今日は1日、ファーストデーということで、会社帰りに映画を観て帰るか、という気になった。わたしが今日選んだのは、1年ぐらい前にUS版の予告を観て、おお、こりゃあ面白そうだ、と大変期待していた『A QUIET PLACE』という作品である。どんな映画か、この予告を見てもらった方が早いだろう。

 あーーーこりゃマズイな、相当な予告詐欺だ。わたしが観たのはUS版で、余計なナレーションや、デカデカとした下品な字幕なんかはついてなかったので、もっとスタイリッシュだったのだが……ま、仕方ないか。
 どうやら物語は、何らかの謎の存在がいて、そのために地球は荒廃しているらしい。そしてどうやらその謎の存在は音を感知して襲ってくるらしい。しかもヒロインと思われる女性は妊娠している! これで音を立てないでいられるわけがなく、コイツはヤバいぜ!? とわたしは予告を観て、相当ドキドキしたわけで、日本公開を楽しみにしていたのである。
 で、さっそく観てきたわけだが……結論から言うと、相当ツッコミどころが多く、正直ガッカリというか、なーんだ、これならWOWOW放送を待てばよかったわ、という残念な感想を持つに至った。
 なので、以下、重大なネタバレやネガティブ感想のオンパレードとなる可能性が高いので、まだ観ていない方や、すげえ面白かった! と思った方は、以下は読まず、退場してください。楽しかったと思う気分を台無しにするのは本意ではありませんので。

 さてと。
 もう物語は説明しないが、わたしが思うのは、やっぱり主人公は頭がよく、ピンチになっても対応策をちゃんと考えておいてほしいわけです。そして、きっちり基本的な設定は詰めておいてほしいのです。観ながら、えっ、じゃあ、アレすればいいんじゃね、とか、これってどういうこと? とか、思わせてほしくないのですよ。そういう意味で、設定はかなり穴だらけであったと思うし、残念ながらキャラクターもかなり抜けていて、あまり物語に没頭することができなかったのである。
 まず、そもそも一番の問題点は、その謎の存在に関する設定が、もうツッコミどころ満載な点にある。劇中での説明によると、メキシコだったかな、謎の隕石が落下してきて、そこから謎生物が地球に蔓延し、人類を駆逐?したというものだ。そしてそれから約1年後、が描かれている。
 しかし、ズバリ言えば、現代の地球のテクノロジー及び軍事力をもってすれば、そんなことには100%なり得ないだろう。というのも、その謎生物が意外と弱いし、設定的におかしいからだ。というわけで、劇中で描かれていた謎生物のポイントを列挙しておこう。以下の点は、恐らくは誰だって気になるし、人類ならば遭遇から1カ月もあればその生態?を把握できているはずだと思う。間違いなくサンプル捕獲に成功するだろうし。
 ◆視覚器官をもたない
 ま、そのために音に超敏感だ、という設定である。しかし、敏感とはいえ、上記予告にあるような「音を立てたら即死」では全然ない。だって、普通に極小の足音立てたり、意外と音立てまくってたっすよ? そもそも、理由は不明だが、自然音(川のせせらぎとか風にざわめく木々の音だとか)に関しては、謎生物は全く反応しない。一方で、人間の話し声や、ガラスが割れる音なんかには反応してくるのだが、その音がしてから、むむ、なんだ今の音は? みたいに反応して寄ってくるので、ちっとも即死じゃないし、ごまかして回避することも可能だ。
 そもそも、視覚器官をもたず、聴覚のみで生きる生物がどのくらいいるのか、わたしは全然知識はないが、もしそんな生物がいたら、残念ながら食物連鎖的な頂点には立てないのではなかろうか。ほかの捕食者に余裕で捕まるぞ。いわんや人間をや、である。確実に人類なら対処可能だと思う。わたしはまた、エコーロケーション的な、音響の反射で対象物の位置や形を察知しているのかと思ったが、どうもそうでもなさそう。そんなことでは、音に反応しても、そっちにまっしぐらに行くしかなく、木にぶつかったり、まっすぐ進めないと思うのだが……それに、落とし穴とかも有効だろうし、はっきりいって、いくらでも対応策はありそうだと思う。もし、エコーロケーションや熱源探知的な能力を持っているとするならば、むしろそれを利用した罠も仕掛けられるのではなかろうか。作中では、器用に階段を下りたりしてるけど、どうやって障害物を感知し、よけるのか、という点に関する説明は一切ナシ、であった。アレでいいのかなあ……。
 ◆鎧のような固い外皮に覆われている
 なので、銃などは利かないという設定だったのだろうとは思うが、あのですね、現代テクノロジーと軍事力をなめんなよ! 人類はこんな謎生物に駆逐されるほど弱くないすよ。これは間違いなく断言できる。ラストのケリの付け方も、まるで普通の散弾銃でバーンだもの。散弾銃でやられる生物にUS-ARMYやUS-MARINE CORPS.が負けるわけないと思う。ガッカリしたわ……。わたしだったら……そうだな、音の罠を用意して、ひらけた土地におびき寄せて、10トントラックで100㎞/hぐらい出して、正面から轢き殺すしてぶっ潰すかな。音に寄ってくるんだから、それでイケるんじゃないかしら。
 ◆そもそもどのぐらいの個体数が?
 これは分からない。けど、そこら中にうじゃうじゃ、ではなかったのが意外。人類がやられるとしたら、それこそ人類以上の大多数でやってくる、ということしか考えられないが(=次々とキリがなく駆除が追いつかないなら、人類がやられる可能性はある)、全然そんなことなかった。なので、数がそれほど多くないためか、音を立ててから襲ってくるまでのタイムラグがそれなりに長いので、余裕で対処できるだろうし、罠にもかけられると思う。
 ◆で、謎生物は何のために人間を襲うの?
 正直良くわからないのだが、プレデター的なハンターでもなく、人間を食べるというものでもなさそう。この辺はわたしにはよくわからなかった。しかし、仮に食用だとしたら、人間より先に動物を襲うだろうな……一応、作中では動物はもういないし、1回だけアライグマっぽい動物が襲われるシーンはあったが、捕食している姿は明確に描かれていなかった。なんなの? なんで襲うのか、よくわからん。おまけに、食用として人間をハントしているとしたら、作中の様子では、人間がもうほぼいないんだから、謎生物は餓死するぞ。
 ◆弱点は?
 わたしだったら、音に敏感であることが判明した時点で、スタングレネードを使うだろう。耳が良すぎるなら、音で攻撃してやりゃいいのに。そして一瞬でもスタン状態にさせられれば、いくらでも反撃可能だと思う。一応本作では、高周波? なのかな、可聴音域だったので超音波ではないと思うのだが、とにかく、キーーーンという音で謎生物が悶絶するシーンがあって、まあ、そりゃそうだろうな、と誰でも考え付く弱点を示していたのが、もう驚くというか、笑ってしまった。そこに気が付かないわけがないと思うけどな……。
 というわけで、わたしは観ながら、なんで? どうして? という謎に頭が占められてしまい、おまけにキャラクターたちの、はあ??? という行動に、イライラしっぱなしであったのである。以下、キャラクターと演じた役者を紹介しながら、その行動にツッコミを入れておこうと思う。なお、キャラクターには明確に名前はあったと思うが、全く記憶に残らかなったので、メインの家族のお父さん・お母さん・娘(お姉ちゃん)・息子(弟)としか書きません。
 ◆お父さん:残念ながら一番の愚か者。お父さんの愚かなポイントはもう数多く、その筆頭が、こんな状況で嫁を妊娠させたことに尽きると思う。お父さん、あんたさ、もうちょっと考えてSEXしなよ……本作は、冒頭で87日目に起きた、末っ子の次男を亡くす悲劇が描かれ、すぐに476日後(※87日とか476日はうろ覚えなので、正確には違ってたかも)に時間が飛ぶ描写になっている。何が言いたいかというと、明らかに冒頭の悲劇の後で妊娠したわけで、わたしはもう、何を考えてんだ……出産を無音でできると思ってんのか!? おぎゃー!と泣かない赤ん坊がいるとでも思ってんのかこのおやじは! とあきれるしかなかったすね。ちなみに、本作を観た方しか通じないと思うけれど、わたしが思うお父さんの愚かポイントは、末っ子をちゃんとしつけなかったこと(末っ子が死んだのは父親がちゃんと見てなかったせいだと思う。あんなガキを最後尾に歩かせるのもアウト)、息子に花火を点けさせに派遣したこと(わたしならレッドライト点灯で事態を察し、息子を安全な場所に隠して自分で花火を点けに行くだろうな)、それから水出しっぱなしに気が付かなかったこと(あれはもう気が付かない方が変)、です。地下室は、一応防音ルームという設定だったのだろうか? 子供たちが家の壁に紙を張り付けている描写があったけれど、アレは地下室じゃないよな……ううむ……安心できるシェルターとして、防音ルームは絶対作るだろ……常識的に考えて。そして死にざまも相当残念だったすね。演じたのは、なんと監督脚本も担当し、おまけにお母さんを演じたEmily Blunt嬢の本当の旦那であるJohn Krasinski氏。38歳か、若いんだな……。わたしはこの人の顔見て、あ、コイツ、『13HOURS』の主役のジャックじゃねえか! とすぐ見分けがついた。わたしとしては、「音を立ててはいけない、音を立てたら謎エイリアンが襲ってくる!」というネタは素晴らしいアイディアだと思うけれど、まあ、残念ながら、一発ネタだったようだ。もうチョイ、細かい設定を詰めてからにしてほしかった。キャストも最小限、セットやCGも最小限にして、低予算(1700万ドル≒19億。ハリウッドでは相当低予算)でこのクオリティを作り上げた手腕は称賛したいけれど……脚本がアカンかったと思う。
 ◆お母さん:えーと、お母さんはとりわけ変なところはなかった、と思う。けど……聾唖の娘をほったらかしちゃあ、アカンでしょうな……。わたしは予告を観た時、出産が物語のクライマックスなんだろう、と勝手に想像してたけど、全然違ってました。演じたのは、監督脚本主演のKrasinski氏の本当の奥さんであるEmily Blunt嬢35歳。このお方は美人だけど……いつも思うけど……大変失礼ながら35歳には見えないすなあ……45歳と言われた方がしっくりくるような……。
 ◆娘(お姉ちゃん):お姉ちゃんは、聴覚障害があって補聴器を着用しているので、そもそも音が聞こえないのだが、彼女は勇敢で、物語で一番しっかりして頭もよかったと思う。冒頭で、幼い弟(次男)が襲われたことに責任を感じているため、ずっと表情は険しく、大変な熱演だったと思う。演じたのはMillicent Simmondsちゃんで、なんと彼女は本当に聴覚障害をお持ちだそうで、だからこその熱演だったのだと思うと、賞賛の拍手を送りたいすね。15歳?なのかな。美人に育つのだぞ……!
 ◆息子(弟):この弟は、冒頭で襲われた弟のお兄ちゃんで長男。彼もとりわけ責められる点はなく、お父さんがアレじゃあ、苦労するわな……というけなげに頑張る弟でした。君もおとがめなしです。演じたのはNoah Jupe君。2005年生まれだそうで、君もイケメンに育っておくれ……あ、この彼は『WONDER』にも出てたんすね。観たかったけど見逃したんだよなあ……。。
 とまあ、こんな感じで、要するにわたしはお父さんがアホすぎてイラついてしまったようだ。やっぱり、どう考えても、いろいろとナシ、だと思う……。そしておそらくわたしは、観ながら、オレだったらこんな謎生物にやられはしない! という、ある種の怒りを感じてしまったのだと思う。それが口だけ詐欺なのはもちろん承知しているけれど、でも、やっぱりですね、屈強な軍人たちなら、こんな連中に負ける訳がないと思うな……そういう意味でのリアリティが感じられず、ただ単に、ヤバイ状況だけを設定して、ハラハラさせるだけの映画だったな、とわたしとしては思ったのである。撮影や演出は、実のところかなり上質で、クオリティは高いのは間違いないけれど……まあ、脚本すね、問題アリなのは。

 というわけで、もう書いておきたいことがないので結論。
 大変期待して観に行った『A QUIET PLACE』は、かなり期待を下回る、ガッカリ作品であった。予告はとてもいい出来だったのに、残念ながら一発ネタだったようだ。これはいわゆる「ソリッド・シチュエーション」モノに分類できるように思うが、やっぱりですね、状況の設定が甘すぎですよ。端的に言うと、謎生物の生態について、もっとキッチリ決め込んでおいてほしかった。キャラの行動も、なんで? と思わせないでほしい。数多くの「うっかり」が原因でピンチに陥る物語は、どうしても観ていてイライラしてしまうと思う。ホント、ネタとしては大変面白そうなプロットだったのに、実に残念です。ただ、US本国では1億ドル以上稼いだそうだし、全世界配給では3億ドルを超えている大ヒット作品なので、わたしのように感じてしまったのは少数派なのかもしれないす。ま、わたしもその興収に貢献しちゃったわけですが。結論としては、こりゃあWOWOWで十分だったす。以上。

↓ これは観たかったのだが……見逃してしまった……WOWOW待ちっす……。