だいぶ前に、わたしがいつもチェックしている、映画の予告編を集めたサイト「Trailer Addict」で予告を見て、へえ、こんな映画が公開されるんだ、と思ったものの、全く日本公開される気配がなく、記憶の彼方に失われた映画があったのだが、それが先日、WOWOWの「ジャパン・プレミア」という放送枠で放送されたので、さっそく録画して観てみた。日本の青木ヶ原樹海を舞台としたホラー作品、『The Forest』である。

 しかし、観終った今、改めて上記予告を見てみると、シャワーシーンはなかったような気がするし、ほかにも見覚えのないショットがあるので、一部はカットされたものが放送されたのかもしれない。ま、そんなことはどうでもいいのだが、物語的には、基本的に上記予告のとおりである。
 双子のアメリカ人姉妹がいる。日本の高校で英語教師として働いていたはずの妹が、行方不明になった。しかもどうやら、自殺の名所(名所って言い方も非常に不謹慎か。なんて言えばいいんだろう?)として、我々日本人ならずとも、インターネッツの発達した現代では世界的に有名な「青木ヶ原樹海」で消息を絶ったらしい、という電話が姉のもとにかかってくる。日頃から精神的に不安定な妹。だが、双子の姉は、妹が生きていることを不可思議な双子パワーで確信しており、日本へとるものも取らず駆けつける。そして、青木ヶ原へ向かうのだが、そこで見たものは……とまあ、そんなお話である。

 どうやら、日本での撮影は新宿・六本木(?)あたりの街の情景だけで、どうも森自体はスロヴァキアで撮影したっぽいように思う。なお、青木ヶ原へ向かう主人公が乗るローカル鉄道は、エンドクレジットの撮影協力から察するに、どうもわたらせ渓谷鉄道を使ったようだ(つまり群馬~栃木、かな?)。まあ、そんなこともどうでもいいか。
 とにかく、物語としては日本が舞台だけに、日本人キャストがいっぱい出てくるのだが、キャストについては後で書くとして、まず、物語について感想を記録しておくと、結論から言えばちょっとイマイチ、であった。前半の雰囲気や空気感は非常に良いのだが、特に物語が核心に迫っていく後半は、若干微妙である。とりわけ、最終的な謎解きともいえる、ラスト間際での妹の突然の登場が、もう全く訳が分からない。この、オチに相当する部分がピシャッと決まれば良かったのだが、肝心のオチが、え、あんた結局、なんで姿くらまして樹海にいたの? って部分が弱い。もちろん、いろいろな解釈は可能だとは思うけれど、残念ながら明確な説明のできない、ぼんやりとしたオチになってしまったのが大変残念だ。あれっ!? これはネタバレか? サーセン。これは日本のいわゆる「Jホラー」に共通して言えることだと思うけれど、単に急に恐ろしい絵を見せて驚かせたり、後ろ後ろ――!! と観客をどきどきさせたり、そういった、映像的な「これがやりたかった」的なショットの連続で、肝心の物語がさっぱりイマイチ、という残念な映画の流れを踏襲してしまっていて、そりゃあ誰だって、急にそんなの見せられたらビビるわ、という、いわば小手先のテクに走ってしまっているように思える。それじゃあ、観終った後まで恐怖は持続しないよな……。
 
 というわけで、こき下ろしてしまったけれど、メインキャストの3人は、大変いい芝居ぶりを見せつけてくれたと思う。まずは、主人公を演じたNatalie Dormaer嬢34歳である。キッとした表情が印象的な彼女は、今回双子を一人二役で演じ切っていたが、わたしは彼女の顔に非常に見覚えがあって、観ながら、これ誰だっけ……くっそう、思い出せん!! というわけで、先ほどインターネッツの力を借りて調べたところ、あ、そうか!! と思いだした。彼女は、『The HUNGER GAMES』の最後の2本に出ていた、クレシダ役の彼女ですな。髪型が全然違うので、思い出せなかったのが悔しい。今現在は、大人気TVドラマの『Game of Thrones』のキャストとしての方が有名かもしれないすね。今回の芝居ぶりは、大変良かったとわたしは思う。やっぱり、お綺麗ですな。全くどうでもいいんだけど、この人、わたしがドイツ語を習った先生にびっくりするぐらい超そっくりだと今気が付いた。
 で、もう一人が、若干出番は少ないのだが、我らが日本人代表として本作に出演した小澤征悦氏である。ご存じのとおり、彼は世界的マエストロ、小澤征爾氏の長男だが、なかなか英語のセリフは流暢で、カッコ良かったすね。アメリカ生まれらしいけど、小学校から大学まで成城なので、英語は大人になってから会得したのか、この映画だけのセリフを猛特訓したのか知らないけれど、今回のレベルできっちり芝居できれば、世界でも活躍できると思うのだが、どうなんでしょうな。あ、サンスポの記事によると、やっぱりここ数年、英語を特訓しているみたいですね。今後の活躍を心から期待したいと思う。
 で、最後が、主人公が日本で出会う、若干怪しい、けど最終的に何だったのかよくわからない、雑誌記者を演じたTaylor Kinney氏だ。彼は、なんでもLady GAGAちゃんの婚約者だそうですね。彼もちょっと特徴ある顔立ちで、『ZERO DARK THIRTY』でラストのビンラディン邸突入チームの隊員として出演していたのが思い出されますな。わたしとしては、この男性キャスト二人の物語への関与具合が大変もったいないというか、もうちょっと面白くできたんじゃねえかなあ、と、いつもの言うだけ詐欺理論で感じたのだが、結局彼は、幻覚に捕らわれた主人公に散々な目に遭った可哀想な人、ってことでいいのかな? と、正直今でもわたしにはよくわからない、残念なお話になってしまっている。なお、監督・脚本家とも、よく知らない方でしたので、その辺はもう割愛します。あと、謎のセーラー服の女子高生や、妙におっかないおばさんたちなど、日本人がいっぱい出演していますが、正直、知らない方ばかりなので、その辺も割愛します。調べてみると、どうも海外で仕事をされている方々ばかりみたいですな。

 というわけで、結論。
 どうやら日本では劇場公開されなかった『The Forest』だが、WOWOWで放送されたのは喜ばしいと思うものの、肝心のお話がちょっと今一つ、ではあった。しかし、おそらく欧米人とかが見ると、すっげえおっかないのではなかろうか。雰囲気はかなり怖いし、画としてはかなり上質でセンスあふれているようにも思える。キャストの熱演も大変良い。しかし……せめて妹がなぜ樹海に向かったのか、なぜ普通に隠れていただけ(?)なのか、そこんところはきちんと筋の通った脚本であって欲しかった。そこだけ、残念に思う。以上。

↓ そういえば、同じく樹海を舞台としたこの映画は、観たかったけど見逃してしまった……WOWOW放送を待ってます。あ、まだBlu-ray出てないんだ。10月発売だそうです。
追憶の森 [Blu-ray]
マシュー・マコノヒー
Happinet
2016-10-04