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 先日電子書籍で安くなっているのを見かけて買った本があるのだが、実は読み終わったのはもう1か月ぐらい前で、このBlogに感想を書こうかどうしようか、迷って放置していた作品がある。
 なぜ迷っていたか? ズバリ、のっけから結論を言うと、あまり面白くなかったから、である。しかしそれでも、やっぱりなにか書いておこう、と、さっきふと思い立った。特に理由はなく、単に、このBlogが自分のための備忘録である、という存在意義を思い出したからだ。
 というわけで、その本とはこれです。

 愛する早川書房から出ている、いわゆる翻訳ミステリーで、原題は『THE BONES OF YOU』といい、邦題として「誰がわたしを殺したか」という日本語タイトルがついている。わたしがこの本を買った理由は、わたしが愛用している電子書籍販売サイトで、早川書房、で絞り込み、リリース順に並べたときに上位に来ていたというだけで、ああ、最近出たばっかなんだ、ふーん……まあ、古典的なミステリーかな? とそのタイトルだけしか手掛かりがないまま、とりあえずポチって見た次第である。
 で、さっそく読み始めてみた。お話はごく単純で、そのタイトルの通り、誰がわたしを殺したのか、をめぐるお話である。わたしがタイトルから想像していたのは、「誰がわたしを殺したか」ということは、要するに「わたし」はもう殺されているわけで、てことは、「わたし」以外の誰かが殺人を捜査することになるのか、はたまた「わたし」が幽霊にでもなって捜査するのか、まあきっとどっちかなんだろうな、と思っていた。
 しかし実際は、殺された女子高生(=わたし)が幽体?的な存在となって幼少期から殺されるまでの決して幸せではなかった人生を語り、そして現世では、その殺された女子高生と少しだけ(ホントに少しだけ)仲の良かった近所の主婦が、その殺された女子高生の母親の心のケアをしつつ、あれこれと犯人は……と、結構見当違いの想像を巡らせながら、いろいろな人々の話を聞いて様々に思うところを語る、とういうように、語り手が交互に入れ替わって進むお話であった。ちなみにその主婦は、別に積極的な犯人探しをするわけではなく、ほんと、傍観者と言っていいような存在である。そして最終的には、女子高生を殺した犯人は当然明らかになるのだが、正直わたしとしては、ああ、やっぱりね、な道筋で、別にな、なんだってーーー!? と驚くほどでもなく、そりゃあ消去法的にはそうなるよな、まあその動機は最後の方までわからないけど、みたいな感想しか抱けず、なんか……要するにあんまりおもしろくなかったのである。
 一応、わたしのBlogにおいて恒例となっているキャラ紹介だけしておきます。
 ◆ケイト:殺された女子高生のご近所の主婦。ガーデンデザイナーで園芸のプロ(なんか作家本人もそうらしいです)。小さな牧場(?)も経営していて馬が大好き。娘と殺された女子高生が同級生で、たまに馬の世話の手伝いに、殺された女子高生も来ていたので、よく知ってる間柄。善意の人間、として描かれているが、わたしは結構、こういった、何も真相を分かっていないのに、人が良くて誰の言うことも信じかけてしまうような、いわゆるNaiveな人は苦手。非常に人の言うことに影響されやすく、危ないというか、むしろ無意識の悪意、すら感じる。わたしは最初、この人が犯人で、そのことを自覚してないのでは、とさえ思った。
 ◆アンガス:ケイトの夫。常識人。
 ◆グレイス:ケイトとアンガスの娘。頭は空っぽなゆとり女子高生→大学生。彼女は、殺された女子高生を友だちだと思っている。
 ◆ロージー:殺された女子高生。とにかく親が最悪だということが中盤以降判明する。ロージーから見れば、グレイスは同級生だけど別に好きでも何でもないというか、むしろ嫌いな人種なのでほぼ友達とは思ってない。また、ケイトに対しても、善良な人だとは思っていたけれどそれ以上ではなく心を開いた覚えはない。ケイトのところに通っていたのは、馬に魅かれただけ。
 ◆ジョー:ロージーの母親。主婦。依存体質の頭のおかしい女性。ドM。
 ◆ニール:ロージーの父親。世間的には有名なTVリポーター。金持ち。しかし本当の顔はPCにごっそりエロ動画をため込んでいるド変態。そして支配体質でドS。
 ◆アレックス:庭師。ロージーと付き合ってた疑惑アリ。しかし、実際にはロージーはアレックスのことはたいして好きではなかった模様。単に読者やキャラをミスリードするためだけの役割と言えそう。
 とまあこんなキャラクターたちが出てきます。
 わたしは、この小説を読みながら、この映画のことを思い出していた。

 そうです。かの『The Lord of the Ring』で世界を熱くさせたPeter Jackson監督による『The Lovely Bones』です。この映画は、当時14歳か15歳のSaorise Ronanちゃんがウルトラ可愛い一方で、お話は超暗く、そして後味も超悪い作品で、わたしも観終って、なんだかしょんぼりというか悲しくなっちゃったことをよく覚えている。この映画では、殺された少女が、自分を殺した犯人を知らせようと、幽霊的存在ながら非常に積極的に、家族に何とかコンタクトを取ろうとするのだが、犯人が恐ろしく陰鬱というかいや~~な野郎で、最後は犯人に対しては明確な裁きが下るんので、その点ではすっきりしてざまあ、なんだけど、結局殺された少女の遺体は見つからず、すごいエンディングが待ってるんすよね……。あれはつらい終わり方だったなあ……
 ともあれ、映画『The Lovely Bones』は、殺された女の子がとても魅力的で、その点はとてもいいのだが、今回読んだ小説「誰がわたしを殺したか」においては、ほぼどのキャラクターにも共感は抱けず、しかもなーんだで終わってしまい、結論としてはあまり面白くなかったとしか言いようがありません。

 というわけで、短いですが結論。
 いや、結論も何も、もうさんざん書いた通り、Debbie Howell女史による小説『THE BONES OF YOU』はイマイチでした。なんかこの作家は、もともと電子書籍で自費出版してたところを注目されて商業デビューした人みたいですね。やっぱり、ちゃんとした編集者がついてないと、こうなっちゃうんじゃないかしら。そういう意味では、以前読んだ「アトランティス・ジーン」同様、素人作家ですな。以上。

↓ たしかWOWOWで放送したのを録画して持ってたはず……久しぶりにちょっと観たくなってきた。
ラブリーボーン [Blu-ray]
マーク・ウォールバーグ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2012-01-13







 

 以前、わたしが敬愛する、とある女性の作家先生とメシを食っているとき、こんな話を聞いた。
 「男と女の恋愛に対する想いの違いを教えてあげる。女はね、【上書き保存】なの。そして男は【名前をつけて保存】するわけよ。分かるでしょ? 女はどんどん上書きして、心の中にはひとつの最新Verしか持ってないのよ。でも、男は、過去の恋愛をひとつずつご丁寧に取っておくでしょ。おまけに、たまに眺めてはその思いにふけって、ちょこちょこ勝手に修正して美化するもんだから、女はイラッとするわけ」 
 こんな話をしたのは、わたしが『母と暮せば』を観て大いに感動したと興奮しながら話していた時だったと思う。確か、「オレが死んだら、そりゃあ恋人には幸せになってもらいたいけど、でも、完璧忘れられるのも淋しいすねえ……」、なんてことを話しているときだったと思う。その先生は、ズバリ「ああ、そりゃあダメよ、女は忘れる生き物よ」みたいな話から、上記のことをわたしに話してくれたのだが、 わたしはこれを聞いて、なるほど、確かに、超思いあたるっすね、みたいなことを返したと思う。実に、頷けてしまったわたしだが、果たして世の女性たちも、そんなの当たり前だと肯定するのだろうか。
 というわけで、おとといの14日(木)の夕方、そろそろ定時になろうとしているときに、おっと、そういや今日は14日、トーフォーの日で映画が安く観られる日じゃねえか、と気がつき、帰りにぶらりと日比谷シャンテに映画を観に行ったわたしである。
 観た作品は、『BROOKLYN』。今年のアカデミー賞で、主演のSaoirse Ronanちゃんが主演女優賞にノミネートされた作品で、作品賞と脚色賞にもノミネートされた作品であり、わたしもずっと見たいと思っていたのだが、やっと日本でも公開になったものの、公開規模が小さく、こりゃあWOWOW待ちかな……と劇場へ行くことをあきらめかけていたのだが、トーフォーの日だし、ちょうど時間もぴったり合う、というわけで観てきたわけである。そして結論から言うと、大変素晴らしかった。実にいい作品で、全女性に強くお勧めしたいと思う。

 上記予告にある通り、US本国でも非常に評価は高く、わたしの評価も高かったのでお勧めしたい映画なのだが、まずは物語を簡単に説明してみよう。まあ、大きな流れは、予告編の通りである、が、もっと密度が高くて、もっともっと面白かった。
 舞台は1950年代。アイルランドの片田舎に住む主人公・エイリッシュは、優しく美しいお姉ちゃんのローズと、お母さんの3人暮らし。父は既に亡く、エイリッシュは、恐ろしくいや~なクソバアアの経営する雑貨屋で日曜だけ勤務するパート暮らしである。何故賢い彼女がそんなパートをやっているかというと、ズバリ当時のアイルランドには仕事がないためだ。お姉ちゃんはとある工場(?)で会計士としてきっちり働いていて、二人の仲はとてもいい。そんなエイリッシュに、お姉ちゃんが懇意にしているNY在住の牧師のコネで、NYで働き、NYに住むというチャンスが訪れる。母やお姉ちゃんと別れるのは本当に悲しいけれど、嫌味で悪意に満ちたクソババアのもとで働くよりずっといい。というわけで、エイリッシュは一大決心の元、NYへ旅立つ――というのが物語の始まりである。このお姉ちゃんとの関係がとても美しくて、船で出発するエイリッシュを見送るシーンでわたしは早くも泣きそうである。泣いてないけど。
 旅客機なんてない当時、もちろんのことながら船旅である。しかし慣れない彼女は思いっきり船酔いして、まあ大変な目に遭う。そこで出会う、洗練された女性がとてもいい。ちょっと世間慣れして浮ついた風でいて、実はとても面倒見が良くて、エイリッシュにいろいろアドバイスし、何とか船旅もマシなものになっていく。入管審査では、おどおどしたりしてはダメ、毅然とするのよ。咳は絶対にしちゃあだめ。隔離されて送還されるわ。なんて、いろいろ教えてくれる、「大人の女性」。この女性はその後一切物語に登場しないのだが、観ているわたしに非常に強い印象を残してくれたし、エイリッシュの心にも強く残ることになる。
 そしてようやく着いたNY、BROOKLYN。慣れない環境や仕事に、あっさりホームシックにかかり、すっかり笑顔が消えてしまうエイリッシュ。お姉ちゃんからの手紙にうえ~~んと泣いちゃう姿に、わたしはまたも一緒に泣きたくなったよ。悲しいつーか、エイリッシュの表情は、もう全世界の男ならば放っておけないものを感じるはずだ。しかし、それでも、4人の先輩同居人や寮母さん的な(?)おばちゃんたちは(女子たちはちょっと意地悪だったり、寮母さんも若干おっかないけれど)、根はとてもいい人たちだし、NYでの仕事を紹介してくれた牧師さんも大変善良で、学費を出してあげるから、ブルックリン大学の夜間コースで簿記の勉強してみたらどう? なんて、多くの人の善意に支えられて、エイリッシュも何とか頑張っていく。エイリッシュも、非常にド真面目な女の子なので、実に応援したくなる健気さだ。
 で。エイリッシュは、あるときから急に明るく元気になる。
 分かりますよね。恋ですよ、恋!
 寮母さん公認のダンスパーティーで知り合った、イタリアから移民でやってきた若者、トニーとの出会いがエイリッシュに再び笑顔を取り戻させるわけですな。そしてまたトニーもイイ奴なんですよ。エイリッシュの学校が終わる時間には頼んでないのに迎えに来てくれるような優しい奴で、そりゃあもちろん下心もあるんだろうけれど、一切そんな風は見せず、実に紳士的で、健全なお付き合いが始まる。そんなエイリッシュの変化を、職場(デパートの店員さん)のちょっと怖い主任的なお姉さんも、好意的に捕らえてくれて、実はかなりいい人だったことも描かれる。
 そんな風にして、エイリッシュのNY、BROOKLYN生活は徐々に彩りを取り戻していく。二人で海水浴に行くデートなんて、非常にほほえましくて良かったし、その水着選びも、職場の主任のお姉さんが張り切っていろいろ手伝ってくれたり、あるいは初めてトニーの家に行って家族と食事することになったときも、寮の女子たちが皆で、イタリア料理はこうやって食べるのよ、とパスタを食う練習まで付き合ってくれたりして、もう観ているわたしとしては、完全に田舎から上京した娘が東京で頑張っているさまを観ているようで、嬉しくて、ほほえましくて、大変もうニヤニヤしながら観ていたと思う。完全に変態ですが、暗いから誰にも見られてないと思うので大丈夫だったと思います。
 しかし――故郷のアイルランドから、突然の悲報がエイリッシュにもたらされる。ネタバレすぎるので何が起こるかは書かないで置くけれど、ネタバレを心配するにはもう手遅れかな。とにかく、その悲報で、一時アイルランドに戻るエイリッシュ。そして、そこで出会ったイケメンに、次第に心引かれていくわけで、端的に言えば、アイルランドに残るか、NYへ戻るか、という人生の岐路に立ってしまうわけだ。
 物語がこういう展開となったとき、わたしが観ながらずっと考えていたことが、冒頭に書いた「男と女の恋愛に対する想いの違い」だ。そうだ、女は「上書き保存」だった、と観ながらわたしは思い出したのである。なので、NYのイタリア男、トニーは振られちゃうのか? あんないい奴なのに? マジかよ……? やっぱり女は常に「最新Verの恋」ただひとつなのか……? と、もうなんだかわたし自身が振られた気分がして、ずーーんとしょんぼりである。
 最終的に、エイリッシュが採った決断は、書かないでおく。どちらを選んだかは、劇場で確認してください。ただ、彼女の決断が、とある外的要因によるものであったのではないか、ということには、わたし的にどうにもまだ整理できていない。もし、あのイヤな出来事がなければ、選択は変わっていたのだろうか? それは彼女にも、二人の男にもまったく関係のない出来事で、冒頭に出てきた故郷の嫌味なクソババアの悪意が彼女の決断に影響を及ぼしたのは間違いないのではないかと思うのだが、どうなんだろうか?
 というわけで、お願いです。わたしの周りの女性の皆さん。どうかこの映画を観に行って、女性の視点からの意見をお聞かせいただきたい。はたしてエイリッシュの決断は、女性から見たらどうなのか。その点は、おっさんのわたしには、どうしても、やっぱり分からんのです。いい悪いの問題じゃなくて。こういうものなんでしょうか、女心というものは。それが分からんから、わたしはモテないわけですか、なるほど。納得……したくねえなあ……。

 さて、物語の説明は以上である。
 とにかく、本作は、主役のSaoirse Ronanちゃんが抜群にイイ!! しょんぼり顔愛好家のわたしにはたまらないし、非常に繊細で、可愛らしくも美しく、わたしとしては最高級に褒め称えたい。彼女は、13歳でアカデミー助演女優賞にノミネートされた『Atnement』(邦題;「つぐない」日本では2008年公開)で世界的に有名になった女優だが、実はわたしがSaoriseちゃんを初めて観たのは、2009年公開の『The Lovely Bones』(邦題「ラブリー・ボーン」)だ。映画としては、タイトルからは想像できないほど重苦しい、キツイ映画だけれど、あの映画でわたしは、なんて綺麗な目をした女の子なんだ、と非常に驚いた。調べてすぐに、ああ、この娘がちょっと前に13歳でオスカーノミニーになった娘か、と知ったわけで、以来、Saoriseちゃんはずっと注目している。とにかく目が綺麗。吸い込まれそうな美しいBlue Eyesの持ち主で、世界最高の美しい瞳だとわたしは勝手に認定している。まあ、順調にキャリアを重ねているSaoriseちゃんだが、まだ22歳。若いですなあ。ただ、10代前半の超絶美少女から、順調に欧米人にありがちな大人顔になりつつあって、最近はさほど気になる存在ではなかったのだが(サーセン)、やっぱり芝居ぶりは若手No.1の評判は伊達じゃないすね。本当に素晴らしい演技でした。Sarioseちゃん自身も、アイルランドの人(生まれはNYだけど幼少時に両親の故郷のアイルランドに移住)で、ロンドンへ上京した時のことを思い出しながら、演技をしたそうですよ。
 ほかの役者は、正直あまりメジャーな方ではないようだけれど、本当に各キャラクターは素晴らしかったと思う。わたしは特に、エイリッシュのお姉ちゃんを演じたFiona Glascotさん、職場の主任のを演じたJessica Pareさん、そして、NYへの船中で出会う女性を演じた女優、役名を忘れちゃったから誰だかわからないんだよな……そもそも役名あったっけ? たぶん、Eva Birthistleさんじゃないかと思うけど、いや、この人は同じ寮に住んでいるバツイチの彼女役かな……ま、とにかく、この3人の女性がわたしはとても気に入った。みな、エイリッシュを助け見守る大人の女性で、とても心に残る演技だったと思います。特に、お姉ちゃんが本当に素晴らしい演技だったと思います。
 で、エイリッシュに恋する二人の男は、NYのイタリア男・トニーを演じたのがEmony Cohen君26歳。知らない役者だけれど、実に良かった。実にお前はいい奴だよ。イタリア訛りの英語も大変似合っていて、ちょっと今後注目したいすね。そしてもう一方の、一時帰京したアイルランドで出会うイケメン君を演じたのが、今や多くの話題作にちょこちょこ出て有名になりつつあるDomhnall Gleeson君33歳だ。『STAR WARS』のへなちょこ将軍ハックスや、『The Revenant』でのカッコイイ商隊の隊長、あるいは『Ex Machina』でAIロボ・ガールに心惹かれる青年など、多彩な芝居ぶりですね。どうやらちゃんと次の『SW』にも出るようだから、無事にスター・キラーから脱出していたようですな。わたしはまた、スター・キラーもろとも殉職しちゃったかと思ってたよ。今回の役は、とても物静かな紳士的なイケメンで、これまた今までとちょっと雰囲気が違ってましたね。お前も実にカッコ良かったよ。彼は今後、きっとどんどんいろいろな作品に出演していく注目株なんでしょうな。
 で、最後に監督と脚本をチェックして終わりにしよう。まず、監督はJohn Crowley氏。どうもアイルランドで舞台中心に活動してたっぽい人ですな。まだ映画もそんなに多くないすね。正直知らない人ですが、本作の演出は非常に、なんというのか、しっかりとしていて、堅実な感じですな。ちょっと名前は憶えておきたいです。そして今回は、脚本が非常に良くて、かなり名言と言うか、心に残るセリフが多く、大変良かった。その脚本を書いたのが、なんとわたしが去年絶賛した『Wild』(邦題:わたしに会うまでの1600キロ)を書いたNick Hornby氏だった。アカデミー脚色賞ノミネートも納得の素晴らしいDialogがとても多くて、もう、どのセリフを紹介したらいいか迷うけど、やっぱりこれかな。
 You'll feel so homesick that you'll want to die, and there's nothing you can do about it apart from endure it. But you will, and it won't kill you... and one day the sun will come out and you'll realize that this is where your life is.
 「あなたはきっと、ホームシックにかかるわ。それも重症。死にたくなるぐらいに。何をしても耐えられないでしょうね。でも、きっと耐えられる。ホームシックでは人は死なないの。……いつか、太陽が顔を見せるし、ここがわたしの生きる場所なんだって、分かる時が来るわ」
 ま、わたしのテキトーな訳で、字幕は覚えてないけれど、エイリッシュがラスト近くで、まるでかつての自分のように元気のない少女に向かって言うこのセリフが、そしてこのセリフを言うときのSaoriseちゃんの表情が、わたしにはとても強く心に残った。いやあ、ホントに素晴らしい映画でした。

 というわけで、結論。
 本作『BROOKLYN』は、とにかく多くの女性に見ていただきたい傑作である。特に、地方から上京して一人暮らしをしている女性には、初めて上京した時のことを思いだして、かなりグッとくるんじゃなかろうか? それから、さっき、インターネッツでこの映画のことを、実写版『ZOOTOPIA』だ、と評しているレビューを見かけた。確かに物語的に似ているかも。なので、『ZOOTOPIA』が好きな女子たちにもオススメです。わたし的には、ほぼ同じ時代のNYを描いた『CAROL』と非常に対照的?というか、別の道筋をたどったキャロル、というようにも感じた。キャロルも、本作のエイリッシュも、二人ともデパートガールだし(※ただし性格はかなり違うし、キャロルはマンハッタン、エイリッシュはブルックリン、かな)。なので、『CAROL』にグッと来た人にも、強くオススメしたいと思います。FOXも、さっさと公開すべきだったんじゃなかろうか。いやー、ホント、素晴らしい作品でした。以上。

↓ 原作小説は、パンフレットによるとアイルランド現代文学の巨匠Colm Toibin氏によるものだそうです。知らなかった……
ブルックリン (エクス・リブリス)
コルム トビーン
白水社
2012-06-02

 

 

 寒い。現在、わたしの部屋の室温7.4度。
 わたしは暑いのが苦手なので、冷房は容赦なく使うが、寒いのは着込めば結構耐えられるので、ほぼ暖房は使わない。まあ、そんなことはどうでもいいのだが、今日はあまりに寒くて午後は何もする気にならず、布団に入ったまま、WOWOWで録画した映画でも観るか……と、録画リストを見てみたところ、 『わたしは生きていける』という作品が録画されているのを発見した。何故録画しようと思ったか、全く心当たりがなく、なんだこれ? と思ったものの、上映時間が100分ほどと手ごろなので、とりあえず観てみるか、と再生をスタートした。すると、冒頭のキャストのクレジットが出て、一発で録画した理由を思い出した。この映画は、4週間後のアカデミー主演女優賞にノミネートされたSaoirse Ronanちゃんが主演しているから観ようと思ったのだった。ついでに言うと、次期SPIDER-MANを演じることが決まっている、Tom Holland君も出ているらしい。なるほど。ストーリーは全く分からないが、どんな話だろう? と思いながら鑑賞を開始した。そして、物語は全く予想外の展開で、かなり驚くことになったのである。

 上記の動画は、この映画の公式予告編だが、物語はほぼ語り尽くされている。わたしはこの動画を観ないまま、鑑賞を開始したので、どんなお話か全く知らなかった。
 冒頭、主人公の女の子がイギリスにやってくる。若干パンクじみたファッションに身を包んだ女の子。出迎えに来たのは、兄と妹のいる14歳の少年で、主人公の親戚らしい。そして何かと態度の悪い主人公。わたしはこの時点で、主人公の女の子の素行が悪くて、夏休みはイギリスの親戚の家に行くことになってしまって、そこで触れた自然や人々の温かさで、いい子になってアメリカに帰る、そんなハートウォーミング系の話かなと思った。
 が、物語は全く違う展開になる。空港もやけに軍人の警備が多かったり、空には戦闘機が編隊を組んで飛んでいたり、と言うような描写があって、冒頭から緊張感がなんとなく示される。そしてある日、子供たちが川に泳ぎに行ってピクニックをしていると、突然の突風と、爆音が空を轟かす。何かが起きた。皆であわてて家に帰り、テレビをつけると、ロンドンで核テロが勃発したことが報道されている。そこから物語は急展開し、どうやらヨーロッパで戦火が起こり、少女たちのいる家にも軍人がやってきて、女の子2人と男の子2人に分かれてしまう。その後、主人公の避難先にも戦火が迫って、幼い親戚の妹を伴って、みんなの家に戻ろうとするのだが……というようなお話であった。
 まあ、お話的には後半妙に血なまぐさくなってしまうのだが、戦争の理由とか背景が一切描かれないので、正直なところ、若干おとぎ話めいていて、起こる事象や映像そのものはやけにリアルであるけれど、わたしとしては最後までどうにも物語りに入り込めなかった。 
 で、役者としてはやはりSaoirse RonanちゃんとTom Holland君であろう。
 Saoirse Ronanちゃんは、以前も書いたがとにかく目が印象的な可愛い娘さんであろう。美しい青い瞳。正統派美人である。13歳で出演した『Atonement』 (邦題:つぐない)でアカデミー助演女優賞にノミネートされた、若手ナンバーワンクラスの演技派女優として注目を浴びている。この映画では珍しく「ちょっと問題児」な女の子を演じていたが、その背景も一応は描かれていて、演技としても非常に良かった。果たして4週間後、アカデミー主演女優賞を獲れるのか、わたしも楽しみである。まあ、ちょっと今回は難しいかな、とは思うけど。
 Tom Holland君は、先日の『IN THE HEART OF SEA』(邦題:白鯨との闘い)でもなかなかいい演技をしていたが、 今回も、かなりいい。おそらく主要メンバーで一番光ってるように思う。まあ、わたしとしては、今年一番観たいと思っている映画『CAPTAIN AMERICA:CIVIL WAR』で、とうとう参戦するSPIDER-MANの姿を観たいものだ。この少年は、今年20歳になるのかな。たぶん、けっこうイケメンに成長すると思いますよ。
 もう一人、Holland君のお兄ちゃん役で、Saoriseちゃんが好きになる少年を演じたのがGeorge MacKayという中途半端なイケメン君である。わたしはこの人のことを全く知らなかったのだが、どうも実生活でも、この映画での共演をきっかけにSaoriseちゃんと付き合ってるらしいですな。全く持ってけしからん。
 最後、どうもこの映画、妙にパーツパーツはリアルだし、結構金かかってるし、映像自体は非常に悪くない、特に照明・ライティングのセンスはいいね、と思って観ていたのだが、監督は『The Last King of Scottland』を撮ったKevin Macdonaldであった。なるほど、あの映画も結構良かったもんな、そうか、あの監督か、と納得である。

 というわけで、結論。
 あまりの寒さで引きこもるわたしが今日観た映画、『HOW I LIVE NOW』(邦題:わたしは生きていける)は、物語的には、完全にラノベである。ある種のファンタジーと言っていいかもしれない。ので、とりあえずSaorise Ronanちゃんや、Tom Holland君をチェックしたい人にはおススメだが、そうでない人はまあ、予告を観て興味が引かれるかどうか、で判断いただきたい。以上。

↓原作小説。海外ではかなり売れたそうです。あまり読む気にはなってません。今のところ。Amazonレビューによると、「純愛の感動作」ですって。
わたしは生きていける
メグ ローゾフ
理論社
2005-04

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