うーーん……なんつうか……なんかイマイチ楽しめなかったような気がするな……。何の話かって? 昨日、わたしは会社帰りの夜、昨日から公開になったシリーズ最新作『Jurassic World:Fallen Kingdom』を観てきたのだが、はっきり言って非常に後味悪く感じ、なんだか、さっさと帰ろう……という気になってしまったのである。
 おそらく端的に言うと、物語に登場するキャラクターたちがことごとく愚かで、「先を考えない」身勝手な行動ばかりするため、わたしはなんだか腹が立ったのではないかと思う。科学技術の発達は、そりゃあ人類にとっては歓迎すべきものであろう。もちろんわたしだってそれを大いに享受しているのは間違いない。しかし、そこにはやはり、「倫理」というか、「それをやっちゃダメだろ」と思えるような何かがあるはずなのに、それらの倫理的・心理的ハードルを、いともたやすく、そして下劣に踏みつぶして超えていく人々は、どうやら間違いなく存在するものらしい。ただ、そういった連中こそが科学を発達させるトップランナーかもしれず、なんかもう、わたしとしては人類に絶望せざるを得ない気分をこの映画で味わうこととなったのである。
 なんつうか……マジでもう、人類は絶滅してもいいんじゃねえかなあ……まったく無責任だが、そんな気のする映画であった。

 わたしはこの予告を観て、あの恐竜の島で火山活動が活性化し、そこに住まう恐竜たちを別の場所?に引越しさせる話なんだろう、と思っていたのだが、結構その事前の予断は間違っていて、今回も結局、明確な悪党がいて、そいつの悪だくみでマズいことが起きる、というお話であった。
 つまり、この『Jurassic Park』シリーズは、ほぼ常に、「人災」なのだ。誰かの悪意が明確に存在しているのである。しかも、だ。実にばかばかしいことに、今回もそうだし、まあ毎回そうなのだが、その悪意の源にあるのは「金」なのである。ホントばかばかしい。なんで金のためにそんなことをするんだ、実に嘆かわしい……という思いがどうしてもわたしとしてはぬぐい切れない。
 おそらく、第1作目が公開された1993年と、それから25年を経た現在の2018年では、相当社会のありよう? が変わっていて、何でもかんでも「リスク」計算をしたがる今の世では、まず前提となる恐竜のクローン復元自体、挑戦しようとする企業はいないと思う。なぜなら危険すぎるからだ。あらゆる賠償責任を検討すれば、まず腰が引けてしまうような気がする。たとえ莫大な利益が得られようとも、万一のリスクを考えたら割に合わないのではなかろうか? おまけに、作中で描かれる通り、どんなに準備をしても、たった一人の人間の裏切りで、すべてがパーになるのだから。
 しかしまあ、その点を否定したらこの映画は成立しないので、その「得られる利益>万一の賠償責任」で、莫大な投資は回収して余りある事業企画だとしておこう。事業として収益が成り立ち、ちょっと危険な動物たちのいる動物園、程度に思って運営しようとしていたと思うことにしよう。何も危険はないよ、と。
 しかし、最初の「Park」シリーズ3作になく、前作及び今回の「World」シリーズ2作に共通する違いは、DNA工学の進歩による「遺伝子操作=ハイブリッド」恐竜の「製造」だ。ただでさえ危険極まりない生物を人為的に掛け合わせ、新種を製造する。これはもう、「やってはいけないこと」に他ならないのではなかろうか。もちろん人類は、そういった「人為的交配」による新種の製造をこれまでもう散々やってきたわけだが、予測不能なアンコントローラブルなことをするのは、まあ、たとえ自分が死んだってその影響は残るわけで、責任の取りようがない。そう、自ら責任を取れない、自らがコントロールできないことをするのは、もう完全に許されることではないだろう、とわたしは思う。
 その点で、わたしは前作の感想でも書いたが、この「World」シリーズでの一番の悪党は、DNA工学者であるDr.ウーなる人物だと断言したい。こいつは本当にクソ野郎で、前作ではさっさとバックレてしまうし、今回も……生きてんのかな? 死んでないと思うのだが、コイツこそ、明確に「ガブリ」と殺られてほしかったのに、またうやむやだったのが実に腹立たしく感じた。
 なお、わたしは完璧に忘れ去っていたのだが、このDr.ウーなるクソ野郎は、シリーズ第1作『Jurassic Park』にも登場してたんですね。さっきWikiを見て初めて知ったというか思い出したわ。ともあれ、コイツの悪行に比べたら、金目当ての悪党どもは大したことないと思う。基本的に、金目当ての小悪党どもは全員「ガブリ」の刑に処されるので、それはそれでざまあ!と観ていてすっきりするのだが、この博士はホント許せんとわたしは思った。
 そして、本作で大問題となるのは、人間の悪党どもはもはやどうでも良くて、一体、現代に製造された恐竜たちは、この後どうしたらいいんだろう? という点であろう。確かに、現代の高度に発達した文明が生み出した武器を使用すれば、いざという時の殺処分は可能ではある。その意味では、無理やりであろうとコントロール可能、とも見ることができる。しかし、そこには「命」に対する尊厳もクソもなく、家畜同様の扱いだ。それでいいのかどうか、そりゃあよくないのは間違いなくても、それしか方法がなければ殺るしかない。殺らねば殺られるわけだし。
 そういった正論は分かっていても……やっぱり、溶岩の迫る中で、巨大な草食首長竜(ブロントサウルス?)が噴煙に飲み込まれて崩れ落ちていくシーンなんかは、なんか悲しくなったすねえ……島の脱出シーンは大変つらかったす。そしてラストは、カリフォルニアに連れてこられた恐竜たちを解放して終わるだけだが、まあ、そりゃ無責任すぎると思っても、やっぱり殺されずに済んでちょっとほっとしたわけで、要するに、この映画が描くのは人間のエゴがもたらす地球規模?の悲劇なわけだが、結局のところ観ているわたし自身も、人間のエゴの塊だったな、という妙なオチがついたように感じた。なんつうか……とにかく愚かだよ。登場人物全てが。ついでに言うと観客のわたしも、ね。
 というわけで、以下、キャラ紹介をざっと記して終わりにしよう。
 ◆オーウェン:前作の男主人公。元ヴェロキ・ラプトルの飼育員で、「ブルー」と名付けたラプトルを飼いならす男。ブルーが、すっごくけなげなんすよ……泣ける……ブルーよ、元気でな……。なお、このオーウェンという男は、迫りくる火砕流に巻き込まれても無傷というスーパーマンなのだが、火山国に住まう我々日本人から見るとちょっとありえなさ過ぎるが、まあ、こまけぇことはどうでもいいか。コイツの愚かさは、危険なラプトルを人間に従わせようとしたことにあって、それがどんな悪事に繋がるか無自覚であった点であろうと思う。本作では、カリフォルニアに連れてこられた恐竜たちが、金持ちの悪党どもにオークションにかけられ、おとなしい草食恐竜はペットとして、凶暴な肉食獣は兵器として買われていくのだが、オーウェンのやったことは兵器利用のきっかけともいえるわけで、まあ、コイツも無罪ではないすな。演じたのはMCUのスター・ロードでお馴染みChris Pratt氏39歳。大変イケメンだと思うけど、頭は良さそうに見えないのが弱点かも……。
 ◆クレア:オーウェンの元彼女で元パーク運営会社の人間。彼女の愚かさは、まあ、パーク運営にかかわったこと=恐竜を金もうけに使おうとしたことでしょう。そして、今回の悪党を無邪気に信じて、冒頭30分であっさり裏切られて窮地に陥るのは、観ていて、そりゃそうなるな……この人アホなの? と愚かさを感じざるを得なかったすね。そんな彼女を演じたのはByrce Dallas Howerdさん37歳。今までにいろいろな作品でこの方をお見かけしているけど、サーセン、趣味じゃないす。
 ◆ロックウッド:最初のパークを作ったジョン・ハモンドの親友でウルトラ金持ち。もうかなりのおじいちゃんで体の具合は良くない。今回、このおじいが恐竜の保護をクレアに提案するスポンサーとなるのだが……。彼の愚かさは2つあって、一つは自らの財産管理をたった一人のゲス野郎に任せっきりで、人を見る目もないし、いろいろ知恵の足りない点にあろう。普通、あれだけの広大な土地&大邸宅&財産があったら、資産管理会社をきちんと立てて法人化するだろうに、たった一人の男に託した意味が分からん。愚かすぎる。一応作中では「財団」と称されていたが、財団なるものの実態は一切描かれず、財団なるものが一人の悪党に支配されている描写はすごく違和感があった。まあ、彼は自らの愚かさは裏切られて命で贖うこととなったのだが、せめて信頼する弁護士ぐらい身近に置いとけよな……。そして2つ目の愚かさは、許されざるクローン製造に手を付けたことだろう。これはネタバレすぎるので書きません。ホント愚かとしか言いようがない。演じたのは、超ベテランのJames Cromwell氏78歳。この方は若い頃から顔を知ってるだけに、なんかすっげえ老けましたなあ……年齢が年齢だけに当たり前なんだけど、そのふけ姿に若干ショックっす。
 ◆イーライ・ミルズ:おじいの財産を管理する財団とやらを支配する悪党。彼の動機は「金」だけ。実に底が薄く、薄っぺらな小悪党。見事八つ裂きにされますので、ざまあ、であります。コイツもそうだし、終盤に出てくる恐竜オークション参加者の顔がおっそろしく、あさましい、醜い人間どもの顔をしていて、実に不愉快であった。とにかく、いやーーなツラしてますよ。演じたのはRafe Spall氏35歳。この人は観たことない顔だな、と思ったら、どうやら私はかなり多くの作品でコイツを観ているはずらしく、全然気が付かなかった。どうやらこの人は、『PROMETHEUS』で一番最初にフェイスハガー的謎生物に襲われて死ぬ隊員を演じた彼らしいすね。全く顔を覚えてなかったわ。
 他にも、クレアの部下の獣医の女の子とかPCオタクの青年とか、あるいは金目当てに雇われている傭兵集団のリーダーのクソ野郎とかが出てくるけど、知らない人なので省略。そう、一人だけわたしの知ってる人が出てました。それは、特徴的な顔と163cmの小柄な体格が他の誰とも間違えようのないToby Jones氏で、えーと、例えば『CAPTAIN AMERICA』に出てきたヒドラのマッドサイエンティストのゾラ博士を演じた方ですな。今回の役は、凶悪なハイブリッド恐竜の製造を指示し、オークションを開催していた武器商人? なのかな、とにかく悪党で、「ガブリ」の刑に処せられます。実に愚かであさましいツラをした野郎だったね。
 最後に監督だが、本作を撮ったのはスペインの新鋭Juan Antonio Bayona氏43歳。わたしはこの人の作品は『Lo Impossible』しか観ていないけれど、それほどすごいと感じるものは特になく、普通にハリウッド大作だったな、ぐらいの印象しか持ち得なかった。CGは勿論すごい質感で、本物そのものにしか見えないけれど、ある意味もうお馴染みな映像だし、新しさも感じなかったかな。なのでとりわけメモしておくことはないす。

 というわけで、さっさと結論。
 3年ぶりのシリーズ最新作となる『Jurassic World:Fallen Kingdom』を観てきたのだが、そこに描かれているものは、無邪気な少年めいた恐竜へのあこがれのようなものではなく、あさましい人間たちの純然たる欲と悪意であった。まあ、そんな物語を観て無邪気に楽しめるわけもなく、当然後味悪いというか、スッキリしないわけだが、なんつうか……やっぱり、やっちゃあいけないことはやっちゃあいけないわけで、何をやっちゃあいけないのか、それを判断できるのは、おそらく個人の中にある「良心」と呼ばれるものなのだろうと思う。まあ、その良心を失くしたくはないですな、という教訓としておこうと思います。いやあ……ホントに人間は愚か者ばっかりで絶望しかないす。もちろん、自らもその一員ということは忘れないようにしたいものであります。以上。

↓ もう30年近く前に読んだ原作は大変面白かった。そして、この原作単行本版のカバーイラストの本物の原画を、以前「生頼範義展」で観ました。原画は超オーラが発散されてたっすね。
ジュラシック・パーク〈上〉 (Hayakawa novels)
マイクル クライトン
早川書房
1991-06-01