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 このBlogのタイトルにある通り、わたしは映画や本やミュージカルが大好きなおっさんなわけだが、実のところ、ミュージカルに関しては宝塚歌劇が中心で、帝劇系や劇団四季の作品に関しては、まだ入門して10年も経っていないニワカと言われても否定はできないだろう。
 とりわけ劇団四季に関しては、宝塚歌劇と双璧を成す、日本のミュージカル界の片翼なわけだが、わたしは今まで、えーと、6作品ぐらいかな、そんな程度しか観ていないのである。というのも、観たいなあ、とか思っても、チケットがまるで取れないのだ。正確に言うと、「いい席」のチケットがまるで取れないのである。席にこだわらず、ずっと先、大げさではなく半年以上先の公演のはじっこの席、とかなら買えるんだけどね。
 というわけで、去年の夏から、東京では、大井町に新たな「キャッツ・シアター」が落成し、かの有名なミュージカル『CATS』の上演が再び始まったのだが、そのチケットの発売が確か去年のGWぐらいで、わたしも観てえぜ! と思ってチケット争奪に参戦したのだが、まるでダメで、これはアカン……と思っていたところで、翌年3月の、まずまず前の方の席のチケットをやっと買うことが出来た。なので、約10カ月……は言い過ぎか、8カ月ぐらい先のチケットを去年買うことが出来たのである。やった、やっと『CATS』を観ることが出来るぜ! と大変うれしかったのがもう半年以上前の話だ。
 で。ようやくその日が昨日、やってきたわけであります!
CATSTHEATRE
 大井町の劇団四季の劇場に来るのは、もう5年以上ぶりかな、わたしにとっては『リトル・マーメイド』以来なのだが、今はご覧の通り『CATS』のための専用劇場「キャッツ・シアター」と、右奥に見えるのが「四季劇場・夏」で、現在は『ライオン・キング』を上演中だ。わたしが数年前に『ライオン・キング』を見た時は、自由劇場の横でやってたんだけど、去年だったかこっちに引っ越したんだよね。まあ、いずれにせよ、「専用劇場」を持つのは、日本では宝塚歌劇団と劇団四季だけと言っていいだろう。劇場という固定資産を持つことは普通の演劇集団ではまず不可能だろうけれど、宝塚と四季は、それぞれ違うやり方できっちり償却し、見事に経営は黒字なんだから、会社としての体力も本当にすごいものだと思う。
 で。本題に入りましょう。わたしは『CATS』という作品に関しては、一番最初の西新宿の高層ビル群の中で始まった頃のことはよく覚えているし(当時中学生)、その後、今現在は高島屋のある南新宿でやってた頃も、ほぼ毎日総武線から劇場を眺めていたのでもちろん覚えている、が、恐ろしいことにもうそれらは30年以上前のことであって、逆に言うと30年以上経った今でも、場所を変えて上演しているんだからすごいじゃすまないよね。もちろん、東京でずっとロングランしていたわけではなく、名古屋・大阪・札幌・福岡と回っていたり、一瞬途切れたりはしているんだけれど、なんと、明日の3/12(火)の回で、上演回数10,000回となるんだそうだ。
 そして今日の月曜は休演日なので、つまりわたしが観に行った昨日の回は、その直前、9.999回目、だったようだ。うおう、それもまたなんかすげえや。
 わたしとしては、そんな『CATS』を一度観ていたいと大変楽しみにしていたのだが、劇場内はさすがに専用劇場ということで、とても独特で、入場するとすぐにテンションが上がって来ますなあ! さっき、座席表をせっせと数えてみたところ、どうやら座席数は1,283席?かな、数え間違いもあると思うので、まあだいたい1,300弱、という感じだろう。半円形というか、2階席がなくて横に広く、なだらかな傾斜になっているので、これはおそらく後ろの方でも十分見やすい設計になっているような気がした。そしてですね、とにかく「猫」たちが客席通路を縦横無尽(?)歩き回るし走り回るので、後ろの列でも楽しい! のであります。わたしは通路に面した席だったので、もう間近にやってくる「猫」たちに大興奮ですよ! かわええ!! 間近で見る猫たちの美しさ、しなやかさはまさしく猫! 鼻触りてえ! と思ったす。
 そしてもちろん、四季で鍛えられたキャスト達のダンスや歌は超一流で、もう絶賛せざるを得ないだろう。やっぱり四季はすげえ! とこれまた大興奮である。
 のだが……わたしにはどうしても一つ、大問題があった。
 実のところ、物語がさっぱり分からん! のである。あれは……ストーリーがあるんだろうけど、よくわからなくて、どうも感動が薄いというか、これはもう、何度だってみたいぜ! という気にはなれなかったのが残念だ。そういう意味では、わたしはここまでロングランしているからにはすげえ大感動の物語なのだろう、と思っていたのに、若干、ぽかーん……としてしまったのであった。
 物語としては、「ジェリクルキャッツ」と呼ばれる誇り高き野良猫たちの中から、年に1回の舞踏会で長老から「もっとも純粋なジェリクル」が選出されて、天に召されるんだけど再生が約束されている、みたいな、いわゆるCat has nine Lives、みたいなお話で、数々の猫たちの紹介というかプレゼン? が次々行われるという構成になっている、ようにわたしは理解した。だけど……どう考えても、「もっとも純粋なジェリクル」候補としては、、そうだなあ、わたしには年老いた娼婦猫か、かつて大活躍したけどすっかりお爺ちゃんになった役者猫の二人しかいないように思えたし、若手キャットたちが選ばれるとは、そりゃ思えないよね。さらに言えば、かの名曲「メモリー」を感動的に歌い上げるのは(これはもう、本当に感動的で超素晴らしくて、泣けそうになった!)娼婦猫なわけで、もう選ばれるのは彼女以外いないだろ、と思えてしまったのである。
 なんつうか、そういうツッコミは野暮なんすかね。確かにすっごいハイクオリティのパフォーマンスはお見事で、雌猫たちは可愛いし、あれはあれでアリ、と思うべきなのかもしれないな……。
 というわけで、最後に自分用メモとして、演じたキャストと猫たちをメモして終わりにしよう。気に入った順に書きます。
 ◆ディミータ:演じたのは原田千弘さん。実は役名がまったく自信ないんだけど、わたしは茶・黒・白の三毛猫で、かなり多くの場面でセンターにいて、妙に可愛い彼女が一番気に入ったす。役柄的には見せ場は少ないんだけど、1回だけセンターで歌う曲があったかな。この子は開幕してすぐわたしのすぐ横に来て、そのお顔の美し可愛さにぞっこんとなりました。ほぼ唯一、真っ赤な口紅が超Cute!で口の形がとてもイイ! 間違いなく、素顔も可愛いと思うね。実にしなやかで見事なパフォーマンスでした。
 ◆マンカストラップ:黒キジ猫の青年。兄貴的存在。演じたのは加藤迪氏。超歌がうまいしダンスが超キレてる! お見事でした!
 ◆グリザベラ:年老いた娼婦猫。演じたのは江畑晶慧さん。ははあ、韓国の方なんすね。四季は韓国の方がいっぱいいるから驚かないけど、本当に「メモリー」の独唱はしびれたっすね。
 ◆オールドデュトロノミー:長老猫。演じたのは橋元聖地氏。超美声。歌の圧が凄い!
 ◆スキンブルシャンクス:列車猫。演じたのはカイサー・タティク氏。あ、わたしは西洋人かな? とか思ってたけど、中国の方なんすね。そうなんだ。へえ~。これまた超美声でお見事だったす。
 ◆ラム・タム・タガー:イケメンプレイボーイ猫。パンフには「つっぱり猫」って書いてあって笑っちゃった。つっぱり……ヤンキー猫ってことすね。演じたのは大森瑞樹氏。ああ、なんてこった、彼も中国の方なんすね。へえ~。観客をあおる、つっぱりぶりは大変結構だったと思います。
 ◆ジェニエドッツ:おばさん猫でひがな寝ているけど、夜は鼠やゴキブリの調教で大活躍。演じたのは安宅小百合さん。ラスト近くでわたしの横に来て、握手してくれました。かわいい。
 ◆タントミール:短毛種の茶色のシュッとした猫。あ、設定的にはシャムネコなんだ。なるほど。演じたのは高倉恵美さん。ダンスが超超しなやかで美しく、実に猫でした。この子もすぐ横に来てくれたっす。
 とまあ、キリがないからこの辺にしておこう。劇団四季というシステムは、スターに頼らない、「役」本位制の集団なので、とにかくみなさんハイクオリティですよ。そこには絶え間ない訓練と、厳しい競争があるんだろうな……そう思うと、やっぱりすげえと思うすね。いやあ、やっぱり観に行けてよかったす。

 というわけで、結論。
 明日、日本上演10,000回の記念公演となる劇団四季の『CATS』。わたしはその直前、9,999回目の公演を観ることが出来たわけだが、ずっと観たかった演目で超楽しみにしていたものの……確かに、その素晴らしいパフォーマンスは圧倒的で、劇場そのものやセットなどの世界観の作り込みも、日本最高レベルのものだったと思う、のだが、お話的に……残念ながらわたしにはイマイチよくわからず、超感動したぜ! というような感想は抱き得なかった。そこだけ残念です。でも、やっぱり「メモリー」はしびれますねえ! やっぱり、絶対にこれは生で体験しないといけないでしょうな。映像だとダメだと思うね。はあ……劇団四季もやっぱり最高ですな。宝塚歌劇もホントチケット獲れないけど、下手すると宝塚より四季の方が取りにくいんじゃなかろうか。両方ともコアなファンがいて、いい席はほぼ取れないもんね……。でもまあ、やっぱり劇場で観ないとアカンですよ。観に行けてホント良かったと思います。以上。

↓ なるほど、ブロードウェイ版か? 映像があるんすね。でも絶対生の体験に勝るものはないと思うす。
キャッツ (字幕版)
ジョン・ミルズ
2013-11-26

 去年、NYを旅したときのわたし的メインイベントの一つは、本場Broadwayミュージカルを観ることであった。で、実際何を観よう? と思ったとき、真っ先に思ったのが『Aladdin』である。日本でも、劇団四季によって2015年5月から開演されているミュージカルで、わたしもとある筋から正式公演前のプレビュー公演を招待してもらい、観たのだが、それはもう、とにかく陽気で明るく楽しい作品で、一発で虜となり、NYに行くならその本物を観たい、と思うのも当然の流れである。
  NYでのわたしの観劇記録は、このBlogにも書いたので、そちらを見てもらうとして、2014年のTONY賞授賞式でのパフォーマンスをWOWOWで観た通りの、素晴らしいショーであった。そしてつくづく、劇団四季の日本語版も、まったく本物のBroadway公演に負けていない素晴らしいものだったということも分かった。
  で、これはまた日本でももう一回行きたいもんだなあ、と思っていたが、ご存じの通り半年ぐらい先の公演でないと到底チケットは取れないし、そもそもチケットが発売になるとすぐに売り切れてしまうので、日本での2回目の観劇はなかなか実現できなかった。しかし、e+から貸し切り公演のチケット発売のお知らせがメールで来たのがたしか4月ごろだっただろうか? わたしもそのメールを見て、へえ? と思い、ま、どうせ取れないだろうなと思って応募してみたところ、応募したことなんてすっかり忘れていた7月ごろ、e+より、当選しました~的メールがポロリン、と来て、あれ、なんだったっけ? と確認してみたら四季の『アラジン』だった、というわけである。
  しかも、おっと、やったぜ!! と確認してみると、なんと当選したチケットは奇跡の最前列である。あの『アラジン』を最前列で観られるという幸運に興奮し、昨日はたいへんワクワクしながら劇場へ向かったというわけである。

 昨日は、11時から宝塚歌劇『エリザベート』を観て、終了後はヅカ仲間の女子たちが興奮の醒めやらぬうちに歌いたい!! というのでそのままカラオケ屋で歌うのに付き合い、そのあとで四季、という我ながらおなかいっぱいの一日であった。
 そして、やっぱり最前列はすごい!! もともと『アラジン』はド派手でノリノリの超楽しい作品である。演者のみなさんの表情はもちろんばっちりだし、歌も、マイクを通した声ではなく、直接舞台から聞こえるのもすごい。いやあ、本当に素晴らしい体験であった。
 もうわたしはこれで3回目だが、最前列で観ても、あの「魔法のじゅうたん=Magic Carpet」はすごいと思う。どんな仕掛けなのか、さっぱりわからないほどのクオリティだ。あれは本当に度肝を抜かれる仕掛けだと思う。どんなに目を凝らしても、釣っているワイヤーらしきものは見えない……のだが、今回、最前列で観る幸運によって、どうやら、ははあ、そういうことか……? と思える仕掛けは分かったような気がする。最初に「魔法のじゅうたん」が出てくる「A Whole New World」を歌うシーンでは全く分からなかったが、エンディングの際に、ちらりとそれらしきものが見えたので、これは最前列ならではの特権だろう。まあ、とにかく、絶対に初めて見る人にはわからないと思うな。あれはもう、まさしく魔法ですよ。
 
 で。昨日のキャストは、わたしが初めて見たプレビュー公演の時とは、イアーゴだけ共通で、ジーニー、アラジン、ジャスミン姫、ジャファー、といったメインキャストはともに違う方であった。
aladdin_20160910
 まず、ランプの魔人ジーニーだが、昨日は開幕時に足を怪我してしまって出られなかった道口瑞之さんであった。わたしは四季の役者さんに全然詳しくないが、道口さんは四季の中でもベテランだそうで、開幕時の瀧山久志さんよりも若干スリムでひょろっとした感じかなあ。しかし、歌もダンスも芝居も素晴らしく、とても楽しいジーニーだったと思う。もちろん、最初に観た瀧山さんも、Broadwayで観た本家のJames Monroe Iglehartさんも大変素晴らしかったので、甲乙つけることは出来ない。とにかく汗だくで歌って踊るジーニーの素晴らしさは、絶対に生の舞台で観ないとダメだと思います。そしてこの作品は、観に行って絶対に後悔することのない、最高に楽しい作品だと断言できると思う。本当に素晴らしかった。
 アラジンを演じた海宝直人さん、ジャスミン姫を演じた斎藤舞さん、この二人もともに、大変良かった。特に斎藤舞さんがとてもかわいい!! たぶん、結構ちびっ子なんじゃないかな? ちびっ子&グラマラスボディでわたしの好みにジャストミートで、もう目が釘づけである。この作品はホントに女性の衣装が超セクシーで、最前列で観るセクシー女子たちはもう大興奮ですよ。斎藤さんは歌も良かったすね。四季の俳優さんは情報が少ないけれど、彼女の名前は記憶しておきたいと思う。素晴らしかった。
 そして、この作品でわたしが一番笑わせてもらったキャラクターがイアーゴである。初めて見た時と同じ酒井良太さんは今回も最高に笑わせてくれました。アニメではオウムのイアーゴですが、まったく、上司がアレだと苦労しますなw ジャファー親分とのコンビも最高で、「悪人笑い」も毎回最高ですw

 というわけで、今回も大満足の『アラジン』である。土曜の夜の回だったが当然満席で、やっぱり家族連れが多かったかな。劇団四季というブランドはやはり強大ですのう。これは本当にすごいことだと思う。専用劇場を持ち、年単位のロングランが可能なのは、日本では劇団四季だけと言って過言でないだろう。わたしの愛する宝塚歌劇と、対照的でいながら共通点も多い、日本最高峰の舞台芸術集団が劇団四季だ。このブランド力があれば、もっと企業としての売上/利益は上がるんじゃなかろうかという気がする。非上場企業なのでその財務状況は分からないが、今回グッズ売り場ものぞいてみたけれど、なんかもっとグッズは改善できるような気がした。配信とか映像ソフトはそんなに力を入れてないんだなあというのもよく分かった。それはおそらく、ライブが最も重要で、ライブの魅力を最も大切にしているからなんだろうと思う。だからこそリピーターも多いんだろうし、そこは非常に難しい判断だが、日本国内では抜群の知名度を誇っていても、実際に劇場に観に行ったことのある人はまだまだ少なく、お客さんの開拓には拡大の余地があるように思う。ま、量より質、なんでしょうな。それは十分わかる。が、ちょっともったいないような気がしてならないなあ……もっともっと、多くの人にこの『アラジン』という作品をはじめ、劇団四季を体験してもらいたいと思う。

 というわけで、結論。
 劇団四季の『アラジン』は最高です。まだ未体験の方は、ぜひ劇場へGO!! でお願いします。ただ、チケットがホントに取れないので、かなり先でも、発売時ならなんとか買えるので、是非ともチケット予約に挑戦してもらいたい。お子様はドキドキワクワクの体験を得られるし、おっさんは、女性陣のセクシーな衣装に大興奮するのは間違いないと思います。Broadwayでも観たわたしとしては、劇団四季の『アラジン』は、決して本場Broadwayに負けてないと断言します。以上。

↓ 英語版、日本語版、ともに車で聞くには大変盛り上がっていいかもね。買っちまおうかな……。
Aladdin
Musical
Walt Disney Records
2015-01-07

BROADWAY’S NEW MUSICAL COMEDY アラジン
劇団四季
WALT DISNEY RECORDS
2015-07-22



 

 突然だが、この歌をご存じだろうか。
 「ド~はドーナツのド~♪ レ~はレモンのレ~♪」 
 もちろん知ってるだろうと思う。おそらくは、日本人の97.5%ぐらいは確実に知っているであろう、「ドレミの歌」だ。総務省統計局のWebサイトで公開されている「日本の統計2015」によると、現在の日本の人口は127,298千人で、そのうち0~2歳児が3,151千人で2.5%である。まあ、そのぐらいのちびっ子は除外するとして、残りの97.5%の日本国民は全員知ってるのではないかと、まあ根拠なく思ったのである。
 でも、実際のところ、その97.5%のうち、この歌がそもそもは、とあるミュージカルの劇中歌であることは、半分以上の皆さんは知らないのではなかろうか。また、そのことを知っていても、おそらくはさらに半分以上の方は、映画化された方をオリジナルだと思っているのではないかと思う。これも根拠はないですが。
 というわけで、わたしが昨日観てきたミュージカルは、劇団四季による『サウンド・オブ・ミュージック』である。 
   
 たいていの人が、ああ、映画は観たわ、と言うかもしれないが、そもそもは、ブロードウェー・ミュージカルがオリジナルである。 音楽は、Richard RodgersとOscar Hammerstein IIのゴールデンコンビで、 今年の初めにKEN WATANABEこと渡辺謙のブロードウェー挑戦で話題となった『The King and I』「王様と私」もこのコンビによる作品であり、誰もが知っているいろいろな曲が、実はこの二人の作品だというものがたくさんあるすごいチームだ。『サウンド・オブ・ミュージック』でも、もちろん多くの歌が生まれ、「ドレミの歌」だけでなく「エーデルワイス」もそうだし、「わたしのお気に入り」も、たぶんこれはJR東海の「そうだ、京都、行こう」のCMで使われている曲なので、歌の歌詞は知らなくても曲は絶対に、誰もが知っていると思う。「エーデルワイス」なんて、え、どこかの国の民謡的なものじゃないの? と思っている人だっているような気がするが、実は『サウンド・オブ・ミュージック』から生まれた歌なのだ。
 そんな名曲だらけの『サウンド・オブ・ミュージック』だが、実のところ私も映画しか観たことがなく、今回が初のミュージカル版の観劇となった。そして、あらためて劇団四季のすごさを実感するに至ったのである。いやもう、ホントにブラボー。素晴らしかった。子役も先生も、とても魅力的で、もうね……抱きしめたいわもう! ――っと、これ以上言うと完全に事案発生→逮捕なので、サーセン自制します。

 というわけで、大いに感動し、なんだかもう非常にうれしくなってにやけて(※我ながらキモイ)帰ってきたわけであるが、帰りの電車内でいろいろ調べてみた事実をちょっと備忘録的に記してみよう。
 まず、第一に、この作品は実話がベースになっているということ。これは、大変恥ずかしながら知らなかった。ただ、相当な脚色によって、遺族・関係者はえーーっ!? と思ったらしいが、まあ、インスパイアされた実話があったという事らしい。舞台は1930年代後半のオーストリアである。ちなみに、それだけでもう、悲劇が想像できないと、最低限の教養はあるとは認定できないが、要するにナチスが確実に物語でからむであろうことは想像に難くない。まあ、実際にそうなる展開なのだが、一人の修道女希望の女子が、修行のため(?)に近所の軍人邸に家庭教師に出向くことになる。そこでは、厳格なしつけをなされた7人の子どもがおり、母を亡くし、父はオーストリア海軍の軍務で忙しく、と、愛に飢えた子どもたちであった……という話なので、ここから先は展開が想像できると思う。おそらくは、その想像通りの展開で合っていると思うよ。なお、正確には「退役軍人」なので軍務で忙しいわけじゃないみたい。

 ところで、どうでもいいことが気になるわたしとしては、オーストリア、当時のオーストリア=ハンガリー帝国……って海に面してないよな? 海軍って、あったんだ、いやそりゃあったんでしょうな? という事が気になり、調べてみたところ、どうやらトリエステなどのアドリア海沿岸の一部はオーストリア領だったらしい。へえ~。しかも、第1次世界大戦では、潜水艦部隊が対イタリア戦で活躍したんだそうだ。へえ~。そうなんだ。しかもこの物語の軍人さんも潜水艦乗りで、英雄として実際に有名だったらしく、その名声をナチスは欲しがっていたということらしい。
 で、先生と子どもたちの心の交流があり、その軍人さんと、先生としてやってきたヒロインが出会い、まあ、出会ったらそりゃ恋をしますな。そこからの展開は、まあ、観ていただいた方が良かろう。何ともほほえましく、おっさんとしては、ええのう……とつぶやかざるを得ない。そしてまあ、予想通りナチスが絡んでくるわけだが、この辺の展開は、『最後の授業』を少し思わせるものだった。
 『最後の授業』って……知らない人はいないよね? 大丈夫? なんとなく大丈夫じゃないような気がするので、ちょっとだけ説明しよう。この作品は、小説なんだが、教科書にも入っている話なので(少なくとも私は教科書で読んだ)知っている方は多かろうと思う。舞台は1870年代のフランス、アルザス地方の片田舎。これだけでピンと来たら、十分に教養アリとして合格。そう、アルザス・ロレーヌ地方といえば、1871年の普仏戦争で、敗戦国フランスがプロイセンにぶん捕られた部分だ。ストラスブール(ドイツ語でシュトラースブルク)が有名な街ですな。要するにこの小説は、超適当に要約すると、プロイセンに併合されるので、フランス語の授業は今日が最後、明日からはドイツ語の授業をやりまーす、だけど、フランス語は世界一美しい言語なんだぜ、と先生が最後の授業をするという感動作である。あれっ!? ちょっと待って。今、Wikipediaで調べたところによると、1985年以降の日本の教科書には採用されてないだと!? てことは、40代以上じゃないと知らないか……マジかよ……。サーセン。てことは知ってる人の方がもはや少ないか。時代は変わったのう……。
 まあ、そんなことはともかく、その後の展開の方が、実話の方では重要で、おそろしい苦労があったのだろうという事は想像できる。その点は『サウンド・オブ・ミュージック』においては、まあ、美しくふわっとしか描かれていないので、遺族も驚いたんだろうと思う。ただまあ、ミュージカルあるいは映画版では、そこを重くリアル描いても前半の美しい物語が損なわれるので、やむなしと割り切っていいのではないかと思う。遺族の皆さんには若干心苦しいが。

 で。わたしは劇団四季の作品を観るのは、これで4作目。熱心な四季ファンの方から見れば、全くのド素人同然の身分である。しかし、劇団四季は素人でも、これまでに数々のミュージカルやストレートプレイ、あるいは映画などを観てきたわたしには、明確にわかることがある。それは、劇団四季という集団が、きっちりと訓練された明確なプロフェッショナル集団である、ということだ。わたしが思うに、日本演劇界の中で、本当のプロ集団と呼べるのは、宝塚歌劇と劇団四季だけだ。この2つの団体は、共通点と相違点があって非常に対照的である。(※本当ならここに、歌舞伎も加えるべきだという事は十分承知している。けど、恥ずかしながら歌舞伎は2回しか行ったことなくて、まだ全然勉強不足なの……ちゃんと歌舞伎も勉強せねば……)

 まず共通点は3つある。ひとつは、きっちりと訓練されたプロであり、キャストの力量にあまりばらつきがないことである。もちろん、主役級とアンサンブルメンバーでは経験の差があるので力量も違うが、少なくとも、普通のいわゆる劇団に見られがちな、ばらつきはない。あの人うまいけどあいつは全くダメだな、というのがない。舞台に上がっている全員が、非常にレベルが高いのが共通点の一つ目である。もう一つは、専用劇場を持っていることだ。専用劇場を持っていることは、ハコの都合を考える必要がなく、ロングランできるというメリットがある。ロングランできるという事は、舞台装置や衣装にも金がかけられるということだ。それは非常に大きいことで、その結果、きっちりと利益が出る=黒字になるということである。 以前にも書いたが、赤字は明確に悪である。赤字では、プロとは言えない。素人だ。そして3つ目の共通点は、そのロングランを支える土台でもあるのだが、劇場稼働率が高い=空席率が低い=常に満席に近い=リピーターが多い、という点である。まあ、どちらが先かという気もしなくもないが、劇場稼働率の高さは、たぶん知らない人が聞いたら驚くと思う。その数字を公開するわけにはいかないが、最近行った映画の、客の入りを思い出してほしい。6割でも入っていたら、結構すごい入ってるなーと感じるのではないか。それだけ 高い集客ができるコンテンツは、わたしが知る限り宝塚歌劇と劇団四季が日本の最高峰だ。もちろん、普通のコンサートやイベントでも、くそー! チケット取れなかった! という事はいっぱいあるが、1Dayや3Daysのイベントなら、そんなのは当たり前だ。1年間、ほぼ毎日満席に出来るのは、宝塚と四季以外にはないと思う。

 一方で、明確な相違点が一つある。それは、役者に対する思想の違いである。 非常に対照的で、宝塚が誰もがご存知の通り「スター・システム」を採用し、特定のTOPスターを設定し、しかも定期的にそのTOPを入れ替えることで長きにわたってファンを育成しているのに対し、四季の場合は、まず役者の個性を消すことから訓練が始まるんだそうだ。つまり、四季にはスターは不要である、という思想である。これは、独特の「母音法」という発声から始まり、徹底的に、誰もが同じことができるように訓練されるらしい。もちろん、誰もがというのは言い過ぎかもしれないが、一つの演目で主役を演じる役者は、ダブルキャストどころか5人ぐらいいるのもあたりまえの状況だ。1998年からずっとロングランを続けている『ライオン・キング』の主役が、これまでに延べ何人になるか、調べてみようと思ったが、データがなくてわからなかった。18年×4人=72人×(1-重複率30%)として、少なくとも50人以上が同じ役をやっていることになる。こりゃすごい話だよね。もちろん、宝塚も、同じ演目の再演はあるので、同じ役を別の人がやるというのは当然ある話だが、ずっと連続してロングランをしているわけではなく、ちょっと比較はできない。実際、劇団四季は誰もが知っているのに、四季の役者さんとなると、知っている人は全然いないでしょ。まあ、それを言ったら宝塚も一部のファンの人でないと、宝塚のスターを知っている人も全然いないので同じかもな……。
 いずれにせよ、役者の人気に頼らないという劇団四季の思想は、その創立者の一人である浅利慶太氏の思想であるようだが、ややもすると、牛丼チェーンやファミレスチェーンのような、どこでも同じ味、と同じでは? と思われるかもしれないが、食べ物のように、絶対に必要で、あったから入る、というものでは断じてない。ズバリ言えば、なくてもいいし、別の代替えが効くエンターテインメント業界というものは、明確に、「観たい」「また行きたい」という意志と、それなりに高いチケット代を払ってもいいという意志を持ってもらうことが必要だ。それは、高いクオリティと、それによる満足を与えられるかどうかにかかっている。劇団四季と宝塚歌劇は、方法論は対照的だが、結果的に同じく成功している、日本における最高水準のエンターテインメントなのである。

 ところで。昨日わたしが観た公演では、主役のマリア先生は鳥原ゆきみさんという方が演じていたが、この方は元タカラジェンヌだったそうだ。とても可愛い、そして歌が抜群に上手な素敵なマリア先生だった。そしてもう一人わたしが非常に気に入ったのは、7兄弟の長女、リーズルを演じた長谷川彩乃さんである。もうね、すっげえ可愛い。歌も超うまい。いくつぐらいの役者さんか全くわからないのだが、たぶん、わたしの娘でも全くおかしくない年齢だと思う。あんな娘がいたら、父としては溺愛せざるを得ないだろうな……。本当に、素晴らしかった。

 というわけで、結論。
 劇団四季は、やっぱりすげえ。本当のプロ集団だ。この『サウンド・オブ・ミュージック』は、今年の東京公演が始まったばかりなので、まだ当分上演されるんだろうと思う。子持ちのみなさん、絶対に観に行った方がいい。絶対に感動すると思う。わたしも、また観に行きたいと思っている。


↓ ジュリー・アンドリュース版公開50周年だそうで、ううむ……こいつは買いかな。最新日本語版では、平原綾香さんがマリア先生を演じている。またひどい中傷めいたレビューがいっぱいあるようだが、わたしは十分アリだと思う。なぜなら、わたしは平原綾香さんが結構好きだからだッ! 文句ある?
サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版 ブルーレイ(3枚組) [Blu-ray]
ジュリー・アンドリュース
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2015-05-02


↓ 平原綾香ちゃんVerの「ドレミの歌」。わたし的にはアリ。

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