今日の東京は台風一過、フェーン現象で相当暑いのだが、そんな連休最終日、わたしは朝イチAM0600に家を出て、チラッと会社に寄って気になっていた仕事を80分で済ませ、すぐに上野へ向かい、東京都美術館へ推参した。会社を出たのがAM0820頃で、こりゃあいくらなんでも早い、ま、公園で本でも読むか、ぐらいの気持ちで、まだ人気の少ない上野公園にAM0845頃に到着したところ、既に東京都美術館の前には11名の人が並んでいたので、ま、日陰だし、並んで本読んで待ってよっと、と決めて列に並んだ。
 本を読んでいると、本当に時間の流れを意識することがなく、わたしとしては結構あっという間に、実際のところ30分以上たっていたわけだが、正式な会場時間より早く、0920には敷地内に入れてくれて、定刻ちょっと前にいざ鑑賞と相成った。
 というわけで、今日、わたしが観てきたのは、これであります。
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 展示のタイトルとしてはちょっと長い。『ボストン美術館の至宝展――東西の名品、珠玉のコレクション』である。ボストン美術館といえば、我々日本人的には、浮世絵を多数収蔵していることでもおなじみの美術館だが、今回のメインは、上記のチケットに印刷されている通り、Vincent van Gogh氏の『ルーラン夫妻』と、英一蝶(はなぶさ いっちょう)氏の『涅槃図』であろうと思う。
 というわけで、順にみていくと、最初は古代エジプトの遺物から始まって、中国美術なんかも来ていた。しかし、毎回思うけれど、エジプトのいわゆるヒエログリフを読めるようになったらカッコイイよなあ……ちょっと真面目に勉強したい、といつも思うのだがどうやって勉強すればいいんだろうか……。あ、すげえ、Unicodeはヒエログリフに対応してるんだ。へえ~。なんか夢がありますなあ。
 で。それらを抜けると、日本美術コーナーに移る。そして、かなりいきなり、ズドーンと現れるのが、今日のメインの一つである、英一蝶氏(1652-1724)の『涅槃図』だ。デカい! そして色鮮やか! そのサイズは縦2.9m×横1.7mだそうで、表具を含めると4.8m×2.3mになるそうだ。すげえ! とわたしも大興奮である。1713年の制作だそうだ。えーと、つまり304年前の作品ってことになる。それを、1886年にErnest Fenollosa氏が日本来日中に購入し、ボストンに持ち帰ったんですって。だけど、デカいし劣化が進んでしまって、この25年は公開できずにいたところ、今回の展示にあたって170年ぶりに本格的な解体修理が行われたんだそうだ。その模様は、今回ビデオで紹介されてました。まあ、とにかく一見の価値ありですよ。
 で、わたしが今回気に入った作品としては、この日本美術ゾーンに展示してあった、この作品を紹介しておきたい。ポストカードを買ってスキャンしてみた。
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 これは、酒井抱一氏(1761-1829)の作品である。どうも制作年代ははっきりしていないようだが、18世紀の作品であることは間違いないようだ。花魁を描いた、実に趣ある作品で、わたしは大変気に入った。この作品の隣には、喜多川歌麿氏(1753-1806)による美人画も展示されていて、そちらも実に色気のある作品なのだが、わたしとしては今回は抱一氏の作品の方にやけにグッと来た。
 わたしは以前、抱一氏について色々調べたことがあるのだが、このお方はその名の通り、徳川家最古参の譜代である酒井家の出身で、姫路酒井家の御曹司なんだよね。スーパー金持ちのお坊ちゃんだったはずで、そうだ、兄貴は姫路藩主だったかな、とにかく、名門の出なんすよ。だけど、酒井家が「雅楽頭家(うたのかみけ)」と呼ばれる通り、アートに理解のある家で、おまけに金持ちで遊郭通いとかもしてたようで、相当なヤンチャ小僧だったのではないかとわたしはにらんでいる。その後、兄の死去とともに出家したり、そして尾形光琳私淑して、「琳派ヤバい!すげえ!」と盛り上がって光琳100回忌を開催して、江戸琳派の創始者なんてWikiには記されている。要するに、抱一氏は、200年前に生きていたアート大好き野郎だったみたいなんすよ。なんかすごい面白いと思って、わたしは非常に興味を持ったのだが、今回展示されていた花魁の作品は、非常に色のセンスのいい、大変な傑作だとわたしは思った。この緑と赤、本物はもっと鮮やかというか深みもあって、とてもきれいでした。なんか、マジでほしい! いくら出せば買えるのだろうか……。
 で。後半はフランス絵画とアメリカ絵画、そして現代ポップアート、という構成になっていた。今回のメインであるGogh氏の「ルーラン夫妻」は有名ですな。特に、旦那さんの方の『郵便配達人ジョセフ・ルーラン』の方は、まったく同じ(に近い)構図で、ルーラン氏を描いた作品が6点あるのかな、わたしもたぶん何度も観たことがあるモデルのおじさんですな。彼はGogh氏の友達、といっていいんだろうね。そしてその奥さんであるルーラン夫人も、やっぱり何点もあって、4点かな、存在している。今回、この「ルーラン夫妻」がそろって同時展示されるのは日本で始めてらしいです。そして、ルーラン氏の方は6点あるうちの一番古い作品が今回来日しているみたい。まあ、相変わらずのGogh氏の強烈な色と筆遣いがすごいパワーを放ってますな。すごいオーラですよ。
 最後に、今回の展示でわたしが気に入った、アメリカ20世紀初頭の作品を紹介して終わりにしよう。こちらも、買ったポストカードをスキャンしてみた。
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 どうすか。いい表情すねえ! 母娘だそうで、母の表情はなんとなく、ハリウッド美女のElle Fanningちゃんに似てませんか? そして娘も可愛いですなあ! この作品は、John Singer Sargent氏(1856-1925)による、『フィクス・ウォレン夫人(グレッチェン・オズグッド)と娘レイチェル』という作品だ。1903年の制作だそうで、えーと、つまり明治36年かな。夏目漱石氏が『猫』でデビューしたのが明治38年だから、まあ、要するにそんな時代ですな。娘の着るちょっと強めのピンク、そしてお母さんの着る淡いピンク。これはとてもイイ! 展示の解説によると、最初、お母さんは「わたしは緑の服が好きなの」と言って緑の服を着ようとしたところを、Sargent氏が、「いやいやいや、奥さま、ここはピンクにしましょうよ!」とお願いして着替えてもらったんですって。その現場はどうんな感じだったんでしょうなあ……和やかな雰囲気だったのか、ちょっと張りつめていたのか。まあ、奥さまのこの表情を観る限り、平和に衣装チェンジしてくれたと思うことにしたい。

 というわけで、さっさと結論。
 連休最終日、上野の東京都美術館で開催されている『ボストン美術館の至宝展――東西の名品、珠玉のコレクション』を観に行ったわたしであるが、確かに、その作品はすべて「至宝」と呼ぶべき作品たちだったと思う。全部で80点かな、展示されていたのは。まあ、1時間ほどで観ることはできると思うが、わたしが帰る頃は結構行列ができてましたな。ま、やっぱり美術展は朝イチに限りますな。まったくノーストレスで気持ちよく観ることが出来た。会期はもうあと3週間で終わってしまうので、ご興味ある方はお早めに! 以上。

↓ こういうので、ちゃんと勉強した方がいいかもなあ……わたしの知識はテキトーすぎるので。

↓そしてヒエログリフも勉強してみたい!
古代エジプト文字ヒエログリフ入門
ステファヌ・ロッシーニ
河出書房新社
2015-05-21