このBlogで何度か書いているが、世界珍作MOVIE選手権が開催されたなら、わたしとしてはM・Night Shyamalan監督は間違いなく優勝候補に挙がる映像作家であると思っている。以前も書いた通り、たしかに『The Sixth Sence』は面白かった。実に上質で巧妙な伏線が張り巡らされた、小説で言うところのいわゆる叙述ミステリー的な脚本は確かにお見事であったと思う。思うのだが、残念ながらその後、どんどんと、妙なトンデモ話ばかりを撮り続け、すっかり珍作監督として今に至っている。また、この監督は自作に必ず(?)出ることでもおなじみで、わたしの目には単なる出たがり野郎としか思えないが、一応、尊敬するHitchcock監督の真似をしてるんだよ、アハハ、とどこかでのんきに語っていたのを目にした覚えがあるが、まあとにかく、なんというか……わたしにとってShyamalan監督は、どうもイラっとする野郎なのである。
 じゃあ、そんな監督の作品はもう観なきゃいいじゃん、と思いますよね、普通は。わたしも、Shyamalan監督の新作公開となると、今回はいいかな……とは思う一方で、どうしてもわたしの体内に巣食う、クソ映画ハンターの本能が無性にざわめき、わたしをして劇場に足を運ばせてしまうのである。これも前に書いたと思うが、絶対くさいに決まってる、けど、嗅がずにいられない自分の足というか……まあそんな変態はわたしだけかもしれないが、つい劇場へ観に行き、ああ、やっぱり今回もクソ映画だった、と納得して帰るのが常なのである。
 というわけで、いよいよ公開されたShyamalan監督最新作『SPLIT』。2015年の『The Visit』のあまりのクソ映画ぶりに、もういい加減劇場に行かなくていいんじゃねえかな……と思っていたものの、今回はUS興業も大ヒットと好調評価も上々らしい、ので、やっぱり観に行ってしまったわたしである。そして、やはり、今回もわたしの眼には微妙作としか思えない内容で、ある意味、ああ、やっぱクソだったと胸をなでおろすという、我ながらもう意味不明の事態となったのである。ちなみに、本作でもShyamalan監督は精神科医の助手?役で堂々と出てくる。まったく本筋に関係ない、HOOTERSは最高なんすよ! と熱弁をふるう役に、なんだか今回もイラっとしましたw
 なお、以下、クリティカルなネタバレもあるので、読む場合は自己責任でお願いします。

 さて。上記予告はご覧いただけただろうか? ズバリ言うと、本作の物語はほぼ上記予告で語りつくされていると言っていいと思う。誘拐された3人の女子高生。そして誘拐犯は23重人格の男。はたして女子高生は脱出できるのか―――というお話である。
 もちろん、誘拐の目的だとか、3人の女子高生のそれぞれのキャラなど、本作を観ないと不明な部分はあるけれど、正直、それらはすべて、もはやどうでもいいように思う。わたしは上記予告を観て、ラストで24人目の人格が出てきて、な、なんだって――――っ!? というオチになるんでしょ、と想像して劇場へ向かったわけだが、残念ながらオチも実に、「はあ?」というリアクションしかできず、Shyamalan監督のトンデモパワーも、随分弱体化したなあ……と思わざるを得なかった。そうなのです。この映画、まったくもって普通なのです。オチも。
 ただ、長年Shyamalan監督作品を観てきた人にとっては、事件終了後のホントのラストで、おおっと!? こいつはあの! というキャラが、まったく脈絡なく突然登場してくるので、ここだけはちょっとびっくりした。しかし、はっきり言って本作の物語とそのキャラがどう結びつくのか、まあ残念ながら普通の人には100%通じないことは確実だろう。わたしも、マジか!? まさかここであの映画につなげるの……!? とやおら興奮し、一体どういうことなのか考えてみたのだが、出た結論は「さっぱりわからん」であった。まさかと思うけど、次回作では本作の多重人格者VSあの映画の主人公、のバトルになるとか……? ええーーーっ!? シリーズ化でも狙ってんのか? まさか……ね? というわけで、最後にチラッと出てくる超大物ゲストキャラについてはもうこれ以上書けない。サーセン(※あの映画、大物ゲスト、の正体を知りたい人は、リンクをクリックしてください)。
 で。話を戻すと、本作は、実に普通(?)の、実にまっとうな(?)多重人格者のお話で、とりわけいつものShyamalan作品のような驚きのひねりもなく、いわば直球であった。そういう意味では、別にトンデモ展開はなく、ある意味実に退屈なのだが、主役の多重人格者と、誘拐された女子高生のうちのヒロイン扱いの1人、この二人の演技合戦はなかなか見ごたえがあり、クソ映画という評価を取り下げるつもりはないけれど、この二人は大変素晴らしかった。まずは、先にヒロインの女子高生から見ておこう。
 この女子高生、ケイシーは、クラスで浮いている、友達少ない系の女子であるのだが……いかんせん脚本的に中途半端で、実にもったいないキャラだったように思う。何度も何度も、彼女の幼少期のシーンが挿入され、しかもどうやらお父さんの弟のヒゲもじゃデブ野郎によって性的虐待を受けていた「らしい」ことがほのめかされる。そしてどうもお父さんはすでに亡くなっており、その変態野郎が叔父として保護者となっているらしい。そしてその虐待の傷痕が、ラストで重要なキーとなるのだが、それがなぜなのかは、まったくふわっとしていて、キレは悪い。キャラの掘り下げがもうチョイきちんと描かれていればよかったのにな、とわたしは思った。演じたのはAnya Taylor-Joyちゃん21歳である。わたしはこの女子を知らなかったが、大変可愛らしく、実にナイス・バディ子で名前を憶えておきたいと思う。演技のほどは、全然問題ないというか熱演だったし。大変悪くない。
 そして問題の多重人格者である。演じたのはヤング・プロフェッサーXでおなじみのJames McAvoy氏。複数の人格の演じ分けは非常に素晴らしく、演技としては極めて上物であろう。しかし、やっぱりですね……どうもこの多重人格というのも、一発ネタで終わってしまったかなという気がする。まあ、いわゆる「ビリー・ミリガン」ですわな。どうして多重人格になったのか、は何となく描かれる程度だし、そもそもなぜ女子高生を誘拐したか、のカギとなる24番目の人格も、実際良く分からない。おっと!? パンフには「そうなった理由・動機が劇中ではしっかり描かれており」と書いてあるな……うーーん……どうだろうそれは……。うーん……劇中で描かれる母親からの虐待だけじゃあ、説得力に欠けるなあ……おまけに、なんとキレの悪いエンディングか! これにはわたしも、ここで終わりかよ、と、ポカーンである。まあ、上記に書いた通り、続編でも作る気なのかな……そして大物ゲストと対決させる気なのかよ……それはそれで面白そうだけど、だったらそもそもこの作品にきちんと登場させて、最初からあの映画の続編にすればよかったのに……。
 というわけで、もう書くことがない。最後に、残り二人の女子高生と精神科医のおばちゃんを演じた女優をメモして終わりにしよう。まず誕生日会の主催者としてクラスの人気者らしきキャラを演じたのがHaley Lu Richardson嬢22歳。今までに見かけたことはないなあ……結構かわいいです。でもなんで死ななきゃならなかったのか、さっぱりわかりません。そしてもう一人の、完全に巻き添えを食らってしまった可哀想な女子高生を演じたのがJessica Sula嬢23歳。彼女も見たことないなあ……そしてなぜ彼女はホットパンツを脱がされ、ヒロインはシャツを脱がされたのか、それもまったく意味不明で大変可哀想な役であった。最後、おばちゃん精神科医を演じたのがBetty Buckleyさん70歳。この方は……さっき調べて驚いたけれど、Shyamalan監督作品『The Happening』の、あの超怖いおばちゃんを演じた方のようですね。全然気が付かなかったわ。たぶん、本作の一番のオチ?は、多重人格者の人格がチェンジすると、肉体的にも変化が起きる(例えば、ガリガリ→マッチョ、みたいな)というおばちゃん精神科医の研究が現実に!というものだと思うのだが、ま、それって、我々日本人は漫画で良く見るしなあ……。JOJOで言うところの、ディアボロとドッピオ的な。そういうわけで、わたしとしては特に目新しくもなく、ノれなかったす。

 というわけで、もうホントに書くことがないので結論。
 M・Night Shyamalan監督の最新作『SPLIT』が公開になったので、ついうっかりまたもや劇場へ足を運んだわたしであるが、やっぱり今回も面白くなかった。わかってて行ったので、別に後悔はしていないが、WOWOWで十分だったな、というのがわたしの結論である。しかし……この映画を普通の人が見て面白いと思うのか、わたしには良く分からない。どうなんだろう。今日は結構お客さんは入っていて、7割ぐらいは席が埋まってたように思う。それって結構大ヒットだと思うな。明日の月曜日、この映画がどれぐらい稼いだか、興行通信社の大本営発表が楽しみだ。意外と稼いでるとみたね(※2017/05/16:サーセン。全然売れてませんでした。公開土日は6千万弱のようなので、最終5億も届かないかな……)。 以上。

↓ ちょっともう一度見てみる必要があるかもな……。やばい、ネタバレかこれ?
アンブレイカブル(字幕版)
ブルース・ウィリス
2013-11-26