おとといの夜、そう言えば、わたしの愛する電子書籍販売サイト「BOOK☆WALKER」から、40倍コインバックフェア開催中!! という内容の告知メールが来ていたっけ、と思い、今月はもう結構買っちゃったからなあ、どうしようかしらん? と、サイトを眺めていたところ、元部下のYくんから、SKYPEメッセージがポロリ~ンと来た。
 Yくん:「ビームコミックスの地底旅行が懐かしいやら、よくかけているやらで」
 わたし:「ジュール・ベルヌですか?」
 Yくん:「YES」
 わたし:「おっと!」
 Yくん:「http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_EB01000017010000_68/
 わたし:「いつぐらいだったかなぁ・・・だいぶ読んだね。」
 わたし:「おお、これはいい絵ですね」
 わたし:「でも、あえて「海底」じゃなくて「地底」なのが渋いすなw」
 Yくん:「ですよね!」
 わたし:「ふつうはネモ船長だろうに・・・w」
 Yくん:「「80日」でも「海底」でもないという・・・」

 というわけで、よっしゃ、購入しましょう、とその場で買った漫画が本日のネタである。
地底旅行 1 (ビームコミックス)
倉薗 紀彦
KADOKAWA/エンターブレイン
2016-03-25

 タイトルからわかる通り、かのJules Verneの小説、『地底旅行』のコミカライズ作品である。
 ホント、なぜ今、Verneなのか、さっぱりわからないし、なんでまた、『海底2万里』ではなく『地底旅行』を漫画化しようと思ったのか、まったくその意図は理解できないが、驚くほどクオリティの高い漫画で、これは大変、これから先が期待できそうだ。まあ、まずは試し読みを読んでもらった方がいいかな。上記の、わたしとYくんの会話で出てくるURLに、サイトをリンクしておいたので、そちらをクリックすれば、第1話54ページが読めるので、気になった方はぜひ、まずはその第1話を読んでみていただきたい。

 今、本棚を漁ったのだが、探してみても確かに持っていたはずのVerneの作品群が見当たらないので、原作小説との比較はしていないけれど、冒頭の謎の「ルーン文字」のくだりは、確かに原作小説もこんなだったなあ、と懐かしく読んだ。 漫画としての力量も大変高く、まだ(1)巻なのであまり物語は進まないといってもいいと思うけれど、非常に読み応えのある作品に仕上がっている。
 物語はもう、今更説明する必要はないだろう。時は1863年。19世紀半ばのドイツから物語は始まる。リーデンブロック教授が入手した古文書に挟まれていた、16世紀の錬金術師サクヌッセンムのメモ。その暗号を甥のアクセルとともに解読し、「アイスランドの火山から地球の中心へ降りていくことができる」ことを知ったリーデンブロック教授と甥のアクセルの冒険のお話である。ま、Disneyの「センター・オブ・ジ・アース」の原作と言ったほうが、わかる人は多いのかな。何回か映画にもなってるしね。
 というわけで、大変おなじみの物語を、とても「今っぽい」絵柄で描くこの作品は、売れているのかわからないけど、その題材選択としい、非常に応援したくなる漫画であった。なにより、面白いし、絵も非常に好感が持てる。「今っぽい」といっても、ありがちな、萌え系とは全く違う、極めて高い実力のもとに描かれた、王道の漫画だ。
 作者の倉薗紀彦先生は、正直その名を見ても、知らない作家だなあ、と思っていたのだが、調べたら、わたしとしては久しぶりの再会で、以前、「コミック電撃大王」において『三島凛は信じない』という作品を連載していた方だった。なんだ、『三島』を描いた方だったのか、と知って、倉薗先生の名前を忘れていたのはたいへん恥ずかしいというか、ホント申し訳ありませんでした。ちなみに、『三島』も大変面白かったです。

 しかし、つくづく思うのは、現代日本の漫画事情である。
 普通、漫画は、どこかの「コミック雑誌」に連載されて、のちに単行本となって発売、というのが、ひとつのビジネスモデルとなっている。「週刊少年ジャンプ」のように、数百万部発行している雑誌なら事情は違うかもしれないけれど、ほぼ全ての「コミック雑誌」は、それ単体で見れば赤字だし、単行本の稼ぎでその赤字を帳消しにするのが、まあ普通だと思う。
 で、本作、『地底旅行』の場合は、連載誌(? 実際に連載されているのを見ていないので良く知らない)である「月刊コミックビーム」は、おそらくまったく売れていない状態なので、まあ普通の本屋さんでももはや見かけることが少ないのが現実だ。確実に、雑誌単体では赤字であろう。なので、『地底旅行』をはじめとする連載漫画の単行本が売れないと困ってしまうのだが、果たして大丈夫なのか、余計なお世話の心配が募る。
 なぜそんな心配をするかと言えば、売れてくれないと「続きが読めない」からだ。
 で。
 今作のような質の高い漫画が世に知られる機会は、もはや非常に少ないと思うが、今は出版している版元が運営するWebコミックのサイトでも公開しているので、一応はそちらでも読める。
 たいていのWebコミックサイトは、紙の本が出版された後は、その部分の公開をやめてしまうのが常だが、この作品も、現在はWebで読めるのは第1話だけになっている。それはまったく構わないけれど、もうコミック雑誌は完全にビジネスとして成り立つものでないのは前述の通りなので、それならいっそ、電子でもう少し公開幅を広げて、Web上のプロモーションを本気でやればいいのになー、と他人事ながら思ってしまうわけである。
 ええと、何が言いたいかと言うとですね、本作は大変クオリティが高く、面白い(まだ序盤なので「面白くなりそう」と言っておいた方がいいかも)のに、全然世に知られてなくて、売れてなかったら残念だなあ、ということです。電子でやればいいじゃん、という事を書いたけど、もちろんそれもそう簡単なことではなく、広大なインターネッツという銀河において知らしめる方が、より難しいのかもしれない。もちろん、積極的に面白い漫画を欲して探している人の目には止まるだろう、そして、そんな人々にとっては、そりゃあ全く売れていない紙の雑誌での連載よりも、Webで公開している方が目に留まりやすいとは思う。しかし、それでもインターネッツなる銀河は広大なわけで……妙案はないんすかねえ。

 というわけで、もう結論。
 倉薗紀彦氏による『地底旅行』は大変クオリティが高く、おススメです。が、まだ物語が序盤の序盤なので、今のところは、あくまでJules Verneの小説、『地底旅行』を読んだことのある人、向けかも。最後まで描き切ってほしいですな。これからずっと応援したいと思います。しかし、こういった、世界の名著的な小説をコミカライズするって、絶対アリですよ。わたしとしては、たとえば日本で大変人気のある(あった、というべき?)、Hermann Hesseの作品なんて、女子向けに本気のクオリティでコミカライズしたらウケると思うんですが、いかがでしょう? 以上。

↓ そうか、まだパブリックドメインになってないからダメか。これなんて絶対少女漫画向けだと思うのだが……。
デミアン (岩波文庫 赤435-5)
ヘルマン・ヘッセ
岩波書店
1959-04-05