多分、観てもらえればわたしが言いたいことは通じるような気がする。この、Denis監督の作品に共通する「画面から伝わる緊張感」に非常に大きな役割を果たしているとわたしが考えているのは、音楽、音響設計、というか音そのものである。
 【3.音楽、音響設計、音そのもの】
 本作は、冒頭、非常に印象的な、弦楽器の奏でる音楽から始まる。わたしは音楽にはさっぱり詳しくないのでわからないのだが、おそらくはヴィオラかチェロで奏でられる、重く低い曲。それはエンドクレジットによるとMax Richterというドイツ(生まれのイギリス)人の「On The Nature of Daylight」という曲だそうだ。お、公式動画があるみたいだから貼っとこう。

 この非常に印象に残る曲から始まる本作は、これもDenis監督作品に共通してみられる特徴なのだが、とにかく音の使い方が非常に素晴らしい。まったくの無音部分とのコントラスト、メリハリもきっちり効いていて、映像に緊張感を与えることに成功しているとわたしは思う。冒頭、主人公ルイーズが大学から外に出て、空には戦闘機が行きかい、いったい何事が起きているんだ? という最初のドキドキ感は本当に素晴らしいし、その緊張感は最後まで貫かれていると思う。ズズズズズ……ビリビリビリ……といった、ある意味では不快な重低音が重要なシーンでは常に背後に流れていて、観ている我々の不安を掻き立て、ドキドキさせるわけで、その使い方は、下手を打つと不愉快なものになるけれど、Denis監督の使い方は決してそんなことにならない。本作は、今年2月のアカデミー賞で作品賞をはじめ8部門でノミネートされたが、受賞できたのは音響編集賞のみ、であった。実にお見事であるし、この特徴は少なくともわたしが観た4本すべてに共通する、Denis監督の目印といってもいいだろう。おそらくは、Denis監督の次回作、『BLADERUNNER2049』においても、まず間違いなく発揮されるであろうと思うので、ぜひその点はチェックしたいと思う。

 というわけで、物語・映像・音楽(音そのもの)の3点について、まあテキトーなことを書いたが、役者陣の熱演ももちろん素晴らしい。今回は3人だけ挙げておこう。
 まずは主人公ルイーズを演じた、Amy Adamsさん42歳。おぅ……マジか、もう40超えてるのか……わたしがこの人が演じた中で一番好きな映画は、もちろん『Enchanted』(邦題:魔法にかけられて)だろう。あのジゼル姫は最高でしたなあ。2007年公開だからもう10年前か。最近では、DCヒーロー作品でスーパーマンの恋人、ロイス役でおなじみだけど、すっかり年を感じさせるというか……最近はちょっとアレすね……。でも『her』でのAmyさんはホントに可愛かったので、髪形やメイクで随分変わるんだと思う。本作では、若干疲れたような40代女子であったけれど、その美しく澄んだBlue Eyesが非常に印象的であった。そして娘とのシーンや、すべてを理解した時の表情、大変素晴らしかったと思う。
 次は、わたしの大好きなMCUにおけるHawk EyeでおなじみのJeremy Renner氏46歳。彼は、出世作『The Hurt Locker』でのジェームズ軍曹役や、今やレギュラーとなった『Mission Impossible』シリーズ、あるいはMCUでのHawk Eyeでもおなじみのように、不敵で抜け目ない男という印象が強いけれど、今回は知的な科学者である。登場時はちょっと生意気ないつものRenner氏だが、だんだんとルイーズに惹かれ、協力していく今までとはちょっと違う役柄であったようにお見受けした。本作では実はほぼ活躍しない、けれど、物語において重要な役割で、それが判明する流れはお見事である。まあ、この人の演技ぶりはほぼ関係なく、脚本のおかげだけど。
 最後。調査班の現場責任者?の軍人を演じたのが、ベテランForest Whitker氏55歳。わたしがこの人を知ったのは、かの名作『PLATOON』だが、ホントこの人、若いころは鶴瓶師匠そっくりだったんですが、最近ではすっかり渋い、脇を固める大ベテランですな。声に特徴のある人で、妙にカン高いんすよね。『ROGUE ONE』でのソウ・ゲレラ役も渋かったすねえ。まあ、役的にかなり微妙だったけど。彼もまた、本作ではほぼ何も活躍はしません、が、やっぱり非常に印象に残る芝居ぶりだったと思う。もうチョイ、活躍してほしかったなあ。
 
 最後に、ここまで絶賛しておいてアレですが、ここはちょっとなあ……という点も3つ挙げておこう。まず、一つ目がズバリ、中国に対する扱いだ。本作では、地球に飛来した12機の宇宙船の一つが、上海に現れ、あの国だけ宇宙船に対して好戦的というか、軍事行動を起こそうとする流れになる。ま、それに乗っかるロシアもおそろしあだが、その中国でキーとなるのが、軍人のなんとか将軍なのだが……あの国のシステムにおいて、あんなに軍人が突出して行動を開始しようとするなんてことがありえるのかな? いや、あり得るのか、あの国だからこそ。なんか、なんとか将軍が大物なんだか実感がわきにくかったす。
 二つ目のわたし的いちゃもんは、邦題である。なんなの「メッセージ」って。なんで「アライヴァル」じゃ駄目だったんだ? 作中では、arrivalという単語は何回も出てくる。ほぼ毎回「出現」という字幕がついてたかな。いっぽうのmessageという単語は、わたしのヒアリング能力では1度も出てこなかったように思う(字幕では1回だけあった)。メッセージ……どうかなあ……。物語的にも違う、ような気がするのだが……。arrivalというタイトルの意味は、わたしなりに思うところがあるのだが、これはクリティカルなネタバレすぎるので書くのはやめときます。とにかく、メッセージは違う、と思ったことだけ記しておこう。
 最後、三つ目のわたし的いちゃもんは……これは、完全に映画オタクとしてのどうでもいい文句なのだが……わたしはマジで、結構腹が立ったので書いておくけれど……あのですね、わたしはもう35年以上映画館に通う、40代後半のおっさん映画オタなんですよ。せっせと劇場に通い、パンフも必ず買う、業界的には模範的というか、大切にしてもらってしかるべき、だとすら思うオタク野郎なわけです。なので、言わせてもらいますが……あのさあ! パンフレット! 変なサイズにするのやめてよ!!! 保管するのに困るんだよ、妙に小さい判型は!!! そりゃあね、デザインに凝りたくなる気持ちはよーくわかりますよ? でもね、配給会社の皆さん、そんなデザイナーのこだわりなんて、まったく迷惑以外の何物でもないんすよ、購買者にとっては。今、入場者のどれぐらいがパンフ買ってくれるか、ちゃんとデータ取ってるでしょ? どんどん減っているって、知ってるでしょ? そして買ってるのが、もはや希少種のオタク野郎だけだって、分かってるでしょ? せっかく内容的には読みがいのあるいいパンフなのに、このふざけた判型だけはホント許せんわ……!! はーー。興奮してサーセン。邦題といい、パンフの判型といい、さらに言えばUS公開から半年経っての公開といい……SONYピクチャーズの人々は大いに反省していただきたいものです。

 というわけで、結論。
 わたしが今、一番注目している映画監督、Denis Villeneuve監督による『ARRIVAL』が、US公開から半年経ってやっと公開されたので、初日の金曜夜、早速観てきた。そのクオリティはすさまじく、極めて上物であったのは間違いない。そしてその物語にも大興奮だったわけだが、一方で、この映画が万人向けかというと、その難解な物語はかなりハードルは高いように思えた。しかしそれでも、わたしとしては、現時点における今年ナンバーワンに認定したいと思う。こいつはすごい。この作品を観ると、もう、Denis監督の次回作『BLADERUNNER2049』に対する期待がいやがうえにも高まりますな!! SONYよ、BLADERUNNERのパンフの判型がまーた変なサイズだったら許さないぞ。1982年のオリジナルのパンフ、貸してあげてもいいので、ちゃんと研究してくれ。頼むよマジで。以上。

↓ わたしは中学生の時、たしか臨海学校から帰ってきた翌日に、今は亡き東銀座に存在した「松竹セントラル」という映画館にチャリで観に行きました。いろんなVerがあるけれど、当然、劇場公開版が正典です。ファイナルカットじぇねえっつーの。

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