なので、数年前まで年間40本ぐらい劇場へ映画を観に行っていたわたしも、このところ年間12本とかそんな感じに減ってしまった。そして、映画を観ても、感想をこのBlogを書く気力もほとんどなくなってしまった。そう、実はこのBlogに感想を書いていない、けど観た映画は結構あるのです。
けれど、一応、MCU、すなわちMARVEL CINEMATIC UNIVERSの作品だけは、こうして感想を綴ろうと思っている。
というわけで、今日は昼前に仕事を切り上げ、ケアマネさんからまた電話かかってきたりしねえかなあ、とか不安な気持ちのまま、会社からほど近い日比谷TOHOにて、『BLACK PANTHER WAKANDA FOREVER』IMAX3D版を観てきた。
わたしがこのBlogを書き始めたのが2015年の9月ぐらいで、それ以降のMCU作品は全部感想を書いてきているわけだが、確か一番最初に感想を書いたMCU作品は『ANT-MAN』だったと思う。そして当然、前作である『BLACK PANTHER』に関しても公開当時に感想を書いた。その時、わたしがBLACK PANTHERというヒーローについて感じたのは、ズバリ言うと失望だ。さらに、続く『INFINITY WAR』でも、やっぱりわたしのBLACK PANTHERというヒーローに関するガッカリ感は払しょくできなかったのである。初登場した『CIVIL WAR』では最高にカッコ良かったのにね……。
しかし、世間的には、『BLACK PANTHER』という作品は単独ヒーロー作品では断トツの興行成績を誇り、評価も極めて高い。恐らくその背景には、US国内にこびりつく人種問題があるのだろうと思うが、正直わたしにはそんなことは全く評価に影響を与えるものでない。
説明すると、わたしは、以下の2点について、なーんだ、コイツ、ダメじゃん、とか思ってしまったのである。すなわち……
1)正々堂々としたタイマン勝負で負けて、王座を奪われた。そして妹や母に助けられて、謎薬物(=ハートのオーブ)摂取と妹謹製(だっけ?)の新スーツ着用でやっと王座を取り返す。もうこの時点で、わたしは超ガッカリ。弱い。弱すぎるよ……あの時、もう一度鍛え直して、再び正々堂々の勝負をして勝つという展開なら文句なかったけれど、アレじゃあダメだろ……。なお、わたしとしては、王座を奪われたとき、親衛隊長が「わたしはあなた個人に仕えているのでななく、王に、国に仕えているのだッッ!」的に毅然とした態度だったのは実に見事だったと今でも思う。間違いなくそうあるべきで、とてもカッコ良かった。
2)戦略がなく、いつも出たとこ勝負の成り行き任せに見える行動は、わたしには王の器にあらず、と思えた。わたしが一番ひどいと思ったのは、INFINITY WARの際のワカンダ大バトルのところで、あの時の勝利条件は、もう明確に、VISIONさんを守ること、ただそれだけに尽きるはずなのに、肝心のVISIONさんは戦闘力の乏しい妹に任せ、自分は全く戦況に影響しないザコ敵相手に暴れても、まったく、無意味だったと思う。まあ、強いて言えばあの場面で一番悪いのはCAPで、強いコマである自分たちがザコ敵を相手にする意味はゼロだったね。
とまあ、こんな理由で、わたしはBLACK PANTHERというヒーローについては全然評価していない。そんなわたしが今日観に行った『BLACK PANTHER WAKANDA FOREVER』という作品だが……結論から言うと、わたしにとってはやっぱり、良かった部分も当然あるけれど、ちょっとなあ……と結論付けざるを得ないと思う。
もちろん、これまでBLACK PANTHERというヒーローを演じてきた、Chadwick Boseman氏が若くして亡くなったことに関しては、とても悲しいし残念だし、心からの冥福を祈りたいと思う。そして、本作においてBoseman氏への追悼を随所にうかがえる点は素晴らしいと思う。本作が、見事に哀悼の意をささげている作品である点は間違いない。だけど……物語的には若干問題アリ、だとわたしには思えてしまったのも事実だ。
まずはちょっと予告を貼っておこう。つうか、まだ本作を観ていない方は、以下、ネタバレに考慮するつもりはほぼないので、この辺で退場してください。さようなら。まずは観に行ってください。話はそれからだ。
さてと。物語としては、王を喪ったワカンダという国に、海から新たな脅威が迫る! というお話だ。その基本プロットに関しては、全く文句のつけようもなく、わたしはかなり楽しみにしていたのは間違いない。
けれど……わたしが観ていて、これってどうなの……と感じたのは、やっぱり以下の二つに尽きるように思う。
◆母である女王ラモンダの行動について
まず、BLACK PANTHERというヒーローが初登場した『CIVIL WAR』においては夫を亡くし、そして本作では息子を亡くした、実に気の毒な女王ラモンダについてだ。
そりゃあ当然悲しいことだし、おまけに世界各国はうっとおしくヴィヴラニウムをよこせとか言ってくるし、さらに、娘を拉致されてしまっては、そりゃあもう、イライラと悲しみで正常な判断ができない状態だったのかもしれない。
けれど、だ。やはり、女王としては失格だったとしか言いようがないと思う。
というのも、今回の海底王国との戦いは、明確に、女王が先に引き金を引いたとしか思えないからだ。女王として、自ら治める国よりも、母として、娘を優先させてしまった結果、戦争が起こったわけで、明らかに問題があると思う。もちろん人間として同情の余地があるにしても、だ。
さらにわたしが、えっ!?と驚いたのは、親衛隊長オコエに対する対応だ。女王は、息子が王座を奪われたときにオコエが新王キルモンガーに従ったことがいまだに引っかかってたらしく、「アレは許した、けど、娘を守れなかったことは許せない!!」と激怒して、オコエをクビにしてしまうのだ。
うそでしょ!? とわたしは椅子から転げ落ちそうになるぐらいびっくりしたよ。オコエは、女王個人の私兵じゃあない。女王という存在を守るものだと思う。もちろん、現在の王族である娘を奪われたことの責任はとる必要があるのは当然だ。だからそれでクビ、ならば、まだかろうじて理解できなくもない。でも、ここであの時味方しなかったことを、「アレは許す」とか言う必要ないでしょ。オコエは、ワカンダという国家の王に従う親衛隊長だぜ? あの時、オコエは親衛隊長の義務として新たな王に仕えたわけで、当時王座から転落していた一族に非難されるいわれはないし、許される筋合いの話でもないと思う。完全に当てつけ、あるいは報復人事なのでは? それに、海底王国に対抗する戦力の貴重なコマの一つであるオコエを解任して、自ら戦力低下を招くのはどうなの?
わたしはワカンダという国家の政治形態がよく分からないのだが、確かに、各部族の長達からなる議会的なものがあるみたいだけど……わたしはこの、女王がオコエに対して激怒するシーンを見て、なーんだ、ワカンダって、要するに完全なる独裁国家で、法が機能する近代国家ではないんだな、と思えてしまった。まあ、前作でも、タイマン勝負で負けても「泣きの一回」を強引にやらせてるわけで、わたしは本作を観ながら、やっぱ世襲ってのはろくなことがねえなあ、とか思ってしまった。やはり、強力な能力を持つ個人に依存する組織(あるいは国家)というものは、もろすぎるね。
それがとても残念に思った点の一つだ。WAKANDAでは死は終わりじゃないって教えはどこ行っちゃったんだよ……。ティ・チャラだって、父を殺したジモを最終的には法の裁きに委ねることで怒りを納めたじゃない。あのCIVIL WARでのティ・チャラは本当にカッコ良かった。女王には、常に冷静でいてほしかったなあ。。。
◆天才科学者であり妹であるシュリの行動について
シュリは、その天才的な科学知識と能力によって、ある意味伝統を軽視している。死が終わりじゃない、というワカンダの教えも受け入れられず、ずっと兄の死を受け入れられないでいる。あまつさえ、世界を焼き払ってしまいたいと思うほど、悲しみに暮れている。極めて不安定で危険な思いだけれど、それはある意味ごく普通の感情で、我々にも理解できるものだろう。そういう意味で、ワカンダという特殊過ぎる環境からはずれた、普通の考え方をする人だ。実際その能力は普通じゃないけど。
そして海底王国に拉致されてからも、海底王国を理解しようと努め、和睦の道を探ろうとする姿勢も、まさしく次期国王の器をもつ人間だと、わたしは評価したいと思う。わたしは、シュリとネイモアが海底王国を巡るシーンを見て、まさかこの二人が恋に落ちる展開なのか!? とドキドキしたぐらいだよ。
しかし……母=女王を殺されてからの展開は、ちょっとマズいよね……我を忘れて復讐に乗り出すのは、人間として理解できても、次期女王という役職としては、容認できないよな……やっぱり。
明らかに海底王国は、「やったらやるからな?」と警告していたのに、先に引き金を引いたのは、明確にワカンダ側だ。シュリは父、兄、そして母を立て続けになくして、もうそれこそ世界を焼き払いたいぐらいの気持ちになってしまったのだろうと思う。でも、やはり当初の流れのまま、戦いを抑える方向で頑張ってほしかった。
わたしはこの展開を観ていて、現在現実世界の東ヨーロッパで起きている戦争を思い起こした。もちろん、悪いのは大国側だろう。しかし、確実に大国側は、開戦前に「やったらやるからな」という警告をさんざん送っていたはずだ。そして小国側の大統領は、確実に、開戦したら自国民がどれだけ死ぬか、シミュレーションしたはずだ。してなかったらびっくりなほど無能だよね。そして、そのシミュレーションではじき出された「失われる自国民の命」よりも、自国の意地なのか利益なのか知らないけれど、命よりそっちが大事、という判断があったからこそ、大国の警告を無視して、戦争状態に突入してしまったわけで、その時点で小国側の大統領も、大国の大統領と同罪であり、非難されるべきだとわたしは思っている。きれいごとかもしれないけど。
シュリもまた、そういう意味では、やっぱり褒められたものではないと思う。まあ、シュリは海底王国と開戦したら自国民がどれだけ死ぬかなんて考えてない衝動的な行動だったんだろうけど、だとしたらもっと罪深い。王としては。
もちろん、やられっぱなしで我慢しろと言ってるわけではなく、シュリにはまず先に、心を尽くした解決への努力が、母を殺される前に必要だったのではなかろうか。本作では、どう考えても海底王国はむしろ被害者で、シュリも最初は同情的で解決策を模索したのに……最終的にはいつもの大バトルになってしまったのは、とても残念だ。
とはいえ、最終的には、歯を食いしばりながら怒りを制御して、きちんと落としどころをネイモアに示し、戦いを終わらせた姿勢は極めて高く評価できる。でも、そこに至る最終バトルは……映画的に必要な見せ場かもしれないけれど、もうチョイ、タイマン勝負とかやりようはあったのではなかろうか。お互いに人命もたくさん奪われ(?)、和解の代償として高くつきすぎたね。。。
ところで、シュリが次期BLACK PANTHERになることを決意して、謎の合成麻薬で視た世界に、キルモンガーが登場してきたのはいったい何故なんだろうか? 先祖に会うはずなのに、出てきたのはキルモンガー(=現状では父の弟の子供=いとこ)。本作で最大のサプライズだったと思う。
わたしは、ははあ、ラモンダ女王がシュリに言おうとしたことはこれか!? と思った。というのも、女王がシュリに何か話をしようとしたところでネイモアが現れ、話が途切れてしまうシーンがあるのだが、あそこで、女王が言おうとしたのは「実はお前は私の実の娘じゃないのよ」的な秘密の暴露だったのではないか? と思ったのだ。そして実はキルモンガーこそがシュリの実の兄だったのでは? と思った。
けど、これはたぶん間違ってる。というのも、ミッドクレジットシーンで、実は兄には息子が生まれていた、ということが明らかにされるわけで、このこと(=シュリには実は甥っ子が誕生していた)を女王はシュリに言おうとした、のが正解なんだろう。
だけど、だとしたら何故キルモンガーが出てきたのか……ここは明確な理由が欲しかったと思う。示されていたといても、わたしは全く分からなかったです。
とまあ、以上が本作に関するわたしの感想だが、もちろん、良かった点もある。
◆ネイモアについて
ちょっとその誕生のオリジンストーリーはいろいろツッコミどころも多いし、妙に現代社会を糾弾するような社会的政治的メッセージが鼻につくのはアレなんだけれど、王としての振る舞いはキッチリしていて好感が持てました。しかも、自らを「ミュータントだ」と言うのは驚きだったすね。X-MENへの布石なんでしょう。今後ネイモアがどのようにMCUに絡んでくるのか分からないけど、楽しみなキャラクターですね。つうか、足の羽根、あれって、足に生えてる体の器官なんすね。わたしは予告を観た段階では、なんらかの超技術によるデバイス的なナニカかと思ってた。でもあの超高機動は、生物的器官にはちょっと無理じゃね……。
◆リリ・ウィリアムズ=アイアン・ハートについて
本作で初めて登場した彼女も、いいキャラクターだったと思う。ちょっとその能力がぶっちぎりで凄すぎて、チート級なのはアレだけど、MITの学生ということで、当然SPIDYとのからみが今後期待されるキャラですな。ピーター君はあの後、どうなっちゃうんだろうなあ……ピーター君とリリが今後出会わない理由はもはやないっすね。まずはネッド君とMJのお二人さんが、先に出会ってよろしくしといてくれよ!
◆ヴァルについて
まさかあのヴァルが、CIA長官であり、ロスの元妻だったとは驚いたですねえ! 初登場シーンで、あれっ!? この人って……とずっと思ってたけど、ヴァルと呼ばれて初めて、あっ!? あのヴァル? と認識したわたしはファン失格です。相当ビックリでした。つうか、CIA長官という職位は、普通は政治任用で、現場の作戦行動能力より政治的忠誠心で登用されるんだけど……。ともあれ、ロス君はワカンダに亡命するのかなあ……。今後公開されるサンダーボルツにどんな影響があるのか、見ものっすね。
というわけで、言いたいことがなくなったので結論。
MCUのPHASE-04最終作となる『BLACK PANTHER WAKANDA FOREVER』をさっそく観てまいりました。そもそもわたしはBLACK PANTHERというヒーローを全然評価していなかったけれど、それとは関係なしに、BLACK PANTHERというヒーローを演じてきたChadwick Boseman氏が亡くなったことはとても悲しく残念に思っており、果たしてティ・チャラ=Boseman氏亡き後のワカンダはどうなっちゃうのか、という点が最大の関心事でありました。そして本作で描かれたのは、なんだか個人的復讐が前面に出てしまっていて、わたしとしてはかなり問題アリだと思う。これがアメリカ的正義だというなら、人種問題よりもよっぽど深刻な問題ではなかろうか。やはり、主人公には、正しくあってほしいし、あやまちは素直に認めて、正しい方向を向いてほしいと思う。その点では、ティ・チャラは、作中でも言われた通り、「高潔な男」であり、立派だったと認めたい。CIVIL WARの時は、ね。そして次代を担うシュリも、どうか高潔な兄に恥じない人間に成長してほしいと心から願う。いずれにせよ、次が楽しみになる、という点では、やはりMCUはおもしれえな、と最終的には思いました。以上。
↓ ヴァルが何者かを知りたければ、今すぐDisney+に入会するしかないです。『FALCON AND THE WINTER SOLDIER』のパンフが劇場で売ってたのは、そういうことだったんすね……。