タグ:ハリ・セルダン

 はーーー暑い……そして湿気が不快だ……やっぱり寒い方がわたしは耐えられるのは間違いなかろう。夏はなんというか……酸素が足りないというか……すべての体機能が低下しているような気がする……。
 というわけで、昨日に引き続き、Isaac Asimov先生の『FOUNDATION』シリーズ最初の三部作、の3作目『SECOND FOUNDATION』について今日は書こうと思う。

 まずは、昨日も書いたおさらいをコピペしておくか。手抜きサーセン。
 今から数万年後の遠い未来、「帝国」が1万2千年の長きにわたって広大な銀河を統治していた。が、その長大な歴史は停滞をもたらし、崩壊が迫っていることを一人の男が警告を発する。その男の名は【ハリ・セルダン】。そしてセルダンは、人類の英知たる知識を保管・管理するために、【銀河百科事典第1財団】=【第1ファウンデーション】を、帝国の首都星【トランター】から遠く離れた辺境の星【ターミナス】に築き上げることに成功する(※第1巻時点ではほぼ謎に包まれているが、「セルダンは、銀河の反対側に第2ファウンデーションを設置した」ことも知られている)。その目的は、何もしないと、帝国滅亡後、人類は3万年にわたって無政府状態の闇に陥ることになるが、その3万年の闇を、1千年に縮めるために、ファウンデーションを設立したわけである。セルダンの主張はセルダンが編み出した【心理歴史学】という、統計科学を用いた複雑な方程式によって数学的に導かれたもので、第1巻は、そこから300年にぐらいの間に起きた、3回の重大な【セルダン危機】=ファウンデーションに降りかかる重大なピンチ、を描いたものである。
 そして続く第2巻では、冒頭に銀河帝国の滅亡に繋がる事件と最後の皇帝について描かれ、その後、【セルダン・プラン】の唯一の弱点である「イレギュラー」、【ザ・ミュール】と呼ばれるミュータントの出現により、セルダンの予言は初めて外れ、とうとうファウンデーションはミュールに占領・征服されてしまう。そしてミュールに唯一対抗することができる可能性として、第2ファウンデーションの謎を解くために人々は行動するが、その謎が解かれる寸前で、大事件が起きて―――というエンディングであった。
 で。本書、第3作目にあたる『SECOND FOUNDATION』は、冒頭のプロローグにおいて、Asimov先生直々に、次のように物語が紹介されている。
 「こうして謎の第2ファウンデーションが、みんなの探し求めるゴールとして残った。ミュールは銀河系征服を完遂するために、それを発見しなければならなかった。第1ファウンデーションの生き残りの忠誠心のある者たちは、まさに正反対の理由でそれを発見しなければならなかった。だが、いったいどこにあるのか? それは誰も知らなかった。というわけで、これは第2ファウンデーション探索の物語である」

 <第1部:ミュールによる探索>
 この第1部で描かれるのは、そのタイトル通りミュールによる【第2ファウンデーション】探索の物語である。第2巻のラストから5年後、第2巻で出てきた【ハン・プリッチャー】がミュールによって探索の命を与えられ、新キャラの【ベイル・チャニス】を引き連れて旅立つのだが、その宇宙船には追跡機が付けられており、ブリッチャーは疑心暗鬼の中で混乱する中、ついにミュールと第2ファウンデーションは対面する―――! という展開になる。そして第2ファウンデーションが告げた、ミュールに対する宣言とは! というのがお話の筋で、構成として特徴的なのは、短い章が次々連なる中で、第2ファウンデーションでの【第1発言者】たちの会議の模様?が交互に挿入されている点である。ラストでこのミュール側の話と第2ファウンデーション側の話が交わる形になっていて、ラストは、えええ―――!! という驚きの展開でした。
 主な登場人物と地名をまとめておこう。
 【カルガン】:ミュールの本拠星
 【タセンダ】:チャニスが怪しい、と目を付けた星系
 【ロッセム】:タゼンダに属する冬の惑星。1年のうち9カ月雪が降っており、かつては監獄星でもあった。
 【ミュール】:ミュータントであり、人間の感情をコントロールすることができる特殊な能力を持っている。そのため、ミュールによる征服は、一切戦闘が起きない。ミュールに反抗する心(だけ)を消されてしまうため、本人的には何も変わっていないように思えるけれど、ミュールに反抗できない状態になる。現在ミュールは、銀河系の1/10を支配して【世界連邦】を築き、その【第1市民】と名乗っている。痩せこけていて手足は棒のようで、5フィート8インチ(=172.7cm)、120ポンド(54.43㎏)に満たず、鼻が3インチ突き出ているそうで、まあ、異形、と描写されている。つーかですね、身長と体重はわたしとほぼ同じなんですけど! ちょっと笑えました。
 【ハン・プリッチャー】:第2巻にも出てきた、元ファウンデーション国防軍の諜報部員。現在は、ミュールに【転向】させられ、ミュールの第一の側近的な存在に。役職的には将軍に任ぜられている。真面目だけど、結構気の毒な人。ミュールの敵だったころのことを明確に覚えている。
 【ベイル・チャニス】:カルガン出身。ハンサムで頭が良い、28歳の若い男。【非転向者】であるが、ミュールの統治に不満はない模様。ミュールは、チャニスのコントロールされていない生の野心を第2ファウンデーション探索に必要なものと見込んで(※ミュールは、何者かが転向者に対して精神コントロールをしようとしていることを知っており、プリッチャーを100%信頼できずにいたため、非転向者が必要だった、ということらしい)、プリッチャーに同行させる。しかし、ミュールがチャニスを起用した真意は別のところにあり、さらにチャニスにも秘密があり、そして事態はミュールやチャニスの意図さえも超えて―――というラストの展開は大興奮でありました。
 【第1発言者】:謎の第2ファウンデーションの幹部的存在(?)。行政評議会の構成員。彼らの会議は、独特のもので、談話(声)をもって行うのではないらしい。Asimov先生の地の文の解説によると「ここに集合している人々の精神は、おたがいの働きを完全に理解する」そうで、説明不能だそうです。
 【ナロビ】:ロッセムの農夫。その上に【長老】がいて、さらにその上に【タゼンダ】から派遣されたロッサムを治める【総督】がいる。彼らはみなほぼチョイ役。

 <第2部:ファウンデーションによる探索>
 この第2部は、第1部から1世代分時間が経過している。すでに、第1部ラストでミュールは第2ファウンデーションに完全敗北し、ミュールの創り上げた世界連邦もほぼ崩壊している。そんな世界で、【トラン・ダレル】博士を中心とするファウンデーションの小グループは、「電子脳写」という技術で人の精神や感情がどうも「何者」かに操られている、人工的な精神状態にある、ということを発見し、これは【第2ファウンデーション】によるコントロールなのではないか、という結論に至る。そしてその謎を解くために、かつてミュールが本拠地としていた【カルガン】でミュールの記録を調査するために、仲間の一人をカルガンへ送り込む。しかしその船には、ダレル博士の一人娘、アーカディアもこっそり乗船していた――――という展開で、さらにカルガンを現在治める【ステッティン】という男や、ちょっとした戦争まで勃発し、果たしてダレル博士は第2ファウンデーションの謎を解けるのか、そしてアーカディアは無事に父の元へ帰れるのか、という活劇タッチで物語は描かれる。なお、ラストでとうとう、第2ファウンデーションの謎は完全に明らかになります。ちょっと意外な、そうきたか、というものでわたしは大変楽しめました。
 主な人物は以下の通り。
 【トラン・ダレル】:42歳。第2巻第2部の主人公、ベイタの息子。科学者。妻は死別。ターミナス在住。結果的に第2ファウンデーションのすべてを解き明かすことに成功する。
 【アーカディア・ダレル】:14歳。ベイタの孫娘。家にこっそり盗聴器を仕掛けて、父たちの計画を盗み聞きし、第2ファウンデーション捜索のためにカルガンへ向かう宇宙船に密航。結果的にはすごい大発見をして大活躍する。主人公の一人と言って過言ではない。
 【ポリ】:ダレル家に仕える家政婦のおばちゃん。
 【ベレアス・アンソーア】:若き科学者。トランのかつての共同研究者の最後の弟子として、トランのグループに参加してくるが、その正体は―――!! というラストがかなり驚きの展開。
 【ホマー・マン】:トランのグループのメンバー。図書館司書のおじいちゃん。すごい気弱でどもり癖もあるのに、ミュール研究の第一人者だったため、カルガン調査にはあなたが適任だ、と任命され、しぶしぶ1人で行くことに。そしてアーカディアが密航していることに気づいて大混乱するも、現地では意外と活躍する。
 【ジョウル・ターパー】:トランのグループのメンバー。報道記者。ほぼ役割ナシ。
 【エヴェレット・セミック】:トランのグループのメンバー。物理学教授。ほぼ役割ナシ。
 【第1発言者】:第1部に出てきた第1発言者の後継者で、同一人物ではない。この第2部も、第2ファウンデーション側の会話が交互に現れる構成になっている。
 【若者】:第1発言者の会話相手。評議会入りを控えた有能な若者らしい(?)。わたしはコイツこそが実はアンソーアなのかと思っていたのだが、どうも違うみたい。
 【ステッティン】:ミュール亡き後のカルガンを治める君主。ただしまだ在位5カ月の新米。完全にセルダン・プランは崩壊したと思っていて、第2ファウンデーションのことも信じていないのか、どうでもいいと思っているのか、良くわからないけど自分がミュールに代わって銀河を征服する、とかアホな野望を抱いている。ほぼ何も活躍せず、無駄にファウンデーションに戦争を吹っ掛け、あっさり敗退。
 【カリア】:ステッティンの正妻。カルガンにやってきたアーカディアを保護する。しかしその正体は―――! という意外な展開になるけれど、実際物語上の役割はそれほど大きくない。アーカディアに余裕で見抜かれるし。
 【プリーム・パルヴァー】:荒廃したトランターで農業を営む男。たまたま仕事でカルガンに来ていたが、アーカディアのカルガン脱出を手伝い、トランターの自宅へ彼女をかくまう。しかし、本作の一番最後の文章で、彼こそが実は―――!! という超驚きの正体暴露があって、売っそ、マジかよ!! とわたしは非常にびっくりした。

 はーーー。なんかまとまらない。要するにこの第3巻は、まず前半でミュールのその後が描かれ、後半ではとうとう第2ファウンデーションの謎が解かれ、というわけで、大変スッキリする完結編、と言っていいと思う。ただ、ホントに読みづらい、という印象は最後まで薄れなかったのが我ながら良くわからない。これは……翻訳の日本語文章の問題ではないと思うのだが……やっぱり、時間軸が長くて場面転換も多くて、キャラクターも多い、ってことなんだろうか。しかし、ふと思ったけれど、やっぱり『スター・ウォーズ』の元祖、みたいなことを言われるだけあって、確かに展開やキャラ造形は『スター・ウォーズ』を思わせる要素はいっぱいあるような気がしますな。基本的には、一人の主人公が、難問に対して頭脳で勝負する展開が多く、ほとんどの場合、主人公自身は戦わない。あくまで背景として戦争があるため、戦闘描写はほぼないという点も非常に独特ですな。大変面白かったです。
 わたしが非常に痛感したのは、
 1)超人、という個人に頼る体制はやっぱり永続しえない
 2)超人のスーパーパワーより組織の方が強い。
 ということです。そして第2ファウンデーションはなんというか、「ブギーポップ」シリーズでお馴染みの「統和機構」みたいすね。
 ちょっと関係ないけれど、わたしはいつも思うのだが、たとえば北の三代目将軍様は、ある日突然イイ奴になるかもしれないし、あるいはあの世に消え去るかもしれず、そうなったらあの国はガラッと変わり得る、けど、彼を支援してきた強大なGNP2位のあの国は、完全に組織として強固で、はっきり言えば誰がTOPになっても大きく変わることはなく、常に同じなんだろうな、ということも、なんとなく本作を読んで思い出しました。

 というわけで、もういい加減にして結論。
 時間がかかってしまったが、やっとSFの名作と呼ばれる『FOUDATION』三部作をずべて読み終わった。非常に長大な物語で、その規模は第1巻の冒頭から第3巻のエンディングまでは400年ぐらい経ってるのかな? 非常に読みごたえのある作品でありました。様々なSF宇宙モノの元祖、みたいなことを言われる古典作品だが、これはやっぱり読んどいてよかったわ。というのがわたしの最終結論です。以上。

↓ 次は、とうとうコイツを読みます! ずっと日本語訳を待ち望んでいたぜ! 昨日やっと電子書籍で買いました。昨日はコインバックフェアがあったので。
ダークタワー IV‐1/2 鍵穴を吹き抜ける風 (角川文庫)
スティーヴン・キング
KADOKAWA / 角川書店
2017-06-17


 はーーーやっと読み終わった……。そして面白かった!
 6月の末に、わたしはIsaac Asimov先生のSF古典ともいうべき作品、『FOUNDATION』を読んだのだが、これがめっぽう面白く、(最初の)3部作はもう全部読むしかねえ、と続く2巻目3巻目をせっせと読んでいたのだが、今日の朝の電車内でやっと全部読み終わった。超満足です。
 で、2冊まとめてレビューしようと思ったけれど、分量的にかなり長くなるような気がするので、やっぱり1冊ずつ取り上げることにした。
 ちなみに、わたしは電子書籍で読んだのだが、わたしの読んだフォーマットは46文字×24行で、2巻は276ページある。それをわたしは333分かかって読んだと記録が残ってました。3巻目は同じフォーマットで277ページで、362分だったようです。そう、読むスピード自体はそれほど遅くないんだけど、途中で別の本を読んだりしてたので、結構時間がかかっちゃったな……。
 まあというわけで、まずは2巻目を今日、そして3巻目は明日、書こうと思う。そしてその第2巻はこちらの『FOUNDATION and EMPIRE』(日本語タイトル「銀河帝国興亡史(2) ファウンデーション対帝国」)であります。

 すでに基本的な世界観は、1巻目を書いた時に散々書いたので、もう短くまとめるが、今から数万年後の遠い未来、「帝国」が1万2千年の長きにわたって広大な銀河を統治していた。が、その長大な歴史は停滞をもたらし、崩壊が迫っていることを一人の男が警告を発する。その男の名は【ハリ・セルダン】。そしてセルダンは、人類の英知たる知識を保管・管理するために、【銀河百科事典第1財団】=【第1ファウンデーション】を、帝国の首都星【トランター】から遠く離れた辺境の星【ターミナス】に築き上げることに成功する(※第1巻時点ではほぼ謎に包まれているが、「セルダンは、銀河の反対側に第2ファウンデーションを設置した」ことも知られている)。その目的は、何もしないと、帝国滅亡後、人類は3万年にわたって無政府状態の闇に陥ることになるが、その3万年の闇を、1千年に縮めること、であり、そのためにファウンデーションを設立したわけである。セルダンの主張はセルダンが編み出した【心理歴史学】という、統計科学を用いた複雑な方程式によって数学的に導かれたもので、第1巻は、そこから300年にぐらいの間に起きた、3回の重大な【セルダン危機】=ファウンデーションに降りかかる重大なピンチ、を描いたものである。そしてラストでは、いよいよ帝国の滅亡間近、までが描かれていた。
 そして第2巻である。
 第1巻が5つの章からなり、それぞれの章の間には結構な時間経過があって、登場人物も移り変わっていくのが形式的な特徴であったが、今回の第2巻は、大きく分けて二つの章で構成されているという微妙な違いがあった。それでは、それぞれの章を簡単にまとめていくとしよう。
 <第1部:将軍>
 この第1部で描かれるのは、【帝国サイド】からの物語である。とある帝国の将軍が、「魔法使い」の噂を耳にし、【ファウンデーション】の存在を知り、帝国臣民としてファウンデーションの技術を奪うために長征を仕掛けてくるが、展開としてはファウンデーションVS帝国の戦争が勃発し、帝国有利で進むものの、最終的には帝国内の意志が統一されていない・つまらん勢力争い(?)といった状況を利用され、帝国はある意味勝手に破れ、1万2千年の歴史に幕が閉じられる、ということになる。これまたセルダンの計算通り!的な流れですな。
 主要人物は以下の通り。
 【ベル・リオーズ】:帝国の軍人(将軍・34歳)で、「帝国最後の臣民」と後に呼ばれることになる、なかなか頭のいい男。ドゥーセム・バーから聞いた「魔法使い」の話を確かめるために最初は単独遠征、そしてのちにVSファウンデーションの戦火を開くことに。実際のところ、全然悪者ではなく、むしろ、帝国に忠誠心の篤い真面目な男。可哀想な運命に……。
 【ドゥーセム・バー】:隠棲していた彼のもとにリオーズがやってくるところから物語が始まる。彼は第1巻ラストで、【ホバー・マロウ】と取引した【オナム・バー】が言っていた「6番目の息子」のことらしい。なお、どうやら時の経過としては、第1巻のラストから40年(か50年)が経っている模様。そしてカギとなる個人用フォース・フィールド発生機も、第1巻ラストでマロウが取引に使ったアレ、が50年を経て重要な役割を果たす。
 【クレオン2世】:帝国最後の皇帝。まったくファウンデーションのことを知らず、現状を分かっていないおじいちゃん。実際無能。
【ブロドリック】:クレオン2世の一番の寵臣。若き野心家。下賤の生まれのくせに可愛がられていて、と宮廷内で憎まれている。リオーズの遠征に皇帝名代として同行。しかしその野心をファウンデーション側に利用されてしまい……
 【ラサン・デヴァーズ】ファウンデーションの貿易商人。リオーズの艦隊に捕らえられ、ドゥーセムと出会い、かつて50年前にマロウと取引したオナム・バーの息子であることを知って、ドゥーセムが帝国に対して抱く憎悪を利用して、帝国打倒に協力する。そして、リオーズとブロドリックの関係に注目し、工作を始めるのだが……実質的にファウンデーションを救う一番の功労者になる。
 【セネット・フォレル】ファウンデーションの貿易商人。チョイ役と思いきや、どうやらデヴァーズを派遣した商人協会のお偉いさん、なのかな? 実は良くわかりませんでした。
 【モリ・ルーク軍曹】帝国の軍人。リオーズの忠実な部下だが、デヴァーズの看守として見張っている間に、デヴァーズからちょっとしたモノをもらったり話を聞いているうちに……

 <第2部:ザ・ミュール>
 どうやら帝国滅亡から80年が経過している時代が舞台。とうとう帝国は滅亡し、自由世界が広がる、かと思いきや、ついに【セルダン・プラン】に予定されていない突発事件が起こり、「プラン」崩壊の危機に陥るという超ヤバイお話。その、セルダンをもってして予期できなかったイレギュラー、それが【ザ・ミュール】と呼ばれる一人のミュータント(=超能力者みたいなもの)で、セルダンの「心理歴史学」が、あくまで総体としての人類の行方を計算したものであり、個人の動向を予知できない、という唯一の弱点を突いて、ファウンデーションは史上最大のピンチを迎える―――!!! というのがお話の筋。
 主な登場人物と地名は以下の通り。
 【ヘイヴン】:辺境の洞窟惑星
 【ターミナス】:第1ファウンデーションの母星
 【トランター】:旧帝国の首都星
 【カルガン】:保養地として有名な、リゾート惑星。ファウンデーション陣営の星だが、ミュールに(たった一つの戦闘もなく)征服され、ベイタとトランは新婚旅行を装って潜入する。
 【ベイタ】:ホバー・マロウの子孫で活動的な女子。24歳。歴史学専攻。ファウンデーション(ターミナス)出身。今回の主人公。セルダン危機が迫っていると考えている。なかなか賢く勇敢な女子。
 【トラン】:ベイタの夫。ヘイヴン出身。
 【フラン】:トランの父。59歳。貿易商人。事故により隻腕。ヘイヴンの商人の顔役的な存在。ファウンデーションのヘイヴン侵攻に不安を抱えているが、ここ1,2年、銀河に流れているミュールの噂に、ファウンデーションにミュールをぶつけることで有利な交渉ができるのでは、と考えている。
 【ランデュ】:トランの叔父。父の弟。
 【ハン・プリッチャー】:登場時は大尉。43歳。アナクレオン出身。ファウンデーション国防軍の秘密諜報員。非常に有能で「私の義務は国家に対するものであり上司に対するものではない」と言い切って無能な上司をぶん殴って軍を辞め、カルガンで小船員として働いていたが、ミュールの到来でカルガンが征服されたことをいち早くファウンデーションに報告した男。ベイタとトランの二人にカルガンで出会い、二人の脱出に手を貸す。が……のちにミュールに心理操作され、ミュール軍の大佐に(※第3巻では将軍として登場)。
 【インドバー市長】:現在のインドバーは三代目。初代インドバーは残忍かつ有能な市長で、市長職を世襲にした。2代目インドバーは残忍なだけの世襲市長。現在の三代目は残忍でも有能でもなく、生まれる場所を間違えた簿記係に過ぎない、と言われている。組織とお役所仕事が大好きな無能。
 【マグニフィコ】:ミュールに仕えていたという道化師。なんかちょっと良く分からない謎人物で、手足がひょろ長くその容貌も異様。そして唯一、ミュールの姿を見たことのある人間として彼の争奪戦が起こる。ベイタに懐き、ベイタにつき従うが、その正体はーーー多分誰でも、結構早い段階で正体に気付けると思う。わたしも想像した通りでラストはそれほど驚かなかった(※ただし、ラストのベイタの決断には超驚いた)。
 【エプリング・ミス】:第1ファウンデーションで唯一、事態を正確に洞察していた科学者。インドバー(三代目)市長にもずけずけモノが言える人物。ミュールの支配がファウンデーションを覆った後半、ベイタ・トラン・マグニフィコとともにターミナスを脱出し、ヘイヴンで一時避難したのちに、トランターへ。帝国の残骸と化した荒廃したトランターで、ミュールに唯一対抗できるのではないかと推測した【第2ファウンデーション】の謎をついに解明するが、その時、大変なことが起きる――!

 はーーもうきりがないのでこの辺にしておこうかな。とにかく、この第2巻での山場は間違いなく第2部の【ザ・ミュール】にあるといっていいだろう。一体全体、何者なのか。これがこの第2巻の最大の謎であろう。また、ターミナスがミュールによって占領、陥落する直前に出現したセルダンのホログラムも、これまですべて正確な予知のもとに、状況に合う「セルダン危機」に対する話をしていたのに、今回は全く予測がずれてしまったシーンも非常に印象深い。
 かくして、第2巻はミュールによるファウンデーション陥落と、ミュールの天敵、と思われる【第2ファウンデーション】の謎が示されて終わる。実に次が気になる終わり方で、果たして銀河はミュールによって支配されてしまうのか、それとも、ついに【第2ファウンデーション】が姿を現すのか、というドキドキな、2作目にふさわしいエンディングだとわたしは非常に感動?さえした。三部作モノはいっぱいあるけれど、これ以上ない「第2作目」のエンディングだと思うな。例えていうと、やっぱり、『帝国の逆襲』のエンディングに近いような気さえしますね。いやー、本当に面白かった!

 というわけで、結論。
 Isaac Asimov先生による『ファウンデーション』シリーズ第2巻、『FOUNDATION and EMPIRE』を読み終わったとき、わたしが真っ先に思ったのは、「2作目のエンディングとして完璧」という思いであった。本作はかなり時間軸も長いし、若干の冗長さもあるような気がするし、キャラクターも多いので、実は結構読みづらいかも、という気はする。しかし、ついに予言が外れた「セルダンプラン」と謎の「第2ファウンデーション」の存在をほのめかすエンディングは完璧であり、読み終えた瞬間に第3作目を読みだしたくなることは間違いないと思う。これは面白い! というわけで、明日は第3作目について書きます。以上。

↓ いやーーー実は第3作目も最高でした。詳しくは明日!

 もうだいぶ前の話で、たぶん去年の暮れの頃だったと思うが、本屋さんの店頭で、とある漫画のお試し版を読んで、へえ、これは面白いかも、と思った作品がある。書店店頭では、プロモーション動画を小さい液晶パネルで流していて、それを見て、へえ~?と思った作品なのだが、さっきちょっと探してみたら思いっきりその動画がYou Tubeにアップされていたので、まずはその動画を貼っておこう。

 そうです。かの有名なSF界のレジェンド、Isaac Asimov先生による『FOUNDATION』の完全漫画化、であるらしいことを知って、わたしは結構驚いた。どうやら(3)巻の発売が去年の12月だったんだな。なるほど。まあ、とにかく、それじゃあ買って読んでみるか、と思ったものの、すっかり電子書籍野郎に変身しているわたしは、とりあえずその場ですぐ買うことはせず、まずは電子書籍で買えるのかしら? ということを調べてみた。のだが、結論から言うと電子化されていないようだったので、ま、電子化されたら買うか……という忘却の彼方に消えてしまっていたのである。そもそも、版元はよくわからん小さな出版社のようで、連載媒体は持っていないみたいなので、まあ描き下ろし単行本ということなんだろう。出版社というより編プロ的なのかな。よくわからん。
 というわけで、わたしは全くこの作品のことを忘れていたのだが、つい先日、わたしの愛用する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて、還元率の高いフェアがあった時になんかおもしろそうなのはねえかな~、と、大好きな早川書房の作品をあさっている時に、原作小説であるAsimov先生の『FOUNDATION』が売っているのを見かけ、よし、じゃあまず、原作小説を読もう!と買ってみたのである。ええ、実はわたし、原作未読なもので……。てなわけで、さっそく読みはじめた。

 結論から言うと、やっぱり面白い! のは間違いないのだが、キャラクターは多いし時間軸としても非常に長い期間のお話なので、こりゃあちょっと、最初からちゃんとキャラとか物語をメモっとかないと、後で訳が分からなくなるかもな……と思ったのである。
 というわけで、もはやわたしのBlog恒例のキャラ紹介というか、ざっと筋をまとめておこうと思います。まず、わたしが買ったのは最初の三部作、のようで、今日取り上げるのは一番最初の(1)巻である。そしてその(1)巻は、全5章で構成されていて、それぞれ前の章の30年後、とか、かなり時間が経過して登場キャラクターも入れ替わっていく、けど、肝心のキーキャラはそれぞれの時代で伝説的に語られる、みたいなつながりがあって、まさしく年代記的なお話でありました。なので、各章ごとにちょっとまとめてみるか。
 【本編の説明の前に、時代背景について】
 本作で語られる物語は、どうやら遠い未来のお話のようで、銀河は巨大な帝国が統べている。膨大な数の人類が銀河の隅々まで広がって生きているらしい。そして、もはや「人類の起源」がどの惑星であったか、すらもう忘れ去られていて、中にはウチが人類の起源たる聖なる惑星じゃ、と言い張っている星もあるみたい。ちなみに、銀河帝国は1万2千年続いているらしく、総人口はゼロが18個、だそうで、1京、ってことかな? 1万兆かな? もう良くわからんぐらい多いってことですな。
 【第1部:心理歴史学者】
 この第1部で語られるのは、本作の最大の(?)ポイントである「心理歴史学」についてである。それは、人間集団の行動を、一定の社会的・経済的刺激に対してどう反応するか、について心理学的(?)に究明することで、未来を予測する(=計算する)ことを可能にした統計科学の学問で、まあちょっと説明が難しいのだが、特徴的なのは、「個々人の動き」や未来は予測不可能なんだけれど、その総体である「人類」の進む(であろう)道は計算できる、という点がポイントだ。
 で、この第1部では、「心理歴史学」の開祖である【ハリ・セルダン】というおじいちゃんが銀河帝国の首都星である【トランター】という星にいて、その助手として就職が決まった【ガール・ドーニック】という若者がトランターにやってくるところから始まる。しかし、セルダン博士は、その心理的歴史学によって、銀河帝国の滅亡を予言していて、公安委員会ににらまれており、セルダン博士も、そしてドーニック君も到着して数日後には逮捕されてしまう。ちなみに逮捕されることも全てセルダン博士の計算通りで、実はセルダン博士は、とあるプロジェクトを18年かけて計画し、とうとう実行の時が来た、という話になる。そして尋問に掛けられるのだが、そこでのセルダン博士の話が非常に面白い。曰く、人々の心理歴史学的な流れは、極めて強力な慣性をもっているそうで、それを止めるのは膨大なエネルギーが必要になる(=要するに止められない)、銀河帝国の衰退と滅亡は確実、だが、その後の無政府状態に陥る期間は、3万年続くはずで、その3万年ののちに「第2銀河帝国」が勃興するであろう。しかし、自分のプロジェクトを実行するならば、その3万年の闇を1000年まで短縮することが可能になる。突進してくる巨大な出来事の塊を、ほんのわずか逸らす。それがプロジェクトの目的だ、ということだそうだ。そしてそのためにやることは、「人類の知恵を救う」ことで、社会の崩壊とともに科学知識も断片に分裂・消滅してしまうので、それを防ぐために「あらゆる知識の集大成=銀河百科事典」を作る、それがプロジェクトの内容だとセルダン博士は語るのであります。これは面白い考えですなあ!
 かくして、帝国の官吏たちはこのおっさん何言ってんだ? と思いつつも、じゃあ銀河の片隅で事典編纂でもやってな、と、世間を騒がせた罪でセルダン博士を【ターミナス】という辺境の惑星に追放することを決定する。しかし―――実はセルダン博士はそれすらも予測していて、ターミナスへの追放も博士が仕組んでいたのであった―――という感じで第1部は終わる。
 【第2部:百科事典編纂者】
 ターミナスへ移住させられた、第2世代(?)の【百科事典第1財団=第1ファウンデーション】の物語。移住開始から50年が経過しており、当然セルダン博士はとっくに死んでいる。そしてターミナスという惑星には金属鉱物が一切ない星として描かれており、要するに自給自足できない星であるというのが一つポイントになっている。そして、現在【アナクレオン】王国と緊張関係にあるらしい。なお、銀河帝国はまだ存在していて、緩やかに滅亡への道を進んでいるが、だれ一人気づいておらず、またターミナスも銀河の「辺境」にある=帝国からすっげえ遠い、こともポイント。【アナクレオン】【スミルノ】【コノム】【ダリバ】の4つ辺境星系を「4王国」と呼ぶらしい。
 この第2部での主人公は【サルヴァー・ハーディン】という男で、年齢ははっきりわからないけどまだ青年で、ターミナス市長に就任している頭のいい男である。ターミナスの運営は、基本的に「百科事典委員会の理事会」が権限を持っているのだが、アナクレオンとの緊張関係に、【ルイズ・ピレンヌ】というおっさんを理事長とする理事会は全く対応できず、アナクレオンの全権大使【アンセルム・オー・ロドリック】がターミナスを訪れ、軍事基地設置を要求してきた時も、ほぼ無力。理事会は、あくまで「皇帝直轄地」でありファウンデーションは国家公認の科学機関として要求をつっぱねようとするが、まあそんな主張は通りませんわな。この交渉でハーディンは、既にアナクレオンが【原子力経済】を持っていないことを確信する。そうなんです。なぜか、この物語では「原子力」が重要なキーになっているのです。どうやらこの世界ではあらゆる動力として原子力が使われていて(超小型の原子炉なんかもある)、原子力を持っているかどうか、が文明や軍事力において大きなアドバンテージになっているらしい。持っていても、原理的にきちんと理解している人間は少なく、ロストテクノロジーというか、オーパーツ的な扱いになっているのが非常に興味深い。もちろん、ターミナスの科学者たちはきちんと技術継承しているので、その点がターミナスの優位点にもなっている。
 で、この「アナクレオン危機」と呼ばれるターミナスのピンチも、実はセルダン博士によって予見されていて、ターミナス50周年イベントに、セルダン博士はホログラムで登場し、ついにファウンデーションの真相を告げるに至る。まず第一に、「百科事典財団=ファウンデーション」とは皇帝から勅許状を引き出し、必要な人員10万人を集めるための欺瞞であり、全て計算通りに進んでいる、そして、今後も危機に遭遇するが、必然的に一つのコースをたどることになる、と。
 第2部は、この秘密の暴露で終了する。事態がどのように展開したのかが語られずまま、このセルダン博士のホログラムによって理事会のおっさんたちが、くそっ!ハーディンの言うとおりだったのか……としぶしぶ認めて終わりだ。そして第3部でどうなったのかが分かるようになっている。
 【第3部:市長】
 いきなり第2部の終わりから30年が経過している。ハーディンはその30年間市長として、ある意味独裁してきた模様。そして、前回の「アナクレオン危機=第1セルダン危機」がどのようにクリアされ、そして今また危機に陥っている状況が描かれる。あ、冒頭にこの時のハーディンの年齢が62歳って書いてあった。てことは第2部では32歳だったってことか。なるほど。
 この第3部では、ハーディンと次の世代の【セフ・サーマック】という青年とのやり取りがメインのお話になる。そしてその話の中で、ハーディンがどのようにこの30年をかじ取りしてきたが分かる仕掛けになっている。サーマック青年は、ハーディンの30年間を否定し、辞任を要求するのだが、要するに彼の主張は、ハーディンが30年行ってきた、アナクレオンへの原子力技術の供与を止めろ、そんなのは相手を強大にするだけだ、今こそターミナスは自身を武装し、先制攻撃をもって戦いに臨むべきだ、というものだ。
 つまりハーディンは、どうやらアナクレオンとの危機を、ターミナスから歩み寄ることで回避し、それを軟弱な宥和政策だとサーマック青年は怒っているわけである。しかし! 実はハーディンの30年間には隠された意図があったのだ――!! という展開で、実に面白い!
 結論から言うと、ハーディンは、技術供与はしていたけれど、「銀河霊」というものを設定して、原子力技術を宗教にまで昇華させているのだ。特殊な技能は「聖職者」だけが扱えるものとし(ちなみに聖職者も、経験的に扱えるだけで、全然技術者ではない)、神聖なものという仮面もかぶせており、実は全然技術供与はしておらず(その結果としての武器などは与えていても)、技術自体はターミナスで独占されていることが判明する。そして、ターミナスに害成すものは「銀河霊」の怒りに触れる、的な迷信をアナクレオン人たちの間に敷衍させることによって、戦争一歩手前まで関係悪化した際に、アナクレオン人の平民兵士たち自身に反乱を起こさせ、ターミナスを守り、おまけにアナクレオン王国を乗っ取ることにまで成功してしまうのである。要するに、宗教家による洗脳、ですな。ハーディンの座右の銘「暴力は無能力者の最期の避難所である」が明確になる最後の大逆転が超爽快です。さっすがハーディンさん!カッコイイ!
 この第3部では、アナクレオン王の【レオポルド王】という若者と、その叔父であるキレ者の【ウェニス】という男がハーディンの前に立ちふさがる脅威として登場するが、レオポルドは既に洗脳にかかっているので、「しかし……心配だなあ……何か冒涜的な感じがするのだ……ファウンデーションを攻撃するなんて……」という調子なので、まあ要するに、全て計算通り!ということになってしまう。
 こうして、「第2アナクレオン危機=第2セルダン危機」も回避されるが、第3部のラストは再び30年ぶりに起動したハリ・セルダン博士のホログラムで終わる。そしてまたもやすべて、セルダン博士が80年前に計算した通りであることが判明するが、セルダン博士のホログラムは、消える前に2つ、重要なことを語る。ひとつは、これでやっとファウンデーションに対する攻撃をそらすことはできた、けれど、「こちらから攻撃」するには全く十分でないこと。そしてもう一つが、「銀河系の反対側に、もうひとつのファウンデーションが同じ80年前に設立されていること」を忘れるな……というメッセージだ。ホログラムは、ああしろ、こうしろという策は一切与えてくれない。いわば答え合わせ的な存在にすぎず、ハーディンも、まあ、生きてる間はもう現れないだろうな、やれやれ、といったところで第3部は終わる。
 【第4部:貿易商人】
 この第4部は【リマー・ポエニッツ】という宇宙貿易船の船長の元に、ファウンデーションから一通の指令が届くところから始まる。曰く、惑星【アスコーン】に収監された仲間の【エスケル・ゴロヴ】の身柄を確保せよ、という指令だった。実は二人とも、商人という表の身分に隠れて、ファウンデーションのエージェントでもあって、なにやらファウンデーションの秘密の活動があるらしいことがほのめかされる。
 どうも時間的にどのくらいたったお話なのか良くわからないが、どうやらすでにファウンデーションは「4王国」はもう支配下に置いているらしいが、この【アスコーン】はまだそうではなく、原子力を売りつけることで「銀河霊」の宗教的コントロールに置こうとしているらしい。で、アスコーンが欲しいのは、金、GOLDのAuだ。それをポエニッツは良くわからない錬金術原子力マシーンであっさり量産できるようにしてあげるのだが、アスコーンの太守は、邪教のまがい物として受け付けない。そこで、ポエニッツは、太守の後継を狙う若い【ファール】に目を付け、まんまと罠にかけてマシーンを売りつけることに成功し、アスコーンの原子力化=ファウンデーションの技術なしにはいられない状態にすることに成功するのだった―――てな感じで幕を閉じる。
 【第5部:豪商】
 この第5部の主人公は、【スミルノ】出身の【ホバー・マロウ】という男だ。そしてマロウが、現市長の秘書【ジョレイン・サット】から一つの極秘任務を受けるところから話は始まる。曰く、ファウンデーションの船が3隻、【コレル共和国】星域で消息を絶った。原子力で武装している船が姿を消す、それはコレルも原子力テクノロジーを保有しているのではないか。その調査に当たれ、というもので、マロウはスミルノ出身であるため、どうも生粋のファウンデーション人として信用されていないような雰囲気である(※どうやらすでに4王国は「ファウンデーション協定」を調印し、既に実態はなくなっている模様。よって4王国のひとつであるスミルノも、とっくにファウンデーション化されているため、そういった旧4王国出身者はかなりいるらしい)。あ、時間経過が書いてあった。どうやら、第3部の「第2セルダン危機」から75年経過しているのかな。つまりファウンデーション設立から155年、ってことか。なるほど。で、サットは、このファウンデーション以外に原子力科学を持つ敵が現れたのではないか、ということに対して、これは「第3のセルダン危機」なのではないかと心配するが、一方のマロウも、その危機を感じ取っていた。そしてコレルへ向かったマロウは、サットに仕組まれた罠をかいくぐり(罠であったことはだいぶ後で判明)、コレルの主席(コムドー)【アスパー・アーゴ】と「自由貿易」を行う提案をする。ここで、これまでファウンデーションが「宗教」を武器に勢力を増してきた方針から、「経済」によって影響力を強めようという方針に変わる転換期を迎える。第4部で語られたアスコーンを引き合いに出しながら、今や完全にファウンデーションの組織の一員に成り下がったようなことは、まっぴらごめんだ!と主張するアスパーに対して、マロウはあっさり、わたしは主任貿易商であり、金がわたしの宗教だと言ってのけるのである。「宗教はわたしの利益を削るものだと、はっきり申し上げておきます」と言い切ることでマロウはアスパーの信頼を得る。しかし、同時にマロウは、アスパーの護衛が持っている銃に気が付く。そこには、「宇宙船に太陽」の紋章が!それはまさしく「銀河帝国」の紋章であり、コレル共和国にも「原子力科学」が残っていることを知るが、調べてみるとそれはもう時代遅れなもので、技術継承もされておらず、ただ在るだけで別に脅威にならないことを確認し、マロウはファウンデーションへ帰還する。そしてマロウは裁判にかけられるがサットの陰謀を暴いて失脚させ、見事大逆転し、まんまと市長の座を手に入れる。が、その後、コレルと戦争が始まってしまう。それは、コレルが得たファウンデーションの製品を、買うのではなくてもう星ごと奪っちゃえばいいじゃん、という考えから始められたもので、失脚していたサットは、それみたことか、とマロウに告げる。だから言っただろ、貿易じゃダメなんだよ、宗教じゃないと。そうサットはマロウに政策変換を迫るが、マロウは聞き入れない。「いいかい、これはセルダン危機だ。我々はそれに直面しているのだ。この危機は、その時どきに入手可能になった力で解決されるはずなんだ。今の場合は、貿易だ! まあ見てろよ、コレルは我々が供給した機器に依存しまくっている。戦争でその供給が止まったら……戦争はやむさ」みたいなことを言って、結局その通りになるわけで、大変痛快でありますね。
 最後に、マロウはこんなことを言う。ファウンデーションの本拠星であるターミナスは、金属資源がない。だから、原子炉も親指サイズまで小さくなくてはならなかった。そのための新技術を開発しなくてはならなかった。それは帝国が追従できない技術だ。なぜなら、帝国はもはや真に生命力のある化学的進歩をすることができる段階を超え、退化してしまっているからだ。だから、彼らは艦艇を丸ごと守るのに十分な原子力フィールドを作れたけれど、一人の人間を守るフィールドはついに作れなかった。おまけにもはや自分の巨大技術すら理解できなくなっている。このマロウの演説に関しては、訳者あとがきで、まるで戦後日本の復活劇のようだ、と評されている。本書が書かれたのは、1942年から49年にかけて、つまり第2次大戦の真っただ中の期間であり、訳者Asimov先生の先見の明を大層ほめたたえているわけだが、まあ、なんというか、人類は1万2千年経ってもあまり変わらないようですな。私は本書を読んで、そんなことを深く感じました。

 はーーーー長くなっちまった……これでも大分はしょったのだが……まあ、とりあえず大変面白かったので、続巻が実に楽しみであります。サブタイトルからすると、いよいよVS帝国との闘いかしら、と非常にワクワクしますな。最後に、本作の一番最後のマロウのセリフを引用して終わりにしよう。
「未来など、おれの知ったことか? セルダンが予見して準備してあるに違いない。今、宗教の力が死んだように、将来、金の力がなくなった時にまた別の危機が発生するだろう。今日のおれがそのひとつを解決したように、それらの新しい問題は、おれの後継者に解決させるがいい」
 このセリフは、無責任では全くないと思う。頭脳を駆使して戦った男の本音として、わたしは非常に気に入りました。
※2017/06/29追記;昨日この記事を書いた翌日の今日、驚きのニュースを見た。なんとこの『FOUNDATION』が映像化されるんですって! おおっと! まさかこれも、心理歴史学的に計算通りなのか!? とビビったっすw →http://tv.eiga.com/news/20170629/1/


 というわけで、もういい加減にして結論。
 ふとしたきっかけで購入し、読み始めたIsaac Asimov先生による伝説的名作『FOUNDATION』を読んでみたところ、これは非常に面白かった。確かに、『STAR WARS』や『銀河英雄伝説』の元祖といわれるだけある凄いスケールで、続巻を読むのが大変楽しみです。そして、今後きっと出てくるであろう「銀河の反対側にあるもう一つのファウンデーション」の動向も大変気になりますな! ただ一つだけ、翻訳がやっぱりちょっと古いんすよね……なので若干読みにくいかもしれないけど、めげずに読み進めたいと存じます。以上。

↓ よーし、次は(2)巻に突入だ!

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