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 うーーん……なんつうか……なんかイマイチ楽しめなかったような気がするな……。何の話かって? 昨日、わたしは会社帰りの夜、昨日から公開になったシリーズ最新作『Jurassic World:Fallen Kingdom』を観てきたのだが、はっきり言って非常に後味悪く感じ、なんだか、さっさと帰ろう……という気になってしまったのである。
 おそらく端的に言うと、物語に登場するキャラクターたちがことごとく愚かで、「先を考えない」身勝手な行動ばかりするため、わたしはなんだか腹が立ったのではないかと思う。科学技術の発達は、そりゃあ人類にとっては歓迎すべきものであろう。もちろんわたしだってそれを大いに享受しているのは間違いない。しかし、そこにはやはり、「倫理」というか、「それをやっちゃダメだろ」と思えるような何かがあるはずなのに、それらの倫理的・心理的ハードルを、いともたやすく、そして下劣に踏みつぶして超えていく人々は、どうやら間違いなく存在するものらしい。ただ、そういった連中こそが科学を発達させるトップランナーかもしれず、なんかもう、わたしとしては人類に絶望せざるを得ない気分をこの映画で味わうこととなったのである。
 なんつうか……マジでもう、人類は絶滅してもいいんじゃねえかなあ……まったく無責任だが、そんな気のする映画であった。

 わたしはこの予告を観て、あの恐竜の島で火山活動が活性化し、そこに住まう恐竜たちを別の場所?に引越しさせる話なんだろう、と思っていたのだが、結構その事前の予断は間違っていて、今回も結局、明確な悪党がいて、そいつの悪だくみでマズいことが起きる、というお話であった。
 つまり、この『Jurassic Park』シリーズは、ほぼ常に、「人災」なのだ。誰かの悪意が明確に存在しているのである。しかも、だ。実にばかばかしいことに、今回もそうだし、まあ毎回そうなのだが、その悪意の源にあるのは「金」なのである。ホントばかばかしい。なんで金のためにそんなことをするんだ、実に嘆かわしい……という思いがどうしてもわたしとしてはぬぐい切れない。
 おそらく、第1作目が公開された1993年と、それから25年を経た現在の2018年では、相当社会のありよう? が変わっていて、何でもかんでも「リスク」計算をしたがる今の世では、まず前提となる恐竜のクローン復元自体、挑戦しようとする企業はいないと思う。なぜなら危険すぎるからだ。あらゆる賠償責任を検討すれば、まず腰が引けてしまうような気がする。たとえ莫大な利益が得られようとも、万一のリスクを考えたら割に合わないのではなかろうか? おまけに、作中で描かれる通り、どんなに準備をしても、たった一人の人間の裏切りで、すべてがパーになるのだから。
 しかしまあ、その点を否定したらこの映画は成立しないので、その「得られる利益>万一の賠償責任」で、莫大な投資は回収して余りある事業企画だとしておこう。事業として収益が成り立ち、ちょっと危険な動物たちのいる動物園、程度に思って運営しようとしていたと思うことにしよう。何も危険はないよ、と。
 しかし、最初の「Park」シリーズ3作になく、前作及び今回の「World」シリーズ2作に共通する違いは、DNA工学の進歩による「遺伝子操作=ハイブリッド」恐竜の「製造」だ。ただでさえ危険極まりない生物を人為的に掛け合わせ、新種を製造する。これはもう、「やってはいけないこと」に他ならないのではなかろうか。もちろん人類は、そういった「人為的交配」による新種の製造をこれまでもう散々やってきたわけだが、予測不能なアンコントローラブルなことをするのは、まあ、たとえ自分が死んだってその影響は残るわけで、責任の取りようがない。そう、自ら責任を取れない、自らがコントロールできないことをするのは、もう完全に許されることではないだろう、とわたしは思う。
 その点で、わたしは前作の感想でも書いたが、この「World」シリーズでの一番の悪党は、DNA工学者であるDr.ウーなる人物だと断言したい。こいつは本当にクソ野郎で、前作ではさっさとバックレてしまうし、今回も……生きてんのかな? 死んでないと思うのだが、コイツこそ、明確に「ガブリ」と殺られてほしかったのに、またうやむやだったのが実に腹立たしく感じた。
 なお、わたしは完璧に忘れ去っていたのだが、このDr.ウーなるクソ野郎は、シリーズ第1作『Jurassic Park』にも登場してたんですね。さっきWikiを見て初めて知ったというか思い出したわ。ともあれ、コイツの悪行に比べたら、金目当ての悪党どもは大したことないと思う。基本的に、金目当ての小悪党どもは全員「ガブリ」の刑に処されるので、それはそれでざまあ!と観ていてすっきりするのだが、この博士はホント許せんとわたしは思った。
 そして、本作で大問題となるのは、人間の悪党どもはもはやどうでも良くて、一体、現代に製造された恐竜たちは、この後どうしたらいいんだろう? という点であろう。確かに、現代の高度に発達した文明が生み出した武器を使用すれば、いざという時の殺処分は可能ではある。その意味では、無理やりであろうとコントロール可能、とも見ることができる。しかし、そこには「命」に対する尊厳もクソもなく、家畜同様の扱いだ。それでいいのかどうか、そりゃあよくないのは間違いなくても、それしか方法がなければ殺るしかない。殺らねば殺られるわけだし。
 そういった正論は分かっていても……やっぱり、溶岩の迫る中で、巨大な草食首長竜(ブロントサウルス?)が噴煙に飲み込まれて崩れ落ちていくシーンなんかは、なんか悲しくなったすねえ……島の脱出シーンは大変つらかったす。そしてラストは、カリフォルニアに連れてこられた恐竜たちを解放して終わるだけだが、まあ、そりゃ無責任すぎると思っても、やっぱり殺されずに済んでちょっとほっとしたわけで、要するに、この映画が描くのは人間のエゴがもたらす地球規模?の悲劇なわけだが、結局のところ観ているわたし自身も、人間のエゴの塊だったな、という妙なオチがついたように感じた。なんつうか……とにかく愚かだよ。登場人物全てが。ついでに言うと観客のわたしも、ね。
 というわけで、以下、キャラ紹介をざっと記して終わりにしよう。
 ◆オーウェン:前作の男主人公。元ヴェロキ・ラプトルの飼育員で、「ブルー」と名付けたラプトルを飼いならす男。ブルーが、すっごくけなげなんすよ……泣ける……ブルーよ、元気でな……。なお、このオーウェンという男は、迫りくる火砕流に巻き込まれても無傷というスーパーマンなのだが、火山国に住まう我々日本人から見るとちょっとありえなさ過ぎるが、まあ、こまけぇことはどうでもいいか。コイツの愚かさは、危険なラプトルを人間に従わせようとしたことにあって、それがどんな悪事に繋がるか無自覚であった点であろうと思う。本作では、カリフォルニアに連れてこられた恐竜たちが、金持ちの悪党どもにオークションにかけられ、おとなしい草食恐竜はペットとして、凶暴な肉食獣は兵器として買われていくのだが、オーウェンのやったことは兵器利用のきっかけともいえるわけで、まあ、コイツも無罪ではないすな。演じたのはMCUのスター・ロードでお馴染みChris Pratt氏39歳。大変イケメンだと思うけど、頭は良さそうに見えないのが弱点かも……。
 ◆クレア:オーウェンの元彼女で元パーク運営会社の人間。彼女の愚かさは、まあ、パーク運営にかかわったこと=恐竜を金もうけに使おうとしたことでしょう。そして、今回の悪党を無邪気に信じて、冒頭30分であっさり裏切られて窮地に陥るのは、観ていて、そりゃそうなるな……この人アホなの? と愚かさを感じざるを得なかったすね。そんな彼女を演じたのはByrce Dallas Howerdさん37歳。今までにいろいろな作品でこの方をお見かけしているけど、サーセン、趣味じゃないす。
 ◆ロックウッド:最初のパークを作ったジョン・ハモンドの親友でウルトラ金持ち。もうかなりのおじいちゃんで体の具合は良くない。今回、このおじいが恐竜の保護をクレアに提案するスポンサーとなるのだが……。彼の愚かさは2つあって、一つは自らの財産管理をたった一人のゲス野郎に任せっきりで、人を見る目もないし、いろいろ知恵の足りない点にあろう。普通、あれだけの広大な土地&大邸宅&財産があったら、資産管理会社をきちんと立てて法人化するだろうに、たった一人の男に託した意味が分からん。愚かすぎる。一応作中では「財団」と称されていたが、財団なるものの実態は一切描かれず、財団なるものが一人の悪党に支配されている描写はすごく違和感があった。まあ、彼は自らの愚かさは裏切られて命で贖うこととなったのだが、せめて信頼する弁護士ぐらい身近に置いとけよな……。そして2つ目の愚かさは、許されざるクローン製造に手を付けたことだろう。これはネタバレすぎるので書きません。ホント愚かとしか言いようがない。演じたのは、超ベテランのJames Cromwell氏78歳。この方は若い頃から顔を知ってるだけに、なんかすっげえ老けましたなあ……年齢が年齢だけに当たり前なんだけど、そのふけ姿に若干ショックっす。
 ◆イーライ・ミルズ:おじいの財産を管理する財団とやらを支配する悪党。彼の動機は「金」だけ。実に底が薄く、薄っぺらな小悪党。見事八つ裂きにされますので、ざまあ、であります。コイツもそうだし、終盤に出てくる恐竜オークション参加者の顔がおっそろしく、あさましい、醜い人間どもの顔をしていて、実に不愉快であった。とにかく、いやーーなツラしてますよ。演じたのはRafe Spall氏35歳。この人は観たことない顔だな、と思ったら、どうやら私はかなり多くの作品でコイツを観ているはずらしく、全然気が付かなかった。どうやらこの人は、『PROMETHEUS』で一番最初にフェイスハガー的謎生物に襲われて死ぬ隊員を演じた彼らしいすね。全く顔を覚えてなかったわ。
 他にも、クレアの部下の獣医の女の子とかPCオタクの青年とか、あるいは金目当てに雇われている傭兵集団のリーダーのクソ野郎とかが出てくるけど、知らない人なので省略。そう、一人だけわたしの知ってる人が出てました。それは、特徴的な顔と163cmの小柄な体格が他の誰とも間違えようのないToby Jones氏で、えーと、例えば『CAPTAIN AMERICA』に出てきたヒドラのマッドサイエンティストのゾラ博士を演じた方ですな。今回の役は、凶悪なハイブリッド恐竜の製造を指示し、オークションを開催していた武器商人? なのかな、とにかく悪党で、「ガブリ」の刑に処せられます。実に愚かであさましいツラをした野郎だったね。
 最後に監督だが、本作を撮ったのはスペインの新鋭Juan Antonio Bayona氏43歳。わたしはこの人の作品は『Lo Impossible』しか観ていないけれど、それほどすごいと感じるものは特になく、普通にハリウッド大作だったな、ぐらいの印象しか持ち得なかった。CGは勿論すごい質感で、本物そのものにしか見えないけれど、ある意味もうお馴染みな映像だし、新しさも感じなかったかな。なのでとりわけメモしておくことはないす。

 というわけで、さっさと結論。
 3年ぶりのシリーズ最新作となる『Jurassic World:Fallen Kingdom』を観てきたのだが、そこに描かれているものは、無邪気な少年めいた恐竜へのあこがれのようなものではなく、あさましい人間たちの純然たる欲と悪意であった。まあ、そんな物語を観て無邪気に楽しめるわけもなく、当然後味悪いというか、スッキリしないわけだが、なんつうか……やっぱり、やっちゃあいけないことはやっちゃあいけないわけで、何をやっちゃあいけないのか、それを判断できるのは、おそらく個人の中にある「良心」と呼ばれるものなのだろうと思う。まあ、その良心を失くしたくはないですな、という教訓としておこうと思います。いやあ……ホントに人間は愚か者ばっかりで絶望しかないす。もちろん、自らもその一員ということは忘れないようにしたいものであります。以上。

↓ もう30年近く前に読んだ原作は大変面白かった。そして、この原作単行本版のカバーイラストの本物の原画を、以前「生頼範義展」で観ました。原画は超オーラが発散されてたっすね。
ジュラシック・パーク〈上〉 (Hayakawa novels)
マイクル クライトン
早川書房
1991-06-01



 わたしはこのBlogで何度も表明しているが、かなりの声フェチである。とりわけ、女子の、容姿とはギャップのある、ガラガラ声というか、低めの声が好きだ。そんなわたしが愛するハリウッドスターが、Jennifer Lawrence嬢である。まあ、彼女についてもこのBlogで何度も言及しているので今更詳しくは説明しないけれど、とにかく、彼女の声は極めてわたし好みで、ついでに言うと、やけにむっちりしたBODYも大変よろしい。1990年生まれでまだ26歳。すでに栄光のオスカーウィナーの座を手にし、全世界的にも人気の高い女優である。が、どういうわけかここ日本においては、映画は妙なガラパゴス的進化を遂げており、ハリウッド作品が全然売れなくなった今、どうもJenniferちゃんの人気はいまひとつなのかもしれない。人気というか、知名度的にも相当怪しいと思う。もちろん映画好きならそんなことはないと思うけれど、街の人々にアンケートでも取ったら、知らない人の方が断然多いのではなかろうか。
 わたしがそう思う根拠は、実際のところ無きに等しいのだが、2015年にUS公開された『JOY』という作品が日本では公開されなかったのがわたしはいまだにガッカリしている。この映画は、監督はJenniferちゃんにオスカーをもたらした『Silver Linings Playbook』(邦題はなんだっけ……「世界に一つのプレイブック」か)を撮ったDavid O Russell氏だし、 共演も、Bradley Cooper氏やRobert DeNiro氏なのに。まあ、実際『JOY』はUS興行で全然売れなかったし、評価としては微妙だったようだ。同じ監督共演陣の『American Hussle』も微妙作だったので、『JOY』が日本では売れない、と判定されてしまったのだろう。こういう見る目のないところが、またしても20th Century FOXのダメさ加減だが、ほんと、FOX JAPANはマーケティングセンスがゼロだとわたしとしては断罪したい。あれっ!『JOY』はちゃんとBlu-rayは発売されてるんだ!? しかも先月発売じゃん! なんだ、全然知らなかった! しかし……今どき売れるわけないのに……さっさとWOWOWで放送されることを祈ろう。どうせ、FOXもさっさと金にしたいだろうし、おそらく早晩放送されるとみた。早く観たいものですなあ……。
ジョイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
ジェニファー・ローレンス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2017-02-22

 さて。なんでこんなどうでもいいことを長々と書いたかというと、Jenniferちゃん主演の映画が去年US公開されて、これもまた日本で公開されねえのかなあ、とちょっと心配だったからである。しかし、今回はその心配は杞憂に終わり、無事、昨日から日本で公開されるに至ったのである。その映画のタイトルは、『PASSENGERS』。恒星間航行が一般化された未来、植民星へ120年の航海に出た宇宙船を舞台にした、バリバリのSF作品である。
 というわけで早速観てきたのだが、結論から先に言うと、映像と音響はとても素晴らしく、非常に気合の入った作品である、が、物語的にはちょっと意外な展開で、若干微妙かも? と思えるような作品であった。しかしそれでも、Jenniferちゃんと、その相手役Chris Pratt氏の演技ぶりは素晴らしく、わたしは結構楽しめました。ま、この映画に合わせてFOXが『JOY』のビデオ発売を決定したのは確定的に明らかで、そういう、人の褌で相撲を取る的なこすっからい点も、わたしのFOXに対する評価を下げるばかりである(ちなみに『PASSENGERS』はSONY作品、というかCOLUMBIA作品です)
 以下、どうしても決定的なネタバレを書かざるを得ないので、気になる人は即刻立ち去ってください。読む場合は自己責任でお願いします。

 物語はもう、上記予告の通りと言って差し支えないだろう。冷凍睡眠で120年の航海中の宇宙船内で、一人目覚めてしまった男。しかもまだ航海は90年続く。絶望的な孤独の中、さまざまな努力にもかかわらず、もはや再び冷凍催眠に戻れない。すなわち、船内で生涯を終えることが確定的というわけだ。しかしそんな中、もう一人、目を覚ました女性が現れ、しかもどうやら宇宙船にもなにやら異変が起きていて――てな展開を誰しもが予想するだろうし、わたしもそう予想していた。なので、問題は、なぜ目覚めてしまったのか、という点が一番のポイントなのだろう、と思っていたわけである。
 この、わたしによる完全なる予断は、およそ9割方は合っていた、のだが、わたしが全く予想外だったのは、2人目の女性の目覚めた原因である。ここから先はもう、本当に決定的なネタバレだけど、書かないと何も語れないので書いちゃいますが、なんと最初に目覚めた男が、あまりに寂しくてたまらず、眠れる美女に一目ぼれしてしまい、自ら装置をいじって目覚めさせてしまうのだ。こうして2人目の女性が、事故ではなく、男の手によって、ある意味無理やり目覚めさせられてしまったのである。この展開にはわたしは非常に驚いた。
 この行為に至るまでの、男の孤独や苦悩は、それなりに丁寧に描かれている。1年、どうやってもダメで、絶望していた男。彼が目覚めた原因は、相当後になって判明するが、まあ、要するに冒頭で描かれる通り、宇宙船が小惑星帯に入ってしまった際に宇宙船に穴が開き、そこから船体に異常が発生して男のカプセルだけ誤作動してしまった、というもののようで、何とか一人で頑張る姿は観ていて結構つらいというか、ああ、気の毒に……という同情がわくにやぶさかでない。そして彼は、偶然見かけた美女のことをいろいろ知っていくうちに、どうしても、彼女と話がしたいという思いが募っていく。彼女はどうやら有名な作家で、植民星での体験を本にするために搭乗していたらしい。しかし―――オレの手で目覚めさせてしまったら、二度と元に戻せない(冷凍ポッドのマニュアルを発見し、そのポッドは冷凍状態を維持するだけのもので、冷凍処置は船内ではできず、解除するだけなら方法があることを発見する)。彼女もまた、船内で生涯を終えるしかない。そんなことはオレにはできない! と何度も苦悩する。が、とうとう……やってしまったという展開であった。
 おそらくは、この男の行動を容認、理解できるかどうかが、本作を面白いと思えるかどうかの分水嶺だろう。そして、ほとんどの人が、理解はできても容認は出来ないだろうと思う。気持ちは分かるというか想像は出来る、けど、それをやっちゃあ、おしめえよ、であろう。わたしだったらどうするか……そうずっと考えているのだが、やっぱり、わたしだったら起こさなかったと思う。たぶん、だけど。しかし、そう考えると宇宙船のリスクマネジメントが、意外とザルってことなんだろうな。物語内では、絶対に起こらないアクシデント、として万一冷凍催眠から覚めてしまったらどうするかという対応策は一切用意されていないという鬼設定であった。
 なので、こうなると、果たして男はどんな償いをするのだろうか? という点に興味が移る。自分が目覚めさせたことを隠しながら、どんどんと二人はイイ仲になっていくが、とあることで自分の行為がバレ、女性に糾弾され、二人の仲は決裂する。しかし、宇宙船の異常はどんどんと危機的になり、とうとう二人は――という流れは、いかにも美しく、まっとうなストーリーなのだが、果たして万人が感情移入できるかとなると、若干怪しい。宇宙船の異常に関しても、ちょっとどうなんだろうという気もするし、第3の覚醒者(が出てくるのですよ!)についても、ちょっと都合が良すぎるような気もする。まあ、そのあたりは観た人の好みによるだろうと思うので、深くは突っ込まないが、わたしは決してつまらなかったとは思わないけれど、もうちょっと面白くできたんじゃないかなあ、という感想である。やっぱり、二人同時の覚醒で、二人で問題解決に当たった方が良かったんじゃなかろうか……1人目の男が目覚めて1年、そして2人目の女性を起こして1年、それから船体異常が深刻になる、という妙な時間経過がわたしは余計だったように思うのだが、どうでしょう? ああ、でもそれじゃあ、この映画の描く「孤独」が身に沁みないか。うーん。。。宇宙船の異常が出るのが遅すぎのような気がしてならないんだよなあ……。
 ま、いいか。しかし、いずれにせよ、エンディングは結構グッとくるものがあったと思う。最後の女性の決断は、一応の救いになっていて、わたしはアリだと思った。そういう決断を下したんだね、と分かるエンディングは、お見事でした。ズバリ、この映画はハッピーエンドですよ。
 しかし、120年の旅に出ることは、すなわち地球に残した人とはもう会えないわけで、事実上死んだも同然なわけだけれど、それでもやっぱり、人類は宇宙に旅立つものなんですかねえ。まあ、そんな時代が来るまで我々は生きてはいないけれど、なんか『銀河英雄伝説』の始まりで語られる人類の銀河への進出みたいですな。とにかく本作は映像がすごいです。宇宙船のデザインもカッコイイし、文句なしですな。そうだ、俳優と監督についてちょっとだけ。もう、主演の二人はいいよな? Jennifer Lawrence嬢は可愛いし、Chris Platt氏はまあイケメンですよ。そしてこの二人以外に、重要なキャストが二人いるのでメモしておこう。ひとりは、アンドロイド・バーテンダーを演じたMichael Sheen氏。どっかで見た顔だと思ったけれど、名前は知らなかった。わたしはどうやらいろいろな映画でこの人を観ているようだが、明確に名前と顔は一致してなかったすね。どうやら舞台で活躍している方みたいですな。演技ぶりは実にアンドロイドっぽくて、非常に良かったと思う。そしてもう一人が、第3の覚醒者として物語の後半に出てくる宇宙船のクルーを演じたLaurence Fishburne氏だ。『The Matrix』シリーズのモーフィアスでお馴染みですが、結構突然の登場でびっくりしたけど、渋かったすねえ。この映画に出てたことを、まさに画面に登場するまで全然知らなかったす。
 最後。監督について。本作を撮ったのはMorten Tydum氏というノルウェー出身の人。全然知らない人だなあ、と思ってパンフレットを読んで驚いた。この人、『The Imitation Game』(邦題:イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密)を撮った人だった。全然名前を思えてなかったよ。前作は20世紀の歴史ドラマ、今回はドSF作品と随分ふり幅が大きいすね。まあ、実に堅実かつ無難な演出だったと思います。

 というわけで、なんだかまとまらないのでもう結論。
 Jennifer Lawrence嬢とChris Platt氏という美男美女を迎えたSF作品『PASSENGERS』をさっそく観に行ったのだが、物語的には意外性もあって結構想像していたものとは違っていたものの、時間の経過を映像ではひげが伸びたりとかで表現しているのだが、やっぱり、「孤独」にかかわる重要な要素なので、若干実感としてとらえるのが難しく、微妙な点はあるとは思う。しかし、その映像と、あと音響がすごい。映像は予告でもわかると思うけれど、音がですね、相当ビリビリ響く迫力があって大変よかったと思います。そして、しつこいですが、Jennifer嬢の声は、ほんとイイすね!最高です。以上。

↓ おっと、配信も始まってるのか……くそう……観ちゃおうかな……いや、FOXに金を落としてやるのは腹立たしいのでWOWOWまで我慢だ!
ジョイ (字幕版)
ジェニファー・ローレンス
2017-02-08

 昨日の夜20時ころ、特にやることもなく、かといって寝るにも早く、たまってる映画でも観るか、と、まあ我ながらむなしく淋しい毎日を送っているわたしであるが、そういえば、今日の午前中に観た『THE MAGNIFICENT SEVEN』に出ていた今をときめくイケメン野郎Chris Pratt氏は、ちょっと前まであまりイケてない若干ぽっちゃり系だったよな、と、とある映画のことを思い出した。あの映画は最高に良かったなあ、と思い、USB-HDDにたまっている映画を捜索したところ、ちゃんと保存してあるのを発見したので、3年弱ぶりに観てみることにした。
  その映画は、2013年暮れにUS公開されて、日本では2014年6月に公開となった『her』(邦題:her/世界でひとつの彼女)という作品である。わたしも公開当時に劇場で観た作品だが、簡単にストーリーを説明すると、とある音声認識OSと、イケてない暗い男が恋をするというファンタジックな物語で、分かりやすく例えて言えば、iPhoneのSiriに恋をしてしまうようなものだ。こう書くと相当キモいオタク野郎のお話のように聞こえるかもしれない。しかし、これがまた非常に切なく超いいお話で、わたしのような冴えないイケてない男には超ジャストミートでグッとくる映画なのであった。
 何よりいいのが、その音声しか出てこないOS「サマンサ」の声を担当した、Scarlett Johansson嬢の声だけによる演技で、彼女の姿は一切画面に登場しない。あくまで声だけ、である。そして、セクシーなハスキーボイスでお馴染みのScarlett嬢の声が、超イイ!のである。とにかく素晴らしい! ちょっとわたしが何を言っているかよく分からない方は、まずは下記の予告編を観てみていただきたい。要するに、こういう映画である。

 ちなみに言うと、わたしはイケメン野郎Chris Pratt氏については、2014年9月に日本公開された『Gurdians of the Galaxy』で初めて、コイツ、カッコイイな、と認識し、調べてみたら意外とわたしがそれまでに観た映画に出演していることを知り、あ、そうだったんだ、と思ったわけだが、なんとその3か月前に観たばかりでとても気に入っていた『her』にも出ていたことを知って、とても驚いた覚えがある。あれっ!? 出てたっけ!? みたいな。しかし、そういえばその時にへえ~と思って以来、実際に観直してチェックしてなかったな、というわけで、昨日あらためて観てみたわけだが、確かに、主人公セオドアの会社の同僚として、結構ちゃんと出演しているのが確認できた。しかし、その当時のChris氏は若干ぽっちゃりで、実にイケてない。ははあ、なるほど、こりゃ分からんわ、と昨日の夜改めて確認した次第である。
 ま、そんなことはどうでもいいのだが、久しぶりに観てみた『her』は、やっぱり面白かった。
 物語は、具体的な年代表示はないが、近未来、である。舞台はLA、西海岸で、たしかパンフレットには、上海でもロケをしたと書いてあったような気がする。そういった、ちょっと不思議な風景で描かれる未来像は、とてもユニークだ。おまけに、ファッションや美術面での世界観も非常に独特で、一見、現代とあまり変わらないようでいて、あらゆることが進化している。主人公の仕事は、手紙の代筆業。どうやらこの未来においても、手書きのような書体による心のこもった手紙というものは価値があり、そしてそれをAIに書かせるのではなく、人間に代筆してもらう、という需要があるらしい。また、ほとんど本作には車が出てこない(ただしタクシーは出てくる)。移動は主に鉄道である。地下鉄や、新幹線のような電車移動が基本だ。そして家はほぼ自動化されているようだし、主人公が暇なときに遊ぶゲームはもう完全にホログラム化されている。そういった未来ガジェットが実に自然にロケの風景と一体化していて、一体何がどこまでCGで描かれているのかよく分からない。実に自然で、ありうる未来像だ。
 そして一番のキモとなる未来ガジェットが、主人公が身に着ける携帯端末だ。ほぼすべて音声認識による操作で、耳に装着するアイテムと、主に画像閲覧用のコンパクトミラーのような四角くて薄い多面端末の二つに分離している。この端末は、デスクトップPCとも連携しているようで、ある日、主人公は街のデジタルサイネージで、最新OSの広告を見かけ、そのOSを自分のPCインストールするところから物語は始まる。ちなみにPCも、キーボードやマウスは出てこない。ほぼすべて、ジェスチャーUIか、音声認識で、主人公の仕事である文章作成はもちろん、ファイル削除・プリントアウトもすべて音声指示だ。
 そしてそのOSは、インストールしてからすぐに、今までのOSとは違う面が現れる。男性の声・女性の声と選べる中で、女性の声を選択した主人公だが、OSは自らを「サマンサ」と名を名乗る。何故その名にしたのかと問う主人公。OSは答える。命名本を0.02秒で読破した結果、1万以上の候補の中から「音が気に入ったから、サマンサを選んだ」と。そう、このOSは、完全に自意識を持つ高度なAIであることが示されるのだ。「気に入った」からというのが本当かどうかわからないけれど、とにかく、こうして出会った人間の主人公と、OSサマンサの恋が始まるわけである。
 とにかく、「サマンサ」は気の利く有能なパーソナルアシスタントであり、スケジュール管理は完璧、メールも読み上げてくれるし、気分に合わせた音楽も選んでくれる。おまけに、なんといっても会話が楽しく、圧倒的に人間の女性を上回るスペックである。そして、何度でもいうが、わたしは相当な声フェチであるので、Scarlett嬢のハスキーでセクシーな声が、もうたまらん魅力にあふれているわけである。まあ、わたしのようなモテないブサメンからすれば、もうサマンサと毎日楽しく会話ができれば、もう3次元の女はいらねえや、と思うのは必然であろう。当然、主人公もそういう流れになる。何しろ彼はいつもしょんぼりしている。というのも、幼馴染で子供のころからずっと一緒に過ごし、結婚していた妻との離婚を経験したばかりだからだ。正確に言うと、とっくに別居しているもののまだ離婚届にサインはしていない状態で、妻側の弁護士からさっさとサインしろと迫られている状態だ。そんな精神状態なので、主人公はどんどんサマンサの魅力にはまっていく。はた目から見ると、ちょっとアレな状況だが、観ていると全く自然で当たり前だと納得の流れである。
 おまけに!なんとサマンサは声だけなのに、主人公と疑似SEXまでやってしまう。もうすげえとしか言いようがないテクノロジーの進歩というか、もはやスーパーAI誕生だ。この、AIという視点からも、本作は極めて興味深い。Aiは好奇心旺盛である。どんどんと知識を獲得してゆき、成長する。そして、サマンサの場合、「恋」あるいは「愛」を理解することによって、いわゆるSingularity=技術的特異点を突破してしまうのだ。突破のきっかけが「愛」というのは非常に素晴らしい着目点だとわたしは思うし、そこへの過程は非常にグッと来た。
 サマンサは愛の理解によってSingularityを突破し、その後、急速に進化する。同時に600人以上との会話ができるようになったり、データとして保存されている(?)哲学者との非言語会話によって世界への理解をどんどんと深め、最終的に高次のAIとして主人公のもとを去る決断を下す。それはサマンサにとっても主人公にとっても、非常に淋しいことだけれど、主人公もまた、サマンサへ依存していた孤独な精神状態から、一歩先へと踏み出そうというきっかけでもあり、ま、エンディングはハッピーエンドと言ってよいのではなかろうかと思う。
 というわけで、エンドロールで流れる曲、「The Moon Song」がもうとにかく心にグッとくるのだが、この曲は、作中でサマンサが作った歌として、サマンサの声で(=Scarlett Johansson嬢の声で)歌われるもので、エンディングも絶対Scarlett嬢の声Verで流してもらいたかったものである。エンディングでは↓この動画の通り、曲を作ったKarren Oさんの声なので、ちょっとアレなんすよね……いや、こちら素晴らしいけど。

 ちなみに、本作はアカデミー賞に作品賞をはじめ脚本賞・美術賞、そしてこの歌が歌曲賞と、それぞれノミネートされました。残念ながら受賞したのは脚本賞だけかな。まあ本当に素晴らしい物語で、脚本賞は納得です。
 最後に、サマンサ役のScarlett嬢以外のキャストをちょっとだけまとめておこう。
 まず、主人公セオドアを演じたのが、Joaquin Phenix氏。おおっと!今初めて知ったのだが、この人、1974年生まれってことは、この作品を撮っているときはギリで30代じゃん!見えねえ……もうとっくに40過ぎかと思ってた。意外と若かったw  ま、一時期ハリウッドではお騒がせ野郎として有名になった変な男だけれど、本作の演技は本当に素晴らしく、一見妙なキモ男だし本心を話さないウジウジ野郎なんだけれど、実際は心優しく、心に孤独を抱えている男を好演してくれたと思う。
 そして、セオドアの元妻を演じたのが、Rooney Mara嬢。まあ細い。そして白い。なんともはかなげで華奢な彼女だが、本作ではセオドアのウジウジした男らしくない態度にキレまくる気の強い女子で、ちょっと珍しいと思った。大変お綺麗です。
 さらに、セオドアの大学時代の友人で同じマンションに住んでいるちょっと男運のない女友達を演じたのが、Emy Adams嬢。彼女は非常に良かったすねえ。最近の『Batman v Superman』のロイス役などでは随分でっかくなったというか、貫禄の付いちゃったAmy嬢だけれど、この映画では妙にちびっこの華奢な女子に見えるのは何故なんだろう?顔もちょっとげっそりしているし、この頃のAmy嬢が一番かわいいと思うね。メイクもかなりナチュラルメイクだし、実に本作では可愛いかった。
 最後。劇中で、セオドアが友達にセッティングされたブラインドデートに向かう場面があるが、その時のお相手として出てくる女子を出演時間10分弱で演じたのが、Olivia Wilde嬢だ。ツリ目系の猫科系女子で大変美人ですな。この方の作品でパッと頭に浮かぶのは、やっぱり『TRON:Legacy』かなあ……わたし的好みにはジャストミートの美人すね。たった10分弱のチョイ役には大変贅沢なキャスティングであろうと思います。

 というわけで、結論。
 かなり久しぶりに観る『her』という映画は、やっぱり面白かった。なんといっても、Scarlett Johansson嬢が声だけで演じるOSサマンサが素晴らしい! そして、キモ男だけど、イイ奴の主人公セオドアも素晴らしい。女性がこの映画を観てどのような感想を抱くのかわからないけれど、ホントにこの映画は、セオドアのような、そしてわたしのような、一人ぼっちで淋しく暮らすイケてない男が観たら、100%間違いなくグッとくると断言できる。イイすねえ、ほんと、早くこういうAIが誕生しねえかなあ、と思っているうちは、ま、永遠に幸せはやってってこないでしょうな。分かってますよ、そのぐらい。ちゃんと自覚してますので、たまに夢見るぐらいは許してください。最高です。この映画は。以上。

↓ 当然もう配信もとっくにされてます。観ていない人はぜひご覧ください。最高です。
her/世界でひとつの彼女(字幕版)
ホアキン・フェニックス
2014-12-03


 わたしは映画オタとして当然、黒澤明監督作品が大好きで、去年、「午前十時の映画祭」で4Kデジタル修復された超クリアな画像の『七人の侍』を観て大興奮したわけだが、かの作品の影響力は世界中に広まっていて、その代表格たる作品と言えば、やはりハリウッド作品の『荒野の七人』だろうと思う。さっき初めて知ったけれど、『七人の侍』が1954年公開、そしてハリウッドの『荒野の七人』は1960年公開と、意外とすぐだったんすね。へえ~。
 まあ、わたしもおっさんとはいえ、さすがに『荒野の七人』は生まれる前の作品なので、少年時代にTV放送されたものしか観ていないが、あの映画は結構オリジナルの『七人の侍』に忠実というか、『七人の侍』の「スピリッツ」に忠実、だったような覚えがある。ま、もう30年以上前にTVで何度か観ただけなので、全然記憶は怪しいけれど。
 というわけで、この度、再び『荒野の七人』が『THE MAGNIFICENT SEVEN』としてリメイクされた。主演は、オスカー俳優Denzel Washington氏。そして監督は、Denzel氏にオスカーをもたらした『Training Day』を撮ったAnton Fuqua氏ということで、いわゆる黄金コンピと言ってもいいだろう。わたしとしても、Denzel氏主演だし、アクションと映像のキレに定評のあるFuqua監督なら外れなしであろう、という予感を感じて、やっと今日の午前中に観てきたわけである。だが、結論から言うと、だいぶ黒澤明監督の『七人の侍』からは離れてしまったかな、という印象が強く、どうも心に突き刺さるようなところはなかったな、と思った。ちょっと、なんというか……軽いっすね、味わいとしては。ただし、各キャラクターは大変カッコよく、映像としても非常に上質であったのは間違いなく、十分面白かったとは思う。というわけで、以下いつも通りネタバレ全開ですので、読む場合は自己責任でお願いします。

 上記予告の冒頭に、『七人の侍』『荒野の七人』――その魂を受け継ぐ……的なコピーが入るが、もう上記のように書いてしまった通り、ズバリ言うと、あまりその魂は受け継いでいないと思う。わたしがちょっと軽い、と感じるのは、雇う側の貧困具合がよく分からないのと、雇われる側の、じゃあしょうがねえ引き受けるか、という葛藤がほぼない点だ。
 そもそもの『七人の侍』の場合、雇う側(農民)は、もうこれ以上略奪されたら飢え死にしてしまうし、金もない。だから、最後の食糧(=米)しか報酬に払えないけれど、助けてくれ、という超・切羽詰まった状態にある。一方で本作では、ガンマンたちを雇う主な動機は、「復讐」である。作中で、ヒロインは正義のためにガンマンを雇う、そしてもちろん復讐のために、と復讐を肯定するのだが、その点は極めてアメリカっぽいとわたしは感じた。要するにやられたらやり返せの精神であり、銃には銃を、である。もちろん、それが悪いとは思わないし、気持ち的にはそりゃあ、悪党はぶっ殺せに賛成だ。しかし、復讐を前面に出されるのは、『七人の侍』のスピリッツからはちょっと違うような気がしてならない。『七人の侍』の農民の場合は、「生き残ること」に最大の目的があり、そのために、実は農民も侍を道具として使っただけ、というエンディングが強烈な皮肉として心に刺さるわけだが、本作は、結構ラストはめでたしめでたし的であったのが、わたしとしては若干軽いなあ、と感じざるを得ないのだ。
 そして雇われる側の事情も、本家『七人の侍』とはやや趣が違う。本作では、主人公のガンマンは、厳密な意味ではどうやら賞金稼ぎではないようで、法の執行官であるようだ。だからある意味職務として引き受けたように描かれているが、実はラスト近くで、主人公にも悪党には深い恨みがあり、かつて母と妹を殺され、あまつさえ自分もその悪党に殺されかけた過去があったことが示される。要するに彼もまた復讐であったわけだ。この点はちょっと引っかかるし、他の6人の男たちの事情も、やけに主人公の誘いにあっさり乗ってくるし、なにか、切羽詰まったような様子はない。しかし、元の『七人の侍』は、そうではない。わたしは、結局のところ、「侍たち」は死に場所を求めていたんだろうと思っている。侍たちは、仕える主を失い、もはやこの世に居場所を失っていたわけだし、菊千代も、侍にもなれず百姓にもなれず、世をさまよっていた男だ。そんな男たちが、信頼に足る勘兵衛という男と知り合い、この男となら死んでもいい、と思ったのだとわたしは考えているわけで、その心情がひどくグッとくるわけだ。勘兵衛は自分が持つ唯一の能力である軍略をもう一度発揮できるならば、腹いっぱいの白米が食えれば、もうそれで報酬としては十分なのだ。そりゃあ死にたくない、けど、死んでもいいと思うに十分だったのではないかと思う。このような、雇う側・雇われる側の事情が、本作ではやっぱり軽かったかな、と思うのである。
 ただ、こういった本質的な部分の軽さはあるものの、本作で集まる七人のガンマンと、雇う側のヒロインは大変魅力的であったと言えよう。まず、わたしが一番グッと来たヒロインから紹介しよう。
 ◆ミセス・エマ
 演じたのはHaley Bennett嬢。とにかくやたらとエロイ雰囲気が極めてよろしい。この人は絶対別の作品で見たことがある、けど誰だっけ……とさっきまでもはや若年性アルツハイマーなんじゃねえかと心配になるぐらい、どこで観たのか思い出せなかったのだが、調べたらすぐわかった。この人は、去年観た『The Girl on the Train』で殺される、あのエロい若妻を演じた方であった。どおりで!とわたしは膝を叩くほど腑に落ちたのだが、この人は、なんというか目の表情からしてエロイ。そしてこぼれ出そうなデカい胸もエロイ。実に素晴らしいですね。とにかくしょんぼりした表情が絶品であろうと思う。わたしとしては、ハリウッド幸薄い顔選手権のグランプリを差し上げたいと思う。とてもかわいいと存じます。ああ、そうか、もう一つ思い出した。この人、Denzel氏&Fuqua監督コンビの『The Equalizer』にも出てたね、そういえば。おっと!どうやらこのお方は、インスタグラムによると普段は冴えない眼鏡をかけてるみたいすね。その地味メガネっ子ぶりも相当イイすな!やばい。惚れたかも。

Ok. Where is the pot of gold.

Haley Bennettさん(@halolorraine)が投稿した写真 -


 ◆サム・チザム
 演じたのはDenzel Washington氏。やっぱりカッコいいですな。あのもみあげは、どうすればはやすことができるのか、日本人には無理だろうな……わたしも髭は薄い質ではないけれど、あの方向にもみあげをはやすのはちょっと無理だなあ。一度でいいから真似してみたいす。全く似合わなそうだけど。
 ◆ジョシュ・ファラデー
 演じたのはChris Pratt氏。もう説明の必要のない売れっ子すね。今年は『The Gurdians of Galaxy』の続編が公開されるので、そちらも大変楽しみですな。今回は大変カッコいいギャンブラーを熱演。わたしはまた、彼が『七人の侍』でいうところの「菊千代」的キャラなのかと思っていたけれど、全然違ってました。最初から強いし、サムから最初にスカウトされる凄腕ガンマンで、特に過去は語られず、そいう意味ではちょっとキャラとして薄い。そう、今回、菊千代的なキャラがいないのも、ちょっと残念でした。
 ◆グッドナイト・ロビンショー
 演じたのは、Denzel氏&Fuqua監督コンビの『Training Day』で、Denzel氏演じる悪徳警官に対峙する正義漢(?)をカッコよく演じたEthan Hawke氏。元南軍のエーススナイパーとして伝説となっている男を渋く演じてくれました。彼は、南北戦争の経験でPTSDを患い、人が撃てないという設定になっていたのだが、その設定は……別に要らなかったような気がする。南北戦争でサムと旧知の仲、ということは、『七人の侍』でいうところの七郎次的なキャラだったのかなあ……だいぶ違うような……むしろ凄腕ということで「久蔵」さんタイプだろうか。でも、Ethan氏は実に渋かったすね。
 ◆ビリー
 演じたのはイ・ビョンホン氏。まあ、実際、当時(冒頭の字幕によると1879年だったっけ?)のアメリカ西部には東洋人もいっぱいいたはずなので、彼が出演するのは別に全然アリ、だと思う。けれど、背景はほぼ語られずじまいで、若干、グッドナイトとBL臭がただよっていて、これは狙ってやっていたのだろうか? なんかちょっと違和感アリである。ずっとグッドナイトと行動を共にしていたわけだが、ラストもともに二人で殉職。若干無駄死にだったような……。
 ◆ジャック・ホーン
 演じたのは、名作『FULL METAL JACKET』のほほえみデブでお馴染みのVincent D'Onofrio氏。なんか最近よく見かけますね。今回は、荒野に住むマウンテンマンとしてライフル&トマホーク使いというあまり見かけないキャラを熱演。ラスト近くで敵方のインディアン男に弓で殺されてしまう。この死にざまも、弁慶的であったけれど若干盛り上がりに欠けるような気がする。せめてあのインディアンと差し違えてほしかった。
 ◆ヴァスケス&レッド
 メキシコ人ガンマン&ネイティブ・インディアンの二人。この二人は、正直目立たないし、背景もよく分からないし、仲間になる経緯もピンとこないので省略! しかし、ガンマンの中ではサムとともにこの二人だけが生き残る。あれかな、インディアンのレッドは、『七人の侍』でいう「勝四郎」的若者キャラってことかな。
 あと、最後に、音楽に触れておこう。本作は、音楽として、James Cameron監督作品など、数多くの大作で音楽を担当したことでお馴染みのJames Horner氏の名前がクレジットされている。2015年に惜しくも飛行機事故で亡くなってしまったのだが、本作が遺作なのかわからないけれど、担当されたようだ。ラストにIN Memory でちゃんと弔意がささげられていました。そして、たぶん40代以上の日本人なら、誰でも一度は聞いたことのあるあの曲、『荒野の七人』のテーマ曲もラストに流れたのは、大変分かっている配慮だとわたしはうれしく思った。あの曲は、何だったですかねえ、TVで何かの番組で使われてましたな。とても懐かしく感じました。
 しかし、こんなキャストも豪華なのに、全然売れてないみたいですな。先週末公開されて一週間しかたっていないのに、わたしが観に行ったシネコンは、もう1日1回の上映に減ってました。しかも早朝9時の回のみ。なんと言うか、そんな点も実に残念に思った次第である。

 というわけで、もう長いのでぶった切りで結論。
 最初に書いた通り、黒沢好きとしては、今回の『THE MAGNIFICENT SEVEN』 はだいぶ薄口軽めのノンアルコール飲料な印象である。まあ、比べちゃダメなんでしょうな。本編単独で評価するならば、ややキャラの背景が薄いし、動機も復讐ということで実にアメリカっぽいけれど、描かれた男たりはカッコよく、ヒロインのエロ可愛さも実に上等であった。なので、アリといえばアリ、です。十分面白かったと言えると存じます。以上。

↓  本作を観る前に、こっちもちゃんと予習しておけばよかったような気がする。こちらには、忠実なのかもしれないけど、ほぼ、憶えてません。
荒野の七人 [Blu-ray]
ユル・ブリンナー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2016-12-02

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