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 わたしは現代戦を描いた戦争映画は比較的よく観る方だ。わたしが好きな作品は、基本的にリアリティのある作品で、『BLACK HAWK DOWN』だとか、『LONE SURVIVOR』だとか、あの辺りの作品が好みである。そこにあるのは、なんというか、本当に「怖い」と感じるような緊張感で、絶望的な状況に陥った男たちが、任務遂行のために全力を尽くす姿に、なんだかとてもグッとくるし、大変興奮するわけである。
 というわけで、何度か劇場で予告を観て、お、これは面白そうかも? と思っていた映画が昨日から公開となったので、さっそく観てきたわたしである。しかしまあ、なんつうか、お客さんはシニアのご夫婦ばっかりだったのが妙に印象的であったが、わたしが観てきた作品のタイトルは、『12 STRONG』というもので、『ホース・ソルジャー』という邦題が付けられている。まあ、その邦題のセンスのなさは後で触れるとして、結論先に言うと、うーん、ちょっとイマイチかなあ、という気がした。というのも、若干リアリティという面では、映画的に盛り過ぎているように感じてしまったからなのだが、どうも、12人の男たちの個性が発揮されず、主役のTHOR様無双のような気もしていて、なんか……わたしにはどうもリアリティが感じられなかったのである。
 というわけで、以下ネタバレ全開になる可能性があるので、まだ観ていない人はここらで退場してください。

 まあ、物語は基本的に上記予告の通りである。2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件が発生し、その事件の首謀者たるアルカイダ引き渡しに応じなかったタリバン勢力掃討=アフガニスタン戦争の、US政府による最初の作戦を描いたものである。
 戦略目標は、敵拠点の制圧・奪取にあり、戦術としては空爆、を行うのだが、その空爆をピンポイントで誘導する地上部隊が必要で、主人公たち地上部隊であるUS-ARMY(合衆国陸軍)の12人のチームが派遣されると。そして彼らは地元の軍閥と協力し、敵拠点へ徐々に近づくのだが、軍閥にも種類があってしかも敵対しているような感情もあって、なかなかうまくいかない。おまけに、あのソ連が最終的にはさじを投げたアフガンの山岳地帯であり、寒さと峻烈な地形に当然機動兵器(車とか戦車とか)は使うことができず、馬しかない、という状況である。さらに言うと、敵勢力は5万。つまり、地の利もなく戦力差も激しいわけだ。ただし、あくまで彼らは空爆の誘導役であって、実は直接的な戦闘は主任務ではないのがポイントだ(それゆえ、12人と少数精鋭)。もちろん、敵に遭遇してしまっては戦闘にならざるを得ないわけだが、あくまでそれは遭遇戦で、突発的に起きる可能性が高い、というものである。
 何が言いたいかというと、実に地味、なのだ。作戦自体も、物語も。
 わたしは観ていて、これって……無人機RQ-1 PLEDETORを飛ばしてヘルファイアミサイルをぶっこめばいいだけじゃね? と思ったのだが、どうやら調べてみると、アフガンの寒さには弱いらしく、戦果はイマイチだったらしい。まあ、2001年当時の話なので、これが10年後だったらもっと改良されてたかもしれないけど、まあ、とにかく2001年当時、しかも冬(作戦は2001年11月~12月ごろ)にかけての作戦では投入できなかったようだ。なるほど。
 で、わたしが感じたリアリティ面で盛りすぎ、と感じたのは、ズバリ言うと、全然リロードする気配もなく撃ちまくり続けるシーンが多くて、なんだか興ざめだったのと、相当銃弾が行きかうバトルフィールドなのに、主要キャラには全く弾が当たる気配がなく、馬で突進するのも、なんかアレだなあと思うし、一方では主人公たちUS-ARMYの男たちの放つ銃弾はことごとく命中する、という、ある意味ハリウッド映画万歳的な描写が多くて、正直そういった点は微妙であった。
 なんつうか、やっぱり主人公がスーパーマンすぎたように思う。主人公のネルソン大尉は、実戦経験ゼロで、地元の将軍には、「あいつ(=他の隊員)は人を殺した眼をしている。あいつも。あいつも。でも、あんたはそうじゃない」なんて言われてしまうような指揮官なのに、妙に隊員たちからの信頼も厚くて、その辺の説得力を増すような、何かの描写があってほしかったようにも思う。なんかあったっけ? ちなみにわたしが邦題についてセンスゼロだと思うのは、その地元の将軍が、「我々はSOLDIER(兵士)じゃない。WARRIOR(戦士)だ」というシーンがあって、最終的に主人公も、戦士になったな、と認められ、なんと本作に出てきた地元将軍は後にアフガンの副大統領にもなった男で、現在も本作の主人公(のモデルとなった実在の軍人)と親友なんだそうだが、ともかく、「戦士」というのが一つポイントなのに、邦題で「ソルジャー(兵士)」はどうなんだ? と思ったからです。
 ただし、である。さんざん文句を言ってしまったが、それはあくまでこの映画に対して、であって、実際にこの作戦に動員された12人の男たちが、全員生還できたのはもう、相当奇跡的なのではないかと想像する。恐らくは、本作で描かれたよりも数倍厳しい環境だっただろうというのは想像に難くなく、平和な日本の映画館でぼんやりスクリーンを眺めていたわたしには想像を絶する戦いだったのは間違いないと思う。なので、主人公のモデルとなった軍人は本当にスーパーマン的活躍をしたのだろうと思うことにしたい。ホント、全員生還できてよかった。
 しかしまあ、その後の歴史も我々は知っているわけで、ビン=ラーディン殺害までにはその後10年もかかったことを思うと、彼らの奮闘がどのような意味があったのか……本作は、数年がかりの作戦を3週間で終わらせたことへの賛辞しか示されていなかったけれど、もう少し、この作戦がどういう重要な意味があったのかについても深く教えてほしかったと思う。ま、それは自分で調べて勉強しろってことかな。
 というわけでもう言いたいことがなくなったので、最後にキャストと監督について短くまとめて終わりにしたい。
 ◆ミッチ・ネルソン大尉:チームリーダー。実戦経験ゼロながら、部隊をまとめるリーダー。演じたのはTHOR様ことChris Hemsworth氏。まあ、いつものTHOR氏で、とりわけ熱演とか、凄かったとは思わないけれど、カッコいいのは間違いないす。つうかですね、12人ということで、人数が微妙に多すぎて、各隊員の個性がほとんど描写されないというか、印象に残る隊員が少ないんすよね。活躍度合いも隊長のネルソン大尉が前面に出過ぎてて、他の隊員の印象が薄いんだよなあ……そういう意味では、THOR氏のTHOR氏によるTHOR氏のための映画になっちゃっているようにも感じた。これは脚本的な問題かもしれないし、監督の演出的な問題かも。ちなみに、本作で大尉の奥さんを演じたElsa Patakyさんは、実生活でもChirs氏の本当の奥さんです。夫婦共演って……よく出来るもんすね。いや、皮肉じゃなくて、演技的な意味で。
 ◆スペンサー准尉:実戦経験豊富なベテランの副官・サブリーダー。被弾して重傷を負うも、ギリギリ助かった模様。しかし……冒頭に、BASED ON A TRUE STORYと出るので、まあ事実だったのだろうけれど、椎間板ヘルニアで腰を痛めてほとんど動けないってどうなんだ? 足手まといでは……。そんな准尉を演じたのは、わたし的にはゾット将軍でお馴染みのMichael Shannon氏43歳。以前も『SHAPE OF WATER』の時も書いたけど、この人、完全に50代に見えるんですが、ホントに43歳なんですか?w とてもわたしより年下には見えない……。ま、そんなことはともかく、彼は印象には残る役柄だけど、物語的にはあまり活躍しませんでしたな。
 ◆サム・デイラー:チームのムードメイカー的な明るい男。演じたのは、ANT-MANの親友だったり、いつもコミカルな役の多いMichael Peña氏。彼も……クライマックスの戦闘には参加しておらず(?)、印象には残るけれど活躍度合いは薄い。なんつうか……やっぱり演出の問題なのではなかろうか。とにかく、THOR様やメジャーな役者以外はほぼ印象に残らないのはとても残念。
 ◆ドスタム将軍北部同盟のメンバーたる有力氏族の長。妻子を殺されたことからアメリカに協力している地元将軍。演じたのはNavid Negahban氏というイラン出身のお方。かなり多くの映画やTV作品に出演されているベテランの方らしいけど、わたしは知らない人でした。将軍のキャラは非常に立ってましたな。本当に味方なのか、腹に一物抱えているのか、はっきりしないような大物としてなかなか存在感がありました。前述の通り、彼はその後2014年にアフガニスタン副大統領に就任したそうです。現職かな? わからんす。
 で、本作の監督はNicolai Fuglsig氏という方だそうですが、本作が初監督先品だそうです。WikiによればナイキやソニーのCMを撮ったり報道写真家としてコソボ紛争を取材したりした人だそうです。まあ、要するにまだド新人ですな。なので彼の演出がどうとか、よりも、結局はプロデューサーのJerry Bruckheimer氏の目印たる、ドッカンドッカン爆発するシーンばかりが目立っちゃった感じなんすかねえ……そう考えると、同じBruckheimer氏プロデュース作品なのに、あれだけ大勢のキャラクターを登場させながら、きっちり各キャラの印象を残す演出をした『BLACK HAWK DOWN』のSir Ridley Scott監督がやっぱりスゲエってことなのかな。

 というわけで、さっさと結論。
 現代戦を描く戦争映画が好きなわたしとしては、結構楽しみにしていた映画『12 STRONG』(邦題:ホース・ソルジャー)をさっそく観てきたのだが、残念ながらイマイチ、というのが結論のようだ。なにしろ、映画的に嘘っぽくて、弾切れナシ・自分の弾は当たる・けど相手の弾は当たらない、というのはやっぱりちょっとアレっすね。そして、12人の勇者たちの印象が全然残らないのが一番問題だと思う。もったいないというか……残念す。それと、アフガンの自然も、ちょっと嘘くさく見えたかもな……なんかもっと、まさしく神の見捨てた地のような荒涼とした山岳なはずなんだが……意外と行軍自体はスムーズなのも、ちょっとアレだったかもすね。なので、ええ、要するに、しつこいですがイマイチでした。以上。

↓ ああ、なるほど、原作は早川書房から出てるんすね。そして原作がそもそも「12 Strong: The Declassified True Story of the Horse Soldiers」というタイトルなんすね。それならしょうがないか。失礼しました!


 というわけで、昨日は午前中にわたしの大好きなStephen King大先生原作の『IT』を観て、午後は立て続けに、これまたわたしの大好きなMARVEL CINEMATIC UNIVERS最新作『THOR:RAGNAROK』を観てきた。のっけから結論を言うと、ちょっと悪ふざけしすぎじゃね? という今までとはまるで違うギャグ映画となり果てており、わたしとしては、ナシ、と否定はしたくないものの……ちょっとやりすぎじゃね? と言わざるを得ない微妙作であった。おまけに、予告編から想像していた物語とは全然違うお話であり、正直、わたしはかなり肩透かしを食らったような気がしている。ただし、それはわたしが予告を観て勝手に盛り上がっていただけの話であり、ギャグもやりすぎとは言え、いちいち、くすっと笑えてしまうわけで、なんだかんだ文句を言いつつ、やっぱり面白れえなあ、というのが結論なのかもしれない。それでは、以下、思ったことを書き連ねていこうと思う。なお、もちろんのことながら、いつも通りネタバレ全開になる予定なので、まだ見ていない人は読まないでください。

 つーかですね、これは観た方なら誰もが思う事だと思うのだが……上記予告はすっげえカッコイイというか、わくわくする最高の出来じゃあないですか? でもですね、なんと、上記予告は予告専用の映像ともいうべきもので、本編での使用シーンと相当違う! ことにわたしは結構驚いた。端的に言うと、THOR様の大切なムジョルニア(=トンカチ)が砕かれてしまうでしょ? 個々のシーンは確かに本編にもある、けれど、背景が全然違う! のにわたしはとても驚いた。『SPIDER-MAN:Home Coming』の時も、予告だけで本編に存在しないシーンがあったし、最近はネタバレ防止にそんなことまでするんすかねえ……ま、いいや。
 で。今回のお話だが、予告を観て、わたしのようにMCUが大好きな人間ならば、確実に次の4つのことがらについて、いったいどういう事なんだろう? と思い、その点に注目して本作を観たはずだ。
 ◆その1) HULKは一体、どうして、どうやって惑星サカールに来たのか?
 この点については、まずは復習が必要だろう。MCUにおいて、HULKの一番最後の描写は、『Ultron』のラスト近くで、S.H.I.L.D.のクィンジェットをかっぱらって一人どこかへ身を隠してしまったシーンである。大好きなBLACK WIDOWの言葉も無視してどこかへ消えたHULK。そのHULKがいきなり宇宙の果て?の惑星にいるのはなぜなんだ? と誰しも思うはずである。わたしはまた、なんらかのMCU的な重大事件が起こって宇宙に飛ばされた、その背景にはサノスの影が……とかいう展開なのかと勝手に想像していた。が、結論をズバリ言うと、「特に説明はナシ」であった。うっそお!? それでいいのか? とびっくりしたのは言うまでもない。これは原作的にそうなってるのかどうか、わたしは知らないので何とも言えないのだが……あまりにテキトーな感じがして、今までの、「綿密に計算されたMCU」の世界観にそぐわないというか……なんだかとてもがっかりした。おまけにHULK状態で2年間いたらしく、HULK状態で普通にしゃべってるし! そんな……悩めるバナー博士像はどこ行っちゃったんだよ……。
 ◆その2)ムジョルニア破壊!? ムジョルニアはどうやって復活するのか?
 わたしは予告で描かれたムジョルニア破壊シーンに超興奮し、こいつはスゲエ展開だ! と超ワクワクしていた。そして、ひょっとしたら、いまだ登場していない最後の「インフィニティ―・ストーン」がムジョルニア復活のカギなんじゃね? とか勝手に想像して興奮していたのである。このことについても、もう結論を言おう、「ムジョルニアは復活しない」が本作の回答であった。えええ!? いいの!? ムジョルニアなしでTHOR様は今後戦えるの? 空飛べなくなっちゃうじゃん!? とわたしはこれまた激しくびっくりである。これでいいのかなあ……うーん……。
 ◆その3)そもそもTHOR様の現在の任務は……?
 MCU世界では、『Ultron』事件の後に、地球においては『CIVIL WAR』が勃発してトニーとCAPが大喧嘩していたわけだが、そもそも、THOR様は、『Ultron』事件の後は、インフィニティストーンの謎を追ってアスガルドへ帰って行ったために、地球におらず、『CIVIL WAR』にも参戦しなかったわけで、わたしとしては、本作では確実に、最後のインフィニティ・ストーンに関連する事件が描かれるのであろうと勝手に想像していた。しかし、である。冒頭でごくあっさり、「分かんねーから探すのやめた」的な一言で終了である。そんなバカな!? わたしはこの冒頭のTHOR様のセリフでイスから転げ落ちそうになるぐらいびっくりした。えええ? うっそお!? ほっといていいんすかTHOR様!? あなた、『Ultron』事件のときに観た幻影に従って、トニーに味方してVISONさん誕生を手伝ったんだし、その幻影で描かれた未来が気になって仕方ないから、インフィニティ・ストーンの謎を追う旅に出たんでしょ? いいのかなあ……これで。
 ◆その4)RAGNAROKとは? ま、まさか……?
 たぶん、世間一般的に言う「ラグナロク」とは、北欧神話で言うところの終末の日であり、Wagnerのニーベルングの指輪の最終章「神々の黄昏(Götterdämmerung)」のことを指すものだ。THOR様自身が北欧神話的世界観なわけで、ラグナロクという言葉は、アスガルド最大の危機を連想させるものとして、非常にそれっぽくもある。しかし一方で、MARVELコミックに通じている人ならば、ラグナロクと聞けば、原作の「CIVIL WAR」に出てきたTHOR様のクローンであるRAGNAROKというキャラを思い出す人も多いはずだ。おまけに予告の終わり近くには、何やら雷光をまとった、いつもと様子の違うTHOR様がカッコよく登場するシーンもあって、ま、まさかこれって、あのクローン・ソーが登場するのか!? と興奮したはずである。しかし―――結論を言おう。確かに、アスガルド最後の日ではあったので、タイトルとしてRAGNAROKは非常にピッタリではあったが……クローン・ソーは登場しない。その点では、正直肩透かしというか、なーんだ、であった。そして予告に出ていた「雷光をまとうTHOR様」は、ムジョルニアを失って覚醒した新たなTHOR様のお姿であったのである(しかもここも、予告の映像と本編は重大な違いがある)。しかしそれでも、「ムジョルニアを失ったからって何だ、お前はなに? トンカチの神様なのか? 違うだろ、お前は」「そうだ、オレは……雷神だ!」と、オーディンの幻影との会話で真の力に覚醒する流れはとてもカッコ良かったので、これはこれでアリだと認めたい。本作では、惑星サカールでの奴隷戦士の時には、さんざん「神様じゃなくて、お前、雷様だろ?」「雷様じゃねえ、雷神だ!」「はいはい、頑張ってね、雷様」みたいなやり取りが何度もあったので、強いTHOR様大復活はとても興奮出来て満足です。
 とまあ、わたしとしては驚き4連発で、ズバリ言うと「オレが観たかったTHOR3はコレジャナイ!」と思わざるを得なかった。
 しかし、である。ちょっと悔しいことに、単体として本作を観ると、やっぱりギャグには笑えちゃえるんだな……そういう点では大変デキのいいコメディであったのは間違いないと言える。まさかLOKI様まであんなコメディキャラになり果てるとは……哀しいやら笑えるやらで、わたしとしては大変微妙な気持ちである。
 はあはあ……だいたい言いたいことはもう書いたかな……では、ちょっと気を取り直して、本作の物語を軽くまとめてみよう。
 本作は、冒頭は鎖でがんじがらめに拘束されたTHOR様の愚痴から始まる。こういう、主人公の愚痴というのは、ハードボイルド小説の定番だが、THOR様は、インフィニティ・ストーンの謎を追って旅していたものの、その謎は解明できずにいた。そんな時、かつて父オーディンが封印(?)したスルトという火の王(?)が復活しかけているところに出会い、その討伐に出かけ、まあズバリ言うと楽勝で再封印成功、アスガルドに帰還するーーーが、帰還したアスガルドでは、何と愚弟LOKIがオーディンに成りすましており(※THOR:DWのエンディングでLOKIがオーディンに成りすましていることは描かれていた)、ふざけた芝居を上演して民衆と楽しんでいた。そのバカバカしさにカチンときたTHOR様は再び愚弟LOKIをとっつかまえ、つーかお前、父ちゃんをどうしたんだよ!? と尋問すると、なんと父オーディンは地球に追放されていたことが判明。すぐさまLOKIを伴って、LOKIがオーディンを置き去りにしたNYCへ再降臨する。しかし、その場所は既に建物が取り壊され、オーディンの行方は不明。まじかよ……と困っていると、なんとLOKIの足元に、オレンジ色の魔法陣グルグルが発生、なんだこりゃあ!? と戸惑うTHOR様の前に現れたのは、なんとなんと、Dr.Strangeであった。Dr.は、地球に害なす存在の監視をしていて、LOKIはそのブラックリストに入っていたのである。事情を説明するTHOR様に、Dr.は、オーディンが見つかったらすぐ帰るんだな、じゃあ、その場所を教えてやろう、今、ノルウェーにいるから、と魔法陣グルグルでTHOR様とLOKIをあっさりノルウェーに送り込む。そして再会する3人。しかし事態は急展開で、なんとオーディンの寿命は尽き欠けており、故郷は場所じゃない、人じゃよ……そしてマズイことに、わしが死ぬと、かつて封印したわしの第1子、つまりお前たちのお姉さん、凶暴なヘラが復活しちゃうのじゃよ……と言い残してオーディンは存在が消滅してしまう。おいィ! 無責任すぎじゃないすか! オーディン様! というわけで、オーディンの姿が消えるとすぐに、ヘラ様が降臨。バトルが始まる! のだが、ヘラ様は超強い! ムジョルニア破壊もこのシークエンスで、つまり地球での戦闘で起こったことです。予告と全然背景が違って驚いた。で、こりゃマズイ、とあせった愚弟LOKIは、戦闘のさなか、アスガルドへの帰還を要請、THOR様、LOKI、ヘラ様の3人はアスガルド召還の光に包まれ、アスガルドへ引っ張られるのだが、その中でも戦闘は続いており、LOKIが光の道の外に吹っ飛ばされ、そしてついにTHOR様も同様に吹っ飛ばされ、ヘラ様だけがアスガルド帰還を果たしてしまう。ヘラ様は、アスガルドにいるとますます無敵パワーを発揮できる体質で、なんとTHORの盟友であるウォリアーズ・スリーもごくあっさり殺され、アスガルドに君臨するのであった。一方、どこかへ吹っ飛ばされたTHOR様とLOKIは……てな展開であります。はーー、全然軽くまとめられなかったわ。
 というわけで、THOR様は惑星サカールへ吹っ飛ばされ、現地にいたアスガルト人のヴァリュキュリーに捕縛され、奴隷戦士としてサカールを治めるグランドマスターに売り飛ばされる。そして自由を得るには、闘技場で行われる試合に勝たなくてはならない。しかもどうやら現チャンピオンはおっそろしく強いらしい。上等だ、戦ってやるぜ! と気合十分なTHOR様の前に現れた、現チャンピオンこそ、盟友HULKであった―――てなお話です。
 まあ、とにかく以上のような、かなりとんでもないお話で、面白いけれどとにかくギャグがしつこく、どうも狙いすぎというか、全くこれまでとは作風の違う異色作であった。なんか……いろいろ今までのことを無理矢理無視しているようで、わたしとしてはどうにもコレジャナイ感をぬぐい切れなかったすね。以下、キャラ紹介を軽くやってみます。
 ◆THOR:アスガルドの王子様。試合直前に自慢の長髪を宇宙バリカンでバッサリ刈られてしまう。ちなみにその散髪屋さんを演じたのがStan Lee大先生御年94歳。楽しそうなのが印象的。今回のTHOR様はとにかくコメディキャラで、ツッコミ担当。演じたChris Hemsworth氏も大いにコメディセンスのあるお方なので、実際とても笑えるんだけど……まあ、いいんすかねえ、あれで。しかし後半の、真の力に目覚める雷光バリバリのTHOR様はカッコ良かった! しかし、ムジョルニアを失ってしまったTHOR様は、次の『Avengers:Infinity War』では大苦戦しちゃうだろうな……完全に故郷を失った宇宙難民になってしまい、地球はアスガルド人を受け入れることができるのでしょうか……。なお、地球の恋人ジェーンとは、どうやら完全に別れたようで、それもモブキャラのセリフでごくあっさり流されました。THOR様曰く「振られたんじゃねえ、お互いに振ったんだ」だそうです。いっそ、「彼女(を演じてるNatalie Potman)とはスケジュールが合わないんだよ!」と現実の理由を言ってくれた方が笑えたのに。
 ◆LOKI:宇宙一のデキない弟。今回はやけにTHOR様と仲良し。そしてボケ担当として笑わせてくれる。あんたも大丈夫なのかね……あんたを地球でブラックリストに入れてるのは何もDr.だけじゃないと思うのだが……ラスト、「地球はわたしを受け入れてくれるだろうか……」「俺に任せとけ!」という謎の兄弟愛は美しいけれど、そんなに甘くないぞ! 演じたTom Hiddleston氏もなんだか楽しげに演じられていたのが印象的。
 ◆Dr.Strange:今回チョイ役として出演。しかし相当成長している様子で、ソーサラー・スープリームとしての腕は格段に上がっている様子でした。どうも魔法の腕は既にLOKIをしのぐほど、の模様。Benedict Cumberbatch氏による偉そうなキャラは健在。
 ◆Odin:オーディン様はどういう理屈かよくわからなかったけど本作で寿命が尽きてしまった。しかし……第1子ヘラ様のことを丸投げで消えてしまうなんて……ちょっと神様としてどうかと思う。演じたSir Anthony Hopkins氏は今回コメディっぽさは一切なく、静かに消えていきましたな。もうチョイ、ちゃんと引継ぎした方がいいと思うの……。
 ◆HULK:結局なぜサカールにいたのか、わたしには良くわからんです。そしてHULK状態でもしゃべれるというか一定の理性を保っていられるのにも驚き。バナー博士状態に戻ってからは、クイン・ジェットに残されていたトニーの服をいやいや着るなど、この方もコメディ成分がかなり増量されていました。わたし的に一番笑えてしまったのは、トニーのパンツ(ズボン)がピタピタ過ぎて、常に股間のポジションを気にしてモジモジしている下ネタ系ギャグで、バナー博士のイメージ崩壊でありました。それにしてもバナー博士、あなた、結局『Ultron』事件の後で何がしたかったんすか? 単に隠棲したかっただけなの? ガキか!
 ◆HELA:オーディン様の第1子であり、THOR様の超凶暴なお姉さまだという事は全然知らなかった。とにかく演じたCate Blanshett様がおっそろしく美しい! まさしく女神! そして、髪をかき上げるしぐさが超セクシー! 長い黒髪をかき上げると、あのトゲトゲヘルメットに変化するシーンにわたしは大興奮。実際最高でした。本作1本で退場させてしまうのはもったいない……けど、再登場は無理かな……どうでしょうか。Cate様は本当に楽しそうに演じてましたなあ。
 ◆VALKYRIE:はっきり言って強いんだか弱いんだかよくわからない女戦士。元々オーディン様直属の女戦士部隊の総称で、かつてヘラ様に完敗して一人生き残ったのが彼女。彼女自身の個人名があるのか良くわからなかった。強そうにも見えないし、一応活躍はするけど、わたしとしてはほぼ空気。演じたのはTessa Topson嬢で、かなりイメージは違うけれど、『CREED』においてアポロJrことアドニス君の彼女を演じた方ですな。
 ◆HEIMDALL:アスガルドの門番でおなじみのヘイムダル。そもそもこの人はなんで職場放棄していたのか良くわからない。LOKIがODINに成りすましていた時に解任されたのかな? でもこの人スーパー千里眼の持ち主なので、なりすましを見抜いていただろうに……逃げるならあの刀を持って逃げていれば……この人が門番をきっちり務めていれば、ヘラ様のアスガルド帰還を防げたような気がしてならない。演じたIdris Elba氏は全く笑いを取りにいかない真面目演技でした。
 ◆GRAND MASTER:惑星サカールの統治者。原作的には無類のゲーム好きで、『GUARDIANS』に出てきたコレクターの兄弟。演じたのはベテランJeff Goldblum氏。この方は元々いつも笑わせるちょっとしたギャグ担当なので、ある意味いつも通りの芝居ぶりでしたな。

 というわけで。この『THOR:RAGNAROK』という作品はかなりいつもと違う作風で、MCU的にも位置づけが微妙な作品だったわけだが、恒例のおまけ映像で描かれたのは、おそらくはMCU的には次の『Infinity War』へつながるであろうワンシーンであった。アスガルド人を連れて難民として地球へ向かう宇宙船。THOR様とLOKIの、地球に行けば何とかなるさ的会話は、突然宇宙船を覆う影で遮られる。映像が引きになると、THOR様たちの宇宙船の上に、巨大な宇宙船が……というおまけ映像であった。わたしにはこの、謎の巨大宇宙船が何者か良くわからなかったが、おそらくは『GURDIANS』関連の宇宙海賊の船かなにかだろう。こうしてTHOR様はガーディアンズのみんなと出会い、『Infinity War』につながっていくんでしょうな、きっと。また、おまけ映像は最後の最後にももう一つあって、そこでは散々な目に遭ったGRAND MASTERのその後が描かれるのだが、ま、これは全く重要ではないと思うので、流していいです。
 それより気になるのは、アスガルドが滅亡してしまった結果、「オーディンの武器庫」に保管してあった「コズミック・キューブ」は一体どうなってしまったんだろうか? という点であろう。劇中では、どうもLOKIがまた悪さを企んで、こっそり持っているようにも思えたが……どうなんでしょうなあ? 確実に『Infinity War』ではキーアイテムの一つになるはずなので、行方が大変気にかかるところであろう。
 MCUの次回作は、来年GW公開の『Infinity War』の前に、日本では来年3月に公開の『BLACK PANTHER』を挟むことになっている。『BLACK PANTHER』と言えば、『CIVIL WAR』の結果、現在国際指名手配犯になっているはずのCAPたちをこっそり匿ってはずで、今のところの予告などではCAPたちが登場するとは一切描かれていないが、本当にCAPたちは出てこないのかな……時系列的に『CIVIL WAR』より前の出来事を描くならそれでもいいけど、そうでないなら、不自然だよなあ……。でもまあ、とにかく我々としてはドキドキワクワクしながら待つのが正しいのでしょうな。わたしも非常に待ち遠しく思います!

 というわけで、もはや収拾がつかないのでぶった切りで結論。
 超期待したMCU最新作『THOR:RAGNAROK』をさっそく観てきたわけだが、実のところMCU的にはかなり微妙な立ち位置の作品で、内容的には非常にコメディ色の強い異色作、であった。ほぼ日本とUS本国とは同時公開にしてくれたのはとてもうれしく、US本国ではどうやら上々の滑り出しのようだ。まあ、US本国ではこういう笑える映画は人気が出るでしょうな。わたしの前の列に座っていた白人のおっさんはもうずっと一人で爆笑していたし。わたしも、つい笑ってしまったのも事実だ。でもなあ……これで良かったのかなあ……ムジョルニアはどうするのだろうか……いくら真の力に目覚めたと言っても、ムジョルニアなしでTHOR様が戦い抜けるとは思えないし……あああ……くそう、早く『Infinity War』が観たいですなあ! その思いが強まった作品でありました。あ、その前に『BLACK PANTHER]』ですな。そちらも超楽しみです! 以上。

↓ 実は『BLACkPANTHER』は原作を読んでません。ので、かなりにわか知識です。

 時は1984年12月。当時中学生で、すでに順調に映画オタクへの道を歩んでいたわたしは、友人とともに朝イチでチャリにまたがり、有楽町へ向かった。目的は映画鑑賞。当時、金のない中坊のわたしは、毎回ではないけれど、有楽町までチャリで映画を見に行くことは普通だった。何しろ、往復の電車代でパンフレットが買える(当時のパンフレットは300円~400円が普通)のだから、家から有楽町まで片道23㎞ぐらいで、今のわたしなら1時間あれば余裕で行けるけるし、当時は1時間半ぐらいはかかったと思うが、まあ実際全く苦にはならなかった。むしろ、頭の悪い中坊としては、なかば「銀座はオレの地元ですけど?」みたいなアホな優越感で銀座をチャリで爆走したものである。全然地元じゃないのに。
 そして、その年の9月に完成したばかりの新築の有楽町マリオンの裏手にチャリを置き、向かうは11階の「日本劇場」、通称日劇である。その年の12月公開のいわゆる「お正月映画」は、3作品の「G」の対決だったことを明確に覚えている。一つは、丸の内ピカデリー1で公開される『Gremllin』 (グレムリン)。当時のわたしたちエロ中学生のアイドルだったPhoebe Catesちゃんも出ていたアレである。そして二つ目が、日劇東宝で公開された『ゴジラ』である。当時も相当久しぶりの『ゴジラ』で、昭和最後の、16作目の作品だ。そして最後の三つ目の「G」が、日本劇場で公開された『GHOSTBUSTERS』である。

 というわけで、その『GHOSTBUSTERS』が32年ぶりの大復活である。ま、実際は1989年に『2』があったので、ええと、そこから数えれば27年ぶりか。まあとにかく、新たなゴーストバスターズが、しかも主人公チームは女性にチェンジして復活するというニュースを知ったとき、そりゃあ有楽町マリオンに観に行かないとダメだろ、とわたしは反射的に思ったわけで、昨日、宝塚歌劇を見に行った後で、同行のヅカ仲間の娘っ子どもと別れた後、一人、マリオンへ向かったわけである。なお、娘どもは鼻息荒く、日比谷公園へポケモン狩りに向かいました。お前ら……ホント流行りモンが好きだなあ……。
 で。結論から言うと、実はそれほど内容的に期待していなかったのだが、実に面白く、大変楽しめたのであった。この映画はですね、3Dで観た方がいいと思いますよ。かなり、ゴーストやゴースト捕獲ビーム(?)が画面から飛び出して、その点もとても楽しめました。

 もう、物語は上記予告の通りだし、実際、ほぼ想像の範囲内である。ただ、わたしが一番、あれっ!? そうなの!? と思った点は、かつての32年前のバスターズたちのお話の続編、というわけではなく、完全に新たな物語で、32年前の設定を引き継いでいるわけではなく、「ゴーストバスターズ」という存在がすでに世に知られた世界ではない、という点だ。完全に新規ストーリーである点は、まあ、十分アリ、ではあると思うが、一方では、また同じ展開になる危険性もあって、そういう意味ではまたかよ、的な感想もありうる。
 まあ、だからこの作品は「続編」ではなく、いわゆる「リブート」なわけだが、その、観客の「またかよ」を回避するために考えたのが、「主人公たちを、女性にしちゃえばいいんじゃね?」というアイディアだろう。それは時代の反映かもしれないし、まあ、いろいろ理由はあるんだろう。結果的に、わたしは楽しめたので、この試みは成功したとわたしは思う。しかし残念ながら、興行成績的には、正直なところ期待ほどのヒットではないようなので、今後、続編が作られるのかどうかよくわからない。(※現状、US国内で123M$(=123億円)。この数字だけ見ると大ヒットだが、製作費が144M$だったようだ。また、US以外ではまだ71M$しか稼いでいない。こりゃちょっと厳しいか……)
 というわけで、わたしとしてはかなり誉めているわけだが、細かく見れば、脚本的な粗は結構ある、とりわけ、ゴースト捕獲・格闘用の各種謎アイテムは、はっきり言って全く何なのかよくわからないし、敵キャラの動機も浅く背景もほぼ描かれないので、お前はいったい何なんだ? と思わなくもない。
 でも、それでも楽しめたのは、全体のトーンが明るく笑わせてくれるもので、やはりキャラクターが生き生きしているのが一番効いているんだろうと思う。正直、わたしレベルの映画オタクでも、知っている役者は電話番としてやってくるアホな青年を演じた雷神THORことChris Hemsworth氏ぐらいだったのだが、4人の女性バスターズたちはとてもよかったと思う。もちろん、すっとぼけたTHORも大変笑わせてもらいました。
 主人公エリンを演じたのが、Kristen Wiigさん42歳。本作では、終身在職権間近の物理学(?)教授ということで、野暮ったい服と髪型といういで立ちだったが、まあ、実際の彼女はお綺麗なんじゃないすかね。意外とキャリア豊富な女優で、わたしが観た映画も結構あるようだが、どうも全然思い出せない。「サタデー・ナイト・ライブ」出身のバリバリのコメディエンヌですな。言ってみればまあ、いわゆる女芸人なんでしょうな。
 そしてエリンのハイスクールからの友達で、同じく学者だけど、超常現象の方をずっと研究し続けていたアビーを演じたのが、Melissa McCarthyさん45歳。この方も「サタデー・ナイト・ライブ」出身らしいすな。『BridesMaids』でアカデミー助演女優賞にノミネートされてるんですと。へえ~。
 で、ほかの二人のバスターズも「サタデー・ナイト・ライブ」出身のようで、それも当たり前か、と思う。なにしろ、オリジナルの32年前のバスターズたちも、まさしく「サタデー・ナイト・ライブ」出身者だったのだから。ちなみに本作では、3人のオリジナルバスターズたちがちょろっと顔を見せてくれて、そんな点はわたしのような回顧厨にも配慮がばっちりだ。Bill Murray氏は結構ちゃんとした役で出てくるし、Dan Aykroyd氏はタクシー運転手でちらっと出演する。4人目のバスターズとしてすっとぼけた黒人のあんちゃんだったErnie Hudson氏も御年70歳でしっかり顔を見せて売れたのもうれしかったし、オリジナルのヒロイン、映画史上最強ヒロイン・リプリーでおなじみのSigourney Weaverさんも、ラスト、未だお綺麗なお姿で、意外なキャラとして出てきてくれるのも、おっさん大歓喜でしょうな。唯一、オリジナルバスターズでもう亡くなってしまったHarold Ramis氏(丸メガネのメカ担当の彼)に対しては、きちんとエンドクレジットで「ハロルド・ライミスに捧ぐ」と出てくるのも、きちんと礼儀にかなっていると思う。そういう、オリジナルへのリスペクトはきっちり守られているのも、全体の空気感に影響しているんだと思う。やっぱりですね、こういう、いわゆる「リブート」では、誰もが知っているあの曲をきっちり使うのが一番ですな。あの曲が流れるだけで、気分も上がるもんね。というわけで、わたしはたいへん楽しめました。以上。

 というわけで、結論。
 もう、結論も何もないというか書いちゃったけれど、そうだなあ、32年前に、オリジナルを観て楽しんだ方なら、何の問題もなく、本作も楽しめると思う。ただ……オリジナルを知らない世代はどうなんだろうな……その辺はよくわからんです。ひょっとしたら、若者には通じない可能性もあるのかな。あとですね、会話の中に、かなり多くの映画ネタがちりばめられていて、その辺は映画道・黒帯所有者でないと通じなかったかもしれない。まあ、わたしが観た現在のマリオン11階にある日劇1は、結構女性一人客も多かったです、が、やっぱり年齢層チョイ高めだったすね。以上。

↓ なんか……もう「2」の内容を全然覚えてないんですけど……どんな話だったっけ?
ゴーストバスターズ 1&2パック [Blu-ray]
ビル・マーレー
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2014-12-03

 

 「モービーディック」と言えば、日本では『白鯨』として知られる小説である。
 Herman Melvilleによるその小説は、アメリカ文学史上燦然と輝く古典として有名なわけだが、わたしも確か大学院生のころに読んで、かー、こりゃまた読みにくい、と思った覚えがある。さっきわたしの本棚を漁ってみたら、岩波文庫版の<上><中><下>の3冊が出てきた。奥付によると、1994年発行のものであるらしい。もう読んだのは20年以上前なので、「読みにくかった」という印象しか残っていないが、まあ、この作品が書かれたのは1851年、つまり江戸時代、幕末期なので、そりゃあ読みにくいのも当たり前と言ってよかろう。翻訳も、いわゆる古典めいたものなので、その読みにくさは結構ハンパない。
 ただ、その物語が実話をベースにしていることは、正直知らなかったというか、全く意識したことはなかった。岩波文庫の解説(なぜか<上>の巻末に掲載されている。<下>じゃなくて)にも、Melvilleが『白鯨』を書くに至った時代背景などは妙に詳しく書かれているけど、ちょっと引用してみると、「メルヴィルはこれを書くに当たっては、自分の海洋生活の体験を元としたことはいうまでもないとして、捕鯨についての多くの記録を渉猟したのである。たとえば、抹香鯨に1820年に沈められたエセクスという船があったり(略) しかし、そういう体験や勉強を基として、メルヴィルは測り知ることのできぬほど強力な想像力をはたらかせ」ることで、書いたものだそうだ(※岩波文庫版<上>P.331より)。なので、わたしは全くのフィクションだと思っていたし、まあそういう認識でいいのだと思う。
 というわけで、相変わらず無駄に前書きが長くなったが、昨日観た映画、『IN THE HEART OF THE SEA』(邦題:白鯨との闘い)は、Melvilleの『白鯨』を映画化したものではなく、その元となった実話(ベースの本)を映画化した作品で、まさしく、上記に引用した部分で触れられている「エセクス号」の物語だ。

 たぶん、一番世の中的に、へえ、そうなんだ? と誰もが思うポイントは、この物語は1820年という、日本で言うと江戸時代の話であるという事ではなかろうか。当時の世界情勢をちょっと振り返っておくと、まず舞台となるアメリカは、南北戦争よりずっと前であり、まだいたるところでインディアンが虐殺されている時代で、西海岸はまだスペインやメキシコ領だったり、今とは全く国境線も違う時代である。ヨーロッパはというと、ナポレオンが失脚してまだ数年しか経っていない頃合いで、ようやく、今のヨーロッパに近い(あくまでも近いだけで詳細はかなり違うけど)国境線が出来つつある頃だ。文化的に言うと、まだ文豪ゲーテは現役だし、ベートベンなんかも「第9」を書いているころである。日本はというと、当然鎖国中で、将軍家としては11代将軍家斉の時代である。そんな時代の話だということは、意外と誰しも、へえ~? と思うのではなかろうか。
 すなわち、産業革命前の世界であり、蒸気機関も生まれたばかりでまだ船の動力としては使われておらず、本作で登場する捕鯨船も、もちろんのこと帆船である。また当然電気もない。石油が発掘されて産業に利用されるのもまだ数十年後だし、ガス灯も、かろうじてイギリスで設置されていた程度で、普及していたとは言いがたい時代である。何が言いたいかというと、この時代、人類が夜を克服するための明りとして「油」は非常に貴重で、かつ需要も高かったということだ。そして当時のアメリカにおいて、さまざまな「油」がある中で、「鯨油」は重要な産業資源であったということである。
 なので、現代アメリカ人には捕鯨反対を声高に訴える連中がいるが、そもそもお前らが乱獲したんだろうが!! という歴史がある。もちろん、日本でも捕鯨は盛んであったようで、Wikipediaによれば享保から幕末にかけての130年間で21,700頭にも及んでいたそうである。もちろん、鯨油が欲しかったのは日本もそうだが、日本人は食糧としてもおいしくいただいていたわけである。
 ま、こんな話は今回はこの辺にしておこう。
 一応、こんな歴史的背景を知っておいたほうが、本作はより興味深いとは思うが、実は、本作の一番の見所は、わたしとしては捕鯨ではなく別のところにあった。
 まず、本作の物語の構造を簡単に説明しておくと、作家Melvilleが、エセックス号の事件の30年後に、唯一まだ存命の生存者に取材に行き、その生存者が少年の頃に遭遇した悲劇が回想として描かれる構成になっている。そして、エセックス号はいかなる航海を経て「白鯨」と出会い、沈没するに至ったのか、が語られる。そこでは、船長と一等航海士の確執があったことや、初めてクジラを仕留めたときの興奮などが描かれるが、わたしが一番の見所だと思うのは、エセックス号が白鯨によって沈められた後の、漂流の顛末である。そこで描かれる極限状態ゆえに、少年は老人となってMelvilleが取材に来るまで、「あの時何が起こったのか」を誰にも語ることが出来なかった。そのすさまじい様子は、ぜひ劇場で観ていただきたい。
 いわゆる「漂流もの」は、今までいろいろな映画で描かれているが、最近で言えば、まさかのアカデミー監督賞を受賞した『LIFE OF PI』だろうか。あの映画はなんとなくファンタジックなところがあって、ちょっと微妙だが、わたしのイチオシ「漂流」映画はやはり『CAST AWAY』であろう。わたしがあまり好きではない、Tom Hanksのベストアクトだとわたしは思っている作品だが、とにかく、漂流後のガリッガリに痩せたTom Hanksの、悟りを開いた仙人のような眼差しが凄まじい映画である。今回も、一等航海士を演じたマイティ・ソーことChris Hemsworthの、げっそり痩せた姿を観ることができる。あれって、CGかな? 本当に痩せたのかな? ちょっと、わたしにはよく分からなかったけど、結構衝撃的にげっそりしたマイティ・ソーは、劇場へ行って観る価値があると思う。
 役者陣としては、あと3人、わたしに深い印象を残した演技を披露してくれた。
 まず、事件当時最年少の船員を演じた、Tom Holland君である。彼は、日本では2013年に公開された『The Impossible』でスマトラ島沖地震による津波に遭う家族の長男を演じて注目を浴びたが、何しろ今後、彼をよく覚えておいて欲しいのが、次期『SPIDER-MAN』を演じることが決まっており、今年のGW公開の『CAP:CIVIL WAR』に早くも出てくることが噂されている。今年20歳になるのかな、まずまずのイケメンに成長するのではないかと思われる注目株である。本作でもなかなか悪くないです。本作で早めのチェックをお願いしたい。
 次は、Cillian Murphy氏である。もうかなりの作品に出ているが、わたしがこの男で忘れらないというか、この男を初めて観たのが、Danny Boyle監督の『28Days after』だ。冒頭、無人のロンドンをうろつく彼は非常に印象的だが、その前の、素っ裸で目覚めたばかりの彼の股間がモザイクナシでブラブラ映っているのが、わたしは椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。えええ!!? だ、大丈夫かこの映画!? と妙なことが心配になったものだ。本作では、Chris Hemsworthが一番信頼する航海士を演じており、彼もまたガリガリに痩せて髪はボサボサ髭ボーボーの姿を見せてくれる。
 で、3人目に挙げたいのが、若きQとしてお馴染みのBen Wishaw氏である。本作では、作家Melville役で出てくるのだが、この人、わたしとしてはどうにも『CLOUD ATLAS』でのBLシーンが強烈な印象が残っていて、3月公開の『The Danish Girl』(邦題:リリーのすべて)でも、2015年のアカデミー主演男優賞を受賞したEddie Redmayne氏と熱いラブシーンがありますね。どうにも、目つきからしてBL臭を感じさせる独特の空気感を持った男だが、どうやら本物らしく、同姓婚したそうです。別にわたしは偏見はないので、お幸せになっていただきたいものだが、全国の腐女子の皆様のアイドルとして日本でも人気が出るといいですな。※2016/01/18追記。この男、『Paddinton』で紳士過ぎる熊さんの声も演ってるんですな。へえ~。
 最後に監督のRon Howard氏であるが、さっきこの監督のフィルモグラフィーを調べてみたら、たぶんわたしは全作観ているんじゃないかということが判明した。手堅いベテラン監督で本作もいつも通り見せるところは見せながら落ち着いた演出であったと思う。見所となる「白鯨」のCGは質感も高く、本当に生きているようで申し分ナシである。が、やはり本作は3Dで観るべきだったのかもしれない。わたしは2D字幕で観てしまったが、3Dであればもっと迫力の映像だったのかも、とは思った。まあ、いずれにせよ、なるべく大きなクリーンで観ていただくのが一番であろう。 

 というわけで、結論。
 どうでもいいことばかり書いてしまったが、『IN THE HEART OF THE SEA』(邦題:白鯨との闘い)は、わたしとしては「白鯨」よりも、船内の緊張感や沈没後の漂流の様子のほうが見所だと思った。役者陣の熱演もなかなかですので、ぜひ、本作は劇場の大スクリーンで観ていただきたいものである。以上。

↓ Ron Howard監督は今、「ラングトン教授」シリーズ最新作、『INFERNO』を撮影中だそうですよ。
インフェルノ (上) (海外文学)
ダン・ブラウン
角川書店
2013-11-28

インフェルノ (下) (海外文学)
ダン・ブラウン
角川書店
2013-11-28




 

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