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 というわけで、やっと行ってきました。
 わたしは絵画を中心とした美術鑑賞も大好きなわけだが、このところ、せっかくチケットを事前に買っておいても結局行けない、なんてことがたびたびあって、我ながら大変残念に思うことが多かった。けど、今回はちゃんと行ってまいりました。
 そうです。こちらの↓「ゴッホ展」であります。
Goch_2019L
 わたしの絵画の好みに関しては、もうこのBlogでも何度も書いている通り、ゴッホ・ターナー・マグリットの3人の画家がオレ的三大巨匠であります。それぞれ時代も国も全く別の画家たちだけど、好きなんすよねえ……よく考えたらフランス人がいねえじゃん。まあ、特にフランス人が嫌いということは全くないけど、結果的にそうなっているだけです、はい。
 で。現在、上野の森美術館で開催中の『ゴッホ展』。まあ、日本人に大人気のゴッホは、数年に一度はこうした「ゴッホ展」が開催されるわけで、そのたびにせっせと足を運ぶのは、何もわたしだけではあるまい。つうか、何万人もいらっしゃることでしょう。
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 わたしは美術展を観に行くときのお約束として、会場30分前現地到着、を自分ルールとしている。これも何度も書いてきたことだが、とにかく昨今の美術展はすごい混雑で、ビッグネームの作家の単独企画展となるとえらいことになる。それが嫌だから、朝イチに限る、と思っているわけだが、今回わたしは9時半開場のところ、8時55分ごろに現地に着いた。その時すでに待っている方々は20名弱。まあこれなら余裕であろうと寒空の下、待つこと30分で開場となって入場した。
 ま、だいたい1/2~1/3ぐらいの人は音声ガイドを借りるので、さらにわたしの前は人が減ってガラガラになる。大変良い鑑賞環境で観られたのは言うまでもなかろう。なお、チケットは、上記画像にある通り「当日券」だけど、行こう、つうか今週末行く!と心に決めた日の帰りに上野駅構内のチケットブースであらかじめ買っておきました。当日買うのはさらに並ぶのでダメですよ。開場時はながーーーい列になってました。
 今回の『ゴッホ展』は、展示総点数が83点、そのうち、ゴッホじゃない作品が31点というわけで、ゴッホ率は過半数を超えている。最初の方をかっ飛ばしてメインまで行っちゃう人をよく見かけるけど、今回は冒頭からゴッホ作品で、独学で練習というか勉強していた時代の作品から、影響を受けた作家とその影響が見える作品、そしてアルルを経て、さらなる研究へ、という構成になっていた。今回はジャポニズム系はナシ、です。
 そして今回のメイン作品は、おそらく上に貼ったチケット画像にある通り『糸杉』だろうと思う。だけどわたし、この作品はMYCのThe Metropolitan Museum of Artでじっくり観たので、おお、お久しぶりだね、ぐらいの感覚であったのだが、そのすぐ近くにあった、『薔薇』という作品の方が今回一番気に入りました。どうやらこの『薔薇』はWashingtonのNational Gallery of Art所蔵作品みたいすね。行ってみたいなあ……。
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 前もどっかで読んだけど、ゴッホは「色」の研究のために、お花の絵をかなり多く描いているわけですが、背景の淡いミントグリーン? がとてもいいすねえ……。色の研究に「白」のバラを描くってのは、非常に意味があるような気がしますな。もちろん言うまでもありませんが、現物はこんな画像の1億倍の美しさとオーラに包まれています。
 はっきり言って、昨今の絵画展は入場料が高いと思う。今回は当日券1800円だ。まあ、映画も同じ料金だけどさ、高いよね、やっぱり。でも、わたしとしては高いからやめよう、というハードルとして機能するなら、混雑解消の一つの解でもあるような気がするので、甘んじて受け入れることにやぶさかではないです。そして、やっぱり「本物」を目の前にしたときの、なんつうかな、心の高揚? のようなドキドキ感みたいなものは、ほかでは代えられないものだと思うので、高いけどアリ、だと思う。まあ、この入場料の価値があるものかどうかは、自分の胸に聞いてください。

 というわけで、さっさと結論。

 なんか数年ごとに決まって開催される『ゴッホ展』。その度にわたしも足を運ぶわけだが、正直、切り口がもうネタ切れなんじゃなかろうかという気もする。単に来日作品が違うだけ、だよね。ズバリ言うと。かぶってる作品もあるし。でも、それでも。わたしはやっぱり観に行くんだろうな。だって、好きなんだもの。もうしようがないす。こればっかりは。だけど、わたしのようなゴッホ好きが日本に数万人いるからと言って、開催側はきちんとオリジナリティーを見せてほしいと思う。なんか、はっきり言ってそういう努力は全く感じられない、フツーのゴッホ展だったな、というのがわたしの感想です。あと、どうでもいいんだけど、そろそろ暗い会場に暖色系LED証明ってやめてくれないかなあ……直射日光はそりゃアカンだろうけど、わたしとしては「自然光」のもとで、ゴッホ作品を観たいす。ま、無理な話なのかな……以上。

↓ 今回も買いました。AERAムックの解説本は大変出来がいいです。図録よりいいかもよ。

 19世紀の末に、日本は明治の世となり、開国されたわけだが、その後、数多くの西洋人が日本にやってきて、おそらくは「なんてこった、こいつはすげえぞ!」と大興奮で買いあさって自国へ持って帰ったもの、それが浮世絵であることはもはやお馴染みであろう。その結果、いわゆる「ジャポニズム」なる一大日本ブームがヨーロッパで起こったわけだ。
 今、Wikiiで軽く復習してみたところ、どうやら明治になる前、1856年にはもうすでにフランス人が「北斎漫画」を目にして興奮していたようだし、1862年のロンドンの万国博覧会で日本文化は紹介されていたそうだから、どうやらその興りは江戸末期から、と言った方がよさそうだ。
 まあ、起源はどうもわたしのインチキ知識よりも古いようだが、そういった初期のフランスでの盛り上がりは「ジャポネズリー(日本趣味)」というそうだ。しかし何といってもわたしが「ジャポニズム」と聞いて真っ先に思い出すのは、やっぱりゴッホやモネと言った印象派~ポスト印象派の作家たちによるもので、そのような「ジャポニズム」の影響が見られる作品を我々日本人が見ると、なんかうれしくなるのはわたしだけではないだろう。
 そんな、なんかうれしくなる「ジャポニズム」というテーマは、比較的何度も、数年ごとに展覧会が行われているような印象があるが、今日、わたしは、二つの展覧会をはしごして、ぼんやりと美術鑑賞としゃれこんでいた。というわけで、わたしが今日観てきたのは、こちらの二つの展覧会である。
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 一つが、東京都美術館で開催中の『ゴッホ展~巡ゆく日本の夢』。こちらはチケットはとっくに買ってあったものの、あと少しで終わってしまうので、やばい、そろそろ行かないと、ときょう若干慌てて観てきた。
 こちらは、わたしが好きな三大作家のひとり、ゴッホの作品にみられる日本、というテーマでの展示であり、大変わたしとしては楽しめた。上の画像にある「花魁」をとうとうこの目にできて大満足だ。この作品、すごいのは、センターの花魁ももちろん、元になった作品があるし、周りのもの、例えば、足元にガマガエルがいるでしょ? このガマガエルも全く同じ構図の作品があるんだな。浮世絵で。
 本展覧会は、そのように、基本的に各作品ごとに「元となった浮世絵作品」と対になるように展示されていて、非常に分かりやすく、観ていると、マジかよ、完全パクリじゃん!と大興奮である。パクリ、というのはもちろん現代語で、ネガティブイメージがある言葉なのでふさわしくないかもしれないが、もうまさしくパクリ、であって、そこにはゴッホの「なんだよ、浮世絵ってすげえ! ちょっとおれもこうした構図で描いてみたい!!」と思わせる興奮と尊敬、そしてあこがれが存在しているのは間違いないと思う。
 わたしは今日初めて知ったのだが、どうやらゴッホの身近には、日本とつながりのある人々が4人いたそうだ。その4人によって、未知なる国、日本へのあこがれがゴッホの中でむくむくと沸き上がったんだそうだ。ちょっと2人だけメモしておこう。
 まず、一人は、叔父にあたる人物で、軍人として日本に滞在したことのある人物だそうでヨハネス・ファン・ゴッホなる方が、いろいろゴッホに、日本はすげえ国だぞ的なお話をしてたらしい。そしてもう一人は、画商のジークフリート・ビングなる人物で、この人は商売として浮世絵に注目して、日本に来日もして仕入れて、パリで店を開いていた人だそうで、ゴッホはそのお店で初めて浮世絵の実物を見て、「うああ!なんだこれすげえ!この倉庫は天国じゃん!」ぐらいの大興奮で通っていたそうです。サーセン、セリフはわたしが勝手に妄想で創作しました。
 そして、これもわたしは初めて聞いたように思うが、有名なアルルへの移住も、ゴッホ的には「ここはフランスの日本だ!」てな思いが強かったんだそうです。アルルと言えば、南仏の、太陽の光あふれるような温かいイメージがあるけれど、ゴッホが初めてアルルを訪れたのは冬で、その雪景色に日本を感じちゃったらしいです。へええ~。知らなかったわ。
 というわけで、本展覧会はゴッホ好きなら大興奮間違いなしであろうし、ゴッホに興味がなくとも、浮世絵の与えた影響の大きさを知ると、かなり興味深く作品を見ることができるのではないかと思う。わたし的には大興奮で大満足であった。ちなみに、この『ゴッホ展~巡ゆく日本の夢』は、年明けからは京都へ会場を移して、3月4日まで引き続き開催されるようですな。
 で。わたしは今日、9時半開場の『ゴッホ展』に8時55分ごろに着いて、寒空の中ぼんやり開場を待っていたのだが、わたしの前には15人ぐらいしかいなくて、大変快適に作品を鑑賞することができた。そして会場を出たのが10時半ごろで、次に、国立西洋美術館へ向かい、そのまま『北斎とジャポニズム~HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』を観てきた。
 しかし、チラッと見た限り、全然列がなかったので、これは大丈夫かな、と思って入場してみると、中は大混雑で、ああ、やっぱり絵画展は朝イチじゃないとダメだ……というため息のもと、来館者のあふれる館内に、わたしのテンションは下がりまくり、なんか、流して観てきてしまいました。
 こちらは、基本的なコンセプトは同じ、だけど、ゴッホ以外の作家の作品での「ジャポニズム」全開で、またこちらは北斎の作品がメインとして、北斎の作品とそれを基にした西洋絵画、という形で対になっていて、これはこれで大変面白かった。作品展数という意味でのボリュームもこちらの方が大きくて、大変満足である。
 わたしがこの展示を見て思ったのは、よくもまあ、オリジナルの浮世絵を探し当てたものだなあ、という若干のんきな思いで、後世の美術研究家たちの丹念な作業に実は一番感動した。ドガのこの作品は北斎漫画のこのページのこれ、とか、モネのこの作品は北斎のこの作品、とか、ロートレックのこの作品には、北斎のこの作品が、みたいな、その照合作業がものすごいと思った。とにかくその数は膨大で、実に興味深い。他にも、有名な北斎の「富嶽三十六景」のひとつ、「神奈川沖浪裏」がこれほどまでに多くの作品に影響を与えていた、なんてことも、結構感動モノである。すごい数ですよ。しかも絵画だけでなく、カミーユ・クローデルは彫刻で「浪」を作ってるし! 実に興味深く、面白く楽しませてもらった展覧会であった。あと、わたし的にとても感激したのが、現在ビル建替え中で長期休館中の、ブリジストン美術館が持っているセザンヌの「サント・ビクトワール山とシャトー・ノワール」が展示されていた! のである。何年ぶりだろう、お久しぶりっす!と思わず心の中で挨拶してしまったぐらい、わたしには大変おなじみの作品で、学生時代、何度も平日のガラガラのブリジストン美術館で観た作品で、とても思い入れのある作品だ。いったいいつ、新たに新装オープンするのか知らないが、早くまた、常設で会いに行きたいすな。はあ……あの頃、何度この作品の前で、若き悩みをくよくよ考えてぼんやりしたことだろう……とても懐かしく、また会えてうれしかったよ。
 そして、観終わったわたしが、ショップで見かけて、おお、これは面白い! と思って買ってきたのが、これである。
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 わかるかな、真ん中のものなんですが、「ミニ図録」なるものです。左のピンクの袋は、この「ミニ図録」を買うと入れてくれる紙袋で、デザインも色も、大変可愛らしくて良いじゃあないですか。そして右にあるのが、『ゴッホ展』で買った「花魁」のポストカードで、「ミニ図録」の大きさ比較用に並べて撮影してみた。わたしは図録を毎回買うわけではないけれど、図録を買う時は、作品を眺めるため、というよりもむしろ解説を読み物としてあとでじっくり読みたいからである。その目的からすると、この「ミニ図録」は実にわたしにとって都合がよく、大変気に入った。中も、左に北斎のオリジナル、そして右にその影響を受けた作品、と見開き単位で整理されており、大変観やすく、かつ面白い。普通のデカい図録は保管するのも大変だし、重いし、高いし、で、今後すべての展覧会でこういう「ミニ図録」があればいいのになあ、と思った。これは大変いい企画商品ですよ。全然知らなかったけれど、結構既に前から「ミニ図録」ってあったんですな。かつて、雑誌の女性誌も、「バッグサイズ」という縮小版が流行ったことがあったけれど、図録のミニサイズは大いにアリですよ。大変気に入りました。
 
 というわけで、わたしとしては短いけれど、結論。
 今日は美術展を二つはしごしてきた。東京都美術館で開催中の『ゴッホ展~巡ゆく日本の夢』と、国立西洋美術館で開催中の『北斎とジャポニズム~HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』である。ともに、「ジャポニズム」を共通のテーマとしており、我々日本人が見るととても面白い企画だと思う。なんか、嬉しくなりますな、こういう日本の影響を有名な作家の有名な作品に観ると。まさしくCool Japanの先駆けですよ。そういう、これまで世界になかったもの、を生み出す力が我々日本人にはあるはずと信じたいですな。近年すっかり日本の世界的プレゼンスは低下してしまったけれど、偉大なる先達の作品を見ると、うれしくなるし、ちょっとした勇気が出てきますな。やっぱり、もう世界を相手にしないと。日本でしか受けないガラパゴス映画ばっかり作ってる場合じゃないと思いました。以上。

↓ 以前もこのBlogに書いたと思うけれど、有名なモネのこの作品「ラ・ジャポネーズ」は、数年前に世田谷美術館で観ました。想像よりも実物はすげえデカくてびっくり。凄いオーラでした。

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