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 いやーー……バカにして申し訳ありませんでした!!
 昨日、わたしは会社帰り映画を観てきた。それは、本当なら先週末に行こうと思っていたのだが、ちょっとした用事が出来てしまって観に行くことができず、かといって明日からの週末は別の映画も始まるので、なんとしても今日中に観ておきたい、という作品だったのだが、その映画とは……DCコミックヒーロー映画、『AQUAMAN』であります。
 わたしは散々このBlogでも書いている通り、MARVELヒーロー映画は大好きだけれど、どうもDCヒーローはBATMANとWONDERWOMANしか好きになれずにいた。まあ、そのために、公開してすぐ観に行かなくてもいいか、とか思っていたのも事実である。さらに言うと、おととしの『JUSTICE LEAGUE』もかなり微妙な作品で、いよいよ公開される『AQUAMAN』に関しても、正直、まったく、1mmも期待していなかったのだ。どうせまた、相当アレなんでしょ……と小馬鹿にしていたわたしの方こそのバカだった!! はっきり言ってわたしは今日観た『AQUAMAN』が超面白くて、思いっきり楽しめたのであります。いやあ、これはイイっすねえ!
 というわけで、以下、ネタバレに思いっきり触れると思いますので、まだ観ていない方は今すぐ退場して、映画館へGO!でお願いします。ま、別に話を知ってても楽しめると思うけど。

 どうですか、この予告は。もう、全く見たいという気持ちを起こさせないというか、クソつまらなそうに思えませんか。少なくともわたしは、この予告を観た時、こりゃあまた香ばしいクソ映画っぽいな、と感じたのは確かだ。つうか、ガキ臭せえマンガじゃねえか、と。
 そして観てきた今でも、その印象はほとんど変わっていない。ズバリ、もう漫画そのもの、な映画であったと思う。
 しかし、だ。そもそも、DCコミック=漫画なんだから、実際あったりまえなのである。そして、わたしが本作を気に入った最大の理由はまさにそこにあって、「漫画に徹底している」のがとても気持ちイイのだ。『MAN OF STEEL』に始まった、DCワールドに関しては、今までもう何回もこのBlogでその勘違いした「リアル」路線を批判してきた。しかしこの映画『AQUAMAN』は、見事に今までの弱点を克服している作品だとわたしは思う。以下に、わたしがポイントだと思う点を列挙してみよう。
 1)ある意味テンプレな物語。だが、それがイイ!
 まずは物語である。ズバリ物語は、ある意味テンプレ的なお約束の展開で、ほぼ意外に思うことなんてなく、想像通りに進む、よくあるお話と断じてもいいのではないかと思う。だがこの映画は、例えるならば、全くの直球ど真ん中、そして「超剛速球」なのだ。
 その真っ直ぐでストレートなお話は、ここまで剛速球だと、もうそれは「テンプレ」とネガティブに思うよりも、「王道」とポジティブに評するしかないと思う。上映時間は140分超と意外と長いのだが、わき目も振らずに一直線に進む物語は、観ている観客にとっては全くストレスなく楽しめるし、その長さを一切感じさせないのも高く評価できるポイントだろうと思う。
 簡単に物語をまとめてみよう。時は1985年から始まる。とある灯台守の男が、嵐の夜、岩場に一人の美女が倒れているのを発見し、介抱する。そしてその美女は目を覚ますと、海底アトランティスの王女だという。親に決められた結婚を拒否して逃げてきたらしい。かくして出会った二人は恋に落ち、愛らしい男の子が生まれる。しかし男の子がすくすくと育つ中、海底から追手が現れ、「わたしがいては、あなたたちに危害が加えられてしまう。あなたたちのために、わたしは海に帰るわ」と、結局海に帰ってしまう王女。そして時は現代に移り、地上に残された息子はすっかり成長、ゴッツイおっさんとなって悪党退治にいそしむAQUAMANとして暮らしていたが、そこに海底から一人の美女が現れ、「あなたが海に戻って王位についてくれないと、あなたの弟が地上に戦争を仕掛けてくるわ。ついでに言うと、わたしはあなたの弟と結婚させられそうで困ってるんだけど」という話を聞き、ええ~オレは王の器じゃねーし……とか言いながら、いざ母の故郷の海底へ。そして海底のしきたりや、弟のことをよくを知らないAQUAMANは、王位継承の決闘に挑むことになるも、初戦は敗退、美女と共に「世界のどこかにある三叉の槍=トライデント」という最強武器を求めて旅に出るのであった……てなお話です。サーセン。超はしょりました。
 もう、いろいろ突っ込みたくなるのだが、これがなかなかどうして、ここまで剛速球のストレートだと、細かいことはどうでもよくなってきてしまうというか、面白く思えてしまうのだから不思議ですよ。わたしが一番謎に思ったのは、登場するキャラ達はものすごい勢いで水中を移動するのだけれど、ありゃ一体、どういう……仕組みというか理屈なんだろうか? いや、水を掻いている気配はないし、何かを噴出してジェット的に進んでいるわけでもない。物理法則は完全無視で、強いて言うなら、空を飛んでいるSUPERMAN的に「泳いでいる」としか見えないのだが……ええ、もちろんそんなことに一切の説明はありません。でもですね、どーでもよくなっちゃうんだな、そんなこたあ。
 そして物語は、当然伝説の武器を手にして勝利、無事に王座についてめでたしめでたし、である。こう書いてみると、オレは一体何が楽しかったのかさっぱり伝わらないと思うが、事実、面白かったとしか言いようがないのであります。
 2)とにかく映像がスゴイ!
 恐らく、ド直球の物語を、すげえ!と思わせるのに一番貢献しているのは、その映像そのものなのではないかと思う。恐らく水中シーンは、もうキャラクターを含めてほぼフルCGなのではないかと思う。それはそれで凄いのだが、一番すごいのは、カメラワークだ。とにかく動く! そして切れ目なし! 一体全体どうやって撮影したのか、どこからどこまでがCGなんだかさっぱり分からない映像のクオリティは、これはもう超一流だと言わざるを得ないだろう。この映像のすごさが、単なる直球ど真ん中の物語を「剛速球」に仕立て上げているとわたしは感じた。これはバットに当たっても、バットをへし折る勢いですよ。
 また、映像的な凄さは、まさしく漫画的表現にも通じるものがあって、漫画で言うなら「見開きでズドーーンと描かれる決めカット」もふんだんに盛り込まれており、観客の興奮を掻き立てることに見事に成功しているように感じられた。そう、極めて漫画に近い映像作りにも非常にセンスを感じさせるものがあったと思う。そういった画の作りこそ、演出というものだ。
 近年、コミック作品の映像化が当たり前となった日本の映画界(およびTV界)では、どこか勘違いしたような、漫画の絵をそのまま実写にしたような画をよく見かけるけれど、あんなのは演出なんかではなく、単に漫画の画をコピーしただけのものだ。本作はそんな下品なコピーなんかとは一線を画す、見事な作品と断言してもいいだろう。
 本作を撮ったのはJames Wan監督だが、わたしは彼の名を一躍有名にした『SAW』に関しては名作だと思っていたけれど、それ以降はとりわけ気にしてはいなかった。が、どうやらやはり彼は本物ですね。見事な演出だったとわたしとしては最大限の賛美をおくりたいと思う。
 3)何気に豪華なキャストが、超王道の剛速球を支えている。
 というわけで、各キャラとキャストを紹介しよう。ポイントになるキャラを演じる有名俳優がとても効いてると思う。
 ◆AQUAMAN=アーサー・カリー:主人公AQUAMANに関しては、わたしは実のところコミック版『AQUAMAN』を読んだことがないので知らなかったことが結構あって、意外と驚いた。わたしは『JUSTICE LEAGUE』でのAQUAMANしか知らなかったのだが、あの作品でのAQUAMANは、まあズバリたいして強くないくせに偉そうなキャラだったのだが、本作で語られたことによれば、深海の超高圧・極低温にも耐えられる体だそうで(ちなみにそのような体に「進化」したんだそうだ)、結果として、銃火器や刃物は一切効かないため、ま、普通の人間ではまず勝ち目ナシ、である。そして海に入ればほぼ無敵であるため、これは戦い方によってはチート宇宙人のSUPERMANにも勝てるのではないかというポテンシャルを持つ男である。そして海洋生物と意思疎通ができる謎能力の持ち主で、そのことが今回、ちょっとしたカギに(わたしは海底人なら誰でも持てる能力だと思ってたのだが、どうやら「王」の資質を持つ者の固有能力らしい)。ただ……残念ながら弱点は、あまり頭が良くないことかな……しかし、そのせいなのか、キャラとしては極めて素直で奢ることもあまりなく、ちゃんとそれなりに努力もするし、とても好感の持てる男であった。ごめんよ……『JUSTICE LEAGUE』しか知らなかったわたしは、君のことをただの脳筋かと思ってたよ……意外と素直でイイ奴だったんだね……。演じたのはもちろんJason Momoa氏39歳。そのあまりにワイルド&マッチョの風貌は、まさしくバーバリアンだけれど、コイツ、意外と人懐っこい笑顔がイイすね。なんつうか、わんこ的な陽キャラすね。今さらですが、結構気に入ったす。
 ◆メラ:アーサーを迎えに来た美女で、海底国ゼベルの王の娘。わたしはこれも知らなかったのだが、海底には7つの国があって、それぞれ王がいて、4つ以上の国の王が承認しないと、団体での軍事行動はできないというルールがあるんですな。へえ~、よく出来てんな、とわたしは感心したっすね。演じたのは『JUSTICE LEAGUE』にもちらっとだけ登場したAmber Heard嬢32歳。この人はいろいろ私生活が取りざたされたお騒がせ女優的なイメージがあるけれど、まあやっぱり、可愛いし美人ですよ。大変結構かと思います。 もちろん、アーサーとFalling Loveな展開ですが、そりゃ惚れるでしょうよ。しょうがないす。
 ◆バルコ:アトランティス帝国の参謀であり、アーサーが子供のころから、折に触れて地上へやってきては、格闘術をアーサーに叩き込んだ師匠でもある。子供相手の特訓シーンなんかも、ホントにお約束というか、鉄板でしょうな。演じたのは、名優Willem Dafoe氏63歳。ホントにどんどん渋くなっていい役者ですなあ。来週発表されるアカデミー賞では、ゴッホを演じた役で主演男優賞にノミネートされてますが、そういやゴッホによく似てるすね。いつも、強烈な印象を残してくれる名優ですよ。今回もとても素晴らしかったと思います。
 ◆オーム王/オーシャンマスター:アーサーの異父弟で、現在のアトランティスの王。自ら雇った地上人に海底を攻撃させ、それを自ら撃退するという自作自演で「ほらみろ、地上から先に攻撃してきたんだから、団結して地上に戦いを挑もう!」と海底の国々をまとめて地上侵攻を説く、本作のVillain(=悪役)。演じたのは、わたしが大好きな超名作『WATCHMEN』でナイトオウルIII世を演じたPatrick Wilson氏45歳ですよ! 兄貴が大嫌いと言うキャラ付けは、なんとなく銀河一の愚弟ロキ様を思い起こさせるけれど、負けた後は意外と素直で、ロキ様的な知略はほぼナシで、その気持ちのイイやられっぷりも、本作の剛速球感に貢献していると思う。見事でした。
 ◆アトランナ:アトランティスの前女王にしてアーサーとオームの母。アーサー出産後、海底に戻り、やむなくアトランティス王に嫁いでオームを産むが、アトランティス王は地上でのアーサー出産にずっとイラついていて、いつまでたっても自分をちゃんと愛してくれないことに嫉妬しまくり(?)、なぜか海溝族(?)の化け物半魚人たちにアトランナを生贄としてささげてしまう。その後生死不明だったが――ええ、もちろん死んでません。漫画的お約束ですな。そして演じたのはNicole Kidmanさん51歳。とても51歳には見えないのに、全然整形感がない天然物の美人ですな。もはや名優と言っていいNicoleさんが、本作のようなコミックヒーロー映画に出て、それっぽいコスチュームを身にまとうというのもイイすね。物語の本物感に貢献していると思います。全くどうでもいいことだけど、『JUSTICE LEAGUE』でAQUAMANが使っていた、5ツ叉の槍は、このお母さんが地上に残していったものだったようです。
 ◆トム・カリー:アトランナと出会って恋に落ちる地上人で、アーサーの父。わたしは直感的に、あれっ!? この役者、絶対知ってる、誰だっけ……とか思っていたのだが、ラスト近くで再登場した時、はっきり思い出した。この人は、つうかこの顔は、まさしく銀河賞金稼ぎでお馴染みのボバ・フェットの父、ジャンゴ・フェットをEP:II で演じたTemuera Morrisonさん58歳ですよ! あっ! この人、ジャンゴだ! と分かった時は超すっきりしたっす。16年ぶりにお見かけするジャンゴは、すっかり渋いおじちゃんになってました。
 ◆ネレウス王:メラの父でべセルの現王様。地上侵攻に消極的だが、オームの自作自演にまんまと引っ掛かり、何となくしぶしぶと地上侵攻に協力。強いのか弱いのかかなり微妙なお方。そして、こちらはわたし、恥ずかしながら全く気が付かなかったのだが、なんと演じたのはドラゴでお馴染みDolph Lungren様61歳であった。そして言われてみればもう、Dolph様以外の何物でもなく、気が付かなかった自分が情けなしである。エンドクレジットでDolph様の名前を観て、あっ!?っと思ったす。
 ◆ブラック・マンタ:コミックAQUAMANでは有名なVillainで、わたしも名前は知ってたけど……今回のブラック・マンタは、全く同情の余地なくただのクソ悪党で、単なる逆恨みで戦いを挑んでくるだけのやられキャラに過ぎないのだが、なんであんな余計な終了後のおまけシーンをつけたのか、そこだけほんとに不要だったと思う。しかしビジュアルはクラシカルな漫画チックで良かったすね。演じた役者は全く知らない人なので省略!
 他にも、CGで加工されてるから全く分からないけどDjimon Hounsou氏が出ていたり、「トライデント」を守る巨大な怪物、の声を、なんとJulie Andrewsさんが担当していたりとやけに豪華なキャスト陣が、それぞれ確かな演技で「王道」の物語を支えてくれている。そこを、わたしは「剛速球」と讃えたいのであります。

 というわけで、もう長いので結論。
 これまで、どうもDCコミックヒーロー映画は、正直イマイチな感じであったが、今回『AQUAMAN』観て、ちょっとだけ、だけど考えを改める必要を感じたのである。『AQUAMAN』という映画は、超感動したとか、そういうたぐいの映画では全然ない。けれどそこには、わたしが、あるいは日本人男子ならかつて間違いなく感じたであろう、ヒーロー漫画への愛と興奮が存在しており、大変楽しめたのであった。王道で、直球の物語は、ここまで本気で剛速球で描かれると、もうただただ、その世界に浸って楽しむのが正しいと思うすね。ツッコミどころも満載だけど、いいんだよ、もうそんなことは。そして主役のAQUAMANを演じたJason Momoa氏だが、ホント、いかつい凶暴な風貌のくせに、なんか人懐っこさのある、ホント大型犬みたいな役者っすね。気に入りました。まあ、恐らく続編もあり得るんだろうけど、一言だけ言うならば、ブラックマンタはもう出てこなくていいと思います。以上。

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 わたしは恐らく日本語で読めるシェイクスピア作品はほとんど読んでいるはずだが、読み始めたのは大学2年のころ、当時わたしが一番仲の良かった後輩女子が「シェイクスピア研究会」、通称「シェー研」に入っていたためで、シェー研とは要するにシェイクスピア作品を上演する演劇集団だったのだが、今度わたしオフィーリアを演じるんです!絶対観に来てください!と後輩女子が目を輝かせて言うので、ええと、それはつまりハムレットを読んどけ、ってことか、と解釈し、それからシェイクスピア作品を片っ端から読み始め、その面白さに目覚めたのである。
 以前もこのBlogのどこかで触れたような気がするが、わたしがシェークスピア作品で一番好きなのは、おそらくは『ヘンリー4世』だと思う。めっぽう面白い作品で、おそらく、読んだのは上記のきっかけから1年以内の話で、やっぱシェークスピアはすげえ、なんて思っていたのだが、そんな時にとある映画が公開されて、当時少し話題になった。その映画は、当時弱冠29歳の男が撮った『Henry V』、すなわち『ヘンリー5世』という作品である。この映画を撮った29歳の若者、それがSir Kenneth Branagh氏だ(Sirと氏はかぶってるか?)。
 この映画で彼はアカデミー監督賞と主演男優賞にノミネートされ、一躍注目の監督&役者として名を上げたわけであるが、そもそもは王立演劇学校を首席卒業しRoyal Shakespeare Companyで活躍していた、バリバリの舞台人だ。その彼が初めて撮った映画『Heny V』は非常に面白くてわたしも大興奮であった。わたしの記憶だと、確か都内では渋谷のBunkamuraでしか公開されていなくて、2回観に行った覚えがある。わたしが大好きな『ヘンリー4世』では、のちのヘンリー5世となる「ハル王子」はまだやんちゃな小僧なんだけど、第2部ラストの戴冠式で「ヘンリー5世」に即位し、それまでのやんちゃ仲間だった連中ときっぱり縁を切り、有名な酒飲みのおっさん「フォルスタッフ」をも投獄させるというところで終わって非常にカッコよく、その後の続きの話が『ヘンリー5世』で語られるわけだ。なんだか、日本的に言うと「うつけ者」と言われ続けた織田信長が、立派な武者として新たな人生を踏み出す的なカッコ良さがあって、わたしは『ヘンリー4世』が非常に好きだ。続く『ヘンリー5世』は、まさしく信長にとっての桶狭間的な、フランスとの圧倒的な戦力差のある戦闘に勝利するお話で、実に面白いのであります。そして、Kenneth氏の撮った映画版は、演出的にも、主役としての演技においても、極めてハイクオリティでとにかく面白かった。全く現代人の語り手が画面の中で解説、というか狂言回し風に現れて状況をト書き風に説明したり、とても斬新で大興奮したことが懐かしく思い出されるのである。
 というわけで、以上は前振りである。今日、わたしはそのSir Kenneth氏が監督主演した『MURDER ON THE ORIENT EXPRESS』を観てきたのだが、監督デビュー作『Henry V』から28年が経ち、すっかりイギリスの誇る名優&名監督となったSir Kenneth氏の演じるポアロは大変素晴らしく、やっぱりこいつはすげえ男だな、と、なんだか妙な感慨がわいてきて、大変楽しめる一品であったのである。まあ、原作のしっかりある作品で、どうも賛否両論のようだが、わたしは本作の結末は知っていたけれど、間違いなく面白かったと思う。
 というわけで、以下、ネタバレに触れる可能性もあるので気になる人は絶対に読まないでください。まあわたしは知ってても面白かったですが。

 わたしは海外ミステリー好きとして、中学生ぐらいの時からいろいろ小説を読んでいるつもりだが、実は恥ずかしながらAgatha Christie女史の作品は1作しか読んだことがない。その1作が何だったか、実に記憶があいまいで、たしか『ABC殺人事件』だったと思うのだが、なぜ1冊しか読んでないか、の理由は明確に覚えている。それは、兄貴が早川文庫のクリスティー作品をいっぱい持っていて、それをある日勝手に読んで、兄貴の部屋に戻そうとしたときに「てめー勝手に何してんだこの野郎!」と大喧嘩になったのである。なので、以来わたしはクリスティー作品は絶対に読まん!と誓いを立ててしまったんだな。しかし、テレビや映画は別物、と思ったのか、わたしも我ながら良くわからない心理だが、テレビシリーズのポアロやミス・マープルは観ていたし、映画版の『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』はテレビで、『地中海殺人事件』『クリスタル殺人事件』は劇場で観ており、今日、改めて観た最新Verの『オリエント急行』も、たしかラストは……だったよな、と思いながら観ていたのだが、各キャラに関してはすっかり忘れていたものの、ラストはちゃんと記憶通りで、ちょっとだけ安心した。
 本作は、最新Verという事で、衣装も美術セットも極めて金がかかって豪華だし、おそらくはCGもふんだんに使われているであろう画作りで、大変高品位である。その点も見どころであるのは間違いないが、やはり、一番はメインキャスト全員が名の通った一流役者で、その豪華オールスターキャストにあるのではないかと思う。というわけで、以下、各キャラと演じた役者を紹介してみよう。全員、は面倒なので、わたしが、おっ、と思った方だけにします。なお、わたしは原作未読だし、74年版の映画もほぼ忘れかけているので、原作とどう違うかとかそういうことは書けません。あくまで、本作最新Verでのキャラ、です。
 ◆エルキュール・ポワロ:ご存知「灰色の脳細胞」を持つベルギー人の名探偵。演じたのは最初に散々書いた通り、監督でもあるSir Kenneth Branagh氏。わたしはこの映画で初めて知ったのだが、「エルキュール」の綴りは、Hercule、つまりフランス語だからHはサイレントなわけで(ベルギーはフランス語圏でもある)、要するにカタカナ英語で言う「ハーキュリー」、日本語で言う「ヘラクレス」のことなんですな。まったくどうでもいい話ですが、作中で何度か読みを間違えられて、わたしは怪力の英雄じゃありませんよ、なんてシーンがあって、あ、そう言う意味か、とわたしはちょっと自分の無知が恥ずかしくなったす。そして演じたSir Kenneth氏だが、わたしとしては全く堂々たるポアロで、文句の付け所はないように思えた。大変良かったと思うが、どうもあの髭のわざとらしさとかは、鼻に付く方もいらっしゃるようですな。わたしは全然アリだと思います。
 ◆ラチェット:演じたのはわたしがあまり好きでないJohnny Depp氏。ある種のネタばれかもしれないけれどズバリ書きますが、殺されるアメリカ人実業家の役である。そして実は犯罪者の悪党。つまり被害者である彼には、殺される理由が明確にあって、その理由と乗客たちにはどんな関係が……? というのがミソとなっている。Depp氏はまあいつものDepp氏で、とりわけ思うところはなかったす。変にエキセントリックなところはなく、表面的には紳士然としているけれど、その内面はどす黒い、という普通の悪党な感じでした。
 ◆メアリ・デブナム:演じたのは、STAR WARSの新ヒロイン・レイでおなじみのDaisy Ridleyちゃん25歳。可愛い。実に可愛い。この女子は声がちょっと高くて、そしてわたしには気取って聞こえるイギリス英語がなんか妙に可愛い。笑顔もしょんぼり顔もイイすな。演技も、ほぼド素人だった『SW:Ep-VII』からどんどんと良くなっていると思います。この女子はもっとキャリアを伸ばしていけるような気がしますな。役としては、 バクダッドで家庭教師をしていた先生で、ロンドンに帰る途上のイギリス人。本作では、医師の青年と恋愛関係にあるような感じだが、ポアロには平然と関係がないような嘘をつく、若干訳アリ風な女子の役。それが原作通りなのかわかりません。そして彼女とラチェットの間には何の関係もないように思えるが実は……な展開。
 ◆マックイーン:ラチェットの秘書。演じたのは、オラフの中の人、でおなじみのJosh Gad氏。今年の春の大ヒット作品『Beauty and the Beast』のル・フウを演じたことでもお馴染みですな。マックィーンも、ラチェットの秘書として実は帳簿を操作して金を横領していた……という怪しさがある容疑者の一人。
 ◆ハバート夫人:演じたのは30年前は超かわいかったし今もお美しいMichelle Pfeifferさん59歳。わたしにとっては初代CAT WOMANことセリーナ・カイルだが、やっぱりお綺麗ですなあ。笑顔がいいすね、特に。しかし本作ではあまり笑顔はなく、妙に色気のある酔っ払いでおしゃべりな金持ちおばさんというキャラクターで、事件とは無関係のように思えたが、実は悲しく凄惨な過去が……的な展開であります。なお、わたしは終わった後のエンドクレジットで流れる歌がとてもイイな、と思って、誰が歌っている、なんという曲なんだろう、とチェックしていたのだが、曲のタイトルは「Never Forget」、そしてどうも歌っていたのは、まさしくMichelle Pfeiferさん本人だったようです。そうだよ、このお方は歌えるお方だった! お、YouTubeにあるから貼っとこう。

 ◆ドラゴミロフ侯爵夫人:いかにも金持ちで意地悪そうなおばあちゃん。いつも犬と、お付きの侍女的なおばちゃんを連れている。そしてこういう役をやらせたら、この人以上の女優はいない、とわたしが思うJudi Denchおばちゃまが貫禄たっぷりに演じてくれて、大変良かったと思います。御年83歳。ただ、物語的には今回の映画では結構出番は少ないかな……。あ、Denchおばちゃまも『Henry V』に出てたんだ? 覚えてないなあ……やっぱり、わたしとしてはこのお方以上の「M」はいないすね。なぜ『Skyfall』で退場させたんだ……。
 ◆ピラール・エストラパドス:何やら世をはかなみ、いつもお祈りをしている宣教師?の女子。演じたのはスペインが誇る美女Penélope Cruzさん43歳。生きているラチェットを最後に見かけた女。全くラチェットとのかかわりはないように見えたが、実は……な展開。ちなみに、74年の映画版ではかのIngrid Bergman様が演じた役(役名はグレタ・オルソンと原作通りで、今回の方が原作と違うとさっきWikiで知りました。へえ~)で、アカデミー助演女優賞も獲ったんですな。それは知らなかったわ。
 ◆ハードマン:オーストリア人大学教授という偽装でオリエント急行に乗っていたが、実はピンカートン探偵社の探偵で、ラチェットの周辺警護を依頼されていた、が、実は……といういくつも裏のある男。演じたのはわたしの大好きWillem Dafoe氏62歳。本作ではあまり出番なしというべきか? しかしその存在感は非常に大きい感じがした。相変わらず渋くてカッコイイ。
 ◆マスターマン:ラチェットの執事。演じたのは、『Henry V』の中で一人現代人として出てくるあのおじさんでわたし的に忘れられないSir Derek Jacobi氏79歳。Kenneth監督が尊敬し愛してやまないバリバリのシェイクスピア役者ですな。わたし的にはイギリス物、時代物には欠かせないおじさんですよ。残念ながら本作ではあまり目立たない存在でした。が実は彼も……な展開。

 はーー疲れた。もうこの辺にしておこう。要するに、出てくるキャラクターはことごとく、「実は……」という背景があって、そういった過去をポアロが次々に暴き出すものの、じゃあいったい誰が殺人者なんだ? つうか全員に動機があるじゃねえか! という驚きの展開になるわけです。そしてポアロが導き出した、真実は―――という物語なので、さすがにそこまでは書きません。わたしはその答えだけしか覚えてなかったわけですが、それを知っていても全く問題なく楽しめました。なので、まあ、この正月に映画でも観るか、という方にはそれなりにお勧めだと存じます。映像的にも、役者陣の演技的にも、なかなか見ごたえアリ、な作品でありました。

 というわけで、結論。
 誰もが知っている名探偵ポアロ。そんなおなじみのキャラを、イギリスの誇る名監督&名優Sir Kenneth Branagh氏が21世紀最新Verとして映画化したのが『MURDER ON THE ORIENT EXPRESS』であります。公開からもうちょっと経ったけれど、今日やっと観てくることができました。ま、すっげえ、めっちゃおもしれえ! と興奮するほどでは全くないけれど、やっぱり面白かったすね。衣装もセットもCGも豪華だし、役者陣もオールスターキャストで、大変華やか? というか、非常にゴージャスですよ。わたしはアリだと思います。時代背景が良くわからないけど、原作小説が発表されたのが1934年だそうで、まあその辺りのお話なんでしょう。1934年は昭和9年だから、昭和の初期、ってことですな。ちなみに、ラスト、ポアロは「エジプトで事件が起こった」知らせを聞いて、そちらへ駆けつけるべく去っていきます。つまり、この映画が大ヒットするなら、次は「ナイル殺人事件」を映画化する気満々、ってことですな。売れているかどうか調べてみると、現在、全世界興収は3億ドルほどだそうで、十分ヒット作と言えるとは思うけれど、どうかな……まあ、わたしとしてはSir Kenneth版「ナイル」もぜひ観たいと存じます。楽しみっすね。以上。

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