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 というわけで、週末映画興行収入データです。
 まずは『バクマン。』から。どうやら、累計14億強まで伸びた模様です。私のテキトー予測では、もうスクリーン数が激減すると思っていたのだが、まだ300以上をキープしているので、上映回数は減っているけれど、なんとか15億を超えるのは見えてきたと思う。が、ここから2億3億積むのは現実的にはちょっと難しいであろうから、最終的には17億±0.5億というところで決着するのではなかろうか。まあ、私のインチキ予想より少し良いかな、というところだろう。
 問題は、その数字をどう評価するか、であるが、15億を超えれば間違いなく赤字は回避できたと思うので(イヤ、特に根拠はないですけど)、商売としてみるなら成功、と言える。その意味では、おそらくは当初の期待よりは小さい成績だとは思うが、十分合格点であろうと思う。よかったよかった。いや、あんまり良くないか。続編が作られるかどうかは、相当微妙なラインだと思う。脚本的に難しいだろうな、とは思うけれど……
 そして次に数字を見たいのは『図書館戦争 THE LAST MISSION』だが、こちらは4週終わりの23日間累計で13.8億だそうだ。これは、前作の同じ日数で比較すると約105%である。ので、まあ、順調ではあるが……なんだか毎週書いているけど、もう一声欲しかったところ。いずれにせよ、前作並みの17億チョイはたぶん大丈夫だと思う。前作並なら、なんとか最後の『革命』にGO!サインが出る……のかな。ファンとしては期待したい。
 で、『ギャラクシー街道』の前に、今週末公開された、恐らくは東宝が結構期待していたと思われる『俺物語』の方に注目してみよう。この作品は、少女マンガを原作とするもので、今の市場動向からすると鉄板の興行が期待できる要素を持つ、かなり強い作品だと私は思っていた。

 ビジュアルイメージもいいし、恋愛漫画であるので、このところの東宝のラインナップからすれば売れて当然の期待がかかる作品だといっていいはずである。わたしも、原作漫画は1巻しか読んでいないが、男が読んでも面白いし、主役の変態仮面こと鈴木良平君の肉体改造も素晴らしく、役になりきっている演技は予告だけ観てもかなりのハイクオリティである。なので、わたしは間違いなくヒットするんでしょうな、と思っていたのだが……公開週末の興行収入は1.37億だったそうだ。わたしとしては、これは先週の『ギャラクシー』に続き、まったく信じられない数字である。そんなバカな!? なんで? ちょっと東宝作品が重なりすぎているのか? ファーストデーで客単価が落ちていたこともあるだろうが、ちょっと前なら、この『俺物語』は確実に20億以上期待できたはずだと思う。だが、このスタートでは15億もあやしい、という厳しいスタートである。なんでだろう? 9月の『ヒロイン失格』は20億を超えたというのに、どうして『俺物語』が15億も厳しいのだろう? 時期か? 内容か? 原作の力か? キャストか? 客層か? おそらく、何かがズレているのだとは思うが、ちょっと勉強不足でなんとも言えない。これはもう少しデータを集めて真面目に考えた方がいいような気がする。この謎を自分なりに納得するのはかなり難しい。いや、ホントに分からない……。

 で、最後に『ギャラクシー街道』である。大変申し訳ないが、わたしもまだ観ていないのだが、2週目の週末興収は1.8億で、9日間累計で6.8億ほどだったようだ。これもまあ、厳しい状況は変わらずだ。9日間で6.8億という数字は、先週参考にあげた作品の9日間累計と比較してもかなり低い。『寄生獣・完結編』は7.4億、『陽だまりの彼女』は7.6億、『謝罪の王様』は8.1億だった。『バクマン。』も9日目累計で6.6億だったので、本当に『ギャラクシー』は、もう完全に20億には届かないだろう。粘って粘って、ギリ届かないと思う。
 だとすると、三谷監督の次回作は、残念ながらかなり予算が縮小されてしまう可能性が高く、小規模なものしか撮れなくなってしまう。マジなのかこれ……それは残念すぎる。何度も書いているが、現状の日本映画界で、「オリジナル」作品で勝負できる稀有な才能なのに……。先週も書いたが、わたしはこの事態に関しては、フジテレビのメディア力の低下が深刻な事態に陥っていると解釈するつもりだ。地デジになって「8」chが一番端っこになってしまったことも影響しているのだろうか? これは、本当にマズイ。極めて深刻に受け止めるべきだと思う。 まあ、世の若者たちは、今週はHalloweenで映画どころじゃなかったのかもな…….
 ★2015/11/09追記:翌週最新データ更新しました→こちらへどうぞ

 というわけで、結論。
 どうもこの秋の東宝映画は、非常に厳しい展開である。まさか『バクマン。』や『ギャラクシー』が20億届かず、『俺物語』が15億も怪しいことになるとは、きっとまったく想定外の事態ではなかろうか。12月公開の『orange』は、大丈夫……だろうか……? 大丈夫だよね? 非常に不安になってきた……。

↓ これはとりあえず4巻までは買って読んだ。まだ完結していない作品を、2時間の映画にどうまとめるのか興味はある。仕方ない、5巻も買うか……

 毎週月曜日恒例の、映画興行収入データです。
 今週は、東宝イチオシの『ギャラクシー街道』 の公開というわけで、先週までの記事では、まあ、きっとそりゃあ売れるんでしょうな、と勝手に思っていたわけだが……さきほど、いろいろなWebサイトやTweetで得た情報によると、『ギャラクシー街道』最初の土日での興行収入が2.7億だというのだ。これは……正直わたしとしては信じられないほど悪い。てっきり、5億ぐらい行くのだとばかり思っていた。コ、コイツはちょっとマジでマズいのではなかろうか? 想定通りなのかな? さっぱり分からん。
 ちょっと待って。とりあえず落ち着いて、過去データを引っ張り出してみよう。
『金縛り』(2011/10/29公開):公開週末5.0億→3週目には20億突破、5週目には30億突破、最終興収42.8億
『清須会議』(2013/11/09公開):公開週末4.8億→4週目で20億突破、最終29.6億と30億に届かず。
 これらと比較すると、今回の『ギャラクシー』が低い水準の公開週末興収だということが分かってもらえると思う。このままだと、本当に最悪の場合は、20億にも届かない可能性すらある。また、それ以前の作品は古くて詳細データを持っていないが、『マジックアワー』(2008/06/07公開)は最終39.2億、『有頂天ホテル』(2006/01/14公開)は最終60.8億まで行っている。その三谷作品が……嘘だろ……まだ観ていないけれど、絶対に30億は超えると思ってたのに……。
 とは言っても、実際のところ、わたしがそう思っていた根拠は、
 1)確実にフジテレビが膨大な番宣を仕掛ける(であろう)
 2)三谷ブランドの強さはまだ健在ではないか(特に根拠なし)
 3)実際のところ、面白そう。観たいと思った
 というような、まあテキトーなものではあったので、外れてもそりゃ仕方ないのだが、結果的には、1)に関しては、それほど膨大でもなかったような気もする。フツーのレベルを超えていたとはあまり思えない。そして2)に関しては、わたしが思っているよりも残念ながらブランド価値は低くなっていたと思わざるを得ない。3)に関しては、わたしもちゃんと観に行って判断してみようと思う。

 いやしかし、まさか三谷作品で、公開週末3億円を下回るとは、まったく思ってもみなかった。そういう時代なのかなあ……実際、わたしもテレビはWOWOW以外ほとんど見てないしな……朝の情報番組も、CX「めざまし」から日テレに浮気しちゃったしなあ……これは、三谷監督のブランド力低下もあるだろうが、それよりも、ひょっとしたら、フジテレビのメディア力が決定的に低下していると認識すべきなのではないかという気がしてきた。恐らくは、ここ数年での社会的な変化として、TVのメディア力の低下ははなはだしいものがあるとわたしは思っている。TVドラマからの映画化が、ここ数年明らかにパワーを失っている理由も、やはりそこに原因があるとわたしは考えているが、そういう事なのだろうか……。あとは、キャストなのかな? SMAP力の低下もあるのかな? いや、あれだけのオールスター作品で、主役一人に責任をかぶせるのは気の毒というかあり得ないだろう。キャストはあまり関係ないと思いたい。公開時期も、いつもの三谷作品と変わらないし、これは内容的にキャッチ―過ぎて、保守的なシニア層を取り込めていないという事なのかなあ……。それとも、わたしは全然チェックしてないけれど、また『進撃』のように、ひどいレビューがいっぱい投稿されているんだろうか……?

 とりあえず、公開週末2.7億規模だと、過去にどんな作品があるか探してみると、
『寄生獣・完結編』→公開週末2.7億→今年の映画なので最終興収は未発表だが、20億には全然届いていないはず。16~17億ぐらいかな? もうちょっと行ったのかな?
『陽だまりの彼女』→公開週末2.72億→最終17.9億。
『謝罪の王様』→公開週末2.67億→最終21.8億。
 とまあこんなあたりだろうか。こうしてみると、仮に超・後伸びしたとしても、25億も厳しい情勢だと言わざるを得まい。公開スクリーン数的には、『寄生獣』が一番近く、433Scrである。『陽だまり』『謝罪』はともに300チョイだったことを考えても、非常に厳しい状況であろう。しばらく『ギャラクシー街道』の動向を追って行くことにする。

 で。ずっと状況を追ってきた『バクマン。』と『図書館戦争THE LAST MISSION』がどうなったか数字だけ備忘録として書いておこう。
『バクマン。』→公開週末2.5億でスタート→4週目週末も1億台キープしたらしく(!これは結構すごいこと)、累計12.7億まできたらしい。わたしの予想よりもかなりいい伸び&落ちが少ない。ここから15億を超えるかどうか。わたしの予想よりは上を行きそうな気配。
『図書館戦争TLM』→公開週末2.46億スタート→3週目週末1.29億で累計11.7億ほど。前作よりちょっといいペースを維持。順調、ではあるが、ある意味予想通り。本当はもうチョイ上を期待したかった。20億はやっぱりちょっと難しいかな……。
 というような状況のようだ。(※11/3追記:翌週データはこちら)

 というわけで、結論。
 現状、『ギャラクシー街道』はわたしの根拠LESS予測をかなり下回るスタートで、厳しい状況と言わざるを得ない。三谷監督には、これからも「オリジナル」で面白い作品を作っていってほしいので、応援のためにも私も観に行きたいと思う。このままでは、本当に次回作に影響してしまうよ……。

↓ なにも関連商品の勧めが浮かばない。『ギャラクシー』は本もないからな……。
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 というわけで、今日は昨日から公開になった映画『バクマン。』を観てきた。おそらくは、漫画を読むことが好きな人ならば、タイトルぐらいは聞いたことがあるだろうと思う。天下の「週刊少年ジャンプ」に2008年から2012年にかけて連載された漫画で、わたしも単行本をすべて持っている。どうして今、実写映画化されたのか明確な理由は分からないが、映画化の発表があってから、公開を楽しみにしていた人も多いのではなかろうか。

 監督は、『モテキ』で名を成した大根仁。実のところ、わたしは『モテキ』を観ていないので、この監督の作品を見るのは初めてだ。演出に関する感想としては、とりわけ特筆すべき点はなかった。漫画製作時のプロジェクションマッピングを使用した、描いているそばから絵が浮かび上がってくる演出や、ペンを持ったキャラクターが殺陣さながらに縦横無尽に立ち回るシーンの演出などを見所のひとつとして挙げているレビューが多いようだが、わたしにはふーんの一言しかない。なんとなく、わたしには熱が伝わらず、なんだか軽く見えてしまった。たぶん、手書きの原稿の熱をCGで表現されてもな……とわたしは思ってしまったのだと思う。漫画の生原稿を見たことのある人なら誰もが息をのむ、あの圧倒的な迫力を感じさせてほしかった。
 そしてキャストである。まず、主役の二人だが、この物語は、二人の10代の少年が、それぞれ作画と原作を担当し、ひとつの漫画を仕上げるという作品で、作画担当のサイコー(真城最高:ましろ もりたか)というキャラクターを佐藤 健が演じ、ストーリー担当のシュージン(高木秋人:たかぎ あきと)というキャラクターを神木隆之介がそれぞれ演じている。この二人、キャストが発表になったときは、役が逆じゃね? ということでも話題になった。サイコーが神木くん、シュージンが佐藤くんのほうが合ってるのでは? という声がWebを中心に持ち上がった。わたしも実はその声には賛成していて、うーん、キャラクター的に逆だろ……と思っていた。が、今日、映画を観て、まったく考えを改めた。サイコーが佐藤くん、シュージンが神木くんでまったく問題なし、というか、むしろこれで正解だよ、と思った。元々のコミックでは、サイコーは比較的静かで職人的、逆にシュージンは良くしゃべるし茶髪だし、見た目だけでいえばちょっとチャラい感じ、であるので、それまでのイメージから逆じゃないかと思っていたが、今回の佐藤=サイコー、神木=シュージンはまったく違和感がない。二人とも非常に巧く演じており、素晴らしい。が、大変申し訳ないのだが、まったく高校生に見えない。佐藤くん26歳(電王の良太郎がもうそんな歳に!)、神木くん22歳なので、どうしても制服姿などはコスプレにしか見えないのが残念。これはもう、どうしようもなかろう。
 また、主人公のライバルとなる新妻エイジを染谷将太が演じている。雰囲気というか、ビジュアルイメージは非常に原作コミックに似せて来ており、その点では評価したいが、性格がやや違うように思う。原作では、ライバルながらも主人公たちとは友好的で、いい意味での切磋琢磨する間柄だが、映画では、そういう面よりも単にエキセントリックな、嫌な奴っぽさが目立ち、その点では残念。ストーリー上でも、その天才ぶりや主人公たちが闘志を燃やすような、孤高の強さのようなものは皆無。単に天才と言われているだけで、その凄さがまったく描かれていない。まあ、ストーリー上の問題点はあとでまとめて書くことにしよう。
 ほか、主人公たちの仲間の3人の漫画家も、ビジュアルイメージはコミックに忠実だし、性格付けもコミックに準じている。今回の映画ではこの3人組が非常に良かった。とりわけ、新井浩文が演じる、作中で「ラッコ11号」という漫画を描く平丸というキャラは非常に原作通りの雰囲気で良かった。

 以上が演出やキャストについてだが、肝心の物語はどうなのか。この作品は、ジャンプコミックスで全20巻。それなりの長さがある。それを果たしてどう2時間にまとめるか。今回のわたしの最大の興味はその点にあった。結論から言えば、この映画では作画担当のサイコーが病気で倒れ、せっかく巻頭カラーを描くチャンスをフイにしてしまいそうになるところを、一番の山場としている。原作での6巻かな。ただ、そこまでの道のりが全然原作と違う。どうしても仕方ないとは思うが、やっぱりかなり駆け足である。この駆け足展開の犠牲になっているのが、原作では結構いろいろな場面で重要な役割を果たす、見吉という女子キャラだ。彼女は原作では、シュージンの恋人で後に奥さんになる女子だが、彼女はこの映画には登場しない。また、原作では主人公二人のペンネームとなる「亜城木夢叶」も出てこない。こうした原作改変は、あまり物語には影響しないように脚本が書かれているので、わたしとしては十分容認できる範囲内だが、改めて原作をぱらぱら読んでみると、ヒロイン亜豆との関係性を考えると、見吉がいないことによってこの映画は物語的にかなりうすっぺならものになってしまったように思う。
 というのも、どうしてもうーーん、と思ってしまったのは、サイコーの恋人、亜豆美保の描かれ方だ。特に、サイコーが倒れたときの亜豆の言動がまったく違う。原作では、倒れても漫画を描こうとするサイコーを止めに来たはずだし、そこでのやり取りで、サイコーと亜豆の関係はもっと深まる、ちょっと意味のあるシーンだったはずだ。なにしろ、夢を叶えるまでは会わないとまで約束していたのに、その約束を破ってまでも止めに来たのだ。とても重要なエピソードなのだが、映画では違う。演じた小松菜奈という女優は、ビジュアル的に非常に可愛いし原作の亜豆とも似ているのだが、サイコーとの恋模様があまり描かれていないので、キャラクター的に極めて軽く、浮いている。そもそもサイコーがどうして亜豆が好きなのかという理由も描かれていないし、亜豆がどうしてサイコーが好きなのかという理由も描かれていない。この点は、わたしが思うに『バクマン。』という元のコミックでは非常に重要な要素のはずなのだが、ここがばっさりカットされている。結果的に、見吉も不要になってしまったと見られる。恋愛を描くには見吉は決して外せないキャラクターだが、そこがまるまる省略されているのだ。そのためにどうにも薄っぺらな印象が拭いきれないと思った。また、恋愛要素以外にも、主人公コンビと編集者との関係、編集者同士の関係など、編集部視点のエピソードがばっさり省かれている。その点も、物語を薄っぺらにしている要因だ。原作ではそこも極めて重要なんだけどな……。

 結局、映画は、ジャンプという日本最強のコミック誌への連載を勝ち取る若者二人の物語、というやや味気ないものになってしまっていると思う。なんというか、「ジャンプ」のPVのようなものになってしまった。しかも、主人公二人もある意味での天才なので、ジャンプのモットーである友情・努力・勝利のうち、努力の部分がやや軽い。時間経過がわかりにくいのも、あっさり感を増してしまっている。着ている服の季節感も、メリハリが薄い。原作ではもっと努力のシーンが多いし、時間経過もかなりあるのだが……。原作を読んでいない人に、果たしてこの映画は物語の面白さを伝えることができたのか、かなり怪しいような気がする。

 というわけで、結論。
 正直イマイチ。演出や芝居に文句はあまりないが、やはり脚本だろうと思う。
 この映画は、原作を知らない人が観て、面白いのかどうか、さっぱり分からない。むしろ知らないほうが楽しめるのかな……この映画、最初の週末でどれくらいの興収を得られるのか楽しみだ。わたしの想像では……2億チョイ、3億は行かないのでは、と思う。わたしが見た回は、まったくガラガラだったことを考えると、下手すると1億台もありえるかも。いや、さすがにそれはないか。最終15億は厳しいかなという気がするが、果たして『モテキ』の22.2億を超えられるか。月曜日の興行通信社の発表を待ちたい。

 ↓ 原作はとても面白いです。コンテンツ業界人なら必読かと。「会社と作家が対立したとき、作家の側に付くのが編集者だ!」は名言。


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