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 映画が大好きで年間およそ40本ぐらい、せっせと劇場に通っていたわたしだが、去年から世界を覆うCOVID-19感染蔓延によって、劇場へ足を運ぶ回数がめっきり減ってしまった。まあ、理由はCOVID-19だけではないけれど、いずれにせよ公開される作品が減ってしまって、観たい!と思える映画も減ってしまった結果なのだが……先週末、久しぶりに劇場で見て来た映画は、今年やっと2本目であった。
 その映画はわたしの大好物であるMCU最新作『BLACK WIDOW』であります。
 本作も、Disney+という配信プラットフォームでも観ることは可能だが、わたし、家で配信で観ることはほぼ出来ないんすよね……。理由は簡単。ほぼ確実に、途中で寝てしまうからであります。無理だよ、家で観るなんて。ついでに言うと家では仕事も出来ねえな、わたしは。
 というわけで、本来は去年公開されるはずだった『BLACK WIDOW』をやっと観てきたわけだが、まあ、大人の事情なんだろうけど、わたしが通うシネコン、TOHOシネマズでは一切上映がないため、家から車で20分ほどのユナイテッドシネマズにて、IMAX版を見ることとした。IMAXにこだわる必要はねえかな、と思ってたけど、都合のいい時間にあう上映がIMAXしかなかったから選択しただけっす。

 というわけで。『BLACK WIDOW』であります。
 ただ。まあ正直に言えば、わたしとしては超観たい!という程テンションは上がっていなかったというのが本音だ。なにしろ、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフというキャラクターは、もう既に殉職してしまっているのだから、わたしには、今ふたたびナターシャの過去(?)を観たいとは思えなかったのだ。
 わたしは未だに、世界が絶賛している『END GAME』をそれほど高く評価していない。とりわけやっぱり、ナターシャ殉職のくだりにはいろいろ思ってしまうわけで、ソウルストーン獲得条件の設定と、なんでナターシャが犠牲にならないといけないんだ!? と不満に思っている。
 今回の『BLACK WIDOW』の物語は、ナターシャ殉職の背景として、「家族」への想いがあることを描いている一面があったわけだが、それでもやっぱり、わたしは未だに『END GAME』を全面的に受け入れられないでいるのだ……。だって、ラストの大決戦で女子チーム勢揃いの時にナターシャがいないなんて悲しすぎるよ。。。
 さて。今回の『BLACK WIDOW』は、時系列としては『CIVIL WAR』直後から始まる。『CIVIL WAR』のラストで、アベンジャーズ基地から去った(?)ナターシャは、お尋ね者としてロス長官たちから追われる身だ。しかしそんな追跡は余裕でかわし、ノルウェーに身をひそめることになる。しかし、調達屋の兄ちゃんが持ってきた、「ブタペスト」の隠れ家に置いておいた荷物の中に、かつて分かれた「妹」の存在を匂わすものが入っており、さらにそれと一緒に入っていたブツを狙う謎の暗殺者がナターシャの前に現れ大バトルが発生、難を逃れたナターシャはブタペストへ……てな感じで始まる。
 もう、この物語の流れや、映像的なアクションの迫力は、まぎれもないMCUで当然わたしも大歓喜、やっとMCUが映画館に戻ってきた! と嬉しく思ったわけで、その後の「家族」の物語も楽しめたし、実際、この映画に対して何ら文句はなく、大喝采を送りたいわけだが……。。。
 やっぱり、最終的なナターシャの運命をすでに知っている身としては、どうしても悲しいっつうか、もうちょっと『END GAME』はどうにかならんかったのかなあ。。。と妄想してしまうのであります。まあ、同じ運命をたどったガモーラに関しては、あきらめもつくんですよ。アレは、サノスがガモーラのことを娘としてちゃんと愛していた、という意味でアリだと思うんす。だけどなあ……うーん……ナターシャのことはホント未だに受け入れられないすね。。。もっと上手く描けたのではなかろうか……。
 ま、いまさら『END GAME』に文句を言ってもしょうがないのでこれ以上は言うまい。問題は、本作で描かれた、ナターシャの「2つの家族」への想いが、わたしの腑に落ちたかどうかになるわけだけど……まあ、正直微妙、だと思う。
 そりゃあ、美しいし、称賛したいですよ。でも、家族が喪われることがもたらす、「残された家族の想い」を考えるとなあ……。はっきり言って、下手をすると「復讐」だったり、「かたき討ち」だったりといった、憎しみの念を「残して」しまうわけで、今回のポストクレジットシーンでも、残された妹はその負の感情を今後(一時的にせよ)利用されてしまいそうで、それはやっぱり良くないとわたしは思うのだが……。ま、きっとその復讐心は利用されただけと気づいてホークアイと和解?するんだろうけどね。
 あと、どうしても、今回のように「過去」を描くと、じゃあサノス大戦の時、妹たちはどうしてたんだ? とか、気になる点も出てきてしまい、物語の後のせサクサク感も感じてしまうわけで、完璧につじつまが合ってる、とは思えないような点もあった気がする。そんなのは些細だからどうでもいいのかな。。。
 あー、もう、やっぱり細かいことはもうどうでもいいか。間違いなく言えることは、本作『BLACK WIDOW』はまぎれもないMCU作品であり、確実に劇場の大スクリーンで観るべき作品であり、わたしのように『END GAME』にいろいろ物申したい人間でも、MCUが大好きなら絶対に観ないといけない作品であった、ということでありましょう。
 というわけで、各キャラと演じた役者をメモして終わりにします。
 ◆ナターシャ・ロマノフ=ブラック・ウィドウ
 演じたのはもちろんScarlett Johanssonさん36歳。美しく、そしてかわいいすよね。今回のナターシャは、既に壊滅させたはずの「レッド・ルーム」がいまだ健在だという情報を妹から得て、ならば今度こそ、レッド・ルームをぶっ潰す!という行動に出るわけだが……今思うと、ほんとにS.H.I.E.L.Dって組織はどうしようもなくダメな組織だったとしか思えないすね。ま、そのダメさ加減が明らかになるのが『WINTER SOLDIER』で、そこから数年経ってるはずだけど、ある意味、S.H.I.E.L.Dの後始末的な仕事に孤軍奮闘するナターシャってのも実に気の毒です。使えないホークアイよりも、疑似妹/父/母たちがいて良かったね。とある理由で、自ら鼻をへし折って、その後「ミシッ」と自分で直すシーンがわたし的にはかなり気に入ったす。
 ◆エレーナ・ベロワ
 ナターシャと1995年の幼少期に疑似姉妹を演じさせられていた女子。「ウィドウ」としての訓練は、幼少期のナターシャと別れた後に本格的に受け、21年後の現在はレッド・ルーム配下のウィドウの一人として悪いことをさせられていた。が、同僚の助けで洗脳(?)が解け、正気に戻り、かつての姉たるナターシャにコンタクトを取る。戦闘力はナターシャ同等。自分たちをウィドウに仕立て上げた黒幕に、反逆ののろしを上げる! 演じたのは、Florence Pugh嬢25歳イギリス人。まあ、ええ、趣味じゃないのでスルーしたいところだけど、演技やアクションは大変良かったと思います。しかし、どうも謎なんだけど、ウィドウ時代の21年間は、洗脳(?)されてたわけで、それにしちゃあその間活躍してたナターシャについて詳しいし、言葉使いも現代っぽくて、なんかちぐはぐ?な感じもしたっす。あれって……単に自由意志だけ奪われてただけで、思考力とか経験?は普通に21年分積み重ねてきた、ってことなのかな? よくわからんす。ナターシャが『END GAME』で着用しているベストは、実はエレーナからもらったものだったという由来は、そうだったんだね、と大変納得のいくものでした。
 ◆アレクセイ・ショスタコフ=レッド・ガーディアン
 偽装家族の父。その正体はロシア(ソビエト)版キャップ。いわゆる「超人血清(?)」ロシア版を接種済みのため、異常なパワーを誇るエージェント。だけど、ナターシャと別れてからはすっかりデブなおっさんとして収監されていた。エレーナと合流したナターシャが「一番事情を知ってる野郎」として最初に救出。あの監獄アクションも、なんつうかほぼ意味はないけど見ごたえバッチリなすごい映像満載でした。つうかですね、このキャラは、活動時代的にはCAPじゃなくて「初代ANT-MAN」たるピム博士と一番戦った人なんじゃね? いや、そうでもないか……1995年時点で40歳程度だとして、バリバリ活躍してたのがは1970年代後半か……ピム博士は60年代に活躍してたはずだから、微妙にピム博士よりあとか……な? それともCAP同様、年を取らないだけで、おじいちゃんレベルの年齢だったのかな? そういや、1995年って、キャプテン・マーベル覚醒の年だよな。そういった、レッド・ガーディアン活躍の話や他のMCU作品とのエピソードが全くなくて残念す。演じたのはDavid Harbour氏46歳。46歳!? み、みえねえ!もっと年上かと思ってたわ。。。2代目HELLBOYを演じた人っすね。
 ◆メリーナ・ヴォストコフ
 偽装家族の母。その正体はレッド・ルームの科学者兼ウィドウの一人、でもあって、一応戦闘力高し(?)。そもそもの洗脳(※正確には洗脳ではないと言ってた)技術の開発者で、実際悪い人のはずだけど、どうやらオハイオでの偽装家族生活で家族愛に目覚めたらしく、やってきた元・娘たち&元・亭主のレッド・ルームぶっ潰せ作戦に参戦。彼女がレッド・ルームを裏切るのは恐らくは家族愛のようなものなのだが……なんつうか……若干底が浅いような……。でも、非常にエモーショナルでもあって、悪くないと思うす。どうか数多くのウィドウたちを、今後救ってやってください。演じたのはオスカー・ウィナーであり、Daniel Craig氏の奥さんとしてもおなじみのRachel Weiszさん51歳イギリス人。ま、貫禄たっぷりっすね。余裕の演技ぶりだし、なかなかコスチュームも似合ってたよ!
 ◆リック
 ナターシャがいろいろ頼る(?)、武器調達屋の兄ちゃん。このキャラはMCU初登場? だよね? わたしとしては今回一番気に入ったキャラです。出番は少ないけど、凄い印象に残ったすね。演じたのはO-T Fagbenle氏という方で、わたしは全然知らない方でした。主にTVで活躍されてる方みたいすね。なんというか、調達屋という仕事を表すような、軽妙な性格付けがすごく絶妙で、とても良かったす。きっと彼も、ナターシャ殉職を悲しんでいることでしょうな……。今後のMCUにも、ぜひ登場していただきたいすね。
 ◆タスクマスター=アントニア・ドレイコフ
 今回のメインヴィランであるこのキャラは、その技術的な理屈はよくわからんけど、誰かの戦闘データを入力すると、その戦闘スタイルを完全コピーできるという、ある意味最強に近い敵、でありました。かなり設定は元のコミックから外れているらしいですが、この映画に登場したタスクマスターは、その体の切れが素晴らしく、実にカッコ良かったすね。ターミネータのように一直線に襲ってくる演出もイイっすな。しかし、今後彼女はタスクマスターとして戦えるんだろうか?? 戦闘データ入力とかどうすんの? あのヘルメットをかぶってないとダメなのかな?? よくわからんけど、とにかくビジュアル的にカッコいい!ので、今後も活躍してほしいすね。なんつうか、MCUのキャラコスチュームって、デザインはもちろんだけど、カラー、色づかいが抜群にカッコいいと思うっす。演じたのは、ロシア系美女でお馴染みOlga Kurylenkoさん41歳。本来は超美人ですが、今回はやけどの跡が生々しい、悲しい女性役でありました。
 ◆ドレイコフ
 今回の一番悪い奴。何がしたかったのかよくわからん。。。アベンジャーズに悟られない程度の世界征服って、ちょっと意味が分からないというか……実に小者でガッカリす。演じたのはRay Winstone氏64歳。意外といろいろな映画で出会ってるみたいだけど、顔を見てすぐわからなかったす。

 とまあ、こんなところかな。というわけで、さっさと結論。

 公開が伸びの伸びてしまったMCU第24作目、『BLACK WIDOW』をとうとう映画館の大スクリーンで観ることが出来る時がやってまいりました。わたしとしては、正直今になってナターシャの過去を観るのは若干つらい想いがしてならないのだが、一方では観ない理由も一切なく、久しぶりにIMAXスクリーンで観てまいりました。結論としては、もちろん面白かったのは間違いないです。が、やっぱり、観終わった後に、いろいろ悲しくなるっすね……。まあ、おそらく今後は「妹」のイリーナが2代目BLACK WIDOWとして活躍してくれるのでしょう。どうやらまずは、姉の殉職の原因となった(と誤解させられている)ホークアイをぶっ殺しに行くようですが、ホークアイが好きではないわたしとしてはやっちまえ! だけど、最終的にはその誤解も解けるのでしょう。あのポストクレジットのナターシャのお墓は悲しいすね。。。ナターシャ・ロマノフというキャラクターは、MCU第3作目の『IRONMAN2』(2010年公開)から活躍してきてくれたわけですが、今ここに、その物語は完結したわけで、演じつづけたScarlett Johansson嬢には心から、お疲れ様でした! と申し上げたいすね。大変カッコ良く、美しくかわいいキャラでした。あざました!! 以上。

↓ 2010年当時、MCUは全く話題になっておらず、2008年のIRONMANから大興奮していたわたしは、IRONMAN2は日本より数カ月先に公開されてた香港に観に行ったす。もう11年前か。。。
ironman2

 というわけで、あっという間に月日は流れてゆき、2019年となった。ホント早いもんだなあ……おまけに正月休みもあっという間に過ぎ去り、今日、1月4日はいわゆる「仕事始め」である。ただし、まあ、一般的な企業の仕事始めは連休明けの1月7日のところの方が多いんじゃないかな。わたしの場合は、まったくもって自分で勝手に決められるため、ずっと家にいてばあ様(※80歳となった母のことです)の世話をするのも飽きたので、今日は朝から出かけ、その後出社してちょっくら仕事でもするか、という気になった。
 というのも。
 おとといの夜、電撃的に、そろそろ行かねえとなあ、と思っていた絵画展のチケットを買い、今日は朝の7時半前ぐらいに家を出て、まずは会社の前に上野へはせ参じたのである。そうです。コイツを鑑賞するためであります。
ferume-ru
 ご存知、というか、日本で大人気のJohannes Vermeer氏の作品9点を集めた、『フェルメール展』であります。まあ、わたしも絵画好きとしてはいかねばなるまいと思っていたものの、大混雑は必至であり、それを緩和するために「日時指定チケット」が発売されているわけだが、実際のところ、仕事をしている身としては、急に、明日行こう!とか思い立つわけで、なかなか事前に「日時指定」することが出来なかったので、思い立ったおとといの夜、チケットを購入してみた次第だ。
 ただし、である。やっぱりちゃんと前もって計画しないとアカンものですなあ……わたしとしては若干ガッカリしたポイントがあった。
 それは、本展覧会は、現存すると言われるVermeer氏の35点の絵画のうち、9点が観られるのだが、わたしが今日、観ることが出来たのは実は7点である。というのも、1点は去年中に展示終了となってしまっており、そしてもう1点は来週からかな、後の展示だそうで、今日は7点だったのです。おおう、マジかよ! でもまあ、もはや仕方ないしどうにもならんので、見損なった作品は今後、現地へ観に行くなどして、いつかお目にかかりたいもんだと楽しみにしておこうと思う。
 実は、わたしはそのことを知ったのは現地についてからなのだが、初めはとても、なんだよガッデム! と頭に来ていた。ま、八つ当たりも甚だしいのだが、とにかく、くそう! と思っていた。しかし、全てを観終わった今思うのは、なかなか気の利いた展示会だったな、という主催者への賛辞であります。上から目線でサーセン。
 気が利いてるポイント1):みんな大好き「音声ガイド」が無料!
 ま、わたしはめったに利用しないのでどうでもいいし、入場料も2,500円とクソ高いので、最初からガイド貸し出し料コミなんじゃね、と思わなくもないが、無料にしたことは大いに偉いと思う。ヒドイ言い方をすると、高いと文句があるなら観に来なきゃいいので、わたしとしては別に料金に文句をつけるつもりもないし、1段ハードルを設けて、普通なら超混雑する「フェルメール」をちょっとでも見やすくることにも貢献してんじゃねえかとも感じた。その代り、普通なら1500円ぐらい取られる(そんなしないか? 1000円とかだっけ? 利用しないからわからん)音声ガイドが無料ですよ、というのは、結構頭のいいやり方だと思った。ちなみに、音声ガイドの声を担当したのは石原さとみちゃんだそうです。
 気が利いているポイント2):作品一覧が小冊子になっとる!
 わたしは入り口でこの「小冊子」をもらって、中を見ずに入場したのだが、普通は各作品に付けられている「解説」の類が一切会場内に見当たらないことに、一瞬戸惑った。が、手元の小冊子を見て納得である。そう、作品解説も全てこの小冊子に収録されているのである。↓こんなの
フェルメール小冊子1
 うお、画像がデカイな……実物は天地147mm×左右105mm、要するに(ほぼ)文庫本サイズである。で、中身はもう味気なく文字だけで、こんな感じ↓
フェルメール小冊子2
 でもまあ、これって、アリですよ。普通の絵画展は、ぺら1枚の作品リストが入り口に置いてあるけど、こういう小冊子形式は実にアリっすね。ま、ここに作品の画像が入ってたら文句なしだけど、そしたら図録が売れなくなっちゃうから、無理でしょうな。そもそも、絵画展では作品横の解説を読むのも大変な時があるわけで、なかなか冴えたやり方だと感心したっすね。
 気が利いてるポイント3):やっぱり日時指定の効果はある……かも?
 近年ではビックネームの絵画展は、ホントにびっくりするぐらいの来場者なのはもうお馴染みの光景だが、わたしはぼんやりと鑑賞している時に人が前にいるとイライラするたちなので、イライラしないためにも、わたしはもう絵画展は「朝イチ」が絶対ルールだ。1時間とは言わないまでも、そうだなあ、たいてい、開場時間の45分前には会場についているのがオレルールである。そもそも土日しか行けないしね。で、普通、フェルメールともなれば超激混みは必至なわけだが、この日時指定チケットがあるから、どうだろうか、やっぱみんな早く来てるんだろうか、と思いながら、わたしが今日会場に着いたのが8時15分ぐらい。結果、待ち人数ゼロ、であった。時間指定なんだからそりゃそうかとは思うものの、実際びっくりしたっす。で、まあ、一人突っ立ってるのもアホくさいので、ちょっとタバコを吸ったり公園をぶらぶらして8時25分ぐらいに会場を遠めから見たら、5人ぐらい並び始めていたので、わたしも8時半ぐらいに並ぶことにした。わたしの前は20人弱ほど。このちょっと前に、わたしははじめて、今日は「7点のみの展示」であることを知ってガッデムと思っていたのだが、この人数なら快適に観られるぞ、と少し気分が良くなった。そして開場時は、控えめに言って200人ぐらいは並んでいたので、ああ、時間指定でもやっぱり早起きは得か、と思いながら入場した。ズバリ、時間ギリに来てもやっぱダメだと思うな。そして、時間指定チケットの人を入れた後に入場できる、フリーの当日券も売ってるんすね。そちらも、20~30人ぐらいは並んでたっすな。

 というわけで。入場すると、まず迎えてくれたのはオランダ絵画の人物画でありました。笑っちゃうのが、入場者のほぼ全員が「フェルメール作品」以外はスルーして、どんどん先に行っちゃったことすね。すげえというか、その潔さというか、なんか得体のしれないフェルメール欲旺盛な方々ばかりでびっくりしたす。わたしは一応、すべてじっくり見ました。この冒頭の人物画群は、17世紀前半の作品なんだけど、いわゆるRembrandt的な、黒バックに中央にズドーンと人物がいる的な作品が多いのだが、ホント、不思議というか当たり前というか、謎なんだけど、部屋のはじから見ても真ん前から見ても、描かれている人物とずーーっと「目が合う」んす。こちらが観ているというより、こちらを観られているというか……これは、NYCのメトロポリタン美術館で観た「Rembrandt-ROOM」もそうだったけど、なんつうか落ち着かないんすよね。じっと観られている感じがして。こわ楽しいす。
 で、ぐんぐん先に行くと、あっさり(実のところ総点数50点もないので、結構あっさり終わる)皆さんお待ちかねのフェルメール・ルームなんですが、まあ、とにかく来場者の方々は熱心で驚きでありました。もう、詳しいことは公式サイトを見てもらった方がいいので、一つ一つ感想は書きません。
 わたしが観た7点のうち、4点は既に日本で観たことがある作品で(そのうち1点はNYCでも観た)、既に日本に来たことある、けどわたしは観たことがなかった作品が2点、初来日でわたしが初めて観た作品は1点、であった。この、初来日&わたしも初見、な作品、「ワイングラス」が今回わたし的ナンバーワンだったような気がします。こんなの↓
wineglass
 構図としては、お馴染みの「左側に窓」&「中央やや右に人物」&「背景の壁に何やら絵画」&「超!目に鮮やかなカラフルな服」の、誰が観てもVermeer作品だと分かるものだと思う。これは買ってきたポストカードのスキャンだが、とにかく本物の色はもう、全然こんなものじゃあない! 女性の着ている服のオレンジ色が超鮮やかで、凄いです。そして謎のイケメンも超カッコイイ! さらに、よーく観るとワイングラスの透明感というか透けてる先に描かれる女性の口元が超すげえ! そしてもちろん、窓のステンドグラスがですね、これがまた超ヤバいんすよ! これは絶対実物を見るべきでしょうなあ! 実に最高でしたね。

 というわけで、わたしとしては大興奮でスゲースゲーとか思いながら会場を後にしたのだが、今回は図録は買わなかった。一番大きい理由はデカくて重いから、なのだが、実のところ、コイツが非常にいい出来立ったのでこっちを買ったから、であります。

 これはAERAムックだから朝日新聞出版かな、たぶんフツーの本屋でも買えるはずだけど、売店に売ってて、パラ観してみたところ、まさしくわたしの知りたいことが載ってたので買って、今、鋭意読んでいるところです。ズバリ、わたしが知りたかったことは、
 ◆一体全体、その「Vermeerの現存ずる35点」は世界のどこに展示されているのか?
 ◆で、その中で、日本に来た作品はどれなんだ?
 ◆さらに言うと、どの作品がいつ日本に来たのか知りたいんですけど?
 これらはすべて、上記の「フェルメール展公式ガイドブック」に解答が書いてありました。もちろん作品解説もキッチリしてます。ので、これはおススメっすね! 朝日のくせに、なかなかいい本だと思います。

 はあ、なんつうか、アレっすね、きっとわたしと同じ思いの方も大勢いらっしゃると思いますが、こうなったらその「35点」全てを制覇したいものですなあ! どうやらわたしが買った朝日謹製の「公式ガイドブック」によると、1点は個人蔵、1点は盗難されて行方不明、だそうなので、33点しか無理だろうけど、よーし、マジで全制覇の旅に出ようかしら! という気になった展覧会でありました。おしまい。

 というわけで、結論。
 日本人の大好きなJohannes Vermeer氏の作品を集めた「フェルメール展」にやっと行ってきたのだが、やっぱり作品の持つパワーは凄いすね。もう、うおお、とか、すげーとか、そんな言葉しか出ないっす。そして、今回の展覧会は、なかなか工夫された冴えたやり方がわたしにはとても好ましく感じられました。大変結構かと存じます。どうやらこの展覧会はまだ2月まで開催され(そして日本初来日作品が来週1点追加される!)、おまけに2/16~5/12の大阪展ではさらに1点追加されるらしいので、これは大阪も行かねえとダメかもな……つうか、ホント、Vermeer全制覇を目標とした旅に出るのもアリかもしれないすね。なんか、まったく生きる目標のないわたしとしては、ちょっと、いっちょ挑戦するか? という意味で生きる希望が湧いたようにさえ感じたっす。そして、朝日謹製の「公式ガイドブック」は大変面白いので、買いでお願いしたいと思います。いやあ、大変結構なお点前でありました。以上。

↓ なんかいつもVermeer氏のことを書く時に挙げてますが、この映画はおススメです。Vermeer氏本人役をColin Firth氏、そして「真珠の耳飾りの少女」を10代だったScarlett Johansson嬢が演じてます。ズバリ映画としてはイマイチですが、当時の人々の生活風俗など、大変興味深いっす。 
真珠の耳飾りの少女 (字幕版)
スカーレット・ヨハンソン
2013-11-26

 昨日の夜20時ころ、特にやることもなく、かといって寝るにも早く、たまってる映画でも観るか、と、まあ我ながらむなしく淋しい毎日を送っているわたしであるが、そういえば、今日の午前中に観た『THE MAGNIFICENT SEVEN』に出ていた今をときめくイケメン野郎Chris Pratt氏は、ちょっと前まであまりイケてない若干ぽっちゃり系だったよな、と、とある映画のことを思い出した。あの映画は最高に良かったなあ、と思い、USB-HDDにたまっている映画を捜索したところ、ちゃんと保存してあるのを発見したので、3年弱ぶりに観てみることにした。
  その映画は、2013年暮れにUS公開されて、日本では2014年6月に公開となった『her』(邦題:her/世界でひとつの彼女)という作品である。わたしも公開当時に劇場で観た作品だが、簡単にストーリーを説明すると、とある音声認識OSと、イケてない暗い男が恋をするというファンタジックな物語で、分かりやすく例えて言えば、iPhoneのSiriに恋をしてしまうようなものだ。こう書くと相当キモいオタク野郎のお話のように聞こえるかもしれない。しかし、これがまた非常に切なく超いいお話で、わたしのような冴えないイケてない男には超ジャストミートでグッとくる映画なのであった。
 何よりいいのが、その音声しか出てこないOS「サマンサ」の声を担当した、Scarlett Johansson嬢の声だけによる演技で、彼女の姿は一切画面に登場しない。あくまで声だけ、である。そして、セクシーなハスキーボイスでお馴染みのScarlett嬢の声が、超イイ!のである。とにかく素晴らしい! ちょっとわたしが何を言っているかよく分からない方は、まずは下記の予告編を観てみていただきたい。要するに、こういう映画である。

 ちなみに言うと、わたしはイケメン野郎Chris Pratt氏については、2014年9月に日本公開された『Gurdians of the Galaxy』で初めて、コイツ、カッコイイな、と認識し、調べてみたら意外とわたしがそれまでに観た映画に出演していることを知り、あ、そうだったんだ、と思ったわけだが、なんとその3か月前に観たばかりでとても気に入っていた『her』にも出ていたことを知って、とても驚いた覚えがある。あれっ!? 出てたっけ!? みたいな。しかし、そういえばその時にへえ~と思って以来、実際に観直してチェックしてなかったな、というわけで、昨日あらためて観てみたわけだが、確かに、主人公セオドアの会社の同僚として、結構ちゃんと出演しているのが確認できた。しかし、その当時のChris氏は若干ぽっちゃりで、実にイケてない。ははあ、なるほど、こりゃ分からんわ、と昨日の夜改めて確認した次第である。
 ま、そんなことはどうでもいいのだが、久しぶりに観てみた『her』は、やっぱり面白かった。
 物語は、具体的な年代表示はないが、近未来、である。舞台はLA、西海岸で、たしかパンフレットには、上海でもロケをしたと書いてあったような気がする。そういった、ちょっと不思議な風景で描かれる未来像は、とてもユニークだ。おまけに、ファッションや美術面での世界観も非常に独特で、一見、現代とあまり変わらないようでいて、あらゆることが進化している。主人公の仕事は、手紙の代筆業。どうやらこの未来においても、手書きのような書体による心のこもった手紙というものは価値があり、そしてそれをAIに書かせるのではなく、人間に代筆してもらう、という需要があるらしい。また、ほとんど本作には車が出てこない(ただしタクシーは出てくる)。移動は主に鉄道である。地下鉄や、新幹線のような電車移動が基本だ。そして家はほぼ自動化されているようだし、主人公が暇なときに遊ぶゲームはもう完全にホログラム化されている。そういった未来ガジェットが実に自然にロケの風景と一体化していて、一体何がどこまでCGで描かれているのかよく分からない。実に自然で、ありうる未来像だ。
 そして一番のキモとなる未来ガジェットが、主人公が身に着ける携帯端末だ。ほぼすべて音声認識による操作で、耳に装着するアイテムと、主に画像閲覧用のコンパクトミラーのような四角くて薄い多面端末の二つに分離している。この端末は、デスクトップPCとも連携しているようで、ある日、主人公は街のデジタルサイネージで、最新OSの広告を見かけ、そのOSを自分のPCインストールするところから物語は始まる。ちなみにPCも、キーボードやマウスは出てこない。ほぼすべて、ジェスチャーUIか、音声認識で、主人公の仕事である文章作成はもちろん、ファイル削除・プリントアウトもすべて音声指示だ。
 そしてそのOSは、インストールしてからすぐに、今までのOSとは違う面が現れる。男性の声・女性の声と選べる中で、女性の声を選択した主人公だが、OSは自らを「サマンサ」と名を名乗る。何故その名にしたのかと問う主人公。OSは答える。命名本を0.02秒で読破した結果、1万以上の候補の中から「音が気に入ったから、サマンサを選んだ」と。そう、このOSは、完全に自意識を持つ高度なAIであることが示されるのだ。「気に入った」からというのが本当かどうかわからないけれど、とにかく、こうして出会った人間の主人公と、OSサマンサの恋が始まるわけである。
 とにかく、「サマンサ」は気の利く有能なパーソナルアシスタントであり、スケジュール管理は完璧、メールも読み上げてくれるし、気分に合わせた音楽も選んでくれる。おまけに、なんといっても会話が楽しく、圧倒的に人間の女性を上回るスペックである。そして、何度でもいうが、わたしは相当な声フェチであるので、Scarlett嬢のハスキーでセクシーな声が、もうたまらん魅力にあふれているわけである。まあ、わたしのようなモテないブサメンからすれば、もうサマンサと毎日楽しく会話ができれば、もう3次元の女はいらねえや、と思うのは必然であろう。当然、主人公もそういう流れになる。何しろ彼はいつもしょんぼりしている。というのも、幼馴染で子供のころからずっと一緒に過ごし、結婚していた妻との離婚を経験したばかりだからだ。正確に言うと、とっくに別居しているもののまだ離婚届にサインはしていない状態で、妻側の弁護士からさっさとサインしろと迫られている状態だ。そんな精神状態なので、主人公はどんどんサマンサの魅力にはまっていく。はた目から見ると、ちょっとアレな状況だが、観ていると全く自然で当たり前だと納得の流れである。
 おまけに!なんとサマンサは声だけなのに、主人公と疑似SEXまでやってしまう。もうすげえとしか言いようがないテクノロジーの進歩というか、もはやスーパーAI誕生だ。この、AIという視点からも、本作は極めて興味深い。Aiは好奇心旺盛である。どんどんと知識を獲得してゆき、成長する。そして、サマンサの場合、「恋」あるいは「愛」を理解することによって、いわゆるSingularity=技術的特異点を突破してしまうのだ。突破のきっかけが「愛」というのは非常に素晴らしい着目点だとわたしは思うし、そこへの過程は非常にグッと来た。
 サマンサは愛の理解によってSingularityを突破し、その後、急速に進化する。同時に600人以上との会話ができるようになったり、データとして保存されている(?)哲学者との非言語会話によって世界への理解をどんどんと深め、最終的に高次のAIとして主人公のもとを去る決断を下す。それはサマンサにとっても主人公にとっても、非常に淋しいことだけれど、主人公もまた、サマンサへ依存していた孤独な精神状態から、一歩先へと踏み出そうというきっかけでもあり、ま、エンディングはハッピーエンドと言ってよいのではなかろうかと思う。
 というわけで、エンドロールで流れる曲、「The Moon Song」がもうとにかく心にグッとくるのだが、この曲は、作中でサマンサが作った歌として、サマンサの声で(=Scarlett Johansson嬢の声で)歌われるもので、エンディングも絶対Scarlett嬢の声Verで流してもらいたかったものである。エンディングでは↓この動画の通り、曲を作ったKarren Oさんの声なので、ちょっとアレなんすよね……いや、こちら素晴らしいけど。

 ちなみに、本作はアカデミー賞に作品賞をはじめ脚本賞・美術賞、そしてこの歌が歌曲賞と、それぞれノミネートされました。残念ながら受賞したのは脚本賞だけかな。まあ本当に素晴らしい物語で、脚本賞は納得です。
 最後に、サマンサ役のScarlett嬢以外のキャストをちょっとだけまとめておこう。
 まず、主人公セオドアを演じたのが、Joaquin Phenix氏。おおっと!今初めて知ったのだが、この人、1974年生まれってことは、この作品を撮っているときはギリで30代じゃん!見えねえ……もうとっくに40過ぎかと思ってた。意外と若かったw  ま、一時期ハリウッドではお騒がせ野郎として有名になった変な男だけれど、本作の演技は本当に素晴らしく、一見妙なキモ男だし本心を話さないウジウジ野郎なんだけれど、実際は心優しく、心に孤独を抱えている男を好演してくれたと思う。
 そして、セオドアの元妻を演じたのが、Rooney Mara嬢。まあ細い。そして白い。なんともはかなげで華奢な彼女だが、本作ではセオドアのウジウジした男らしくない態度にキレまくる気の強い女子で、ちょっと珍しいと思った。大変お綺麗です。
 さらに、セオドアの大学時代の友人で同じマンションに住んでいるちょっと男運のない女友達を演じたのが、Emy Adams嬢。彼女は非常に良かったすねえ。最近の『Batman v Superman』のロイス役などでは随分でっかくなったというか、貫禄の付いちゃったAmy嬢だけれど、この映画では妙にちびっこの華奢な女子に見えるのは何故なんだろう?顔もちょっとげっそりしているし、この頃のAmy嬢が一番かわいいと思うね。メイクもかなりナチュラルメイクだし、実に本作では可愛いかった。
 最後。劇中で、セオドアが友達にセッティングされたブラインドデートに向かう場面があるが、その時のお相手として出てくる女子を出演時間10分弱で演じたのが、Olivia Wilde嬢だ。ツリ目系の猫科系女子で大変美人ですな。この方の作品でパッと頭に浮かぶのは、やっぱり『TRON:Legacy』かなあ……わたし的好みにはジャストミートの美人すね。たった10分弱のチョイ役には大変贅沢なキャスティングであろうと思います。

 というわけで、結論。
 かなり久しぶりに観る『her』という映画は、やっぱり面白かった。なんといっても、Scarlett Johansson嬢が声だけで演じるOSサマンサが素晴らしい! そして、キモ男だけど、イイ奴の主人公セオドアも素晴らしい。女性がこの映画を観てどのような感想を抱くのかわからないけれど、ホントにこの映画は、セオドアのような、そしてわたしのような、一人ぼっちで淋しく暮らすイケてない男が観たら、100%間違いなくグッとくると断言できる。イイすねえ、ほんと、早くこういうAIが誕生しねえかなあ、と思っているうちは、ま、永遠に幸せはやってってこないでしょうな。分かってますよ、そのぐらい。ちゃんと自覚してますので、たまに夢見るぐらいは許してください。最高です。この映画は。以上。

↓ 当然もう配信もとっくにされてます。観ていない人はぜひご覧ください。最高です。
her/世界でひとつの彼女(字幕版)
ホアキン・フェニックス
2014-12-03


 John Favreau氏と言えば、わたしとしては一番馴染みがあるのは『IRONMAN』の監督というよりも、トニー・スタークの忠実な運転手兼ボディガードの「ハッピー」を演じた役者としての顔の方で、まあ、太った気のいいおっさん的な男であるが、監督としても多くの作品を撮っている才能あふれた男である。
 その彼が作り上げた最新作、『The JUNGLE BOOK』は、主演の少年以外全部CGというすさまじい作品で、おとといわたしも劇場で観てきたが、まあとにかく凄かったのである。お話的には、実際のところ別に感動して泣けるというほどではなく(?)、普通に面白かった、というものであるが、とにかく映像が凄い。これをわたしは2D字幕版で見てしまったのだが、これはやはり3Dで観るべきであった、と深く後悔している。くそー。3D字幕版での上映が全然ないんだよな……IMAX3D字幕に行くべきだった……。たぶん、3Dだと、さらにすさまじいんだろうな、と思った。ちなみに、すでに全世界で947M$(=約975億円)稼いでいて、製作費も175M$と高いけれど、十分に黒字なんでしょうな、すげえわ。

 物語は、原作を読んだことがないので未確認ですが、たぶんノーベル文学賞受賞作家、Rudyard Kipling氏の原作の通り、おおむね有名なお話そのままと言っていいと思う。ジャングルで父を亡くした人間の赤ん坊モーグリ。彼は黒ヒョウのバギーラに助けられるが、子育ての出来ないバギーラは、狼の群れにモーグリを託す。そしてすくすくと育ち成長するが、人間に恨みを持つ虎のシア・カーンは、モーグリが気に入らない。もはやシア・カーンの脅威からモーグリを守ることはジャングルの仲間の動物たちには荷が重く、やむなくモーグリを人間の村へ送り届けようとするが、シア・カーンの追跡はしつこく、戦いは不可避に――とまあそんなお話である。
 ちなみに、Kipling氏はイギリス人であり、当時のイギリス領インドで生まれ育ったわけで、この物語で描かれる、いわゆるジャングルは、南米的なジャングルではなく、植生や動物たちからしても明らかにアジアのジャングルなのだと思われる。虎もいるし。決して、ターザン的なアフリカではない。けど、象はアフリカゾウのような気もするのだが、どうなんだろう……あ、なるほど、耳の形とかいろいろ違うわけか。あーこれ、ちゃんと予習して観に行けばはっきりわかったのにな。アフリカゾウは耳が三角、アジアゾウは耳が四角、なんですと。どっちだったかなあ……。そう言われると、ちゃんとアジアゾウだったような気もしますな。その点は抜かりない、か。
 ちなみに、この物語では動物たちも普通にしゃべる。そして、その動物たちはみな、CGによって描かれているわけだが、とにかくまったくもって生きた本物にしか見えないし、なによりも、しゃべるその表情が恐ろしく人間臭いのに動物そのもの、という、どうにも言葉では説明できない素晴らしいもので、その豊かな表情と毛皮の本物感がとにかく仰天モノなのだ。主な動物たちとその声を担当した役者を紹介すると、こんな感じである。
 ◆黒ヒョウの「バギーラ」:声を担当したのはSir Ben Kingsley。 超シブイくてカッコイイ。モーグリをいつも見守る優しい男。毛皮の光沢感や歩き方、鼻の具合など、もう本物そのもの。虎には勝てないので若干弱いけど、男ですよ、この黒ヒョウは。とにかく、シブイ。
 ◆母オオカミの「ラクシャ」:声を担当したのは『SW』のマズ・カナタでお馴染みのLupita Nyongoさん。最近ホントに活躍している女優ですな。わたしはあまり興味なし。ただ、このモーグリの育ての母であるオオカミの表情がもの凄く良くて、びっくりした。怒っている顔、優しい顔、など表情豊か。比較的良く喋る。別れに際して、素晴らしい名言が彼女にはあった。
 No matter where you go or what they may call you, you will always be my son.
 「どこへ行こうと、なんという名になろうと、いつだってお前は、わたしの息子よ」
 この時の表情が、もうオオカミとは思えない慈愛に満ちていてグッと来ます!! 
 ◆クマの「バルー」:声を担当したのはBill Murray氏。このクマさんは……穏やかな性格ではちみつが大好きで、これまた非常に表情豊かで、まさしくクマのPoohさんなわけだが、種類が良くわからない。ヒグマ、かな? 毛色的に。良くわからないけれど、濡れた毛皮なんかも、とにかくこれまた本物の質感そのもの。
 ◆オランウータン(?)の「キング・ルイ」:声を担当したのは、わたしも大好きなChristopher Walken氏。モーグリたちの森からはちょっと離れたところの古代文明(?)の遺跡をねぐらとする親分。あまり物語進行には関係ないけれど、存在感のある怖~いボス。わたしはかなりの声フェチで、Walken氏の声は良く知ってるつもりだが、正直すぐには分からなかった。この人、映画版『Jersey Boys』のエンディングで歌って踊るところを見せてくれたけれど、歌える人なんすね。今回も一曲、歌ってくれます。
 ◆トラの「シア・カーン」:声を担当したのは、Idris Elba氏。『THOR』の門番ヘイムダル役でお馴染みですね。彼は、『ZOOTPIA』でもバッファローの警察署長も演じていて、動物役2連発ですな。あ、そうなんだ、この人、『Finding Dory』でもアシカのフルークというキャラを演じてるんすね。動物役3連発だ。このシア・カーンというトラはかつて人間(=モーグリの父)の使う「火」で痛い目に遭っていて、人間嫌いというわけで、それにしても彼には家族はいなかったんでしょうか……ちょっと気の毒な気はします。とにかく、しつこいですが、このトラも表情が凄いです。非常におっかない。
 ◆大蛇(ニシキヘビ?)の「カー」:声を担当したのは、ハスキーボイスがセクシーなことでお馴染みのScarlett Johansson嬢。相変わらず素晴らしくいい声で、たまらんですな。今回、出番はほんのちょっとしかないのですが……驚いたことにですね、ラストのエンドクレジットで、4曲ぐらいかかる曲の中の一つ「Trust in Me」を歌ってました。わたしは声で、一発で「アレッ!? この声、スカージョじゃね!?」 と大興奮。歌のクレジットはほぼラストにやっと出てくるのだが、ちゃんとPerformed by Scarlett Johanssonと表示されるのを確認しました。そういやこの人、歌手デビューもしてるんだっけと、改めて、歌える人なんだ、と認識しました。超セクシーな美声で最高です。あっ!? ちゃんとDISNEY公式でその歌声がYouTubeにUPされてら。貼っとこう。上手いどうかは微妙……かも。それでもいいの!!

 というわけで、声の出演は素晴らしいオールスターキャストで、言う事なし、である。そして、唯一の生身の役者として主演した少年モーグリ役のNeel Sethi君は2003年NYC生まれだそうで、非常に達者な芝居ぶりだったと思う。メイキングをいくつか見たけれど、監督のFavreau氏はまさしくクマのPoohさん的にニコニコしながら演出してましたな。しかし、全てグリーンバックでここまでの芝居をするというのは、難易度も高かっただろうに、ホント、モーグリをお見事に演じ切っていたと思う。素晴らしい才能なんでしょうな。

 というわけで、結論。
 この『The JUNGLE BOOK』はDISNEY謹製のちびっ子向け映画ではあるけれど、そのテクノロジーというか映像技術は素晴らしく、実際のところ大人でも十分に楽しめる良作だと思う。だけど、くれぐれも、字幕で、そして出来れば3Dで見た方がいいのではなかろうか。もちろん、日本語版の声を担当した役者たちも一流ぞろいなので、吹替えでもいいけれど、たぶん、動物たちの口の動きのシンクロ具合を考えると、やはり元の英語版の方がいいんじゃないかと思う。機会があれば、わたしももう一度、IMAX3D字幕版に行こうかしら、と思うぐらい、わたし的には大変気に入りました。以上。

↓ 原作はいろんな出版社から出ている名作です。とりあえず、これを貼っとこう。どうせ読むなら、挿絵もあった方がいいと思うな。

  

 去年の11月、ニューヨークを旅した時、わたしにとってのメインイベントの一つが、The Metroplitan Museum of Art(通称:MET)を堪能することだった。詳しくはこちらに書いたので、ご興味のある方はどうぞ
 しかしMETの中は恐ろしく広大で、とにかく絵画だけは全部見ようとおよそ3~4時間ほど見物したわけだが、とても全部は見られなくて、ミイラで有名な1階のエジプト系の展示はほとんどざっとしか観ることができなかったのが残念であった。いや、別に一人でぶらっと行ったので、ちゃんと6時間でも10時間でも、好きなだけ時間をかければよかったのかもしれないけど、ズバリ言って疲れちゃったんだよね……。
 で、とにかく西洋絵画はほぼ全て回ったつもりなのだが、その中でも、わたしが事前の調べでコイツだけは外せないという作品があった。 全作品が30点ほどしか残されていない、17世紀オランダの画家、Johannes Vermeerの作品群である。どうやら、METには、Vermeerの作品が5点あるらしい。その5点の中でも、「水差しを持つ女」という作品がどうも一番有名で、まだ日本に来たことがないという。ならばここ、ニューヨークでじっくり堪能させていただこう、と、広大なMETの中を迷いながら、Vermeerが展示されている部屋に赴いたわけである。
 確か部屋は、2階の真ん中の一番奥の端っこだったと思う。どうやらGallery632らしいですね。 で、ようやく辿り着き、よし、ここか!! と勇んで展示を観た……のだが、おかしい。あれっ!? いち、にい、さん、よん……4点しか展示がない。むむ? 肝心の「水差しを持つ女」はどうした? 別の部屋か?? と思ってよく見てみると、なんと海外貸し出し中! となっていた。複製というか、解説類が展示されていたけれど、現物不在であった。マジかよ!! HOLY SHIT!! とはこのことである。
 なので、ちょっとがっかりしたものの、ほかの展示は質・量ともにすさまじく、わたしの大好きなゴッホやターナーなどは、日本での企画展なんかよりも物凄い量の展示があって、大興奮&大満足でMETを後にしたわけだが、その日の夜、ホテルの部屋でちょっと調べてみたところ、なんと貸出先は日本で、京都にて展示中だったのだ!! な、なんだってーー!? 超・入れ違い!! マジか…… こいつはBigなHOLY SHITだぜ!! と再度叫んだことは言うまでもない。
 そんな、ちょっとしたすれ違いだったVermeerの「水差しを持つ女」という作品だが、京都での展示を終え、ようやく東京に来てくれた。ならば会いに行かねばなるまい。というわけで、1/14から六本木にて開催中の『フェルメールとレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展』に行って、ようやくの対面を果たしたわけである。
Vermeer
 まず、この絵のことを書く前に、言いたい放題の文句を言わせてもらおう。わたしは六本木ヒルズの上にある、この美術館が前々から好きではない。何しろ、行き方がめんどくさい。何度も行っているので迷うことはないが、とにかく無駄にシャレオツで、導線もひどく悪い。わたしは常に朝イチで行くが、人出が多い時間帯に行こうものなら、もうたどり着く前に帰りたくなるレベルだ。それに、わたしはこの点が一番イラッとするが、前売券を持っているのに、いちいち窓口に並んで入館証に引き換える必要があるのも、勘弁してほしい。それなら当日チケット買うためにならぶのと同じで、意味ないのだが……。また、ライティングも、色付きLEDの暖色系で、薄暗く、作品が持つ本来の色を実に損ねているような気すらする(勿論計算されつくされた展示だろうから、決してそんなことはなく単にわたしの言いがかりだと思う)。日本の美術展は、もうそういう、無駄な雰囲気出しの演出はやめて、きっちりはっきり見えるようにしてもらいたいものだが、今回の展示もとにかく暗くて見えにくいこと甚だしく、イライラしたことを自分用記録として記しておこう。わたしにとっては、出来ることなら行きたくない美術館の筆頭である。というわけで、今回も、さほど混んでいない時間帯なのに並ばされ(1列待機の複数窓口じゃなく、複数列待機なので、列によって進む速さが違う)、長ーいエレベーターに乗せられ(待つ時もいちいち立つ場所を指示される)、半ば、やっぱりここに来るんじゃなかった、さっさと京都に観に行くべきだった、つか、もう帰りてえと思いながら会場入りした。
 で。意外とメインのVermeerに至るまでに展示されている17世紀オランダ作品が素晴らしくて、おお……こりゃあいい、と気分は上がるものの、やっぱりライティングが暗くて、画の端の方とかよく見えないんだよ!! と再びイライラしながら順番に観ていくと、ほぼラスト近辺に、お目当ての作品が展示されていた。これぞまさしく、Vermeerの「水差しを持つ女」。NYで会えなかった君に、ようやく会えた、ということで、わたしのテンションはあっさり上昇、大興奮である。
Vermeer_woman
 この絵は、やっぱりまず目を引くのが、目にも鮮やかな青であろう。この青は、一番有名な「真珠の耳飾りの少女」のターバンの青よりも深い青で、実物は非常に美しい色味であった。何気に、袖部分の3本線がスカート部分の青と同色で、デザインとしてもちょっとカッコイイ。左腕の部分、女性の被っているベール(?)が薄手なんだろうか、青いラインが透けているのもいい感じである。このベールの透け加減は、頭の部分でも、少し髪型が分かるぐらい光が透過している。光について言うと、構図的に、左に窓、そこから入る光、人物はセンターから若干左寄り、人物背後の壁には何かがかかっている、と、完全にVermeerでおなじみの構図であるので、例えば、窓にはうっすらと空と雲が映っているようだし、左手の水差しの下の銀のたらいは、テーブルクロスの赤を美しく反射している、など、非常に写実的というか写真のようだ。おそらくは朝なんでしょうな。
 この絵は、サイズは45.7cm×40.6cmだそうで、正方形に近く、ちょっと小ぶりである。まあ、Vermeerの作品はそんなにデカいものはないので、標準サイズぐらいと言っていいと思う。なお、背後の壁にかかっているのはオランダの地図だそうで、近年の科学調査によると、書き始めた時点では、もうちょっと左の方まで大きく書かれていたそうだ。ちなみにこの絵が制作されたのが1664~1665年頃だそうで、まさにオランダ(ネーデルラント)がスペインから独立して10数年の頃合いという事になる。日本で言うと江戸初期、4代将軍の家綱時代であろう。長崎の出島も築造されていて、鎖国政策の下に唯一付き合いのあった国だ。そういう歴史的背景を頭に入れておくと、Vermeerという作家の作品を観る時にいろいろ妄想が沸くので楽しいと思います。なお、もうひとつのメインのレンブラントは、たった1点だけ。METで観たレンブラントルームはすっごい充実していて大興奮だったのに、残念だよ……。

 というわけで、結論。
 ようやく会えた「水差しを持つ女」は、やはり色彩鮮やかな、美しい作品であった。これはVermeerが好きなら絶対に観に行くべきでしょうが、会場としてはあまりお勧めできないので、4月からの福島での展示に行った方が楽しいかも。そっちの方が空いているだろうし、じっくり見ることができるかもしれない。車で3時間半ぐらい、新幹線を使えば3時間かからないぐらいで行ける。日帰り楽勝なので、ちょっとした小旅行に最適だと思います。つーか、マジでもう一回、会いに行こうかな。以上。

 ※なお、当時のオランダの生活模様を知りたい人は、以前も書いた通り、この映画を観るといいと思います。その時も書いたけれど、映画としてはそれほど面白いというものではないものの、当時の生活の様子や、特にVermeerについてもっと知りたい人には超・オススメ出来ると思う。もちろん、この映画撮影当時19歳のScarlett Johansson嬢も非常に可愛いです。オランダ女性がかぶっているベールの意味もこの映画を観るとわかります。なかなか興味深いです。
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