昨日の2月25日の日曜日、わたしは宝塚歌劇の公演を2本ハシゴして観てきた。というのも、本命の花組による大劇場公演『ポーの一族』のチケットが全然取れず、久しぶりに、こりゃあ観られないか、と半ば諦めていたのだが、ある日、宝塚歌劇の公式Webサイトに、とあるチケットの販売に関する告知が出ていて、どうせ当たりっこないんでしょうよ……と思って申し込んだ「W観劇チケット」なるものが当選したから、であります。
 そのチケットは、わたしが見逃すかもと危惧した花組公演『ポーの一族』@東京宝塚劇場のチケットと、赤坂ACTシアターにて開催される星組公演『ドクトル・ジバゴ』のチケットがセットになったもので、11時からの『ジバゴ』@赤坂、15時半からの『ポー』@日比谷の二本立て、というわけである。
 まあ、ズバリ言えば、『ジバゴ』のチケットの売れ行きが渋かったための、いわゆる一つの抱き合わせ商法であることは否めないだろう。わたしも、星組を一番応援している身とは言え、実はあまり見たいとは思ってはいなかったので、まあ、いいか、ぐらいのテンションであったのだが、結論から言うと、わたしとしては『ポー』よりも、『ジバゴ』の方がずっと面白く、楽しめたのである。
 というわけで、まずは『ジバゴ』についての記事をまとめ、『ポー』については別記事として明日以降アップしようと存じます。それではまずは『ジバゴ』である。
DR_GIBAGO
 本公演は、星組公演と銘打たれているものの、主演を張るのは専科の轟悠さん(以下:理事)である。というのも、わが星組のTOPスター紅ゆずるさんとTOP娘役の綺咲愛里さん率いるチームが名古屋の中日劇場で公演中(昨日が千穐楽かな)であり、また2番手スターでわたしが一番応援している礼真琴さん(以下:こっちん)は、先日まで単独ディナーショーを開催していた(既に終了)ためだ。わたしとしては、愛するこっちんのディナーショーへ行きたかったのだが、全くチケットが取れずダメでした。
 というわけで、星組はこの『ジバゴ』を含め、3チームに分かれていたわけである。そのため、『ジバゴ』の主演には理事がやってきたわけだ。ちなみに、理事は、なんで理事と呼ばれているかというと、劇団理事(=会社で言えば取締役のようなものか?)の肩書を持つ現役最強のジェンヌであり、数々の伝説を持つすごいお方で、おそらく年齢もわたしよりも上(たぶん50歳ぐらい)、の超歴戦の勇者なのである。それだけにファンも多く人気も高いお方なわけだが、ヅカ歴が浅いときちんと理事の出演作を観ていないという人もまた多いと思う。わたしも、2014年だったかな、当時の星組TOPスター柚希礼音さん(以下:ちえちゃん)と共演した『The Lost Glory』でしか観たことはない。当時、わたしは、なんでちえちゃんが主役じゃねえんだよ! とか思ったものだが、実際に観劇してみると、悪役?のちえちゃんの方がおいしい役だったので、これはこれでアリ、と納得した思い出がある。そしてその時初めて生で観た理事は、やっぱり歌も芝居もすげえ、貫禄というかオーラが段違いだ、とその実力に唸ることとなったのである。なんつうか、理事の歌い方はシャンソン系で、現役の中ではあまり見かけない、若干、昭和なテイストがあって、非常にオンリーワンな魅力を持つジェンヌであることを認識するに至ったのである。
 というわけで、わたしは昨日、正直に告白すると、理事主演の『ジバゴ』は積極的に観たいとは思わなかったものの、観られるならやっぱ観たい、という中途半端な気持ちで赤坂ACTシアターに推参したのである。そして結論は既に書いた通り、大変素晴らしいものであった。しかし、そのわたしの絶賛は、実は理事へ向けたものが25%ぐらい、残りの75%ぐらいは、若き星組メンバーへ向けたものである。とにかく、ヒロインの有沙瞳ちゃん(以下:くらっち)や、こっちんと同期の瀬央ゆりあさん(以下:せおっち)たちがもの凄く良かった。これはやっぱり観に行って良かったわ、とわたしとしては大感激であった。
 まず、物語を軽くまとめておこう。原作小説はノーベル文学賞を受賞し、映画化された作品はアカデミー賞5部門を受賞した超名作なので、今更かもしれないが、大変恥ずかしながらわたしは原作も映画も味わっておらず、昨日初めて物語を知ることとなった。これがまた、超面白くて、これは原作を読むしかねえ! と思いますね。
 時は1905年、場所はモスクワである。この年号を観てぱっと思いつくのは、日露戦争終結の年であり、ロシア革命のはじまりの年であるということだ。つまり、日本に負け、貴族たちの抑圧に農民を中心とした人々の怒りが頂点へ向かおうとしているころであろう。物語は二人のキャラクターを軸として展開される。一人は、下級貴族の青年ユーリ・ジバゴ。彼の父親は悪徳弁護士のコマロフスキーに先祖伝来の土地をだまし取られ、失意のうちに亡くなり、孤児となったユーリは父の兄弟(つまり叔父さん)の家に引き取られて育った男で、詩を愛し、同人誌なんかを出版するような男だが、医師として人を救うことを天職と定めた、貴族ながらも優しい男である。そしてもう一人は、お針子として働く仕立て屋の娘、ラーラだ。彼女は、恋人パーシャが革命思想に染まり、デモに参加していることを心配しているが、ある日、デモでけがをしたパーシャを家で介抱していることが悪徳弁護士コマロフスキーに目撃され、そのことで脅迫されてレイプされてしまう。そう、このコマロフスキーは、仕立て屋を出店する時に母を(愛人にして)援助したパトロンだったのだ。悲しみに暮れるラーラは、その後、ユーリの自宅で開かれた、ユーリとトーニャ(叔父さんの娘なので親戚)の婚約祝いパーティーの場に銃を持って乱入、町の有力者としてそのパーティーに参加していたコマロフスキーを撃つという暴挙に出る。コマロフスキーを医師として手当てするユーリは、お、お前は!?と父の仇であることを認識するが、それでも、オレは医者だ!と復讐心をぐっとこらえて治療するのだった――。
 そして少し時が流れ、第1次世界大戦が勃発。ユーリは、周囲の反対を押し切って、軍医として従軍することを決意し、妻や叔父さん(くどいけど妻の父)を残してモスクワを去る。そして戦地の野戦病院で、ユーリは看護婦として働くラーラに再会する。なんでも、ラーラは、コマロフスキーにレイプされたことを恋人パーシャが良く思っておらず、どうせ今でも繋がってんだろ、とかひどいことを言って、やけっぱちになって軍に志願し、行方が分からなくなってしまったのだという。そのため、パーシャを追って、自らも戦地へ身を投じたのだとか。そんな状況で出会った二人は、一瞬心が通じ合うが、戦地に届いた報せで、軍は撤退を決意、ユーリとラーラはそこで分かれ離れとなってしまう。その軍に届いた報せとは、皇帝の退位、すなわちロシア革命の勃発であった(※このあたりは去年の宙組公演『神々の土地』と時代が重なってますな)。
 ユーリは無事にモスクワに帰るが、革命の嵐が吹き荒れ、既に家も接収されており、妻たちは不自由な暮らしを強いられていた。そこでユーリは、貴族ではなく、一人の医者として、母の故郷であり、母の墓のある遠く離れた田舎へ移住することを決意し、叔父さんや妻を伴って列車でモスクワを去る。そしてその途中で、貴族ということで革命勢力に目をつけられ、ユーリはとある将校の元に連行されると、その将校こそ、ラーラの恋人パーシャだった。すっかり、冷血&残酷な男になり果ててしまったパーシャに、ユーリは、ラーラはお前を心配して探し回ってんだぞ!と説くも、パーシャは、けっ!知ったことかよ!的態度。実はパーシャも苦しんでいたのだが、もはや取り返しがつかない。釈放されたユーリは、目的地である母の故郷へ辿り着き、そこで静かで平和な日々を過ごす……と思いきや、ある日、医者のいない隣町で急患が出たということで、妻たちを残してその村へ急行、しかしその村には、ラーラが住んでいて、二人は運命的に再開し、とうとう、一夜を共に過ごすのだった―――てなお話です。はーーー全然短くまとまらねえわ。
 お話は、この後も怒涛の展開で、わたしはもうずっと、こ、これはどうなっちゃうんだ……と固唾をのんで見守ったわけだが、いろいろとどうしても駆け足展開で、分からないことも多く、これはもう、原作小説を読むしかねえ! と思うに至ったわけであります。はっきり言って物語はすっげえ面白かったすわ。超ドラマチックな展開で、すごいお話ですよ。
 というわけで、このすごい物語を熱演したキャスト陣をキャラとともにまとめておこう。
 ■ユーリ・ジバゴ:主人公。演じたのは勿論、轟悠様aka理事。芝居は大変素晴らしかった。けれど、どうも喉の調子が悪かったのだろうか? 歌は若干伸びやかさがなくて、なんだか少し苦しげに歌われていたような印象だ。それとも、役に合わせてわざと苦しそうに歌ってたのだろうか? わたしには良くわからなかったが、セリフ回しさえ少し聞き取りずらいような気もして、なんか、本調子でなかったよな気がしてならない。どうなんでしょう?? でもまあ、ビジュアルはもう、ホントにもう、男、すね。実に美しくカッコ良く、なにより立ち姿のピシッとしたシルエットはもう、さすがっすね。足が超まっすぐなんすよ。最強ジェンヌの名は伊達ではないと存じます。
 ■ラーラ:ヒロイン。ただ、わたしがどうも分からないのは、ラストでラーラは何故ユーリに会いに行かなかったのか? ということなのだが……おそらくここが男と女の違いで、男は、過去の女をじっと、ある意味未練がましく待つ生物であるのに対し、女性はきっと違うんだろうな……きっと、新たな人生を、過去を振り返ることなく生きてるんだろうな……とわたしは理解することにした。女性の皆さん、教えてください。なんで会いに行かなかったんすかねえ……。そしてこのラーラという女性を演じたのが、今、星組の娘役でナンバーワン歌姫とも言えるくらっちであります。いやあ、マジ素晴らしかったすなあ……歌は勿論、芝居もいいですねえ……くらっちは。わたしとしては是非ともこっちんの嫁となっていただきたいのだが、ちょっと難しいかもな……くらっちの方が先にTOP娘になってしまうような気がしますね……まあ、とにかく今回のくらっちは過去最高レベルに素晴らしかったと存じます。
 ■パーシャ:ラーラの恋人で革命思想の若者のち残虐な将校。演じたのはこっちんと同期の95期メンバーせおっち。やっぱりせおっちも、去年の夏の『阿弖流為』のように、役として目立つとその実力が非常に光りますなあ。大変良かったと思います。日々努力・研鑽を積んでいるのは間違いなく、歌も良くなってきたし、非常に将来が嘱望されますな。TOPになれるかどうかは分からないけれど、応援し続けたいすね。最高でした。
 ■トーニャ:ユーリの恋人のち妻。健気なイイ子。実はわたしはトーニャもまたよくわからない。なんでさっさとパリへ亡命してしまったんだろうか……もはやユーリの体も心も(この場所へ、そしてわたしの胸へ)戻ってこない、と見切ったってことなのでしょうか? それとも単に情勢としてもう待てない危険が迫っていたということだったのかな……つらいすね……そんなトーニャを演じたのは99期生の小桜ほのかさん。大変可憐でありました……今後の星組公演では、注目していきたい所存であります。
 ■コマロフスキー:悪党弁護士のち革命政府要人。まあ、とにかく悪い奴でしたが、ラストのウラジオストックへの逃避行は、どう理解したらいいんだろう……ここも実は良くわからなかった。コイツは要人なのに、逃げる必要があったのか……その関係性がもうチョイ理解したかったす。そして演じたのは星組ではなくてはならない貴重なバイプレーヤーの天寿光希さん。91期なんすね。素晴らしい悪役ぶりで、ほんとムカつきましたわ。でもそれこそが悪役の存在意義なわけで、実に目立っていたし、超渋かったす。
 
 とまあ、こんなところかな。しかし、フランス革命とロシア革命って、やっぱりずいぶん違うもんだなあ、というような漠然とした感想も抱いたわたしであるので、少しいろいろ文献を当たってみたいと思う。両者に共通するのは、「踏みつけられてきた怒り」であるわけで、その怒りを「自由・平等・博愛」の精神でぶちまけたフランス革命は、後に恐怖政治を生み出し、王政復古にも至ってその後ナポレオンを登極させ、その先も混乱が続くわけだが、ロシアの場合も、「自由・平等」の旗印で怒りが爆発したものの、手段としては「社会主義」という壮大な国家実験に至り、それも大失敗に至ることを我々はすでに歴史として知っているわけだ。なんつうか……わたしが言いたいのは、最終的に失敗に終わろうとも、人類に憑りつく「怒り」というものは抑えようがなく、一定のキャパを超えたら確実に爆発するものなんだろうな、ということで、人を怒らせていいことなんか一つもねえ、というわたしの持論は間違ってないかもな、と感じる次第であります。まあ、怒らせてもいいことないし、怒っても同じく、いいことは一つもねえと思いますよ。
  では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「誇りは、この家にあるのではなく、心にあるのです!」
 今回は、主人公ユーリが1幕ラスト近くで叔父さんに言うこのセリフを選びました。モスクワを離れよう、と主張するユーリに、家が……とグズグズ言う叔父さんに対してピシャッというセリフです。まあ、生きてこそ、だし、誇りは胸に抱くものでしょうな、やっぱり。それにしても、大変グッと来た物語でありました。

 というわけで、もう長いので結論。
 昨日、W観劇チケットなるものを入手したわたしが、若干、まあ、観に行きますか程度の低めのテンションで観に行った星組公演『ドクトル・ジバゴ』は、そのわたしのボンクラ頭を吹っ飛ばすほど素晴らしくグッとくる物語で、非常に面白かった。そりゃそうだよな、もう超名作として世に知られた小説&映画だし。というわけで、わたしとしては原作小説を読みたくてたまらない気持ちであります。そしてキャスト陣も、理事こと轟悠さんは若干のどの調子が悪かったのではないかという気がしたけれど、星組の若いメンバーの熱演は素晴らしく、結論としては大満足でありました。実によかったす。最高でした。以上。

↓なにーー!? 小説はどうも絶版らしく、クソ高いプレミア価格がついてる! マジかよ! つうことは、こちらの映画を観ろってことか……ぐぬぬ……!!!