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 最近、ガンアクションの派手な映画がちょっと流行りなのだろうか。いや、そんなのはずっと昔からあるのだから、別に最近の流行りじゃあないか。強いて言うなら、最近流行っているのは、容赦ない血まみれアクション映画、というべきかもしれない。
 いわゆる「レーティング」というものが映画やTV放送には存在していて、それは法律ではまったくなく、単なる業界内の自主規制ルールなわけだが、要するに、やれ暴力だの、やれ猥褻だの、といった文句を言う人々に対して、いやいやいや、我々はちゃんとそういうのをチェックしてますよ、だからこの映画は15歳以上は観ちゃダメよと警告してまっせ、という言い訳、あるいは自己防衛をするもので、とにかく、予防線を張っているという腰抜け的な意味で、なんか興ざめなものである。はっきり言ってそんな規制の外にいる我々おっさんにはどうでもいいものだが、そういった規制によって、どうも一時期、映画やTVからは血が吹き出たり、あるいは女性のヌードをほとんど目にすることがなくなっていったような気がするけれど、ここ最近は、むしろCGの発達によって、手足がもげたり、銃で撃たれた時の血しぶきエフェクトも派手で、なんだかどんどん過激になっているような気さえする。
 というわけで、今日わたしが観てきた映画『ATOMIC BLONDE』という作品は、US公開時のレーティングはR15+である。だが、ここ日本においては特に指定なし、で公開されており、きっと中学生当時のわたしが観たら大興奮な、血まみれ&ヌードシーンアリの、スパイアクション映画であった。ただし、物語に関しては、正直わたしが勝手に想像していた物語とは全くの別物で、その点に若干驚きつつも、結論としては少々キレが悪いというか、どうも冗長?で、スッキリしない微妙作であった。うーん……たぶん、脚本的にやや凝りすぎ? のキャラ造形で、さらに現代時制と、数日前の事件の回想という枠構造そのものが若干ストーリーのテンポを悪くしているような気もした。結果、どうもわたしには「キレが悪い」ように感じたのである。
 以下、ネタバレに触れる可能性が高いので、気になる人は今すぐ立ち去ってください。

 というわけで、物語はほぼ上記予告のとおりである。ただし、映像は相当恣意的に時系列を無視してそれっぽいシーンを編集して作られており、セリフとシーンが別なものもかなりある。ちなみに、上記予告内で「Asshole(クソ野郎)」と主人公がつぶやくシーンは、本編では「Cocksucker」であった。
 ま、そんなことはともかく。本作の舞台となる時は1989年11月、場所はベルリンである。そう、かのベルリンの壁崩壊の数日前、イギリスMI6の諜報員がソヴィエトKGBに殺害される事件が起こる。東ドイツ(DDR)の秘密警察、通称シュタージにMI6やCIAの活動中のスパイの詳細が記録されたマイクロフィルムがもたらされ、それをシュタージに潜り込ませていた資産から受け取ることに成功したものの、KGBに奪われてしまったのである。しかしそのフィルムがモスクワへ運ばれては超マズイわけで、すぐさまMI6は、近接格闘にも長けた女スパイ、ロレーンをベルリンへ派遣、現地のMI6諜報員パーシヴァルと組んでそのフィルム奪還せよ、と指示するのだが、ロレーンのベルリン派遣さえもKGBには悟られており、到着したとたんにピンチに陥るのだが―――てなお話である。
 こういう流れは、わたしの大好きな海外翻訳ミステリーでは実にありがちで、実際わたしも大好物なのだが、登場する各キャラクターは、ほとんどが「実は彼・彼女は……」といった裏切りをしていて、素直に共感できるキャラクターがどうも少なかったように思う。何と言うか……しつこいぐらいにキャラの行動原理には裏があって、若干やりすぎのようにわたしには感じられた。
 わたしの好みとしては、小説であれば読者、映画であれば観客、の期待や信頼を裏切らないキャラクターが、様々なピンチを持ち前の技量と心意気で乗り切るようなお話の方が、やっぱり共感できるし、ラストもスッキリすると思うのだが、本作はどうもそういうわけにはいかず、行動も遅いし、それほど頭が切れるキャラでもないため、結構観ていてイライラする。ロレーンは、ベルリンへ出動する前に「誰も信頼するな」と言われて送り出されるわけだが、まさしく誰も信頼できない。そして、観客としては、実はロレーンさえ信頼できないのである。この、ロレーンの「実は……」が明かされるのは本当に一番最後なので、正しい観客としての態度は、「そうだったのか!」と驚き膝を叩くべきなんだろうとは思う。けれど、わたしは「なーんだ、やっぱりな」という気持ちの方が強まってしまい、若干がっかりしたことは記録に残しておきたいと思う。
 ただ、本作は、わたしとしては物語自体には上記のように文句を言わざるを得ないものがあったものの、演出や音楽、そして役者陣の熱演はかなり高品位で、映像としての見ごたえやカッコ良さ?はとてもレベルが高かったと思う。
 たとえば、主人公ロレーンを演じたCharlize Theron様がとにかくいちいちカッコイイ! のだ。これはもう間違いない。ロレーンはベルリンについて早々、迎えに来た二人の男がKGBであることを見抜いてぶっ飛ばすのだが(それが予告にある赤いハイヒールでボコボコにするカーアクション)、その背景にはDavid Bowie版の「Under Pressure」が流れていて、そういうアクションシークエンスにはほぼ必ず、当時のヒット曲が使われている。また、今回はTheron様の超絶な格闘シーンもふんだんで、しかもそのアクションシークエンスもやけに長回しな一発撮り、に見える編集がなされている。本当に一発撮りなのか、編集やCGによるマジックなのか良く分からないが、とにかく大迫力である。とりわけ、後半のスパイグラスというキャラを守っての大乱闘は凄い出来で、こういう点は大絶賛したい。
 だた、その反面で、ちょっとしつこいというか、なかなか格闘のケリがつかないのは、やや冗長にも感じられた要因なのかもしれない。まあ、女性なので攻撃が軽くて一発では効かず、とにかく相手が何度も立ち上がってくるので、リアルではあるのかもしれないな……そういう点は、普通の映画のように主人公の一発で相手がKOされるようなものの方がインチキ臭いかもしれないけれど……とにかくしつこいよ、もう! とも感じられた。
 というわけで、以下、主なキャラ紹介と役者紹介でまとめておこう。
 ◆ロレーン・ブロートン:演じたのは上記の通りCharlize Theron様。本作の主人公でイギリスMI6の腕利き諜報員。美しくカッコイイ。演技としてはもう文句なしのクールで危険な女性。どうやら、冒頭で殺害されるMI6の男とは、過去恋人だったらしい。その格闘スキルは超一流で、とにかく殴る蹴るのシーンが満載。ただし、若干頭の回転は問題アリかも……もうチョイ、すべてお見通しよ、的なキャラであってほしかった。そして本作では、Theron様は結構堂々脱いでました。おまけに、フランスの女性諜報員との百合Hシーンなんかもあります。しかしその正体はーーーラストに明かされます。
 ◆パーシヴァル:演じたのはJames McAvoy氏。ワーグナーのオペラ「Parsifal」や円卓の騎士の一人としてもお馴染みの名前ですが、実はわたし、このパーシヴァルがコードネームなのか本名なのか、良く分からなかった。そしてキャラクターとしても、彼の真の狙いは若干分かりにくかったように思う。MI6ベルリン支局の男でロレーンに協力しているように見えるが実は……な展開。そしてその実は……も、さらに実は……とミスリードを誘う複雑なキャラ。
 ◆デルフィーヌ:演じたのは、最近いろんな作品に出て売り出し中のSofia Boutella嬢。とにかく太くキリっとした眉毛が魅力的なフランス美女。あれっ!? マジかよ!? Wikiによるともう35歳だって。完全に20代だと思ってたのに! 今回彼女も脱いでおりまして、Theron様との百合Hのお相手が彼女です。フランスDGSEのベルリン支局所属(?)。大変セクシーな美女であったけれど残念な結末に。
 ◆メルケル:ロレーンを支援する現地工作員。わたしは彼もどこに所属している男なのか、若干良く分からなかった。ドイツ人であることは間違いないけど、東ドイツ人なのか西ドイツ人なのか、実はわたしには良く分かっていない。たぶん東ドイツ人で、西側のスパイをしているってことだと思うけど、どうなんだろう。演じたのは、Bill Skarsgård氏27歳。その名の通りスウェーデン人。彼は、2週間後に日本で公開となる『It』で、あのペニーワース(あの超おっかないピエロ)を演じているので、わたしとしては超注目です。
 ◆スパイグラス:東ドイツシュタージ所属、だけど西側のスパイ。演じたのはEddi Marsan氏。この人は、Robert Downey Jr.氏版の『Sherlock Holmes』でレストレード警部を演じた方すね。
 ◆エリック・グレイ:MI6幹部。ロレーンの上司。イマイチ使えない奴(?)。本作は、ある事件の当事者としてロレーンを聴取をしているのが現在時制で、その事件そのものが聴取中の回想として描かれる形式になっていて、チョイチョイ、この聴取側であるエリックが出てくる形になっているのだが、それが若干、物語のテンポを悪くしているように感じた。演じたのはToby Jones氏。まあ、特徴のある顔なので、結構いろいろな作品でお馴染みですが、そうだなあ、わたしとしては、彼はやっぱり『CAPTAIN AMERICA』に出てくるヒドラの悪い博士役が一番覚えてますな。
 ◆カーツフィールド:ロレーンの聴取に同席するCIAの男。作戦中、CIAはほぼ関係していないのだが、実は……という展開。演じたのはJohn Goodman氏。それこそそこらじゅうの作品に出ているベテランですな。

 最後に、監督についてメモして終わりにしよう。本作を撮ったのはDavid Leitch氏。もともとスタントマン→スタントコーディネーターとしてのキャリアが長い人で、数多くの作品に参加しているらしいが、監督としては、クレジットはされてないけれど、わたしの大好きな『John Wick』を共同監督した方だそうですな。単独監督作品としては本作が初めてだそうで、そのアクションはスタントマン出身だけに、大変見ごたえはあります。何と現在、『DEADPOOL2』を制作中だそうですね。

 というわけで、結論。
 実はわたしは、本作は『John Wick』女版、的な凄腕暗殺者が活躍する物語かと思いきや、意外と正統派なスパイアクションであった。しかし、キャラの行動が若干わかりづらく、ちょっと盛りすぎな脚本だったようにも感じ、観終わった後、何となくキレが悪かったな、と感じたのである。しかし、そのアクションや演出、背景に流れる音楽など、センスはかなり上質であったことも、また確かであろうと思う。でもなあ、わたしの好みではなかったかな……わたしとしては、『John Wick』のような単純一直線なお話の方が好きだし、もっと主人公には、何もかもお見通しだぜ的な頭のキレる人物像を期待したかったす。なので、結論としては、若干イマイチだったかも、というのがわたしの偽らざる感想です。以上。

↓ ジョンさんは最高です。早く「3」が観たいすなあ。


 日本における2013年の洋画興行において、おそらく業界関係者が一番驚いた作品は、なんと42.3億もの興行収入を上げた『TED』であろう。わたしも、こういう下ネタ満載のアメリカンギャグ映画が売れるとは全然思ってもみなかった。事実、 公開時は253スクリーンとやや小さめの規模で封切られ、3.2億、3.3億、2.98億と恐ろしく好調な週末興収を稼ぐに至って4週目からは373スクリーンにまで拡大され、その後も順調に興収を重ねたという近年まれに見る「後伸びヒット」をかました作品である。まあ要するに、当初はまったく期待されていなかった作品がグイグイ伸びたという非常に珍しい映画だ。
 監督したのは、Seth MacFarlane。いかにもモテそうにない愉快なおっさんだが、この『TED』はUS国内では2012年の6月公開で2億ドル以上の大ヒットとなり、2013年のアカデミー賞授賞式の司会を務めることとなった。しかし、生来の空気を読まないギャグ体質が残念ながら顰蹙を買い、本人ももう二度とアカデミー賞の司会はやらんと言っているようで、わたしもその年のアカデミー賞授賞式をWOWOWの中継で見たけれど、確かにひどかった。
 ま、そんなSeth MacFaelane氏だが、『TED』の大ヒットを受けて 調子に乗って制作した映画が『A Million Ways to Die in the West』(邦題:荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~)である。WOWOW放送を録画しておいた奴を、今日やっと観てみた。

 残念ながらこの映画は、US本国でも4313万ドルと、『TED』の5分の一程度しか稼げなかったし、日本でもまったく売れなかった作品である。あまりに売れなくてあっという間に公開が終わってしまったのでわたしもすっかり見逃してしまっていたのだが、改めて観てみて、なるほど、こりゃアカンと思った次第である。
 物語は、1882年アリゾナを舞台に、彼女に振られてふてくされて引きこもる羊飼いのまったくイケてないおっさん主人公が、街にやってきた悪党をやっつける話である。脚本的には特に見るところもなく、とにかくストーリーに関係ないギャグがそこらじゅうにちりばめられた、Seth MacFarlaneの、Seth MacFarlaneによる、Seth MacFarlaneのための映画であった。そのノリはまさしく悪ノリであり、ギャグもほぼすべてうんこ、SEX、人種差別的なもので、実に下品きわまる映画であった。別にわたしも下ネタに抵抗があるわけではないし、ギャグはギャグとして十分受け止めることのできる男だと思っているが、いかんせん、やりすぎというか、残念ながらまったく面白くないのが致命的である。
 この作品がWOWOWで放送されたのが1月4日なのだが、その日は放送をわたしは観ていたものの、開始19分で寝てしまい、おとといの夜、また観てみようと思って73分ぐらいのところでまた寝てしまい、ようやく今日、3度目にしてやっと最後までちゃんと見た。まあ、そんな映画です。
 この、Seth MacFarlaneという男は、脚本も書くし声優もやればアニメーター、歌手もこなすなど、恐ろしく才能あふれる男なのだとは思うが、ちょっとね……ちょっと無理です、わたしは。ただまあ、すべて確信犯としてやっているわけで、ファンはきっといるのだろう。実際、『TED』は大ヒットしたわけだし。まあ、去年公開された『TED2』は、US本国で8100万ドルに留まり、前作の半分以下に落ちてしまった。ただ日本では25億も稼いだのかな。それは非常に立派な数字である。ちなみにわたしは『TED』はそれほど面白いとは思っていないので、どうでもいいです。この人は。

 じゃあ、なんでわざわざ録画までして観たかというと、出演者がかなり豪華だからである。まず、主人公を振る元彼女を演じているのは、わたしが大好きな三大ハリウッド美女の一人、Amanda Seyfriedちゃんである。『TED2』でもヒロインを演じた彼女だが本作では、またひどい役で、彼女と言えばその大きな目がチャームポイントだが、「このギョロ目女が!!」とひどい言われようであった。そして主人公と恋に落ちて(?)拳銃のコーチをしてくれる女性を演じたのが、MADMAXのフェリオサでお馴染みのCharlize Theronで、本作でも非常に綺麗な美人さんであった。彼女は非常に良かったです。可愛くてカッコイイ。なんでまた主人公のようなイケてない男に恋に落ちたのかは全く理解できなかったけど。そして悪党を演じたのが、マスター・クワイ=ガン、あるいは戦うお父さん・ブライアン・ミルズこと、Liam Neeson氏である。しかしまた、なんでこの映画に出ることをOKしたんだろうか……と思うぐらいひどい扱いで、ケツ出しで失神するぐらいなら5万歩譲ってよしとしよう、だけど、そのケツにお花をブッ刺されて放置されるって……ここはさすがに笑わせてもらいました。そして、恋敵のイヤミな金持ちをNeil Patrick Harrisが演じていて、彼はブロードウェー・ミュージカルの活躍でも有名で、何度もTONNY賞授賞式の司会をしている男だ(2015年も彼でしたね)。本作では、これはたぶんミュージカルが元ネタなのでは? というギャグも多かったのだが、残念ながらわたしにはよく分からなかった。
 そのほか、カメオ出演でいろいろな有名役者が出ていて、おそらくはSeth MacFarlaneがそれだけUS本国では愛されキャラなんだろうな、ということは察することが出来た。チラッと、Back to the Futureのドク本人も出てくるし、今年公開の『DEAD POOL』でお馴染みのRyan Reynoldsも出てたし、ラストはJamie Foxxも当たり役Djangoの姿で出てくるし。まあ、そういう楽屋落ちめいたワイワイガヤガヤ感も、はっきり言って鼻につくと言うか、一人でよがってろ!! というわけで、わたしとしては冷める一方であった。

 というわけで、結論。
 『A Million Ways to Die in the West』、邦題『荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~』は、ちょっと日本人にはかなりのビーンボールで、悪球好きの岩鬼でも手が出せない、相当な大暴投であろうと思う。よって、普通のストライクゾーンの持ち主は、黙って見送るほうがよさそうだと思います。以上。

↓ 『TED』ならまだ普通の人にもかろうじて通じるんですが……。サーセン。『2』は観てないです。
テッド&テッド2 ブルーレイ・パック(初回生産限定) [Blu-ray]
マーク・ウォールバーグ
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2016-01-20

 

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