いわゆる「ソリッド・シチュエーション」と呼ばれる映画のジャンルがある。代表的なのは、例えば『SAW』だとか『CUBE』だとか、まあよくあるパターンとしては、気が付くとどこか謎の空間に閉じ込められていて、次々に謎の出来事が起きつつ、何とかその監禁状態から抜け出そうというような映画のことで、要するに状況(Situation)が固く(Solid)閉ざされているというわけで、わたしも、『SAW』を初めて劇場で見たときは、こりゃあ面白いと興奮したものだが、残念ながら劣化コピー的作品(特に続編はアカン)ばかりで、なかなか『SAW』を超える作品には出会わないのだが、それでも、この類の映画は定期的に作られていて、ここ10年以上、たまーに結構面白い作品が生まれるジャンルになっている。例えば、『Deadpool』で大人気のRyan Reynolds氏が主演した『Buried』(日本公開タイトルは「リミット」)なんかは、意外と評価も高く、わたしも結構好きだ。
 たいていの場合、 登場人物が極端に少なく、セットも極小で済むので、製作費も安く上がり、若手の野心ある監督が撮る傾向にもある。なにしろ、アイディア一発で勝負できるのだから、日本でももっと挑戦者がいてもおかしくないのに、あまり日本国内では流行らなかったのが実に残念だ。
 というわけで、今日見てきた映画、『THE SHALLOWS』(邦題:ロスト・バケーション)はジャンルとしてはこの「ソリッド・シチュエーション」ものに入れていいんだろうな、という内容で、こう来たか、と唸らせる見事な作品で、実際わたしは大変楽しめたのである。いやあ、面白かった。

 物語は、もう上記予告のとおりである。海でサーフィンに興じる美女。襲ってくる巨大な鮫。岸まで200mと見えている距離。果たして美女は生きて岸までたどり着けるか。それだけである。それだけなのに、これが非常に面白い。どうやらUS国内でも、それほど高くはないがまあまあの評価のようだ。こういったなかなか打破できない固い状況を描く作品は、当然、どうやってそれをブチ破るか、という作戦が物語のカギとなるわけで、主人公はバカでは勤まらない。今回の主人公は、医学生なので、医療知識もあるし頭も悪くないので、非常に緊張感があって、86分かな、短いけれど最後まで飽きさせないテンションを維持してくれる。その状況と決断については、意外と、この映画は、『SAW』とか『Buried』よりも、『127Hours』の方が近いかもしれない。あの映画は完全に実話ベースで、この映画は完全なフィクションだけれど、主人公の行動力は、実に現実的で、『127Hours』ほどリアルではないけれど、今回の物語はは現実に起こりうる(?)という点で、まさしく女性版『127Hours』といってもいいのではなかろうか。うーん、ちょっと誉めすぎたかな。

 映画的な見どころは……そうだなあ……鮫、かなあ……CGなのかなんなのか、わからないけれど、いや、CG以外にあり得ないか、とにかく鮫のリアルな本物感は、相当凄いです。まあ、さすがのハリウッド・クオリティで、この辺は日本映画では再現不可能だと思う。もう、生きてる本物の鮫にしか見えない恐ろしさですよ。あと、これもCGなんだか、本物なんだかわからないけれど、主人公に付き添う、カモメが1羽、ずっと側にいて、ある意味主人公の精神的なサポートをしてくれるのだが、このカモメも大変にいい芝居(?)をしてくれたと思う。このカモメについて、わたしがくすっと笑ったのが、カモメ=Seagullなわけで、このカモメのことを、Stevenと呼ぶんだな。要するに、Steven Seagallのことなんですが、わかりますよね? カタカナで表記するとスティーブン・セガール氏のことですよ。無敵のコックでおなじみの、あの関西弁バリバリの日本語をしゃべるゴツイおっさんですw あのカモメ……たぶんCGじゃなくて、本物だと思うんだけど、どうなんだろうな……。パンフレットには何も書いてないのでわからんわ。

 それから、やっぱり、この映画の見どころの一つとしてあげなくてはならないのは、主役のBlake Lively嬢のかわいさと美しいBODYと、賢さ、であろうか。彼女は、ちょっと日本のタレントでいうと、スザンヌさんに似ているような気がする。非常にお綺麗で、BODYも大変良いものをお持ちですな。まだ28歳、これからも活躍を祈りたいですな。わたし的には、彼女はDCコミックヒーローの『Green Lantern』や、Ben Affleck監督の『THE TOWN』でのヒロインが印象的ですが、一番かわいらしく魅力的だったのは、Don Winslowの小説を原作とした『SAVAGES』(邦題:「野蛮なやつら」)ですな。あの映画でのBlake嬢は大変良かったと思います。
 で、監督なのだが、なんと、さっき、パンフレットを見て、な、なにー!? とびっくりしたのだが、Jaume Collet-Serra氏じゃないか!! わたし、全然この映画を見に行くときに、監督なんてチェックしてなくて、どうせ若手の、名のある監督じゃあないと思ってたので、今さっき知って驚いた。エンドクレジットをちゃんと見たのに気が付かなかったのが我ながら驚きだ。この監督はですね、かのLiam Neeson氏のアクション映画を3本とってる人で、このBlogで取り上げた作品というと、『RUN ALL NIGHT』なんかもこの監督の作品ですよ。へええ~!? まさか、あの映画を撮った人が、この作品も監督してたんだ。マジ抜かってたわ。チェックが甘すぎました。『RUN ALL IGHT』の記事を書いたとき、「知らない監督だけど名前を覚えておこう」なんて書いたくせに、すっかり忘れてた!! ホントサーセン。なるほどねえ。本作はきっちりまとまっていて、大変良い映画だと思ったら、監督はちゃんと実績のある(は言い過ぎか)人だったんだなあ。なるほど、納得です。そうだったか。

 というわけで、短いけれど結論。
 今、映画館は、『ドリー』やら『ポケモン』から『ワンピース』やらで、大変ちびっこ率が高くなっていますが、本作『THE SHALLOWS』 (邦題:ロスト・バケーション)は完全にちびっこお断りの大人の映画である。そのサバイバルぶりは名作『127Hours』的で、非常にわたしは楽しめました。ちなみに、原題のThe Shallowsって、ええと、浅瀬、のことだよな? なので、邦題は相変わらずセンスゼロだなあとは思うものの、対案が浮かばないので、まあ、どうでもいいやと放置したいと思います。上映時間も短いし、なんか映画でも観に行くか、と思った際の候補としておススメします。以上。

↓ やっぱりこちらは相当ハードというか、この決断はわたしには多分できないと思う。すげえ。
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2012-06-22