ちょっと前に、予告編をWeb上で観て、おっと、こいつは面白そうだ、と楽しみにしていた映画がある。しかし、どういうわけか公開スクリーン数がやけに少なく、さっき公式サイトで数えたところ、日本全国で50もないようだ。こういう映画は、都内だと確実に混雑するので、そういう時は郊外のシネコンの朝イチの回に限る、というわたしの鉄則が働き、まずは配給のSONY PICTURESに対して軽くチッと舌打ちしてから、今日は朝8時に家を出て、家から15㎞程離れた郊外のシネコンまで車をぶっ飛ばして観てきた。
 その映画のタイトルは『BABY DRIVER』。ビートに乗せたクライムアクションと言っていいだろう。はっきり言ってそこはかとなく漂うシャレオツ感が鼻につくが、物語というよりもキャラクターがとても魅力的で、大変楽しめる映画であった。

 まあ、物語としてはだいたい上記予告のとおりだ。主人公ベイビーは凄腕の「逃がし屋」である。常に音楽を聴く彼は、仕事中もガンガンに音楽をかけまくって車の運転をするのだが、10年前のまだガキの頃、麻薬が積んであった組織のボスの車を、それと知らずに盗んで逃げ回り、車ごと麻薬をお釈迦にしたことがあって、ボスは怒るというより感心し、許してやるも麻薬の代金は返せ、というわけで借金を背負っている。その借金返済のために、ボスが手配する強盗の運転手を務めている(というような過去が、いかにも説明文的なセリフで語られた)というわけだ。そして彼は、上記予告にある通り、幼少期に事故に遭い、両親は死亡、以来耳鳴りがするために常に音楽を聴いている、という設定になっている。彼は現在、里親のおじいちゃん(しゃべれないため手話で会話する)と暮らしており、さっさと逃がし屋稼業もやめたいと思っているのだが、最後の仕事を終え、借金完済、自由の身になったと思いきや、超絶ドライビングテクニックを持つ彼をボスは手放すわけもなく―――てな展開のお話である。
 凄腕の逃がし屋というと、真っ先に思い出すのはRyan Gosling氏主演の「DRIVE」だが、主人公が寡黙でほとんどしゃべらない凄腕運転手、という共通点以外は全然別物であった。なによりも、主人公を含めてキャラクターが本作の方がもっとわかりやすく、役者陣も豪華で、シリアスで暗い雰囲気のお話だった『DRIVE』よりもずっと明るい(?)空気感はあると思う。ラストも、アレは明確なハッピーエンドと言っていいだろうし。
 本作は、その物語というよりもキャラクターがすべてなので、軽くキャラ紹介をしつつ役者のこともまとめておこう。以下、結末に至る完全なネタバレを含むと思うので、気になる人は読まないでください。
 ◆ベイビー:演じたのはAnsel Elgort君23歳。彼の映画デビュー作はリメイク版『Carrie』なんですな。わたしは『Divergent』も観たし『The Fault in our Stars(邦題:きっと星のせいじゃない。US版セカチュー的な難病ものラノベ)』も観たので、良く知った顔であるが、彼はイケメンと言っていいのか実に微妙な感じであろう。Ansel君は、とにかく肌がつるっとしていて、若いというか、まさしくBABYな感じがあふれていて、本作のキャラにぴったりだったと思う。もちろん本作の”ベイビー”という名はあだ名(?)で、本名は一番ラストにチラッと出て来るけど忘れました。作中で何歳という設定であったのか、不明。オープニングアクションの、赤いSUBARU WRXをかっ飛ばすシーンはすごい迫力であった(ま、Ansel君自身が運転しているわけじゃないですが)。本作では、まだまだガキ、ということで、犯罪にはもちろん積極的にかかわりたくないし、殺人なんて、と思ってはいるものの、一目ぼれした女子のためなら犯罪者まっしぐらな道を決断も下すあたりは実にお子様なキャラであろうと思う。いつも人の話を録音していて、その音源からオリジナルの歌を作るのが趣味、というのが変というか面白い。しかし、本作はほぼ全編アトランタで撮影しているようなのだが、アトランタって、一応US国内では大都市だろうに、あんなに簡単に大金強奪の強盗が発生するもんなのかなあ? そのあたりの感覚は正直良く分からんす。つーか、やっぱり銃は規制されるべきでしょうな。まずはそこからUS市民は考えてほしいものだ。
 ◆ドク:組織のボス。演じたのはオスカー俳優Kevin Spacey氏58歳。いつも通りの貫禄たっぷりなボスで、警察すらも子飼いにしているような影響力を持っているらしい。だったら強盗なんてちゃちな犯罪を指揮しなくてもいいのでは……という気もする。いずれにせよ、ベイビーとの約束をあっさり反故にするような冷徹なBADGUYであると同時に、どうもベイビーをホントに可愛がっているかのようなGOODGUY的雰囲気もあって、Kevin氏の持つ、イイ人っぽくて悪い人、あるいは悪い人っぽくていい人、という雰囲気にぴったりであったと思う。
 ◆バッツ:演じたのはこれまたオスカー俳優Jamie Foxx氏49歳。やっぱりこの人の演技は上手いんだよなあ……完全に役者としての格が上というか、まあ貫禄と余裕たっぷりな演技ぶりで、殺人を平気で犯すような、キレててイカレた男として、ベイビー君を威圧しまくっていたと思う。まさかあんな最期を迎えるとは……というある種あっけない退場となる。ラストは彼が最後までベイビー君を追い詰めるような展開かと思ってたら全然違ってました。
 ◆バディ:演じたのはJon Hamm氏46歳。ベイビー君とは何度か仕事をしたことがあるらしく、最初からベイビー君の腕を信頼している男。インテリ風で、結構ベイビー君をかばうような言動もあって、イイ奴かと思ってたら……この恨み晴らさでおくべきかと最期までベイビー君を追う執念を見せる。Hamm氏に関しては、わたしが過去に観た中では、結構多くの作品でちらほら出ていたみたいだけど、ほぼ覚えにない。どうもTVの方の活躍の方が有名みたいすね。おっさんだけどなかなかのイケメンでしょうな。若干、Jean Reno氏風なチョイ悪オヤジ的な風貌です。
 ◆ダーリン:演じたのはEiza González嬢27歳。大変お綺麗なメキシコ美女。歌手活動もされている方のようだが、わたしは全然知らない方であった。本作のダーリンというキャラは、バディの彼女で、常にバディといちゃついている設定で、やっぱりベイビー君の腕を信頼して、時にはベイビー君をちょっとからかうような、セクシーなお姉さん、という感じだったので、この女子もイイ人かと思いきや、いざとなれば警官に向かってバンバン銃を撃つおっかないお姉さんでした。
 ◆グリフ:演じたのはJohn Bernthal氏40歳。この人は、TVの『WALKING DEAD』が一番有名かな。あとNetflixでのマーベルヒーロー『THE PUNISHER』のお方ですな。映画では、結構な数の作品にちらほら出てますね。本作では、ベイビー君が気に入らなくて何かといちゃもんをつけてくる男として出演。あまり大した役ではないです。
 ◆デボラ:演じたのはLily James嬢28歳。ダイナーの制服がウルトラ似合っていて可愛い! ベイビー君との運命的な出会い(?)で事件に巻き込まれていく女子を好演。2015年の『Cinderella』でも大変可愛かったですが、本作のデボラ役も大変良かったと思います。
 とまあ、メインキャストとメインキャラは以上かな。最期に監督のことを書いて終わりにしよう。本作の監督は、何かと話題(?)のEdger Wright氏43歳。わたしは、恥ずかしながらこの監督の作品を一度も観たことがなく、話題となったデビュー作『Shaun of the Dead』も見損なったったままである。わたしにとって彼の名前は、わたしの大好きなMCU作品『ANT-MAN』の監督を途中で降板した男としての方がお馴染みだ。前々から、この監督が撮った作品を観たいと思っていたので、今回ようやくそれが叶ったわけだが……確かに、オープニングアクションが終わったのちの、ベイビー君が軽やかに街をふらふらしながらコーヒーを買って帰る、という5分近い(?)長回し一発撮りは凄かったと思う。わたしはそのシーンを観て、なるほど、Edger Wrightとはこういう腕の立つ監督なんだな、と初めて認識した。ずっと前から、わたしはこの監督がわたしの愛するAnna Kendrickちゃんの元カレだということだけで、大嫌いだったのだが、本作を観て、なるほど、監督としては……認めたくはないが腕は確かなようだな、と思った。本作は、どうも上手く説明できないのだが、ガンガンに響くロックサウンドがキャッチ―なのかな、とにかく、どことなくシャレオツ感があって、本来のわたしなら好きになれないような空気感が若干漂っているのだが、意外とまっとうなエンディングはハッピーエンドと言えるだろうし、なにより、ベイビー君のある意味まっすぐな正義感というか、まっとうな行動に敬意を表して、面白かったと絶賛することとしたい。

 というわけで、結論。
 昨日から公開となった『BABY DRIVER』を観たいと思ったら意外と公開規模が小さく、仕方ないので車をぶっ飛ばして郊外のシネコンへ観に行ってきたのだが、わたしとにとって初めてのEdger Wright監督作品は、積極的に認めたくないけれど、大変面白かった。最初は、きっと『DRIVE』を音楽に合わせて軽くした映画でしょ、とか思っていたのだが、なかなかどうして、キャラクターは大変良く描けているし、ちょいちょい現れる長回しもなかなかお見事で、完成度はかなり高いと思う。というわけで、この映画は大変おススメです。近所で上映していないところも多いと思うけれど、これは劇場で観る価値のある映画だったと思う。以上。

↓ こちらは、とにかく主人公が超寡黙でセリフが超少なく、超COOLです。そして後半かなりのヴァイオレンス展開もあって、初めて観たときは北野武作品に似ていると感じました。こちらも大変面白いです。