さんざん、何度もこのBlogで、わたしは映画オタクを名乗っているし、わたしの周りの人々からも、ああ、アイツは映画に異常に詳しい、もはや気持ち悪いぐらい何でも知ってる奴だな、と認識されているのは事実だが、そんなわたしでも、当然、世の映画を全て観ているわけではなく、意外と有名な映画でも、スルーしている場合が何気に多い。
 というわけで、先日、わたしが見逃していて、いつか観てえなあ、と思っていた映画がWOWOWで放送されたので、おっと、なんで今頃放送されるんだろう? と思いつつ、録画し、昨日の夜、ぼんやり観てみたわけである。
  その映画のタイトルは、『The Machinist』。日本公開タイトルはそのまま『マシニスト』というサスペンス(?)映画である。2004年の作品なので(日本公開は2005年だったらしい)、もう10年以上前の作品であるため、超今更なのだが、わたしはずっと観たいと思っていてその機会がなく、今回初めて観てみた。そして、結構面白くて、ははあ、なるほど、これはよく出来ている、と大変楽しんだわけで、やっぱりわたしが観てない面白い映画はいっぱいあるんだなーと、当たり前のことを改めて認識した次第である。

 ここに貼り付けた動画は、ちょっと出自が不明でひょっとしたら違法動画かもしれないけれど、まあ予告編だし、10年以上前の作品だし、まあいいか、と思ったので貼っておきます。
  この予告を見れば、タイトルからすぐに思い出せなくても、「ああ、Christian Baleが超ガリッガリにダイエットして話題になったアレか!!」と思い出す人も多いだろう。そう、アレです。そしてどうでもいいけど予告の最後に出てくるURLは、さっきブラウザに打ち込んでみたらもう存在していなくて、なんかへんなサラ金サイトにつながるので、やめといたほうがいいですよ。
 あと、この予告には「体重49Kg」とまで出てくるけど、映画本編では、確か119ポンド(=54.0kgと字幕では出てた)までしか痩せていないので、予告詐欺ですな。ちなみに、体重54kgは、現在のわたしと同じなので、結構わたし的には、なんだ、普通じゃんと思ってしまったのだが、先ほど調べてみたところBale氏は身長183cmらしいので、わたしより11cm背が高いため、わたしと同等に考えることは不可能なわけで、確かにもう、ビジュアル的にガリッガリで、どうしちゃったんだこの人、と心配になるレベルのやせ方であった。それと、わたしは、だんだん痩せていく、つまりわたしの愛するStephen King氏の『痩せゆく男』的なお話なのかな? と思っていたけれど、実はちょっとだけ似ている、けど、全然違ってました。

 で。物語を簡単に説明しておくと、タイトルの「マシニスト」とは、カタカナで読むとなんのこっちゃ? とすぐに意味が理解できないかもしれないが、英語で「The Machinist」と見れば分かる通り、「機械工(=マシーンを扱う人)」のことである。主人公は、町工場に勤める機械工で、冒頭からもうガリガリ君である。どうやら不眠症らしく、毎夜通う空港のカフェの仲のいいウェイトレス(いや、仲のいい娼婦に語るんだったかな?)に語るところによると、もう1年、眠っていないらしい。そんな不眠症の機械工だが、きちんと家賃は払っているし、やたらとメモを取る几帳面な男で、仕事もちゃんと真面目にこなしている。が、ある日、休憩で自分の車でタバコを吸っていると、見慣れない男に声をかけられる。なんでも、ずっと前から同じ工場で働いてるらしいのだが、まったく見覚えはない。そしてこの男と出会ってから、主人公の回りには不可解なことが起こり始め、主人公の精神はどんどん削られていき――てなお話で、ポイントは、いったい主人公は何故眠れないのか、謎の男は何者なのか、そして、主人公の身の回りに起こる出来事は果たして現実なのか? ということになる。
 わたしは、これってまさか、夢オチで終わるんじゃねえだろうな……!? と、中盤からどんどん心配になってきたが、最終的には意外と現実的な、ああ、そういうことだったんですね、というはっきりした結末が待っていたので、わたしとしては非常にすっきりした。あれっ!? これもネタバレかな? まあいいや。
 ある意味、『Memento』チックな展開だけれど、普通の男の普通の毎日が舞台なので、妙に生活感漂っていて、そこがやけリアルなので、そこに加わる不思議な現象がとても浮き立って、なんだか観ていて非常に不安感が煽られる物語になっている。ただ、結末知った今、物語を思い出して観ると、じゃあ、あそこのシーンって……と、いろいろ説明しがたい不思議な脚本なので、若干の破綻もなくはないような気もするが、わたしとしては、見終わったときに感じた、非常に面白い映画だったという結論は変えないでおきたい。
 
 というわけで、物語はきっちりと計算されて練りこまれており、脚本は大変クオリティが高いと思う。また、撮影も演出も、想像していたよりもずっとレベルは高く、かなりイイ。また、音楽の使い方も巧妙で、なにかヒントになるようなことや、不可思議現象が起きたときに、必ず流れる曲(というか音?)も、大変使い方が上手だと感じた。なんかですね、ゲームっぽいんだな。なにかアイテムをGetしたときとか、手がかりを得た時にゲームだと、それと分かるような音が流れますよね。あの雰囲気に非常に似ているように感じられた。
 この監督と音楽は誰なんだろうと、さっき調べてみたが、わたしの知らない方で、まず監督だがBrad Anderson氏は、まあ、それなりに作品を発表しているようだがわたしはどうも1本も観たことがない監督らしい。音楽を担当したのは、Roque Banos氏という方で、スペイン人の作曲家で数多くの作品を担当しているようだが、はやりわたしの知らない方であった。どうもホラー系が得意な方っぽいですな。そう、本作は、舞台はLAのようだが、撮影はスペインで行っているらしく、スペインとアメリカの合作らしい。どういう経緯なのかさっぱり分からんけれど、まあそういうことだそうです。
 で、役者に関しては、もう主役のChristian Bale氏は説明不要だろう。なので、別の役者を紹介したいのだが、わたしの知っている役者は主役以外には2人しかいなかった。まず、主人公が癒しを求める中年娼婦を演じたのが、Jennifer Jason Leighさん。撮影当時、えーと、42歳ぐらいかな? この方は若い頃から散々いろいろな映画で観ているけれど、若い頃から脱ぎっぷりが良かったけれど、なんとこの映画でも脱いでます。ちょっと驚いた。最近では、Tarantino監督の『The Hateful Eight』にも出てました。元気に活躍中すね。
 もう一人は、主人公のうっかりミスで旋盤に腕を巻き込まれて、腕をなくしてしまうベテラン機械工を演じたMichael Ironside氏66歳。わたしはこの人を80年代からずっと知ってて、顔に非常に特徴があるので、一発で分かった。この人といえば真っ先に思い出すのがDavid Croneberg監督の名作『Scanners』ですよ。あの、強力なスキャナー、ダリル・レボックを演じたあの人ですね。あー懐かしい。あの映画は、1981年公開で、わたしはたしか千葉まで観に行ったなあ。まだちゃんとパンフレット持ってます。しかしもう36年前か……遠い昔の話ですなあ……。Ironside氏はその後、『TOPGUN』とか『TOTALL RECALL』なんかにも出てたけど、そういや最近はすっかり見かけないすね。元気にやっているといいのだが。

 というわけで、結論。
 とにかくこの映画は、Christian Bale氏の激ヤセ・ダイエットばかりが話題になっていたが、確かにそのビジュアルもショッキングではあるけれど、演出・脚本・撮影・音楽とも、非常にレベルの高い作品であった。US本国での評価はどうだったのだろう、と、さきほどRotten Tomatoesをチェックしてみたところ、まずまずの評価なので、世間的にもこの映画の評価は悪くないようである。上映時間100分ほどと短いので、観ていない方には結構おススメです。インターネッツにあふれる世のレビューはひどいものがあるようだけど、まあ、ズバリ無視していいと思います。わたしは大変面白かったす。以上。

↓ これっすね。今観ると相当古いけれど、36年前に観たとき、わたしは大興奮して、ずいぶん長いこと、この映画をネタにしたギャグをやってました。腕の血管を浮き上がらせて「スキャナーズ!!」とかw バカなガキでしたw
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2013-05-10