何度もこのBlogで書いている通り、わたしは40代のれっきとしたおっさんである。しかし、もう20年近く前になるのかな、仕事上での必要性があって、今現在いわゆる「ライトノベル」と呼ばれる小説作品にかかわり、せっせと読み続けたこともあって、今でも全く普通に「ライトノベル」を読んでいるわたしである。まあ、最近の作品はめったに面白い作品に出会わないけれど、おっさんのわたしが読んで面白いという作品がゼロではないわけで、中でも、『ソードアート・オンライン』という作品は最初に発売になった2009年からずっと新刊が出るたびに読み続けているシリーズのひとつだ。おそらくこのシリーズは現在のライトノベル界の頂点に位置するもので、世間的にも非常にに広く知られているだろうと思う。先日、わたしが最新(19)巻を電車の中で読んでいたら、隣の推定50代~60代ぐらいのおとっつあんが、同じ『ソードアート』の(13)巻を読んでいるのに気が付いて、すげえびっくりした。ま、それだけもう、かなり幅広い読者を獲得している作品である。
 というわけで、今日は劇場作品として公開となった『ソードアート・オンライン―オーディナル・スケール―』を観に行ってきた。実は今日わたしが一番観たかった映画『CELL』が午後から1回しか上映がないので(昨日の金曜日公開なのにもう1日1回上映!泣ける!)、ま、午前中はこれでも観るか、という気になったのだが、場内は当然10代と思われるKIDSばかりで、想像していたキモオタ的年齢不詳の方々はそんなにはいなかったすね。かなりの混雑ぶりで、ざっとチェックした感触では、週明け月曜日の興行ランキングで3位以内は固いと見た。※2017/2/20追記:週末ランキング堂々1位獲得!良かったすね!
 さてと。以下、物語の筋を書き連ねるつもりはないけれど、色々な意味でネタバレに触れる可能性が高いので、読む場合は自己責任でお願いします。
 
 ――とりあえず、わたしは上記予告を全く見ずに観に行ったのだが、仮に予告を観ていても、えーと、どういう話? と全く見当がつかなかっただろう。わたしがうすらぼんやり知っていたのは、今回はフルダイブVRが舞台ではなく、ARゲームがメインとなる、そんなことだけだ。
 なので、わたしが観る前に、えーと、どんな話だろう? とぼんやり思っていたのは、次の点である。
 1)AR……つまり拡張「現実」。てことは……?
 『ソードアート・オンライン』と言えば、完全没入型のVRゲームと現実のリンクが一番のキモであり、物語の舞台はほとんどがゲーム内、すなわち「VR=仮想現実」内で展開する。VRだからこそ、主人公のキリトくんは無敵で最強の男なわけで、現実世界ではただの高校生、たぶんわたしが一発殴れば鼻血を出してぶっ倒れるであろう生身の人間である。そんなキリトくんが、ARゲームでどう活躍するんだろう? というのがまず一番大きな疑問だ。ARゲームと言えば、最近では(と言ってもすっかり下火になってる気もするが)かのポケモンGO!を思い起こすと思うが、あれは、スマホの画面上で現実の風景にポケモンが登場して、とっ捕まえるゲームであり、プレイする人間は全くそのまま普通に現実世界にいる。えーと……てことは、どんなゲームなんじゃろか? 『ソードアート・オンライン』で出てくるフルダイブVRゲームというのは、ある意味映画『AVATAR』の状況に似ていて、プレイヤーはどこかで寝てる(睡眠しているという意味じゃなくて、横になって寝っ転がってるという意味)わけで、自分の体は別にある。しかし、ARだとそうはいかんだろう、だから自分自身の体を使うゲームなんだろうな、と理屈ではわかるのだが、観る前はイマイチピンと来ていなかった。
 2)タイトル―オーディナル・スケール―はどういう意味なんだ?
 わたしの英語力では、オーディナル、と聞いて、すぐにはぱっと思い浮かばなかった。最初、audinalというつづりかな、つまり音響が関係しているのか? とか、まるで見当違いの想像をしていたが、調べればすぐにわかる通り、Ordinalが正しく、これはつまり「順序」とか「序数」を表す言葉だ。FirstとかSecond、Third、の、あの序数ね。で、Scaleはスケール、目盛りとか階級とかのことだろうから、つまり直訳すれば「順序の目盛り」的な意味であろう。しかし意味やなんとなくのイメージはつかめても、やっぱりピンとこない。しかし、著者の川原礫先生は、自ら用いる英語表現に明確な意味を持たせる作家なので、間違いなく観れば意味が分かるんだろうな、と思って今日、劇場へ参上した次第である。
 で、結論から言うと、上記2点のわたし的ポイントは、観ればちゃんと分かる内容になっていた。まず、ARについては、わたしの予想通り、自分の体を使って、(あくまでARとして)街中に現れるモンスターを戦って倒すもので、剣や銃器を使う、AR版モンスターハンター的ゲームであった。これは、従来の『ソードアート・オンライン』とは完全に方向性が違い、実に興味深かった。そして、わたしの心配した通り、キリトくんは普通の高校生なので、当然苦戦する。剣技(=ソードアート=Sword Art)が使えなきゃ、まあ普通の剣道経験ありの子供だからしょうがないわな、そりゃ。なので、この点をどう克服するんだろうと思っていたのだが、基本的にはBATMAN的にもう一度剣道の特訓をする的シーンが10秒ぐらいあったので、えーと、つまりちゃんと体を鍛え直した、ってこと、か、と納得することにした。ラストバトルでは、ARからVRへ切り替えていつもの無敵剣士に戻るので、その流れはちょっと驚いたけど、アリとしたい。ただし、今回のライバルキャラが、ARだというのに超絶な身体能力を発揮してくるのは、これはどういうことだろう?と感じたが、どうやら黒幕から得た謎技術によってスーパー身体能力を発揮していたらしい。ええと、そういうことでいいのかな?
 そしてタイトルの意味も、その黒幕の話す内容から大体理解することができた。そもそも、いわゆるMMOゲームというのは、Massively Multiplayer Onlinegameのことで、日本語訳すれば大規模複数参加オンラインゲーム、のことである。まあ『ソードアート・オンライン』という小説においてはそれをVR空間で行うためVRMMOと呼ばれているわけだが、普通、MMOの場合は、プレイヤーの「レベル」が重要であって、レベルアップするにしたがって強くなるわけだ。そして同レベルのプレイヤーも数多く存在している。しかし、今回のARゲームでは、明確に設定される「ランキング」が重要らしく、ランキングを上げること、がゲームの目的らしい。ランキングが上がると、現実社会でいろいろな特典があったりするようで(たとえば飲食店のクーポンになったりとか)、そのランキング=序列、を測るものという意味だったみたい。これはわたしも結構ふわっとした理解なので、あまり自信はないです。まあ、何人が参加しているものなのか数字は説明があったような気がするけど忘れました。その割には、4桁~5桁ぐらいのランキングしか登場してなかったような気もする。てことは10万もいないのかな? よく分からんす。
 しかし、改めて考えてみると、このゲームをプレイするための「オーグマー」なるガジェットは、要するに同じ川原先生による別の作品『アクセル・ワールド』における「ニューロリンカー」のプロトタイプ的なものなわけだが……これ、外せばいいだけ、だよね……? おまけに、非装着者から見たら、相当、あいつらなにやってんだ?感があるよな……。作中ではもうほとんどすべての人々が装着しているような描写だったけれど、実際、こういうガジェットは、流行りものが大好きな、そして人と同じことをしたがる日本ではあっという間に広まるかもしれないすね。作品世界は2026年、9年後を舞台としているのだが、意外と今ある技術の延長線上で実現できるかもとは思った。ま、わたしはきっと買わないだろうけど。なんか、勝手にお勧めのケーキまで出される「便利な」世の中は、わたしが望む未来じゃあないだろうな、とわたしは強く思ったりもした。

 ところで。わたしは実のところ、本作を積極的に観に行くつもりは当初なかったのだが、とあるキャスティングを聞いて、これは要チェックだぜ、と思って今日の初日の第1回に観に行ったわけで、それは、日本が誇る二人(ホントは三人)のミュージカルスターが声優として出演することを知ったからである。わたしはミュージカルが大好きなので、神田沙也加ちゃんとプリンス井上芳雄氏の二人が出演すると聞いては、もう観に行くことは確実なのだ。
 で、実際その声優ぶりに関して言うと、まず、神田沙也加ちゃんは完璧だったと言ってもいいのではなかろうか。彼女が演じたのは、今回の物語オリジナルの、ARとして登場する歌姫役と、そのモデルとなった黒幕の娘役だが、まあとにかくうまい。歌も、どうやら5曲ぐらい歌ってくれる。わたしは、戦闘時に流れる彼女の曲をもっと前面に出してほしいのに!と思ったぐらいだ。もともと沙也加ちゃんは、オタクカルチャーにも理解がある人だし、ミュージカルで鍛えた歌声は、既に『アナ雪』でもお馴染みだけれど、今回も素晴らしかったと思う。彼女主演のミュージカルが今度あるのだが、やっぱりチケット獲るべきだったかもな……もう東京公演は売り切れなんだよな……わたしは1回だけ沙也加ちゃんをミュージカルで生で観たことがあるけれど、やっぱり可愛いしイイすね。大変お見事でありました。
 そしてプリンス芳雄氏だが、ズバリ、初めての声優挑戦であることを割り引いても、やっぱりまだ若干違和感あり、かも。彼が演じたのは今回の物語の、キリトくんと対決するクール(?)なライバルなのだが、チョッと背景的にも小者だったかなあ……。ただし、普段のミュージカルのように、決めるところはバシッと決めてカッコよく、この人、本気で声優の経験を積んだら相当凄いんじゃないかというポテンシャルは感じますな。そもそも芳雄氏は歌も芝居も抜群に凄い男なので、ぜひまた、声優にも挑戦してほしいと思う。つーかですね、芳雄氏を起用して歌わせないとは……その点だけ、ミュージカルファンとしては物足りなかったす。歌ってほしかった……!
 で、最後。上の方に(ホントは三人)と書いたのは、黒幕的存在を、日本ミュージカル界の大御所鹿賀丈史氏が演じているからである。ま、演じぶりは……ちょっとアレですかねえ……でも、本作は、エンドクレジットが全部終わったとに、30秒ぐらい(?)のおまけ映像がついているのだが、そこでの鹿賀氏の演じぶりは結構カッコ良かったと思います。でも、まあ、鹿賀氏を起用する意味はあんまりなかったんじゃないすかね。

 というわけで、全く取り留めないけど結論。
 『劇場版 ソードアート・オンライン―オーディナル・スケール―』は、シリーズを読んできたファンには大変楽しめると思う。まあ、全くモテない人間としては、相変わらずのキリトくんとアスナさんのアツアツぶりに、ぐぬぬ……と憤死寸前になることは間違いなかろうと思います。ま、わたしはシノン派なので、別にいいっすけど。今回、シノンはちょっとだけ活躍してくれますよ。そして、わたしがとても期待した神田沙也加ちゃんの声優ぶりは最高でした。でも歌が! わたしとしては歌をもっとちゃんと聞きたかった!!! そして、当然今後、「アリシゼーション編」のアニメ化を期待していいんすよね? あの、エンディング後のおまけ映像はそう受け取っていいんすよね!? 楽しみにしてますぜ! 以上。

↓ 最新刊発売中です。「アリシゼーション編」の「大戦後」のお話。面白かったす。