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 はあ……読み終わったす……。
 なんだけど、実は読み終わったのはもう2週間ぐらい前で、なかなかこの感想を書くまでに時間がかかってしまいました。
 というのも。
 まあ、はっきり言いましょう。ちょっとですね……なんかイマイチだったすね、結論としては。何の話かって!? そんなのコイツのことに決まってるでしょうが!!
King_sleepingbeauty
 そうです。わたしがこの世で最も好きな小説家、Stephen King大先生の「日本語で読める」最新作『SLEEPING BEAUTIES』のことであります。
 上巻を読み終わったのは前回の記事の通り10/29のことで、今回の下巻を読み終わったのは11/3ぐらいだったかな、まあ、もはや結構前なのだが、なんつうか、後半、ちょっと厳しかったすね……。
 本作は、謎の「オーロラ病」なる現象が世界を包み込む、という、現代のCOVID-19を思わせるようなお話なんすけど、「オーロラ病」というのは、「眠れる森の美女」でお馴染みのDisneyプリンセス、オーロラ姫、から命名された謎の現象で、女性しか罹患せず、一度眠ってしまうと、体からなにやら糸状組織が分泌され、繭の様なものを形成してしまう、というものだ。しかも、その繭を破って、女性を助けようとすると、クワッ! と目覚めて、繭を破った人間(及びその時周りにいた人)をブチ殺そうとする凶悪な行動に出て、ひとしきり暴れた後は、また繭を形成して眠りに落ち、目が覚めない、というような、おそろしい病(?)だ。
 で、上巻では、ついに主要人物である主人公の妻であり、町の警察署長を務めていた女性が、ずっと眠らないよう頑張って来たのに、ついに!眠ってしまう、というところまでが描かれたわけです。詳しい人物関連図は、前回の記事を観てください。
 というわけで、上巻読了時には、これからどうなる!? 的なドキドキ感でわたしは大変ワクワクしていたわけだが、一方では、上巻の終わり時点ですでにこの「オーロラ病」現象が、完全にSupernaturalな存在によるもの(?)であることもはっきりしたので、若干、嫌な予感もしていたのは事実であります。
 Supernaturalとは、すなわち超常現象であり、科学の及ばない謎現象、なわけで、その原因となる謎の存在、「イーヴィ―」という女性の姿をした謎の存在(上巻時点で完璧に「人間ではない」ことが確定していた)は、いったい全体、何者なのか、何が目的なのか? が本作で一番のカギであったと思うのだが……まあ、結論から言うと、最後まで「まったくわからねえ!」というエンディングだったのは、正直かなりガッカリいたしました。
 この肝心な部分が分からないので、なんていうかな、「勝利条件」がよく分からず、その結果、主人公はいったいなぜ、イーヴィ―をかたくなに守ろうとするのかがピンと来ないんすよね……。
 物語は、下巻に入って、こんな感じの対立構造となるのだが……。。。
beauties02
 はっきり言って、なんで殺し合いにまで発展するのか、わたしには全く理解できなかったす。イーヴィ―を渡せ! それはできん! どうしてもか!? どうしてもだ! よろしい、ならば殺し合いだ! という展開は、ホントに読んでいて、アメリカって国は本当にどうしようもないというか、我々日本人では絶対こうはならんわな、と、わたしとしては相当冷ややかな目で物語を追うことになったす。殺し合う前に、もうちょっと普通に、クリント側もフランク側も、話し合う余地はあったと思うのだが……。完璧にお互いケンカ上等だもんね。メリケン人はみんなこうなんすか?
 おまけに、クリントが信じた勝利条件(?)である、「イーヴィ―を火曜日まで守り抜く」ことも、ほぼ意味がなかったし、眠ってしまった女たちが謎世界から元の世界の戻ることにしたくだりも、イーヴィ―はほぼ何のしてないし(女たちは、結局、男がどうとかそういうことでは全くなく、単純に元の世界に帰りたがった)、結局、何のために女たちは眠り、謎世界で生活することを強いられたのか、についても、ほぼゼロ回答だったと思う。
 もちろん、普通に読んで、イーヴィ―の目的は、「虐げられた女たち」に「虐げ続けた男たち」のいない世界を提供し、どっちがいいか選ばることだった、的に理解することはできるけれど、それって意味があるのかな? 「元の世界」がいいか「男のいない世界」がいいか、という強制的な二択は、どう考えたって、最初から答えが出てると思うんだけど。まあ、5万歩譲って、そりゃ聞いてみなきゃわからんぜ? 選択肢を与えてみる意味はあるんじゃね? と考えたしても、アメリカ北東部の小さな町の数百人(?)の人々に、ある意味人類の運命を背負わせる意味って、ある? 全くないよなあ、やっぱり。だいたい、メリケン人どもの判断に世界を託すなんて、まあ、ズバリ言えば、まっぴらごめんだね!
 また、結局男たちは殺し合い血を流し合い、女たちは話し合いで全会一致の結論を得た、とかそんな読み方もできるんだろうとは思う。けれど、「男たち」にひとからげにされるのも、やっぱり不愉快すね。メリケン人と一緒にしないでほしいし、とにかく、なんつうか……これは日本人が読んで面白いと思える物語ではないんだろうな、というのがわたしの結論です。なんなんだろう、本作はアレかな、息子のOwen氏との共著なわけで、Owen成分が混ざったのがわたしの気に入らなかったんだろうか? とにかく、なんか、いつものKing大先生作品とは、どこか味わいが違っていたように思えてならないす。
 で、最後に一つ、King大先生の他の作品との比較なんですが、わたし、最初は謎の病が蔓延する世界だし、Supernaturalな存在も出てくるということで、『THE STAND』に似てるのかな……と思いながら読んでいたのですが、まあ結論としては全く似てなかったし、一方で、閉鎖空間に閉じ込められた人たちの対立と狂気、という点では、『UNDER THE DOME』的な? と思いつつ読み進めた結果、やっぱり『UNDER THE DOME』とも全然似てなかったすね。わたしはもちろん、『UNDER THE DOME』の方が面白いと思います。なにしろ、悪党がものすごい悪党で、主人公なんてもう心身ともにボロッボロになって、からの、大逆転だったし、謎のドームに閉じ込められるという謎現象にも、ちゃんと回答があったもんね。まあ、結局「謎の宇宙人によるいたずら(ってことでいいのかアレは?)」という口あんぐりな結末だったけど笑。少なくとも、今回のイーヴィ―よりは納得性(?)はあったと思います。いや、ないか!? まあ、そこは個人のお好み次第ってことでお願いします。

 というわけで、もうさっさと結論。
 わたしがこの世で最も好きな小説家はStephen King大先生であるッ! というのは永遠に変わらないと思いますが、実はたまーに、コイツは微妙だぞ……という作品もありまして、今回の『SLEEPING BEAUTIES』という作品は、その「微妙作」であったとわたしの心に刻まれると存じます。うーん、やっぱりなあ、イーヴィーをどう理解するかでこの作品に対する評価は変わると思うっすね。わたしはダメでした。一体全体、何をしたかったわけ?? ぜんっぜん分からんかったす。そしてわたしが明確に理解したのは、アメリカ合衆国ってのはホントにアカン国ですな、という無責任かつテキトーな事実であります。銃社会ってさ……アンタらいつまで西部開拓時代のつもりだよ。21世紀の現代において、明確に否定していただきたいですなあ、マジで。ドラッグもいい加減にやめて、みんな真面目に生きなよ。話はそれからだ! 以上。
 
↓↓文春よ、速くこっちを日本語化しておくれ! 頼むよ!
The Outsider: A Novel
King, Stephen
Scribner
2018-05-22

The Institute (English Edition)
King, Stephen
Hodder & Stoughton
2019-09-10

 ふああ……長かった……。
 わたしはおとといの夜、読んでいた海外翻訳小説を読み終わったのだが、読み終わっての偽らざる第一声である。そしてその読み終わった本とは、6日前に買ってきた、コイツのことです。
FIREMAN


 買ってきた6日に前に書いた通りだが、Joe Hill先生による最新長編『THE FIREMAN』であります。わたしとしては、この才能ある作家Joe Hill先生が全然日本で紹介されていないのが本当に残念に思う。かの世界的大ベストセラー作家であり、わたしがこの世で最も大好きな小説家、Stephen King大先生の次男長男(姉と弟がいる第二子)で、なんでも、本人としては、King大先生の息子であることで、ちやほやされるのが嫌でJoe Hillというペンネームを使い出したらしいが、現在ではもう、King大先生の息子であることはまったく隠しておらず、世に知られている。しかし、ここ日本ではさっぱり知名度は低く、その作品が非常に面白くて、優れた才能の持ち主であることは、King大先生の息子であるということを知らなくても、作品を読めば一発で分かると思うのだが……ほんともったいない。もっともっと売れてほしいのだが、いかんせん日本の版元である小学館にはまったくやる気がなく、ほぼ埋もれているのが現状だ。ホント腹立たしいわ。
 それはともかく。まずは『THE FIREMAN』の物語をざっとまとめてみよう。
 物語は、冒頭、学校の保健室から外を眺めた主人公が、「燃える人間」を目撃するシーンから始まる。そしてあっというまに、その人体発火の病気(?)が地球を覆い、一転して世界はディストピア的状況に陥る。まあ、欧米人はディストピアものが大好きですな。で、主人公は「感染者」の押し寄せる病院へ看護師として働くようになるのだが、自らが妊娠していることが判明、こんな状況で妊娠するとは……と若干途方に暮れていると、ついに自らも発症してしまい、そのことで(頭のイカレた)夫にぶっ殺されそうになる。そんな大ピンチを救ったのが、消防士(FIREMAN)の格好をした謎の男と、なぜかキャプテン・アメリカのマスクを着用した少女だった。辛くも難を逃れた主人公は、二人に連れられて、自宅から数kmにあるキャンプ場に集まる「感染者」たちの集団に合流する。しかし、そのキャンプも、その場を仕切る「ファーザー」はいい人だったが、やがて妙な狂信めいた集団心理が醸成されていき、ファーザーが殺されかけ、意識不明に。代わってリーダーとなった女、ファーザーの娘のキャロルは、とんでもない狂信で人々を支配していくのだが……てな展開であります。
 こういう物語なので、Kingファンとしては、なんとなく『The STAND』(超インフルエンザで人類の大半が死に絶えた世界の話)や、『UNDER THE DOME』(謎の隔離バリア空間に閉じ込められた人々の話)、あるいは『The MIST』(謎の霧にスーパーマーケットに閉じ込められた人々が狂信によってイカレていく話)など、父たるStephen King大先生の作品を思い出すのではないかと思う。
 しかし、Joe Hill先生は、一番最初の序文で思いっきりこう表明している。
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 インスピレーション
 J・K・ローリング――その数々の作品が、ぼくに本書の書き方を教えてくれた。
 P・L・トラヴァース――僕に必要な薬をもっていた。
 ジュリー・アンドリュース――その薬を飲みやすくするスプーン一杯の砂糖を持っていた。
 レイ・ブラッドベリ――本書の題名を盗んだ。
 わが父――題名以外のすべてを盗んだ。
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 まあ、こうも堂々と宣言されたら、なんつうか、むしろ期待が高まりますね。ハリー・ポッターとメリー・ポピンズ、それから『華氏451度』と父King大先生に対する敬意をもって書かれたわけで、とりわけ、父からは題名以外の全てを「盗んだ」と記すのは、わたしにはある種の決意表明のようにも感じられる。読者たるわたしとしては、その意気やよし! 父を超えてみせてくれ! とワクワクが止まらない見事な序文だったように思う。
 というわけで、わたしはこの長~~い物語を実質4日間で読み終えてしまったのだが、まあ、やっぱりちょっと、冒頭に記した通り、長げえよ……とぐったりしてしまったのは確かだ。とりわけキャンプでの日々が長いよ……。中盤ぐらいから犯人捜し的なミステリー風味が加わって来て、一体だれが、なんのために?的な興味もわいてきて、面白いことは間違いないのだが、キャラクターも多いし、そしてどんどんと主人公及びファイアマンが心身ともにボロボロになっていく過程は、正直読んでてつらかったす。この辺りのボロボロ具合、もうこれ、逆転できないじゃん!? ぐらい追い込まれていくのは、実に『UNDER THE DOME』っぽさが炸裂してたように思う。そして後半の逃走劇は、なんだか『MAD MAX2』あるいは『MAD MAX:Fury Road』的でもあったように思う。完全にヒャッハー世界ですよ。恐ろしいことに。
 わたしが本作を読んで少し残念に思ったのは、肝心の『FIREMAN』があまり活躍しないんすよね……そして弱い……。まったくもってスーパーヒーローではなく、心身ボロボロで、これでもかというぐらいやられていく様は、ホントつらかったす。
 で、次に、本書でのカギとなる病気についてまとめてみよう。こういうことだと思う。
 ◆竜鱗病<ドラゴン・スケール>:正確には病気というよりも、「竜様発燃性白癬菌」というカビの一種の菌類に寄生された状態。この菌に寄生されると、肌に竜の鱗のような模様がタトゥーのように現れる。そして燃える。発生元は不明だが、温暖化で溶けたシベリアの永久凍土から数万年の休眠から目覚めたという説もあるらしい。そして、保菌者と接触しても感染することはなく、どうやら胞子を含む「灰」が媒介しているようで、菌はその灰を生成して広く増殖するために宿主を燃やす、らしい。
 しかし、この菌と共生する方法があって、燃えないでいられる状態を維持することも可能。それは、脳から分泌される「幸せホルモン」でお馴染みのオキシトシンを感知すると、菌はこの宿主は安全だ、と思うらしいのだ。面白いよな……こういう設定。キャンプでは皆が歌って心を一体化することで、体のスケール(鱗)が発光し、「ブライト(Bright)」と呼ばれる恍惚状態になり、精神的なテレパシーめいたもので「繋がってる」意識を持つ(=こういう人と繋がっている状態が人にとって最も幸せな状態=オキシトシン分泌、らしい)ため、燃えない、ということらしい。この「ブライト」というのも、Kingファンとしては「輝き(Shining)」能力を思い起こさせますな。そして問題は、燃えないだけでなく、炎を自在に操るジョン=FIREMANは一体どうやっているのか? ということになるのだが、これはある種の修行的な訓練で身に着いたそうです。この訓練のくだりはちょっとアレだけど、まあ、とにかくよくできた設定であると思う。そしてどうでもいいけど、<ドラゴン・スケール>というネーミングはセンス抜群すね。
 で、最後に、キャラについてだが、本作は小学館文庫版で<上>が660ページ、<下>があとがきなど含めて637ページ、合計1297ページと膨大で、キャラクターもそれなりに多いので、まずはわたしがパワーポイントでテキトーに作った人物相関図を貼りつけておこう。
FIREMAN
 ◆ハーパー:主人公の女性。30代後半だっけ? 年齢は忘れました。学校の保健室の先生だったが、「竜鱗病」蔓延後は看護師に。彼女の問題点は、果たして何もなく平穏な世界のままだったら、夫の本性に気が付けていたのだろうか? という点だろうと思う。ある意味平均的US家庭の奥様で、保健室のメリー・ポピンズとして厳しく、優しく子供相手に過ごせていたはずで、まさか夫があれほどクソ野郎だったことには気が付かずに終わっていたのではなかろうか。そして、それはそれで、まったくの幸せな人生だったのではないだろうか? そう考えると、若干ハーパーというキャラに対する共感は薄れてしまうような気もするけど、まあ、人間だれしもそうなんでしょうな。普通の人代表として、そして異常事態でも変わることのない善良な魂の持ち主として、主人公の資格を持っていたと思うことにしよう。なんつうか、善良さによるものなのかどうか分からないけど、ハーパーはかなりあっさり人を信用するし、好きになっちゃうという、フツーの女性だと思う。そして妊婦なのに、無茶しすぎだよアナタ……。
 ◆ジョン:元菌類学者のイギリス人。現FIREMAN。消防士の格好をしていて、炎を操る男。フツーの人なので、肋骨は折るわ手首は脱臼するわと、満身創痍。中盤ほとんど出番なし。キャンプにはおらず、すぐそばの小島で一人ひっそり暮らしていて、「ブライト」状態で人と繋がることを拒否している。その理由は―――まあ、書かないでおきます。読んでお楽しみください。
 ◆セーラ:すでに故人。焼け死んだ。が、実はジョンの小屋のかまどの火の中にーーな方なので、わたしは勿論『ハウル』のカルシファーを思い出したっす。
 ◆ファーザー・トム・ストーリー:キャンプの主導者。元学校の先生。セーラとキャロルの父。まあ、なんつうか、いい人なんだけど……あまりに無防備というか、ちょっと危機感が足りなかったのではないかしら……。
 ◆キャロル:セーラの妹で超奥手な女。何歳か忘れたけど処女。ファーザー襲撃&昏睡ののち、どんどんとおかしな方向へまっしぐらなイカレたお方。この人も、この異常事態ではなく、普通な世ならば、普通に生きて行けたかもしれないのに……。たぶん、本人には全く罪悪感のかけらもなく、正しいと思ったことをしただけだと思う。恐ろしい……。
 ◆アリー:セーラの娘。16歳だっかな、絶賛思春期の扱いの難しい娘さん。ジョンを慕っていて、ジョンのFIREMAN活動のサイドキック(相棒)的に、キャプテン・アメリカのマスクをかぶって活躍。しかしキャンプでは、周りに影響されやすいのかな、コロコロと態度が変わる、ホント難しい娘さんですよ。
 ◆ニック:セーラの息子でアリーの弟。聾唖で、読唇術を身に付けていないため(作中で曰く、読唇術なんて映画の世界のモノで、出来っこない)、手話か筆談で意思疎通する少年。しかし「菌」の扱いが実は非常にうまく、2代目FIREMANになれるレベル。基本的に、甘えっ子です。
 ◆ジェイコブ:ハーパーの夫。公務員だが、実はずっと人々をバカにして、オレが世に認められないのはクズどものせいだと世界を憎んでいた。ついでに妻のハーパーに対しても、内心ではこのアホ女め、とずっと見下していて、それを小説に書いてストレス解消していたクソ野郎。ハーパーが感染したことで、自分ももう保菌者なんだと血迷って無理心中しようとするアホ。そしてその際、ハーパー&FIREMANにこっぴどくやられて、ずっとハーパーとFIREMANと感染者をぶっ殺すことを生きがいにする。でもまあ、ジェイコブもまた、平穏な世界であれば、それなりに平穏に生きて行けたんでしょうな……。
 ◆ルネ&ドン:最後までハーパーの味方のいい人。ルネは黒人のおばちゃん、ドンは元軍人のおじいちゃん。詳しくは相関図参照
 ◆ベン:元警官で、コイツはいい人かな? と思っていたけど、どんどんと元警官の血が騒いだのか、圧制側に回ってキャロル陣営へ。「ブライト」中のトランス状態でハーパーのケツをもみまくる変態おやじ。読んでいて、ついドンとベンが、どっちがどっちだかわからなくなるので、気をつけよう!
 ◆マイクル:アリーが大好きな少年で、コイツもいい人だと思ってたのに……単に、ヤリたくてしょうがない男子高校生(童貞)でした。
 ◆ハロルド:既に故人。キャンプでは嫌われ者のキモオタデブの変態野郎。しかし実は、一番事態を把握している賢い奴で、日記を残しており、数々のヒントを残す。なので、実は大変かわいそうな野郎でした。
 とまあ、主なキャラはこんな感じかな。他にもいっぱいいろいろなキャラが出てきますが、彼らに共通するのは、平穏な世界ならば、誰しもが普通の人であったはずだという点で、この「菌」が、あらゆる人に、ある意味平等に、その人の本性をむき出しにする事態へと突き落としたわけで、なんつうか、恐ろしいというか、こういう事態でも変わらない自分でありたいと願わずにはいられないすな。いや、変わらない、というのは違うか? 変わったように見えてもその人そのものなわけで、仮面を無理矢理剥されたってことなのかな……その仮面があまりに別物だと、なんかゾッとするっすね。おれは果たして大丈夫なんだろうか……という怖さは、とても強く感じるに至ったす。

 というわけで、もう長いのでぶった切りだけど結論。
 US発売から2年(?)。待ちに待ったJoe Hill先生の最新作『THE FIREMAN』の日本語翻訳が発売されたので、さっそく買い求め、むさぼるように読んだわたしである。読み終わって、まず第一に、長い! 疲れた! という感想が一番最初にわたしの口から洩れたのは確かだし、実際、途中ちょっとダレるかも……とは思うけれど、それでもやっぱり、結論としては面白かった! と申し上げたい。少なくとも、Kingファンならば絶対に読むべき物語であり、Kingファンに対しては絶対のおススメだ。ただし、Kingファン以外の人々に対しては……どうかなあ……最後まで読み切る気合は必要だと思います。そして、わたしは偶然、今年上演された『メリー・ポピンズ』の舞台を観に行ったし、その予習として映画版も見直しておいたのだが、本書は数多く『メリー・ポピンズ』を知らないと困る描写が多いような気がする。なので、読む前に、ぜひ! 映画版『メリー・ポピンズ』を観ておくことを推奨します。知っていると、ニヤリとしてしまうような場面がいっぱいありますよ! そんなところも、わたしとしては大変楽しめました。つうかですね、King大先生のDNAは確実にHill先生にも受け継がれているのは間違いないですな。すごい才能ですよ。次の新作が楽しみです。以上。

↓ マジで観ておいた方がいいと思います。映画としても最高に楽しいしね。若き頃のジュリー・アンドリュースさんはホントかわええっすな……!

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