というわけで、先日、上遠野浩平先生による「事件シリーズ」を電子書籍で一気買いし、以来、せっせと順番に読んでいるわたしであることは先日書いた通り。つか昨日も書いた通り
 で、今日は昨日に引き続き、そのシリーズ第3作目となる『海賊島事件』を自分用備忘録としてまとめておこうと思う。もうなんか同じことばかり書いているが、この3作目も大変面白かった。そして、致命的にいろいろなこと忘れていて、ホントに自分の記憶力のダメさ加減に呆れましたわ。あ、こんな話だっけ、と恐ろしく新鮮に感じたわたしは、もう、なんか脳に重大な疾患があるんじゃないかと心配でなりません。

 本作『海賊島事件』は、わたしの記憶では、第1作『殺竜事件』でED、ヒース、レーゼの三人が一度立ち寄った「海賊島」が舞台で、そこでの殺人事件を解き明かすミステリーじゃなかったけ、と思っていたのだが、まるで違っていてびっくり&あきれました。
 本作が紙の本で出版されたのが2002年12月。なので、14年ぶりの再読である。しかし、こんな風に、1作目の『殺竜』が2000年、2作目の『紫骸城』が2001年、と、1年ごとに出てたんだなあ、という事も完全に記憶から消失していました。ああ、あの頃は、たぶんわたしのサラリーマン生活で最も楽しい時分だった……と妙に郷愁というか、ノスタルジーめいたものを個人的にはを感じますね。たった15年ほど前のことなのに。随分この期間に世界は変わったもんだなあ。
 ま、そんなことはどうでもいいや。
 さて。本作『海賊島事件』は、「最も美しい死体」として発見された「夜壬琥姫」の謎を解くお話なのだが、事件の起こった「落日宮」で事件の真相解明をするEDと、一方で事件の最重要容疑者が逃げ込んだ「海賊島」に、容疑者引き渡しを迫るダイキ帝国とそれを拒む海賊島の対立が勃発し、その仲裁にやって来るリーゼとヒース、というように、二つの場所での出来事を同時進行で追う物語になっている。相変わらず各キャラクターが素晴らしくて、最高です。というわけで、今日も昨日と同じく、登場人物やキーワードをまとめておいて、数年後再び記憶が消失する際の備忘録としよう。
 ◆夜壬琥姫:聖ハローラン公国の紫月姫の従姉妹。落日宮に3年滞在し、故国に戻れない事情があり、「キリラーゼ」という男が迎えに来るのを待っている、と周囲に話していた。超絶美人で気高く頭もいい。冒頭で、「水晶の結晶の中に閉じ込められた死体」として登場。今回はその謎解き話。ちなみに、第1作の時点から時間が経過していて、この時、月紫姫は聖ハローラン公国の事実上の最高権力者になっている。ちなみにそれは第1作でヒースと出会ったことによって決断した結果で、名目上の公主たる白鷺真君はまだ幼い子供なので、役職としては摂政についている。曰く、「世界一有名で人気のある国家権力者」。本作は、冒頭で第2作に出てきたウージィが登場し、夜壬琥姫殺害の重要容疑者として世界中から捜索されている男が、「海賊島」に匿われていることを月紫姫に教える。また、EDが落日宮に到着知った際も、「月紫姫の代理人」と名乗った。
 ◆落日宮:モニー・ムリラという国にある、世界最高のリゾートホテル。
 ◆ニトラ・リトラ:落日宮の支配人(オーナー)。以前は海賊だった男で、ムガンドゥ1世と2世に仕えていたが、3世の襲名後、引退して落日宮を作った。ムガンドゥ3世のことは、子どもの頃から知っていて、姿を衆目にさらしたことのない3世の本当の姿を知る、ほとんど唯一の人間。
 ◆カシアス・モロー:元料理人で貿易商。あらゆる感覚を「味覚」で表現する。七海連合にスカウトを受け、面接の場所としてやってきた落日宮で事件に遭遇、後にやってきたEDの助手的な役を演じる本作の語り部。容貌は丸くて小太りでイケてないが、冷静で頭は切れる。
 ◆サハレーン・スクラスタス:落日宮に滞在していた芸術家。彼固有の魔法を用いた水晶彫刻で世界的な有名人。自信家で女好き。夜壬琥姫にちょっかいを掛けていたことが周囲にも知られていた。夜壬琥姫殺害の容疑で追われる身だが、海賊島で匿われている。精神が崩壊しつつある。
 ◆ムガンドゥ1世:インガ・ムガンドゥ。犯罪組織「ジェスタルス」の頭首。後に、最大最強の海賊として世界中の領海に縄張りを持ち、やがては無数の貿易会社を従えて表社会にも歴然たる影響力を持つことになる巨大組織「ソキマ・ジェスタルス」の初代支配者。
 ◆アイリラ・ムガンドゥ:ムガンドゥ1世の唯一の子供(娘)。父を毛嫌いしていたが父の財力・影響力で放蕩三昧の毎日を過ごしていた。
 ◆ムガンドゥ2世:ニーソン。元々、別の組織からインガ・ムガンドゥ暗殺のために「ジェスタルス」に入った男だったが、「夢」=「未来」を持つムガンドゥに魅かれ(?)、忠誠を誓う。そしてインガの死後、アイリラを娶うことでムガンドゥ2姓を名乗り、組織を引き継ぐ。現在の「海賊島」を建造した男。
 ◆ムガンドゥ3世:アイリラとニーソンの実子イーサー。幼少時から、2世の指示で、身分を隠して「海賊島」の最底辺の仕事をさせられていた。そんな幼少時代に、ニトラ・リトラを見込んで自らの正体を明かしている。ニーガスアンガーによる防御呪文の刺青で全身が覆われているが、普段は幻惑魔法(?)で隠している。素性が一切謎の人物として世界では知られ、その姿を見たものは海賊島のメンバーにもいない。ムガンドゥ3世の顔を知っているのは、ニトラ・リトラと第1作で面会したED、ヒース、リーゼ、この4人だけ。第1作で見せたリーゼの度胸が大変気に入っている様子で、恐ろしい男だけどリーゼにはかなり好意的。
 ◆タラント・ゲオルソン:第1作で、海賊島を訪れたEDたちとギャンブル勝負をした男。当時は賭場のイカサマチェック係だったが、リーゼとの勝負で精神的に大きく成長し、本作では「顧問役」として海賊島でもっとも頼りになる男として描かれている。今回、容疑者引き渡しを迫るダイキ帝国に、「ならば第三者に仲介と調停を要請する」ことを認めさせた。その判断に、ムガンドゥ3世から「よくやった、タラント・ゲオルソン」と直接誉められる。そしてリーゼとヒースが海賊島へやって来るというストーリー展開。
 ◆ダイキ帝国:この世界の「西の大陸の中でも最大の国土を誇る」国。今回、この国の「不動」と称せられる将軍ヒビラニ・テッチラが海賊島に艦隊でやって来て、容疑者引き渡しを迫る。しかし、その裏にある目的が、ちょっとだけ、軽いというかイマイチなのはやや残念かも、とは思った。

 てな感じかな。重大なネタバレはしてないつもりだけど、大丈夫かしら。
 ホント、毎回書いているけど、上遠野先生の作品は、もっともっと売れてしかるべきなのに、知名度的にライトノベル界にとどまっているのは本当に残念だと思う。出版社の営業の怠慢だと言いたいね。確実に、日本の小説家の中ではTOPクラスの実力だと断言できるし、わたしとしては日本人の作家ではナンバーワンに好きな作家だ。とにかく面白い。これを世間に広めるには、どうすればいいものか……。まあ、作品内容的には、ファンタジーに分類されてしまうので、その時点で読者を選ぶことになってしまうのだろうか。もったいないなあ……。 

 というわけで、結論。
 上遠野浩平先生による「事件シリーズ」第3作目『海賊島事件』も大変面白かった。何度でも言いますが、上遠野先生の才能は、日本の小説家の中で確実にTOP5に入るレベルだと思う。この才能があまり一般的に知られていないのが、心の底から残念だと思います。以上。

↓ 次の第4作はこれか。これも、今回久しぶりに読んで、まったくストーリー展開を覚えてなくてびっくりした。かなり面白いです。しかし、やっぱり電子書籍って、昔読んだ本を再読するのに向いてますな。