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「1作目が思わぬヒットとなって、続編が作られることになった」という経緯はもうよくあることだが、映画オタクとしては、その続編では監督やキャストが変わってしまい、なかなか香ばしい地雷映画となってしまった悲しい事例をこれまで何度も観てきた。
 そんなわたしなので、日本では2年前に公開され、わたしも大興奮したあの映画の続編が作られるというニュースを知った時、わたしはひそかに、うーん、大丈夫かなあ? と要らぬ心配をしたのである。そしてその、続編が公開となったので、地雷か否かを確認するため、さっそく観てきた。
 その「あの映画」とは、メキシカン・カルテルとの麻薬戦争を描いた『SICARIO』という作品である(邦題:「ボーダーライン」)。この映画に関しては、2年前に書いた記事を読んでもらうとして、とにかくわたしが興奮したのは、監督のDenis Villeneuve氏の素晴らしい手腕で、最初から最後まで貫かれる高い緊張感と不安を煽るような音楽の使い方、また撮影の巧みさなど、映画としての完成度は著しく高い傑作であった。Denis監督は、こののちに『ARRIVAL』や『BLADERUNNER 2049』などのウルトラ傑作を生みだしていくことになるのだが、やはり『SICARIO』のクオリティの高さが後の活躍を決定づけたと言ってもいいのではなかろうか。
 しかし、である。わたしが今日観てきた続編『SICARIO : DAY OF THE SOLDATO 』という作品ではDenis監督は去ってしまい(恐らくもう売れっ子なのでスケジュール的に無理だったのだろう)、イタリア人のStefano Sollima氏へ引き継がれたのである。この時点でわたしはかなり心配だったのだが、まあ、脚本は前作同様Taylor Sheridan氏だし、メインキャストの二人も変更なしだし、大丈夫……かな? という気持ちで劇場へ赴いたのだが、結論から言うと、全く大丈夫、今回もとても興奮する作品に仕上がっていたのである。いやあ、やっぱり世界は我々一般人の知らない恐ろしいことが起きてるんですなあ……とにかく緊張感が高い、一級品の映画だったと思います。
 というわけで、まずは予告を貼って、中身を見ていこう。いつも通りネタバレに触れる可能性大なので、まだ観てない方は予告を観たら今すぐ退場して、劇場へ観に行ってきてください。これは大変オススメであります。

 いつもわたしは予告の出来が悪いと容赦なく批判するのだが、上記予告の出来は大変よろしいと思う。日本版予告でありがちな、全く不要なナレーションや下品な文字ワイプもないし、実際、物語は上記予告から想像できる通りで、もはや細かい説明は不要だろう。
 舞台はメキシコとの国境地帯。そしてメインキャストの二人、CIAマンのマットと、SICARIO=暗殺者のアレハンドロも、前作通り、ハリウッド強面オヤジ選手権で優勝を争いそうなJosh Brolin氏とBenicio del Toro氏のままである。ただ、今回は、実のところ麻薬戦争を描く作品ではなく、ちょっとだけ変化球であった。
 冒頭で描かれるのは、US国内へ密入国しようとするメキシコ人の一団を一網打尽にするUS国境警備隊の模様と、(US側の)国境の町に住む少年の様子だ。いかにもフツーな少年でいて、何も考えてなさそうで、なんとなく底なしの虚無を抱えていそうな極めて冷ややかな目が印象的で、きっと物語のカギになるんじゃないかと予感される少年だ。なんでも、今現在、メキシカンカルテルがUS国内に運ぶ最も高価な商品は、もはやコカインではなくて、「人間」なのだそうだ。というわけで少年は、いかにもチンピラな「親戚」の男の手下として、密入国の手引きをする下っ端になり果てる。
 そして一方では、US国内ではスーパーで自爆テロが勃発し、実行犯はイエメン人で、どうやらメキシコから密入国したようだ、という情報がもたらされる。この結果、手引きをしたメキシカンカルテルをUS政府はテロ組織と認定、カルテル同士を戦争させるためにマットが招集され、BLACK OPs(=極秘作戦)が発動されるーーーという展開である。
 というわけで、マットは「戦争」を演出するために、さっそく旧知のアレハンドロを招集する。作戦としては、最大カルテルのボスの娘を誘拐し(=アレハンドロは元コロンビアの判事で、カルテルに妻子を惨殺された過去があるのでカルテル壊滅のためなら何でもやる男)、それをライバル組織の犯行と偽装することで戦争を起こさせるというDirtyなもので、極めてプロの仕事としてとんとん拍子に進むため、こりゃきっと誘拐された娘が物語のキーになるのかな、そして冒頭の少年と出会って……みたいな展開だろうかと思いながらスクリーンを観ていたのだが、このわたしの予感はまるで間違っていて、思わぬ展開が待っていた。
 実は、メキシコ政府は、まったくUS政府からこの作戦を聞かされておらず(?)、作戦を察知したメキシコ政府の意をくんだメキシコ警察の裏切り(?)で、あっさり作戦は頓挫してしまうのだ。ここは、わたしは最初どういうことかよくわからなかったのだが、想像するに、メキシコ政府はカルテルとケンカはしたくないし(ひょっとしたら癒着しているのかも)、カルテル同士の戦争なんて起きてほしくない、ということだと思う。そのため、結果としてマットとアレハンドロは窮地に陥る。マットはすぐさまUS国内に脱出し、アレハンドロは、激しい銃撃戦のさなかに逃げ出した娘を追って一人追跡にーーという展開で、ますます娘の物語上の重要性は増していくのだが、わたしはてっきり、アレハンドロは前作のラストで描かれた通り、全くNO MERCY、超無慈悲な暗殺者なので、娘もラストは殺るんだろう、と思ったのだが……そんなわたしの愚かな想像の斜め上を行くエンディングは、実に見事だったと思うし、極めて優れた脚本であったと思う。わたしとしては、傑作認定したいと思うハイクオリティな映画であったと結論付けたい。
 というわけで、各キャラとキャストについてメモしておこう。
 ◆マット:前作にも登場したCIAのBLACK OPs指揮官。前作では、FBIのゆとり捜査官に、あぁ? お前何言ってんだ? これは戦争だよ、とあっさりつき放つような、恐ろしく迫力のあるおっさんだったが、今回は、意外とハートのある男になってたのが驚いた。前作のエンディングはかなり苦いものだったけれど、一応、本作はすべてスッキリするエンディングだったと思う。演じたのは、前述の通りTHANOS様でお馴染みJosh Brolin氏。ホントにわたしとほぼ同級生なのか疑いたくなる迫力オヤジですな。見事な演じぶりでした。
 ◆アレハンドロ:前述の通り、メキシカンカルテル壊滅なら何でもやる決意を持ったSICARIO=暗殺者。徹底したプロ。ラスト近くでとんでもない目に遭い、な、なんだって――!? とわたしはもう絶句。そしてキッチリと、エンディングではBenicio del Toro氏の迫力オヤジの面目躍如で、「お前の将来の話をしようか」なんて密室で迫られたら、普通の人はその時点で失神・失禁してしまうと思います。冒頭の少年が、タトゥーまみれのチンピラになり果ててイキがってるのをガツンとやる強面オヤジぶりがもう最高でしたね。
 ◆イザベラ:カルテルのボスの娘。推定15~17歳ぐらい? わたしは冒頭から、この娘が気に入らなくて、いずれ恐怖で泣き叫ぶがいい……とか思ってました。なにしろ、血まみれの金でぬくぬくと育ち、血まみれの父親の影響力で偉そうにしてるだけのクソガキだったので、さっさとひどい目にあえ、とか思っていたものの……アレハンドロとのちょっとした心の交流は、まあ、一時の心やすめになったような気もします。演じたのは、Isabela Monerちゃん17歳。結構可愛いです。あ、へえ~? Broad Wayの『EBITA』で芸能界デビューした娘なんですな。この娘さんは将来もっと有名になる予感はあるっすね。大変な熱演だったと思います。↓こちらはIsabelaちゃんのインスタより、W強面オヤジに囲まれるの図、であります。Wオヤジの笑顔が似合わねえw!

 ◆ミゲル:US側の国境のすぐそばに住む少年。わたしとしてはこういう底知れない悪意の塊のようなガキにはさっさと死んでほしかったのだが……物語のカギを握るキャラと言ってもいいような気もする。ここでこうつながるのか、というのはとてもよくできた脚本だったと思う。とにかくその眼に宿る、底なしの虚無のような、どーでもいいよ……みたいな態度が非常にムカつくけれど、演技だったのならすごい演技力だと思う。何気に空気を読んで危険を察知するその能力は、次世代SICARIOの才能アリでしょうな。彼のとある行動で、「ヒャッハー! 戦士(=Soldado)の誕生だぜ!」とチンピラどもが盛り上がるシーンがあって、その意味では本作のタイトル「DAY OF THE SOLDADO」にも通じていて、実は物語の主人公だったともいえるかもしれない。演じたのはElijah Rodriguez君は年齢がいくつか分からないけど……イケメンに育ってほしいすな。大変良い芝居ぶりだったと思います。

 とまあ、主なキャラとキャストは以上です。問題は、ズバリ言うと今回のマットとアレハンドロに関して、前作のような徹底した冷徹さが、若干ハリウッド映画的な正義の味方に変化してしまっている点で、ここは賛否両論のような気もする。その、善と悪の境界線があいまいである点が邦題の「ボーダーライン」であったはずだと思うのだが、今回は分かりやすく「イイ人」になってしまっているように思えた。まあ、わたしとしては、今回のような若干の甘口も、悪くないと思った。血まみれの金でぬくぬくと育った娘に、まだ改悛の余地はあるのかどうか。前作のアレハンドロだったら、躊躇なくぶっ殺していたはずだけど、一応の救済を示したのは、まあ、人間としては、許せるというか、否定はしたくない、ですな。あと、そういえば前作にも登場した、マットの部下の眼鏡の人は今作でも出演してましたね。それと80年代のYAスターの一人、Matthew Modine氏がSDUS(=合衆国国防長官)の役で出演されてました。今59歳か……『FULL METAL JACKET』の主人公ジョーカーも年取ったなあ……。
 しかしまあ、なんつうか観終わって、本当にもう、どうにもできないというか、人間の悪意の連鎖にはとても心痛みますな。これじゃあ、元不動産王のスケベオヤジこと現職US大統領が、国境に壁を作るとか言い出す気持ちも理解できるよね。もちろんそれは、幼稚で浅はかな考えかもしれないし、メキシコ側の主張である、US側で需要があるのが悪いという意見も、分からんでもない。
 でも、間違いなく言えそうなことは、この麻薬戦争に象徴されるUS-MX間の問題は、恐らくもう解決不能なのではなかろうか。壁を作っても乗り越えてくるだろうし、US国内の需要もなくならないだろうし、そして、US側で密入国を手引きする連中も絶滅することはないだろうと思う。
 現代社会に生きる我々には、もはや禁忌、タブーのようなものはなくなってしまっているわけで、みんなで決めたはずのルール=法律も、全くもって万能ではない。どんな刑罰があっても、犯罪がなくならないのは、みつお的に言えば、にんげんだもの、なんだろうけれど、それでいいかと言えば、全く良くない。なんか、真面目に生きることを信条とするわたしとしては、悪には明確に罰が下されることを祈りたいすなあ……真面目に生きることでバカを見る社会が続くようなら、まあ人類は絶滅してもいいんじゃないすかね……。なんて暗~~い思いが晴れなかったす。なので、わたしは悪党がぶっ殺される映画は大好きであります。
 ところで、本作は監督は変わってしまったものの、前作で特徴的だった音楽は健在で、実に緊張感を高めるのに貢献した音楽・音響だったと思う。ただ、わたしは知らなくて、エンドクレジットで初めて知ったのだが、エンドクレジットには、「To Jóhann Jóhannsson」という追悼メッセージが映される。これは、まさしく前作の音楽を担当したJóhann Jóhannsson氏のことで、どうやら本作はJóhannsson氏のオリジナルスコアを使いながら、別の方が音楽を担当されたようだ。Jóhannsson氏は前作の後、Denis監督の『ARRIVAL』でもとても素晴らしい仕事をされた音楽家なのだが、今年亡くなっちゃっていたんだね……。わたしはすごい好きだったのだが、大変残念です。

 というわけで、結論。
 監督が代わってしまってとんでもない地雷映画と化すことはよくあることだが、今日わたしが観に行った映画『SICARIO : DAY OF THE SOLDADO』は、前作にして超傑作の『SICARIO』とは確かに別物、ではあったものの、そのテイストは十分受け継がれていて、大変面白かった、というのが結論であります。多分、とても気を使って、前作を意識しまくっているように思えますね。ともに共通する、あの音楽ですよ、とりわけ特徴的なのは、とにかく最初から最後まで緊張感が維持される演出?は見事だと思うし、脚本的にも若干変化球で、わたしは大変楽しめました。しかしホント、人類は救い難いというか、もうどうにもならんとしか思えないす。マジで、壁作っちゃうのも、対処療法としてはアリなんじゃねえかとか、そんなことすら思っちゃいますな。あーあ、人類の精神は、あんまり進化してないみたいで、しょんぼりすね……どうにもなんねえなあ……もう。以上。

↓ 前作は超傑作です。超おススメです。つうか、観てないと今回の『DAY OF THE SOLDADO』は楽しめないと思います。
ボーダーライン(字幕版)
エミリー・ブラント
2016-08-09

 何度かこのBlogで書いている通り、わたしは20th Centuyr FOX(以下FOXと略)が嫌いだ。まあ、理由はいろいろあるのだが、そんなことはどうでもいいとして、わたしとしては一日も早くDISNEYに買収されてほしいと思っている。理由はただ一つ。わたしの大好きな『X-MEN』に関する映像化の権利がDISNEYへ渡ることを願うからだ。ま、ついでに言うと、『FANTASTIC 4』も一緒にDISNEYに行くことになるので、それもまた喜ばしいとわたしは思っている。
 要するに、現在FOXが権利を握っているMARVEL COMICS作品を、さっさとDISNEYへ集約していただき、真のAVENGERSを描いてほしいというのがわたしの願いなわけだが、去年の12月に、DISNEYによるFOX買収のニュースが報じられた時は、わたしとしてはもう、いいぞ! もっとやれ! と熱くなったものの、その後の進展はあまり聞こえてこず、どうも独禁法違反かも、とか、映画業界からの反対とか、いろいろな横やりが入ったり、さらには、それではウチも! とつい先日COMCASTが買収に名乗りを上げたりと、なんだかNASDAQ上場しているFOXの親会社「21st FOX」の株価が上昇するばかりで、スッキリ進んでいない状況のようだ。まあ、こういうところも、わたしがFOXを嫌う理由の一つでもある。
 さて、以上は全くどうでもいい前振りである。
 わたしは昨日の夜、そのFOX配給の『X-MEN』キャラ単独作品、『DEADPOOL2』を観てきたのだが、さすがに前作が大ヒットしただけあって、今回は何気にFOX版『X-MEN』ムービー的な香りが強めに漂う作品として仕上げられていたことに若干驚いたのである。前作は低予算でいろいろと都合がつかず、その不都合さえネタにしていたDEADPOOL氏だが、今回はもう、かなり、なんというか「公式」感があふれ、結構グレードアップしていたように感じた。そしてなによりも、DEADPOOL氏がとてもイイ奴になっていて、なんだか随分キャラ変したようにも思えたのである。だからといって、つまらなくなったかと言うと、もちろんそんなことはなく、わたしとしては大変楽しめる作品であった。わたしとしては、前作より今回の『2』の方が好きかも。とはいえ、別に感動なんかしないし、特に後に何か残るとか、そういうことはまるでナイっすけどね。超最高とも思わないし。ま、ゲラゲラ笑えるのは間違いないす。あと、本編上映前に1分ぐらいの短い注意?のようなものがついていて、そこで、DEADPOOL氏が、観たらバンバン感想をこのハッシュダグ付けてTweetしてくれ、だけどネタバレはダメだぞ! というメッセージだったのだが、サーセン、たぶん以下、ネタバレも含まれると思いますので、まだ観ていない人は今すぐ退場してください。
 どうでもいいけど、英語でネタバレって「SPOILER」っていうんすね。Spoilする奴ってことなんだなあ。知らなかったす。ネタバレはたぶんしますが、スポイルするつもりは全くないので許してDEADPOOL氏!

 というわけで、この日本語版予告の字幕のセンスなんかも、わたしがFOXを嫌う理由の一つでもあるのだが、それはさておき。今回はケーブルも登場し、相当派手なアクションとなっているのはもうこの予告通りである。そして、物語としては意外なほどまっとうで、きっちりしていて、実際とても面白かったと思う。
 簡単にまとめると、とある理由でまっとうに生きることにしたDEADPOOL氏が、これまたとある理由からとある少年を殺しに未来からやってきたケーブルと戦い、その少年を守ろうとするも、今度はケーブル側の理由を知って、殺して解決するのは良くない、とケーブルを説得し、両者の円満解決を図ろうと奮闘するお話である。
 サーセン、「とある」が多すぎてこれじゃ意味通じないか……でもまあ、ネタバレするとDEADPOOL氏が殺しに来るかもしれないのでこの辺にしておきますし、観た人ならば、これで通じるでしょう。きっと。つまりですね、ズバリ言うとまさしく『ターミネーター』なわけです。どっちかつうと『ターミネーター2』の方が近いかも。なので、DEADPOOL氏が「カイル・リース」と呼ぶギャグネタが1回だけあったような気がするけど、肝心のケーブルに対して「お前はターミネーターか!」的なシーンはなかったのが意外であった。これは……「ターミネーター」という言葉自体が商標化されているためではないかと邪推しましたが、真相は分からんです。それともFOXのドル箱であるCameron監督に対する配慮かな? いや、それはないか。
 ともあれ、今回も相当な数の映画ネタがちりばめられていて、かなり笑える作品であるのだが、意外なことに、わたしの2列前に座っていたでっかい外人客×5名の団体は全く静かに鑑賞してたのが謎である。この人たち、きっとすげえ大爆笑で楽しく鑑賞するんだろうなと思ったのに、超意外なほどおとなしく観ていたのが印象的。なお、わたし的に一番笑えたのは……なんだったかなあ……映画オタとして大抵のネタは拾えたつもりなんだけど……もはや覚えてないなあ……あ、どんな場面だったか定かではないけど、「ただの人間だから。ホークアイみたいなもんだよ。だから弱いの!」的なセリフがあって、そこは堪えられず声を出して笑ったすね。
 そしてもちろん、終了後のおまけ映像(終了直前というべきかも)で、ケーブルの持っていた時空移動装置をGETしたDEADPOOL氏が、今までの黒歴史を修正しまくるシーンも大笑いしたすね。黒歴史……それすなわち、過去の『X-Men Origins: Wolverine』で一度登場している自分を殺したり、『GREEN LANTERN』の脚本を手にして「大役来たぜ!」と喜ぶ自分を殺しに行ったり、まあ、今回のDEADPOOL氏によって歴史は書き換えられたようですなw
 あと、今回FOX版『X-MEN』ムービーの成分多めというのは、観ていただければ誰でも感じると思う。まさか「車いす」「セレブロ」まで登場させるとは! 前作大ヒットのご褒美なんすかね。そして、一瞬だけ、FOX版『X-MEN』ムービー本編のキャラが数人出てくるんだけど、わたしは油断していて、あ!? 今、ビーストとクイックシルバーいた!! けど、あと3人ぐらいいたのに誰だったか判別がつかなかった!! のがとても残念す。ウカツ!!
 というわけで、ネタバレを気にするともう何も書けないので、キャラ紹介をしてさっさとまとめに入ろうと思います。
 ◆DEADPOOL/ウェイド:今回は、まあ相当ヒドイこともするけど、その行動の動機はいたって真面目。超イイ奴、と言ってもいいと思う。まあ、そう改心?したのにはきちんと理由があるのだが、それは書かないでおきます。演じたのはもちろん前作同様Ryan Reynolds氏。この人はカナダ人であるのがポイント?ですよ! 
 ◆ヴァネッサ:ウェイドの愛する彼女。今回彼女にとんでもないことが……しかもほぼ冒頭で。演じたのは、これまた前作同様Morena Baccarinさん。大変可愛いと思います。つうかわたしが大好きだった財務部のMさんにすげえ似てる。
 ◆ヴィ―ゼル:DEADPOOLの友達の傭兵酒場経営者。コイツも基本テキトー人間。演じたのは前作同様T.J.Miller氏。つうか、この人この前逮捕されたんじゃなかったかな? なんか酔っ払って、鉄道の駅で爆弾騒ぎを起こしたとかなんとか。大丈夫なのかこの人。わたし的にこの人は、『CLOVER FIELD』でカメラを回し続け、最後はカイジューにガブリとやられるあの冴えないブサメンとしてお馴染み。いつの間にイケメン枠に入ったんだコイツ……。
 ◆COLOSSUS:前作でもお馴染み、体も硬いけど頭もカタブツな真面目X-MEN代表。ちゃらんぽらんなDEADPOOL氏を友達として、お前もX-MENに入れと勧誘しているが、とうとうDEADPOOL氏本人から入団を希望する日がくるとは! そして基本的にこのキャラはCGキャラですが、どうやらモーキャップで演じた役者と、顔と声を担当している役者は別人なんすね。知らんかったす。ラスト、なんとあのJUGGERNAUTと大バトル! そしてパンフによるとJUGGERNAUTもフルCGだそうです。全然気が付かなかった……
 ◆NEGASONIC TEENAGE WARHEAD:前作でもお馴染みクールなパンクガールX-MEN。今回はあまり出番なし。それより彼女にはカノジョが出来ていて、そのカノジョである「ユキオ」というキャラを演じたのが忽那汐里さん25歳。オーストラリア育ちだけあって英語は全く問題ナシ。あまり出番はないけど、結構いい味出してました。DEADPOOL氏と妙に(一方的に?)仲良し。もちろんX-MENメンバーのミュータント、だけど、どうやら原作にはいない映画オリジナルキャラだそうです。
 ◆CABLE:未来からやってきて、とある歴史を改変しようとするターミネーター的戦士。演じたのはTHANOS様でお馴染み、Josh Brolin氏。ハリウッドコワモテオヤジ選手権が開催されたら間違いなく上位ランカーになるであろうおっさんだが、実は意外と若くてわたしよりちょっと上だけという事実にショックです。絶対50代半ばか? と思ってたのに……。今回、THANOSネタは当然ブッ込まれてます。
 ◆DOMINO:今回、DEADPOOL氏が援軍募集!として求人を出して、それに応募してきた連中と「X-FORCE」を結成するのだが、その中の一人で、ミュータントとしての能力は「運命操作(?)」。つまり、「ラッキーマン」的な彼女は、超ヤバイ状態でも無傷!みたいな超ラッキーに恵まれるという体質のお方。演じたのはZazie Beetzさんというお方で、今年の初めに観た『GEOSTORM』に出てたらしいす。サーセン、まったく覚えてませんでした……。
 とまあこんな感じで、他のキャラはもういいかな……なお、わたしは見ていて全然気が付かなかったですが、『X-FOCE』の中で、かなり有名な俳優がいたようです。エンドクレジットを眺めていて、えっ、マジかよ!? と驚いたっす。誰だか知りたい人は、ぜひ、劇場へお出かけください。
 最後に、監督について書いておこう。おそらく、本作を観てわたしが、ずいぶん前作からグレードアップしたなあ? と感じた最大の要因は、監督がDavid Leitch氏に代わったことなのではないかという気がした。『JOHN WICK』や『ATOMIC BLONDE』で魅せてくれた通り、この監督の作品はやっぱりアクションのキレがとても素晴らしいと思う。そして音楽の付け方もやっぱカッコイイすね。オープニングのタイトルバック(と言えばいいのか?)の007パクリ映像も、大変結構なお手前だったと思います。

 というわけで、もう書いておきたいことがないので結論。
 前作から2年、全世界待望? の『DEADPOOL2』が日本公開となったので、わたしもさっそく会社帰りに観てきたのだが、なんというか、とてもまともというか、ギャグばっかりで中身ナシ、では決してなく、ストーリーがちゃんとしっかりしていて、そう、「フツーに面白かった」す。普段のわたしなら、ここまでギャグ満載だと、くどいなあ、とか感じてしまうのに、本作はそんなことも特に感じず、実際とても楽しめた。それはおそらく、脚本やキャラクターがキッチリとしているためではないかと思う。そして、前作で一部感じられたチープさや、低予算感なんかは、もうほぼないすね。これはもう、立派なメジャー大作ですよ。実際のところプロダクション・バジェットは前作が58M$で今回は110M$と倍近くなってるわけだし、なにより、監督のDavid Leitch氏の手腕のような気もしますね。いやあ、面白かった。ただ、まだ現状ではUS国内興収は前作に劣るのかな……ま、まだUSでも2W目だし、これからなんすかね。『3』があることを祈ってます。つうか、さっさとDISNEY傘下にならないかなあ……。以上。

↓ まあ、やっぱりこの二つ観といた方がいいと思うけどな……わたしは2作とも、嫌いじゃないす。

グリーン・ランタン (字幕版)
ライアン・レイノルズ
2013-11-26

 以前、このblogで『Beyond the Edge』ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂という映画の感想を書いたが、そこでも触れた通り、人類がエベレストに初登頂したのが1953年5月29日。まだわずか60年ほどしか経過していない。わたしの両親世代の青春時期にはまだ誰も成功していなかったというわけだ。意外とまだ全然歴史がないわけだが、その後の60年で劇的にいろいろ進化して、いまや「商業登山」というものさえあり、金を出せば、そしてある程度の訓練をすれば、極端に言うと誰もが登頂可能な世の中になっている。
 ただし、である。そこは人間の生命活動を100%拒絶する「デス・ゾーン」であり、また登頂成功には天候が大きな、おそらくは最大の要因であるため、当然頂上に立つことはいくら金を払おうと恐ろしく困難であり、これまた極端に言うと、命がけの行動となる。現在、登頂成功率がどのぐらいのものなのか知らないけれど、遭難死亡事故も毎年確実に起きているのであろうということは想像に難くない。
 そんな、人外の地であるエベレストで、1996年に エベレスト登山史上最悪と記録される大きな遭難事故が発生した。8人が亡くなり、その中には日本人の難波康子さんも含まれている。実に痛ましい事故だが、その事件を映画化した映画が、わたしが今日見た映画、『EVEREST』(邦題:エベレスト3D)である。

 わたしはこの映画を、ハリウッド資本がまた派手にエベレストを撮ったエンターテインメントだと思っていた。なので、冒頭にBased on a ture Storyと出ても、まあどうせ、登頂に成功するんだけど下山時に大変な目に遭って、それでも何とか奇跡的に帰ってきて、家族と感動的に再会してよかったよかったという話でしょ、と、まったくもって高をくくっていた。年代が、ちゃんと冒頭に1996年と出ても、私はまったく気づかなかった。しかし、キャラクターに日本人女性が出てきて、その名がヤスコ・ナンバだという。その瞬間から、え、これってまさか、あの、あの事故を描く気なの!? と一気に脈拍数が跳ね上がった。このblogに偶然たどり着いて、読んでいる人の中で、あの約20年前の事故を覚えている人がどれほどいるか分からないけど、当時日本でも大々的に報道された遭難事故だ。わたしはもう、この時点で帰りたくなった。怖くて。
 
 というわけで、愚かなわたしのテキトーで楽観的な想像は完全に砕け散り、壮絶な映像が後半続く。くわしいことは、Wikiで1996年のエベレスト大量遭難としてまとめられているので、そちらを見てもらった方がいい。
 この映画では、事故の最大の原因はタイムオーバーであると描かれている。要するに時間切れ、だ。登頂までに時間がかかりすぎたこと、その結果、酸素不足や天候の変化に間に合わなかった、という見解だ。この点は、事実と一致しているのかどうかは分からないけれど、登山愛好家としては十分ありうることだと思う。山は、とにかく迅速な行動がすべてだ。計画よりも時間が押してしまったら、それをリカバーできる能力が自分にあるのかどうか、冷静に判断して、行けると思うなら行けばいいけれど、ダメなら引き返すしかない。しかし一生に一度のチャンスであるエベレストの山頂を目の前にして、引き返すというのは、どんなに経験を積んだ人間であっても、容易に決断は付かないだろうと思う。そして下した決断の代償を命で購ったとしても、とてもわたしはそれを愚かだとか浅はかだとは思えない。だって、誰だってそうなるんだから。どうやら、世の中的には、やはり「商業登山」に対する批判的な意見が多いようで、この遭難事件に対しても、「引き返すべきだった」「体力不足・技術不足」というのが大方の意見で、それは実際その通りで反論の余地はなかろう思う。そしてその判断を曇らせたのが、これが商売であり、「登頂を成功させたい動機が金であったこと」に非難が集まっているようである。しかし、そんなことは誰だって分かるし、誰でも言える。でも、実際にその場にいて、撤退の判断が本当に下せるのか、相当怪しいのではなかろうか。
 ただ、この映画で、これは一体何故なんだ? という不可解なことが少なくとも二つ描かれている。バルコニーの上でのトラバースロープは何故張られていなかったのか。この部分のロープ復旧作業でまず時間を取られたのが原因のひとつ。そしてもう一つが、なぜ、置いてあったはずの南壁(?)の酸素は、空っぽだったのか。これがあればもうちょっとだけ事態はマシだったはずだ。映画では、この原因は語られていない。なんとなく、シェルパがやらかした的な描写はあるけれど、真相は良く分からない。要するに、直接的な原因は天候の急激な変化だけれど、実際のところは人災であるということである。そして人災であるということは、決してなくなることはない、ということだ。
 この映画を観終わって、わたしはちょっと良く分からない。一体、製作者は事故を再現して何を描きたかったのだろう。商業登山への警鐘? 無謀な挑戦への批判? 事故の原因究明? それでも登ろうとした人々の想い? まあ、きっといろいろな意図があるのだろう。わたしはただただ、今までに山で遭った雷や氷点下の恐怖がまざまざと思い出されて、映画なのにわたしはもう、本当に怖くて、歩け、いいから歩けよ!! と手に汗を握ってしまった。エベレストというデス・ゾーンがいかに恐ろしいところか、を描きたかったのならば、少なくともほんのちょっとだけ山の経験があるわたしには、十分以上伝わったよ。本当に、怖かった。そして、難波さんのご遺族には改めてお悔やみ申し上げたい。この映画を許諾をされるのはきっと深い思いがあったと思う。その決断は本当にすごいと思います。わたしだったら、ちょっと直視できないのではなかろうか……。本当に、心が痛みます……。
 今日は、本当は漫画『』に絡めていろいろ書こうと思っていたのだけれど、あまりに壮絶であったため、『岳』についてはもう書けない。非常に優れた漫画で、おそらく日本の山男・山女の大半は読んでいる漫画だと思うけれど、あの最終回は、正直読みたくなかった。漫画なんだから、というのは変だけど、主人公・三歩には、最後までスーパーマンでいて欲しかった。今回の映画は、まさしく『岳』と同じ物語であった。いや、逆かな。『岳』の最終エピソードは、まさしくこの映画で描かれたあの悲劇がベースになっていたのだということを、初めて認識した。漫画だというのに、あの三歩というキャラクターは、いまだ忘れられない。

 役者陣は、Jason ClarkeJake GyllenhaalJosh BrilinSam WorthingtonKeira Knightleyなど豪華キャストが存在感たっぷりに演じており、見応えは十分である。また、撮影も、正直ロケなのかCG合成なのか、もう全然区別できないほどの映像で素晴らしかった。なお、3Dぶりは、正直なところいまひとつだったような印象で、3Dよりもこの映画は、とにかくなるべくデカイスクリーンで観たほうがいいと思う。ひょっとしたら、AtomsやIMAXで見ると、またその迫力は別格にすごいのかもしれないが、今回はわたしは最寄のシネコンで観てしまったので(それでもそのシネコン最大スクリーンでの上映ではあった)、まあ、その意味では普通ではあった。

 というわけで、結論。
 映画として楽しめるかというと、これは人によるね。ああ、そりゃまあ、当たり前か。
 よく、なんで山に登るの? とわたしレベルでも聞かれることがあると前にも書いたが、わたしはたいてい、「まあ、気持ちいいからっすね」とテキトーに答えることにしている。けれど、その答えを本当に知りたいなら、お前も登ってみろ、と心の中では思っている。とりあえずわたしは、ロックと雪山だけはやめておきます。


↓ 名作、と言っていいんだろうな。でも、ホントに三歩には最後まで超人でいて欲しかった……。
 

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