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 昨日は外での打ち合わせが3時間コースを覚悟していたのに、ごくあっさり1時間チョイで終わってしまったため、ちょっと早い時間だけど、暑いし、さっさと帰ろ……と炎天下の中、なるべく日陰を選びながら、なんとなくもう生きる気力も失いかけながらトボトボ歩いていたところ、電撃的に、そういや今日は8月1日、映画がお安く観られるファーストデーじゃねえか、と気が付き、ならば映画を観て帰るか、という気になった。そして一番最初に目に入ったカフェにまずは避難して、そういやあの映画って、先週から公開してんじゃなかったっけ、時間は……とチェックしてみた。
 しかし、驚いたことに、全く上映館がない。アレッ!? おっかしいな? とその映画の公式サイトで上映館を調べたところ、わたしが通うTOHOシネマズでは一切上映しておらず、都内でも6スクリーンしか上映していないことが判明した。マジかよ……と思いつつ、一番近い有楽町の上映時間を調べてみると、1時間後に始まる回があるようなので、すぐさま、有楽町BICカメラの上にある、「角川シネマ有楽町」へ向かうこととした。
 と、いうわけで、わたしが昨日の会社帰りに観た映画は『WIND RIVER』という作品である。US版予告を観たのはかなり前で、WikiによればUS公開は去年の今頃だったらしいから、たぶんもう1年以上前だろう。なかなか日本公開されないので、こりゃあお蔵入りになっちまったかと思ったら、ひょこっと公開されたので、さっそく観てみたわけだが、一言でいうと、物語的には、事件の全貌は結構なーんだ、ではあるのだが、なんというか、主人公の苦悩がやけに胸に染みて、予想外にグッとくるものがあったのである。要するに、わたしとしてはなかなか面白かったと言って差し支えないと思う。うまく言えないのだが……物語というよりも、主人公の心もち、にわたしは大変感じるものがあったのだ。
 というわけで、以下、物語の概要などをメモって行こうと思う。なお、決定的なネタバレも触れる可能性大なので、観ていない人はここで退場してください。これは何も知らないで観る方がいいと思う。
 
 上記は日本版予告だが、相当時系列を無視した編集がなされていることだけはつっこんでおこう。まあ、大体の物語は、上記予告から想像される通りと言ってもよさそうだ。そしてこの予告から、何故わたしがこの映画を観たいと思ったか、もうお分かりですね? そうです。わたしの大好きなMARVEL CINEMATIC UNIVERSの”ホークアイ”でお馴染みのJeremy Renner氏と、ワンダこと”スカーレット・ウィッチ”でお馴染みのElizabeth Olsen嬢が出演するから、である。この二人の共演に、ほほう、コイツは観たいかも……とまずは思ったのであった。
 物語は、冒頭、雪の山を「裸足」で、何かから逃げるように猛ダッシュする女子の様子から始まる。そしてこの女子は翌日には死体となって発見されるのだが、一体彼女に何が起こったのか、という事件捜査ミステリーである。
 しかし、ミステリーと言っても、トリックや叙述ミステリーのような仕掛けはなく、まったくオーソドックスに捜査の模様を追っていくだけなので、そこには別に、な、なんだってーー!? と驚くようなものはない。ある意味淡々と、ジワジワと事実が分かっていく展開なので、ストレスなく物語に身をゆだねることはできる。そこを物足りないと思うかどうかは微妙だが、わたしとしてはいろいろと、この映画を観て初めて知った事実があって、大変興味深かった。ちょっと、わたしが知らなかったことをまとめてみよう。
 その1)極寒の氷点下の元で全力疾走すると死ぬ。
 この死ぬ、は、文字通りの「死」である。本作では氷点下20℃(30℃?)という設定だったが、そのような状況で全力疾走を続けると、肺に取り込まれた冷気が露結し、肺に水が溜まって肺胞が破裂、出血を起こし、「窒息死」するんだそうだ(パンフには肺が凍結すると書かれている)。おっかねえ……壮絶な死因だよな……とわたしは非常に恐怖を感じたすね。そして本作では、その死因が大問題で、死体で発見された女性の死因が、氷点下の中で全力疾走を続けたことによる窒息死であるため、それすなわち「他殺=殺人」ではない、ということになってしまう。そうなるとどうなるか。これが次の知らなかったことその2)だ。
 その2)インディアン保留地での警察権
 雪山での死体発見、ということで、当然捜査が行われるわけだが、他殺(=殺人)ならばFBIが捜査にあたり、殺人でないならインディアン保留地を管轄する専門警察が捜査にあたる、というルールらしい。なので、せっかくやってきたFBI捜査官も、これ以上捜査ができないことになってしまうのだが、女性はレイプされ、ひどい暴行を受けており、許せることじゃあない、けど、地元の保留地警察はまったく人員が足りてないし、そもそも土地は広大かつ峻厳で……と困難に突き当たることとなる。
 その3)ワイオミング州とインディアン保留地
 舞台はワイオミングの険しい山に抱かれた「ウィンド・リバー保留地」である。ちなみにどうやらこの作品は全編ユタ州で撮影されたようだが、それはともかくとして、ワイオミング州はWikiによると全米50州の中でもっとも人口の少ない州だそうで、行ったことがないからわからないけど、未知との遭遇でお馴染みの「デビルズタワー」国定公園やイエローストーン国立公園などのある、大自然の地、のようだ。そしてワイオミング州は「カウボーイ州」としてもお馴染みだそうで、どうやら大自然に加えて白人とインディアン部族のキナ臭い歴史も何となく想像は出来るように思える。そして、冒頭にInspired by True Eventと出るし、エンディングでも字幕で説明されるのだが、インディアン居留区では非常に多くの女性失踪事件が現実に起こっているそうで、それらの多くが未解決なままなのだそうだ。その、失踪の原因はいろいろあるんだろうけど、未解決のまま、な理由は、この映画を観るとよくわかると思う。そこにあるのは、やっぱりどう考えても差別であり、格差であり、インディアンのことはインディアン(保留地警察)に任せとけば? という「無関心」だろう。前述のように他殺でない限りFBIは介入せず、失踪だけでは地元警察が動くしかなく、そして全く手が足りてない、そして広大&峻厳すぎる、という極めて厳しい状況のようだ。なんつうか……わたしはこの映画を観ながら、あまりな扱いを受ける人々に悲しくなっちゃったす……。アメリカ合衆国という国は……ホントに世界の一流国なんすかねえ……。。。
 その4)全く物語に関係ないけど……
 わたしは冒頭の製作会社とかのロゴを観ながら、あ、そういうことか、とひとつひらめいたことがあった。本作は、WEINSTEINの作品で、しかも去年の夏US公開ということは……まさしく去年の秋ごろに発覚した大問題、後にMe Too運動のきっかけ(?)となったワインスタイン・セクハラ問題のせいで、お蔵入りになりかけたのかもな? とどうでもいいことに気づいた。帰ってから調べたところ、本作はUS本国ではまったく売れなかったようで、その点は映画の出来に反して大変残念だったと思う。ちなみに、映画としての評価はRotten Tomatoesによるとかなり高いみたいですな。この高評価は、わたしも同意っす。
 さてと。それでは、登場キャラクターを演じた役者とともにまとめておこうかな。
 ◆コリー:主人公。白人。FWS(合衆国魚類野生生物局)に属し、ウインドリバー保留地での(狼とかピューマ?といった)害獣駆除を受け持つハンターで遺体の第一発見者。凄腕のスナイパー。演じたのはホークアイことJeremy Renner氏。コリーはちょっと複雑なキャラで、白人だけどインディアン女性と結婚し、娘と息子をもうけるが、娘が16歳?だかの時に、失踪、翌日死体で発見されるという悲劇を味わっている。その事件はまったく未解決のまま、なんとか哀しみと折り合いをつけて毎日を過ごしているが、妻とは離婚・別居中(まだ協議中だったかも)。そして今回の事件の被害者の18歳の女子は、娘の友達であり、その両親とも親しく、まったく他人事ではないため、事件捜査に手を貸すことに。Renner氏は、これまでの役柄的にちょっと生意気というか不敵なキャラが多かったので、わたしはあまり好きではないのだが、実のところ芝居的にはかなり上質で、今回も非常に静かで、ハートは熱く滾る男を見事に演じていたと思う。なによりも、娘を亡くした父親同士のふれあいのシーンは、猛烈にグッと来たすね。言葉は少ないけど、その朴訥な慰めはとても感動的だったと思う。お見事でした。
 ◆ジェーン・バナー捜査官:派遣されてきたFBI捜査官。白人。たった一人しか寄越さないFBIもアレだし、ジェーンもまるで薄着でナメた格好でやってくるため、コリーたちはイラッとするが、実際とても正義漢で一生懸命に捜査する女子。演じたのはElizabeth Olsen嬢。足手まといにならないよう頑張るOlsen嬢はなかなか可愛かったですな。
 ◆ベン:地元の保留地警察の署長。インディアン。いい人。演じたのはGraham Greene氏ですよ! わたしはこの方の顔を見て、おっと、この人ってひょっとして……と終わってから調べたところ、まさしく名作『Dances with Wolves』の「蹴る鳥」のあの人ですよ! え、知らない!? うそ! ちゃんと観て! 名作だから! 「蹴る鳥」をこの役にキャスティングしたのはかなりファインプレーだとわたしとしては称賛したいす。
 ◆マーティン:遺体で発見された女子の父親。インディアン。超いかついけど、超優しいお父さん。コリーに慰められ号泣するシーンはマジ泣ける。そしてエンディングでは、娘をなくした絶望で、銃を手に、顔にペインティングして登場するのだが、あの二人のシーンもホントグッと来たっすねえ……。
 「何だその顔」
 「死に化粧さ……」
 「そういうもんなんだ」
 「知らねえ。テキトーにやってみた。教えてくれる人がもういないからな」
 「(亡くなった女子の)弟にやさしくしてやってくれよ(※弟はヤク中で警察にいる)」
 「ああ……このバカげた化粧を落として……迎えに行かなきゃな……」
 台詞は正確じゃないけどこんなやり取りのラストシーンは、大変胸が熱くなったす。演じたGil Birmingham氏は他の映画でも何度か見かけたお顔すね。大変いい芝居でした。
 ◆ナタリー:遺体で発見された女子。インディアン。氷点下の中、裸足で10kmの山を走り切って息絶える。その亡骸は戦う意志の表れで、逃げたんじゃあないと分かるくだりはとても感動的であったと思う。演じたKelsey Asbilleさんはとてもかわいかったすな。生きているシーンはごくわずかだけど、非常に印象に残ったすね。
 ◆マット:ナタリーの彼氏で、山深くの掘削場(?)の警備員。白人。まあ、事件のネタバレをすると、要するにナタリーとイチャついていたところを泥酔した掘削場の作業員たちに見つかり、大喧嘩となって……という痛ましくも単純な話なのだが、わたしとしてはどうしてもこの「掘削場」なるものの意味がよくわからなかった。まず第一に、何を「掘削(?)」してる現場だったのかわからんし、ラスト近くで、作業員?のクソ野郎どもが主張する権利(ここはなんちゃら局の管理地だからお前らに従ういわれはない!とほざいて保留地警察に銃を向ける)も、何のことかさっぱりわからなかった。アレって何だったんだろうか……。で、マットを演じたのはJon Bernthal氏で、この人はTV版のMARVELヒーロー・パニッシャー役でもお馴染みですな。最近売れっ子ですが、彼も生きてるシーンはごくわずかす。
 ◆ピート:掘削場の男の一人で、事件の発端となった泥酔してマット&ナタリーにからんだゲス野郎。何で回りは止めなかったんだよ……。結論から言うとキッチリ死ぬのでざまあとスッキリなのだが、主人公コリーがコイツに下した刑が超ヤバイつうか怖い! まあ、悪党は死ねってことで、わたしとしてはアリです。演じたのはJames Jordan氏。主にTV方面の人みたいすね。知らんので省略。
 とまあ、こんなところか。で、本作の脚本/監督がTaylor Sheridan氏で、『SICARIO』の脚本を書いた人だそうです。お、マジかよ、役者としても結構キャリアがある人なんですな。あ!おまけに今年観た『12 STRONG』にも出演してたんだ! へえ~。48歳か。若いというほど若くないけど、今後も期待したい俊英ってことで、名前を憶えとこうと思います。

 というわけで、もう長いので結論。
 ファーストデーということで、ふと映画を観て帰ろうと思ったわたしが観た作品『WIND RIVER』は、US本国での公開から約1年経っての日本公開となったわけだが、まあ、かなり面白かったというのが結論である。この映画が全然スクリーン数が少ない小規模公開なのはとても残念に思う。夏休みということでお子様映画ばっかりな日本の映画興行だが、なんつうか、もうちょっと大人向けもちゃんと公開してほしいな、と思った。だって映画興行を支えてるのは、もはやシニアのおっさんでしょうに。ちなみにわたしが観た、有楽町の角川シネマは、まあファーストデーだからかもしれないけれど結構お客さんが入っていて、しかも年齢層高めでした。しかしそれにしても……アメリカ合衆国って国はなんつうか……ホントに問題山積なんだなあ……と能天気に思ったす。つうかですね、やっぱり広すぎですよ、あの国は。まったく行き届いてないんだもの。ホント、あの国の田舎には行きたくねえすね。何が起こってもおかしくないな、実際。アメリカ……恐ろしい国……というのが結論かもしれないす。以上。

↓ わたしの2018年ナンバーワン作品は今のところコレですが、何気に、テーマとしては近いものがあるような気がします。どちらも現代アメリカの田舎が抱える問題点、でしょうな……。

 いやーーー。これは難しい。そして素晴らしい! 今年2017年の暫定1位だな。
 なんの話かって!? 映画『ARRIVAL』(邦題:メッセージ)を今日会社帰りに観てきたのだが、その感想である。これは相当歯ごたえあるぞ……そして、映画としての出来はものすごくイイ! 撮影、そして音楽(というより音響設計か)。実にクオリティが高い。いやはや、素晴らしかった。
 そして、わたしは実に愚かなことに、本作が有名なSF小説が原作だということを全然知らなかった。知ってれば読んでから観に行ったのに……ちくしょー! 原作小説に関するプロモーションってあったのかなあ? 有名な作品らしいが、わたし、恥ずかしながら読んだことのない小説で、その作品の名は『Story of Your Life』(邦題:あなたの人生の物語)。わたしの大好きな早川書房から発売されているので、わたしは帰りの電車内で即、電子書籍版を買いました。くっそーーー読んでから観るべきだったかもなあ……。
あなたの人生の物語
テッド チャン
早川書房
2014-09-30

 なぜそう思うかというと、冒頭に記したように、本作『ARRIVAL』は、正直かなり理解が難しい、非常に歯ごたえのある作品なのだ。もちろん、きちんとストーリーは追えるし、あ、そういうことなんだ!? という最終的なオチというか結末も、ちゃんと映画を観ていれば理解できるとは思う。しかし、ええと、ホントにオレの理解は合ってるのかな? と自信が持てないんすよね……。
 一応、パンフレットを読む限り(パンフには結構詳しい解説が何本も収録されているのでおススメ!)、わたしの理解は正解だったようだが、やっぱり、これはさっそく買った原作を読んでみた方がいいような気がしますね。多分この映画、ゆとりKIDSには全く理解できないと思う。これはホント、早川文庫が似合う、正統派なハードSFですよ。以上。
 で、終わらせるにはまだまだ語りたいことがいっぱいあるので、まずはいつも通り予告を貼り付けて、以下で少し語らせていただくッッッ!! もちろんネタバレもあると思うので、読む場合は自己責任でお願いします。

 今回は、この映画について、いくつかのポイントに絞って、その素晴らしさを記録に残しておこう。いやあ、すげえクオリティですよ。こいつは本物だ。
 【1.物語】
 まあ、物語としては、上記予告の通りである。ある日突然、地球に飛来した謎の宇宙船。しかも12機が地球の各地に「同時に」降り立った(※ちなみに日本(の北海道)にもやって来る)。しかし、地上から数メートルのところで静止し、とりわけ何もアクションを起こさない。世界各国は調査にあたるが、US国内にやってきた宇宙船の調査には、まずはコミュニケーションをとるため、言語学者のルイーズが選ばれる。そして、重力制御された宇宙船内で異星人とのコミュニケーションが始まるのだが―――というお話である。
 わたしも、上記予告はさんざん何度も見ていたので、おそらく物語のカギは、「一体全体、なにをしにやってきたのか?」という点にあるのだろうと予想していた。
 まあ、その予想は誰でもできるし、実際上記予告にもそう書いてあるのだが、最終的に明かされる「目的」について、正確な理解はちょっと難しいと思う。なにしろ、彼らは我々地球人と全く異なる思考をする生命体だ。それを、地球人の常識で計ろうとしても、そりゃあ難しいに決まっている。一番のカギになるのは「時間」の概念なのだが、我々地球人が、時間は一直線に流れ、不可逆なものと考えている一方で、異星人たちはそうではない。それがだんだんわかる仕掛けになっているのである。
 そして、それが決定的に判明するのはかなり後半だ。わたしは中盤のルイーズのある一言(「科学のことはお父さんに聞きなさい」のシーン。これは白黒反転させておきます)で、えっ!? ちょっと待った、てことは……まさか!? と仕組みが理解できたのだが、ここは相当注意深く観ていないと難しいと思う。実は冒頭から、ルイーズは愛する子を病気で亡くし、深い失意にある、というような、その愛する娘とのシーンが何度も何度もフラッシュバックで描かれるのだが、その意味が分かるラストは、やられた――!! やっぱりそういうことなのか!!! と誰しもが驚くものだと思う。
 ただ、最終的にわかっても、この作品は、そういう「理解するのが非常に難しい」という意味において、素晴らしい脚本だったと称賛すべきか、トリッキーで不親切な脚本で、もうチョイ説明が欲しかったと思うべきか、わたしとしては正直微妙だと感じた。観終わった後でも、じゃあなんで……? という疑問がわたしには結構多く残っている。ある意味、ぶった切りのエンディングと言ってもいいぐらいかもしれない。少なくとも万人向け、ではないと思う。
 しかし、だからと言ってつまらなかったとはこれっぽっちも思わない。それは、この難解な物語を支える、映画としての技術的なポイントが、おっそろしく高品位で、すさまじくクオリティが高いからである。
 【2.演出、撮影・映像そのもの】
 ちょっと前に、この作品のメイキング的な映像をチラッと観たけれど、画面は全く自然で本物そのものにしか見えないのだが、宇宙船をはじめ、実はすさまじくCGバリバリである。そして、宇宙船の全貌が画面に現れるまでの、チラ見せ具合も大変上品かつ上質だ。この映画はなるべくデカいスクリーンで観た方がいいと思う。その圧倒的な存在感は本当にそこに存在するようにしか見えないし、完璧に計算されてCG処理された風景の色味、それから雲、時にすごいスピードで画面を横切る戦闘機やヘリなど、まさしく本物にしか見えないCGは超見事である。宇宙船の巨大感も申し分なしで、これは日本の映画界では絶対に撮れない画だ。なんというか、マグリットの絵画を実写化したような、まさしく超現実(シュール・レアリスム)で、わたしはもう大興奮である。
 また、異星人の描写も、当然フルCGだと思うが、もう本当に生きているとしか思えない質感だし(デザイン的にも超秀逸!)、スモーク越しに現れる映像・演出も実に品がある。重要なキーとなる、異星人の描く文字も、そのデザインや描かれた方も、書道をたしなむ我々日本人には完璧に美しく、お見事だ。
 とにかく、本物そのもの、圧倒的な存在感。そして、全編に漂う、尋常ではない「緊張感」。わたしはこの映画を撮ったDenis Villeneuve監督の作品を観るのは4本目だが、去年、Denis監督の前作『SICARIO』を観た時もこのBlogで書いたけれど、その映像には、まるでJOJOで言うところの「ゴゴゴゴゴ」「ドドドドド」という書き文字が見えるような、あの緊張感が常に感じられるのが、Denis Villeneuve監督の作品に共通する特徴であろう。これは、観てもらわないと伝わらないだろうなあ。多分、観てもらえればわたしが言いたいことは通じるような気がする。この、Denis監督の作品に共通する「画面から伝わる緊張感」に非常に大きな役割を果たしているとわたしが考えているのは、音楽、音響設計、というか音そのものである。
 【3.音楽、音響設計、音そのもの】
 本作は、冒頭、非常に印象的な、弦楽器の奏でる音楽から始まる。わたしは音楽にはさっぱり詳しくないのでわからないのだが、おそらくはヴィオラかチェロで奏でられる、重く低い曲。それはエンドクレジットによるとMax Richterというドイツ(生まれのイギリス)人の「On The Nature of Daylight」という曲だそうだ。お、公式動画があるみたいだから貼っとこう。

 この非常に印象に残る曲から始まる本作は、これもDenis監督作品に共通してみられる特徴なのだが、とにかく音の使い方が非常に素晴らしい。まったくの無音部分とのコントラスト、メリハリもきっちり効いていて、映像に緊張感を与えることに成功しているとわたしは思う。冒頭、主人公ルイーズが大学から外に出て、空には戦闘機が行きかい、いったい何事が起きているんだ? という最初のドキドキ感は本当に素晴らしいし、その緊張感は最後まで貫かれていると思う。ズズズズズ……ビリビリビリ……といった、ある意味では不快な重低音が重要なシーンでは常に背後に流れていて、観ている我々の不安を掻き立て、ドキドキさせるわけで、その使い方は、下手を打つと不愉快なものになるけれど、Denis監督の使い方は決してそんなことにならない。本作は、今年2月のアカデミー賞で作品賞をはじめ8部門でノミネートされたが、受賞できたのは音響編集賞のみ、であった。実にお見事であるし、この特徴は少なくともわたしが観た4本すべてに共通する、Denis監督の目印といってもいいだろう。おそらくは、Denis監督の次回作、『BLADERUNNER2049』においても、まず間違いなく発揮されるであろうと思うので、ぜひその点はチェックしたいと思う。

 というわけで、物語・映像・音楽(音そのもの)の3点について、まあテキトーなことを書いたが、役者陣の熱演ももちろん素晴らしい。今回は3人だけ挙げておこう。
 まずは主人公ルイーズを演じた、Amy Adamsさん42歳。おぅ……マジか、もう40超えてるのか……わたしがこの人が演じた中で一番好きな映画は、もちろん『Enchanted』(邦題:魔法にかけられて)だろう。あのジゼル姫は最高でしたなあ。2007年公開だからもう10年前か。最近では、DCヒーロー作品でスーパーマンの恋人、ロイス役でおなじみだけど、すっかり年を感じさせるというか……最近はちょっとアレすね……。でも『her』でのAmyさんはホントに可愛かったので、髪形やメイクで随分変わるんだと思う。本作では、若干疲れたような40代女子であったけれど、その美しく澄んだBlue Eyesが非常に印象的であった。そして娘とのシーンや、すべてを理解した時の表情、大変素晴らしかったと思う。
 次は、わたしの大好きなMCUにおけるHawk EyeでおなじみのJeremy Renner氏46歳。彼は、出世作『The Hurt Locker』でのジェームズ軍曹役や、今やレギュラーとなった『Mission Impossible』シリーズ、あるいはMCUでのHawk Eyeでもおなじみのように、不敵で抜け目ない男という印象が強いけれど、今回は知的な科学者である。登場時はちょっと生意気ないつものRenner氏だが、だんだんとルイーズに惹かれ、協力していく今までとはちょっと違う役柄であったようにお見受けした。本作では実はほぼ活躍しない、けれど、物語において重要な役割で、それが判明する流れはお見事である。まあ、この人の演技ぶりはほぼ関係なく、脚本のおかげだけど。
 最後。調査班の現場責任者?の軍人を演じたのが、ベテランForest Whitker氏55歳。わたしがこの人を知ったのは、かの名作『PLATOON』だが、ホントこの人、若いころは鶴瓶師匠そっくりだったんですが、最近ではすっかり渋い、脇を固める大ベテランですな。声に特徴のある人で、妙にカン高いんすよね。『ROGUE ONE』でのソウ・ゲレラ役も渋かったすねえ。まあ、役的にかなり微妙だったけど。彼もまた、本作ではほぼ何も活躍はしません、が、やっぱり非常に印象に残る芝居ぶりだったと思う。もうチョイ、活躍してほしかったなあ。
 
 最後に、ここまで絶賛しておいてアレですが、ここはちょっとなあ……という点も3つ挙げておこう。まず、一つ目がズバリ、中国に対する扱いだ。本作では、地球に飛来した12機の宇宙船の一つが、上海に現れ、あの国だけ宇宙船に対して好戦的というか、軍事行動を起こそうとする流れになる。ま、それに乗っかるロシアもおそろしあだが、その中国でキーとなるのが、軍人のなんとか将軍なのだが……あの国のシステムにおいて、あんなに軍人が突出して行動を開始しようとするなんてことがありえるのかな? いや、あり得るのか、あの国だからこそ。なんか、なんとか将軍が大物なんだか実感がわきにくかったす。
 二つ目のわたし的いちゃもんは、邦題である。なんなの「メッセージ」って。なんで「アライヴァル」じゃ駄目だったんだ? 作中では、arrivalという単語は何回も出てくる。ほぼ毎回「出現」という字幕がついてたかな。いっぽうのmessageという単語は、わたしのヒアリング能力では1度も出てこなかったように思う(字幕では1回だけあった)。メッセージ……どうかなあ……。物語的にも違う、ような気がするのだが……。arrivalというタイトルの意味は、わたしなりに思うところがあるのだが、これはクリティカルなネタバレすぎるので書くのはやめときます。とにかく、メッセージは違う、と思ったことだけ記しておこう。
 最後、三つ目のわたし的いちゃもんは……これは、完全に映画オタクとしてのどうでもいい文句なのだが……わたしはマジで、結構腹が立ったので書いておくけれど……あのですね、わたしはもう35年以上映画館に通う、40代後半のおっさん映画オタなんですよ。せっせと劇場に通い、パンフも必ず買う、業界的には模範的というか、大切にしてもらってしかるべき、だとすら思うオタク野郎なわけです。なので、言わせてもらいますが……あのさあ! パンフレット! 変なサイズにするのやめてよ!!! 保管するのに困るんだよ、妙に小さい判型は!!! そりゃあね、デザインに凝りたくなる気持ちはよーくわかりますよ? でもね、配給会社の皆さん、そんなデザイナーのこだわりなんて、まったく迷惑以外の何物でもないんすよ、購買者にとっては。今、入場者のどれぐらいがパンフ買ってくれるか、ちゃんとデータ取ってるでしょ? どんどん減っているって、知ってるでしょ? そして買ってるのが、もはや希少種のオタク野郎だけだって、分かってるでしょ? せっかく内容的には読みがいのあるいいパンフなのに、このふざけた判型だけはホント許せんわ……!! はーー。興奮してサーセン。邦題といい、パンフの判型といい、さらに言えばUS公開から半年経っての公開といい……SONYピクチャーズの人々は大いに反省していただきたいものです。

 というわけで、結論。
 わたしが今、一番注目している映画監督、Denis Villeneuve監督による『ARRIVAL』が、US公開から半年経ってやっと公開されたので、初日の金曜夜、早速観てきた。そのクオリティはすさまじく、極めて上物であったのは間違いない。そしてその物語にも大興奮だったわけだが、一方で、この映画が万人向けかというと、その難解な物語はかなりハードルは高いように思えた。しかしそれでも、わたしとしては、現時点における今年ナンバーワンに認定したいと思う。こいつはすごい。この作品を観ると、もう、Denis監督の次回作『BLADERUNNER2049』に対する期待がいやがうえにも高まりますな!! SONYよ、BLADERUNNERのパンフの判型がまーた変なサイズだったら許さないぞ。1982年のオリジナルのパンフ、貸してあげてもいいので、ちゃんと研究してくれ。頼むよマジで。以上。

↓ わたしは中学生の時、たしか臨海学校から帰ってきた翌日に、今は亡き東銀座に存在した「松竹セントラル」という映画館にチャリで観に行きました。いろんなVerがあるけれど、当然、劇場公開版が正典です。ファイナルカットじぇねえっつーの。

 というわけで、現在日本で出版されている『暗殺者グレイマン』シリーズの4作目、『暗殺者の復讐』を読み終わった。
 1作目『暗殺者グレイマン』の記事はこちら
 2作目『暗殺者の正義』はこちらの記事へ。
 3作目『暗殺者の鎮魂』の記事はこちらです。
 手抜きだが、前回書いたことを、はじめにコピペしておこう。
 何度も書いている通り、亡くなったTom Clancy氏から「ジャック・ライアン」シリーズのバトンを受け取ったMark Greaney氏によるこのシリーズの最大の特徴は、主人公コート・ジェントリーこと暗殺者グレイマンのキャラクターにある。彼は、妙に正義感があって、悪党しかその手に掛けないという「自分ルール」を持っていて、変にいい人過ぎるが故にどんどんピンチに陥り、血まみれになりながらなんとか勝利するというのがどうもパターンのようだ。冷徹なんだか、いい奴なんだか、もう良くわからないのだが、読者から見れば、その「自分ルール」故に、まあとりあえず応援はしたくなるという不思議な男である。そして最終的に事件はきっちり解決し、読後感としてはいわゆるカタルシス、すっきり感があって大変面白いとわたしは思っている。
 そしてこれも何度でも書くが、外見的な描写はあまりないのだけれど、わたしは彼のビジュアルイメージとしては、勝手にJason Statham兄貴か、Mark Strong伯父貴をあてはめ、絶対マッチョのセクシーハゲだと確信している。ピッタリだと思うな、たぶん。
  で、第4作目となる『暗殺者の復讐』である。
暗殺者の復讐 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2014-05-23

 もういきなりだけど、結論から言おう。シリーズで一番面白かった。
 もう、シリーズを読み続けてきた人ならお馴染みだが、この4巻目の冒頭時点で、主人公グレイマン=コート・ジェントリーは、4つの勢力から命を狙われる身だ。
 1)アメリカ合衆国政府(というよりCIA):グレイマンの出身国であり出身団体。だが、なぜShoot on Sight(目撃次第射殺=SoS)指令が出され、お尋ね者になっているか、その謎は明かされていない。
 2)シドという名のロシアン・マフィアのボス:2作目冒頭でのグレイマンのハンドラー(調教者=雇い主)。2作目で見事にグレイマンに裏切られた。超怒っている。
 3)ローラングループ:多国籍企業。1作目の敵。1作目でグレイマンにコテンパンにされたが、ラストでグレイマンを雇っていたはず(だが、どうも2作目にはいる前に喧嘩別れしたのか、シドに売ったのかよくわからない)。怒っている理由はもうわたし、良く覚えてません。
 4)マドリガルという名のメキシカン・カルテルのボス:3作目で、グレイマンと手を組む邪悪な男。最後にグレイマンに裏切られて激怒中。You Tubeに、絶対ぶっ殺してやるかんなー!! 覚えとけよ!! という動画をUPしてるアホな人。
 とまあ、こんな感じに、そこら中から命を狙われており、今回、物語は、ロシアのマフィアのボスであるシド暗殺作戦から始まる。グレイマンとしては、もう逃亡生活に疲れちゃっており、さっさとケリをつけられる奴から片付けちまおう、と思ったらしく(?)、最初のターゲットに選ばれたシドは、ま、当然もうアウトですわな。正確に言うと、敵の敵は味方というわけで、シドを殺したがっている連中もやっぱり多く、その「敵の敵」から依頼を受けたという設定だったと思う。しかしこの冒頭も、これまた非常に派手な、映像栄えしそうなオープニングアクションで大変読み応えアリである。
 しかしこの派手なアクションを、上空から無人機で一部始終観ている存在がいた。
 今回のメインの敵はコイツらで、その正体はCIAから業務をアウトソーシングしている民間軍事企業である。CIAが出来ない汚れ仕事を請け負う彼らの目的は、あくまでCIAが払う懸賞金であって、志的には高くはないし、やり方も汚い。いわゆるcollateral damage=副次的損害=全然無関係な人々が巻き添えで死ぬこと、もまったく厭わない、純粋なバウンティハンターどもだ。
 というわけで、シドをぶっ殺した次に、そいつらがやってくる。が、グレイマンを救う謎の男が暗躍し、窮地を脱することに成功する。ただし、読者的にはその正体は別に謎ではなくて、コードネーム「デッドアイ」という、グレイマンを追うバウンティハンター企業に属する独行工作員で、その身分は最初から明かされていて、あくまでも、その「目的」が謎となっている。何故助けたのか、グレイマンに接近した目的は何なのか。
 まあ、普通の読者なら、このデッドアイがグレイマンの敵であることはさっさと分かるとは思うが、どうしてまた、味方を殺してまでグレイマンに接近してくるのかが良くわからない。この点は、実はわたしは結構イライラした。非常に回りくどく慎重で、そしてそれ故に、我らがグレイマンは結構あっさり信用しかけてしまうのだ。
 しかし……ホントに何度でも言うけれど、グレイマンはイイ奴過ぎるんすよね……。敵に決まってんだろうがと読者は分かっているのに、うっかり信用しそうになるグレイマンは、ホントあんた、今まで良く生きてこられたな……と心配なレベルである。もちろん、今回はデッドアイが実に巧妙なクソヤローだったので仕方ないとはいえ、結果的にまたしてもグレイマンは満身創痍であり、血まみれである。
 ただ、デッドアイの正体が判明してからの後半は非常に良かった。今回はイスラエルのモサドもこの騒動に介入してくるし、そのモサドの女性が非常にキャラが立っていて、大変良かった。だがしかし! ちょっと展開としては、「ジャック・ライアンシリーズ」の、Greany氏による最新作『米朝開戦』における、フランス人エージェントの彼女と同じ運命をたどってしまったのが極めて残念であった。そしてラストは、またもやグレイマンのいい人ぶりが自らを救うという、情けは人のためならず的な展開となって、クソヤローを無事にぶっ殺すことが出来たし、エンディングのエピローグではとうとう、グレイマンIn ワシントンDCで、ついに次の巻ではシリーズ最大の謎に挑むのか!? という前触れまで描いてくれて、大変楽しめる作品であったと思う。
 しかし、やっぱりグレイマンクラスの男でも、モサドだけはヤバイという認識なんですな。また、今回は民間軍事企業のハイテクチームが大活躍して、結構簡単にグレイマンは居所がバレることになる。顔認証はテクノロジーとしてもはやお馴染みだけれど、「歩容」という言葉があるんですなあ。つまり、歩き方、歩く癖、を記憶させておいて、世界各国の監視カメラ映像から、人物を特定する技術なのだが、確かにそういう技術もあるんだろうと想像は付くものの、相当膨大なデータだろうし、作中でも相当な数の「疑わしい候補」が出てきてしまうけれど、現代の世界の諜報業界(=インテリジェンス)においては実用化されてるんだろうなあ、という気はする。また、本作では「ドローン」も大活躍し、グレイマンを追い詰めたりするわけで、こういったいわゆるハイテクガジェットは、確かにTom Clancyの後継者に指名されたGreany氏の本領発揮というところなんだろうと思った。
 しかし、重ね重ね、モサドの女性の残念な運命はもったいないというか、実際悲しい結末だった。『米朝開戦』でもそうだったけれど、このGreanyという作家は結構キャラを使い捨てちゃう人なんですかね? だとしたら、ちょっとファンとしては残念だなあ、と思いました。ともあれ、物語はシリーズで一番面白かったと思います。また、まったくどうでもいい話ですが、今回の敵、デッドアイは、わたしの脳内では、何故かずっとJeremy Renner氏の顔が浮かんでいました。MCUで言うところのHawkeyeのあの人です。彼は『Mission:Impossible』シリーズのレギュラーにもなったし、「ボーン・シリーズ」番外編の『The Bourne Legacy』では主演を務めていて、なんか不敵な頭の回る凄腕工作員ということでこの人が頭に浮かんだのだろうか? それとも、単にDead EyeとHawkeyeと音的に似てただけかな? 自分でも良くわかりませんが、皆さんの頭には誰が浮かんだか、教えてください。しかし、グレイマンがハゲ・マッチョであることはわたし的には譲れないところですw

 というわけで、結論。
 「暗殺者グレイマン」シリーズ第4作『暗殺者の復讐』は、ちょっと中盤イライラするけれど、大変面白かった。シリーズを読んで来た方は、必読だと思います。そして、シリーズ最新作『BACK BLAST』は、もうUS本国では発売になってますので、早川書房さんの翻訳が発売されるのを楽しみに待ちましょう。以上。
 ★2016/06/30追記:さっすがオレたちの早川書房!!  新刊の告知がされてました!!!
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

 まだ書影はないようですが、あとチョイで日本語版が出ますね!! ホント、早川書房は分かってらっしゃる!! 今度は上下本みたいすね。楽しみ!!!



↓ くそう……我慢できないから買っちまうか……。あ、Kindle版はあさって発売だ!!
Back Blast (English Edition)
Mark Greaney
Sphere
2016-05-19

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