タグ:ダン・スティーヴンス

 アニメ版が日本で公開されたのは1992年9月とWikiに書いてあるが、そうか、もう25年も前なのか……と、なんというか唖然としたわたしである。あの頃わたしは二十歳そこそこ。この映画、映画館で観て、ビデオで見て、ともう何回見ただろう。そんなわたしなので、あの思い出の『美女と野獣』が最新CG技術を駆使した実写版として帰ってくる! おまけに主人公ベルを、ハーマイオニーでおなじみのEmma Watsonちゃんが演じる! というニュースを聞いて、おおっとマジか!と、やおら興奮していたわけで、今日初日を迎えた『BEAUTY AND THE BEAST』を、わたしは会社帰りに早速観てきた。一人で。
 まず結論から言うと、ほぼアニメ版通りである。一部細かい違いはあるが(とりわけお父さんとガストンがだいぶ違う印象)、歌はそのままと思ってよさそうだ。逆に、アニメ版は90分ぐらいと短いのだが、今回は129分ともっと長くなっていて、その分いろいろな部分がアップグレードされていて、歌も増えているような気がするし、役者陣の熱演もとても素晴らしかった。なんか結構の歌占有率が高まってたような気がしますね。要するに、わたしはすっかり魅了されてきたわけである。大変大変楽しめました。

 まあ、もう物語の説明はいらないだろう。自業自得とはいえ、呪いによって野獣の姿に変えられてしまった王子様が、ベルという女子との出会いによって、真実の愛に目覚め、人間の姿を取り戻すお話である。はっきり言って、現代に生きる我々が、超客観的にこの物語を見聞すると、かなり突っ込みどころは多い。また、そりゃねえべ、と言いたくなるような展開であることも、認めざるを得ないだろう。
 だけどですね、いいんですよ、そんなことは。
 いつもどうでもいい文句ばっかり言っているわたしが、そんなことをいうのも非常にアレですが、そんな現実的な突っ込みをして、ドヤ顔してる野郎がもし身近にいたら、そんな時は「あはは、そうだね~」とでもテキトーな相槌を打って、二度とそいつに近づかない方がいいと思う。そういう手合いは、ほぼ間違いなく、つまらん男だと思います。
 この映画は、美女と野獣の二人を眺め、その歌にうっとりし、作品世界に浸るのが正しい姿だとわたしは思う。とにかく各キャラクターがとてもいいんだな。というわけで、今回はキャラまとめをしておこうと思う。なお、わたしは初回としては当然字幕版で観た。だって、Emmaちゃんの歌声を聞かなきゃ、意味ないっショ。しかしながら、近年のディズニー作品は、日本語吹き替えにも力が入っており、今回も野獣をミュージカル界のプリンスの一人、山崎育三郎氏が担当する気合の入れようなので、わたしはこのBlogで何度も書いている通り、ミュージカルが大好きな男としては、日本語版も観たいと思っている。さてと。それじゃまとめてみるか。
 ◆ベル
 主人公の女子。読書が大好きで、村では「変わり者」だと思われている。村でお父さんと二人暮らし。アニメ版ではそのあたりの説明はほぼないが、今回はお母さんを幼少期に無くしていて、当時パリに住んでいたことも明かされた。パリに行ってみたいとずっと思っている。もちろん美人。今回ベルを演じたのは前述のとおりEmma Watsonちゃん。うおっと!マジか!もう27歳だって。なんてこった……あのハーマイオニーがアラサー女子か……。今回は歌が多いのだが、はっきり言って、超うまい、というレベルではない、けれど、超頑張っているというか、全く問題なしの歌唱力であった。実際素晴らしかったと思う。今回、ベルが野獣の城に囚われる理由も明確だったのが新鮮。アニメ版とちょっと違ってました。おまけに脱走しようとしたり、意外とアクティブ。そういうシーンってアニメ版にあったっけ? まあとにかく、はじける笑顔が最高ですよ。
  ◆野獣
 元々は、贅沢三昧のお坊ちゃんだったが、城にやってきた老婆を冷たくあしらったことで、その老婆=魔女の怒りを買ってしまい、呪いにかけられる(※ここで無粋なツッコミは禁止です)。アニメ版では四足歩行するシーンもあったような気がするけど、今回はずっと立ってましたな。とにかく、野獣の毛の質感が凄く、非常にモフモフ感があって素晴らしい出来栄えです。そう、野獣をはじめとして、お城なんかもどこまでがセットでどこまでCGなんだかもうさっぱり区別がつかないさすがのDISNEYクオリティが半端ない。野獣もあれはほぼCGだよな? 実物なのかな?? さっぱりわからんけれど、顔の毛の質感はすごいし、あと、わたしは猫の鼻が大好きで、毎日我が家の宇宙一可愛いお猫様の冷たくしっとりした鼻をぐりぐりと頬擦りする変態なんですが、今回の野獣の鼻も、超触りたくなるような、実にネコ科系の鼻でした。そして、演じたのはDan Stevens氏。正直わたしはよく知らない人で、どうやらわたしが観たことのある作品は、偶然両方ともこのBlogでレビューを書いた『誘拐の掟』『靴職人と魔法のミシン』の2本だけでした。この人も、歌はそれほど超うまい、というわけではないけれど、それでもやっぱり大変よかったと思う。人間化した時のイケメンぶりはなかなかでした。
 ◆ガストン
 村のイケメン。アニメ版ではなんか狩人的な乱暴者のような感じだったけれど、今回は従軍経験ありのもうちょいスマートなイケメンでした。演じたのがLuke Evans氏なのですが、まあカッコいいすね。アニメ版では最初からかなり悪党感があったけれど、今回は登場時はさわやかイケメンでそれほど悪党ではなかったのに、なんか途中から急にブチ切れたり、ちょっと変わってましたね。なお、Luke氏は、わたし的には今回歌が一番うまかったような気がします。なかなかの美声で、非常にカッコよかったす。歌は。ちなみにLuke氏はLGBTの方で、カミングアウト済みなのは有名だと思うのだが、今回は、手下のル・フウというキャラがやけにガストン大好き的な空気を出していて、はっきり言ってちょっとアレだと思った。その設定は別に必要なかったのでは……。ま、メリケン国は差別してませんアピールが必要な国だからな……。ちなみに、そのル・フウを演じたのは、Josh Gad氏で、彼は『アナ雪』のオラフの声でおなじみですな。
 ◆モーリス
 ベルのお父さん。アニメ版では村の発明家で変わり者、的なキャラだったと思うが、今回は、ありゃなんだろう……美術工芸職人かな、オルゴールを製作(修理)したり、絵も描いたり、みたいな人になってました。さらに今回は、その品を納品するために旅に出たときに野獣の城に迷い込み、帰りに薔薇をベルのために買ってくる約束をしてたことを思い出して、城の庭に咲く薔薇を摘んでしまい、野獣に泥棒野郎め!と囚われることに。演じたのはベテランのKevin Kline氏。この人の作品はいっぱい観てるなあ……そうそう、さっきWikiで初めて知ったけれど、この人、我々40台のおっさんの青春のアイドル、Phoebe Catesさんの旦那ですって。年の差16歳ですと。 
 ◆ルミエール
 3本のろうそくの灯る燭台に変身させられてしまった元・お城の使用人。主人思いでありベルにも優しく接するナイスキャラ。なんと演じたのは、マスター・オビ=ワンでおなじみのEwan McGregor氏ですよ。わたし的にはこの人が歌えるとは大変驚いた。しかも全然問題なしの歌唱力! いいじゃないすか! と大変わたしは称賛したいと思います。ラスト、呪いが解けて人間化しても、メイクがすごいので、Ewan氏に見えないのがちょっと笑っちゃった。誰だよ!みたいな。
 ◆コグスワース
 同じく、時計に変身させられてしまった元・執事のおじいちゃん。執事だけあって御主人派で、何かと細かい。けど、ルミエールとのナイスコンビネーションは実にイイ。演じたのは、ガンダルフあるいはマグニートでおなじみのSir Ian McKellen氏77歳。このお方もLGBTで有名ですが、まあ関係ないすね。Ianおじいちゃんも歌えて驚きです。ラストで人間化した時、これまたすごいメイクなんだけど、この人はすくにIan氏だと見分けられます。
 ◆ポット夫人
 同じく、ティーポットに変身させられてしまった元・お城のメイド長。息子のチップも同じくティーカップに。アニメ同様、チップはちょっと飲み口が欠けてます。で、ポット夫人を演じたのはイギリスが誇る名女優Emma Thompson女史。今回、あの有名なベルと野獣の二人きりの舞踏会で名曲「Beauty and the Beast」を歌ってくれたのはポット婦人でした。これって……アニメもそうだったっけ?

 とまあ、メインどころはこんな感じでしょうか。
 実は……今回はもう書くことがないんすよね……冒頭に書いた通り、物語の感想を書こうにも、つまらんことしか書けないんすよね……いちいち、あれって変じゃね? みたいに突っ込んでも無粋なだけなので 、やめときました。

 なので、もうさっさと結論。 
 25年前にアニメ版にほれ込み、何度も観た『BEAUTY AND THE BEAST』。最新CGを駆使した実写版がやっと日本でも公開されたので、早速初日の今日、観てきたわけだが、まず、期待通りの大変素晴らしい出来てあったことは間違いない。わたしのアニメ版記憶よりも歌が増えているような印象だが、正確なところは調べてないのでわかりません。そしてキャストたちの歌も大変上等。映像ももちろん、世界最高峰のDISNEYクオリティであり、まあ、観ない理由はないすね。わたしは大満足です。大変すばらしかった。あんなのお子様向けだ、なんて思っている大人でも、十分楽しめるとわたしは思うのだが、もし観に行って、つまんねえ、なんて言っている男が身近にいたら、なるべくそいつとは距離を置いた方がいいと思いますよ。 いや、そりゃあ、物語的にはアレなのは認めますよ、ええ。でもね、いいんだよそれで。だって、おとぎ話なんだから! 以上。

↓ 一応、WOWOW録画して保存してあります。明日また、久々に観るかな……。

 つい先日、闘うパパでお馴染みのLiam Neeson氏主演映画『RUN ALL NIGHT』をWOWOWで観て、ここでもレビューを書いたが、先週もう1本、同じようなLiam Neeson映画がWOWOWで放送されていたので、彼の映画が大好きなわたしとしては当然録画し、観てみたわけである。そして結論としては、今回はパパではなかったけれど、実に渋い探偵モノのハードボイルドで、わたし的には大変楽しめたのであった。その映画のタイトルは、『A Walk Among the Tombstones』。直訳すると「墓石の間の散歩する」、ってことだが、日本での公開タイトルは『誘拐の掟』という作品である。 

 物語の大筋は、上記予告の通りである。ただし、時系列が相当ぐちゃぐちゃに編集されており、この映画の良さは一切伝わらない予告なので要注意だ。わたしはまったく予備知識なく観たわけだが、観終わって、これひょっとして……? と思い、調べてみたところ、やはり、明確に原作小説の存在するハードボイルドであった。著者はLawrence Blockという大ベテラン作家。わたしは読んだことがない作家だが、なんと80年代にわたしが観てかなり好きだった映画『800万の死にざま(Eight Million Ways to Die)』の原作者で、さらに言うと、なんと、同じ主人公の「マット・スカダー」シリーズであったのだ。これは全然知らなかった。1986年公開の『800万の死にざま』において、Jeff Bridges氏が演じたキャラクター、マシューが、今回Liam Neeson氏が演じた主人公マットその人だったわけで、わたしとしては、マジか!? と大変驚いた。というわけで、今回の原作となったのはこの作品らしい。

 ほえ~、そうだったんだ、とわたしは30年前に観た『800万の死にざま』という映画を懐かしく思い出したが、今回の『誘拐の掟』を観終わって、これってひょっとして……? と思ったのは、なんというか……妙に文学的な匂いのする映画なのだ。なので、これは原作があるんじゃねえかしら、と思ったのだが、とりわけ主人公マットの雰囲気がイイ。また、予告に一切現れない、ホームレスの少年も非常にキャラが立っていて、過去を持つ男と、彼にあこがれる少年のやり取りは大変好ましく、ハードボイルド小説の香りがぷんぷんしてくる物語であった。
 主人公、マット・スカダーは元警官。1991年にとある事件が起こり、警察をやめ、1999年の現在は、免許登録をしていないいわばもぐりの私立探偵として生きている。そんな彼が、アル中克服プログラムで出会った男から、弟に会って欲しいと依頼され、しぶしぶ会いに行くと、その弟は、妻を誘拐した犯人を捜して欲しいとマットに依頼する。そんなのはFBIの仕事だぜ、と断るマット。しかし、既に誘拐された妻は惨殺されていて、その異様な様に、やむなく手を貸すことにするのだが――という話である。
 ストーリーとしては、その異常殺人誘拐魔を追う話と、マット自身の物語の2つの流れがあって、捜査の中で知り合った少年が、二つの物語を結びつける役割をしている。わたしとしては、正直なところ重要なのはマット自身の物語の方だと思えた。過去を悔やんでいる男。どうにも取り返しの付かない過去を抱えながら、それでも何とか正しく生きて行こうとする疲れたおっさんの姿は、やっぱり我々おっさんの心には響くものがあって、Liam Neeson氏の素の状態に近い芝居振りも大変良かった。今回は別にスーパー腕利き殺し屋でもないし、ある意味普通の人なので、少年とのやり取りも、態度こそぶっきらぼうだけれど意外と優しいおっさんで観ていて安心できる。
 ただ、だいぶ褒めてしまったけれど、映画として微妙な点もあって、例えば1991年の事件から現在時制の1999年まで何をしてどんな生活だったのかはよくわからないし、意外と家や家具は整然として金はかかってそうだし(=つまり金にはあまり困ってないっぽい)、あるいはまた、別れたとだけ語られる奥さんや、子供がいたのかとか、背景はほぼ描かれない。これはきっと原作小説だともう少し補完されているんじゃなかろうかという気はする。また、なんでまた、いまさら1999年を舞台にしているのかもよくわからない。これは原作小説がそうだから、そのまま採用しているのだと思うが、あまり意味がなく、別に2015年にしても良かったようには思う。それと、肝心の、異常な誘拐殺人事件の方も、あまり背景は語られないので、犯人の異常性の説明はほぼなく、単に異常者だったとしか語られない点も、原作小説ではもっと細かい背景があるんじゃなかろうかとは感じた。
 さて、最後に役者陣と監督についてチェックしておこう。
 主人公のLiam Neeson氏はもういいよね。この主人公に、弟と話をしてみてくれと依頼に来る、ヤク中のダメ兄貴を演じたのは、Boyd Holbrook氏34歳。特徴ある顔で、フィルモグラフィーを見ると意外といろいろな映画でわたしは見かけているはずなのだが、明確な役は全然覚えていない。ただ、先日レビューした、Liam Neeson作品『RUN ALL NIGHT』で、組織のボスのバカ息子を演じていたのが彼でしたな。
 それから、彼の兄貴で、主人公に妻を誘拐した野郎を探してくれと依頼する弟を演じたのがDan Stevens氏33歳。彼は、これまた以前ここでレビューを書いた『靴職人と魔法のミシン』にも出てましたな。あの映画では、主人公の隣に住むイケメン・リア充青年の役だったかな。
 あと、主人公に懐いてくる少年ホームレスを演じたのが、Brian "ASTORO" Bradley君19歳。え、19歳!? もっとガキに見えたけどな……。映画が2014年の作品らしいので、出演時は16歳ぐらいってことか。それなら納得かも。彼は本職はラッパーだそうですな。意外と今後、活躍するような気がしますね。名前は覚えておこう。
 最後、監督はScott Frank氏56歳。この人は元々脚本家みたいで、本作の脚本も自身によるものみたいすな。監督としては本作が2本目ぐらいだけど、脚本家としてのキャリアは長いすね。わたしが観た映画もいっぱいあって驚きだ。日本ロケで話題になった『WOLVARINE:SAMURAI』の脚本も、この人がクレジットされてるみたいすね。そうなんだ。へえ~。

 というわけで、結論。
 本作『A Walk Among the Tombstones』(邦題:『誘拐の掟』)は、わたしとしては結構気に入った。しかし、映画としてはまったく売れなかったようだし、評価もかなり微妙なラインなので、せっかく原作はシリーズモノなのだが、映画の続編は期待できないだろうと思う。本作が気に入ったわたしとしては、主人公マットをもっと知りたいと思うので、大変残念だ。原作読んでみるかな……。以上。

↓ シリーズの5作目っぽいな……よくわからんけど、映画は大変面白かった。そして肝心の映画は古くてBlu-rayは発売されていない模様……。
八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ローレンス ブロック
早川書房
1988-10



 

 現在、日本では今年のアカデミー作品賞及び脚本賞を受賞した『The Spotlight』(邦題:スポットライト 世紀のスクープ)が公開されているが、今のところイマイチわたしとしては観に行く気になっておらず、とりあえずスルーで、きっと1年後ぐらいにWOWOWで観て、ああ劇場に観に行くべきだった、と後悔することは確実のような気がしてならないが、とりあえず、明日か明後日の土日のいずれかに、監督賞と主演男優賞などを受賞した『The Revenant』の方を観に行くつもりでいる。
  ところで、『The Spotlight』の公開に合わせたのだと思うが、WOWOWで先日、『The Spotlight』の監督であるTom McCarthy氏の過去作品が放送されていて、わたしは観ていない映画だったので、とりあえず録画し、昨日の夜、ぼんやりと観てみた。結果、ははあ、なるほど、この映画は絶賛はできないが、きっと監督は真面目な人なんだろうなあ、と思った次第である。
 というわけで、昨日わたしが観た映画は『The Cobbler』。 邦題を『靴職人と魔法のミシン』という、ファンタジックコメディである。

 物語は、もう上記の予告の通りである。主人公は冴えない中年の靴の修理屋さん。ある日、ミシンがぶっ壊れてしまった。折しも、ガラの悪い黒人青年から、今日中に絶対直せよ!! と言われた靴を修理中である。困った。あの野郎がどんなことするか分からん。ヤバい。と、ここで靴屋さんは、倉庫にしまいっぱなしの、先祖伝来の足踏みミシンを思い出す。そうだ、あれだ!! ということで、さっそく足踏みミシンでせっせと靴を直したものの、あのおっかない青年はいつまで経っても引き取りに現れない。なんだよもう、すげえ頑張って急いだのに……と、ふとサイズを見ると、10.5サイズ。おっと、オレと同じサイズじゃん。と、何気なく履いてみたところ……鏡に映った自分の姿が、あの黒人青年になっており、What the hell is going on !!? ――とまあそんなお話である。そして主人公は、店内に山積みの引き取られていない靴の中から、10.5サイズの靴を片っ端から「魔法のミシン」で直して履いてみると、やはり、どうやら元の持ち主に変身できる謎能力があることを知る。そしてその能力を使って、ちょっとした悪戯を始めて、とある事件に巻き込まれていくのだが……という展開である。
 このアイディアは、なかなか面白いと思うし、結末も、それなりに美しくまとまってはいるのだが、どうにもいくつか問題点というか、若干これはどうなんだという部分があって、わたしとしては手放しでは絶賛できないかな、と思った。ちなみに、調べてみたところ、Rotten TomatoesMetacriticなどのUS格付けサイトでもかなり酷評されていて、評価は残念ながら低いようである。
 しかしながら、アイディアは非常に優れていて、わたしとしてはそんなに酷評するつもりは全然ない。恐らく脚本上の、物語上の問題点は二つあって、一つは、主人公の悪戯が犯罪にまで発展してしまったことと、もう一つは、最終的なオチの付け方だろうと思う。全体的なトーンが、もっと明るいコメディでハートウォーミング系あれば良かったのだが、空気感として若干中途半端のような気はした。それゆえ、どうも素直に笑えない部分があったのが、わたしとしては少し残念だ。また、最後の落ちも、かなりええっ!? と驚きがあって、それならなんでもっと早くに……と思えるような、やや突拍子もないものだったので、そこもやや興ざめではある。もう少し、コメディに明るい方向で振りながら、事件もコミカルに描いていれば、最後は心温まる物語に出来たんじゃないかな、というのが、いつも通りのわたしの言うだけ詐欺的結論である。魔法のミシンと、それで直された靴を履くと持ち主に変身できる、というアイディアは秀逸なだけに、実にもったいないと思う次第である。
 で。キャストと監督を最後にチラッとまとめておこう。
 まず、主人公の冴えない中年靴職人(正確には自分でオリジナルを作っているわけではないので、単なる靴修理屋さん、と自分も言ってた)を演じたのは、Adam Sandler氏。US国内では人気のコメディアン。去年観た『PIXEL』の主人公ですな。この人は、まあ、どうやら好き嫌いのわかれる方のようだけれど、意外と泣かせる落ち着いた演技も出来る器用な男であるし、もともと人気お笑い番組「SATURDAY NIGHT LIVE」の脚本家(=構成作家みたいなものか?)出身で、映画の脚本や製作までやる才能あふれるお人なのだろうと思う。本作では、NYCのロウアー・イーストサイドを舞台にしており、去年わたしもぶらついてみたので、土地の空気感や、いかにもあの辺にいそうな、イケてない、冴えない感じの中年男を好演していたと思う。ほんと、NYCに行ってがっかりしたことはいっぱいあるけど、中でも、とにかく建物が古くて汚い点と、全然おしゃれじゃなくイケてない疲れた人々ばっかりだなーというのは非常にショックだったっす。ともあれ、Sandler氏の芝居ぶりは実に悪くなかったと思います。
 そして、冒頭に紹介した監督だが、今年見事にアカデミー作品賞と脚本賞を受賞した、『The Spotlight』を監督したTom McCarthy氏である。フィルモグラフィーを見てみると、この人、意外と役者として普通に映画に出ている作品が多く、その中にはわたしが観た映画も結構多くて驚いた。でも、申し訳ないが全く記憶にない。『PIXEL』にも出演してたとは。一体どんな役だったのか、さっぱり記憶にないが、イェール大学を出てるインテリなんすね。へえ~。で、本作の脚本も手掛けているのだが、わたしが冒頭に、「この人は真面目な人なんだろうな」と書いたのは、物語の進行が、意外とリアル、いや違うな、なんと言えばいいのか、ありうべき道からは外れてないというべきかな、このキャラクターならこういう行動をとるし、その結果はこういう道筋をたどる、ということかな。要するに、「魔法のミシン」という一つの嘘を、きちんと現実で包んでいるのである。結果、ちょっと映画としては真面目な話にそれてしまって、明るいコメディ色がやや損なわれてしまったのだと思うが、妙な破綻はなく、まっとうであると思う。故に、きっと監督と自ら脚本を書いたTom McCarthy氏は真面目なんだろうなーと思った次第です。はい。ま、最後のオチは突飛ですな、あれは。ちなみに、かの『UP』(邦題:カールじいさんの空飛ぶ家)の原案も、このMcCarthy氏だそうです。知らんかったわ。

 ところで、「他人に変身出来たら何をするか?」という本作のポイントとなる問題は、いつもの自分ではできないことをする、いつもの自分では入れないところに入る、という悪戯で本作では描かれるが、良く考えると、それは「透明人間になれたら何をする?」という場合と実によく似ていると思った。そうか、自分じゃない誰かになる=自分を消し去る=透明人間になる、に近いんだなあ、と気が付いた。しかし、どんな姿になろうと、たとえ自分の姿を消しても、結局、中身は自分自身である。だから、魔法を使ってズルをしても、結局痛い目に遭うのは自分ですよ、ということをこの映画は見せつけてくれるわけで、そんな点も、わたしは、この映画は実に真面目だなあ、と思いました。

 というわけで、結論。
 『The Cobbler』(邦題:靴職人と魔法のミシン)という作品は、アカデミー作品賞を受賞したTom McCarthy監督の前作である。その興味があったので観てみたわけだが、アイディアは抜群なれど、若干手放しでは絶賛できない微妙作であった。でも、US国内での評価はもうちょっと高くてもいいと思います。わたしは嫌いじゃないです。あと、日本語タイトルの『靴職人と魔法のミシン』も、いいセンスのタイトルですね。なかなか魅力的な邦題だと思います。以上。
 
↓ 特殊な能力を身に付けて、浮かれて遊んでいるうちに深刻な事態に陥る、という点では、やはりわたしはこの映画をおススメします。
クロニクル [Blu-ray]
デイン・デハーン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2014-06-18

↓ そして透明人間、と言えばこの映画に決まってます。KEVIN BACON先生はいつ見ても最高。大好き。 
インビジブル [Blu-ray]
エリザベス・シュー
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2010-04-16
 

↑このページのトップヘ