というわけで、先日、上遠野浩平先生による「事件シリーズ」を電子書籍で一気買いし、以来、せっせと順番に読んでいるわたしであることは先日書いた通り
 今日は、そのシリーズ第2作目となる『紫骸城事件』を自分用備忘録としてまとめておこうと思う。いやはや、ホントに面白い作品で、たしか発売当時は、ミステリー愛好家の皆さんから、ミステリー部分が弱いとか言う批判もあったような記憶があるが、わたしはまったくそんな風には思わず、読むのはこれで2回目だが、初めて読んだときと同様、大変楽しめたのである。

 紙の本で出版されたのが2001年だそうなので、わたしにとっては15年ぶりの再読である。しかし、ホントにわたしも適当な男で、この作品は超面白かったという事は明確に覚えていたし、おおよその物語の流れも記憶通りだったけれど、細部は全然忘れているもので、ホント、読みながらまるで初めてかのようにドキドキワクワクしながら読めたわけで、これはもちろん上遠野先生の紗宇品が素晴らしいからなのは間違いないとしても、わたしの記憶力の乏しさも影響したのかもしれない。ま、そんなことはどうでもいいや。大変面白かった。
 本作は、「紫骸城」で行われる「限界魔導決定会」を舞台に起こる殺人事件の謎を追うミステリーである。今回は、EDやヒースは最後にちょっと出てくるだけだし、リーゼは出てこない。代わりに、主人公を務めるのは「決定会」の立会人として招集されたフロス・フローレイド大佐で、「キラル・ミラル」と呼ばれる双子の戦地調停士が初登場する。というわけで、また登場人物やキーワードをまとめておいて、今後のシリーズ作品を読む際のメモとしておこう。
 ◆紫骸城 :「バットログの森」の中にそびえる城。300年前、リ・カーズがオリセ・クォルトとの最終決戦のために築いた、呪詛集積装置。現在では、中に入るには特殊な転送魔法が必要。なお、リ・カーズとオリセ・クォルトの超絶魔法バトルが勃発して、紫骸城周辺が「魔法汚染」され、生態系が破棄されたためにバットログの森が生まれたわけで、バットログの森の中に紫骸城があるのではなくて、紫骸城の周辺が現在はバットログの森と呼ばれている、という方が正しい。
 ◆限界魔導決定会:魔導士ギルドが5年に1度開催する、最も優れた魔導士を決める大会。紫骸城で開催される。もう200年の歴史のある由緒正しい(?)大会。
 ◆フロス・フローレイド:本作の主人公。わたしは愚かなことに、理由は我ながらさっぱりわからないけれど、ずっと女性だと思って読んでいて、終盤で「彼」という人称代名詞で呼ばれるところで初めて、あ、男だったんだ、と認識した。なんでなんだ、オレ。フロスは、かつて「風の騎士」ヒースとともにとある事態を鎮圧したことがあり、世間的に「英雄」として有名になっている。ただし本人は、「あれをやったのはほとんど風の騎士」であるため、自分が英雄と呼ばれることに抵抗を感じている。ヒッシパル共和国の魔導大佐。
 ◆ナナレミ・ムノギタガハル:謎の「ブリキ製の子供の人形」をいつも抱えている、頭のイッちゃった風な魔導士の女性。貴族令嬢だが恋人と駆け落ちし、その恋人を殺されたという噂。今回の大会には副審として招集された。
 ◆U2R:魔導擬人機。我々的には、C3-PO的なドロイドを想像すればいいと思う。ただし3POよりもっと有能で、大会の管理をしている。もう相当古い機械らしい。
 ◆キラル・ミラル:「ひとつの戦争を終わらせるのにそれまでの戦死者に倍する犠牲者を生む」と世に悪名高い双子の「戦地調停士」。姉のミラロフィーダ・イル・フィルファスラートと、キラストラル・ゼナテス・フィルファスラートのコンビ。ともに絶世の美形で顔は瓜二つ。姉のミラルは、基本的に「良し(ディード)」と「否(ナイン)」しか言わない不思議系美女。どうやらEDのことが大好きで惚れてるらしい。弟のキラルはEDをつまらん男としか思っていないようだが、その実力は認めている模様。なお、二人の姓「フィルファスラート」というのは、リ・カーズが人間だった(?)時の姓。二人とも、超絶に頭は切れる。
  ◆ニーガスアンガー:前回優勝者。世界最強の「防御呪文」の使い手。「海賊島」のムガントゥ三世の全身に防御呪文の入れ墨を施したのもニーガスアンガーで、シリーズでちょいちょい名前が出てくる。シリーズ4作目の『禁涙境事件』では若き頃のニーガスアンガーも出てくる。そして、本作では第1の被害者として冒頭で殺害される。
 ◆ウージャイ・シャオ:中盤で出てくる、「女盗賊」。まだ10代の少女。「聖ハローラン公国」の月紫姫と友達のようで、次の3作目『海賊島事件』の冒頭にも出てくる。大変ナイスキャラ。 
 ◆死人:大会審判長のゾーン・ドーンという人物は「死人」だそうで、一度死んだが手遅れの蘇生呪文の作用で 生体活動が戻った者のことを、この世界では「死人」という。彼らには以前の意思も人格も記憶もなくなっていて、生きている時とはまるで別人になっているらしい。ただし、知識だけは残されていることが多く、言葉や道具の使い方は前と変わらないという設定になっている。ちなみに、第4作目・第5作目に出てくるネーティスも「死人兵(しびとへい)」。

 とまあ、こんな感じかな。
 本作は、一応「密室モノ」と言っていいと思うのだが、ミステリー部分はもちろん、いろいろな人物の行動が大変興味深くて、非常に面白かった。第1作目の『殺竜事件』とはだいぶ趣が違って、本当に上遠野先生はすげえなー、と思うばかりである。 この才能をもっともっと世に知らしめたいものだが……だれか、この「事件シリーズ」を超絶クオリティで2時間にまとめて劇場アニメにしてくれないかな。絶対面白いはずなんだが。映像にするには地味すぎるかもな……でも、最高の小説原作として映像に向いていると思うな。なんなら、ハリウッドで実写化してもらいたいもんだぜ。

 というわけで、結論。
 上遠野浩平先生による「事件シリーズ」第2作目、『紫骸城事件』も最高に面白かった。15年ぶりの再読だというのに、なんでこんなに新鮮に感じて面白く読めちゃうんだ。あ、それはわたしの記憶力がニワトリ並ってことか!? HOLY SHIT……否定できない……。けど、間違いなく最高に優れた小説だと思います。以上。

↓ やっと電子でも発売になったので昨日から読んでます。しかし本当に早川書房は素晴らしい出版社ですよ。紙の本の発売から1週間で電子書籍発売。大変ありがたし。
暗殺者の反撃〔上〕 (ハヤカワ文庫 NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

暗殺者の反撃〔下〕 (ハヤカワ文庫 NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22