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 はーーー。なんつうか、毎日毎日、生きるってなんなんだよ……と10代の悩めるクソガキだった頃以来、そんなことをぼんやり考えるわたしである。何にも悪いことなんてしてないし、善人として生きたいと日々真面目に過ごしていても、残念ながらいいことなんて、あんまりねえなあ……というのが、この頃のわたしの実感だ。人生100年時代とか言われてもなあ……オレ、それまでもちそうにないよ。こころ的に。
 ま、そんなネガティブ方面に思考が回るのを食い止めるべく、今日は晴天、朝から冷蔵庫の中身を盛大に捨ててゴミ出しをし、3日分の洗濯をして、もうついでにあれもこれも洗っちまえ!と2回洗濯機を回してさっぱりしたところで、よし、出かけるか!と地元のシネコンまでチャリをぶっ飛ばして、映画を観ることにした。
 今日わたしが観た映画は、DCコミックス原作の『SHAZAM!』であります。もう何度もこのBlogで書いている通り、わたしはMCU、マーベル作品は大好きすぎて堪らないほどなのだが、DCヒーロー作品には、若干その勘違いした方向性に首をかしげていた。しかし、DC前作の『AQUA-MAN』が、どうせクソ映画なんでしょと高をくくって観に行ったら、これがまた超面白かったわけで、今回の『SHAZAM!』に関しても、うーーん、これはいくら何でもアウトだろうな……と相当警戒して観に行った結果、結論から申し上げると、これまた超楽しくて面白かった!のであります。なんだよ、おもしれえじゃん! てのが、わたしの素直な感想だ。
 というわけで、以下、一つ絶対知らないで観る方が面白い、重大なネタバレにも触れる可能性大なので、まだ観ていない方は以下は読まず、今すぐ劇場へ観に行ってください。マジでこの映画、アリ!です。

 つうかですね……この予告を見て、やべえ、こりゃ面白そうだ、とは全く思えないよね。少なくともわたしは、この予告を見てこの映画を観たくなることは全くなかった。まず、わたしはズバリ言えば、ガキが嫌いである。自分自身のガキ臭さを棚に上げて言っている自覚はあるが、とにかく、仕事上の付き合いでも、電車の中でも、20代以下のガキの行動を観ていると、本当にイライラすることが多い。実際、憎んでいると言ってもいいぐらいだ。
 なんでそんなにガキに対して憎悪を抱くかというと、一言で言えば「思慮が足りない」からである。ちょっと考えればわかることが分からない。もちろん自分もそうだったわけだが、初老の今、そんな当時の自分を棚に上げて、頭に来てしまうのである。まさしく老害。まあ、そういったわたしのどす黒い感情は表に出すことはないけれど、この予告で描かれるような、まさしく「悪ノリ」全開のクソガキには、キッツイお仕置きが必要だぜ? とか思ってしまうのである。
 しかし本作の本編では、確かに主人公のガキにはイラつくものの、それよりも、主人公の少年の周りに、とてもイイ人が何人もいるし、一応反省らしき態度はとるので、何となく許せてしまうんだな。あまつさえ、どんどんと物語にはまり込んで、結果、大興奮してしまうわけで、これは、物語のテンポがいいのと、キャラクター設定のおかげだと思う。
 物語は、冒頭1974年だったかな、今から45年前から始まる。その場面では、一人の少年が魔術師シャザムにある意味強制的に召喚され、その資質を試されるのだが、あっさり失格判定され、そのせいでその少年の人生は歪んでしまう。
 そして場面は現代に移り、別の少年の描写が始まる。その少年は、幼少期に母とはぐれて迷子になり、何人もの里親のもとを転々としている不良少年だ。その少年はずっと母を探しているために、警官にいたずらをかまして警察のデータベースを勝手に閲覧したりとやりたい放題だったのだが、全然母は見つからない。そして新しい里親に引き取られることになる。その新しい家庭(グループホーム)は、少年のような身寄りのない子供が5人いて、結構仲良く暮らしている。そんな家庭に引き取られた少年は、学校でいじめられていた同居少年を助けて、地下鉄に逃げ込むのだが、そこで魔術師シャザムに召喚され、資質を試されることなく強引に、「シャザム」の力を押し付けられてしまいーーーてなお話である。
 この後、スーパーパワーを得た少年と、冒頭で失格となった少年(現代ではもうハゲのおっさん)のバトルとなる、てな展開である。おまけにそのバトルも、DCコミックお約束のどかーん、ばきーん、の殴り合いばかりで、決着の付きようがないものだ。いつも通りテキトーにはしょりましたが、どうすか? 面白くなさそうでしょ?
 しかしですね、ホント、観ていてストレスが少ないというか、テンポがとてもイイんだな。そして、とにかく主人公のクソガキが引き取られた家の、5人の子供たちがとってもイイ奴らなんすよ! わたしはそこがとても気に入ったすね。というわけで、以下、キャラ紹介と演じた役者をまとめてみよう。
 ◆ビリー・バットソン:主人公の少年。クソガキ。「シャザム!」と叫ぶと大変身(※面白いことに、発声しないと変身できないため、水の中では変身不可みたい)。仮面ライダー的で、日本の特撮を愛するわたしとしては大変気に入りました。しかしなぜ彼が「シャザム」の力を得る資格があると判定されたのか、に関しては、甚だ疑問が残る。どうやら魔術師シャザムの寿命が尽きてしまいそうで、おそらく、もう誰でもいいや、という状態だったようにわたしには見えた。それでいいのかよ!! とわたしはこの経緯にはもう、マジかよ……となかば呆然であった。性格は悪いし、相当ひねくれたガキだったのにね。だがしかし、引き取られた家の仲間たちと触れ合う中で、まあ、一応許せるレベルのガキへと成長します。いや、許せないかな、最後まで。なお、母親とはぐれただけで行方不明になっちゃうか?? という根本的な謎は、一応ちゃんと解答がありましたが、なんつうか……アメリカという国では普通なんですかねえ……日本じゃ考えられないと思うのだが……。ちなみに、本作はれっきとしたDCユニバースに属する作品なので、BATMAN、SUPERMAN、AQUA-MANといったヒーローが現実に存在している世界で、なんとラストはわたしの嫌いなSUPがカメオ出演します。お前じゃなくてBATMANに出てきてほしかったわ。で、シャザムに変身する主人公ビリーを演じたのはAsher Angel君16歳。まあ、順調に成長すればそれなりのイケメンになるんじゃないすかね。そしてシャザム!と叫んで変身した姿を演じたのがZachary Levi氏38歳。彼は、THOR様の親友、ウォリアーズ・スリーの一人、2代目ファンドラルすね。『THOR』1作目は別の人だったけど『DARK WORLD』から参加してますな。えーと、スリーの中で唯一の金髪イケメンの人です。
 ◆フレディ:ビリーが引き取られた家の先輩同居人の少年。ヒーローオタク。足に障害があって松葉づえをついている。しかしその性格は明るくよくしゃべり、とにかくコイツがイイ子なんすよ! この子がいなかったら、ホントにビリーはただのクソガキだっただろうな。クライマックスでフレディたちも大変身するのはまさかの展開で大興奮したっすね! アレは最高でした。フレディも、今後ヒーローになれるのか、あの一時的なものだったのかはよく分からんかったす。演じたのは、わたしは全然気が付かなかったけれど、どうやら『IT』で喘息持ちのエディを熱演してくれたJack Dylan Grazer君16歳だった模様。大変素晴らしい演技でしたな。
 ◆メアリー:先輩同居人の女子で一番年長のお姉さん。とっても可愛らしい娘さん。ありゃ美人になるぞ。大学進学目前で、合格通知が来ても、喜びよりもみんなと離れ離れになることを悲しむ心優しきみんなのお姉ちゃん。ホントいい子。彼女もクライマックスで大変身! 最高でした。演じたのはGrace Fulton嬢22歳。カワイイ。気に入ったす。
 ◆ダーラ:先輩同居人の女子で一番年少。きっと今までつらい目に遭って来たんでしょうな、誰にでも(?)すぐハグする甘えっ子。可愛らしい。彼女もとてもいい子。クライマックスでは超スピードを持つ美人女性に大変身。エンドクレジットのアニメによると、かの超音速野郎、FLASHと同等なのかも。演じたのはFaithe Hermanちゃん。2008年生まれらしいから11歳か。おっと、Twitterインスタもやってんだな。たいしたもんだ。
 ◆ユージーン:先輩同居人で東洋系のゲーマー少年。チビでオタクだが、スゴイ級ハッカー。もちろん彼もクライマックスで大変身。演じたのはIan Chen君。20006年生まれの13歳。イケメンに育つのだぞ!
 ◆ペドロ:先輩同居人でデブのコミュ障無口少年。でもいい奴なんすよ、コイツも。大変身した姿は髭のマッチョなイケメンで大変カッコ良くなってるのがちょっと笑えちゃう。演じたのはJovan Armand君19歳。大変良かったす。
 ◆サデウス:今回のVillain。冒頭の、資格ナシ判定をされた気の毒な少年の成長した姿を演じたのが、セクシー・ハゲ界のイギリス代表、Mark Strong氏55歳。このうらみはらさでおくべきか!といつまでも憎悪に身を焦がしていたわけで、だからお前はダメだったんだよ、としか言えないす。まあ、実際のところ、お父さんも兄貴もひでえ人間だったけどね……。ところで、わたしは原作コミックを全然知らないので、エンドクレジットに挿入される、収監されたサデウスのもとに現れる謎の芋虫に関しては、何のことやらわかりませんでした。アレは……まあ、邪悪な存在なんでしょうな。そして一番最後のおまけ映像は、ヒーローオタクのフレディが、シャザムに変身したビリーが金魚と喋れるのか? の実験をしているシーンでした。要するにAQUA-MANネタで、フレディは本編中でもAQUA-MANのTシャツを着用してました。
 ◆魔術師シャザム:そもそもの元凶というか……なんというか、ヨーダ的な、強いくせに抜けているというか、封印ってのはいつか破られるわけで、封をするだけじゃダメなのはわかってただろうに……。ある意味、全部丸投げの無責任なお方と言わざるを得ない。何の説明もインストラクションもなく、力だけ渡してもなあ……ダメっショ、それじゃあ。演じたのはもうそこら中で活躍中のDjimon Hounsou氏54歳。この方はMCUにもDCにも出ている数少ない中の一人ですな。
 とまあ、キャラ紹介は以上かな。
 あと、これはどうしてもメモしておきたいのだが、本作は舞台がPhiladelphiaだったのだが、つまりわたしの大好きな『ROCKY』の街なわけで、あの、美術館前の階段も出てくるし、ちょっとしたネタになっていました。かの「EYE OF THE TIGER」の曲に合わせて電撃かましまくってはしゃぐシーンには、ちょっとイラッとしたすね。しかしくそう、やっぱり一度Philadelphiaに行って、あの階段を駆け上がって、うおお、とガッツポーズしてみたいなあ……。。。
 最後に、ところでSHAZAMってネーミングからしてダサくね? と思っていたわたしが、本作を見て初めて知った(&Wikiで読んで知った)豆知識を書いておくと、
 S=Solomonの叡智。ソロモン王ですな。
 H=Herculesの剛力。日本語でヘラクレス、フランス語でエルキュールですな。
 A=Atlasの体力。えーと、巨人族で天を支えているお方ですな。
 Z=Zeusの全能。ゼウス様ですな。
 A=Achillesの勇気。勇者アキレスですな。
 M=Mercuryの神速。ローマで言うメルクリウスですな。
 の各能力を持つという意味なんですと。もう無敵じゃん。これは強いわ。そして、なんと元々のコミックは、DCコミックではなくて、後にDCが版権を獲得したんだそうだ。で、元々はなんと「キャプテン・マーベル」というシリーズだったそうで、DCが版権を取得した時に、MARVELコミックがもう登録商標していたために「SHAZAM!」と改題されたんですって。へえ~ですな。

 というわけで、書いておきたいことが亡くなったので結論。
 DCヒーロー最新作『SHAZAM!』は、その予告やプロモーションの方向性からも、クソガキの悪ノリばかりが目に付いて、クソつまらなそうだなあ……とか思いながら観に行ってみたところ、そんな予断を吹っ飛ばす、気持ちのいい楽しい映画に仕上がっておりました。ええ、実際とても面白かったすね。とにかく、主人公のガキはともかくとして、仲間の5人がとてもイイ子なんすよ! 生きてたっていいことなんてねえ、とか、マイナス思考の歪んだ心ではイカンと、彼らに教わったような気すらするっすね。前向きで生きるのが、まあ、正しいんでしょうな。はーーー……でも、報われない日々はつらいす。なんか、ちょっとしたハッピーがあるといいんすけどね……報いを求めちゃイカンのかなあ……だってにんげんだもの……。ともあれ、本作『SHAZAM!』は大変お勧めであります。完璧もう、漫画そのものですよ。だがそれがいい!のであります。ぜひ劇場へ! 以上。

↓ なんか原作も読みたくなりますな。そして胸に輝く「電撃」マークがわたしとしては最高です!
シャザム! :魔法の守護者(THE NEW 52! ) (DC)
ジェフ・ジョーンズ
小学館集英社プロダクション
2015-02-07

 はーーー……面白かった……。
 なんのことかって? それは、わたしの年に1度(?)のお楽しみである、『暗殺者グレイマン』シリーズの新刊が発売になったので、わーい!とさっそく買って読み、味わった読後感であります。わたしの愛する早川書房様は、紙の文庫本で出した1週間から10日後に電子書籍版をリリースするので、紙の文庫が8月21日に発売になって、わたしも本屋さん店頭にて現物を手に取って、くっそう早く読みてえ! けど、あとチョイ我慢だ! と歯を食いしばって耐え、その後8月31日になって電子版が配信開始されたので、すぐさまポチってむさぼるように?読んだのである。しかし早川書房様はホント素晴らしいですな。US発売が2月で、6カ月後にはもう日本語版を出してくれちゃうのだから、マジで他の版元も見習ってほしいものだ。内容的に時事問題が絡んでいるので、どっかの版元のように2年とか時間をかけていては話にならないのである。新潮社、アンタのことだよ!
 というわけで、わたしが待ちに待っていた新刊の日本語でのタイトルは、『暗殺者の潜入』。英語タイトルは『AGENT IN PLACE』という、Mark Greaney先生による「暗殺者グレイマン」シリーズ第7作目である。いやあ、結論から言うと今回も、コートの野郎は相当ヤバい目に遭うものの、ラストへの展開は気持ちよかったすねえ! エピローグは、若干今後への引きのような、ちょっとモヤッとしたエンディングだったけれど、大変面白かったです。おっとヤバイ! これだけでもうネタバレか? 今回はとにかくキッツイ状況で、本当に大丈夫かしらと心配しながら読んでいたのだが、まあ、そりゃあ、大丈夫っすわな。今回も非常に楽しめました。
暗殺者の潜入 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2018-08-31

暗殺者の潜入 下 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2018-08-31

 ところで今、わたしは思いっきり「面白かった」と能天気な言葉を書いてみたのだが、描かれている物語はまったくもって「面白い」じゃあすまされない、極めて凄惨で血まみれな状況である。なにしろ、今回の舞台は、現在世界で最もヤバイ国、シリア、である。この時点でもう、ヤバすぎることは想像に難くない。しかし、読み始めておそらく小1時間で、今回主人公のグレイマンことコートランド・ジェントリーが、何故シリアと関わるのか、何故単身シリアへ潜入するのか、が判明すると、我々読者としてはもう、正直、「コート、お前って奴は……」と若干呆れつつも、こりゃあヤバイことになってきたな……(ニヤリ)、と妙に心躍ってしまうのではなかろうか。
 そうなのです。もう、さんざんこのBlogで過去作の感想を書いている通り、本シリーズ「暗殺者グレイマン」という作品群は、その主人公に最も特徴があって、まあ、いわゆるハリウッド的な、超凄腕暗殺者であるグレイマン氏は、完全なる人殺しなのでBAD GUYであるはずなのに、おっそろしく人が良く(?)、妙な正義感、あるいは良心、のような「自分ルール」を持つ男で、しかもその自分ルールゆえにどんどんピンチに陥って、どんどん傷も負い、血まみれになっていく男なのである。
 なので、今回の作戦(というか依頼)も、常識的な判断からすれば、シリアに潜入するなんて選択はあり得ないだろうに、グレイマン氏は、何かと文句を言いながら、どちらかというと全く行きたくない、けど、もう、しょうがねえなあ! 的な心境を抱きつつ、死地へと赴くわけです。
 まあ、本作からいきなり読む人はいないと思うけれど、既にシリーズを読んでいる我々としては、グレイマン氏のそんなところに、痺れ、憧れちゃうわけだが、それがどんな読者でも感じるかというと、それはかなりアヤシイことだと思う。ふと冷静に考えるとかなり荒唐無稽だし。でも、こういう、グレイマン氏のような「自らの納得の元に行動する男」のカッコ良さ?は鉄板ですよ、やっぱり。
 あとこれは全くどうでもいいことだが、わたしは第1作目を読んだ時から、どういうわけか、グレイマン氏のビジュアルイメージとして、完全にセクシー・ハゲでお馴染みのJason Statham兄貴に固定されてしまっており、前作で、グレイマンはハゲじゃなかった!というわたしにとっては超残念な描写があったけれど、今回読むときもやっぱり、わたしの脳裏ではコート=Statham兄貴の公式は崩れませんでした。映像化するなら絶対、つうか、この世でコートランド・ジェントリーを演じられるのはStatham兄貴しかいないと思います。
 とまあ、わたしのジェントリー愛はこの辺にして、今回のお話を簡単にまとめておこう。
 物語は冒頭、かの悪名高きISIS団に捕らえられたグレイマン氏が、いよいよ射殺される1秒前の状況が描かれる。そして、どうしてこうなった? と、その1週間前にさかのぼると、舞台はヨーロッパ、フランスのパリのど真ん中?である。フランスのファッションショーに出演するスペイン人のモデル。なんと彼女は、シリアの大統領の愛人であり、おまけに男児を出産しているという恐らくはあり得ない設定だ。そして彼女を拉致し、彼女の持つ情報を利用しようとする亡命シリア人反政府組織の医者夫婦。この夫婦はまったくのド素人だが、夫婦を支援しているフランスの元情報機関の男が、とあるハンドラー経由でグレイマン氏を紹介し、グレイマン氏は、金のため、というのも勿論あるけど、ほとんど反シリアのボランティアめいた動機から、拉致の依頼を受諾し、あっという間にその依頼を果たす。しかし、シリアの情報機関に雇われているスイス人クソ野郎の魔の手は伸び、一方でスペイン人モデルは情報提供に協力してもいいけど、そうなったらシリアのダマスカスに残してきた赤ん坊がヤバいので、現地へ潜入し、無事に連れてきてくれたら協力する、という無茶難題を吹っ掛ける。そしてその無茶に、我らがグレイマン氏が、しょうがねえなあ、くそッ!と行動を開始するのだがーーーてなお話である。サーセン。超はしょりました。
 わたしが今回、一番マジかよ、と驚いたのは、グレイマン氏の心情だ。な、なんと! グレイマン氏は、前作でぞっこんLOVEってしまったロシア美女、ゾーヤのことが忘れられず、悶々としていたのであります!! なんてこった! コート、お前も男だったんだな……!!
 「これは2カ月ぶりの仕事だった。それまでずっと身を隠していた。(略) 精神面で一歩踏み外しているという不安があったからだ。精神を鈍らせていたのは、PTSDや振盪症や若年性痴ほう症ではなく……もっと心を衰弱させることだった。それは女だった。(略) だが彼女への思いは残っていて、彼女と会う前とは自分が変わってしまったのではないかという気がした。(略)ジェントリーはそれをくよくよ考えていた。」
 どうですか、このグレイマン氏の心情は! 最高じゃないですか! そんなことザック(元上官)に知られたら、「シックス、お前の純情に乾杯! でも、だからと言ってシリアに行くのはイカレてるぞ、きょうだい」って絶対言われるぞ!
 要するにグレイマン氏は仕事に没頭することで愛するゾーヤのことを忘れたい、そしてさらに言うと、グレイマン氏は「シリア政府に対抗する戦いを支援するために何かやりたいと、ジェントリーはずっと前から考えていた」ため、今回の物語となったわけです。ホントこの人、いい人すぎるわ……。
 で。問題はシリアの状況だ。今回の物語は、あとがきによれば本当に現在のシリアの泥沼をかなりリアルに描いているようで、数多くの勢力が入り乱れる、極めて複雑なSituationである。現実世界の、いわゆる「シリア騒乱」に関してはWikiを読んでもらう方がいいだろう。わたしもここで説明するのはもうあきらめた。一応簡単にまとめると、(本作では)一番の悪党がシリア大統領で、政府軍(SAA)を持っているし、さらにイランとロシアが支援していると。で、さらに数多くの私兵団(=いわばギャング組織)や、雇われている民間軍事企業が政府側にいて、一方の反政府組織は、自由シリア軍(FSA)やアルカイダ系の連中や、かのISIS団もいて、さらにISIS団をつぶそうとするクルド人たちもいて、アメリカやイスラエル、トルコ、フランス、イギリスなどが反政府側を支援しつつ、クルド人たちにはアメリカもロシアも支援している、ような状況である。ダメだ、説明しきれない。
 恥ずかしながらわたしが全く知らなくて、へえ、そうなんだ!? と驚いたのは、そもそものシリアという国に関してだ。シリアって、宗教的にはかなり寛容、つまり大統領はキッチリスーツを着て、ひげもスッキリ剃って、街行く人も普通にジーンズだったり、女性もヒジャーブを着用してない場合も普通に多いんすね。そして首都ダマスカスのビジネス街は近代的なビルが立ち並んでるんですな。まあ、だからこそイスラム原理主義からは攻撃対象になるわけだけど、考えてみれば当たり前、かもしれないけど、全然イメージと違っていたことはちょっと驚きであった。これはわたしがまるで無知でお恥ずかしい限りであります。そうなんすね……なるほど。
 というわけで、恒例のキャラまとめをしておこうかな。
 ◆コートランド・ジェントリー:主人公で我らがグレイマン氏。通称コート、別名ヴァイオレーター、あるいはシックス。今回、普通なら2回は間違いなく死んでます。今回のグレイマン氏のシリア潜入方法がすごかったすな。なんとドイツ人の民間軍事企業経営者に接触して、シリア政府側の傭兵(=契約武装社員=コントラクター、あるいは武装警備員=オペレーター)となってシリアに入国するわけですが、当然、ドイツ人経営者は、えっと、グレイマンさん、ウチの仕事は、あなた様向きじゃないっすよ……? あなたの「倫理の掟」は知ってるっすよ? どういういきさつで悪役に代わったんすか? と思わずグレイマン氏に質問しちゃうシーンがあったのがちょっと笑えました。なので、表向きは政府側なんだけど、それを出し抜いて赤ん坊誘拐も同時にやってのけてしまうグレイマン氏の大活躍は、大変お見事でありました。そして仲間となる傭兵どものイカレ具合も、グレイマン氏からすると容認できるものではなく、いつぶっ殺し合いになるんだろう……という緊張感も良かったすね。しかしなあ、次は是非とも再びゾーヤに登場してもらいたいですなあ……!
 ◆シリア大統領&正妻シャキーラ&愛人ビアンカ:大統領と正妻シャキーラの間にはもう愛情は薄いものの、大統領にとってシャキーラはスンニ派であるため、政治的重要性が高く、またシャキーラは、ロンドン生まれでヨーロッパで青春を送った女性で、社交性が高く、「砂漠のバラ」と呼ばれるほどの美貌で、そういう意味でも、大統領にとっては「使える駒」でもある。一方でシャキーラにとっては、大統領夫人としての社会的ステータスと経済的な富のためにも、大統領は欠かせないという関係性にある。のだが、男児に恵まれず、将来的な心配をしていたところに、愛人が男児出産という事態になって、このままでは自分の地位が……と焦っており、愛人ビアンカを殺したいと思っているわけだ。そしてビアンカは、元々シリア生まれだけどスペイン育ちでモデルとして活躍してるところをシャキーラの仲介で大統領と出会い、子をもうけてしまう。そしてシリアの内情には全く疎かったため、現状の泥沼を知って情報を渡してもいいというところまで行くけれど、その条件として赤ん坊の脱出を突き付ける、とまあそういう感じです。なんつうか、アレっすね、この3人の関係は、豊臣秀吉&北政所ねね様&淀君の関係に似ているような気がしますね。
 ◆セバスティアン・ドレクスラ:スイス人で世界各国で悪いことばっかりしていた悪党。現在はスイスのプライベートバンクに雇われていて、莫大な金をその銀行に預けているシャキーラを守るために、銀行がシリアに派遣した諜報員。よく考えると、このドレクスラも悪党だけど、一番最悪なのはこのプライベートバンクであるのは間違いなさそう。ドレクスラはシャキーラにビアンカを殺すことを命じられるが、一方で大統領からはビアンカを保護して無事にシリアに連れて帰れとも指令を受け、何とかして自分が生き残る道を模索するある意味苦労人の悪党。結構、計画は杜撰というか行き当たりばったりかも。ま、事態が流動的すぎてしょうがないか。しかし、ドレクスラの最期は……どうなんすかねえ……まあ、後の作品で復讐の鬼となってグレイマン氏の前に現れるのは確実のような気がしますなあ……。
 ◆ヴァンサン・ヴォラン:フランス人で元フランス情報機関の男。69歳だっけ?かなり年はいってる。亡命シリア人夫婦にグレイマン氏を紹介した男。ただし、見通しは甘いし、情報精度も低く、ドジを踏みまくって、グレイマン氏をカンカンに怒らせてしまう。悪気は全くなかったのにね……。よって、グレイマン氏としてはヴォランに対しても、殺意を持っているが、グレイマン氏の恐ろしさをよーく知っているヴォランは、サーセンした! と後半かなり頑張って、一応殺されずに済む。ラスト、グレイマン氏がヴォランに言うセリフがカッコ良すぎなんすよ……。もう二度と会うことはない。会うとしたら、おれが送り込まれたときだ、的な。
 ◆傭兵軍団:シリアでグレイマン氏の同僚となるコントラクターたち。一般人でも虐殺上等な、イッちゃってる人々。当然グレイマン氏から見ると外道。気の毒な運命に……。
 ◆マット・ハンリー:グレイマン氏が唯一信頼(?)している男。前作からCIA国家秘密本部本部長。下巻の超絶ピンチに、マットと連絡がついた時はもう、これからグレイマン氏の反撃のターンだぜ! とわたし的には大変盛り上がりました。
 ◆スーザン・ブルーア:CIA局員で現在のグレイマン氏の管理官(ハンドラー)。基本的にグレイマン氏のことが大嫌い。そしてグレイマン氏はもっとスーザンが嫌い。わたしも、スーザンは嫌いっす。なんか出世欲旺盛な嫌な女に見えるので……。今回は数行だけ、一番ラストで登場する。次回作はまたCIAの作戦なんすかね……。

 とまあ、こんなところかな。おおっと、もうクソ長いし、書きたいこともない……と思うので終わりにします。

 というわけで、結論。
 わたしの大好きなMark Greaney先生による「暗殺者グレイマン」シリーズ最新作、『AGENT IN PLACE』(邦題:暗殺者の潜入)が発売になったので、さっそく買い求め、上下巻やっと読み終わったす。電子書籍の記録によると、上巻423分、下巻319分だったらしい。結論としては、大変楽しめました。いやあ、グレイマン氏のゾーヤへの思いが、意外というか最高ですね! そしてシリアに関しては、本書を読んだことをきっかけにいろいろ調べてみたけれど、なんつうか……本当に人類は殺し合うしかないんだなあと思うと、暗澹たる気持ちになりますな。グレイマン氏を必要としない世界はやって来るんすかねえ……。まあ、現実世界にはグレイマン氏はいないけれど、いないことを喜ぶべきか、嘆くべきか、良くわからんすな。とりあえず、グレイマン氏にまた1年後、会えることを楽しみに待ちたいと存じます。もう、次が来年2月にUS発売されることは決まってるらしいすよ。早川書房様ならまた、来年の今頃、日本語版を出してくれるはず! よろしくお願いします! 以上。

↓ 状況が理解できるようななんかいい本ないすかねえ……池上さん、お願いしますよ!

 約2年前の2015年9月に日本で公開され、それなりに話題となった映画『Kingsman:The Secret Service』。わたしはこの映画を結構楽しみに観に行ったものの、意外なグロ描写満載で胸焼けするというか、なんかアレだなあ、と思い、イマイチ判定を下していたのだが、日本はともかく世界的には結構なヒットとなって、全世界興収4億ドルを超える大ヒットとなったため、さっそく続編が制作されることになり、今般、日本においてもその続編『Kingsman: The Golden Circle』が公開される運びとなった。
 わたしはこの映画を観るつもりは実は全くなかった。理由は二つあって、一つは前述の通り1作目があまりわたし好みでなかったこと、そしてもう一つは、これもどうでもいい理由なのだが、わたしの嫌いなFOX配給だからだ。これはちょっと説明しておくと、もはやハリウッド作品が全く売れない日本において、実は前作は、日本ではFOX配給ではなく、なぜかKADOKAWAの配給だった。おそらくは、FOXの日本担当が、こりゃあ日本じゃ売れねえだろうと見込み、KADOKAWAに配給を卸したのだと想像する。しかし、これまた前述の通り、日本でもそれなりに話題となって、おまけに全世界興収は大ヒットレベルまで稼いだため、やっぱ続編は自分で配給しよう、と考え直したのだろう、とわたしは邪推したのである。よって、この作品は観に行ってやらん、WOWOWで放送されるのを待てば十分じゃい、と判定したのだ。
 なのに、なぜわたしは観に行ったのか。答えは簡単。今現在わたしはTOHOシネマズのフリーパスポート有効期限内で、タダで観られるからだ。そして今、ほかに観てみたい映画が何もなかったからだ。つまり、なんか暇だし、タダならいいか、という実に消極的な理由で観に行ったというわけである。
 そして結論から言うと、やっぱり本作は明確に「コミック」=漫画であり、その描写は大げさで悪ノリが激しく、今回もグロ描写はあり、やっぱりあんまりわたし好みじゃあなかったかな、というある意味想定通りの感想しか持ち得なかったのである。つまり一言でいえば、やっぱりWOWOW放送を待てば十分だったかな、と思った。ただまあ、あくまでわたしの好みの話なので、前作が気に入った方にはある意味前作通りのノリなので、今回もまた気に入ってもらえるものと思う。

 物語は、まあ、大体上記予告の通りである。新たなる敵?が「キングスマン」を崩壊に導き、生き残った主人公のガキが「アメリカの親戚」たる「ステイツマン」の協力のもとに敵を倒す、というものである。
 というわけで、ポイントとなるのはこの敵は何者か、そして前作で明確に死んだはずの先代「ガラハッド」はなんで生きてるんだ? そして「ステイツマン」の面々のキャラはどういう奴らなんだろう、という点にあるとわたしは思っていた。
 これらを順番に説明すると、まず、今回の敵は、麻薬王、なわけだが、そのキャラクターは実に漫画チックで、ビジネスとして大成功しているわたしがなんでこんな名もなき地に隠れなきゃいけないのよ、と思っていて、アジトを50年代アメリカ風なある意味アミューズメントとパークめいたモノに仕立てていて、おまけに暇なので、Elton John氏を誘拐してきて住まわせて歌わせてもいるという、若干狂った女性であった。演じたJulianne Mooreさんが貫禄たっぷりに、そしてやたらと楽しそうに演じていたのが非常に印象的で、わたしとしては十分以上にアリ、だと思う。ただ、この麻薬王がどうしてまたKingsman組織と敵対しようとしたのかはよく分からず、単に手下として雇った若僧が、元Kingsman養成生の落ちこぼれだったために、Kingsmanという組織を知って、将来的な脅威になるから先にぶっつぶじておこう、と思ったから? なのだろうか? ほっといても良かったんじゃね? という気がしなくもない。
 で、先代「ガラハッド」がなぜ生きているか、については「ステイツマン」に実はこっそり助けられていた、というのが答えで、どうやら前回の事件がUS国内で起きた(んだっけ?)ために、実は「ステイツマン」も活動していて、ガラハッドが撃たれた直後に駆け付け、すぐさま謎テクノロジーで傷を修復していた、てなことだったらしい。なんというか、ホント漫画である。つうか、もはや『男塾』とか『聖闘士星矢』的展開と言っても良かろう。それはそれでアリ、とは思うが……わたしとしては、なんだかなあ、と思ってしまった。
 そして「ステイツマン」だが、役者陣は豪華だし、ガジェット類もいちいちオタク心をくすぐる楽しい?ものであるのはいいのだが、キャラ付けがなんというか……せっかく登場するChaning Taum氏ふんする「エージェント・テキーラ」はほとんど活躍しないし、大活躍の「エージェント・ウィスキー」はどういうわけか悪役になってしまうし、なんというか……正直イマイチであった。
 というわけで、本作を彩るキャラたちと演じた役者を紹介しておこう。
 ◆現・ガラハッドことエグジー:演じたのは前作に引き続きTaron Egarton君28歳。前作はとんでもないゆとり小僧だったけれど、Manners make the Manということで、すっかりスーツの似合うイギリス紳士になりましたな。その成長ぶりは大変良かったです。なお、Kingsmanにおいてはエージェントは円卓の騎士の名を名乗るわけですが、ランスロットの名を継いだロキシーが冒頭で殉職してしまうのは大変残念でした。もったいない……彼女も実は生きていた、と次回また登場してほしいと思います。
 ◆マーリン:まあ、魔術士マーリンというわけで、エージェントではなく指導教官兼バックアップ要員として今回も登場。そしてエージェントでないために難を逃れ、今回ガラハッドとともに活躍。演じたのは、前作同様セクシーハゲ界のイギリス代表としておなじみのMark Strong氏。今回は、酔っ払って泣き上戸だったことが判明。あのシーンは笑えました。そして今回歌も歌うわけですが、あの歌が上手なのかド下手なのか、わたしには判定できないす。残念なことに終盤で殉職。もったいないというか残念す……。
 ◆先代ガラハッドことハリー:演じたのは英国王でおなじみColin Firth氏。まあ、生きていたのは漫画的にアリとしても、実はわたしはいまだになぜハリーがウィスキーをあの場で撃ったのか良くわからんです。正直、別に本作に登場する必要はなかったような気が……。
 ◆エージェント・テキーラ:前述のように演じたのはChaning Tatum氏。ステイツマンはエージェント名がみな酒の名前になってます。今回、いかにもヤンキー的なキャラで、エグジーとぶつかり合いながら活躍するんだろう、と思っていたらほぼ出番なし。出る意味あったのだろうか……。
 ◆エージェント・ウィスキー:演じたのはPedro Pascal氏。そのルックスは非常にメキシカンっぽくて(※Pedro氏はチリ出身なので全然メキシカンではない)、彼の方が「テキーラ」なんじゃね? とわたしは思いながら観ていたが、なんというか謎の離反? で悪役扱いに。そして無残な最期を……。US大統領と通じていた、という事らしいが、かなり唐突に感じて、わたしには良くわからなかった。わたしは知らない役者さんですが、TVのGame of Thronesで有名なお方らしいすね。
 ◆ジンジャー:ステイツマンにおけるバックアップ要員の女子。演じたのはHalle Berryさん51歳。ええっ!? ご、51歳!? 見えねえ! もうそんなお歳なんですなあ! わたしには大変キュートに映り、やっぱHalle Berryさんは可愛いなあ、とか思ってたのに、わたしより全然年上だった! あーびっくりした。眼鏡と外跳ねショートヘアが大変お似合いでしたな。大変良かったと思います。
 ◆シャンパン:ステイツマンの長。演じたのはJeff Bridges御大68歳。存在感はバリバリながらもあまり出番なし。余裕な感じの貫禄十分でしたね。
 ◆ポピー:スーパー頭脳で麻薬戦争を終わらせ麻薬界に君臨する女性ボス。演じたのは前述の通りJuliannne Mooreさん57歳。とにかく楽し気に演じている姿が非常に印象的。どうでもいいけれど、ポピーが誘拐してきたElton John氏は、わたしは最初、そっくりさんかと思ったのだが、どう見ても本人で、彼もまた、思いっきり楽しそうにバカ演技を披露してくれています。なにやってんすかもう!w
 ◆US大統領:演じたのはそこらじゅうに出演しているので誰もが顔は知っている、のではないかと思われる名脇役のBruce Greenwood氏。わたし的には、このお方はJJ版『STRA TREK』のパイク艦長ですな。
 ほかにも、前作でエグジーの飼犬になったJBも出てくるし(ただし悲しい最後……)、前作でエグジーが救出したスウェーデン王女だったり、あの嫌な奴だったライバル候補性のチャーリーがポピーの手下として登場したりするので、前作が大好きな人には大変楽しめる作品だと思う。
 そして監督は、前作に引き続きMatthew Vaughn氏が担当。わたしはこの監督が撮った『X-MEN:First Class』がX-MENムービー最高傑作だと思っているほど大好きなのだが……やっぱりこのお方の本質は血まみれグロなんすかねえ……。自分で脚本も書く優れた才能の持ち主であるのは間違いないのだが……なんか、もうチョイ真面目?な、ドシリアスな作品を撮ってもらいたいと思います。

 というわけで、結論。
 全く観るつもりがなかった映画『Kingsman: The Golden Circle』をふと観に行ってみたところ、まあ、想像通りのコミックドタバタ作品であったと結論付けて良いように思える。それが悪いというつもりはなくて、それが好きな観客は多いわけで、実際本作も既に全世界興収4億ドルを超える大ヒットとなっている。なので、間違いなく言えそうなことは、前作が好きならば今回も間違いなく楽しめるであろう、ということでしょうか。わたしは前作をそれほど楽しめなかったので、WOWOW放送待ちで十分だったかな、と思った。わたしが一番残念だったのは、セクシーハゲMark Strong氏の最期で、今後シリーズに出られないとしたら大変残念す。しかし、結局Kingsmanって組織は何なんすかね? 資金源はあのTalorだけなのかな? 実は前作からずっとわたしには良くわかりません。以上。

↓ 基本的に完全なる続編なので、前作を観てないと全然意味不明だと思います。観てない方は今すぐ観てから劇場へ!
キングスマン(字幕版)
コリン・ファース
2015-11-25

 先日、待ちに待った最新刊発売のニュースを見つけて、よーし!新刊キタ! とやおら興奮した作品がある。が、ちょっと調べたところ、紙の本が8月24日に発売になるのはいいとして、電子書籍版の発売に関しては一切何も書いていなかったので、ちょっとマジかよ……またお預けか? としょんぼりしていたところ、紙の発売の1週間後には電子書籍版も発売となり、喜んですぐさま購入した。さすがわたしの愛する早川書房さまである。
 というわけで、本Blogの読者にはお馴染みの(たぶん)、「暗殺者グレイマン」こと、コート・ジェントリー氏が約1年ぶりに帰ってきた! のであります。日本での邦題は『暗殺者の飛躍』。英語タイトルは『GUNMETAL GRAY』という、Mark Greaney氏による「暗殺者グレイマン」シリーズ第6作目にして最新刊がようやく日本で発売になったのでありました。やったー!
暗殺者の飛躍 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2017-08-31

暗殺者の飛躍 下 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2017-08-31

 もう、のっけから結論を申し上げると、今回も大変面白く、実に興奮いたしました。あのジェントリー氏が、作戦中に出会ったロシアSVR要員のウルトラハイスペック美女と本気LOVEですよ! マジかよコート! お前、大丈夫か!? といろいろな点で心配になったし、こりゃあこの美女には完全に死亡フラグ立ってんじゃねえかなー、とか、下衆な勘繰りをしながら読んだオレのバカ! と自分をののしりたい気分です。
 最終的には、ややほろ苦い結末ではあったけれど、実に見事なエンディングで、大変面白かった。つか、あれっ!? サーセン、いきなりいろいろなネタバレをブチかましてしまったような気がするけれど、以下もネタバレ全開になる可能性が高いので、気になる方はまず本作を読んでからにして下さい。自己責任でお願いします。
 さて。まずはこのシリーズについては、もう軽い説明でいいよね? 今までの1作目から5作目まではこのBlogに散々書いてきたので、そちらをご覧ください。一応、直近の5作目の記事のリンクだけ以下に置いておきますので。
 ◆グレイマンシリーズ第5弾『BACK BLAST』(邦題:暗殺者の反撃)はこちらへ
 お話は、元CIAの準軍事工作員だったコート・ジェントリーという男が、ある日CIAから「目撃次第射殺=Shoot on Sight」指令を下されてしまい、逃亡、その後、裏社会で「グレイマン」と呼ばれる凄腕のアサシンになって活躍するお話で、前作の第5弾で、とうとう「そもそも何故CIAはジェントリーを殺したいのか」の謎が明かされ、なんとかその窮地を脱して、非公式にはそのSoS指令は解除、晴れてお咎めなし、の身に戻ったところまでが描かれた。
 そしてこのシリーズの最大の特徴は、主人公のジェントリーというキャラクターが大変おかしな野郎だという点にある。彼は、超凄腕かつ超冷酷なんだけれど、妙な正義感というか良心を持ち、そのイイ人であるがゆえに、いろいろピンチに陥ったりするという、読者からすると純然たる人殺しなのに、妙に憎めない野郎である。そしてその「グレイマン」のあだ名の由来は、会って話をしても、後に「あいつどんな顔してたっけ?」と思い出せないような平凡かつ存在感の超薄い男であるため、「姿なき暗殺者」という意味で「グレイマン」と呼ばれているわけだ。
 で。今回のお話は、実際第5巻の続きで、晴れて自由を得たグレイマン氏が、今度は古巣であるCIAから仕事を引き受け大活躍するお話である。早川書房様のWebサイトにあるあらすじを勝手にパクって貼っておこう。要するにこんなお話だ。
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 <上巻>黒幕を倒し、CIAのグレイマン抹殺指令は解除された。彼はフリーランスとしてCIAの仕事を請け負うことになり、逃亡した中国サイバー戦部隊の天才的ハッカー、范の行方を突き止める任務を帯びて香港に赴く。囚われの身となっていた元雇い主に再会したグレイマンは、中国の目を欺くため、元雇い主を通じて中国総参謀部から范を暗殺する仕事を引き受けることになるが……
 <下巻>香港犯罪組織との乱闘の末、ベトナムのギャングが天才的ハッカー、范をかくまっていると知ったグレイマンは、ホーチミン市に入る。だがロシアのSVR(対外情報庁)の秘密精鋭部隊も范を拉致すべく、密かに行動していた! 范をめぐりグレイマンとSVRは、ベトナム、さらにタイのギャングと争奪戦を繰り広げる。そして、CIAの作戦の裏に隠された衝撃の事実が! 新たな展開でますます白熱する冒険アクション!
--------
 というわけで、以下、いつものようにキャラ紹介しながら、ストーリーもごく簡単にメモしておこう。全員は紹介できないので、わたしが印象に残った人々だけです。
 ◆コートランド・ジェントリー:作中ではコート・ジェントリーと名乗る場合が多い。我らが主人公グレイマン氏に関しては上記に述べた通り。今回、ジェントリーの性格を良く表している文章はこれかな。
「ジェントリーの道義心は、そばに味方がいないような状況で、フィッツロイが一人で死ぬようなことを許してはならない、と告げた。フィッツロイのために戦おう。CIAがそれに不賛成だというなら……CIAなどクソくらえだ」
 そう、今回、グレイマン氏は、フィッツロイおじいちゃんのために奮闘するのであります。フィッツロイおじいちゃんは、第1作目でのジェントリーのハンドラー(雇い主)で、とてもいい人で信頼関係も厚かったのだが、おじいちゃんの愛する孫娘を人質に取られ、ジェントリーを断腸の思いで敵に売ったことがあって、ジェントリーとしては、まあ状況的にしょうがないと思いつつも、もう仕事はできない相手、と思っていたのです。でもその後、2作目で助けてもらって、ジェントリーとしては「借りのある男」なわけですよ。今回は背景が超複雑で、作戦も込み入っていて回りくどくて、グレイマン氏は今回も大変な目に遭います。しかし、まさかグレイマンin LOVEとは驚いたなあ! グレイマン氏は、第3作目で、メキシコで出会った旧友の妹に一瞬本気LOVEとなるも、ラストではその女子に対して、俺はなんて言って別れを告げたらいいんだ……とかくよくよしてたらあっさり、「わたし、修道女になるわ!」と先制パンチを喰らい、あえなく、お、おう……と振られてしまったことがあったけれど、今回は、完全に両想いというか超お似合いの殺し屋カップルの誕生で大興奮です。なお、わたしはいつも読んでいるとき、ジェントリーのビジュアルイメージとしてセクシーハゲでおなじみのJason Statham兄貴を思い浮かべているのだが、本作では久しぶりに(?)ジェントリーの容姿に関する描写がチラッとあって、どうやらハゲではないようです。むしろ若干イケメンなのかも。えー!w
 ◆ゾーヤ・ザハロワ:ロシアSVR所属。身長170cmほどで、超美人で、身体能力も非常に高く、スナイパー訓練も受けていて、実際かなり強い女子。SVRの「ザスロン」という屈強な男たちの軍事チームの統制官だったのだが、チームの荒くれ者たちは女子の言うことなどまったく聞かず、おまけに作戦の失敗を押し付けられ、無能な男たちにうんざりしていたところで、ジェントリーに捕まり、中国や現地ヤクザを間に挟んだ敵の敵は味方、ということで、二人の愛の炎が燃え上がっちゃう展開です。しかし、グレイマンがまた非常にお優しいため、ラストではゾーヤはCIAのアセットとなることを承諾し、グレイマンとはお別れとなってしまう。非常にもったいないけど、ジェントリーも、オレと一緒にいたら不幸になるぜ的な想いが強くて、カッコつけて別れるラストは結構グッと来たすねえ! 彼女には是非とも今後のシリーズでまた会いたいですな!
 ◆氾 講(ファン・チアン):中国サイバー部隊のハッカー野郎。見た目普通のオドオド青年。今回は彼の争奪戦で、中国、CIA、ロシアSVR、そしてベトナムやタイの現地ヤクザ軍団、さらにはイタリアの「ンドランゲタ」というマフィアまで絡んできて、壮絶な氾くん争奪戦の殺し合い繰り広げられる。で、肝心の氾くんは、まあ基本ゆとり小僧なのだが、実際気の毒な青年で、彼の亡命の動機は、中国は恐ろしい国、ということを読者に刻み込んでくれるおっかないものであった。本当かどうか知らないが、「家族抵当」というものがあって、軍の機密情報を扱う人間になると、家族を上海の施設に強制移住させられるそうで、待遇としてはとてもいいので喜ぶ家族もいるんだけど、実際のところ完全な人質であり、何かあれば家族が殺される、みたいなことになっているらしい。で、范くんは、両親が死んだことで「家族抵当」を失ってしまったため(ただし両親の死はイギリスSISが仕組んだものだった)、「あいつは家族抵当がないから裏切るぞ、ならその前に殺してしまおう」と見なされることが確実になり、亡命を決意する。しかし范くん自身は、中国に敵対するような仕事はしたくない、むしろ愛国心があるぐらいで、アメリカもロシアも行きたくない、僕は台湾に行きたいんだ、という、まぁ完全に甘ちゃんな主張をするに至る。台湾に行ったって確実に中国に殺されるだけなのにね。で、我らがグレイマン氏は、この范くんの気持ちに痛く同情して、じゃあ台湾に連れてってやるよと言うぐらい仲良くなるのだが、ラストではそれが叶わず、ほろ苦いエンディングになってしまったのはこの辺の事情であります。でも、確実に氾くんは、この結末が唯一の生きる道だったと思うな。
 ◆CIAの人々:今回出てくるのは、シリーズではお馴染みのマット・ハンリーと、前作でグレイマンを狩るチームの指揮を執った、若干クソ女のスーザン・ブルーア。今回はスーザンがグレイマンのハンドラーとして作戦の指示をし、報告を聞く立場にあるのだが、前作でもわたしはこの女が嫌いだったけれど、今回もやっぱり好きになれそうにありません。望むのは自らの出世だけなんだもの。そして、グレイマン氏唯一の味方でもあった、マットは、前作のラストに大出世してしまったため、今回ジェントリーと、お前はそんな奴だったのかよ! 仕方ないだろ、この立場ではこうするしかないんだ! 的な口論も発生する。実は今回の作戦は、元をたどると、前作のラスボスたる悪党のカーマイケルがやりかけていた仕事で、マットとしてはどうしてもそのしりぬぐいというかケリを付けなきゃならない立場にあって、俺だってこんな作戦は嫌だ、と思っている。そしてCIAといえば……当然、ジェントリーの元上官でお馴染みのザック・ハイタワーも出てきますよ! どこで出てくるかは書きません。そして出てきた時はわたしは大変興奮しました。完全にグレイマン側の視点で読んでいる読者としては、ザックのいつも通りの態度が超イラつく!
 ◆中国人民解放軍の人々:今回、中国は虎の子のハッカーには逃げられるは、人民解放軍の精鋭たちは殺られるわで、実際かなり損害は大きい。そんな人民解放軍チームの司令官が戴 龍海(タイ・ロンハイ)というおっさんで、彼が無能なのか、状況が厳しすぎたのか、グレイマンにいいように騙されたのか、判定は微妙だけど、戴自身もかなり冷血な男なので、若干ざまあ、ではある。ただ、彼もこんな失敗続きでは粛清されるのは間違いなく、要するに中国人は、常に失敗したら殺される、という恐怖を抱いているわけで、それは実際気の毒ではある。ラストは華麗なる転身(?)で良かったねw
 ◆ロシアSVR強襲チーム「ザスロン」の面々:ヴァシーリーという男がリーダーで、まあ頭の堅いおっさん。ただし超強いのは間違いなく、要するにCIAのSADチームのリーダー、ザック・ハイタワーのロシア版的な人物であった。彼らももう、散々な目に合う。
 ◆現地ヤクザども:今回、ベトナムの「野生の虎」と名乗るヤクザ団体と、タイのチャムルーン・シンジケートというのが出てくる。双方ともに、結局は痛い目に合うのだが、恐ろしいのは、おそらく表の顔は普通にビジネスマンで、地方自治体や軍とも完全癒着していてやりたい放題な連中という点だろう。まあ、やっぱりわたしはベトナムもタイも行きたい国じゃあないかな……たとえ呑気な観光客としてでも、ほんの1本裏に行けば恐ろしいというのがちょっとリアルに怖いすね……。いや、でもまあそれは日本でも同じで、我々が知らないだけのことかもなあ……。

 はーーー長く書きすぎた。それだけ興奮して楽しんだということで、お許しいただきたい。しかし、なんというか、日本で平和に日々をぼんやり送っている我々読者としては、恐らくはきっと、日本国内でもこういう諜報活動が行われているんだろうな、ぐらいの想像しかわかないが、どうなんだろうなあ、日本でも実は派手なドンパチが行われていて、それを一般人はまったく知らされていないんでしょうかねえ……。いずれにせよわたしが思うのは、CIAもSVRも人民解放軍も、それぞれのキャラクターはそれぞれの自国の利益のために戦い、死んでいったわけで、実際のところ誰が悪者だとか、言えないような気がするんすよね。まあ、そりゃあ地元ヤクザ連中は純粋に金や自分自身の利益のためなので、悪党と言って良さそうだけれど、やっぱり人類は争いや戦争を克服することは未来永劫にないだろうな、と思うわたしでありました。

 というわけで、いい加減に結論。
 約1年ぶりの新刊、Mark Greaney氏による「暗殺者グレイマン」シリーズ待望の新作『GUNMETAL GRAY』(邦題:暗殺者の飛躍)が発売になったので、やったーーと喜び勇んで買い求め、さっそく読み終わったのだが、実に今回も楽しめる作品であった。前作でようやくCIAによる殺害指令が解かれた主人公グレイマン氏は、義のために戦うちょっと妙な凄腕アサシンだが、今回も大変な大活躍であった。あ、そういえば、いつもボロボロに傷だらけ&血まみれになるグレイマン氏だが、そういえば今回はそれほど深刻な怪我はなかったすね。そしてなんといっても、グレイマン in LOVEな展開は実に楽しめましたな。お相手のゾーヤも大変良いキャラで、どうか今後も登場してほしいと思う。そして、やっぱり中国は恐ろしい国! 以上。

↓ 次のGreaney氏の日本での新刊は、きっと「ジャック・ライアン」シリーズのこれかな。眠れる熊でお馴染みのロシア大統領ヴォローギン氏がやらかすお話のはずです。

 4月から5月にかけて、わたしはMark Greaney氏による「暗殺者グレイマン」シリーズを立て続けに読んでとても興奮し、楽しく(?)読ませていただいたわけだが、この度、そのシリーズ最新作が発売になり、さっそく購入し、おととい読み終わった。いやー、大変興奮する物語で、とても面白かった。
 一応、今までの経緯をおさらいしておくと、かの有名な「ジャック・ライアン」シリーズが、その生みの親であるTom Clancy氏の早すぎる逝去に伴い、巨匠からバトンを引き継いで、「ライアン」シリーズを現在書いているのがMark Greaney氏である。で、「ライアン」の最新作から、完全にGreaney氏単独クレジットで発売され、読んでみたところ大変面白かったので、この新しい著者、Greaney氏とは何者なんだろう、と調べたら、わたしの大好きな早川書房から「暗殺者グレイマン」シリーズと言う作品を発表していることを知ったので、じゃ、読んでみるか、という事になったのである。
 で、読んでみた。ら、わたしのようなハリウッド・アクションが大好きな人間は大変楽しめる、非常に面白い作品だったのである。このBlogで取り上げた記事のリンクと、いつも冒頭に書いている基礎知識を自分用に貼っておこう。手抜きでサーセン。
 1作目『暗殺者グレイマン』の記事はこちら
 2作目『暗殺者の正義』はこちらの記事へ。
 3作目『暗殺者の鎮魂』の記事はこちら
 4作目『暗殺者の復讐』の記事はここ
 上記記事内でも何度も書いている通り、このシリーズの最大の特徴は、主人公コート・ジェントリーこと暗殺者グレイマンのキャラクターにある。彼は、数々の伝説的な仕事をやってのけた凄腕殺し屋として諜報業界=Intelligence Communityでは誰もが知る有名人なのだが、スーパー影の薄い、印象に残らない男ゆえに、その正体は業界的には謎に包まれている。で、元々は、CIAの軍補助員工作員で、どういう理由か不明なまま、Shoot on Sght=「目撃次第射殺」の指令が下ってしまって、5年にわたってCIAから逃げているという設定になっている。だけど、妙な正義感があって、悪党しかその手に掛けないという「自分ルール」を持っていて、変にいい人過ぎるが故にどんどんピンチに陥り、血まみれになりながらなんとか勝利するというのがどうもパターンのようだ。冷徹なんだか、いい奴なんだか、もう良くわからないのだが、読者から見れば、その「自分ルール」故に、まあとりあえず応援はしたくなるという不思議な男である。そして最終的に事件はきっちり解決し、読後感としてはいわゆるカタルシス、すっきり感があって大変面白いとわたしは思っている。
 そしてこれも何度でも書くが、外見的な描写はあまりないのだけれど、わたしは彼のビジュアルイメージとしては、勝手にJason Statham兄貴か、Mark Strong伯父貴をあてはめ、絶対マッチョのセクシーハゲだと確信している。ピッタリだと思うな、たぶん。

 というわけで、5作目となるのが、おとといわたしが読み終わった最新作『暗殺者の反撃』である。
暗殺者の反撃〔上〕 (ハヤカワ文庫 NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

暗殺者の反撃〔下〕 (ハヤカワ文庫 NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

 さてと。本作は、前作のラストシーンからの続きで、ジェントリーがとうとう逃げることをやめ、過去と対決するためにUS本土に降り立ち(ずっと世界中を逃げていたので、帰国したのも5年ぶり。しかも今回の舞台はほぼずっと、Washington DC)、ずっとシリーズ最大の謎とされていた、何故CIAは、ジェントリーに対して「目撃次第射殺」の指令を下したのか、の答えが出る物語だった。なので、わたしとしてはもう、超興奮しながら読んだわけです。
 今回は上下本で、過去最大ボリューム。そしてジェントリーは今回、ほとんど失敗しないで比較的ストレートに話は進む。実は今までの物語は、お人良し故にピンチになったり、信じたばっかりにひどい目に遭ったり、せっかくの目的地に到着してもまるで無駄足だったり、と、読んでいて、お前何やってんだよ!! と思わず突っ込みたくなるぐらい、まあとにかくひどい目に遭ってばかりだったので、実は若干読んでいてストレスを感じていたというか、イライラすることもあったのだが、もう今回はそういう失敗はほぼなくて、非常に気持ちよかったですな。

 じゃ、今回も、主要人物をあげて、いつかすっかり内容を忘れたときのための備忘録とするか。
 ◆コート・ジェントリー:フロリダ州出身。30代。裏社会では「グレイマン」と呼ばれ恐れられているが、CIAでのコードネームは「シエラ6」。主に「シックス」と呼ばれていた。そして現在のCIAのターゲットネームは「違反者(ヴァイオレーター)」。とにかく、本人的には正義を遂行しているだけで、悪党は基本的に即ぶっ殺す、恐ろしい男。今回、深夜のコンビニ勤務の黒人女性を守るために、自らが危険になるとわかっていても悪党をあっという間に3人殺したりする。そのせいで隠れ家がばれてしまうリスクがあるのに。そんな奴ですよ、グレイマンは。実に律儀でまじめな男です。本作では、前作(第4作目)で貸しのできた、モサドの手引きで5年ぶりに合衆国の土を踏む。あと、今回初めて、父親が登場する。そしてその父が登場する場面が結構グッとくるというか、泣ける!! 
 ◆ザック・ハイタワー:次に紹介するのは誰にしようかと悩んだけど、この人にしよう。この人は、ジェントリーのCIA時代の所属部隊「Golf Sierra」、通称「Goon Squad(=特務愚連隊)」のチームリーダー。コードネームは「シエラ1」あるいは「ワン」。彼はシリーズ第2作目にも登場した男で、ジェントリーの腕も人柄も一番よく知っている、けど、ジェントリーを殺せという指令が出たならそれを遂行するまで、という態度のプロフェッショナル。勿論、ジェントリー並に強い(はず)。第2作目でジェントリーに助けられてはいるんだけど、かなりひどい目に遭っていて、その2作目の任務のめちゃくちゃぶりからCIAを解雇されてしまっていたが、腕を見込まれてCIAのヴァイオレーター狩りに召集される。彼は敵なのか味方なのか!? というのも本作のポイントの一つ。元上官だけあって、わたしは二人の会話が好きで、特にザックがジェントリーに「・・・だぜ、きょうだい」と平仮名で呼ぶのが非常に好き。わたしのザックのビジュアルイメージは、完全にStephen Lang氏ですね。あの、『Avatar』の悪党の大佐です。
 ◆マット・ハンリー:ジェントリーたちGolf Sierraを運用していたCIAの元上司。第3作目で、メキシコで危うく殺されそうになったジェントリーを単身助けた(ただし、助けたことがCIA内部で彼を窮地に陥らせてしまうので、ジェントリーはマットの腹を撃って、仲間じゃないと見えるようにした。未だに撃たれたことに怒ってる)ことがある。ジェントリーの実力も人柄もよくわかっている唯一の味方といってもいい男。元軍人だが、今は太鼓腹。そして現在ではCIA特殊活動部(SAD=Special Activities Division の略か?)の部長にまで昇進している。カーマイケルが大嫌い。なお、マットはジェントリーに対する「目撃次第射殺」の原因を、正確には知らない。わたしのマットのビジュアルイメージは、若いころのOliver Platt氏ですね。
 ◆アンディ・ショール:ワシントンポストのDC担当記者。本作で一番最初の事件を偶然取材。かわいそうな青年。
 ◆キャサリン・キング:ワシントンポストのベテラン調査報道記者。誠実?な女性。アンディがネタを持ち掛け、以後二人で取材に駆け回る。そして最終的に非常に大きな役割を担う。もし映画化されるならキャサリン役はぜひとも、我が愛しの女神ことCate Blanchettさまにお願いしたいですな。
 ◆デニー・カーマイケル:CIA国家秘密本部本部長。政治任命されるCIA長官よりも現場の実権を握るラスボス。ジェントリーに「目撃次第射殺」指令を出した張本人。彼がなぜ、ジェントリーを殺そうとしているのか、が、本作最大の謎。非常に面白かった。
 ◆ジョーダン・メイズ:カーマイケルの手下の副本部長。実際のところ、彼はジェントリー抹殺の本当の理由を知らず、使われただけの可哀想な人。
 ◆スーザン・ブルーア:ヴァイオレーター対策グループの作戦指揮官として今回初登場の女性。有能、だけどずる賢いと言っていいのでは? 好きになれそうもない。が、端々に、とにかくいい女であるような描写をされている。彼女は悪党一派だと思うんだけどなあ……彼女の最終的な立ち位置だけが、わたしとしては本作の唯一の不満点。
 ◆ムルキン・アル・カザス:サウジアラビア王国の諜報機関のアメリカ支局長。どうやらカーマイケルとは密約があるようで……ヴァイオレーター狩りにサウジの勢力も参戦。
 ◆リーランド・ハビット:第4作目で執拗にグレイマンを追った民間軍事企業の社長。前作でジェントリーにこっぴどくやられた人。基本的にとんでもない悪党だけれど、かわいそうな運命に……。

 まあ、主要なキャラクターは以上かな。
 今回は、いつものわたしの記事のようにネタバレ満載で物語を紹介すると、ちょっともったいないというか興味がそがれる恐れがあるので、やめておきます。とにかく、いきなり本書を読む人はいないだろうから、あくまでシリーズを読んできたという前提で書きますが、今回の話で、ジェントリー=グレイマン=ヴァイオレーター=シックスは、長年の謎が解けてスッキリするのは間違いない。けれど、その秘密を知る過程で、何度もくじけそうになり、あるいは不完全な情報を得て、心が折れそうになったり、おまけに今回もかなり早い段階で大けがを負うのでまたもボロボロですが、それでも、いつもの不屈の精神力で何とか切り抜けていく様子は大変楽しめます。
 とくに、ラストのミッションはもうワクワクものですよ。非常にカッコイイし、映像映えすると思う。一番最後のアレって、『The Dark Knight』で出てきたアレですよね? いや、アレじゃわからんと思うけれど、読み終わったらわたしが何を言ってるか、分かると思います。もうホント、すげえ男ですよ。大変楽しめました。

 最後に、わたしの大好きな早川書房へ感謝を述べておきたい。電子書籍版を紙の本の発売から1週間とすぐに出してくれてありがとうございました。でも、せめて自社ページで、電子版はいつ発売、って告知ぐらい打っといてください。もう、何度、本屋さんの前で、紙で買っちまおうか……と悩んだことか。いや、早川ならオレの期待に応えてくれる!! はず!! と何の根拠もなく信じてよかったす。
 それから、シリーズを読んできたファンの皆さんに、これだけはネタバレだけど言わせていただきたい。確実に、シリーズは新たな展開でまだ続く可能性大ですよ!!! 楽しみすね!!

 というわけで、結論。
 「暗殺者グレイマン」シリーズ最新作は、とうとう最大の謎が判明する注目の作品です。シリーズを読んできた方は、今すぐ、本屋さんに行くか、どこかでポチッて下さい。読まない理由は何一つありません。最高です。
 以前も書いた通り、Greaney氏のWebサイトには
 A feature film adaptation of The Gray Man is in development by Columbia Pictures, with Joe and Anthony Russo of Captain America, Winter Soldier, to direct.
 とありますので、映画化を心から楽しみに待つのが、正しいファンの姿だと思います。監督がルッソ兄弟なんて、もう傑作になることは間違いなしですな。超楽しみですが、ジェントリー役は、絶対にJason Statham兄貴でよろしくお願いします!!! 以上。
 
↓ 一応、Kindle版のリンクも貼っときます。わたしは愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERで買って読みました。
暗殺者の反撃 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2016-07-31

暗殺者の反撃 下 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2016-07-31

 今週の月曜日は、アメリカで第70回TONY AWARDの授賞式があった(※現地は日曜夜)。
 TONY賞ってなんぞ? と言う人はいないとは思うが、Wikiからそのまま引用すると、
 <トニー賞は、正式にはアントワネット・ペリー賞と呼ばれる、アメリカン・シアター・ウィングおよび全米劇場プロデューサー連盟により授与される、アメリカ合衆国の演劇及びミュージカルの賞>である。まあ、一般人的には、アメリカの演劇版アカデミー賞、みたいな理解でいいんじゃないかと思う。正確には全然違うけれど。
 このTONY AWARDは、2年前からWOWOWでその授賞式を生放送で観ることができるため、わたしも2年前から観て楽しませてもらっている。2年前の司会はHugh Jackmanだったが、まあ、そのパフォーマンスの凄さは、観てない人にはうちに呼んで観せてやりたいほどだ。本当にカッコ良くて素晴らしかった。そして2年前は、『Aladdin』のパフォーマンスが凄くて、こりゃあ観たいとワクワクしたものだ。そして去年は、我らがKEN WATANABE氏が『The KING and I』でノミネートされ、しかもそのパフォーマンスは恐ろしくカッコ良くて、ああ、オレたちの謙さんはもはや完全に世界のKEN WATANABEになったんだ、と改めて嬉しくなったものである。 
 ところで、さっきから、わたしは何度も「パフォーマンス」と言う言葉を使っているが、ここが映画のアカデミー賞とちょっと違うところで、ミュージカル部門のノミネート作は、劇中歌をステージで1曲か2曲、歌ってくれるんだな。本番の衣装で。そして、司会もめっちゃ歌うわけです。 ミュージカルを愛してやまないわたしのような人間には、それがもうたまらんわけであります。

 ↑これは、今年の司会のJames Corden氏の、オープニングのパフォーマンス。司会者からしてこれだもの。ホント凄いわ。ちなみにこの人は、えーと、分かるように説明すると……そうだなあ、日本では去年公開された映画版の『Into the Woods』のパン屋さんを演じたあの人っすね。US本国では、CBSの深夜番組『The Late Show with James Corden』の司会者としてお馴染みで、歌って踊れる太っちょなおっさんとして有名で、この人自身も、2012年のTONY WINNERです。
 で、↓のこれは今年の大本命『HAMILTON』のパロディを司会者がやる場面。ほんとにもう、芸達者極まりないすな。

 そして↓これが、授賞式の途中でも流されていた、『HAMILTON』の主役であり、脚本を書き、曲を書いた現代の超天才、Lin-Manuel Miranda氏(=助手席のロン毛の男)と一緒に、マンハッタンを車で流しながら歌いまくる動画です。まずは『HAMILTON』の曲を歌いながら、3分20秒ぐらいに参加してくるほかの3人と『RENT』の「Seasons of Love」や、『Jersey Boys』でお馴染みの「Can't  take my eyes off」、それからラスト、8分20秒ぐらいからは『Le Miserables』の「One Day More」といった、有名な名曲をカラオケで熱唱してくれます。最後のレミゼの歌は、第1幕のラストの、あのすげえ盛り上がる曲なので、ご存知の方も多いでしょう。つか、知ってる人なら、この動画を観たら、マリウスのエポニーヌの扱いに笑えるはずです。ヒドイ扱いで可哀相・・・・・・ww とにかく、すっごいよ。ホントにもう感動的で超必見です。

 これは前述の『The Late Show with James Corden』の、「Carpool Karaoke」という名物コーナっすね。リンク先の、VIDEOってところをクリックすると、他にもいろんな超豪華な、スーパー・アーティストと車の中で歌いまくってる動画がいっぱい見られます。ちゃんと公式サイトなので、違法動画ではないのでご安心を。この企画、絶対日本でも面白いと思うのだが、テレビ東京あたりでパクらないかな……。
 とまあ、こういった動画を観ると、うおー、すげーー、と思うでしょ? え? 思わない? そうすか……残念ながらわたしと友達にはなれそうもないですな。さよなら。

 というわけで、わたしと友達になれそうな方は、以下、続きます。
 今年のこの授賞式の会場は、これまでの「RADIO CITY」から場所を移し、アッパー・ウエストの「Beacon Theater」で行われたそうです。セントラルパークの左っかわの、American Museun of Natural History(アメリカ自然史博物館=映画『ナイト・ミュージアム』の舞台)まで北に行かないあたりのBroad Way沿いみたいすね。位置的には。要するに、Times Squareからかなり北の方ですな。で、WOWOWの放送で言っていたけど、入場料が1,500US$だそうだ。つか、チケット買えば一般人でも入れるってことなのかな? まあ、そうなんだろうな。しかし1,500$って……17万弱だよな。高っけえ。でも、WOWOWの解説によると、キャパが「RADIO CITY」よりかなり小さいので、チケット代も値上がったんですと。
 で。
 結論から言うと、もう既にいろいろなところで報道されている通り、今年は『HAMILTON』が11部門で受賞してミュージカル部門は圧勝だったわけですが、ここで一つちょっと説明しておくと、カテゴリー的には、
 ◆ミュージカル部門
 ◆リバイバル・ミュージカル部門
 ◆演劇部門
 ◆リバイバル演劇賞
 と、4つに分かれていて、それぞれで作品賞が決まり、主演男優/女優、助演男優/女優といった個人賞はミュージカルと演劇と2つのカテゴリーになる。その際、新作でもリバイバルでもどちらでもOK、なんじゃないかな。去年の謙さんは、リバイバル作品での主演男優賞ノミネートだったわけだ。
 で、ですね。わたしが何ゆえここまでTONY AWARDはすげえ、と興奮しているかというと、実は映画ファンが観ても非常に面白いんだな。なぜなら、ハリウッドスターもかなりノミネートされるし、プレゼンターでも出てくるし、とにかく豪華なわけです。今年もですね、ノミネートされたハリウッドスターとしては、演劇主演男優賞にノミネートされたセクシーハゲでお馴染みのMark Strong氏だとか、演劇助演男優賞では、『Man of Steel』のゾット将軍でお馴染みのMichael Shannon氏だとかがノミネートされているし、プレゼンターでは、先日わたしは観たばかりの『SOUTHPAW』で主役を演じたJake Gyllenhaal氏も出てきたし、何よりですね、今現在、わたしが一番好きなハリウッド女優であるCate Blanchett様も出てくるわけですよ。まあ、そりゃあ、Cate様の美しさといったら、本当にもう、たぶんわたしは生で出会ったら失神するだろうね。確実に。
 とにかく、そういったスター勢ぞろいで、おまけに歌のパフォーマンスも素晴らしく、完全にSHOWなわけです。これは、USアカデミー賞の授賞式でも同様で、楽しいわけ。観てるだけで。
 で、観ていて思ったわけです。
 日本の、「日本アカデミー賞」でしたっけ? あの貧相なことと言ったらもう、恥ずかしくなるね、と。なんでアレ、ホテルの広間で、おまけに丸テーブルでやってんだろう? 映画の祭典だったら劇場でやればいいのに。帝劇でも、シアターオーブでもいいと思うんだけど、まあ、なんか事情があるんだろうな……すぐ、席から立てないからダメなのかな……。まったく興味ないからもう最近は観てもいないけれど、ホント、あれじゃあなあ……完全に身内のお疲れ会じゃん……てなことを思ったわけです。おそらくは、一番肝心なのは、司会を出来る役者がいない、ってことなんだろうなと思う。これじゃあ、本当にどんどん邦画はガラパゴス化してしまうというか……それでいいのかねえ……。なんか、邦画の未来は明るくねえなあ、と、TONY AWARD授賞式を観て思ったのでした。

 というわけで、結論。
 実は一番言いたかったのは、Cate Blanchett様が相変わらずお美しく、もうドキドキしながら楽しく観たよ、ってことです。そして、また今年もNYCへ行くべきかもな……という気がしてきた。とにかく、NYCに5~7泊ぐらいして、毎日Broad Wayでミュージカルと芝居を観まくりたいですな。あと、WOWOWの中継はとても素晴らしいと思います。今回はいろいろなゲストが出てくれて素晴らしかったし、オープニングの井上芳雄氏のパフォーマンスも、やっぱりカッコ良かった。芳雄ちゃんは絶対に英語を勉強して、Broad Wayへ進出すべきだと思います。以上。

↓ NYCに行く前に、きっちり予習しておかないと……わたしの英語力では確実についていけない……。しかしこのロゴデザインのセンスも抜群だと思いませんか?
Obc: Hamilton
Original Broadway Cast
Atlantic
2016-01-15

 というわけで、現在日本で出版されている『暗殺者グレイマン』シリーズの4作目、『暗殺者の復讐』を読み終わった。
 1作目『暗殺者グレイマン』の記事はこちら
 2作目『暗殺者の正義』はこちらの記事へ。
 3作目『暗殺者の鎮魂』の記事はこちらです。
 手抜きだが、前回書いたことを、はじめにコピペしておこう。
 何度も書いている通り、亡くなったTom Clancy氏から「ジャック・ライアン」シリーズのバトンを受け取ったMark Greaney氏によるこのシリーズの最大の特徴は、主人公コート・ジェントリーこと暗殺者グレイマンのキャラクターにある。彼は、妙に正義感があって、悪党しかその手に掛けないという「自分ルール」を持っていて、変にいい人過ぎるが故にどんどんピンチに陥り、血まみれになりながらなんとか勝利するというのがどうもパターンのようだ。冷徹なんだか、いい奴なんだか、もう良くわからないのだが、読者から見れば、その「自分ルール」故に、まあとりあえず応援はしたくなるという不思議な男である。そして最終的に事件はきっちり解決し、読後感としてはいわゆるカタルシス、すっきり感があって大変面白いとわたしは思っている。
 そしてこれも何度でも書くが、外見的な描写はあまりないのだけれど、わたしは彼のビジュアルイメージとしては、勝手にJason Statham兄貴か、Mark Strong伯父貴をあてはめ、絶対マッチョのセクシーハゲだと確信している。ピッタリだと思うな、たぶん。
  で、第4作目となる『暗殺者の復讐』である。
暗殺者の復讐 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2014-05-23

 もういきなりだけど、結論から言おう。シリーズで一番面白かった。
 もう、シリーズを読み続けてきた人ならお馴染みだが、この4巻目の冒頭時点で、主人公グレイマン=コート・ジェントリーは、4つの勢力から命を狙われる身だ。
 1)アメリカ合衆国政府(というよりCIA):グレイマンの出身国であり出身団体。だが、なぜShoot on Sight(目撃次第射殺=SoS)指令が出され、お尋ね者になっているか、その謎は明かされていない。
 2)シドという名のロシアン・マフィアのボス:2作目冒頭でのグレイマンのハンドラー(調教者=雇い主)。2作目で見事にグレイマンに裏切られた。超怒っている。
 3)ローラングループ:多国籍企業。1作目の敵。1作目でグレイマンにコテンパンにされたが、ラストでグレイマンを雇っていたはず(だが、どうも2作目にはいる前に喧嘩別れしたのか、シドに売ったのかよくわからない)。怒っている理由はもうわたし、良く覚えてません。
 4)マドリガルという名のメキシカン・カルテルのボス:3作目で、グレイマンと手を組む邪悪な男。最後にグレイマンに裏切られて激怒中。You Tubeに、絶対ぶっ殺してやるかんなー!! 覚えとけよ!! という動画をUPしてるアホな人。
 とまあ、こんな感じに、そこら中から命を狙われており、今回、物語は、ロシアのマフィアのボスであるシド暗殺作戦から始まる。グレイマンとしては、もう逃亡生活に疲れちゃっており、さっさとケリをつけられる奴から片付けちまおう、と思ったらしく(?)、最初のターゲットに選ばれたシドは、ま、当然もうアウトですわな。正確に言うと、敵の敵は味方というわけで、シドを殺したがっている連中もやっぱり多く、その「敵の敵」から依頼を受けたという設定だったと思う。しかしこの冒頭も、これまた非常に派手な、映像栄えしそうなオープニングアクションで大変読み応えアリである。
 しかしこの派手なアクションを、上空から無人機で一部始終観ている存在がいた。
 今回のメインの敵はコイツらで、その正体はCIAから業務をアウトソーシングしている民間軍事企業である。CIAが出来ない汚れ仕事を請け負う彼らの目的は、あくまでCIAが払う懸賞金であって、志的には高くはないし、やり方も汚い。いわゆるcollateral damage=副次的損害=全然無関係な人々が巻き添えで死ぬこと、もまったく厭わない、純粋なバウンティハンターどもだ。
 というわけで、シドをぶっ殺した次に、そいつらがやってくる。が、グレイマンを救う謎の男が暗躍し、窮地を脱することに成功する。ただし、読者的にはその正体は別に謎ではなくて、コードネーム「デッドアイ」という、グレイマンを追うバウンティハンター企業に属する独行工作員で、その身分は最初から明かされていて、あくまでも、その「目的」が謎となっている。何故助けたのか、グレイマンに接近した目的は何なのか。
 まあ、普通の読者なら、このデッドアイがグレイマンの敵であることはさっさと分かるとは思うが、どうしてまた、味方を殺してまでグレイマンに接近してくるのかが良くわからない。この点は、実はわたしは結構イライラした。非常に回りくどく慎重で、そしてそれ故に、我らがグレイマンは結構あっさり信用しかけてしまうのだ。
 しかし……ホントに何度でも言うけれど、グレイマンはイイ奴過ぎるんすよね……。敵に決まってんだろうがと読者は分かっているのに、うっかり信用しそうになるグレイマンは、ホントあんた、今まで良く生きてこられたな……と心配なレベルである。もちろん、今回はデッドアイが実に巧妙なクソヤローだったので仕方ないとはいえ、結果的にまたしてもグレイマンは満身創痍であり、血まみれである。
 ただ、デッドアイの正体が判明してからの後半は非常に良かった。今回はイスラエルのモサドもこの騒動に介入してくるし、そのモサドの女性が非常にキャラが立っていて、大変良かった。だがしかし! ちょっと展開としては、「ジャック・ライアンシリーズ」の、Greany氏による最新作『米朝開戦』における、フランス人エージェントの彼女と同じ運命をたどってしまったのが極めて残念であった。そしてラストは、またもやグレイマンのいい人ぶりが自らを救うという、情けは人のためならず的な展開となって、クソヤローを無事にぶっ殺すことが出来たし、エンディングのエピローグではとうとう、グレイマンIn ワシントンDCで、ついに次の巻ではシリーズ最大の謎に挑むのか!? という前触れまで描いてくれて、大変楽しめる作品であったと思う。
 しかし、やっぱりグレイマンクラスの男でも、モサドだけはヤバイという認識なんですな。また、今回は民間軍事企業のハイテクチームが大活躍して、結構簡単にグレイマンは居所がバレることになる。顔認証はテクノロジーとしてもはやお馴染みだけれど、「歩容」という言葉があるんですなあ。つまり、歩き方、歩く癖、を記憶させておいて、世界各国の監視カメラ映像から、人物を特定する技術なのだが、確かにそういう技術もあるんだろうと想像は付くものの、相当膨大なデータだろうし、作中でも相当な数の「疑わしい候補」が出てきてしまうけれど、現代の世界の諜報業界(=インテリジェンス)においては実用化されてるんだろうなあ、という気はする。また、本作では「ドローン」も大活躍し、グレイマンを追い詰めたりするわけで、こういったいわゆるハイテクガジェットは、確かにTom Clancyの後継者に指名されたGreany氏の本領発揮というところなんだろうと思った。
 しかし、重ね重ね、モサドの女性の残念な運命はもったいないというか、実際悲しい結末だった。『米朝開戦』でもそうだったけれど、このGreanyという作家は結構キャラを使い捨てちゃう人なんですかね? だとしたら、ちょっとファンとしては残念だなあ、と思いました。ともあれ、物語はシリーズで一番面白かったと思います。また、まったくどうでもいい話ですが、今回の敵、デッドアイは、わたしの脳内では、何故かずっとJeremy Renner氏の顔が浮かんでいました。MCUで言うところのHawkeyeのあの人です。彼は『Mission:Impossible』シリーズのレギュラーにもなったし、「ボーン・シリーズ」番外編の『The Bourne Legacy』では主演を務めていて、なんか不敵な頭の回る凄腕工作員ということでこの人が頭に浮かんだのだろうか? それとも、単にDead EyeとHawkeyeと音的に似てただけかな? 自分でも良くわかりませんが、皆さんの頭には誰が浮かんだか、教えてください。しかし、グレイマンがハゲ・マッチョであることはわたし的には譲れないところですw

 というわけで、結論。
 「暗殺者グレイマン」シリーズ第4作『暗殺者の復讐』は、ちょっと中盤イライラするけれど、大変面白かった。シリーズを読んで来た方は、必読だと思います。そして、シリーズ最新作『BACK BLAST』は、もうUS本国では発売になってますので、早川書房さんの翻訳が発売されるのを楽しみに待ちましょう。以上。
 ★2016/06/30追記:さっすがオレたちの早川書房!!  新刊の告知がされてました!!!
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

 まだ書影はないようですが、あとチョイで日本語版が出ますね!! ホント、早川書房は分かってらっしゃる!! 今度は上下本みたいすね。楽しみ!!!



↓ くそう……我慢できないから買っちまうか……。あ、Kindle版はあさって発売だ!!
Back Blast (English Edition)
Mark Greaney
Sphere
2016-05-19

 というわけで、このところずっと読んでいる「暗殺者グレイマン」シリーズの3作目、『暗殺者の鎮魂』を読み終わった。
 1作目『暗殺者グレイマン』の記事はこちら
 2作目『暗殺者の正義』はこちらの記事へ。
 上記でも何度も書いている通り、このシリーズの最大の特徴は、主人公コート・ジェントリーこと暗殺者グレイマンのキャラクターにある。彼は、妙に正義感があって、悪党しかその手に掛けないという「自分ルール」を持っていて、変にいい人過ぎるが故にどんどんピンチに陥り、血まみれになりながらなんとか勝利するというのがどうもパターンのようだ。冷徹なんだか、いい奴なんだか、もう良くわからないのだが、読者から見れば、その「自分ルール」故に、まあとりあえず応援はしたくなるという不思議な男である。そして最終的に事件はきっちり解決し、読後感としてはいわゆるカタルシス、すっきり感があって大変面白いとわたしは思っている。
 そしてこれも何度でも書くが、外見的な描写はあまりないのだけれど、わたしは彼のビジュアルイメージとしては、勝手にJason Statham兄貴か、Mark Strong伯父貴をあてはめ、絶対マッチョのセクシーハゲだと確信している。ピッタリだと思うな、たぶん。
  で、第3作目となる『暗殺者の鎮魂』である。
暗殺者の鎮魂 (ハヤカワ文庫NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2013-10-25

 今回のお話は、前作の数か月後から始まる。前作の作戦により、完全にCIAからも、そしてロシアのヤクザからも、命を狙われる身となってしまったグレイマン。南米のアマゾン川の奥地に身を隠していたが、そこも強襲され、逃走するオープニングアクションがあり、舞台はブラジルから中米を抜け、メキシコに移る。しかし、逃亡中のグレイマンはメキシコのバスターミナルで、ふと一つのニュースを見てしまう。それは、かつて自分の命を救ってくれた男が死亡し、しかも悪党として報道されていたのだ。
 普通、冷徹な暗殺者で、いろんな勢力から命を狙われている男なら、そのまま逃走を続けるだろう。が、我らがグレイマンは、勿論そんなことはしない。律儀なことに、わざわざその男の墓参りに出かけるグレイマン。そして未亡人となった女性(妊娠中)の一家に歓迎されてしまい、あまつさえ、死んだ命の恩人が常に気に掛けていた、妹に出会って若干惚れてしまう。そして、恩人を殺したカルテルのボスが、イカレた狂信者で、未亡人とお腹の胎児を狙って殺し屋を放っていた――的な展開である。こうまとめると、なんだそりゃ、と思われるような物語かもしれないが、まあそんな展開で、未亡人一家と妹を守るために、グレイマンがまたも血みどろの戦いを行うのが本書のあらすじである。正直、基本的にずっとピンチ続きで、読み終わって疲れました。
 今回、わたしが面白いと思った、読みどころポイントを、自分用備忘録としていくつかまとめておこう。
 ■(事実なのか知らんが)メキシコは恐ろしい国!!
 今回の敵は、いわゆる麻薬カルテルである。メキシコのカルテルの恐ろしさは、もうそこら中で描かれているのである意味おなじみだが、まあ、とにかく人命が安い国だという事が本書でも嫌というほど描写される。そして軍も警察も、国家ですら、癒着しており、どうにもならんというのがかの国の現状のようだ。もちろん、普通の市民は善良に暮らしていても、だれがどこでカルテルとつながっているかさっぱり分からないからタチが悪いのだが、どうやら、善良な人々は、「アメリカ人どもが麻薬を欲しがるから(=需要があるから)悪いんだ!!」と思っているらしい。まあ、確かにそれはそうかも、であろう。何しろ麻薬ビジネスは100円のコーラを400,000円で売るようなもので、ボロ儲けだし。なので、今回グレイマンの敵となるカルテルのボスは、常にイタリア製スーツを着こなす優男で、完全にビジネスマンであり、しかもまっとうなビジネスも数多く行っているため、ちょっとした自国の人気者でもある。加えて、メキシコ軍人として戦闘訓練を受けていて、US-Armyでも訓練をしっかり受けた経歴があって、まあとにかく、目を合わせちゃダメな人である。そういった男がボスを務める組織を敵に回すのだから、もちろんグレイマンは満身創痍で、おまけに今回は、超ヤバイ拷問も喰らう。あれはもう、、読んでるだけで痛そうですね。
 ■グレイマン、初(?)の非単独行動
 いつもは完全に一匹狼で単独で戦うのがこれまでのパターンだったが(正確には前巻後半は共同作戦ではある)、今回のグレイマンは未亡人一家を守りながらの団体行動である。しかも未亡人一家はすぐお祈りをしたがって、さっさと行動したいグレイマンは何度も、早くしろよ……とイライラすることになってしまう。この辺は、ハリウッドB級アクションが大好物なわたしには、よく見かける光景だけれど、どうなんだろう……ちょっと、敵もグレイマンも、無計画すぎるし、隙がありすぎのような気がしてならない。おまけに!! 今回、初めてグレイマンin LOVEですよ!! まあ、グレイマンの愛に不器用な様はかなり良かったっすね。しかも、わたしはかなり笑ってしまったのだが、物語のラスト近くで、彼女が大好きなのに、オレの生き方に彼女を巻き込むわけにはいかない、一体どうやって別れを告げたらいいんだ……と悩むグレイマン氏に、彼女は告げる。「わたし、修道女になるわ!!」 おそらく描写にはないけれど、あっさり振られたグレイマン氏がガクーーーッとズッコケたことは想像に難くない。まったく、不器用な人ですよグレイマン氏はw
 ■CIAは敵か味方か?
 前作で、完全に再びCIAを怒らせ、Shoot on Sight(目撃次第射殺せよ=SoS)指令が継続中のグレイマンだが、まだ、本作最大の謎(?)である、「そもそも何故グレイマンはCIAから狙われなければいけないのか、過去に何が起こったのか」は本作でも解明されなかった。が、今回、前作で名前だけ登場していた、グレイマンのかつての上司が登場する。この彼はかなりいいキャラクターでしたね。今後も登場するかもしれないけれど、残念ながら彼も、上層部のいきさつは知らないようで、過去に何が起こったかは知らないようでした。これ、次の4作目を読んでも解明されず、ずっと引っ張るのではなかろうか……。
 ■グレイマン、再び敵を増やすの巻
 事件は、後半で、敵カルテルと対抗するために、その敵であるライバルの組織とグレイマンが手を結ぶ展開になる。グレイマン曰く、手を組むことにしたそのライバル組織のボスは「理性的な人間の想像するもっとも邪悪な人間像を具現している男」なんだそうだが、そんな男とがっちり握手。しかも2回。まあ、手段は問わないということだけれど、実のところ、グレイマンは彼らもまた道具としてしか見ておらず、最後はまんまと騙して、結局手を結んだ組織からも命を狙われることになってしまうのがわたし的にはかなり良い展開だと思った。この、最後のシーンはかなりカッコイイです。
 (裏切られた組織のボス)「殺してやる」
 (グレイマン)「順番を待てよ、カウボーイ」
 (裏切られた組織のボス)「いずれだれかがお前を殺る。それは分かっているはずだ」
 (グレイマン)「わかっている。そのだれかになれなかったのを悔しがる人間が、おおぜいいるはずだと思うと、胸がすくんだよ」
 いいっすね、この余裕というか、強がりぶりは。これ、絶対Jason Statham兄貴に演じてもらいたいなあ……超カッコイイと思うんだけどな。
 というわけで、今回もまた血まみれであり、さらに敵を増やしたグレイマン氏。果たして次はどんな戦いになるのか、まだあらすじすらチェックしていないので全くわからないけれど、さっさと読んでしまおうと思います。

 というわけで、結論。
 「暗殺者グレイマン」シリーズ第3弾、『暗殺者の鎮魂』は、これまでと違って団体行動での逃走劇で、ちょっと調子が狂うグレイマンの様子がほほえましい部分もありますが、基本的には今まで通り血まみれで、敵がメキシカン・カルテルという事で、相当な数の死者が出ます。ので、おそらくはもう、これは普通の人には全くおススメできません。ハリウッドB級アクション好きには大変楽しめると思いますが、ちょっと普通の人には無理かな。あと、原題の『BALLISTIC』というタイトルは、日本語で言うところの「弾道(学)」という意味だと思うけれど……うーーーん、ちょっと読み終わっても内容的にピンと来ない。どこに引っ掛けてるんだろう……分からんす。以上。

↓ 今のところの日本語での最新作が、このシリーズ第4弾。この先の5巻はUS国内で2016/02/16に刊行されたばかりの模様です。
暗殺者の復讐 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2014-05-23

 というわけで、何週間か前に読み、ここでも紹介した『暗殺者グレイマン』。
 読んだきっかけは、著者のMark Greaney氏が、亡くなった巨匠Tom Clancy氏の後を継いで「ジャック・ライアン」シリーズを書き、その最新作『米朝開戦』が結構面白かったわけで、ならばGreaney氏のデビューシリーズを読んでみるか、と思ったからである。まあ、そのシリーズ1作目の『暗殺者グレイマン』は、期待は裏切らない面白さであった、というのが結論である。
 で。正直なところ、相当派手なドンパチもので、ちょっと荒唐無稽が過ぎるような気もしなくはないが、主人公たる「グレイマン」のキャラクターは大変好ましく、凄腕の殺し屋の癖に、妙な良心を持ち合わせていて、悪党しか殺さないというちょっとハリウッドタッチなキャラクターであることを知った。これはちょっと、先を読む必要があるな、と思い、シリーズ4冊のうち残りの3冊をすかさず買い、読み始めたわけである。昨日の夜、2作目である『暗殺者の正義』を読み終わったのだが、これまた、なんというか……普通とちょっと違う、妙にいい人な暗殺者が、そのいい人であるが故にピンチに陥る場面が多く、良くこれまで生きてこられたな、と心配になるレベルで、結果的に、またしても満身創痍で激しく血まみれになる小説であった。
暗殺者の復讐 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2014-05-23

 この作品は、前作のラストで、グレイマンの新たな調教者(ハンドラー)となった男から、一つのミッションを押し付けられ、遂行するところから始まる。 そしてそのミッションも、ごくあっさりクリアするのだが、またいい人ぶりを発揮して付け入られ手痛く負傷するグレイマン。まったく本当にあんた、凄腕なんですか? と若干心配になるが、ともかくグレイマンは、現在のハンドラーが嘘をついていたことを知って非常に不愉快になると。で、お前とはもうこれまでだ、と退職願いに会いに行くと。しかし、そこで次のミッションを提示される。それは、スーダン大統領の暗殺。これは現ハンドラーのロシア人が、ロシア政府から請け負ったもので、アフリカで虐殺を行っているこの大統領を暗殺する指令は、ロシアにとって石油利権が絡んでおり、極めて重要なものらしい。そしてグレイマンから見ても、その大統領は悪党であり、殺すべき人間であると。で、準備を始めるグレイマンだが、現ハンドラーはまったく信用できないので、独自に安全なところに身を隠そうとする……のだが、今度はあっさりCIAの準軍事チームに拉致される。グレイマンは、過去に何かがあったようで、CIAを解雇され、「目撃次第射殺(Shoot on Sight)」指令が出ている。拉致したのはグレイマンのかつてのチームリーダーだった。いよいよ年貢の納め時か、と思うグレイマンに、元リーダーが一つのオファーを出す。スーダン大統領を生け捕りにせよ。殺すな、という指令はグレイマンを混乱させる。殺してはスーダンの混乱は悪化してしまう。生け捕りにして、国際刑事裁判所(ICC)に差し出すことをアメリカ合衆国は望んでいて、成功の暁には、SoS指令も解除し、CIAに復帰させる、と破格の条件を出してくる。昔の仲間に恨みはなく、むしろ会えて嬉しいグレイマン。ロシアのミッションをこなすフリをして、CIAが介入して大統領の身柄を押さえられた、そして伝説の殺し屋グレイマンも、ずっとその命を狙っていたCIAに消された、という筋書きにすればいいと提案される。業界的にグレイマンをCIAが狙っていることはだれでも知ってるので、それでうまくいくさ、というシナリオである。
 というわけで、グレイマンはロシアの作戦を遂行するフリをしてCIAの作戦を遂行しようとするわけだが、まったく計画が計画通りに進まず、これまたひどい回り道をしながらいよいよ大統領拉致に向かうわけだが、CIAの作戦もまったく機能せず、どんどんと思わぬ方向に進んで行き、果たしてミッションは無事クリアできるのか、というお話である。
 問題は、作戦が思うとおりに行かない原因が、ほとんどすべてグレイマンのお人好しのせい、という点にある。まず、前半のICCの女性とのエピソードは、グレイマンのいい人ぶりを理解するにはアリだけれど、ズバリ、最終的に物語としてはまったく不要のもので、そのせいで大勢の無辜の人が死んでしまったことを思えば、相当無駄なアクションだったとしかいえないような気がする。そして後半のメインミッションは、主にCIAの現地アセットが無能だったことに起因しているとはいえ、ちょっと無理ゲーが過ぎると思うし、グレイマンの正義がどうもカラ回りしているような気がする。なんともナイーヴというか、青臭いというか……ホント、良くこれまで生きてこられたな、とさえ思えるわけで、こういった、「グレイマン」という冷徹な暗殺者が見せる人間性のようなものは、この物語の長所でもあり短所でもあるのだろう。そのバランス調整が、前巻のときも書いたが一番難しいところだろうと思う。
 結論から言えば、今回は若干バランスがいい人方向に振れていて、ちょっと問題アリのような気がしなくもない。また、Tom Clancy作品のように、現代の政治状況とかいろいろな知識を得られるような部分も少なく、はっきり言えば、若干ファンタジーめいているとさえ言えると思う。ただ、グレイマンが発揮するいい人ぶりは、「情けは人のためならず」というわけで、最終的にはグレイマンを救うことにもなり、この点は日本人的に観ると、やっぱりグレイマンを嫌いにはなれないというか、まあとりあえず、生き延びることが出来て良かった良かっただし、まあ、うーーん……今回も、グレイマンがCIAを解雇された理由は判明しなかったけれど、これはまた次の巻も読めってことと思うことにしたい。
 しかし、これも前巻のときに書いたけれど、グレイマンのビジュアルイメージは完全にJason Statham兄貴か、Mark Strong伯父貴なんだよな……絶対マッチョのセクシーハゲだと思うのはわたしだけだろうか。いずれにせよ、正直ちょっとアレな部分も多い本作だが、とりあえず残り2冊、シリーズは全部読もうと思います。まだ物語の核心たる、何故グレイマンはCIAを解雇されたのか、が判明していないし、本作で結局CIAのSoSは解除されず、むしろ全力で追われる立場に陥ってしまったので、果たしてグレイマンに安息の日がやってくるのか、その活躍を今後も楽しみにしようと思う次第である。

 というわけで、結論。
 「グレイマン」シリーズ第2巻の『ON TARGET』(邦題:暗殺者の正義)は、かなり荒唐無稽な部分と、作中でも言われる通りまるで『Black Hawk Down』のようにどんどんと状況が悪化する市街戦が混ざり合った、血まみれなアクション小説であった。この小説を楽しむには、たぶん、アクション映画が大好きか、翻訳ものの海外アクションものを読むのが好きとか、そういった素養が必要な気がする。普通の人がいきなり読んで面白いと思えるか良くわかりません。が、わたしはもちろん大好物なので、十分楽しめました。今後のシリーズも読もうと思います。以上。

↓3作目がこれらしい。今度はどうやらメキシコ麻薬戦争がからむようで……楽しみですな。
暗殺者の鎮魂 (ハヤカワ文庫NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2013-10-25

 ここ数年、闘う無敵のパパ、という妙なジャンルを開拓したことでお馴染みのLiam Neeson氏。現在63歳。アイルランド出身で身長193cmとデカくてゴツイおっさんだが、わたしが彼を初めて知ったのは、たぶんSam Raimi監督の『DARKMAN』という作品だと思う。わたしはこの映画が大好きで、ある意味ヒーローもの的な映画で大変興奮するB級映画だが、ここでLiam Neeson氏を知って、おお、コイツなかなかいいな、と思っていたら、その数年後にかのオスカー作品賞受賞作『Schindler's List』では主役のOskar Schindlerを堂々と演じ、その後ハリウッドきっての役者となって、数々の役を演じるに至った。『STAR WARS Episode I』でのマスター・クワイ・ガンや、『BATMAN Begins』でのラーズ・アル・グールなど、デカイ体と特徴あるしゃがれ声で、若い主人公を鍛えたり、その前に立ちふさがる役が多いような気がする。まあとにかく、たいていが強くておっかないおっさん役である。確か、Liam Neeson氏が出演した数々の映画の中で、合計何人ぶっ殺したかを数えるKILL COUNT動画がYou Tubeにあったような気がするが、とにかくまあ、いろいろな映画でやたら人を殺しまくっている恐ろしいオヤジだ。
  昨日の夜、例によってWOWOWで録画しておいたのを観た映画『RUN ALL NIGHT』は、16時間という一夜の中で、我らがLiam Neesonパパが相当な数の人間をぶっ殺す、ノンストップアクションムービーであった。まったくもって恐ろしい男である。

 はっきり言うと、上記予告ではどんな映画かさっぱり分からないと思う。ので、ちょっとストーリーをまとめてみよう。主人公ジミーは、元(?)伝説の殺し屋である、のだが、今はすっかり老け、組織の若造からも舐められるような若干アル中気味の嫌われ者のおっさんである。そしてその組織を貫禄たっぷりにまとめているのがショーンというハゲオヤジで、今はまともな商売をやっているが、過去には親友であるジミーと共に殺しも散々やってきた悪党であると。で、ある日、ダニーというショーンのバカ息子が、もう絶対に手を出さないとショーンが決めているドラッグ商売を持ちかけてきて、ショーンは絶対ダメだ、と言っているのに、アルバニア・マフィアと揉めてしまって、あまつさえアルバニア人をぶっ殺してしまう。そして、真面目に堅気で働いていた、ジミーの息子のマイクが、その殺しの現場を目撃してしまうと。で、マイクを殺しにきたダニーを、ジミーはぶっ殺してしまう。そこから先は、予告の通りである。
 親友ショーンの息子をぶっ殺してしまったジミーは、ショーンの放つ殺し屋どもの攻撃を撃退しながら、息子マイクと共に逃亡を続けるわけで、NYCの警官もショーンに買収されている奴が多くて味方ゼロの状況で、NYC中を逃げまくり撃ちまくりの映画である。まあ、結論から言うと、まずまず、な程度で、大興奮とまでは行かなかったのが正直な感想である。物語的にわたしが良くわからなかったのが、「この夜を乗り越えれば何とかなる」という設定で、なんでこの夜だけ何とか逃れれば大丈夫なのか、この点はさっぱり分からなかった。あれは……うーーん……わからん。どうしてなんだろう。こういう、脚本上の謎ポイントが他にもいくつかあって、バカ息子がぶっ殺したアルバニアマフィアは全然この逃走劇に関与してこないし、ライバル腕利き暗殺者も、背景が良くわからなかったりと、物語的には若干の微妙作であった。
 しかし、役者はやけに豪華である。
 もう、主役のLiam Neeson氏は散々書いたからいいよね。本作では、相当くたびれて自堕落な生活を送る元暗殺者ジミーの孤独ぶりを物悲しく演じてくれていました。
 で、その息子で、堅気に生きる元ボクサーのマイクを演じたのが、Joel Kinnaman氏36歳。コイツの顔、絶対どっかで見た、つーかコイツひょっとして……と思って調べたら、まさしくこの役者は、新・ロボこと、2014年にリメイクされた『ROBOCOP』の主役・マーフィーを演じた彼であった。元々スウェーデンで生まれ育ったそうですな。そういや『CHILD 44』のあの嫌~な元部下もこの人だったね。おっと、今年公開の『Suicide Squad』で、DCコミックでは有名なRick Flagを演じるんだ。マジか。へえ~。そいつは楽しみだ。結構なイケメンだと思います。若干、強面系だけど。
 次。主人公の親友で、バカ息子を殺される組織のボス・ショーンを、おっかなく貫禄たっぷりに演じたのは、ハリウッドのセクシーハゲ界の大御所、Ed Harris氏65歳である。もうこの人が出ている映画はどれぐらい観たのだろうか、と思うほどのベテランで、わたし的に好きなのは、やはり『The RIGHT STUFF』のジョン・グレン役と、『THE ROCK』での国に裏切られたエリート軍人役だろうか。とにかくいろいろな作品に出ていて、ある意味、彼が出てくるとなんとなく、ああ、この映画は大丈夫だ、と安心するような、安定感ある名優と言っていいのではなかろうか。まだオスカーは獲ってないんですな。ノミネートが数回あるだけか。いつか、オスカーを手にしてもらいたいものですね。
 そして、長年主人公ジミーを逮捕しようとしている、唯一まともな警官を演じたのが、Vincent D'Onofrio氏56歳である。彼と言えば、もう、名作『FULL METAL JACKET』前半の主人公と言っても過言ではない、かの「ほほえみデブ」ことゴーパー・パイル2等兵ですね。もう28年前の映画か……わたしは地元映画館で観たのだが、あの映画の凄さは今でもはっきり覚えている。今でも、年に1回ぐらいは観たくなるんだよな……。いずれにせよ、「ほほえみデブ」ことVincent氏はその後かなり多くの映画に出演していて、以前このBlogでも取り上げた『The JUDGE』でも味わい深い演技を見えてくれており、いつの間にか渋い演技派としてお馴染みになっている。
 最後、この映画には、出演時間3分ほどしかないジミーの兄貴というチョイ役で、Nick Nolte氏が出てきて驚いた。しかも調べたら、もう75歳なんだと言うことを知って2度びっくりである。作中でも相当老けていて驚いたが、そうか、そんな歳なんだ……と感慨深い。この人と言えば、だれもが『48HRS』を思い出すだろうと思う。うおお、もう33年前の映画か。これは中学生の頃に見たなあ。そしてテレビ放送でも何度も観たよ。若きEddie Murphyの映画デビュー作として、わたしは日本語吹き替えのイメージのほうが強いかも。最高だったなあ、あの作品は。まあ、とにかく、Nick Nolte氏は比較的コンスタントに毎年何らかの映画に出ていて、わたしもちらほらスクリーンでお見かけしているが、とにかく想像以上に老けている姿が印象的であった。しかし、たった3分に起用するにはもったいないような気がしてならない……。
 そうだ、あと監督ですな。正直全然知らない人でJaume Collet-Serraというスペイン人らしい。ああ、なるほど、Liamパパの『Unkown』と『Non-Stop(邦題はフライト・ゲーム)』を撮った監督なんですって。あれか……両方とも相当微妙作だったなあ。しかし、本作では、妙な、トリッキーなカメラアクションを多用していて、ミュージックビデオっぽいと感じる部分がある。どうなんだろう、センスがあると褒めるべきか……ううむ……これまた微妙だなあ……どうなんだろう……まあ、いずれにしてもLiamパパとは仲がいいんでしょうな。てことは、それなりに腕を見込まれてるんでしょうな。ちょっと、今後名前を覚えておくことにしたい。

 というわけで、結論。
 闘うパパでお馴染みのLiam Neeson主演作『RUN ALL NIGHT』は、わたし的にはどうにも微妙作であった。さきほどUS格付けサイトRotten Tomatoesをチェックしたら、これまた微妙な判定で、大傑作ではないけどクソでもない、ということのようだ。そして興行も、まったく売れなかったみたいです。なので、万人にはおススメできないが、役者は豪華であるし、Liam Neeson作品に無条件で反応してしまうわたしのようなオタク野郎や、元祖セクシーハゲの大御所Ed Harris氏を観たい方にはおススメです。以上。

↓ おっと!? 何故かいまさら、まさかのBlu-ray発売中だ。一体何を考えてこれをまた売ろうと思ったのだろう。そそして売れると思ったのだろうか……まったく意図不明だ。ま、わたしは非常に嬉しいですが。
ダークマン [Blu-ray]
リーアム・ニーソン
KADOKAWA / 角川書店
2016-06-24

 昨日の夜、本を読んでいたところ、急にHDDレコーダーが動き出してビクッとしたわたしだが、なんだなんだ、何を録ろうってんだいお前さんは? と電源を入れて確認したところ、『MAD MAX:Fury Road』が放送されたようで、おお、そうか、じゃ録画してるけど放送でもう一度観ようかな、と思ったものの、イマイチ『MAX』を観るテンションではなかったので、電源を落とそうとしたところ、そういやHDDの空き容量がそろそろまたヤバイかも……と思い、録画一覧を見てみた。
 すると、そこに、前日録画されたばかりの『リピーテッド』なる映画があることに気が付いた。はて……? なんじゃこりゃ? というわけで、時間も95分と短いので、とりあえず見てみるか、と再生を始めたわけである。結果、思わぬ豪華キャストに感心しつつ、内容はあまり感心できない微妙作であることが判明したのである。

 物語はまあ上記予告の通りである。冒頭、一人の女性が目を覚ます。全裸。隣には男が。しかし、どうやら女性は、ここがどこだかわからないならしい。しかも、洗面所の鏡に映る自分の顔が妙に老けているような気もする。部屋に戻ると男も起きていた。そして告げる。「君の名前はクリスティーン。40歳。そして私は君の夫のベン。君は事故に遭い、朝、目が覚めると、昨日までの記憶を失ってしまうんだ」。そして結婚生活や過去の写真を見せられ、良くわからないけど大ショックなクリスティーン。「君は毎朝同じ質問をし、私も同じ答えを返しているんだ」とのこと。そしてベンは会社に行き、一人家に取り残されるクリスティーン。すると電話がかかって来る。「おはよう。私は君の主治医のナッシュ。覚えていないだろうけどね。まずはクローゼットに隠してある靴箱を探してくれ。その中にデジカメがある。撮影されている動画を見てくれ。落ち着いたころ、家に行くよ」。探してみると、そこには昨日の自分が事情を話している動画が記録されていて……みたいなお話である。まあ、こういう話だと、誰もが思い浮かべるのはChristopher Nolan監督の出世作『Memento』だと思うが、あそこまでスタイリッシュというかトリッキーではないかな。
 カギとなるのは、次々と出てくる出来事が、一体本当なのかどうか、主人公クリスティーンにはさっぱりわからないことだ。かつての友人だった女性の登場、そしてどうやら自分には子供がいたはずだという事、そして毎日を一緒に過ごしているらしいベンが、本当にベン本人なのかという謎。さらに、自分は襲われて重傷を負った影響で記憶障害がおきてしまったという事実と、一体全体、犯人は誰なのかという謎。
 この作品は、原題を『Before I Go to Sleep』というらしく、小説原作があるらしい。そして思うに、映画だとモロに映像として描かれてしまっているので、想像の余地があまりないのだが、きっとこの作品は、小説で読んだ方が面白いのではなかろうかという気がした。お、今、知ったのだが、原作小説では、デジカメの動画を毎日残すのではなくて、手書きの日記という設定みたいですな。それはそれでアリかも。でも、そうするとちょっと『GONE GIRL』っぽくなってしまうような気もするね。動画の方が、インチキできない性が高くて、説得力は高いかも。
 物語は、かなりサクサクと進み、ラストでどんでん返しもあって劇的ではあるけれど、正直想像の範囲内の物語で、わたしとしてはそれほど面白いとは思えなかった。おそらく、一番の問題点は、クリスティーンが事故に遭ったのがいつで、どのぐらいの期間、ベンが毎朝同じことを言っているのかが良くわからない点であろうと思う。10年前って言っていたような気がするけど、それはないよな? 良くわからなかったっす。
 最終的には、一応GOOD ENDとなるので、まあ、良かった良かったなのだが、正直、記憶を失う前のクリスティーンにもかなり問題があって、わたしとしてはどうも釈然としなかった。以上のようなことから、わたしは本作を微妙作と評価したい。
 ただ、役者陣は妙に豪華である。まず、主人公のクリスティーンを演じたのが、オスカー女優Nocloe Kidmanさん。まあ、大変お美しい方だが、本作では非常に疲れた表情の40代を演じていて、妙に生活感というか人生にくたびれた中年女性を演じており、その点は大変良かったと思う。しかし、だいぶ、皺が増えましたなあ……ま、しょうがないよね。人間だもの。それでもやっぱり、Nicoleさんはスーパー美人ですよ。
 で、超あやしい旦那、ベンを演じたのが、これまたオスカー男優のColin Firth氏。なんか最近この人の映画をよく見ますな。しかし今回はスーパーDV野郎のクソ野郎でした。普段いい人っぽいのに、急に狂気を宿した目でDV野郎に変身すると、ホントにおっかないすね。正直、この映画のこの役に彼を使うのは相当な無駄遣いのような気がしてならないが、彼が演じていることでこの映画の質が向上しているのは間違いなかろうと思う。
 そして、これまた若干あやしさを漂わせる医者のナッシュを演じたのが、セクシーハゲでお馴染みのMark Strong氏である。絶対悪い奴じゃね? と思っていたら、今回この人はいい人でした。疑ってごめんなさい。ホントどういうわけか、わたしはこの人の出ている映画をことごとく見ているんだよな……別に彼目当てでなく、全然意識してないのに、あれ、まーたこのハゲオヤジ出てるな、と偶然出会うのだが、その出会い率がやけに高い不思議なおっさんであります。ただ、最近はいい人率の方が高いような気がする。悪党を演じるのが少なくなってきてますね、この人。ぜひ一度、Mark Strong氏 VS Jason Statham兄貴のセクシーハゲ対決アクションが見てみたいものですね。完璧キャラかぶってるからダメかなあ……兄弟役でもいいんですけど……。

 というわけで、結論。
 昨日の夜、ふとしたきっかけで観た『Before I Go to Sleep』(邦題:リピーテッド)は、役者が豪華だけれど若干微妙な作品でありました。原作小説が大変気になるけれど、まあ、今すぐ読みたいという気も起きないので、とりあえず保留です。なお、先ほど確認してみたところ、格付けサイトRottenTomatoesでは、結構な低評価でありました。以上。

↓原作小説。世界的ベストセラーだったらしいですな。若干、『GONE GIRL』に似てます。
わたしが眠りにつく前に (ヴィレッジブックス)
SJ・ワトソン
ヴィレッジブックス
2012-07-20
 

 先日読み終わった「ジャック・ライアンシリーズ」の最新作『米朝開戦』は、既に巨匠Tom Clancy氏が亡くなった後に発売されたもので、その作品はClancy氏が亡くなる数作前から、共著者としてクレジットされていたMark Greaney氏の初・単独著作として刊行されたわけである。そして内容としては、まったく心配のない安定の面白さであったことは、既にこのBLOGでも紹介したのだが、ところで一体、Mark Greaney氏とは何者か? という事が気になったので調べてみたところ、既にいくつか著作があって、おまけにとっくにそれらの作品は、わたしの好きな出版社上位クラスに位置する早川書房から、日本語訳も発売されている事実を知った。
 ならば読まねばなるまい。
 というわけで、調べたらちゃんと電子書籍でも発売されていたので、全く躊躇することなく1冊買ってみた。どうも、シリーズ化されているようで、まずは1巻を読まないと話になるまい。というわけで、わたしが買って読んだ本は、『THE GRAY MAN』(邦訳:「暗殺者グレイマン」)である。
暗殺者グレイマン
マーク グリーニー
早川書房
2014-06-10

 どうやらこの作品は、US本国では2008年に上梓されたらしく(※最初にClancy氏との共著となった『ライアンの代償』が2011年発行なので、それより前ということになる)、日本語版が早川書房から出版されたのは2012年であり、ま、要するに結構前である。わたしもそれなりに本を読んでいる男のつもりだが、まあ、ホントに知らない作品もいっぱいあるものである。そりゃ当たり前か。
 というわけで、現代は電子書籍なる便利なものが発明されているので、読みたいと思った時に即買って読み始めることが可能な、ちょっとしたサイバー感あふれる時代だ。なので、わたしもすぐに読み始めた。結論から言うと、非常に派手なドンパチがあって、世界各国凄腕暗殺者バトルロイヤル的なお話で、若干わたしは、これってあり得るか……? ううむ……。と、手放しでは興奮できなかったものの、主人公のキャラクターは極めて良く、これはもうちょっとシリーズを読み続けてもいいな、と思った次第である。
 お話は、「グレイマン」と呼ばれる主人公が、イラクでアルカイダの戦闘員を片付けるところから始まる。時代的に2008年刊行だから、まだISはいないし、あのアルカイダ指導者も存命な時代である。しかし、その狙撃は、自身の請け負った依頼とは違うもので、撃墜された米軍ヘリの乗員を助けるため、の行動であり、この冒頭で、「グレイマン」なる主人公が、プロの凄腕暗殺者であるにもかかわらず、「許せない悪党を放っておけない」性格であることが明示される。主人公は、その正体を悟られない、誰でもない人間として行動できるからこそ「グレイマン」と呼ばれているにもかかわらず、仕事に関係のないことはしないで立ち去るべきだと自覚しているのに、どうやらそういった、ある種の良心を、そしてその良心に基づく正義を、自らに持つ男であるらしい。
 わたしはこの冒頭から、わたしの脳裏には主人公のビジュアルイメージとして、セクシーハゲでお馴染みのJason Statham兄貴、または、これまた同じセクシーハゲのMark Strong氏あたりを想像した。まあ、きっと、常に眉間にしわを寄せた、強面のハゲでしょうな、と根拠なく思った次第である。つか、この作品はもうとっくに、Statham兄貴の主演で映画になってんじゃね? と思えるほど映画っぽい展開なので、調べてみたところ、どうやらまだ映画にはなっていないようだ。同名の映画は存在するけれど、全く関係ない別モノっすね。おっと!! Greaney氏自身のWebサイトによると、この『THE GRAY MAN』は、コロンビアピクチャーズで映画化が進行してるっぽいですな。しかも監督・脚本は、『CAPTAIN AMERCA:CIVIL WAR』が公開間近のAnthony & Joe Russoの兄弟じゃないか!! これ、マジかな!? やっべえ。超・楽しみですな。
 さてと。物語をざっと紹介すると、主人公GRAY-MANことコート・ジェントリーは10代のうちからSWAT教官だった父の影響で銃器の取扱法や格闘術を身に付け、CIAの工作員として活躍するも、何かが起こったらしく、CIAからBurn Notice(解雇通告)を受け、あまつさえShoot on Sight(目撃次第射殺)の指定まで喰らってしまったらしい。この辺は、かのJASON BOURNEっぽい設定だけれど、一体何があったのかは今回の1巻目では一切説明がないので、シリーズを読み続ければいずれそれが分かるのかもしれないが、とにかく現状では不明である。で、その後、イギリスの民間セキュリティ会社に雇われ、以来そこで汚れ仕事を専門にやっている男という設定である。そして、前述のように、彼は極めて困難な暗殺を成し遂げたり、また一方で、彼が殺す相手は、誰がどう見ても100%悪党だけ、ということで、その世界でも非常に有名な男になるのだが、誰もその正体は知らず、ただ単に、「GRAY-MAN」という超一流暗殺者がいる、という事だけ世に広まっているという状況である。で、その民間警備会社の社長のおじいちゃんだけを信頼しているわけだが、冒頭のアクションで自分のために用意されていた逃走経路をなくしてしまい、一人でイラクからトルコへ逃げるところから物語は始まる。しかし、トルコで無事に迎えに来た仲間と合流するも、仲間がいきなり襲ってくると。実は、GRAY-MANが行った仕事によって怒り狂ったアフリカの政治家が、GRAY-MANをぶっ殺せと吠えていて、信頼するおじいちゃんも家族を拉致されて、GRAY-MANを売るしかない立場に陥ってしまっていたと。そして、GRAY-MANは信頼するおじいちゃんはもうどうでもいいし、よくもオレのこと売りやがったなと怒り心頭なのだが、そのおじいちゃんの孫娘も拉致されていると聞いて、数年前に仲の良くなった思い出のある、あの娘を死なせるわけにはいかない!! と決意して、助けに行く、とまあそんなお話である。そんな性格の主人公なので、読者の共感は得られやすいと思う。
 しかし、おそらく本作で一番難しいのは、そのバランスだろう。娘(確か8歳かそこらのちびっ子)が拉致されているのがフランスのノルマンディーで、GRAY-MANがトルコからフランスへ至る道筋には、GRAY-MANの首に掛けられた賞金目当ての各国特殊部隊の精鋭が待ち受けており――というわけで、そこら中で大バトルが勃発すると。そして毎回満身創痍になり、かつまた、偽造パスポートや武器の調達など、明確にそこへ行く理由があるにもかかわらず、ほとんど無駄足になってしまう過程は非常に新鮮。主人公も、チクショー、無駄足だった!! と反省するのだが、ちゃんと理由があってのことなので、読者的にはGRAY-MANの行動はきちんと理解できるため、ストーリー的には無駄には思えず、相当なピンチの連続も何とか乗り越えていく姿は、非常に微妙なバランス調整がなされている。強すぎたりスーパーマン過ぎたり、あるいは一方でバカすぎると、読んでて冷めてしまうし、敵も弱すぎてはダメだし、極めてこのバランス調整は難しいと思うが、主人公GRAY-MANが妙に義理堅い、良心を備えているという点が核となっているので、まあなんとか、わたしとしては最後まで楽しめた。
 しかし、やはり世界各国の殺し屋たちが、こんな行動をするとはちょっと思えないので、その点は、なんというか、ハリウッド映画的な嘘っぽさが漂っていることは否めないだろう。また、GRAY-MANがちょっと強すぎるような気がするが、ハリウッドアクション映画が大好物なわたしには、かろうじて許せる範囲内ではあっても、この小説を読んで、誰もが面白いと思うかどうかはちょっとばかり自信はない。この辺の作風は、若干、Tom Clancy氏とは違うような気はする。恐らく、Tom Clancy作品よりも、一番の悪党=敵の描写、というか敵のモチベーションがあくまで金、なので、動機が弱いのかな、という気がする。GRAY-MANの戦いは別に世界を救うためではないし、敵の邪悪さも、所詮は金目当てなので、レベルが低いのがちょっと違うという事かもしれない。
 どうでもいいことだが、GRAY-MANを追う各国特殊部隊の中で、一番強いキャラとして設定されているのが韓国の暗殺者だというのも新鮮だった。そういう暗部は、当然どこの国にもあると想像するけれど、果たして日本にも存在してるのだろうか? 陸自レンジャーかな? どうだろう? 元陸自レンジャーの古い友人がいるけれど、あいつ、わたしより体力ないからな……。マラソンやチャリンコレースであいつに負けたことないしな、と平和に思うわたしは、そういう恐ろしい世界とは無縁に暮らしていることを喜ぶべきだろう。やっぱり、そういうのは小説の中だけにしておいて、現実世界では真面目に生きましょう。それが一番ですな。
 
 というわけで、結論。
 まあ、いずれにせよ、こういった小説になれ親しんでいるわたしとしては、大絶賛はできないまでも、十分楽しめました、という感じなので、続きはまた、電子書籍のセールの時期に買って読もうかな、というのが結論です。以上。

 ↓ 続きはいずれそのうちに読もう。これが2作目、らしい。
暗殺者の正義
マーク グリーニー
早川書房
2014-06-10
 

 最初に表明しておくが、こう見えてわたしは女性が大好きであります。
 しかし。散々映画や芝居を観たり、漫画や小説を読んだりしているわたしが、気に入ったり、誉めるのは大抵において男であり、その点であらぬ嫌疑を持たれないようにお願いしたいのだが、現状のハリウッドスターの中では、セクシーハゲでおなじみのJason Statham氏はわたしが非常に気に入っている男の一人である。何しろカッコイイ。いや、わたしの審美眼からすると、別にイケメンとはちっとも思わない、つーかむしろ若干ブサメンなのではという気もするが、それでも、この野郎はいつも渋くてイカすのである。
 わたしは、尊敬と愛をこめて、Jason Statham氏を兄貴と呼んでいるが、彼は、常に眉間にしわを寄せ、強面でバッタバッタと悪い奴をぶっ飛ばす役で、たまーに悪役も演じるが、結果的にはいつも同じような役ばかりを選んで演じており、往年のSchwarzenegger御大やStallone隊長のように、何か血迷ってコメディに挑戦するなどといった暴挙は見せず、一貫してStatham兄貴はおっかないおっさんを演じ続けている。今のところは。
 世にセクシーハゲというジャンルを切り拓き、おそらくは、セクシーハゲ世界選手権大会開催の折には、Druce WillisやNicolas Cage、あるいはMark Strongといった、そうそうたるワールドクラスのハゲオヤジどもと熾烈な優勝争いを演じるに違いない逸材であり、髪の心配を常に抱えて不安な思いをしている世の男たちに勇気と希望を与えてくれる星(スター)として輝いていることも間違いない。
 そんなJason Statham兄貴であるが、実にコンスタントに、年に1~3本は確実に主演映画が公開されるのだが、いかんせん、わたしの大好きなB級グルメ作品であるため、公開規模が小さく、やべえ!! 新作来た!! とやおら興奮しても、近所のシネコンでの上映がなく、結果的にWOWOWでの放送待ち、と相成る作品が非常に多いのが残念である。というわけで、先日わたしが観た『HOMEFRONT』という映画も、その予告を観たときは絶対観てえ!! と激しく思ったものの、あっという間に公開終了で見逃してしまっていた作品なのであった。
 
 日本公開が2014年8月で、WOWOWで放送されたのも今年の夏ごろ(?)とずいぶん前なので、超今さらなのだが、先日のHDD大調査によって発掘された一品で、やっべえ、そういや観てねえ!! ということが判明したので、第一優先で観たわけであるが、内容は、ズバリ言うと上記に張り付けた予告で98%ぐらい語られている。
 潜入捜査官として、とある麻薬組織を見事お縄にした兄貴。ただ、最後の捕り物の際に、明確にギャングの親分に裏切り者とバレてしまい、また、親分のバカな息子も、兄貴は助けたかったのにぶっ殺してしまった。まあそれはバカ息子がバカだったから仕方ないのだが、何とも後味の悪い逮捕劇になってしまったと。
 で、物語は(確か)2年後。捜査官を辞め、名前を変え、とある田舎で愛する小学生の娘と平和に暮らす兄貴。しかし閉鎖的な小さい町では、やたらと兄貴は目立つ存在で、娘もクソ不細工なデブガキにいじめを受ける。が、さすが兄貴の娘、きっちり護身術を伝授されており、デブの鼻っ面に見事に正拳をクリーンヒットさせ一発KO。しかし、そこからがマズかった。デブの母親がとんでもないモンスターペアレントで、学校に怒鳴りこみ、そして兄貴にも喧嘩を売って来ることに。が、当然兄貴に勝てるはずもなく、麻薬を密造している自分の兄に、「アイツ、超むかつくんだよ、マジでやっちゃってよ、兄ちゃん」と依頼。その悪党兄は、ぜんぜん気乗りしなかったのだが、ちょっと忍び込んで書類を漁っていたところ、ステイサム兄貴の過去を知ることになってしまい……というお話である。
 まず、この映画の見どころポイント<1>は、冒頭の潜入捜査官時代のステイサム兄貴の髪型だ。な、なんとロン毛wなんですよね。しかも全く似合っていないw。むしろ、若干プレデター的な趣すらある、いわゆる落武者系である。やばしww。わたしとしては、もう本当にこれだけで、この映画は非常に満足である。
 そして、見どころポイント<2>は、何気にいい役者を使っている点である。その、麻薬密造をしている悪党兄を演じているのは、James Francoである。かの『SPIDER-MAN』シリーズでGreen Goblin Jr.としておなじみのイケメンだが、コイツはかなり才能ある野郎で、演技も非常に上質だし、何よりこいつは勉強が大好きらしく、UCLAやニューヨーク大学などを卒業してから、イェール大学の大学院にも通ってるインテリ野郎である。何本か監督したり脚本書いたりもしており、きっと将来もっとすごいことを成し遂げるのではないだろうかとわたしはにらんでいる有望株である。で、コイツの悪い癖(?)とわたしが思うのは、すごいB級作品に突然出ては、これまたひどいブッ飛んだキャラクターをたまーに演じることがあり、今回はドシリアスとはいえ、別にこの役にJames Francoを使う必要ないのでは……と思ってしまうよな、イケメンの無駄遣いである。もうちょっと、役を選んでいいと思うんだこの人は……でもまあ、James Francoの素晴らしいゲス野郎ぶりによって、ステイサム兄貴のカッコ良さがより一層輝いたと思うので、作品にとっては大変良かったと思う。ちなみに、James Francoの彼女的存在として出てくるゲス女を、Winona Ryderが演じており、かつての美少女もずいぶんと……と思わなくもないが、まったくもってこの映画にはもったいないというか、彼女ももう少し仕事を選んでいいと思うんだ……オレ……『Beetlejuice』とか『Edward Scissorhands』のころは大ファンだったんだぜ……。
 最後、見どころポイントというか要チェックポイント<3>ですが、この作品は、Slvester Stallone隊長による脚本であるという事実だ。こちらの動画をご覧いただきたい。

 この動画で語られている通り、Statham兄貴は『EXPENDABLE』シリーズ以降、Stallone隊長に非常に気に入られており、元々自分が主演するつもりで書いた脚本を、Stallone隊長はStatham兄貴に託したわけである。十中八九、こんなやり取りがあったことは間違いなかろう。
 隊長「いやーいい脚本書いちゃったなー」
 兄貴「オッス隊長、なんすかそれ?」
 隊長「おう、Jasonか。まーたオレ、いいの書いちゃったぜ」
 兄貴「オッス、マジすか」
 隊長「おうよ、今回のはよ、すげえ強ええ男が娘守って大暴れよ」
 兄貴「オッス、マジすか」
 隊長「おうよ。でも、今ふと思ったんだけど、娘がいるって、オレが演じるにはちょっと年取りすぎちったかもな」
 兄貴「オッス、マジすか」
 隊長「おうよ。どうすっか、書き直すかな……つかさ、お前、やる?」
 兄貴「オッス、マジすか。ちょっと読ませてもらっていいすか」
 隊長「おうよ、読んでみろや」
 兄貴「オッス、あざっす。つかこれ最高っすね」
 隊長「おうよ、いいだろ?」
 兄貴「オッス、オレ、やらしてもらいます!!」
 隊長「よっしゃ、じゃあ、オレが制作やったるわ」
 みたいな。ちなみに、上の動画でStallone隊長が語っているストーリーと、出来上がった映画は全然別物になっています。その点がわたしは大変笑ってしまいましたとさ。

 というわけで、結論。
 現状のハリウッド映画界において、Jason Stathamという男は非常に稀有な才能を持ったハゲである。やっぱり、80年代アクション映画が大好物なわたしとしては、今後もStatham兄貴を、正当伝承者として応援して行かざるを得まい。 そして、『HOMEFRONT』という映画は近年のStatham兄貴の映画の中でもかなり上位にランクしていい作品だと思います。以上。

↓ Statham兄貴の最高傑作はどれだろうな……ありすぎて難しいけど、やっぱりこれでしょうか……。
トランスポーター [Blu-ray]
ジェイソン・ステイサム
KADOKAWA / 角川書店
2014-06-27

 というわけで、NY滞在のDAY-01に、TIMES SQUARE周辺をうろついていて、うおお!? マジか!! と一番驚いた出来事は、2日前に書いた通り、実はこれを見かけたときである。
 ↓これね。
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 わたしの大好きなStephen Kingの『MISERY』が、なんとあのBruce Willis主演で舞台化されていたのである。いや、実際のところ、そういう情報は得ていたのだけれど、まさかホテルから歩いて3分のところにある劇場でやっているとは思わなかった。なので、どうしよう、これは観るべきですよね? と一晩悩んで、DAY-02 に劇場に行き、チケットは買えるのかを聞いてみたところ、DAY-03の昼の回を希望してみたら、「HAHAHA!! 水曜日の昼の回、一人かい? OK、調べてみるよ……おっと、1枚でいいならVery Good Seatがあるよ!! ラッキーだね、Sir !!」なんてことをまくしたてられ、よっしゃ、じゃそいつをもらおうか!! と思わず日本語で言ってしまってから、英語で言い直して買ってみた。
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 席は、E列というから、5列目かなと思っていたけど、実際は、最前列と2列目がAA、BBという列があって、7列目であった。そしてど真ん中の位置である。これは確かにいい席だ、素晴らしい。と劇場に入って初めて分かった。なお、このBROADHURST THEATREは、キャパシティ的にはたぶん1000人は入らないぐらいの中小規模劇場で、2階席は解放していなかったようだ。ま、日本の感覚だと十分にデカいけれど、横に広くて、列数は少ない印象で、非常に芝居向きの劇場だと思う。外観は↓こんな感じ。
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 ちなみに、この劇場の向かい側、すなわちこの写真を撮っているわたしがいる側を30mほど西へ進むと、今年のアカデミー作品賞受賞作でおなじみの『Birdman』で出てくるSt.JAMES Theatreがある。つまり、Michael Keatonがパンイチで歩くあのシーンは、まさに今わたしが立っているあたりだ。で、開場の15分前ぐらいに劇場前に行ったら、意外と行列ができていて驚いた。が、もちろん全席指定なので慌てる必要はなし。ぼんやり撮影などしていたらすぐに開場になって、入場できた。セットは非常にコンパクト。劇場が横に広いとさっき書いたけれど、ステージ自体はそれほど大きくなくて、極端に言うと半円形のような感じになっているわけです。
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 芝居が始まるまで、↑この、アニー・ウィルクスの家の外観がステージにはセットされている。で、場面ごとに、ぐるーっと舞台が回転して、寝室になったり玄関先になったり、キッチンになったりするわけです。簡素な割にはすごくよく考えて作られていました。Kingの『MISERY』を読んだ、映画を観た、という人なら、↓この写真で結構ピンとくるのでは? ポール監禁部屋ですな。これは終演後、みんな撮影してたのでわたしも撮ってみた。
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 ところで、『MISERY』について、一応、ごく簡単にどんなお話か説明しておくと、主人公ポール・シェルダンは人気作家である。人気シリーズ「ミザリー」の完結編が発売になる間近の彼は、すでに新しい別の作品を書き終わり、その原稿を持って、雪の降りしきる中、山道を車でかっ飛ばしていた。が、途中で案の定大事故を起こし、崖下に転落、雪の中に消えてしまう……そして、そんな彼を救ったのが、ポール・シェルダンの世界一の大ファンを名乗る元看護婦の中年女性だった。名をアニー・ウィルクスという彼女は、自宅でポールを介護するのだが、ポールとしてはさっさと病院なりエージェントに連絡してほしいのに、「いやー雪で電話線が切れてるのよねー」みたいなことしか言わない。なんなんだこの女? と思いながらも、そこらじゅうが骨折しているポールは身動きが取れない。そしてその後、「ミザリー」シリーズ完結編が発売になり、発売日に買いに行ったアニーは、さっそく読んで、完結編では主人公ミザリーが死ぬことを知ると、態度が激変する。「よくもわたしのミザリーを殺したわね!! あたしのために、「ミザリー復活」の新作を書きなさい!!!」とイカレた要求をしだすのであった……という、ひじょーーにおっかないお話です。
 基本的に、登場人物は、ポールと、アニーと、保安官ぐらいしか出てこない。そして密室が舞台となるわけで、良く考えたらこれほど演劇に適した小説はないんじゃね? と思うほど、舞台演劇にとって都合のよい物語で、実際、非常に舞台は楽しめました。
 で、わたしがこの芝居で、ちょっと驚いた点や、なるほど、と思ったことがいくつかあったので、以下まとめておこう。正直、非常によく考えられて作られた芝居だったと思うな。
 1)物語の始まり
 ファーストシーンは、うす暗闇の中で、ベッドに横たわる男と、それをかいがいしくいたわる女性である。つまり、もう事故後のアニーの家で、ポールが意識を取り戻すところから芝居は始まる。これはナイスアイディアですね。本当は、ポールが新作を書き終わるところから始まるんだけど、その辺は一切カット。これはアリですな。なお、上演時間は1時間45分の休憩なし。非常に集中した緊張感あふれる芝居でした。
 2)小道具類
 舞台上で火は使うし、ワインは飲むし、火薬も使うしでちょっと驚いた。少なくともわたしは、演劇の舞台上で火を使うのは初めて観たような気がする。『MISERY』を知ってる人なら、火を使うシーンと言ったらピンとくるのでは? ヒントは「原稿」。そう、あのシーンはホントに燃やしちゃって、Bruce Willisが、アチチッ! という顔でちょっと笑っちゃった。火薬は、銃です。銃を使うシーンは……ヒントは「保安官、うしろうしろー」ですな。あのシーンも、いきなりズドンと来て、メリケン客たちは一斉にびくっとしてました。わたしの隣に座ってたおばちゃんはギャッ!! と悲鳴上げました。
 3)マイクはナシ。生声での芝居
 明らかに、マイクはナシだった、と思う。明確に役者の方向から声は聞こえたし、マイクらしきものも見当たらず。全部で20列だったので、マジで生声だったと思うな。
 4)生Bruce Willis
 やっぱカッコイイね、このハゲオヤジ。わたしにとっては永遠のマクレーン刑事なわけだけど、このハゲは声がいい。渋い、いい声だと思う。で、やっぱり顔の表情がすごい豊かな役者だね。今回の芝居では、基本的に寝てるか車いすなんだけど、非常に素晴らしい演技だったと思う。が、それはやっぱり声と顔の表情からくるもんなんじゃなかろうか。
 5)映画版『MISERY』でおなじみの、誰もが「やめてーー!」と思うあのシーン。
 と言えば、わたしがどのシーンのことを言ってるかわかりますよね? ヒントは「ハンマーを振りかぶって…オラァッ!!」。わかりますよね、あの痛そうなシーンです。あれも、今回の舞台では登場する。いきなり、ボキーンとやったので、思わずわたしも、うわっ!? やった、やりおった!! と声を上げてしまった。もちろん、観客騒然。OH!! だの、MY GOD!! だの大変な騒ぎでした。いつの間にか、本人の生足だと思ってたのが、作り物に変わってたわけで、全然気が付かなかった。さすがハリウッドの国ですな。すごいびっくりしたわ。
 とまあこんな感じかな。
 あと、昨日も書きましたが、とにかくメリケン観客はリアクションが騒がしい。とにかくよく笑う。そこ笑うとこじゃねえべ? というようなところでも笑う。なんなんだもう、変な人たち!! 

 というわけで、結論。
 ブロードウェー舞台版『MISERY』は1時間45分と短い芝居でしたが、わたしは非常に楽しめた。これは観に行って良かったと思う。アニーを演じた女優は、わたしは知らない人だったけど、なかなかいい感じに狂っていて良かったと思います。しかし、ほんとおっかねえ話ですな。もう一度、小説を読みたくなりました。

 ↓ KINGの密室もの(?)でわたし的に『MISERY』並みにやばいと思うのはこちら。SMプレイ中の、手錠で両手をガッチリとベッドにつながれている女子が主人公。パートナーに、ついイラッとして、このボケが死ね! と蹴っ飛ばしたらホントに死んでしまい、ふーせいせいしたわこのクソが!! と一息ついてふと思う。どうやって帰ればいいのわたし……? その状況から、主人公たった一人の悪夢のような脱出作戦が始まる……という恐ろしいお話です。そんな話、良く思いつくよな……マジ天才ですわ。
ジェラルドのゲーム (文春文庫)
スティーヴン キング
文藝春秋
2002-09

 最近、やけにこのおっさんを見かけるような気がする。
 ↓ この人
MarkStrong
 どうでしょう? この人はMark Strongという俳優なんだが、最近では『Kingsman』でも若者たちの教官役で出てたし、Wikiで過去の出演作を見てみたら、2010年から2014年の間に13本の映画に出ているらしいけど、その中でわたしは11本見てることが判明した。ああ、そりゃ目にも付くわな。これは……いわゆるセクシーハゲって言っていいんですかね? まあ、この人はWikiに「ハリウッドの悪役イギリス俳優の代表格」と書かれちゃうぐらいで、いつも悪役か、主役のサポート役かどっちかなんだけど、今日観た映画では、堂々の主役だった。
 今日見たのは、『MINDSCOPE』(日本公開タイトル:『記憶探偵と鍵のかかった少女』)である。これも、先日WOWOWで放送されたのを録画してあったので観た。

 「記憶探偵」という職業が普通にある世界。それは冷戦期からESP能力者を集めていたという背景から、現代では人の記憶を観ることができる能力者がいて、未解決事件や難事件の捜査を行っているという設定。民間会社で、物証や目撃証言よりも証拠能力は低いものとされているが、社会的にそういう職業が認知されているという、ちょっとだけ変わった世界の話。主人公は当然その「記憶探偵」で、とある少女の記憶を見て事件の捜査を依頼されるわけだが、その少女がかなり問題のある女の子で、まあえらい目に遭うという話。
 結論から言うと、まあイマイチかな、というぐらいのものだったのだが、この記憶探偵という設定は面白かった。なにしろ、「人は記憶を改ざんできる」という心理的な問題があるので、どれが本当なのか分からず、映画を観ている我々はまんまとだまされるという筋立てだった。
 ちょっと、わたしの嫌いな叙述ミステリーめいたところがあって、どうなんだろう、普通の人はこれを観て面白いと思うのか、ちょっと自信がない。だが、主役のMark Strongはかなり良かった。セクシーハゲといえばJason Stathamを思い出すが、そういやちょっと似てるかも。このMark Strongは、今後ちょっと応援していきたいと思った。ちなみに、彼を観るなら、わたしとしては、以下の2作をお勧めする。
 ひとつは、『Tinker,Tailor, Soldier,Spy』(邦題:『裏切りのサーカス』)。かなりいいです。もうひとつは、どうだろう、ちょっと古いけど、Ridly Scottの『Body of Lies』(邦題:『ワールド・オブ・ライズ』)かな。この映画では、結構いい人役で泣かせる。DiCaprioのサポート役のヨルダン人を熱演している。ただしこの映画自体は、そんなにめちゃくちゃ面白いというほどでもないので、あくまで、Mark Strong観賞用ということでお勧めしておきます。
 あと、今回の「鍵のかかった少女」を演じたTaissa Farmigaちゃんという女子は非常に可愛かった。どうやら、Sofia Coppola監督の『The Bling Ring』に出てたらしいが、観てないんだよな……。ハーマイオニーことEmma Watsonちゃんが出てるので観たかったのだが、見逃してしまった……。ちなみに、Taissaちゃんのお姉さんはVera Farmigaという女優で、『The Departed』のヒロインだし、George Clooneyと共演した『Up in the Air』(邦題:『マイレージ、マイライフ』)でアカデミー助演女優賞にノミネートされている実力派だ。まあ、わたしとしてはこのお姉さんは『Source Code』(邦題:『ミッション:8ミニッツ』)のグッドウィン大尉としておなじみだ。あのグッドウィン大尉に妹がいたんだ、というのは初めて知った。似てるような……いや似てないな。

 というわけで、結論。
 『MINDSCOPE(記憶探偵と鍵のかかった少女)』は、ミステリーではあるけど、ちょっと製作陣のしてやったり感が感じられて、わたしとしてはイマイチです。ただ、Mark Strongというおっさんと、Taissa Farmigaちゃんという女の子は、今後要注目です。


 ↓ エース編集Mくんが超お勧めする『ミッション:8ミニッツ』。確かに面白いけど、わたしはこれを飛行機の機内でドへたくそな吹き替えVerで観たので、それほどでもないんだよな……。でも、『記憶探偵』よりは面白い。
ミッション:8ミニッツ [Blu-ray]
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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2013-01-23


 今回はもう、結論から言う。『ジョジョリオン』のセリフをパクって表現すると、
 「グロ注意ッ!! グロ注意ッ!! 頭がブッ飛ぶぞォ!
 今日わたしが見た映画、『Kingsman:THE SECRET SERVICE』という映画は、そういう映画であった。

 本作は、アメリカ版予告を見たときから、こいつは観ないとな、と思うほど、わたしは期待していた。なにしろ、監督はあの『Kick Ass』で一躍注目を浴び、その後、X-MENムービー最高傑作とわたしが認定している『X-MEN: The First Class』を撮ったMatthew Vaughn監督である。バリバリのイギリス人である彼が、英国スパイムービーを撮るなら、もう行くしかなかろう、というのがわたしの判断であった。 おそらくは、X-MENの大成功で、FOXに可愛がられて、ご褒美をもらったんだろうな、とわたしは思っていた。
 だが、わたしはすっかり忘れていた。
 コイツがあの『Kick Ass』を撮った男であることを。
 そして、事前調査を怠っていた。
 『Kingsman』は『Kick Ass』と同じく、Mark Millerによるアメコミの実写映画化であったのだ。よく考えたら、同じMark Millerの『Wanted』(※Angellina Jolie や James McAvoy主演の、弾丸の軌道を曲げるあの映画)にもちょっと共通した話だった(※なお、Mark Millerはスコットランド人なので、正確には全然アメコミではない、か)。
 ウカツ! そんなことに気付かずに見に行ってしまったとは!
 なので、これを読んでくれている皆さんにはどうでもいいことだが、わたしは今、非常に自分に対して頭に来ているのである。

 何をわたしが言っているか、わからない人に説明しよう。
 まず、Matthew Vaughnの出世作たる『Kick Ass』だ。この映画は、日本でも公開時話題になったハチャメチャヴァイオレンスムービーである。先に述べた通り、Mark Millerなる男によって創作された、いわゆるグラフィックノベル(=まあ要するに漫画)の映画化である。そのキャッチ―さと、キャストの熱演により、金額的にはたいしたことはないが、スクリーン数が少なかったために、それなりに高いスクリーンアベレージをたたき出した小規模ヒット作である。この映画からは、天下のブサカワ・ガールことChloe Grace Moretzちゃんという、今ハリウッドで精力的にバンバン映画に出ている女の子(当時14歳ぐらい、現在19歳か?)と、もう一人、Avengersになり損ねたクイック・シルバーことAaron Tayler-Johnsonという、二人の若いスターが生まれた。そういう意味で、『Kick Ass』は注目に値する作品ではあるのだが、正直なところ、映画としては――まあ元が漫画なので仕方ないといえば仕方ないが――全く無意味な残虐シーンが多く、でたらめな物語であったため、わたしはまったく評価していなかった。首が飛んだり、腕が切断されたり、とにかく血まみれで、最後は全身バラバラに吹っ飛ばす、という展開は、観ていて決して気持ちのいいものではない。だって、ほとんどその死に様の描写に意味がないんだもの。この映画が大好き、という奴とは、おそらく友達にはなれない可能性が高い。
 そういう、無駄な残虐シーンが現在のゆとり青年・スウィーツ女子たち(※両方とも既に死語)の大好物だという事はもちろん承知しているし、そういうのが見たければ『進撃の巨人』でも読んでてくれ、とわたしとしては言いたいところだが、残念ながら、どうやらそういう傾向は全世界的と見ていいのではないかと思っている。なんという、変な世の中になったものだ。人にやさしく(笑)と言いながら、人の死に様を見て喜ぶ。まあ、人類はそろそろ滅ぶんだろう。

 しかし。そのセンセーショナルな(とはいえ薄っぺらな)映像によって、Matthew Vaughnが注目されたのは事実である。もちろん、ここまでやるのは当然計算ずくであり、確信犯であることは間違いなく、わたしもこの監督は今後要観察だな、と思っていた。そんな彼が、かの『X-MEN: The First Class』の監督に抜擢されたと聞いた時は、期待半分不安半分で、確かにこの男なら、コミックヒーロー作品に合うかも、でもまた血まみれにされたらアウトだぞ……思っていたのだが、わたしの心配は、ほぼ良い方に裏切られ、『X-MEN: The First Class』は非常なる傑作として世に登場した。この映画は、何度でもいうが、現状のX-MEN作品の中で最高傑作と言っていいと思う。やはり、Matthew Vaughnは、コミックの実写映画化が得意なのだ。そして、Zack Snyderとはやや異なった画を撮れる貴重な男として、おそらくは今後もいい作品を撮るであろうと、わたしは非常に期待したのである。

 そして今回の『Kingsman』である。ストーリーについては、もはや語るまい。予告編から想像できる範囲で物語は進むのだが、2つ、わたしがまったく考えてもいなかった展開が待っていた。
 そのうちの一つは、重大なネタバレなのでちょっと書けない。申し訳ないが、知りたい人はわたしに直接聞くか、映画を見に行ってくれ。この部分は、ちょっと頭を冷やして考えてみると、まあ、なくはない展開ではあるけど、十分避けられたルートだと思う。どうにも気持ちよくはない。むしろ、えっ!? という驚き以上の何も残らないので、もうちょっと脚本を練る必要があったとわたしは感じている。
 もう一つの方が、冒頭でわたしが言った、「グロ注意ッ!!」である。まーたこの野郎、やらかしおった。しかも、今回はその規模が、『Kick Ass』より上である。ずいぶんとまあ、派手にやらかしている。ので、血まみれや残虐シーンが苦手な方は、避けた方が賢明かもしれない。ただ、ラスト近くの大虐殺は、完全にコミック調の演出で、もはやギャグとして描かれているので、そんなにビビらなくてもいいかな……という気もするので、まあ、心配性ならやめておけばいいし、怖いもの見たさの好奇心旺盛な方は、劇場へ観に行っていただければと思う。マンガなんだからガタガタいうな、ってことで了解すべきなのかもしれないが、それにしても、ホント無意味というか、ギャグなんだよな……死に様が。どうにもわたしには、お腹いっぱいというか胸焼けするというか、もう結構です。

 ちなみに、この映画の製作費は81M$だそうで、1億ドルはかかっていないようだが、日本映画からすればすごい金の使い方である。そのため、映像のクオリティは非常に高い。数々の秘密道具も、英国スパイっぽくてよろしい。かつての007的なアイテムがそろって登場するし、なにより、きっちり体に合ったスーツがカッコイイ。まったく余談だが、Daniel Craig扮する007も、スーツ姿が恐ろしくカッコイイが、あれはトム・フォードというブランドのスーツで、わたしも一着ほしいものだと常々思っている。なおわたしも、現在保有しているスーツはすべてオーダーメイドで、わたしの体形にフィットしたものを着用しているが、とにかくサイズの合っていない服を着ることほどカッコ悪いものはない。スーツはその筆頭だ。一度オーダースーツを着ると、もはや既製品は着れなくなるものだ。できれば、英国製の車にもこだわりが欲しかったが、この作品ではカーアクションはほぼない。出てくるのは、ロンドンタクシーと、なぜかイギリスで大人気の、われらがスバル・インプレッサぐらいである。
 それに、キャスト陣もまずまずの一級線の役者がそろっている。主役の若者は、全く知らない青年だったので、過去にどんな作品に出ていたのか、先ほど調べてみたが、どうやら今回が初めてのビックバジェット作品のようだ。正直、たいしたことはないので、まあどうでもいい。が、『King's Speech』でオスカー俳優の仲間入りを果たしたColin Firth や、Nolan組の常連Michael Caineといった純イギリス人が脇を固めており、一応の安定感と言うか、安心感はある。なお、年末にとうとう新作が控えているSTARWARSだが、かのLuke SkywalkerでおなじみのMark Hamillが、ちょっとした役で出ている。老けるのは仕方ないというか当たり前なので全然いいんだけど、もうちょっと、しゅっとした体形を維持していただきたかったなあ。かのSir Alec Guinness様が演じたベン・"オビ=ワン"・ケノービのような風貌になってほしかった……。
 そして一方で、ジェダイマスター、メイス・ウィンドゥあるいはニック・フューリーでおなじみのSamuel L Jacksonが悪役として出てくるのだが、正直、この悪役はいったい何をしたいのか最後までさっぱりわからなかった。いや、人類を減らしたいのは分かるし、わたしも大いに賛成だが、何でそう思うのか、どうしてそう思うに至ったのかが、極めて弱くて、まったく意味不明であった。また芝居振りも、なんというか悪ノリっぽい妙なハジケ振りで、なんというかもう……あんた何なのよ!? とわたしは見ながらずっと思っていた。ただ、彼の部下たる両足が鋭い刃になってる女子の、くっきりとした太い眉&前髪パッツンぶりは非常にすばらしかった。彼女は、Sofia Boutellaという人のようだが、どうやら元々はダンサーで、かのマドンナのバックダンサーでもあったらしい。スタートレックの次回作にもクレジットされているようなので、今後が期待である。。
 ついでに言うと、Kingsmanという組織自体も、その位置づけや役割が非常にあいまいと言うかフワッとしていて、最後まで何なんだかよく分からなかった。そういう点で、わたしとしては残虐シーンに加えて物語上の適当さが最後まで腑に落ちず、どうにも物語りに入り込めなかったのでありましたとさ。

 というわけで、結論。
 ズバリ言う。残念ながらイマイチかなぁ……。こういう、意味のない血まみれシーンはもうホントやめて欲しい。ああいうのは、なんなんだろう、笑うところなのかな? ギャグシーンなの?? 度を越えていて、わたしには全然笑えねーし。
 あと、予告編のセンスのなさには絶望を禁じえない。上のほうに置いといた2分05秒Verの予告はまあまともなんだが、そのあとに公開された、変なナレーション入りの1分30秒Verの方は観なくていいと思う。このナレーション、すっげえダサくね? やめなよこういうの。


 ↓ これが原作のグラフィックノベル。小プロもホントに凝りねえなぁ……売れっこないのに。


  

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