すでに公開されているUS本国ではやけに評判がイマイチだとは聞いていた。その理由はどこにあるのか? 単に主演の役者のルックスがあまりにHarrison Ford氏に似てないせいなのか? そんな理由なら全然非難することなかろうに……。
 と、そんなことを考えながら、わたしは昨日の金曜日、会社帰りに、久しぶりに新宿TOHOへ赴いた。理由は勿論、昨日から公開になった『SOLO : A STAR WARS STORY』をIMAX3D版で観るためである。最初は日比谷で観ようと思ったら、どういうわけか? 日比谷TOHOのIMAXは3Dじゃないようなので、なんじゃそりゃ、と思って新宿にしたのだが、こと3Dに関していうと、非常に暗いシーンが多く、これは普通に2Dで良かったな、と思った。つまり、新宿に行く意味はほぼなかったと思う。なんか、画面がしっかりフォーカスが合ってないぼんやりした画のように感じられたのは、単にわたしの視力の問題なのか? この点は、Blu-rayが発売されたら4K ULTRAのくっきり画面で確認してみたい。【追記:どうも、初日の金曜だけ日比谷IMAXは3Dじゃなかったのかな、今は普通にIMAX3Dになってるみたいす。単にわたしの勘違いだった可能性も……】
 そして肝心の内容なのだが……やっぱり、ちょっといろいろ問題アリかもなあ……とは感じるに至った。ただし、役者には全く問題ないと思うし、初めて明らかにされるソロ船長チューバッカの出会いなど見どころはいっぱいあって、部分部分は大変楽しめたのは間違いないと思う。なので、結論としては……アリ、だと思う。いや、うーん……サーセン、何とも言えないかな……ちょっと微妙なのも間違いないので。
 というわけで、以下、ネタバレに一切考慮せずに書くと思うので、まずは劇場で、何の先入観も持たずに観てきてください。そうするべきです。

 というわけで、上記予告は何度も目にしたが、実際のところ、どんなお話なのか、わたしは全く分かっていなかった。そもそも、時代的にいつなのか? もよくわからない。常識的に考えて、ソロ船長の若き頃、なのだから、本編でのEPISODE IIIからIVの間であるのは間違いなかろう。
 しかし……うーん、わたしもSTARWARSシリーズを愛しているとはいえ、実は時間経過をよくわかっていないので、まずちょっとまとめてみようかな。一番初めの、EPISODE:Iの時間を「X」として、それぞれのEPISODEの年を一覧にしてみるか。ローマ数字だと表記しにくいので普通にアラビア数字でEP番号を示します。
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 <EP:1 The Phantom Menace
 X年の出来事。10歳児程度のアナキンがクワイ・ガンに見いだされる。
 <EP:2 Attack of the Clones
 X+10年ぐらいの出来事。アナキンは青年に成長、パドメとFalling LOVE。ラストでクローン戦争開幕。
 <EP:3 Revenge of the Sith
 X+13年ぐらいの出来事。前作ラストで始まったクローン戦争3年目。アナキンはダークサイドへ転落。ジェダイ騎士団壊滅。
 <ROGUE ONE
 EP:4直前の話。ついに完成したデス・スター設計図をめぐる名もなき戦士たちの悲劇を描く。ラストの4へつなぐシーンが超見事。
 <EP:4 A New Hope
 X+33年後ぐらいの話? つまりEP:3から20年後ぐらい、のはず。いや、どうかな、これはよくわからん。EP:3ラストで生まれたルークが20歳にはなってなかったかもしれない。18歳とかそんなもんだっけ?
 <EP:5 The Empire Strikes Back
 X+36年後ぐらいの話? 前作から3年後らしい。
 <EP:6 Return of the Jedi
 X+37年後ぐらいの話。これは前作から1年程度のはず。
 <EP:7 The Force Awakens
 X+67年後ぐらいの話。どうやら、6から30年程度は時が経過している模様。EP:8に関しては、わたしは世紀のトンデモコレジャナイムービーだと思っているので触れません。
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 まあ、こんな感じだと思うのだが、今回の『SOLO』が、EP:3と4の間の20年ぐらいのどこかに位置する物語であることは間違いないけれど、今回、何と驚愕のサプライズ登場したキャラクターが一人いて、わたしは、えっ!? どういうことなんすか?? と混乱しているのである。誰のことを言っているか、観た人なら分かりますよね? そうです。EP:1においてクワイ・ガンを殺し、オビ=ワンに殺されたダース・モールが登場したのです。これは……まあ、ダース・モールという存在がある意味役職的なもので、別人にその役割が引き継がれた、と思えばいいのかもしれないが、正確なところは実際良くわからない。そしてズバリ言うが、全く登場する必要はなかったとわたしは断言したい。混乱を招くだけで、何の意味もなかったと思う。4以降に登場してこないのもおかしいし。この点については後でまた述べますので、ここではこれ以上は触れない。【追記:わたしは全然知らなかったですが、『クローン・ウォーズ』ではモールは死んでない設定だったんすね。そうなんだ……コメントでの情報あざます!】とにかく、今回の『SOLO』が時間的にどこに位置されるのかは重要だと思うが、最後まで何とも判然としなかったのは残念に思った。強いていうなら、EP:4の時のHarrison氏が当時35歳ぐらい、そして今回のAlden君が28歳、てことは、EP:4の7年前ぐらい、なイメージと勝手に思うことにします。
 で。おそらく、ファンが望む本作で「描かれるべき出来事」は、(1)いかにしてチューバッカと出会うのか、(2)いかにしてファルコン号を手に入れたのか、(3)いかにしてソロ船長はジャバ・ザ・ハットに借金を抱えてしまったのか、この3点に尽きるはずだ。そして本作ではきちんと(1)(2)に関しては美しく、そして結構見事に描いてくれたと思う。しかし(3)が、たぶん時間軸的にうまく描けなかったのだと思う。おそらく(3)はもうちょっと後のことで、それ故、(3)に関してはほのめかす程度で終わってしまっている。その点は若干残念だが、まあ、仕方がなかったのだろう。しかしそれでも、もうチョイうまくやれたと思うのだが……
 結局のところ、本作についてわたしが一番問題視するのは、キャラクターであろうと思う。キャラクターの存在感が薄いというか、なんかきちんと描かれておらず、結構謎が多いままだったし、かなりあっさり死んじゃうし。どうも、若干の底の浅さがわたしには実に気になったのである。もっとちゃんと考えてほしかったような……。
 というわけで、各キャラごとに見ていこう。
 ◆ハン・ソロ:彼については、とりわけ問題点はなく、演じたAlden Ehrenreich君28歳の熱演も悪くなかったと思う。でも、やっぱりしぐさやしゃべり方は、もうチョイ研究の余地があったはずだと思うな……。そしてわたしがソロ船長について、初めて知って、へえ~そうなんだ、と思ったポイントは以下3つです。
 ・ソロ船長はなんと帝国軍の軍学校出身だった! これは故郷の星「コレリア」から脱出するため、そして操縦技術を身に着けるため、に軍に入隊したという事情があってのことで、別に帝国軍に心酔していたとかそういうことでは全然なく、それなりの説得力はある。しかし、そういう過去があるのなら、これまでのシリーズで帝国軍知識が生かされたと思うのだが……。そういう意味では、アリのような、ナシのような、微妙さを感じた。これは……どうでしょう、もっと幼少時代から描いて、師匠たる強盗団で鍛えられた、みたいな方が良かったような……。そしてたとえば 、「I have a bad feeling about this」は実は師匠の口癖だった、的なのがあれば良かったのにね。
 ・名前の「ソロ」の意味は、「ひとり者」という意味だった! これは、前述の帝国軍へ入隊する際に、名前を聞かれ、名字がなく、帝国軍の入隊事務官が、そうか、親兄弟もいない一人ぼっちか、じゃあ、「ソロ」でいいな、とテキトーに名づけられるシーンで明らかになる。これはなかなか良かったすね。アリですこれは。ちなみに、お父さんは元々なんとかって宇宙船メーカーの技師?で、宇宙船製造ドックに勤務してたそうです。
 ・なんと! ソロ船長は「ウーキー語」がしゃべれた! これは最高でしたね! EP:3で登場したキャッシーク星人であるチューイだが、ソロ船長は何でチューイの言うことが理解できるんだろう? とずっと謎だったが、そういうことだったんだ、とわたしは大興奮したっすね。出会いもなかなか良くて、実にアリ、だと思った。
 ◆チューバッカ:ご存知ウーキー180歳。EP:3でのクローン戦争でヨーダを支援した後、ウーキー族は気の毒なことに奴隷的に扱われていたことが今回判明。帝国軍の牢屋?でソロ船長と出会い、ともに脱出して熱い友情を結ぶ。この展開は実にアリでわたしは大変うれしくなったすな。若干、EP6冒頭のジャバの屋敷のアレのオマージュっぽかったし。チューイに関しては、本作は何の問題もないと思う。けど、もうチョイ活躍してほしかったかも……。
 ◆ベケット:若きハン・ソロの師匠ともいうべきベテラン&凄腕の窃盗団リーダー。演じたWoody Hrrelson氏はおっそろしくカッコよく、存在感もたっぷりでとても良かったのだが……なんか、ハンとの絆というか、精神的なつながりが薄く、それにしては窃盗団の仲間には優しく、若干ちぐはぐな印象を持った。「誰も信用するな」という教えはアリだし、ラストの裏切りもアリだと思う。けれど、あの最後はやっぱりおざなりですよ。悪党として死なせるのは非常にもったいなかったし、あっけなさすぎる。やっぱり、ラストは実はハンを守るための裏切りだった的な展開が欲しかったように思う。ハンとの疑似的な父と子的な絆が欲しかったすねえ……。そのためにも、もっと子供のハンと出会うべきだったような気がしました。彼の窃盗団の仲間の二人が結構イイキャラだったのに、前半であっさり逝ってしまうのももったいなさ過ぎたと思う。彼らも、ハンの育ての兄・姉として、もっと見せ場を作れたはずなのに……。
 ◆キーラ:ハンの恋人、のち、マフィアのナンバーツー。多分わたし的には彼女の役割が一番気に入らなかったんじゃないかと思う。そして彼女がダース・モールとつながりがある必要はゼロだったと思う。むしろ、ジャバと明確につながっていれば良かったのにね。そして、明確に彼女は死ぬべきだった。生き残っちゃったし、ハンと敵対したままだったし。なので、彼女の立ち位置がまったくエモーショナルでなく、非常に残念に感じた。もっと、やむにやまれる感が必要だったし、ハンを助けて死ぬ、というのが王道だと思う。なんだか、本作で描かれた彼女は、かなりクールかつ積極的に悪の道に進んだ印象があるし、何より問題なのは、ハンよりも自分の命優先な態度は、かなり残念だと思う。若干中途半端すぎるとわたしは思った。ただし、演じたEmilia Clarke嬢31歳は大変可愛くて素晴らしかったのは間違いない。なんか、顔つきがカトパンでお馴染みの加藤綾子嬢に似てましたね。Elilia嬢に関しては、わたしは『TERMINATOR:GENISYS』でのサラ・コナー役しか見たことがなかったけど、あれっ!? こんなに可愛かったっけ? と驚いたす。結構ちびっ子ですな。実に可愛かったと思う。
 ◆ドライデン:キーラの仕えるマフィアのボス。強いんだか弱いんだかわからない人。どうやら本作の世界では、マフィア団がいろいろあって(ジャバの組織はハット・カルテルだったっけ? 一瞬名前は出ました)、その中のデカい組織のボスが彼なのだが、どうも、帝国軍やシス卿といった勢力とはつながりはなかったように見えた。なので、ラストでキーラがダース・モールに連絡するのも非常に唐突かつとってつけた感があったのだが、どうせならこのドライデンの組織は、明確にジャバと敵対・競合する組織であり、エンフィス・ネスト(というのが本作では競合組織のボス)はまるでいらなかったように思える。なお、このドライデンを演じたのは、わたしはもう、声で一発で誰だかわかった。そう、わたしの大好きなMCUにおいて、JERVIS/VISIONさんでお馴染みのPaul Bettany氏でした。この人はとにかくでかい! たぶん190cm以上あると思う。
 ◆ランド・カルリジアン:ご存知宇宙に名をはせるギャンブラー。ファルコン号の持ち主。演じたのはこのところチョイチョイ見かけるDonald Glover君34歳。彼と言えば、『The Martian』でNASA長官に重力ターンの航路を「ギュイーーンと来てガーーッと行くんすよ!」とプレゼンする若者だったり、『SPIDER-MAN:Home Comming』でちょっとした悪者アーロンを演じたことが記憶に新しいですが、今回は雰囲気あって大変良い演技でした。ランドの若き頃の姿としては大変似合っていたように思う。だだし……本作では若干活躍の場がなく、やや中途半端だったようにも思う。ファルコン号Getというポイントは、物語の中で重要な出来事なのに、若干軽かったすね。そして、ソロ船長の伝説の一つである「ケッセルランを12パーセクで飛んだ」というエピソードは本作できっちり描かれました。しかしなんつうか、彼よりも、ランドの相棒のドロイド、L3のキャラが素晴らしかったすな! そんなL3もかなりあっさり破壊されてしまうのは残念であったけれど、L3に蓄えられていた銀河の航路データは、ファルコン号に吸収されたわけで、つまり今でもL3はファルコン号とともに生きてるのさ……と考えると、まあアリ、であろうと思う。しかし、やっぱりアレすね、ランドは新三部作に出てくるべきですよ、絶対に。あのクソ駄作「8」はホント許しがたいわ……。

 とまあ、キャラについてはだいたい以上かな。要するに、わたしとしては、ハンはもっと少年時代にベケットに拾われ、窃盗団の中で成長し、腕も磨き、育ての父・兄・姉を帝国軍から助けるために宇宙一速い船=ファルコン号が必要となって、ギャンブル勝負で勝ち、ついでに、ベケットとは犬猿の仲だったジャバをやむなく頼ってしまったことで、借りが出来てしまい、密輸屋になった、的な流れだったらなあ、と思ったわけです、はい。まあ、それで面白くなったかはわからんですが。なんか……山場が盛り上がらないというか……若干物語の流れが平坦だったように感じたっすね。

 というわけで、最後に監督について書いて終わりにしよう。本作を撮ったのは、大ベテランRon Howard監督64歳だ。ただし、さんざん報道された通り、本作は途中で監督がチェンジしてしまうなどの製作トラブルがあっての就任で、ま、そのゴタゴタも、そしてあの「8」のトンデモぶりも、すべてルーカスフィルム社長のKathleen Kennedy女史の責任と断言できる。ま、それはともかく、そんなゴタゴタの結果、もう出来上がってしまった脚本、もう撮影されてしまった部分などがある中で、Ron Howard監督は全力を尽くしてくれたと思う。冒頭に書いた通り、画が妙にパキッとしない作りだったのが気になるが、そうだなあ、撮影というか映像的にわたしが一番すごいと思ったのは、冒頭のスピーダー・チェイスのシーンかなあ……。あのシーンのスピーダーは、本当にもう飛んでいる(宙に浮かんでいる)としか見えなかった凄い出来だったし、金属や街の質感も雰囲気抜群でしたな。

 というわけで、もう書きたいことがなくなったので結論。
 全世界のSTARWARSファンが待ち望んだスピンオフ『SOLO : A STAR WARS STORY』をさっそくIMAX3D版で観てきたのだが、わたしが思うに、まず第一に、3Dで観る必要はなかったのが一つ。そして物語としては、心にグッとくるようなエモーショナルな点がなく、かなり冷徹かつさらっとしているという印象を受けた。なんつうか、いらないキャラも多いように感じたし、正直、もっと面白くできるのになあ、と、いつもの言うだけ詐欺な感想を抱くに至ったのである。ただ、まあ、チューバッカとの出会いは実によかったすね。そして、全世界からのプレッシャーの中、頑張ったAlden Ehrenreich君は、確かにHarrison Ford氏には似てないす。でも、見かけは似てなくても、あの特徴的なニヤリやしゃべり方は、もうチョイ研究の余地があったかもしれないすね。そうすればここまで酷評されずに済んだのではなかろうか。結局のところ、本作の問題は、要するにキャラ造形、すなわち脚本でしょうな。まあ、「8」よりずっとマシですが。「8」を面白いと思う人とは永遠に分かり合えないと思います。わたし、心が狭いんで。以上。

↓ しかしそれにしてもEmilia Clarke嬢は可愛かったすなあ……久しぶりにまた視てみるか……。
ターミネーター:新起動/ジェニシス (字幕版)
アーノルド・シュワルツェネッガー
2015-10-21