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 以前、わたしが敬愛する、とある女性の作家先生とメシを食っているとき、こんな話を聞いた。
 「男と女の恋愛に対する想いの違いを教えてあげる。女はね、【上書き保存】なの。そして男は【名前をつけて保存】するわけよ。分かるでしょ? 女はどんどん上書きして、心の中にはひとつの最新Verしか持ってないのよ。でも、男は、過去の恋愛をひとつずつご丁寧に取っておくでしょ。おまけに、たまに眺めてはその思いにふけって、ちょこちょこ勝手に修正して美化するもんだから、女はイラッとするわけ」 
 こんな話をしたのは、わたしが『母と暮せば』を観て大いに感動したと興奮しながら話していた時だったと思う。確か、「オレが死んだら、そりゃあ恋人には幸せになってもらいたいけど、でも、完璧忘れられるのも淋しいすねえ……」、なんてことを話しているときだったと思う。その先生は、ズバリ「ああ、そりゃあダメよ、女は忘れる生き物よ」みたいな話から、上記のことをわたしに話してくれたのだが、 わたしはこれを聞いて、なるほど、確かに、超思いあたるっすね、みたいなことを返したと思う。実に、頷けてしまったわたしだが、果たして世の女性たちも、そんなの当たり前だと肯定するのだろうか。
 というわけで、おとといの14日(木)の夕方、そろそろ定時になろうとしているときに、おっと、そういや今日は14日、トーフォーの日で映画が安く観られる日じゃねえか、と気がつき、帰りにぶらりと日比谷シャンテに映画を観に行ったわたしである。
 観た作品は、『BROOKLYN』。今年のアカデミー賞で、主演のSaoirse Ronanちゃんが主演女優賞にノミネートされた作品で、作品賞と脚色賞にもノミネートされた作品であり、わたしもずっと見たいと思っていたのだが、やっと日本でも公開になったものの、公開規模が小さく、こりゃあWOWOW待ちかな……と劇場へ行くことをあきらめかけていたのだが、トーフォーの日だし、ちょうど時間もぴったり合う、というわけで観てきたわけである。そして結論から言うと、大変素晴らしかった。実にいい作品で、全女性に強くお勧めしたいと思う。

 上記予告にある通り、US本国でも非常に評価は高く、わたしの評価も高かったのでお勧めしたい映画なのだが、まずは物語を簡単に説明してみよう。まあ、大きな流れは、予告編の通りである、が、もっと密度が高くて、もっともっと面白かった。
 舞台は1950年代。アイルランドの片田舎に住む主人公・エイリッシュは、優しく美しいお姉ちゃんのローズと、お母さんの3人暮らし。父は既に亡く、エイリッシュは、恐ろしくいや~なクソバアアの経営する雑貨屋で日曜だけ勤務するパート暮らしである。何故賢い彼女がそんなパートをやっているかというと、ズバリ当時のアイルランドには仕事がないためだ。お姉ちゃんはとある工場(?)で会計士としてきっちり働いていて、二人の仲はとてもいい。そんなエイリッシュに、お姉ちゃんが懇意にしているNY在住の牧師のコネで、NYで働き、NYに住むというチャンスが訪れる。母やお姉ちゃんと別れるのは本当に悲しいけれど、嫌味で悪意に満ちたクソババアのもとで働くよりずっといい。というわけで、エイリッシュは一大決心の元、NYへ旅立つ――というのが物語の始まりである。このお姉ちゃんとの関係がとても美しくて、船で出発するエイリッシュを見送るシーンでわたしは早くも泣きそうである。泣いてないけど。
 旅客機なんてない当時、もちろんのことながら船旅である。しかし慣れない彼女は思いっきり船酔いして、まあ大変な目に遭う。そこで出会う、洗練された女性がとてもいい。ちょっと世間慣れして浮ついた風でいて、実はとても面倒見が良くて、エイリッシュにいろいろアドバイスし、何とか船旅もマシなものになっていく。入管審査では、おどおどしたりしてはダメ、毅然とするのよ。咳は絶対にしちゃあだめ。隔離されて送還されるわ。なんて、いろいろ教えてくれる、「大人の女性」。この女性はその後一切物語に登場しないのだが、観ているわたしに非常に強い印象を残してくれたし、エイリッシュの心にも強く残ることになる。
 そしてようやく着いたNY、BROOKLYN。慣れない環境や仕事に、あっさりホームシックにかかり、すっかり笑顔が消えてしまうエイリッシュ。お姉ちゃんからの手紙にうえ~~んと泣いちゃう姿に、わたしはまたも一緒に泣きたくなったよ。悲しいつーか、エイリッシュの表情は、もう全世界の男ならば放っておけないものを感じるはずだ。しかし、それでも、4人の先輩同居人や寮母さん的な(?)おばちゃんたちは(女子たちはちょっと意地悪だったり、寮母さんも若干おっかないけれど)、根はとてもいい人たちだし、NYでの仕事を紹介してくれた牧師さんも大変善良で、学費を出してあげるから、ブルックリン大学の夜間コースで簿記の勉強してみたらどう? なんて、多くの人の善意に支えられて、エイリッシュも何とか頑張っていく。エイリッシュも、非常にド真面目な女の子なので、実に応援したくなる健気さだ。
 で。エイリッシュは、あるときから急に明るく元気になる。
 分かりますよね。恋ですよ、恋!
 寮母さん公認のダンスパーティーで知り合った、イタリアから移民でやってきた若者、トニーとの出会いがエイリッシュに再び笑顔を取り戻させるわけですな。そしてまたトニーもイイ奴なんですよ。エイリッシュの学校が終わる時間には頼んでないのに迎えに来てくれるような優しい奴で、そりゃあもちろん下心もあるんだろうけれど、一切そんな風は見せず、実に紳士的で、健全なお付き合いが始まる。そんなエイリッシュの変化を、職場(デパートの店員さん)のちょっと怖い主任的なお姉さんも、好意的に捕らえてくれて、実はかなりいい人だったことも描かれる。
 そんな風にして、エイリッシュのNY、BROOKLYN生活は徐々に彩りを取り戻していく。二人で海水浴に行くデートなんて、非常にほほえましくて良かったし、その水着選びも、職場の主任のお姉さんが張り切っていろいろ手伝ってくれたり、あるいは初めてトニーの家に行って家族と食事することになったときも、寮の女子たちが皆で、イタリア料理はこうやって食べるのよ、とパスタを食う練習まで付き合ってくれたりして、もう観ているわたしとしては、完全に田舎から上京した娘が東京で頑張っているさまを観ているようで、嬉しくて、ほほえましくて、大変もうニヤニヤしながら観ていたと思う。完全に変態ですが、暗いから誰にも見られてないと思うので大丈夫だったと思います。
 しかし――故郷のアイルランドから、突然の悲報がエイリッシュにもたらされる。ネタバレすぎるので何が起こるかは書かないで置くけれど、ネタバレを心配するにはもう手遅れかな。とにかく、その悲報で、一時アイルランドに戻るエイリッシュ。そして、そこで出会ったイケメンに、次第に心引かれていくわけで、端的に言えば、アイルランドに残るか、NYへ戻るか、という人生の岐路に立ってしまうわけだ。
 物語がこういう展開となったとき、わたしが観ながらずっと考えていたことが、冒頭に書いた「男と女の恋愛に対する想いの違い」だ。そうだ、女は「上書き保存」だった、と観ながらわたしは思い出したのである。なので、NYのイタリア男、トニーは振られちゃうのか? あんないい奴なのに? マジかよ……? やっぱり女は常に「最新Verの恋」ただひとつなのか……? と、もうなんだかわたし自身が振られた気分がして、ずーーんとしょんぼりである。
 最終的に、エイリッシュが採った決断は、書かないでおく。どちらを選んだかは、劇場で確認してください。ただ、彼女の決断が、とある外的要因によるものであったのではないか、ということには、わたし的にどうにもまだ整理できていない。もし、あのイヤな出来事がなければ、選択は変わっていたのだろうか? それは彼女にも、二人の男にもまったく関係のない出来事で、冒頭に出てきた故郷の嫌味なクソババアの悪意が彼女の決断に影響を及ぼしたのは間違いないのではないかと思うのだが、どうなんだろうか?
 というわけで、お願いです。わたしの周りの女性の皆さん。どうかこの映画を観に行って、女性の視点からの意見をお聞かせいただきたい。はたしてエイリッシュの決断は、女性から見たらどうなのか。その点は、おっさんのわたしには、どうしても、やっぱり分からんのです。いい悪いの問題じゃなくて。こういうものなんでしょうか、女心というものは。それが分からんから、わたしはモテないわけですか、なるほど。納得……したくねえなあ……。

 さて、物語の説明は以上である。
 とにかく、本作は、主役のSaoirse Ronanちゃんが抜群にイイ!! しょんぼり顔愛好家のわたしにはたまらないし、非常に繊細で、可愛らしくも美しく、わたしとしては最高級に褒め称えたい。彼女は、13歳でアカデミー助演女優賞にノミネートされた『Atnement』(邦題;「つぐない」日本では2008年公開)で世界的に有名になった女優だが、実はわたしがSaoriseちゃんを初めて観たのは、2009年公開の『The Lovely Bones』(邦題「ラブリー・ボーン」)だ。映画としては、タイトルからは想像できないほど重苦しい、キツイ映画だけれど、あの映画でわたしは、なんて綺麗な目をした女の子なんだ、と非常に驚いた。調べてすぐに、ああ、この娘がちょっと前に13歳でオスカーノミニーになった娘か、と知ったわけで、以来、Saoriseちゃんはずっと注目している。とにかく目が綺麗。吸い込まれそうな美しいBlue Eyesの持ち主で、世界最高の美しい瞳だとわたしは勝手に認定している。まあ、順調にキャリアを重ねているSaoriseちゃんだが、まだ22歳。若いですなあ。ただ、10代前半の超絶美少女から、順調に欧米人にありがちな大人顔になりつつあって、最近はさほど気になる存在ではなかったのだが(サーセン)、やっぱり芝居ぶりは若手No.1の評判は伊達じゃないすね。本当に素晴らしい演技でした。Sarioseちゃん自身も、アイルランドの人(生まれはNYだけど幼少時に両親の故郷のアイルランドに移住)で、ロンドンへ上京した時のことを思い出しながら、演技をしたそうですよ。
 ほかの役者は、正直あまりメジャーな方ではないようだけれど、本当に各キャラクターは素晴らしかったと思う。わたしは特に、エイリッシュのお姉ちゃんを演じたFiona Glascotさん、職場の主任のを演じたJessica Pareさん、そして、NYへの船中で出会う女性を演じた女優、役名を忘れちゃったから誰だかわからないんだよな……そもそも役名あったっけ? たぶん、Eva Birthistleさんじゃないかと思うけど、いや、この人は同じ寮に住んでいるバツイチの彼女役かな……ま、とにかく、この3人の女性がわたしはとても気に入った。みな、エイリッシュを助け見守る大人の女性で、とても心に残る演技だったと思います。特に、お姉ちゃんが本当に素晴らしい演技だったと思います。
 で、エイリッシュに恋する二人の男は、NYのイタリア男・トニーを演じたのがEmony Cohen君26歳。知らない役者だけれど、実に良かった。実にお前はいい奴だよ。イタリア訛りの英語も大変似合っていて、ちょっと今後注目したいすね。そしてもう一方の、一時帰京したアイルランドで出会うイケメン君を演じたのが、今や多くの話題作にちょこちょこ出て有名になりつつあるDomhnall Gleeson君33歳だ。『STAR WARS』のへなちょこ将軍ハックスや、『The Revenant』でのカッコイイ商隊の隊長、あるいは『Ex Machina』でAIロボ・ガールに心惹かれる青年など、多彩な芝居ぶりですね。どうやらちゃんと次の『SW』にも出るようだから、無事にスター・キラーから脱出していたようですな。わたしはまた、スター・キラーもろとも殉職しちゃったかと思ってたよ。今回の役は、とても物静かな紳士的なイケメンで、これまた今までとちょっと雰囲気が違ってましたね。お前も実にカッコ良かったよ。彼は今後、きっとどんどんいろいろな作品に出演していく注目株なんでしょうな。
 で、最後に監督と脚本をチェックして終わりにしよう。まず、監督はJohn Crowley氏。どうもアイルランドで舞台中心に活動してたっぽい人ですな。まだ映画もそんなに多くないすね。正直知らない人ですが、本作の演出は非常に、なんというのか、しっかりとしていて、堅実な感じですな。ちょっと名前は憶えておきたいです。そして今回は、脚本が非常に良くて、かなり名言と言うか、心に残るセリフが多く、大変良かった。その脚本を書いたのが、なんとわたしが去年絶賛した『Wild』(邦題:わたしに会うまでの1600キロ)を書いたNick Hornby氏だった。アカデミー脚色賞ノミネートも納得の素晴らしいDialogがとても多くて、もう、どのセリフを紹介したらいいか迷うけど、やっぱりこれかな。
 You'll feel so homesick that you'll want to die, and there's nothing you can do about it apart from endure it. But you will, and it won't kill you... and one day the sun will come out and you'll realize that this is where your life is.
 「あなたはきっと、ホームシックにかかるわ。それも重症。死にたくなるぐらいに。何をしても耐えられないでしょうね。でも、きっと耐えられる。ホームシックでは人は死なないの。……いつか、太陽が顔を見せるし、ここがわたしの生きる場所なんだって、分かる時が来るわ」
 ま、わたしのテキトーな訳で、字幕は覚えてないけれど、エイリッシュがラスト近くで、まるでかつての自分のように元気のない少女に向かって言うこのセリフが、そしてこのセリフを言うときのSaoriseちゃんの表情が、わたしにはとても強く心に残った。いやあ、ホントに素晴らしい映画でした。

 というわけで、結論。
 本作『BROOKLYN』は、とにかく多くの女性に見ていただきたい傑作である。特に、地方から上京して一人暮らしをしている女性には、初めて上京した時のことを思いだして、かなりグッとくるんじゃなかろうか? それから、さっき、インターネッツでこの映画のことを、実写版『ZOOTOPIA』だ、と評しているレビューを見かけた。確かに物語的に似ているかも。なので、『ZOOTOPIA』が好きな女子たちにもオススメです。わたし的には、ほぼ同じ時代のNYを描いた『CAROL』と非常に対照的?というか、別の道筋をたどったキャロル、というようにも感じた。キャロルも、本作のエイリッシュも、二人ともデパートガールだし(※ただし性格はかなり違うし、キャロルはマンハッタン、エイリッシュはブルックリン、かな)。なので、『CAROL』にグッと来た人にも、強くオススメしたいと思います。FOXも、さっさと公開すべきだったんじゃなかろうか。いやー、ホント、素晴らしい作品でした。以上。

↓ 原作小説は、パンフレットによるとアイルランド現代文学の巨匠Colm Toibin氏によるものだそうです。知らなかった……
ブルックリン (エクス・リブリス)
コルム トビーン
白水社
2012-06-02

 

 

 過去、アカデミー監督賞を2年連続受賞した監督というと、偉大なるJohn Ford監督とJoseph Leo Mankiewicz監督の二人しかいなかったわけだが、今年、そこにAlejandro Gonzalez Inarritu監督が加わって3人となった。そしてその作品『The Revenant』は、作品賞は逃したものの、5回のノミネートの末にとうとうLeonard DiCaprio氏にオスカーをもたらしたわけである(※ノミネートのうち1回は助演男優賞)。これはもう、観ないとイカンだろう、というわけで、公開前から大変話題となっている『The Revenant』 (邦題:レヴェナント 蘇えりし者)をさっそく観てきた。
 しかし……である。もちろん、DiCaprio氏は素晴らしく、これはもう主演男優賞の価値があるとわたしも納得であるし、その映像の迫力は凄まじいのだが、全体としてはどうもわたしの期待よりも下だったように思える。撮影が超過酷で大変だったとか、本物の内臓を食っただとか、はっきり言えば観客にはどうでもいいことが大きく取り上げられているような気がするが、物語としては、ズバリ問題アリで、若干気持ちが醒めてしまったのが残念にわたしには思えた。

 物語は実話ベースである。Hugh Glassという男が、西部開拓時代のアメリカにおいて、灰色熊(グリズリー)に襲われて重傷を負うも生還した話は伝説的に有名らしいが、日本人のわたしには知らない話である。映画は、年代や時代背景の説明が一切なく、いきなり始まる。だからどうにも、これは一体いつごろの話なんだろうとわたしは落ち着かなかったのだが、今さっき調べたところによると、Hugh Glassがグリズリーに襲われたのは1823年のことらしい。しかも実話では夏の話だそうだ。ま、映画は冬という設定になっているのだが、そういう改変はまったく問題ないし、不満はないけれど、せめて年代は教えて欲しかった。
 物語としては基本的には予告の通りではある。グリズリーに教われて瀕死の重傷を負うも、息子を殺されて、その復讐のために、息子を殺した男を追跡する話である。であるのだが、実際のところ、どうも話がつながらない。グリズリーに襲われるのは分かった。そして息子をぶっ殺されるのも分かった。でも、襲われて重傷を負うことと息子が殺されることに、どういう関連があるのかが良くわからない。ので、わたしは予告を観た段階では、一体どういう状況から息子が殺されるのだろう? という点が、今回の物語上の一番のカギだろうな、と思って劇場に向かったのである。
 そして観終わった今、そのつながりはよーくわかった。が、冒頭に書いた通り、やはりどうも、期待ほどの興奮は、わたしにはもたらされなかったのである。どうやらわたしは、物語、脚本がいまひとつ気に入らなかったのだと思う。わたしが観ていてよく分からなかった点が3つあるので、ちょっとまとめておこう。
 1つ目は、グラスの負傷の具合についてである。グリズリーに襲われたグラスは、完全に足折れてたよね? 明らかに変な方向に捻じ曲がってたよな? しかし……添え木も何もしてないのに、なんで歩けるんだ? もしかして隊長の「足を引っ張るんだ!!」「ゴキッ!!」というあの手当てで治っちゃったのか? ここがどうにもよくわからんポイントの一つで、要するに、グリズリーに襲われて負った傷の具合が良くわからんのである。どう見ても助かりそうにない重傷で、当初、一歩も動けずで、意識も混濁している。けど、どうして半ば埋められちゃっても這い出ることが出来たのだろう? わからん。どうしてなんだ? ひょっとして、それなりの時間経過があったということなのかな? それである程度回復したってこと? うっそお、そんなものか? 相当な出血だし、足折ってるし、栄養状態も悪く、衛生環境もひどくて普通は感染症で一発アウトだと思うのだが……。この、グラスの超人的な回復力と体力には、どうにもあり得なすぎて、わたしとしてはかなり、醒めてしまったのが現実だ。おそらく、時間経過、そして地理的・距離的な状況が観客にはわかりにくいのが難点なのではないかというような気がする。
 そして2つ目ののポイントは、フィッツジェラルドの行動だ。グラスはフィッツジェラルドの問いかけ「もうお前はもたない。楽にしてほしかったらまばたきで答えろ」に、明確に反応して、YESと答えたよな? 確かに、フィッツジェラルドはまったく同情できない悪党で、息子を殺した罪はどうやっても弁解できない100%有罪だけれど、グラスを捨てようとしたことについては、実際のところ常識的な判断ではなかろうか。誰がどう見ても、もうアウトだったし、ぐずぐずしていれば自分と仲間の命がヤバイことも明白で、踏ん切りがつかない若者たちに決断を下させるためにはやむなし、という判断は、もちろん冷酷ではあるかもしれないけれど、十分理解できるものだと思う。だとすれば、フィッツジェラルドも、きちんと息子に、お前の親父はもうダメで、親父自身も殺ってくれって言ってるぜ、とちゃんと説明すればよかったのに。そもそも、冒頭の襲撃を受けるシーンも、元はと言えばグラスが発砲して銃声をとどろかせてしまったから、だよね? フィッツジェラルドが、グラスに対して怒っていても、そりゃ無理ないと思う。冒頭の狩りのシーン、映像は素晴らしかったけれど、アレはいったいどういう意味があったんだろうか。
 ちなみに上記2点のわたし的よくわからんポイントについて、パンフには、「最愛の息子を失った悲しみと絶望、フィッツジェラルドに対する怒りと憎しみを原動力に死の淵から蘇った」と書いてある。そんなバカな。あんな重傷を負って、そりゃ無茶ですよ。おまけに絶望したら生きる気力なくなるのが普通だろうと思う。わたしはこのあたりがどうも納得できないというか、よくわからなくて、映画から心が離れてしまったように思う。もちろん、ここでグラスが死亡すれば物語もそこで終了なので、まあ、5万歩譲って、アリだとしよう。物語的にはそうしないと進みようがない。が、もう少し何か、グラスが生き残るための伏線や準備があっても良かったと思うし、フィッツジェラルドが息子を殺す動機も、大金を得るために邪魔だったのは分かるとして、グラスが死ぬことを承諾する部分は、正直、物語上不要だったと思う。むしろ、あそこは、グラスはあくまで死を受け入れない描写にした方が、それでも殺そうとするフィッツジェラルドとして悪党ぶりが明白になったのではなかろうか。
 そして、3つ目のよくわからんポイントは、追っ手であるアリカラ族だ。彼らは要するに、白人(今回の場合はフランス人)に拉致された娘ポワカを奪還するために旅をしていたわけで、実のところ、グラスの敵ではないわけだ。もちろん彼らにとっては白人や他部族は本来的には敵なのかもしれないけれど、彼らはきちんと、敵であっても一番の目標であるポワカ奪還のためには白人も利用する賢さがあるわけで、だとすれば、ここはやはりグラスを助ける役割をアリカラ族に付与しても物語は成立したような気がする。わたしはまた、重傷を負ったグラスを助ける存在がいて、それが追っ手であるアリカラ族なのかと想像していた。アリカラ族の使い方がイマイチすぎるのは、全体の流れの面でも、実にもったいない瑕疵であったように思えるのだが、どうだろうか。途中で、グラスを助けるなんとか族の男が出てくるけれど、彼の使い方ももったいなさ過ぎる。非常に雰囲気のあるカッコイイ男だったし、命の恩人なのに、彼の死にあまり意味がないのも実に残念だし、大変気の毒であった。
 というわけで、以上のような、脚本的な「何じゃこりゃポイント」が多かったのが、わたし的にイマイチだと思わせる原因なのではないかと思っている。これ、誰も気にならないのかな? 変に思ったのはわたしだけ? うーーん……。わたしとしては、実にもったいない残念ポイントである。

 ただし、である。冒頭にも書いたとおり、DiCaprio氏の演技ぶりはもう非常に素晴らしいもので、この点では劇場に観に行く価値アリである。凄い。わたしが瞠目したのは、やはりDiCaprio氏の狂気をはらんだ眼力であろう。オスカーにふさわしい、渾身の演技だったと思う。また、Tom Hardy氏の、なにか口の中に入ってんのか? と思うようなモゴモゴした声は正直いつも通りだが、その目に宿る狂気はDiCaprio氏に負けないほどの迫力があり、こちらも見ごたえ十分である。そして、高潔な隊長を演じたDomhnall Gleeson氏も『SW:EP VII』や『Ex Machina』での若干気弱そうな若造ではなく、毅然とした勇気ある男としてかなりカッコ良かったと思う。今回、DiCaprio氏、Tom Hardy氏ともに、顔のクローズアップがとても多く、ある意味二人の顔芸が凄まじいのが、一番のセールスポイントではなかろうか。
 しかし、これもわたしは実に気に入らないのだが、配給社のプロモーションはそういった作品そのものよりも、やたらと、Behind the Scene的な点に重点が置かれているように感じた。撮影現場が過酷な大自然の中であろうと、実は快適なスタジオで撮って背景は全部CGです、言われようと、観客としては正直どうでもいい。また、予算オーバーしただとか、スケジュールがガタガタになったとか、その様相はさながら『地獄の黙示録』のような撮影になったとか、そんなのは、プロデューサーの責任であって、観客には関係ない。映画として素晴らしく、観客の魂を引きずりこむ演技を見せてくれれば満足なのだから、そんな作り手の大変さを強調されても困る。ベジタリアンのDiCaprio氏が生肉にかぶりついた、とか言われても、そんなの知らんがな、である。もっともっと、DiCaprio氏の演技で称えるべき点があるのに、20th Century FOXのプロモーションはそんなことばかり前面に押し出していて、そんなのは、パンフのプロダクションノートに書いとけばいいだけだし、Blu-Rayの映像特典に入れて、うおお、マジか、すげえ!! と後で知ればいいだけの話だ。もっと、映画そのものの素晴らしさを宣伝してほしいものである。でも、仕方ないか……昨今の日本市場における洋画の低迷を考えれば、少しでも観客に興味を持ってもらうためには、こういうプロモーションも必要と言うことか、と納得することにしたい。

 はあ、全然まとまらない。映画としての出来は、もちろん非常に高いが、脚本上の問題点と、日本でのプロモーションの方向性がどうも気に入らなくて、散らかったレビューになってしまった。最期に、監督と音楽について触れて終わりにしよう。Inaritu監督による、自然光のみの撮影による画と、得意の長回し(のように見えるだけでCGを使っているのか、ホントに長回しなのかもう判別不明)の画は最高級に素晴らしく、見ごたえ十分である。話題のCGによるグリズリーも、超恐ろしい出来で本物にしか見えない。……けど、ほんとにナイフだけで戦えるのか、その点は若干謎だが、役者の演技と映像は見事にシンクロし、映画としての完成度は非常に高いと思う。ホントこれで脚本が完璧だったらと思うと非常に残念だ。
 で、音楽なのだが、正直ちょっと邪魔なぐらい音が大きくて、これは坂本龍一氏に責任はないと思うが、あまり印象には残らないものだった。エンドクレジットで流れる曲も、いま一つ物語と寄り添っていないような気もしたので、音楽としては先日見たばかりの『SICARIO』の方が断然上だと思う。オスカーを受賞したのは『The Hateful Eight』だが、確かに素晴らしかったけれど映画によりマッチしていたのは『SICARIO』だったとわたしは思っている。

 というわけで、結論。
 待ちに待った『The Revenant』をさっそく観に行ったものの、映画としてのスケールや完成度は抜群に高いのは間違いない、けれど、脚本上の妙なポイントがわたしを醒めさせてしまい、さらにはプロモーションの方向性も気に食わず、なんか文句ばかりになってしまったが、実際のところ、すげえ映像でわたしはとりあえずは楽しめました。でも、マジでもっと面白く創れたと思います。大変残念。と、いつもの言うだけ詐欺で締めよう。以上。

↓ Tom Hardy氏の悪党ぶりは、この名作でのバーンズ軍曹ことTom Berenger氏の芝居を参考にしたとのことです。でも、バーンズのほうがおっかないと思います。この映画の方がわたしは好き、かな。
プラトーン [Blu-ray]
トム・ベレンジャー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2014-02-05

 以前から何度かここでも書いた覚えがあるが、2015年の4月にUS国内で公開された映画の予告がもの凄くそそるもので、コイツは早く観たいぜ!! と思っていたものの、全く日本では公開される気配がなく、もう1年が経とうとしている映画がある。どうやらUS国内では全然ヒットしなかったようだが、元々イギリス映画だそうで、UK本国では2015年の1月に公開されていたらしいのだが、Rotten TomatoesMetacriticなどの格付けサイトでも、妙に評価が高く、わたしとしては見られないことを非常に残念に思っていた。折しも、主演女優のAlicia Vikander嬢はこの映画のあとに出演した『The Danish Girl』でアカデミー助演女優賞を受賞するなど、大変な活躍である。何で公開しねえんだよちくしょー、と思っていたら、わたしが心から憎むamazonでは、スペイン版のBlu-rayには、日本語字幕も入っているという口コミもある。くっそう、買うしかねえか、と思っていたところ、友人のMくんがシアトルに出張だと言っていたので、街中でBlu-ray売ってる店見かけて買い物する時間があったら買ってきてくんない? とごく軽く頼んでみたところ、行ったその日に「あったっす~。買っとくっす~」とSkypeで連絡があった。よーし、でかしたぞMくん!! ありがとう!! というわけで、さっそく観てみたわけであります。
 その映画のタイトルは『Ex Machina』。その意味は「機械仕掛けの神」と訳される「デウス・エクス・マキナ」から来ていることは明らかで、デウスが付いていないので要するに「機械仕掛けの」という事になるのだろう。この物語は、ズバリ、AI(=Artificial intelligence 人工知能)の話であります。ああ、調べてみたら、どうも今年の6月11日に日本公開されるみたいですね。日本語公式サイトも出来てるけど何にもコンテンツがないな……なんなんだこの手抜きは。そして、日本語Wikipediaにはやけに詳しく情報が載ってますな。奇特な方がせっせと書いてくれたのだと思うが、とりあえず、予告はこちらです。※20016/05/09追記:さっき、日本語公式サイトを見たら、日本語字幕入りの予告やら、かなりコンテンツが増えてました。

 Mくんが買ってきてくれたのはUS国内の北米版だったので、残念ながら日本語字幕は収録されていない。なので、わたしもきちんと物語を理解したのかかなり怪しいのだが、非常に興味深い物語であった。基本的には、上記予告の通りの進行だし、その後の展開も、たぶん誰もが予想する通りだと思う。ので、びっくりするような意外な展開はないのだが、それでもかなり面白かった。
 この物語には、登場人物が4人しかいない(勿論モブキャラは他にもいます)。
 ■Caleb(ケイレブ):主人公。BLUE BOOKという検索ポータルの会社に勤めるプログラマー。演じたのは、『SW :EP VII』にて、何かとカイロ・レンと手柄を張り合う小者のハックス将軍を演じたDomhnall Gleeson君32歳。今回は非常に繊細でいい演技をしていたと思います。
 ■Nathan(ネイサン):BLUE BOOK創始者。要するに、これはGoogleのことだと思っていいと思います。今回の事件の元凶たるAIを作ったスーパー・リッチな超天才。アラスカの山奥にある恐ろしく豪華でカッコイイLABOに暮らし、研究を続けている。演じたのは、これまた『SW :EP VII』にてカッコイイX-WING戦闘部隊の隊長、ボー・ダメロンを演じたOscar Isaac。今回は坊主頭&メガネ&髭もじゃ、という風体なので、とてもダメロン隊長には見えない怪演が凄い。
 ■Ava(エイヴァ):アンドロイド。ただし劇中ではRobotと呼ばれていたと思う。AI搭載の自立型自意識搭載マシン。演じたのは、『The Danish Girl』でオスカーを手にしたAlicia Vikander嬢。おっそろしく可愛い。 そしてCGが凄まじく、もう本物にしか見えない。彼女のロボットぶりは見ものです。
 ■Kyoko(キョウコ)。謎の日本女子。Nathanの身の回りの世話をする超美人。英語がわからないという設定で、そのため、彼女がその場にいても企業秘密をペラペラしゃべっても大丈夫、というよくわからない設定。彼女の正体については、まあ、想像通りの展開と言えるだろう。演じたのはソノヤ・ミズノさんという東京生まれのイギリス育ちという初めて見る方だったが、有名なのかな? 元々バレエ・ダンサーでモデルさんだそうで、しっかりと鍛えられた女性らしい肉体がすっごくきれい。美しい。フルヌードシーンあり。

 物語は、主人公がある日、社長のLABOに招かれることになる(社内の抽選に当たったという設定)ところから始まる。やったーと喜んで訪れた先は、ヘリでしか行けないアラスカの山奥。こんなところで社長は毎日パーティーとかやってんだろうなー、と、若干のんきにやってきた彼は、社長と会い、そこで社長が一人で行っている実験に協力することになる。その実験とは――自意識をも持つAI搭載ロボットの実験で、既に完成しており、社長はそのロボットと話をしてみてくれ、そして感じたことを教えてくれと頼む。好奇心満々で対面したロボットは、想像を絶する意識を持っており――というお話であるので、そう複雑な話ではない。
 ただ、この物語を面白いと思うには、ちょっといくつかの知識が必要かもしれない。
 一つは、『Turing Test』というものだ。その名の通り、かのAlan Turing博士が考案した、ある機械が知的かどうか(人工知能であるかどうか)を判定するためのテストである。まあ、くわしくはリンク先のWikiでも読んでおいてください。なお、Alan Turing博士といえば、去年公開された『The Imitation Game』の主人公です。あの映画ではBenedict Cumberbatch氏が演じてましたね。ま、それは置いとくとして、ともかく『Turing Test』がどんなものか知らないと、この映画は楽しくないと思う。
 もう一つ、知っておいた方がいい知識としては、AI開発の現状と問題点についての知識だろう。中でも、「AIボックス実験」というシリコンバレーで行われた実験のことと、AIにおける「Singularity(=技術的特異点)」に関して知っていると、この映画はものすごく面白い思う。たぶん、一番手軽なのは、わたしがこれまたここで何度も紹介している本を読むことではなかろうかと思う。つーか、わたしはこの本を読んで「AIボックス実験」のことや「Singularity」のことを知った。
人工知能 人類最悪にして最後の発明
ジェイムズ・バラット
ダイヤモンド社
2015-06-19

 この本については、わたしも去年、ここで取り上げてレビューを書いたのだが……サーセン。もうけちょんけちょんにけなしてしまったので、そのレビューはもう読まなくていいです。そこでも書いたのだが、この本は……致命的に構成が悪いというか、とにかく著者がずーーっと、「AIやベえ!! このままでは人類滅亡じゃ!! とにかくヤバい!!」と、ほざいているだけなので、あまり面白くないのです。しかし、事実としてのAI開発の現状と問題点を知識として得るには非常に良い本だと思うので、今となっては読んでおいてよかったと思っています。あんなひどいレビューを書いてサーセンっした。今回の『Ex Machina』という映画は、まさにこの「AIボックス実験」を映画にしたようなもので(いや、それは言いすぎかも)、非常に興味深かった。
 また、天才Nathanが作り上げたロボットも、そのビジュアルは抜群に素晴らしいし、設定となるハードウェア・ソフトウェアの部分もかなり面白い。まあ、ビジュアルイメージは、予告やパッケージにある通りなので、あまり触れないけれど、Blu-rayに収録されているメイキングで、ああ、こうやって撮ったんだというのが良く分かって、映画オタク的にはとても面白いアイディアだと思った。で、作中ではいろいろな専門用語が出て来るので、英語字幕を出していちいち一時停止して解読しながら観ていたものの、わたしの英語力ではまったく太刀打ちできない部分も多かったのだが、この仕組みを説明する部分は極めて興味深かった。
 作中の設定では、まずハードウェアについては、一つのキーデバイス(?)となる「Structured GEL」というものが出てくる。「構造化ジェル」とでも訳せばいいのかな……そんな言葉だけじゃ全然伝わらないな……要はナノ技術によって精巧につくられた「脳」にあたるものなのだが、実はこれはほとんど説明されなかった。問題はソフトウェアで、その「Structured GEL」にインストールされているというよりも、どうやら作中世界のGoogleにあたるBLUE BOOKの検索エンジンそのものが、AIの本体で、ここはちょっと分からなかったのだが、どうやら常時接続でBLUE BOOKとリンクしているらしい。いや、これが正しい理解なのか全然自信はないけれど、膨大なデータを単一のロボット素体の中に持たせることは、たぶん実際無理であろうというのは想像できるので、なんとなく、実感としては、なるほど? と納得できる設定であった。そして現実世界の、Googleの恐ろしさが妙にリアルに感じられるような気もする。
 わたしは、常日頃から、きっとGoogleが人類を滅ぼすんだろうなー、と結構強い思い込みをしている頭の悪い男だが、いずれにしても、おそらくは、スーパーAIは、間違いなく誕生してしまうと思う。それがヤバいことなのか、便利になってHAPPYなのか、諸説入り乱れているのが現時点での我々の棲む世界なわけだが、この映画が示したビジョンは、Singularityを超えたときの人類への警告を発するようなものではあまりない。もっとかなりemotionalなお話であると思う。だが、AIがそのEmotion、要するに喜怒哀楽という「感情」を持ったときどう行動するか。そう考えると、この映画で描かれた顛末は非常にあり得るような気もするし、いやいやいや、単に登場人物たちが抜かっただけっショ、とも思える、実に興味深いものであった。そういう意味で、この映画は、実に面白い。

 最後に、監督のことだけ備忘録として書いておこう。監督はAlex Garlandという人で、わたしは全然知らないのだが、どうやら元々小説家・脚本家で、本作も彼の手による脚本だそうだ。ちなみに、DiCaprio氏主演の『The Beach』の原作者だそうで、あの映画を撮ったDanny Boyle監督ときっと意気投合したんでしょうな、Boyle監督の『28Days Later』や『Sunshine』の脚本も、Alex氏によるものだそうです。 あっ!! なんてこった!! 2012年版の『JUDGE DREDD』の脚本もこの人なんだ。へー。面白いなこの人。初監督作品としては、非常に画もセンスがあって素晴らしい才能だと思うけれど、かなり淡々とした、冷めた物語進行で、それは画にも表れています。ので、派手派手しいハリウッド的な部分はほぼないと思ってください。ある意味、物語の盛り上がりも非常に淡々としていて、かなり地味です。この映画は。

 というわけで、結論。
 まだ日本未公開の『Ex Machina』を観てみたところ、確かにこの映画は非常に面白く興味深いことが良く分かった。が、これは……確かに、CGによる凄い映像はあるけれど、内容的にある種の特別な知識や好奇心が必要で、一般ウケは難しそうな気がする。単純にキャラクターの行動だけを表面的に理解しただけでは、えっ!? で終わってしまう可能性もあるので、うーーん……これは難しいっすね。日本での配給の買い手がなかなかつかなかったのも、ちょっと理解できました。たぶん、公開規模も非常に少なくあっという間に公開終了になると思いますが、わたしは、かなり気に入ったので、英語の理解度チェックのためにもう一度観に行くかもしれないっす。以上。

↓ スペイン版は日本語字幕入りらしいです。ホントかどうかは分かりませんので自己責任でどうぞ。わたしが買ってきてもらった北米版は、英語とスペイン語字幕だけでした。

 というわけで、『STAR WARS:EPISODE VII The Force Awakens』について、
 【1.わたしが絶賛する前半90分まで何が描かれたか】
 【2.多くの謎を提示したまま、物語はクライマックスへ】
 【3.残された謎と、問題点についてのまとめ】
 という形で昨日おととい、いろいろ書いてきた。結論としては、一昨日書いたとおり、前半100点、後半60点、トータル86.5点というのが現状のわたしの評価であるが、 この評価も、SAGAの終結を見届けた後になれば、変わるかもしれない。わたしの減点要因は、あくまで、「数多くの謎が謎のまま残っている」点にある。
 なので、今日は現時点でのキャストと監督JJについて、今のわたしが思っていることをまとめておいて、数年後、ああ、あの時のオレはこんなことを思ってたのか、アホだなあ、と未来のわたしが苦笑するであろう備忘録としておきたい。
<新人の部>
daisy
↑の写真はDaisyちゃんのInstagramより。かわええ……。
Daisy Ridley as "Rey" デイジーリドリー「レイ」 
  1992年生まれの23歳。十分可愛らしい娘さんで、表情が豊かなイギリスガールと言って良かろう。ほぼこれまでにまともな役は演じていないようで、ズバリ言えばド新人。しかし、笑顔も、しょんぼりしている顔も、怒っている顔もとてもいいと思う。体つきもほっそりとしたスレンダー女子で、ちょっと少年っぽさもあって、冒険の主人公としては申し分なしであろう。おそらくは今後のSAGAにおいて、どんどんシリアスな場面が増えるだろうから、可愛いだけじゃ通用しない。頑張っていただきたい。しかし……レイ……キミは一体誰なの?
John Boyega as "Finn" ジョン・ボイエガ「フィン」
  同じく1992年生まれの23歳。イギリス人。だけど発音は全部イングリッシュ弁ではなくアメリカ弁でやったそうです(とパンフに書いてありました)。この人はそれなりに本作以前に映画やTVドラマに出演しているようだが、ちょっと芝居振りとしては微妙。冒頭はかなり良かったのだが、ソロ船長が出て来て以降は、何というかもう完全にHarrison Fordの陰に隠れちゃって目立たなくなってしまった印象。まあ、今後どういう役割を果たしていくか知らないけれど、レイの相棒となって一緒に冒険することにはならない気配はある。ポーと友達になってレジスタンスとして、レイのピンチに駆けつける役割かな? かつてのソロ船長的な。だったらもっと、いろんな仕事や技能を覚えなさい。今のところ、口だけは達者で何も出来ない、典型的ゆとり小僧。そして現在、意識不明中。
Adam Driver as "Ben Solo" a.k.a. "Kylo Ren"  アダム・ドライバー「ベン・ソロ 別名:カイロ・レン」
 1983年生まれの32歳。アメリカ人。微妙ヅラ。それなりにキャリアアリ。 うーん、キャラが微妙すぎるけど、それは役者のせいではないので彼を責めるのもお門違いではあるけれど……昨日も書いたとおり、父殺しのシーンはもうチョイ、頑張って欲しかった。あと、キミ、もっと体ビルドアップしたほうがいいよ。見た目からして弱そうなのは……演出なのか? ベイダーの孫として、キミもさっさと改心した方がいいと思います。銀河の平和のために。今のところ、経緯は不明だが親に反発して(?)、悪に取り込まれた典型的な愚かなゆとり小僧。次の『EP:VIII』では、ルーク暗殺隊の隊長にでもなるんだろうな……そしてルークもぶっ殺してしまうに1万ペソ。
Oscar Isaac as "Poe Dameron" オスカー・アイザック「ポー・ダメロン」
 1980年生まれの35歳。グアテマラ出身アメリカ育ち。微妙ヅラ。10年以上のキャリアがあるし、彼が出ている映画をどうやらわたしは結構観ているようだが、まったく印象に残っていない。しかし今回のポーはカッコ良く、芝居振りも悪くなかった。今後も、レイたちのピンチに駆けつけるイカしたエースパイロットとして活躍していただきたい。彼の駆る黒塗りのX-Wingは非常にカッコイイ。コールサインの「ブラック・リーダー」もいいね。どうせなら、通常の3倍の出力にカスタムした機体を真っ赤に塗装して「赤い彗星」とでも名乗って…(以下略)。
Domhnall Gleeson as "General Hux"  ドーナル・グリーソン「ハックス将軍」
 1983年生まれの32歳。アイルランド人。イケメン 微妙ヅラ。まだキャリアは浅いが、結構な数の映画に出ていて、どうやらわたしは何本も彼を観ているらしい。が、やっぱりほとんど印象ナシ。『Harry Potter』のロンの兄貴で出てたみたいですな。日本では年明け公開の、わたしが非常に観たいと思っている映画『The Revenant』にも出ているようなので、チェックを忘れないようにしよう。役としては、きっと今後も、レンと手柄を競って、最高指導者に褒められたがる小者の将軍なので、まあ、SAGAの最後まで生きているとは思えないですな。レンにぶっ殺されるに2万クローネ。つか、キミ、ちゃんとスター・キラーから脱出したの? 大丈夫ですか?
Gwendoline Christie as "Captain Phasma" グェンドリン・クリスティー「キャプテン・ファズマ」
 年齢不詳とWikiには書いてありますが、IMDBによれば1978年生まれの37歳のイギリス人。今回素顔は現さず。TVの『Game of Thrones』でおなじみの女優だそうですが、わたしは良く知りません。今後、その銀に輝くヘルメットを脱ぐ場面が来ることを期待したい。わたしは、絶対美人に決まってんだろ、と思ってこの女優の画像をいろいろ検索したのだが……まあ、結果はこちらで見といてください……。意外と……若くはないんですね……。

<ベテランの部:新キャラ篇>
Max von Sydow as "Lor San Tekka"  マックス・フォン・シドー「ロア・サン・テッカ」
 1929年生まれの86歳。あまりにもキャリアが長くてもう紹介の必要もないけれど、一番最近わたしが観かけたのは、『Extremely Loud & Incredibly Close』(邦題:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い)で、主人公の少年と心を通わせる、しゃべらないおじいちゃん役であろうか。もうSAGAには出番ナシかな……もったいないけど、もっと彼が何者か知りたいものですね。
Lupita Nyongo as "Maz Kanata"  ルピタ・ニョンゴ「マズ・カナタ」
 1983年生まれの32歳。ケニアとメキシコの二重国籍。彼女をベテランの部に入れるのはアレですが、事実上初出演の映画『12Years a Slave』(邦題:それでも夜は明ける)でいきなりオスカー女優(アカデミー助演女優賞受賞)の仲間入りしてしまったので、ベテランの部にしておきました。ま、はっきり言ってわたしは『12Years a Slave』はあまり好きではないので、彼女も正直どうでもいい。まあ、役としては、モーションキャプチャーで描かれたエイリアンなので、知らなければあのキャラがLupita Nyongoとは分かりようがないけれど、間違いなく今後のSAGAにも出てくるのでしょうな。果たして何故彼女がルークのライトセーバーを保管していたのか、きっちりと説明していただきたいものです。ちなみに、その理由は「また今度教えるわ」と言ってました。
Andy Serkis as "Supreme Leader Snoke"  アンディ・サーキス「最高指導者スノーク」
 1964年生まれの51歳。イギリス人。今や、モーションキャプチャー俳優として超有名。なので、逆に素顔があまり知られていないのでは? 一応、普通に顔出しして役者としても活躍してるんだけど。まあ、『The Load of the Ring』のゴラムで大ブレイクしたおっさんですな。しかし、この役も、今後のSAGAで毎回登場することは間違いなかろう。どんな悪党なのか楽しみですな。意外とSWシリーズのキャラクターは、かなりうかつというか頭は良くない連中が多いので、是非ともスノークにはインテリの方向で悪い奴であっていただきたい。しかしなんであんなに巨大なホロビジョンなんですか? 生身のスノークが小さかったら、かなりガッカリしそうな予感。
Simon Pegg as "Unker Plutt"  サイモン・ペグ「アンカー・プラット」
 1970年生まれの45歳。イギリス人。ええと、こいつは、JJ版『STARTREK』シリーズのスコット機関長だとか、『Mission:Impossible』シリーズのベンジーでもお馴染みの、コミカルなおっさんですね。こいつは、自分のTwitterだったと思うけど、『EP:VII』の撮影にチョイ役で参加してきたぜ、イエーイ!! とはしゃいでいたのだが、役としては、レイが集めてきたガラクタを買い取るジャンク屋の主人の、あのでっかいエイリアン、アンカー・プラット役だったようですね。もちろん、外見からはまったくわかりっこない。ので、ま、どうでもいいです。
 あと、もう一度見るときに確認しようと思ってますが、レイを連行するストーム・トルーパーに、なんと007でお馴染みDaniel Craigがいたらしいですよ。ちゃんと台詞アリのようなので、来週、もう一度観てチェックしてみます(※12/21追記:レイがフォースで操って拘束を解くよう指示するストームトルーパーが彼らしいですよ。そう思って観ていると、ははあ、コイツがそうなんだ、という気もした)。ま、顔の見えないダニエル・クレイグよりも、きっちりと役のあった『THE RAID』の二人組のほうが嬉しかったな。イコ・ウワイス君の「シラット」という格闘技アクションは必見ですが、彼が今後のSAGAに出てくるかどうか……ボバ・フェット的賞金稼ぎとして出る道はまだ残ってると思いたい。

<ベテランの部:おなじみキャラ篇>
Harrison Ford as "Captain Han Solo" ハリソン・フォード「ハン・ソロ船長」
 1942年生まれの73歳。アメリカ人。我らがヒーローとしてもう何の説明も要らないでしょう。最近はすっかりおじいちゃん役ばかりだったけど、本作ではカッコ良くて本当に安心しました。再会するなり、レイアに、まーた同じ服着ちゃって(Same Jacket)、となじられるも、いや、新しいんだぞこれ(No, New Jacket!!) 、というやり取りを交わす様は、本物の夫婦のような空気感でしたね。また別のシーンでは、あなた、役に立ったのはデス・スターの時だけでしょ!! とキツイ一言を投げつけられても、いや、まあそうなんですけどね、と苦笑いで済ますあたり、お似合いの夫婦ですなあ。レイアとソロ船長のやり取りは、本作で一番良かったと思います。バカな息子を持って気の毒に……ルークも引きこもってる場合じゃないのになあ……。
Carrie Fisher as "General Ogana" a.k.a."Princess Leia"  キャリー・フィッシャー「オーガナ将軍・レイア姫」
 1956年生まれの59歳。アメリカ人。すっかり老けてしまいましたね……でもまだ還暦前なんですな。なんかもっと老けて見えるような。姫も元気で嬉しかったですね。まあ、将軍としての貫禄を見せるための、あえての恰幅と思うことにしたい。今後のSAGAにも連投は間違いないでしょう。ルーク兄さんに、さっさと戻って来い!! と活を入れていただきたい。彼女が、何らかのフォースに目覚める展開もなくはないだろうけど……アルテイシアというよりミライさん的なポジションでしょうか。
Mark Hamill as "Luke Skywalker"  マーク・ハミル「ルーク・スカイウォーカー」
 1951年生まれの64歳。アメリカ人。彼は、SW後、ほとんど見かけなかったけれど、わたしが一番印象的だったのは、John Carpenter監督の『Village of the Damned』(邦題;光る眼)かな。ゴールデンラズベリー賞にノミネートされてしまった駄作というのが世間的な評価らしいけれど、わたしはかなり好きな映画。いかにもカーペンターっぽさが残る最後の作品だと思うな。ま、それはどうでもいいとして、ルークですが、最近すっかり太っていたので、とても戦えないような無様なルークは見たくねえなあ、と思っていたのだが、きっちり、ある程度はダイエットしてくれたようで、非常に眼光鋭く良かったと思う。なんとなく、次の『EP:VIII』で殉職してしまうような気がしてならない。大丈夫かな? まあ、レイが一体どんなキャラなのか、次第でしょう。
Peter Mayhew as "Chewbacca" ピーター・メイヒュー「チューバッカ」
  1944年生まれの71歳。イギリス人。221cmの超長身。なんでも足を悪くして、『VII』に出られるかギリギリだったみたいですな。しかし、昨日も書いたとおり、本作における最高の演技を見せてくれたのは間違いなく彼だと思う。ソロ船長を亡くしたチューバッカの怒り・悲しみが、あの毛むくじゃらなメイクでも明確に伝わったもんな。本当に素晴らしく、心に染みたよ。絶対、ベン・ソロがカイロ・レンになる前の幼児時代を知っているだろうし、一緒に遊んであげたこともあるでしょうな……本当につらかったと思うよ。そもそも、チューバッカは『III』でヨーダと面識があることが明らかにされているので、ひょっとしたら現存しているクローン戦争最後の生き残りかもしれないね。もっと重要な役割を振ってください>JJ監督様。まあ、チューバッカは、レイというあたらしい相棒を得て、今後のSAGAでもファルコン号を飛ばせてくれることでしょう。

<監督篇>
J.J.Abrams JJエイブラムス/監督
 1966年生まれの49歳。アメリカ人。元々脚本家からキャリアをスタートさせていて、監督としてはまだ5本目。この男、わたしよりも少し年上だが、確実に、わたしとほぼ同じような映画を観てきているんだと思う。本物のオタク野郎だし。だから非常に、わたしのようなおっさんが観てグッと来る物語を作る。嫌いじゃない、が、大好きというのもなんだか悔しいので、全肯定はしませんが、やっぱりこの男は、「分かってる奴」だと思う。とりわけ、『STAR TREK』『STAR TEREK: Into Darkness』は素晴らしいとわたしは評価している。コイツが何を「分かっている」か、というと、「物語のポイントとそこに至る過程」をきっちり分かっているのだ。非常に、観客が望んでいるものを「分かっており」、同時に、きっちりと「そうきたか!!」と観客を驚かせる仕掛けを用意しておく。その点では非常に稀有な才能と計算能力を備えたオタク野郎だとわたしは思っている。あまり評判の良くない『Super 8』も、わたしは結構好きだし、制作として参加した『Cloverfield』はあのジャンルでは最高だと思っている。
 なので、『EP:VII』の監督に抜擢された時は、ああ、JJなら大丈夫だろう、あいつは分かってる男だし、とわたしは安心していた。で、実際、いろいろアラや問題点があるとはいえ、おそらくJJ以外にはここまでの『EP:VII』を撮れる監督はいなかったと思う。また確実に言えることは、シリーズの生みの親George Lucasではここまで面白い作品は取れなかっただろう、ということだ。何度も言うが、わたしは『EP:III』は未だに「コレジャナイ」と思っている。やはりもう、才能と愛のある第三者に委ねるべきだったことは、今回の『EP:VII』が証明してしまったのではなかろうか。
 まあ、とにかく、JJは良くやったと思う。今後のSAGAも心から楽しみにしております。
 が……今後、Disney戦略によるスピンオフとかいろいろ予定されているんだよな……頼むから変なの作って、世界観を壊さないでいただきたいと、それも一緒に心から願っております。

 ↑あとですね……頼むから……こういうの、やめてもらっていいですかw?

 というわけで、結論。
 『STAR WARS』SAGAは、次の『EP:VIII』が2017年、そして最後の完結編『EP:IX』は2019年だそうです。まあ、しょうがない、それまでは生きてみるとするか……。以上。

↓ アクションがすさまじい。ので、ご興味ある方はどうぞ。
ザ・レイド Blu-ray
イコ・ウワイス
KADOKAWA / 角川書店
2014-10-24
 

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