昨日の夕方、出先の打ち合わせが終わり、雨も降りそうだし、さっさとかーえろ、と電車に乗った瞬間、はー……一体オレはあと何年生きるのだろうか……と突如何もかもがどうでもいいような、底なしのむなしさを感じてしまったのだが、はあ、電子書籍でも読むか、とタブレットを取り出して電源を入れたところ、ふと、今日は3月14日か、と日付に意識が向いた。そしてその時、電撃的に、14日っつったら、トーフォーの日(TOHOシネマズの1100円サービスデー)じゃねえか、ということに気が付き、すぐさま、帰り道に点在するシネコンの上映スケジュールを確認したところ、全然帰り道じゃないけど1回乗り換えして日本橋三越前に行けば、ちょうどいい感じに映画に間に合うじゃん、ということを発見した。
 というわけで、昨日の帰りに観てきたのは『MOANA』(邦題:モアナと伝説の海)である。ちなみに、TOHOシネマズに到着して、よし、安く観られてラッキーだぜ、とチケット販売機で席を選んでTOHOマイレージカードを取り出そうとした瞬間、あっ! そういえば! 『MOANA』はムビチケカード買ってあるんだった!! ということを思い出し、全然今日じゃなくてよかったじゃん、アホかオレ!!! と、またもや、何もかもイヤになったっす。もう、深刻に病気を疑った方がいいんじゃねえかしら。
 しかし、 結論から言うと、『MOANA』は大変面白かったので、すっかりいい気分で映画館を後にすることができ、結果オーライということで、ま、いいじゃん、と納得することにした。ホントにオレ、なにやってんでしょうか。

 さてと。というわけで、『MOANA』こと『モアナと伝説の海』である。
 字幕で観るか、日本語吹き替えで観るか、かなり悩んだけれど、やっぱり初回としては字幕版で観ることにした。その理由は、歌をオリジナルで聞いておきたいと思ったのと、英語版ではとある俳優が声の出演をしているからなのだが、その点は後程詳しく書きます。
 まずは、簡単にストーリーをまとめておこう。
 物語は、太平洋の小島が舞台である。その島の村長の娘、モアナは幼少期からおばあちゃんの語る伝説を聞いて育ち、この海のどこかには、伝説のデミゴット(半神半人)の「マウイ」がいて、彼の「魔法の釣り針」、そして「テ・フィティ」なる神(?)の心を宿した宝石がどこかにあるという物語に心躍らせていた。そしていつか、外海へ旅立つことを夢見ていたのだが、父たる村長からは、島を取り囲むサンゴ礁の外には行ってはイカン、と厳重注意もされていた。サンゴ礁の外は危険で、父もまた若き頃にサンゴ礁の外に出ようとして、友を失った過去があったからだ。
 しかし、モアナは、幼少期からどういうわけか「海に選ばれし」人間で、なんと海が生き物のようにモアナを守ってくれたりもしていて、おまけにテ・フィティの宝石も冒頭からあっさりモアナの身近にあり、その辺の説明は一切ない。要するにモアナは、いわゆる「The Chosen One」なわけである。そしてモアナはあっという間に美しき少女へ成長し(16歳だったかな)、村長としての業務を父から引継ぎ始める、が、村のココナッツは枯れ、近海に魚の姿は消え、と島に不吉な前兆、いわゆるオーメンが現れ始める。それは、おばあちゃんによると伝説のマウイをKOした「テ・カァ」というマグマの悪魔(?)の呪いであり、この呪いを解くためにはどこかにいるマウイを探し出して、魔法の釣り針を見つけ、再度テ・カァと戦わせて勝利し、テ・ティフィの胸に心を宿した宝石を戻さなくてはならんのじゃ!ということになる。そしておばあちゃんに連れられて島の洞窟へ行くと、そこには先祖たちが島を渡ってきた外海用カヌーがあり、モアナは島を救うため、そして先祖の自由な旅人の心を取り戻すため、決死の覚悟で外海へ旅立つのであった―――!! てな展開である。
 どうですか? この物語を聞いて面白そうだと思いますか? わたしは実際のところ、今回はそれほどお話的に面白いとは思わなかった。ちょっとご都合主義が過ぎる部分が多く、しかもクリティカルな部分でその傾向が強い。とりわけ、モアナが何ゆえ海に選ばれしものなのか、という説明がないのに、大抵のことが、モアナのその天性(=The Chosen Oneであること)で解決してしまうので、観ながら、なるほど、え、ああ、そうなんすね、と深く考えずに受け入れていくしかない展開であった。なので、観終わった後でも、それほど深い感動はないし、意外な結末、でもなく、実に想像通りのめでたしめでたし、である。このあたりは、近年の『アナ雪』のようなちょっと予想外の展開だったり、『ズートピア』のような友情・努力&根性・勝利、的な面白みもない。おまけに、マウイもある種のスーパーマンだし。今回はごくオーソドックスなディズニーアニメであると言えそうだ。
 ただし、だからと言ってそれが悪い、ということでは決してない。
 わたしのようなおっさんが観れば、いろいろ「?」な点はあるのは誰しも感じると思う。それに、ベースとなったであろう(?)ポリネシアの歴史的民族伝承に関しても、特にわたしはいちいち目を吊り上げてなんやかんやと指摘するつもりもない。そもそも何も知らないし。けれど、非常にテンポのいいストーリーテリングは流石のディズニークオリティであり、おそらくメインターゲットのちびっ子には、なんら問題はなかろうと思う。
 そして大人目線で見た場合、本作『MOANA』のすごい点は、やはりその映像そのものだろう。もう、これ実写の合成か?と思えるようなオブジェクト描画は、確実に世界一だと思う。木々や海、そして水の表現が素晴らしく、超自然で本物感がすさまじいのだ。更に人物キャラクターも、デザイン自体はUSキャラなので、ジャパニーズマンガに慣れた我々日本人からすればちょっとアレだけれど、もう、実物のフィギュアを使って撮影したんじゃね? と思えるような髪の本物感は恐ろしくクオリティが高い。とにかく水の質感が凄いすね。舞台が海だけに、水は極めて重要なオブジェクトだが、あの水の質感は、日本じゃあ無理だろうな……。そして、演出としてのライティングもまた、もう素晴らしすぎて、観ていて悔しくなるほどだ。ちなみにライティングに関しては、日本人スタッフの土井香織さんという方の手によるものらしい。つまり日本では無理だというわたしの意見は、日本人では無理、ということでは決してなく、日本の「劇場アニメを作る体制」では無理、といった方がいいのだろう。それは端的に言うと、おそらくは人海戦術=どれだけスタッフを数多く抱えることができるか=予算規模の問題なのかもしれないし、作成しているソフトウェア的な問題=技術の問題かもしれないし、また、ひょっとしたら「これでいいか」をどのレベルで許容するか、という「意識」の問題かもしれない。ディズニーがその意識レベルを世界最高峰に高く設定していることは、もはや揺るがしようのない事実だろう。ほんと、すげえやディズニーは。
 そして、凄いのは映像だけではなく、今回は歌もまた素晴らしかった。惜しくもアカデミー賞受賞は逃したが、モアナの歌う『How far I'll go』は、単にその部分を切り取った動画ではなくて、本編内で聞くとやっぱりより一層イイすねえ! 作詞作曲をした、去年のトニー賞を独占したLin-Manuel Mranda氏の楽曲は、明らかにミュージカル曲で、やっぱりドラマの一部として聞く方がよりグッときますな。そして、歌というと、わたしが字幕版を観に行った理由の一つでもあるのだが、なんと、あのTHE ROCK様でお馴染みのDwayne Johnson氏がマウイの役を演じているわけですよ。そして、彼の歌がこれまたいいじゃないですか! まさかTHE ROCK様がこんなに歌えるなんて! このBlogで以前書いた通り、THE ROCK様のUS人気はすさまじいわけですが、ゴッツイ外見のおっさんなんだけど、笑顔が実はかわいい、というギャップ萌えが人気の秘密だとわたしはにらんでいる。しかしそこに、歌まで入るとはなあ……まさかこんなにちゃんと歌えるとは……。大変失礼ながらわたしはびっくりした。そういう意味では、やっぱりまずは字幕版で観て良かったと思います。全然関係ありませんが、わたしは数あるTHE ROCK様の決め台詞の中では、これが一番好きです。カッコイイ!! 「Know your role, and shut your mouth!(=身の程を知れ!そして黙ってろ!)」わたしは観ながら、ずっとマウイがTHE ROCK様に見えて仕方がなかったすね。
 もちろん、モアナを演じたAuli'i Cravalho嬢も大変可愛かったですな。歌声も非常に良いです。うお!2000年生まれだって。若いなあ。そうか、モアナの年齢と同じってことか。英語ネイティブでないので自信はないけれど、実に自然でお見事な芝居ぶりだったと思います。

 というわけで、さっさと結論。
 ディズニーアニメ最新作『MOANA』をまずは字幕版で観てきたのだが、物語的にはかなりツッコミどころはあるように思えるが、歌も映像もホント素晴らしく、文句があるならこれを超える作品を作ってみろ、と言われたような気がします。ディズニーの圧倒的な力はこの映画でも遺憾なく発揮されていると思うし、まあ、当分ずっと王座は揺るがないでしょうな。わたしは十分以上に楽しめました。すげえやディズニーは。ただ、好みで言うと、去年の『ズートピア』の方がわたしは好きかな。以上。

↓ サントラ欲しい……まずは英語版で。吹替え版も観に行こうかなあ……はっ!そうか、昨日はせっかく安かったんだから現金で観て、その後で吹替え版をムビチケで観ればよかったんだ!!! オレのバカ!!!!