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 昨日は早めの昼食をとってから、一路有楽町へ馳せ参じ、ミュージカルの聖地でお馴染みの帝国劇場、略して帝劇へ行ってきた。理由はもちろん、現在帝劇で絶賛上演中のコイツを観るためである。
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 ジャニーズきってのミュージカル俳優として名高いKinki Kidsの堂本光一氏と、ミュージカル界のプリンスでお馴染みの井上芳雄氏のダブル主演作、『Knights Tale―騎士物語―』であります。まあ、結論から言うと、古臭いというとネガティブだが、ある意味様式美ともいえる非常にShakespeare的セリフ回しで、このBlogでも何度か書いたことがあるけど、わたしは日本語で読めるShakespeare作品をほぼすべて読んでいるので、なんか懐かしさも感じ、大変楽しめたのであった。そして、もちろん、光一氏&芳雄氏の歌は素晴らしいし、さらに言うと、二人のヒロインがもの凄く良かった! のである。いやあ、参ったすね。わたしは初めて上白石萌音ちゃんの歌を聞いたけど、この方は相当イイ! 全然知らなかったので、非常に驚いたっす。

 さてと。まずは物語からまとめると、二人の仲良しの騎士がいて(二人はいとこ同士)、同じ女性を好きになり、その取り合いで絆が壊れてしまうけれど、全く別の女子が片方の騎士を好きになって、まあ、結果めでたしめでたしになるというお話である。サーセン。超はしょりました。詳しくは公式サイトをチェックしてください。
 この物語は、Shakesperare作品を大抵読んでいるわたしであっても、実は全然知らなくて、こんな作品があることすら、情けないことに知らなかった。というのも、もともとGeoffery Chaucerの『The Canterbury Tale』(読んだことあるけど全然覚えてないす)の中の『The Knight's Tale』が原典だそうだが、どうやらこの作品の原作である『二人の貴公子』という戯曲は、ShakespreareとJohn Fletcher氏の合作だそうで、英文科の人なら常識かもしれないけど、そうでないわたしは恥ずかしながら全く知識がなかったのである。どうも、わたしがShakespeareを読みふけっていた1990年当時は全然日本で紹介されておらず、日本語訳も出版されていなかったみたいですな。しかし、わたしは今回舞台を観ながら、なんかこの話知ってるような気がする……という思いが離れず、さっき調べてみたらその理由があっさり判明した。そう、わたしの愛する宝塚歌劇で、一度上演されていたのだ。それは2009年のバウ公演、当時の月組の若手であった龍真咲さんと明日海りおさんの、世に言う「まさみり」時代に上演された『二人の貴公子』で、わたし、WOWOWで思いっきり観ていたのである。なので、さっき、そうか、アレか! と超謎が解けてスッキリしたのであった。あまりに懐かしいので、後ほどBlu-rayに保存してあるまさみり版も観てみようと思います。【2018/08/16追記:さっそく、まさみり版『二人の貴公子』を観てみたところ、大筋は同じでもエンディングはまったく違っていて、悲劇的エンディングだったので驚いた。原作に忠実なのはどっちなんだろうか? まあとにかく、まさおもみりおちゃんも若くて、大変結構なお点前でした。みりおちゃんが研7、この後すぐ『エリザベート』の新公でトート様をやる直前だったようです】
 というわけで、各登場キャラクターと演じた役者陣をまとめておこう。
 ◆アーサイト:二人の騎士A。テーベの騎士。敵国アテネに捕虜として連行され、牢獄の窓の外に見たエミーリアにひとめぼれ。後に彼は賠償金が払われて釈放されるも、森で出会ったダンサーたちに潜入し、アテネにとどまり、エミーリアの従者に。しかし残された親友との再会が悲劇を―――的な展開。演じたのはジャニーズの誇るミュージカルスター堂本光一氏。わたしは初めて生の光一氏のパフォーマンスを観た。一言で言えば、さすが、すね。歌もダンスもやっぱり一流ですよ。本作はShakespeare作品ではある意味お馴染みのギャグというか喜劇なわけで、意外なほど客席からは笑いが起こってました。光一氏はそんな辺りも余裕でこなしてましたね。お見事っす。ちなみに宝塚版で演じたのはみりおちゃんす。
 ◆パラモン:二人の騎士B。テーベの騎士。アーサイトと同じくエミーリアにひとめぼれ。ただし彼はずっと虜囚のままであり、ちくしょうおのれ、と思っていたところ、門番の娘がパラモンにぞっこんLOVEとなり、その手引きで脱獄に成功。そして親友アーサナイトとの決闘へ――的な展開。演じたのはプリンス井上芳雄氏。芳雄氏のパフォーマンスはもちろんいつも通り見事。喜劇もお手の物ですな。しかし、芳雄氏の歌い方は明らかに藝大で鍛えた声楽系で、光一氏の歌とのハーモニーは……どうだろう、合ってたのかな……その辺は観た人それぞれの評価にお任せします。わたしとしては……若干芳雄氏の声ばかり耳に入ってきたような気がする。宝塚版ではまさおが演じた役ですな。
 ◆エミーリア:アテネの大公の妹。二人の騎士に惚れられちゃう女子。演じたのは、元雪組TOPスター音月桂さん。わたしは宝塚時代の音月さんを何度も観ているが、まあ、やっぱり美しく、可愛いですよ。歌も素晴らしく、すっかり美しい女子に戻りましたな。とにかく、明らかに鍛えている体が素晴らしくキレイ。とりわけ、程よく筋肉の付いたほっそりした二の腕がウルトラビューティフル! 最高でした。あと、一つだけ、ショックなのは……エミーリアの台詞で「まあダメ男だけど顔はイイし」的な発言があって、ほぼ女性客9割の場内は笑いの渦でしたが、残念ながらイケメンに生まれなかったわたしは、ちぇっ、なんだよ! イケメンなら許されんのかよ! としょんぼりしたっす。まあ、しょうがないよね、それは。
 ◆牢番の娘:パラモンに惚れてしまい、脱獄の手引きをするが、パラモンはエミーリアLOVEであっさり振られてしまい、そのショックで一時気が狂ってしまうが、エミーリアの看護で正気に戻り、二人の騎士の決闘に割って入り――的な展開。演じたのは上白石萌音ちゃん20歳。わたしは彼女について、『君の名は』のヒロインの声の人でしょ、ぐらいしか知らなかったのだが、もうホントおみそれしました。超イイじゃあないですか! すっごいちびっ子(身長が座ってる芳雄氏と同じぐらいしかない!)のに、歌は猛烈にパワフルで、ダンスもすっごいエネルギッシュ! こういうある種のギャップは最強の萌えですよ! 足はサリーちゃんだし、腰のくびれもない、完全幼児体型だけど、この才能はホンモノすね。あまりにちびっ子なので、役が限定されちゃうかもしれないけど、今後、大人になって幼児体型も解消されていくことでしょう。彼女の今後には、マジでチェックが必要ですな。またその素晴らしいパフォーマンスを観たいものです。なお、宝塚版では蘭乃はなちゃんが演じたようです。後でチェックしてみよう。【2018/08/16追記:チェックした結果、蘭はなちゃんが月組時代、たぶん研4ぐらいか? 大変可愛かったす】
 ◆ヒポリタ:元々アマゾン族(?)の女性だが、ある意味虜囚としてアテネの大公の嫁に。物語上のキーキャラの一人。演じたのは、子役時代のロビンちゃんでお馴染み島田歌穂さん。歌穂さんは何歳なんだろうな……全く謎だけど、まあ綺麗ですよ。顔が小さく、非常なる美人です。そして歌ももう圧倒的存在感で、ソロで歌い出すともう場を支配しますな。お見事でした。
 ◆シーシアス:アテネの大公。演じたのは、Cube三銃士Non-STARSのメンバーでお馴染み岸祐二氏。この人は元々「激走戦隊カーレンジャー」(1996年だからもう20年以上前か!)のレッドでデビューしたお方で、声優としても様々な仕事をされているお方だし、ミュージカルアクターとしても有名人だが、わたしは今回初めて生のパフォーマンスを観た。ゴツイ体と迫力のイケボイスはさすがすね。大変カッコ良かったと存じます。
 とまあ、こんなところかな。あ、あと一つ。冒頭の「三人の王妃」が歌うハーモニーがすごく綺麗で、この三人は相当デキル方々だぞ……と思って、帰って来てパンフをチェックしたところ、TVのカラオケバトルでお馴染みの七瀬りりこさん、レミゼなどのミュージカルでお馴染みの青山郁代さん、折井理子さんのお三方だったようで、なるほど、さもありなん、と納得の実力者であった。お三方は多くの場面でコーラス的に歌っておられて、非常にお見事なハーモニーであったと思う。
 ところでわたしは今回、東宝のナビサーブでチケットを普通に申し込んで普通に買えたのだが、どうやらチケットはかなり獲るのが難しかったようで、先日わたしのヅカ師匠の美しきお姉さまに、おれ、今度帝劇で『ナイツテイル』観てくるっす、と軽~く報告したところ、「な、なんですって! わたしはナビサーブは落ちたし、光一君のファンクラブ経由でも獲れなかったのよ!」とすごい勢いで話し始めたので、あ、じゃあ、一緒に行きましょうよ、まだ誰も誘ってないすから、師匠なら大歓迎っす、というわけで、いつも宝塚歌劇のチケットを獲ってもらっている恩返しができて、その点でも良かったす。

 というわけで、結論。
 現在帝劇にて絶賛上演中の『KNIGHTS TALE―騎士物語―』を観てきたのだが、主役の二人である堂本光一氏と井上芳雄氏のパフォーマンスは、もちろんのこと文句なく素晴らしく、ブラボーであった。そして、わたしがとにかく素晴らしいと感じたのは二人のヒロインで、元雪組TOPスターの音月桂さんはすっかり美しい女性として、歌も芝居も素晴らしく、また体つきも明らかに鍛えていてとてもBeautifulであった。そしてもう一人、弱冠20歳の上白石萌音ちゃんは、わたしは全く知らなかったがこれまで舞台経験も多く、その非常にちびっ子&幼児体形BODYからは想像の付かないようなパワフルな歌と、エネルギッシュなダンスは観ていて感動的ですらあった。あれっすね、完全にわたしは、頑張る娘を見守るお父さん的まなざしで観ていたように思う。いやあ、素晴らしい女優ですよ彼女は。そして、書き忘れたけど、本作はオーケストラに加え、和太鼓&三味線&横笛も非常に印象的な使い方をしていて、特に和太鼓のビートがすっげえカッコ良かったす。ラストの決闘シーンの二人の騎士は、鎧武者のような衣装だったし、そこはかとなく漂う「和」のテイストは、演出としてとても良かったと存じます。一言でいうと、最高でした。以上。

↓これか……読んでみたくなったすね。面白そうす。
二人の貴公子
ウィリアム・シェイクスピア
白水社
2018-03-20

 このBlogで何度か書いている通り、わたしは学生時代に19世紀ドイツ演劇を専攻していたのだが、当然のことながらShakespeareやフランス喜劇、ロシア戯曲なども、日本語で読めるものはかなり片っ端から読んでいる。実のところ、わたしが真面目に勉強していたドイツ演劇よりも、面白い作品はよそにあって、やっぱりShakespeareは確実に別格であろうと思う。わたしは中でも『Henry IV』が一番好きなのだが、Shakespeareは喜劇も面白く、中でも『As you like it』、日本語タイトル「お気に召すまま」も、とても面白かった記憶がある。
 記憶がある、と若干逃げた表現をしたのは、実は正直に自白すると、もう細かいことは憶えていないからだ。何度も読んでいるわけではなく、この「お気に召すまま」は1回しか読んでいないので、主人公のおてんばな女子が男装して大活躍する、ぐらいは憶えているけれど、細かいことはすっかり忘れている。今、わたしの本棚を漁ってみたところ、わたしが持っている岩波文庫版の『お気に召すまま』は1989年11月発行の49刷であった。うーん、もう27年チョイ前か……なんてこった、そりゃあオレも鼻毛に白髪も混じるわけだよ……やれやれ。
 というわけで、今日は日比谷のシアタークリエで上演中の『お気に召すまま』を観てきた。何故かといえば、作品が好きだからでは決してなく、単に、主演がわたしが愛してやまない元・宝塚歌劇団星組のTOPスター、LEGENDこと柚希礼音さん(通称:ちえちゃん)であるからだ。ちえちゃんがミュージカルではなく、普通の、しかもShakespeare劇に出る。そりゃあ、わたしとしては観に行くに決まっているのである。当然というか、もはや義務であろう。そして、観終って思うのは、やっぱちえちゃんは可愛いなあ~、という完全に単なるおっさんファンとしての当たり前な感想であった。かなり女子も板についてきた(?)ちえちゃん。最高でした。

 たぶん、世の中的に、ちえちゃんと言えばまずはダンス、そして歌、というわけで、芝居はその次、なイメージというか評価ではなかろうか? いや、どうだろう、わたしだけかもしれないな、そう思っているのは。いずれにせよ、実はわたしは今日観に行く直前まで、今回は『お気に召すまま』をミュージカル仕立てにしてあるのかな? と盛大な勘違いをしていたのだが、全くそれはわたしの勘違いで、実際、全く普通のストレートプレイであった。故に、ちえちゃんがダンスも歌ナシで芝居だけでShakespeareに挑戦すると知ったときは、かなり驚いた。でも、この挑戦は結果的に非常に素晴らしかったとわたしはうれしく思う。また、今日ちょっと驚いたのは、シアタークリエという中規模劇場で、セリフは生声であった。でも、これはちょっと自信がない。時に双眼鏡も使って観ていたのだが、全員(?)マイクを装着していたのは間違いない、が、明らかに声は舞台から聞こえてきていて、生声のように感じられた。ちえちゃんは、元々声が低く、正直、演劇の通る発声ではない。それでも、後半男装の麗人、という女子を元気にかわいらしくカッコよく、演じ切っていたと思う。
 前半の青いワンピースは可愛かったすね。まあ、華奢には見えなかったけれど、十分以上に女子ですよ。あのウルトラカッコイイ男役としての柚希礼音ではなく、明らかに女子のちえちゃんは、男のわたしから見ると実に可愛いと思う。ラストの純白ウエディングドレスも良かったすね。そしてカーテンコール(というべきかアレ?)で一曲歌ってくれたのは、まあサービスなんでしょうな。久しぶりのちえちゃんの生歌、堪能させていただきました。ちえちゃんは、今後もすでに次のミュージカル出演も決まっているし、ホント順調にキャリアを重ねてますね。今回の芝居だけ、という作品の経験は、そしてShakespeare作品ということですげえ多いセリフ量の芝居を演じ切った経験は、きっと今後につながる貴重な経験になったと思うな。ずっと応援していきたい所存であります。
 で。ちえちゃん以外のキャストでわたしが素晴らしいと思ったのは、やはりロザリンドの親友シーリアを演じたマイコさんだろう。妻夫木くんと結婚したことでも最近おなじみだが、わたしはこの人で一番強烈に印象に残っているのは、チョーヤの梅酒「さ~らりとした~梅~酒」のCMだ。まあ、すっげえ美人ですな。あと、草彅剛くんの映画『山のあなた~徳市の恋』も印象的でしたね。今回のシーリアは、わたしのマイコさんのイメージ(=物静かな和美人)とは違う積極的でよくしゃべる役で、その点もとても新鮮に見えたし、実際、ホントセリフ量も多くてお見事でした。
 それから、わたしは今日初めて知った方だけど、オーランド―を演じたジュリアン君もかなりいいですな。パンフレットによると、彼のお父さんがアメリカ人だそうで、10代まで日本で育ってアメリカに渡り、オフ・ブロードウェーでも活躍した方だそうだ。てことは、彼も歌えるんだろうな。ぜひ一度、彼のミュージカルを観てみたいなあ。かなりカッコいい。そしてかなり鍛えているようで、いい筋肉も見せてくれました。ちょっと名前と顔を憶えておきたいすね。
 キャストに関しては、1人わたしがよく知っている方が出演していた。それは伊礼彼方氏。彼をわたしが見るのは、たぶん10年ぶりぐらい。彼は、わたしが初めて見た『テニスの王子様ミュージカル』で六角中の佐伯虎次郎というキャラ役で出ていたので、わたしは知っていたわけです。あれからもう10年。きっと、不断の努力を続けていたんだろうなと思う。今では結構いろいろなミュージカルに出演しているので、名前はちょこちょこ見かけていたけれど、実際に観劇したのは「テニミュ」以来、今回が初めてだ。『エリザベート』でもルドルフを演じたこともあるんですな。今回は歌がないけれど、わたし、佐伯虎次郎の「ひとつやり残したこと」って歌が好きだったんすよね……。上手いかどうかはともかくw
 あと、そうだもう一人。Shakespeareの作品では、多くの場合「道化」という存在が登場して、意外と重要な役割を演じる場合が多い。そして「道化」は、実は作中人物の中で一番頭が切れて物事の本質を、主要キャラに代わってしゃべる場合が多いのだが、今回の『お気に召すまま』にも道化は出てくる。そして今回その道化役であるタッチストーンというキャラを演じたのが、芋洗坂係長だ。驚いたと言ったら失礼だけれど、滑舌もよく、芝居ぶりも楽しく、非常に良かったと思う。さすがというか、きっちり訓練された演技者として、技ありというか大変素晴らしい芝居ぶりだったと思った。この人、元々ダンサーなんすよね。お見事です。

 というわけで、もうなんか書くことがないので結論。
 今日観に行った『お気に召すまま』は、わたしとしてはちえちゃんを観に行ったわけで、その点では大変満足である。ますます女子化が進行しているちえちゃん。アリです。実にアリですよ。ただ、芝居として、時代設定を1960年代終わり(?)に変換したのは、我々日本人には全く通じないと思う。その点では、正直何だったんだという気がしてならない。我々日本人には全くピンとこないというか、ほぼ意味がなかったように思う。いっそ原作ママのコスチュームプレイでもよかったのかもしれないすね。まあ、変に現代化するよりいいのかな。結論としては、ちえちゃんは大変かわいい。それがわたしの一番言いたいことであります。以上。

↓ わたしが持っているのは岩波文庫版。定価310円でした。今は税込み540円だそうです。
お気に召すまま (岩波文庫 赤 204-7)
ウィリアム・シェイクスピア
岩波書店
1974-05-16

 わたしが大学および大学院で専攻したのは、ドイツの近現代演劇である。しかし、だからと言ってドイツの作品だけ読んでいればいい訳では全然なく、当然ギリシャ悲劇やフランス喜劇も読んだし、あくまで日本語翻訳で読める範囲だが、名作と言われる世界の戯曲類は、おそらくほぼ全て一度は読んだつもりでいる。そして散々作品を読んでみて思ったのは、やっぱりSHAKESPEAREはすげえ、つか、どう考えても一番面白い、という結論であった。
 シェイクスピア作品の中で、わたしの趣味としては、一番好きな作品は『Henry IV part 1&2』か『The Marchant of Venice』なのだが、いわゆる4大悲劇の中では、『MACBETH』が一番面白いと思う。 実は、わたしにとって『MACBETH』は、とりわけ思い入れのある作品なのだ。
 あれはたしか約25年前、戯曲を読んだすぐ後の頃だと思うけれど(さっき調べたら、わたしが持っている岩波文庫の「マクベス」は1990年発行の第54刷だった)、当時、銀座のプランタンの裏手の並木通りにあった名画座で、「黒澤明の世界」と題して、全作品を1週間ずつ、二本立てで延々上映する企画をやっていて、わたしも毎週足しげく通って全作制覇したのだが、その時に観た『蜘蛛巣城』という黒澤明監督作品は、まさしく『MACBETH』を原作とした戦国時代劇だったのである。まあ、その事実は有名なので、世の中的にはお馴染みだと思うが、約25年前にわたしは初めてそれを知り、観て、猛烈に興奮したのである。コイツはすげえ、つか、もうSHAKESPEAREの原作越えてるじゃん!! 黒澤すげえ!! と、当時の仲間に興奮して話をしたことを良く覚えている。
蜘蛛巣城 [Blu-ray]
三船敏郎
東宝
2010-02-19

 この、黒澤明監督によるスーパー大傑作『蜘蛛巣城』は、『MACBETH』原作だし、他にも、『』は『KING LEAR(リア王)』を原作としたウルトラ傑作、そしてわたしがロシア文学にハマったきっかけとなった『どん底』『白痴』など、25年前のわたしをとにかく興奮させた一連の黒澤映画は、今の若造どもにも観てもらいたい、傑作中の傑作だとわたしは考えている。実際わたしは、今の世の中には、映画好きを名乗る人間はやたらと多いが、黒澤映画を観ていない奴は一切認めないことにしている。まあ、わたしはこう見えて、心が狭いのである。
 というわけで、先日、世界イケメン選手権開催時にはTOP10に入るような気がするMichael Fassbender氏が、先日のSteve Jobs氏の次に演じるのはMACBETHだと聞いて、はあそうですか、とわたしが黙っていられるわけがない。な、何だと!? ほほう、そいつは要チェックだぜ!! というわけで、最新の『MACBETH』をさっそく観に行って来た。そして結論から言うと、この映画は相当上級者向けのMACBETHで、事前知識がないと、さっぱり意味が分からない出来栄えとなっていたので、ちょっと驚いたのである。

 物語はもう有名なので説明しないが、おそらく、『MACBETH』を上演あるいは映像化するに当たって、問題というか、どう表現するかポイントとなる点が2つあると思う。
 一つは、世界の文学史上最も有名な悪女の一人である、「マクベス夫人」をどういうキャラクターとして表現するかという点だ。 主人公マクベスより場合によってはクローズアップされる、「マクベス夫人」。彼女についてはいろいろな解釈があると思うが、マクベスを操ると言ったらちょっと言い過ぎかもしれないけれど、間違いなく本作では一番カギとなる人物である。
 そしてもう一つは、有名な「三人の魔女」とその「予言」をどう表現するか、という点である。本作に限らず、SHAKESPEAREの作品には幽霊とか亡霊とか、そういうSuper Natural要素が頻繁に出てくるが、『MACBETH』という作品には「三人の魔女(Three Witches)」が出てきて、極めて重要な「予言」をする。その予言にマクベスは翻弄され破滅に至るわけで、これもまた物語のカギとなる部分であろう。
 ちなみに、上記2点のポイントを知らない人は、恐らくこの映画を観ても、さっぱり分からなかったと思う。というのも、実に……なんというか、特に説明がないし、シャレオツ臭漂う雰囲気重視の映像で、どうも物語自体が薄いのだ。簡単な方から言うと、「三人の魔女」は、この映画では、まったく何者かよくわからない存在で、ビジュアル的にも魔女には見えないし、ただの良くわからない普通のおばさんたちなのである。しかも、これはわたしの記憶が失われているだけかもしれないが、なんと今回は「三人の魔女+謎の幼女」の4人組である。黒澤監督の『蜘蛛巣城』では確か一人の謎の老女だったように、改変するのは全然構わないのだが、なんというか、今回の魔女は全然雰囲気がなくて、ふらーっと現れては消える存在で、十分超常の存在ではあるけれど、もうチョイ、マクベスやバンクォウは驚いたり怖がったりしてもいいように思った。なんか、フツーに受け入れてしまっては、観客的には、あのおばさんたち何なの? と思うばかりで、どうにも物足りないようにわたしは感じた。知らない人が観て、通じたのかどうか、わたしにはさっぱり分からない。
 で、問題の「マクベス夫人」である。ほとんど彼女のキャラクターを説明するような部分がないので、おそらく、『MACBETH』を知らない人が観たら、一体この奥さん何なの? と訳が分からなかったのではないかと思う。そして『MACBETH』を知っている人なら、ズバリ、イマイチに感じたのではなかろうか。狂気が足りないし、迫力もない。マクベスを鼓舞するようなところも乏しい。元々、マクベスが結構クヨクヨ悩むところを、しっかりしろ!! とたきつけるようなキャラなのだが、ま、はっきり言って存在感が薄すぎるとわたしは思った。おまけに泣くとは!! こりゃあ、ちょっと問題ありであろう。
 わたしは、観終わって、一体こんな演出をした監督は何者なんだ!? と思ってパンフを読んでみたところ、まあ、ズバリ、ド新人と言っていいようなJustin Kurzelという男であった。自然光を基本とした撮影やそれっぽい雰囲気重視の画作りは、まあ、確かにセンスは非常にイイものがあるとは感じられるものだったが、キャラ付けという面での演出は、ちょっと相当イマイチだったと思う。とはいえ、パンフの解説を書かれている東大の教授はかなり高い評価をしていたので、まあ、所詮はわたしの好みに合わなかっただけなのかもしれない。何と言っても、わたしにとっての『MACBETH』は、完全に黒澤監督の『蜘蛛巣城』なのである。あの映画の、三船敏郎氏や山田五十鈴さんのギラギラした凄まじい演技と比較するわたしが特殊なのかもしれないので、そういう意味で、この映画は上級者向けだと冒頭に記した次第である。例えば、原作通りの台詞がきちんと使われていたり、その台詞を発する人物が巧妙に原作と入れ替わっていたりと、そういう点ではかなり真面目に作られている作品であることは間違いないと思う。
 では、最後に役者をちょっとおさらいしておこう。
 今回、主役のマクベスを演じたのは、前述の通り、Michael Fassbender氏である。まあ、イケメンですわな。わたし的には、この人は『X-MEN』におけるヤング・マグニートーなわけだが、カッコイイだけじゃなく、なかなか演技もいいですね、この人は。なので、今回大変期待して劇場へ向かったのだが……うーーーん……やっぱり、ちょっと雰囲気重視でマクベスっぽくはなかったかなあ。なんか落ち着いていて、もっと感情を爆発させて欲しいのだが、特に王座に付いてからの狂い方が全然足りないと思う。『蜘蛛巣城』での三船は、本当に凄まじいですよ。何度観ても最高です。
 あと、マクベスの友人で、マクベスに殺されることになるバンクォウを演じたPaddy Considine氏も、わたしは初めて見る方だったが、ちょっとイマイチかなあ……『蜘蛛巣城』でのバンクォウの役を演じたのは千秋実氏だが、亡霊となって現れるあのシーンは、三船の狂いぶりも強烈だけど、千秋氏の亡霊ぶりも最高です。完全落ち武者スタイルで登場する亡霊は、超雰囲気ありますよ。
 そして最後はやはりマクベス夫人を演じたMarion Cotillard嬢である。非常に美しく、雰囲気のある彼女だが、やっぱりなあ……迫力不足は否めないだろうな……一番のキーパーソンなのに……。『蜘蛛巣城』での山田五十鈴さんはホントにハンパなくヤバイ、完璧なマクベス夫人だったと思います。

 というわけで、結論。
 もし、この映画に興味がある人は、事前に原作を読んだことがある、芝居を観たことがある、なら、どうぞ行ってらっしゃいませ。いろいろ今までのマクベスと違うので、その点は面白く感じるかもしれません。が、そうでない人は、おとなしく原作を読んでからにした方がいいと思います。つーかですね、まずは『蜘蛛巣城』を観ることを強くおススメします。『蜘蛛巣城』の方が、100,000,000倍面白いですよ。以上。

↓ 本作の監督とMichael Fassbender氏とMarion Cotillard嬢が再度集まって撮影している次回作は、全世界で超売れてる有名なこのゲームを映画化するものです。

↓そしてこれがその予告編。ゲーム大好きなY君も、この予告を観て「これは期待できる!!」と相当興奮してました。

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