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 わたしは本が大好きで週に数回は本屋さんをのぞいて、なんか面白そうな本はねえかなあ、とかぼんやり渉猟するのだが、実のところ、もう6年前ぐらいから完全に電子書籍にトランスフォームしている。その理由は、電子書籍だと保管場所に困らないとか、読みたいときにいつでも買えるとか、電子書籍ならではのメリットを享受したいため、では決してない。
 わたしが電子書籍野郎に変身した最大の理由は、以前も書いた通り、「本屋が全くダメになりつつある」からだ。つまり、どこかでとある本が発売になっていることを知って、勇んで本屋へ行ったとしても、その本が店頭にないことが多く、嘘だろ売ってねえ!という悲しい事態に遭遇することが、ここ数年超頻繁に起きるからで、いわば、やむなく電子書籍を選択しているのである。
 というわけで、先日、わたしが愛用している電子書籍ストアBOOK☆WALKERから、「あなたがお気に入りに登録している作家さんの新作が出ましたよ!」的なメッセージが届き、うおお、マジかよ全然知らんかった!! と、まずは本屋さんへ行ってみたものの、残念ながら紙の書籍を見かけることができず、ぐぬぬ、という思いで電子書籍を買ったのである。ちなみに、わたしの家から一番近い大きめの本屋さんは、もう数年前からどんどん「本」の売り場面積が減っており、今や半分以上が文房具や雑貨になっちゃった……。
 と、前置きが長くなりました。
 わたしが新刊発売と聞いて、電子書籍版を買い、、超わくわくで読み始めた作品は、Joe Hill先生の『STRANGE WEATHER』という作品であります。
strangeweather
怪奇日和 (ハーパーBOOKS)
ジョー ヒル
ハーパーコリンズ・ ジャパン
2019-09-17

 もう、このBlogで何度も紹介している通り、Joe Hill先生は、わたしが世界で最も好きな作家Stephen King大先生の長男であります(お姉さんと弟がいる真ん中)。そしてHill先生の作品は、父King大先生の血統を完璧に証明するかの如く超最高に面白く、日本でまだ知名度が低いのではないかと思われるけど、ほんと、もっともっと知られてしかるべきだし、売れてしかるべきだとわたしは信じている。
 いやー、しかし、今回の『STRANGE WEATHER』も最高に面白かったすねえ!!
 これまでの、Hill先生の日本語で読める作品は、当然すべて読んでいますが、これはホント、歴代Hill先生作品の中でもTOPクラスに気に入ったすね。なにしろKing先生的空気感が濃厚で、おそらく、作者名を知らずに読み始めたら、あれっ!? これってKing大先生の作品じゃね!? と勘違いする可能性も高いような気がしますな。ちなみに、これまでのHill先生の作品は、わたしの大嫌いな小学館から発売されていたのだが、今回はなぜか、「ハーレクイン」で有名な「ハーパーコリンズ・ジャパン」からの発売となっている。なんでだろ? と思ったら、どうやらあとがきによると、US本国ではまさにHarperCollins社から出版されていたようで、まあ直ルートとでも言えばいいのかな、そういうことだったようだ。これ以降も、小学館なんぞじゃなく、ハーパーコリンズ・ジャパンから発売してほしいすね。

 で。それでは内容をメモしていきたいのだが、近年病的に記憶力の低下しているわたしは、数年後には内容を完璧に忘れる可能性が高いため、各話のエピソードガイド的にまとめてみようと思う。
 そうなんです。今回は、4つの中編からなるアンソロジー的作品なのであります! しかも4つとも、超おもろい!! これはKing大先生の作品が好きなら絶対読んでほしいし、そうでなくても誰しも楽しめる逸品であると断言したいすな。※なお、4つの物語に関連性はなく、完全にそれぞれ独立しています。
 ◆(第1話)『SNAPSHOT』
 この第1話の翻訳は、King大先生の作品の訳者でもおなじみの白石朗氏によるものだ。大変読みやすく、King大先生的なスーパーナチュラル要素アリ、そしてほろりとさせるものアリ、で、わたしはもうのっけから大興奮であった。
 お話は1988年の夏、カリフォルニアに住んでいた主人公が10代前半(小学生か中学生頃)に遭遇した謎の事件と、その後大人になって成功者となって暮らすまでが、短いながらも凝縮されて描かれている。
 謎の事件――それは、主人公が子供のころ子守してもらってお世話になっていた夫人が、痴ほう症めいた状態で道をふらふらしているのを、少年時代の主人公が見つける場面から始まる。主人公はデブで科学オタクで若干イジられ系の少年だったが、その夫人には大変な恩があるので、放っておけなかった。何をしてるのか聞いてみると、どうやらもはや痴ほうらしく、話が若干通じない。なので、主人公は優しく夫人を家まで送り届けるのだが、夫人は「ポラロイド・マン」から隠れているの、と謎の言葉を残す。なんのこっちゃ? と思う主人公だったが、数日後、主人公は車のダッシュボードにポラロイドカメラを置いている、「フェニキア語のタトゥーを入れた男」と出会い、偶然そのポラロイドカメラで撮影してしまう。すると、謎の現象が起きて―――!! てなお話だ。空気感と、「アヤシイ男と謎アイテム」という点で、わたしはKing大先生の『Needful Things』に似てるな……と思いながら読んでいたけど、結論としては全く似てませんでした。
 わたしがちょっと特徴的だと思ったのは、この事件後、主人公がどう成長していったか、が結構長めに続くんだな。その点が、短編集などではバッサリエンドになるKing大先生と違うような気がしましたね。しかもその長めの「その後」が、ちょっと泣けるいいお話なんすよ。実に面白かったっす。
 ところで、わたしがKing大先生の作品に現れる特徴で一番好きなのが、King先生独特の「下品なDirty Word」のセンスなんですが、これはもう、完璧にHill先生にも遺伝されてますね。お話の中で、痴ほうになってしまった夫人の旦那さんが出てきて、この人はフィットネスクラブを経営しているボディビルダー的な人(だけど、超優しいイイ人)なんですが、そういう人にありがちな、ピツピツのビキニパンツを履いてるわけですよ。そのビキニパンツを、Hill先生はこう描写してます。
 「金玉専用ハンモックといえそうなタイトな黒い下着一枚でストレッチにはげんでいた」
 もう最高っすねw
 ◆(第2話)『LOADED』日本語タイトル「こめられた銃弾」
 第2話は、うって変わってスーパーナチュラル要素はナシ。そして主人公(?)が3人いる。一人は、1993年にあこがれの男子(黒人)を警官(白人)に誤射されて殺された黒人女性。現在時制では、新聞記者になっている。もう一人は、宝石屋のオーナーのおっさんと不倫をしていて、Hと銃が大好きな、若干頭弱い系女子(宝石屋の店員さん)。そして3人目が、かつてイラクだかアフガンだか、どっかに出征した退役軍人で、ほんとは退役後は警官になりたかったのに、軍人時代ちょっと問題を起こしてしまったために警官にはなれず、とあるショッピングモールの警備員をしている。彼は、現在DV(本人的には全くそんな気はない)によって、妻(というより妻の姉)から離婚協議を起こされていて、愛する息子にも会えないでいる。
 ある日、宝石屋のおっさんが頭の上がらない奥さんから「あの娘をクビにするザンス!」とキレられ、おっさんはまるでごみを捨てるかの如く頭弱い系女子に別れを切り出すのだが、ふざけんなとブチギレた女子は銃を持ってショッピングモール内の宝石屋に乱入し、とんでもない事態に―――てなお話でありました。
 そしてこのお話も、「事件後」が結構長いです。つうかむしろ、事件後の方が本題とも言えると思う。けど、衝撃のラストを、ざまあと思うのか、なんてこった……と思うのかは、読者によって違うと思います。わたしはかなり退役軍人が気の毒に思えたので、少しすっきりしましたが、間違いなくこの作品は、現代US社会の病巣の一部を描いているわけで、かなり社会派でもあると思う。実に面白かったす!
 ◆(第3話)『ALOFT」日本語タイトル「雲島」
 そして第3話は、かなりファンタジーっぽさのある作品だ。主人公は20代のヘタレ野郎のミュージシャン。トリオで組んでいるバンドの女子Aが大好きなのだが、もう一人の女子Bががんで亡くなり、そのB子の追悼のために、仲間で彼女がやりたかったことリストの「スカイダイビング」に行くことに。そしてヘタレ野郎は、いろんな言い訳をしながらスカイダイビングなんてしたくないと駄々をこねるも、タンデムでつながってるインストラクターはそんなことにはお構いなしに空へ!! しかし、数秒後、彼は謎の「雲」の上に着地して置き去りにされてしまう(インストラクターは慌ててすぐ離脱)。しかもどうやらこの「雲」はなにやら生き物のように自意識を持っているようで―――てなお話であります。
 この話も、意外と長くて、果たして「雲」はいったい何なのか? そしてヘタレ野郎は無事地上へ戻れるのか!? という緊張感あふれる物語になっていて、極限状態からの脱出という意味で、すごく強いて言うならば、King大先生の超名作『Gerald's Game』に似てなくもないと思いました。やっぱりこの作品も、最高に面白かったす。
 ◆(第4話)『RAIN』日本語タイトル「棘の雨」
 最後の第4話は、ある日突然、「棘の雨」が降り、人々が大勢死んでしまったデンヴァーを舞台に、生き残ったレズビアンの女子のサバイバル(?)を描いた作品であります。いや、サバイバルは言いすぎかな? ある種のディストピア的な世界観で、わたしはこの作品はKing大先生の日本語仮タイトル「携帯ゾンビ」でおなじみの『CELL』に似ているように感じたっすね。
 ただしこのお話は、スーパーナチュラル要素はなく、一応、事件の真相は明かされるので、その点ではすっきりしている。そして謎のカルト集団なんかも出てきて、極限状態での人間心理という点では、すごく強いて言うなら『The Mist』っぽくもあるように感じたす。ちゃんと調べてないけど、この第4話が一番短いかな?

 とまあ、こんな感じの4つの中編なのだが、Hill先生自身によるあとがきに、執筆の動機とかいろいろ書いてあって、こちらも大変興味深い内容になっていました。このあとがきの内容にはあえて触れないでおきます。
 あと、もう一つ、とても素晴らしいと思ったのが、話の冒頭とラストに、非常にいいイラストがついているんすよ。それぞれ4人の別々のイラストレーターが担当しているのだが、これも、読み終わった後で改めてみると、とても味があるというか、アレの絵なんだ、と、非常にセンスを感じるイラストが添えられていることもメモしておきたい。とても素晴らしいイラストです。

 というわけで、もう書いておきたいことがなくなったので結論。

 わたしの大好きなJoe Hill先生の日本語で読める新刊『STRANGE WEATHER』という作品が発売になったので、マジかよ!と慌てて本屋さんに行ってみたものの、店頭に置いてなくて、やむなく電子書籍版を買って、すぐさま読みだしたのだが、ズバリ、超面白かった!! です。4編の中編からなるこの作品集は、実に父であるStephen King大先生の空気感に似ていて、King大先生のファンならば絶対読むべき作品であると断言したい。また、King大先生の作品を読んだことがない人でも、もちろん最高に楽しめると思う。まあ、内容的に「楽しめる」というのは若干アレかな。決してホラーではないと思うよ。ただし、きわめて、Strangeな状況であって、それぞれ、微妙に「天気」に関係があって、『STRANGE WEATHER』というタイトルも、実にセンスあるタイトルだと思った。また、添えられているイラストも実にセンスがあって、要するに、Joe Hill先生はまごうことなく父King大先生の才能を受け継ぐ、すごい作家であるとわたしとしては称賛したいと思う。ま、本人はお父さんがどうのとか言われたくないだろうけど、そりゃもう、読者としては比べちゃうのはしょうがないよ。そして、全く引けを取らない筆力は、ファンとしては「次の作品マダー!?」と期待させるに十分すぎると思います。以上。

↓ Joe Hill先生による原作小説も最高ですが、実はこっちの映画版もかなりキてます! 最高っす!

 はーーー……面白かった……。
 なんのことかって? それは、わたしの年に1度(?)のお楽しみである、『暗殺者グレイマン』シリーズの新刊が発売になったので、わーい!とさっそく買って読み、味わった読後感であります。わたしの愛する早川書房様は、とうとう紙の文庫本と同時発売で電子書籍版をリリースしてくれたので(これまでは1週間後ぐらいだった)、大変ありがたいすね。
 というわけで、わたしが待ちに待っていた新刊の日本語でのタイトルは、『暗殺者の追跡』。英語タイトルは『MISSION CRITICAL』という、Mark Greaney先生による「暗殺者グレイマン」シリーズ第8作目であります。いやあ、結論から言うと今回も最高でした。つうかですね、先日書いた通り、わたしはもう、最初の人物表を見た時点で大興奮ですよ! なんとあの、ゾーヤが! ゾーヤの名前が人物表にあるじゃあないですか!! 本作シリーズは、その主人公ジェントリーの、人殺しのくせに妙に良心のあるキャラ設定が大変面白いわけですが、まあ基本的に悪党は即ぶっ殺せの恐ろしい男である一方で、女子に対しては全くの朴念仁かつ純情ボーイぶりがおかしいという面もあるわけです。その朴念仁ジェントリーが、2作前の物語で出会い、お互い惚れちゃった超ハイスペック女子がいて、けど、俺と一緒にいると危険だぜ、男は黙ってクールに去るぜ、みたいな態度で別れたものの、1作前ではもうずっと、その女子のことをクヨクヨと思い悩み、これじゃあイカン、ちゃんとしろ、オレ! と涙ぐましい決断(?)のもとに、超危険なシリアに潜入するヤバいミッションに取り組んできたわけですが……そのウルトラ美女、ゾーヤが待望の再登場!! となれば、もうファンとしては大興奮間違いなしなわけです。たぶん!
 というわけで、わたしとしては人物表をみて、な、なんだってーーー!? ゾーヤ再登場かよ! しかもザックも当然出るみたいじゃねえか! コイツは最高だぜ! と即、読みふけったわけですが、その結論が冒頭の、「はーーー……面白かった……。」であります。控えめに言って最高でした。
暗殺者の追跡 (上) (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2019-08-20

暗殺者の追跡 (下) (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2019-08-20

 というわけで、まずは物語をざっと紹介しますか。いつも通り、もうネタバレにも触れてしまうと思うので、まずは作品を読んで、興奮してから以下をお読みください。

 はい。じゃあいいでしょうか?
 物語は冒頭、CIAの用意したビジネスジェットに乗り込む我らがグレイマン氏の様子が描かれます。CAの女子もなかなかデキる工作員っぽく、まあ、DCまでの空路を寝て過ごそう、と思ったグレイマン氏。しかし、どうも他にも乗客(もちろんCIA工作員チーム)が乗り込んできて、おまけに偉そうに指図され、チッ、めんどくせえ……と思いながら勝手にしろと一人寝入るグレイマン氏。しかし飛行機はDCの前に、イギリスに立ち寄ると、同乗していたグループは一人の「捕虜」を抱えており、イギリス政府にその捕虜を渡そうとしたところで、謎の武装集団に捕虜を奪われてしまうというオープニングアクションが描かれます。※追記:すっかり忘れてたけど、前作のラストを読んでみると、どうやらこのオープニングは、前作ラストから時間的に繋がってるのかな、という気もしました。
 そして一方そのころ、US本国では、愛しのゾーヤがCIAのセーフハウスで、数カ月間にわたり収容されていて、グレイマン氏が大嫌いなスーザンが、なにやらゾーヤを教育?中であった。しかし、うっかりスーザンがゾーヤにとある写真を見せたことで、ゾーヤはセーフハウスを脱走する決意を固め、行動に移そうとした矢先に、謎の武装集団がそのセーフハウスを強襲。ゾーヤは辛くも脱出に成功、自らの「やらねばならないこと」のためにUSを脱出しまんまとロンドンへーーー。
 となればもう、我々読者としては、グレイマン氏とゾーヤが、いつ、どのように、再会するのか、とワクワクしてページをめくる手が止まらないわけですが、グレイマン氏は飛行機を襲った連中を追い続け、ゾーヤはとある人物を追い続け、とうとう、再会に至って、最初にしたことはもう抱き着いて熱いキス! な展開で、読者としてはもうずっと夢に見ていた「最強のカップル」が動き出すのです。
 さらに! 逃走したゾーヤを当然CIAは追跡するわけですが、それよりも、二つの事件はCIAに「モグラ=内通者」がいることを示しているわけで、マット・ハンリーとスーザンがモグラ探しに放った「第3の男」、暗号名「ロマンティック」もまたロンドンへ! となるわけです。そして、この「ロマンティック」も、最初に登場した時点で我々読者が「キターー!」と思うような知ってる人物なんすよ。いや、登場前から、言及された時点で、まさかアイツか? と思ったわけですが、もうですね、例えて言うならアベンジャーズ並みと言って差し支えないと思うっすね!! イカン、書いててまた興奮してきたわ!
 とまあ、大筋としては、CIAにモグラがいて、そいつのせいでとある悪党が暗躍するのを阻止しようとするアベンジャーズの3人なわけですが、その悪党の計画が極めて危険で、いったいどうなる、という緊張感が続く物語となっております。さらに、その悪党は、実はーーという正体も、まあ誰しも途中で気が付くと思うけれど、その正体や動機もまた丁寧に(?)描かれていて、わたしとしてはシリーズで一番面白かったような気もします。ただ、動機に関してはちょっと逆恨みというか……よくわからんかも。そして最終的な決着も、最後の大バトルはごちゃごちゃしちゃったような気もするし、サーセン、ちょっとほめ過ぎたかもっす。
 ただ、とにかくグレイマン氏とゾーヤの夢の共演は最高に興奮したし、「ロマンティック」合流後のやり取りも実に良かったすねえ! キャラクターが実にお見事で、その点では本当に非の打ちどころなく最高だったと思います。いやー、ほんと面白かったすわ。
 それでは、恒例のキャラ紹介と行きますか。関係性が分かりやすいように、まずはこの人から行ってみるか。
 ◆マット・ハンリー:元US-ARMYデルタに所属していた軍人で、現在は太鼓腹のCIA工作部門本部長。シリーズに何度も登場しており、グレイマン氏を信頼しているほぼ唯一の味方。本部長に昇進してから、CIA長官の暗黙の了解のもと、「ポイズン・アップル」計画という極秘プログラムを運営中。それは、「記録に残らない任務」をこなす凄腕工作員を運用するプログラムで、グレイマン氏がその筆頭として計画されている。今回、マットは唯一事件を正しく理解していて、ラストの大バトルでは戦闘にも参加! 太鼓腹のくせに!
 ◆スーザン・ブルーア:マットの部下で、CIA局員。グレイマン氏や「ポイズン・アップル」を構成する工作員たちのハンドラー(=管理官)。これまでのシリーズ通り、スーザンはマットのことも大嫌いだし、グレイマン氏のことも大嫌い。ついでに言うと読者のわたしもスーザンは大嫌い。でも、一応ちゃんと仕事はするので許してもいいんだけど……基本的に彼女は危険な任務は大嫌いだし出世したい気持ちが強すぎて、今回、何度かマットやグレイマン氏を裏切ろうと行動に出る……けど、すべて不発で、ラスト大バトルでは負傷。正直わたしとしては、まったく好きになれないので、ざまあ、です。
 ◆コートランド(コート)・ジェントリー:通称「グレイマン」と呼ばれるシリーズの主人公。CIAでの暗号名では「ヴァイオレーター」。ポイズン・アップル1号として、スーザンにこき使われるが、スーザンとのやり取りもいいっすねえ! スーザンの無茶振りに、こいつ、絶対俺に死んでほしいと思ってんだろ、と思いながら「あんたと一緒に仕事をすると、スリル満点だな」と返すコートは最高です。そしてゾーヤを前に「俺は恥ずかしがり屋なんだ」とか抜かす純情ボーイ、グレイマン氏に乾杯! すね。前作では、ゾーヤのことが忘れられずクヨクヨしていたグレイマン氏ですが、今回は再会してやる気十分、本領発揮の超人ぶりですが、本作でもまた、手ひどくやられて何度も満身創痍になります。良く生きてたな……ホントに。そういや、ロンドンということで、今回も第1作のハンドラー、フィッツロイおじいちゃんも登場します。そして第1作でグレイマン氏が守り抜いたあのかわいい双子も! なお、わたしはずっと書いてきたように、今回もグレイマン氏=セクシーハゲでお馴染みのJason Statham氏のイメージで読んでました。が、今回もちゃんと髪がある描写アリで、断固異議を唱えたいと存じますw コートはハゲじゃないと!w
 ◆ゾーヤ・ザハロフ:2作前、グレイマン氏がようやくCIAと緊張緩和(デタント)して、請け負った仕事で出会った、元ロシアSVRの工作員。27歳(?)で身長170cmほどだそうです。以前語られていたかまるで覚えてませんが、お母さんはイギリス人なんすね。そしてUCLAに通っていた過去もあるんだとか。そうだったっけ? 身体能力が高く、射撃や格闘なども当然こなすハイスペック美女。その2作前の物語では、最終的にCIAの資産となることに同意し、その際、表向きは死亡したことになっていた。が、US本国でCIA資産として、ポイズン・アップル2号、暗号名「アンセム」としての教育(?)を受けているところだった。今回のゾーヤの最大のモチベーションは、死んだはずの父が生きていることを見抜き、父は生きているならどこにいるのか、何故、死んだ偽装をしたのか、の謎を解くこと、そして父の野望を知った後半は、その恐ろしい計画を阻止することに全力を尽くす。しかしゾーヤはいいですなあ! わたしは、冒頭のセーフハウスで初めて登場した時のゾーヤは、まるで『TERMINATOR2』のサラ・コナー初登場シーンのようだと思いました。ビジュアルイメージは、正直あまりピンと来なかったけど、絶対美人だよね。途中まで、ああ、こりゃあゾーヤは最後まで生き残れないな……と思ったオレのバカ! 今回のラストも、とてもグッときます! なお、スーザンがラストで負傷したのは、スーザンがどさくさに紛れてグレイマン氏を殺そうと銃を向けたからで、ゾーヤに撃たれたからです。まあ、ざまあっすな。
 ◆ザック・ハイタワー:元ジェントリーの所属していたCIA特別活動部のチームリーダー。だが、いろいろヘマをやって(すべてジェントリーのせい)、解雇されていたが、3作前(かな?)でヴァイオレーター狩りに呼び戻される。どうやら以後はマットとスーザンの配下として、ポイズン・アップル3号として活躍していたらしいのだが、「ロマンティック」という暗号名なのが気に入らないご様子なのが笑える。「ナイト・トレイン」と呼ばれたいのだが、誰もそう呼んでくれなくて拗ねるザックが最高です。なので、ラストのジェントリーとの会話には、わたしはとてもグッときました。ザックとジェントリーは、お互いの「腕」はよく知っていて信頼している間柄ですが、状況次第で敵になったり仲間になったりと、とにかく敵に回すと恐ろしいけど、味方としては最も頼りになる男すね。今回初対面の時は、「おまえをシックスと呼ぶやつが、ほかにいるか、間抜け?」といつもの調子でとてもワクワクしました。ザック、あんたも最高だよ、きょうだい!
 ◆ジェイソン:今回初登場の、CIAロンドン支局在籍の若者。とてもイイキャラだったし、何度も助けてくれて活躍したのに、ホント残念な最期を……今回、わたしとしては一番気の毒です。
 ◆ジェナー、トラバースたち現役のCIA特別活動部地上班のメンバー:彼らはザックやジェントリーとも顔なじみで、久々?登場。でも一部メンバーは残念なことに……
 ◆フォードル・ザハロフ:ゾーヤの父親。元々GRU長官(だったっけ?)のスパイの元締めだったが、若き頃出会ったイギリス女子と恋に落ち、結婚。一人息子とゾーヤという子宝に恵まれるが、妻をイギリスの諜報部に殺され(ロシアスパイたちのイギリス浸透のために語学や文化を教える教官を務めていたため)、その復讐に燃え、死んだことにしてイギリスへ移住。しかし、自分のうっかりミスで息子(ゾーヤの兄)も亡くし、おまけにゾーヤも死んだ(ことになっていた)ことで、理性のタガがブッ飛び、恐ろしい計画を実行に移す決断をする今回のラスボス。イギリス人としての偽名はデイヴィット・マーズ。若干、その動機はスケールが小さいというか……まあ、完全なる逆恨みと言わざるを得ないでしょうな……。
 ◆プリマコフ:ロンドンの暗黒街を仕切るロシアンマフィアの頭目。イギリス人としての偽名はロジャー・フォックス。冷酷でかなり頭のいい男。しかしラストは意外とあっけなく……。まあ、もっと苦しんでほしかったと思うほどの悪党でした。
 ◆ハインズ:プリマコフ(フォックス)の専属ボディーガード。元ボクサー。超強くて、今回2回、グレイマン氏をボッコボコにする活躍を見せる。ま、もちろん最後はやられますが。コイツはとてもキャラが立ってましたなあ! なんだか80年代の007映画に出てくる悪党っぽかったすね。グレイマン氏がこれほどタイマンでやられたのは珍しいぐらい、ボッコボコにされました。まあ、やられたグレイマン氏は、ゾーヤに甲斐甲斐しく手当てしてもらって、ちょっと嬉し気でしたけどねw
 ◆元薔美:ジャニス・ウォンを名乗る北朝鮮人。細菌学者。狂信者。殺人BC兵器を作って喜んでいるのが怖い。ラスト近くでCIAに拘束されたはずだけど、その後の運命は不明。どうなったんすかねえ? ま、US本国でずっと監獄入りなのかな……。
 とまあ、こんなところでしょうか。
 今回は本当に、いろいろグッとくるシーンがあって、ちょっといくつか引用しておこうと思います。
 <第1作で守り抜いた女の子が元気でいるのを見たグレイマン氏>
 ふたりを見ていると目が潤みそうになるのを、ジェントリーはこらえた。
 ※わたしも目が潤みそうになったよ、コート!
 <ハインズにボコられて、ゾーヤに手当てしてもらって(ついでに熱いSEXして)目覚めたグレイマン氏が隣で寝ているゾーヤを見て思ったこと>
 ジェントリーがこの世でいちばんやりたいのは、転がってゾーヤの上になり、愛撫で目覚めさせることだったので、こんな状態にした大男のボクサーを呪った。
 ※コート、お前の気持ちはよくわかるぜ!w
 <目覚めたゾーヤに、コーヒーを渡しながらグレイマン氏が思ったこと>
 「インスタントだよ」いってから、すぐに後悔した。「うまいインスタントなんだ」あまり上手な取り繕いかたではなかったが、ジェントリーは色事が得意ではなかった。
 ※へったくそ!w コート、がんばれ!w
 <兄の死の真相を知って、善良な兄はあなたに似てたわ…とゾーヤが言ったのを聞いて>
 「それは、おれの自分に対する見方とはちがう(=つまりおれは善良じゃない)」
 ゾーヤは涙をぬぐった。「わたしのほうが、あなたをよく理解しているのよ。あなたは、自分が善人の最後の生き残りだということに気づいていない」
 ※これを聞いたグレイマン氏は仕事の話を再開させちゃいますが、おいコート! ここはゾーヤを抱きしめる場面だぞ! 
 <ゾーヤは、自分が父を殺す!と燃えていたのに、グレイマン氏にその役を奪われ……>
 「あなたなんか大嫌い!」ゾーヤは叫んだ。
 「あとにしろ。このコードは?」
 ※おいコート、ここもゾーヤを抱きしめるとこだぞ! 爆弾処理より先に!w
 <カンカンに怒っているゾーヤに、もう一度、話をしに行こうとするとザックが現れ……>
 「おまえのためを思っていっているんだ、きょうだい。おまえたちふたりはうまくいくかもしれんが、きょうはぜったいにだめだ、おれは彼女と話した。目つきを見た。いまあのドアをはいっていっても、いい結果にはならない。断言する。作戦休止だ、シックス。このままにしておけ」
 ※今回のザックはずっとグレイマン氏を助けてくれたし、恋のアドバイスまでくれるとは、ザック、ありがとうな、きょうだい!

 というわけで、もうクソ長いので結論!
 わたしの大好きな『暗殺者グレイマン』シリーズの最新刊が、今年も早川書房様から発売になりました。毎年8月の楽しみとして、わたしはずっと待っていたのですが、とにかくもう、冒頭の人物表だけで大興奮しましたね! そして物語もその期待を裏切ることなく最高でした!! 超面白かったす!!! まあ、きっといずれは映像化されるでしょうが、その時はマジで主役をJason Statham兄貴にお願いしたいです! そしてザックはやっぱりStephen Lang氏ですかねえ、わたしのイメージは。ゾーヤは誰がいいのかなあ……ちょっと、ビジュアルイメージがわかないんすよね……ロシア美女ってことで、ザキトワちゃん的なイメージを持ったんですが、もっとクールで気が強そうじゃないとダメかな……ゾーヤ役には誰がいいか、いいアイディアがあれば教えてください! 以上。

↓ どうやらUS本国では、全く別の新刊が出たっぽいすね。第3次世界大戦勃発的な物語?のようです。きっとおれたちの早川書房様が翻訳してくれるはず!
Red Metal (English Edition)
Mark Greaney
Sphere
2019-07-16

 まったく世の中便利になったもので、わたしが今朝起きると、電子書籍専用として愛用しているタブレットに、メールが来ていた。曰く、「あなたがこれまでシリーズを買ってきた『暗殺者グレイマン』の新刊が出ましたよ!」
 当然わたしは新刊が発売になることは、もう事前に知っていたけれど、ちゃんと発売日にお知らせしてくれるなんて、というのが、冒頭に書いた「全く便利な世の中」の意味であります。
 わたしは今、これまたずっと追いかけている作家Claire North女史の新作を読んでいて、ようやく半分ぐらいまで読んだ途中なのだが、即座に『グレイマン』を読み始めるべく、メールを見た60秒後には電子書籍で購入を完了し、さっそく読もうと思っているところであります。
 ↓これが読んでたClaire North女史の新刊。はっきり言って主人公女子のキャラがイマイチ好きになれず、やたら読むのに時間がかかっております……。
ホープは突然現れる (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA
2019-06-14

 ↓そしてこちらが、われらが「グレイマン」氏の最新刊
暗殺者の追跡 (上) (ハヤカワ文庫 NV ク 21-11)
マーク グリーニー
早川書房
2019-08-20

暗殺者の追跡 (下) (ハヤカワ文庫 NV ク 21-12)
マーク グリーニー
早川書房
2019-08-20

 しっかし、早川書房様は本当に素晴らしい出版社ですなあ。以前は、紙の本が出た1週間後ぐらいの電子版発売だったけれど、今回はどうやら紙と同時発売のようだ。さすがおれたちの早川だぜ!
 そしてさっそく購入し、ダウンロードし、上巻の表紙をめくり、人物一覧を見てわたしはもう、朝から大興奮ですよ!!! やっばい!! ゾーヤが!! ゾーヤが出てるっぽい!!! やったーーーー!!! おまけに元上官ザック・ハイタワーや、ゾーヤのお父さんまで出てくるっぽいぞ! こいつは最高じゃんか!!
 ゾーヤというのは、2作前の作品で登場した、元ロシアSVRの女子工作員で、なんとまさかのグレイマンとぞっこんLOVEっちゃうあの女子ですよ! やった、ゾーヤ登場だぜ!! と、もう冒頭の人物表からして大興奮なのは、恐らく日本国内で30人ぐらいいるんじゃないかしら。
 ああ、でもなあ、心配だ……著者のGreaney先生はキャラを結構あっさり死なせてしまうので、ゾーヤが本作ラストまで生き残ることを祈ります……! 今回まだあらすじすらチェックしてないけれど、あらすじは読まずに突入いたしたく、さっさと読み始める所存であります!!

 というわけで、結論。
 おれたちの「グレイマン」新刊キターーー!! そしてゾーヤが出てるっぽいぞ! やったーーー!! 以上。

 物理学における「三体問題」というのをご存知だろうか?
 そう言うわたしも知らなかったので、Wikiから軽く引用しつつ、超はしょって言うと、万有引力によってお互いに作用する3つの天体の軌道を数学的にモデル化しようとするもの、で、コイツはもう計算できない! とされている問題だ(たぶん)。正確には、いろんな条件下では、こうだ、という解はそれぞれあるようだが(?)、わたしも実は良くわかっていない。ガンダム世界で言う「ラグランジュポイント」ってのがあるでしょ? アレは地球と月(と太陽?)の重力(引力?)の均衡が取れているポイントのことで、この「三体問題」のひとつの解であるらしい。いや、サーセン、わたしもまるでニワカ知識なので、正確にはよくわからんですが。大森望氏によるとそういうことらしいです。
 というわけで、話題の小説『三体』がとうとう日本語化されたので、わたしも遅まきながらやっと読んでみたわけなのだが、これがまた強力に面白く、大興奮であったので、今から感想などを書こうと思っているわけです。
 この小説『三体』は、中国人作家の劉慈欣(日本語読みで りゅう・じきん)氏によるSF小説であり、中国のSF雑誌に2006年5月から12月まで連載され、単行本として2008年に刊行された作品だ。その後、「The Three-Body Problem」として英訳もされ、2015年のヒューゴー賞長編小説部門をアジア人作家として初めて受賞、2017年には当時のUS大統領Barack Obama氏がすげえ面白かった! とインタビューで発言したことなんかもあって、話題となっていた作品だ。
 それがとうとう、日本語訳されたわけですよ! さすがわたしの愛する早川書房様! 当然電子書籍版も、各電子書籍販売サイトで取り扱っていると思うので、自分の好きなところで買って、読み始めてください。Kindle版も当然発売になってます(しかも若干お安い)。
三体
劉 慈欣
早川書房
2019-07-04

 で。―――もしこれから読んでみようかな、と思う方は、以上の前知識だけにして、今すぐ作品自体を読み始めた方がいいと思います。恐らく、ある程度のネタバレは事前に知っていても十分楽しめるとは思うけれど、なるべくまっさらな状態で読み始めた方がいいと思いますので、へえ、そんな小説が発売になったんだ? と興味がわいた方は、以下は読まず、今すぐ退場してください。その方がいいと思いますよ。

 はい。じゃあ、いいでしょうか?
 本作は、冒頭は1967年(たぶん)、文化大革命真っ盛りの中国から開幕する。そこで一人の女性、葉文潔(推定25歳ぐらい?)に降りかかった悲劇と、その後の体験が描かれるのだが、これがまたかなり生々しくて非常に興味深い物語となっている。わたしは、ああ、今の中国って、文革のことを書いてもいいんだ、とちょっと驚いた。勝手な先入観として、天安門事件のように、誰も口にしてはならないことなのかと思ってたけど、そういやいろんな本が散々出てるんですな。
 そしてこの文革での体験が、葉文潔の生き方、そして人類に対する観方を決定づけるわけだが、すぐに物語は「40数年後」の現代に移り、もう一人の主人公、汪森の話が始まる。汪森は、とあるナノマテリアルを研究している科学者なのだが、彼の元に警察と人民解放軍の軍人がやってきて、「科学フロンティア」なる団体に、加入して、その内部を探るよう依頼してくる。実は最近科学者の自殺が相次いでおり、その対策本部があって、そこにはNATOの軍人やCIAまでおり、「今は戦時中だ」とか言っている。汪森は、なんのこっちゃ? と思いつつも、科学フロンティアに加入することを受諾するが、すると謎の「カウントダウン」が始まり、その謎を解くために科学フロンティアの主要メンバー?である女性科学者を訪ねる。が、逆に「今すぐあなたのやっているナノマテリアルの研究を中止しなさい」とか謎の言葉ばかりかけられ、やむなく汪森は、ふと思いついて女性がプレイしていた「三体」というVRゲームをプレイしてみるのだが、その背景には恐るべき秘密が隠されていた!! という展開となる。
 ここから先の物語は、もう書かないで読んでもらった方がいいだろう。正直わたしは、えっ!? と思うような、トンデモ展開だと感じたのだが、とにかくディティールが非常に凝っていて、わたしのようなまるで知識のない人間でも、だんだんと何が問題になっているのかが分かる仕掛けになっている。
 その理解を助けてるくれるのがVRゲーム「三体」だ。
 これは完全没入型のゲームの形を取っていて、3つの恒星を持つ惑星、という謎の異世界を体験しながら、「三体問題」がどういうものか、理解できるようになっている。なお、このVRゲームは、VRスーツを着用してプレイする(=READY PLAYER 1的なアレ)ものなので、この描写されている現在は、今よりちょっと先の近未来なのかな、とわたしは思ったのだが、思いっきり「40数年後」って書いてあったし、よく考えてみると、本書が最初に発表されたのが2006年なんだから、まだiPhone発売前の世であり、その当時の状況からすると、執筆時に想定されていた作中での現在は、2010年代後半ぐらいなのかもしれない。
 で、とにかくこのVRゲームの部分がすっごい面白いわけですよ。いろんな歴史上の人物が出てきて「三体問題」に挑むのだが、クリアできないで文明は滅んでリセットされ、また次の人物が挑んで……を繰り返しているらしく、200文明目ぐらいでフォン・ノイマンが出てきて、「人力コンピューター」が登場するくだりは最高に面白かったすねえ!
 そしてこのVRゲームによって「三体問題」の基本理解が出来たところで、このゲームが実は謎組織のリクルーティングのためのものであることも判明し、汪森は謎組織の中に入り、驚愕の事実を知るわけだが、同時に冒頭の文革で悲劇に遭った葉文潔の半生が語られていき、如何にして文潔が「人類に絶望したか」が、じわじわと生々しく読者に理解できるようになっている。
 そして文潔の「人類に対する裏切り」がどんなことを引き起こしているのか、という怒涛のラストになだれ込むのだが、わたしはもう、ラスト辺りで語られる異星人の話には大興奮したものの……ここで終わり!? というエンディングには、若干唖然とせざるを得なかったす。これは電子書籍の欠点?かも知れないけれど、自分が今どのぐらい読み進めているか、自覚がなくて、わたしの場合、興奮してページをめくったらいきなりあとがきが始まり、えっ! ここで終わり!? とすごいビックリしました。
 そうなんです。本作は、実は3部作の第1作目、ということで、この先がまだまだあるんすよ! あとがきによれば第2巻の日本語訳は来年発売だそうで、オイィ! 続き早よ!! と恐らくはラストまで楽しんで読んだ人なら誰しもが、思うのではなかろうか。そして一方では、ラストまでついて来れなかった人も多いとも思う。まあ、最後の1/4ぐらいの異星人話はちょっとキツかったかもね……。
 というわけで、もういい加減長いので、来年続きを読むときのために、主要キャラをメモして終わりにしよう。
 ◆葉文潔:冒頭の1967年の文革期で25歳ぐらいで、元々、父と同じく天文物理学を勉強していた。作中現在では70代のおばあちゃん(※作中に「60代ぐらい」という容姿の描写アリ。てことは作中現在は2000年代後半か?)。文革後、「紅岸プロジェクト(=実は地球外生命体探査計画)」に半強制参加させられたのち、名誉回復が叶い、大学教授となってその後引退。人類に対して深く絶望しており、とある「人類に対する裏切り行為」をしてしまう。物語の主人公の一人。
 ◆楊衛寧:文潔の父の教え子だった男。文潔を紅岸に引き抜いて救う。後に文潔と結婚するも、実に気の毒な最期を迎える。
 ◆雷志成:楊とともに文潔を紅岸に引き抜いた男。政治委員。文潔の研究を自分の名前で公表して地位を築いたりするが、わたしの印象としては悪い奴ではない。楊ともども気の毒な最期を迎える。
 ◆汪森:もう一人の主人公。妻子アリ。ナノマテリアルの研究をしている科学者で、いわば巻き込まれ型主人公。ただし、ラスト前で彼の研究していたものがスゴイ役立つことに。実はそれゆえに、最初から「科学フロンティア」勢力は汪森の研究を中止させたがっていた。つまり巻き込まれたのは偶然では全然なかったというわけで、読者に代わってえらい目に遭う気の毒な青年と言えるかも。
 ◆史強:元軍人の警官。汪森をつかって事件の真相に迫る。キャラ的には強引で乱暴者で鼻つまみ者で脳筋、と思わせておいて、実はどうやらすごく頭はイイっぽい。非常に印象に残るナイスキャラ。
 ◆楊冬:文潔と楊の娘で科学者。「これまでも、これからも、物理学は存在しない」と書き残して自殺。
 ◆丁儀:楊冬の彼氏で同じく科学者。酔っ払い。なかなかのリア充野郎で、チョイチョイ汪森と行動を共にするが、正直イマイチよくわからない野郎。
 ◆申玉菲:中国系日本人科学者。超無口。元三菱電機勤務で、当時は汪森と同じくナノマテリアルの研究をしていた。汪森が初めて会いに行ったとき、VRゲームをしていた。科学フロンティア会員で、汪森に対して「プロジェクトを中止しなさい」と謎の言葉をかける。
 ◆魏成:申玉菲の夫。数学の天才。ものぐさで浮世離れしたふらふらした男。紙と鉛筆で三体問題を解こうとしていた過去があり、それで申玉菲と知り合った。VRゲーム「三体」のモニタリングと追跡を、それがどういう役目か知らないまま担当していた。
 ◆潘寒:有名な生物学者。科学フロンティア会員。化石燃料や原子力などをベースとした「攻撃的」テクノロジーを捨て、太陽光エネルギーなどの「融和的」テクノロジーを提唱している男。実は謎組織「地球三体協会=Earth Trisoralis Organization=ETO」の「降臨派」で、申玉菲の属する「救済派」と対立しており、ついに申玉菲を射殺するに至る。「オフ会」の主催者。
 ◆沙瑞山:文潔の教え子で、現在は北京近郊の電波天文基地に勤務。汪森が「宇宙の明滅」を確かめるために会いに行った男。たいして出番ナシ。
 ◆徐冰冰:女性警官でコンピューターの専門家。VRゲーム「三体」の謎を警官として追っていた。たいして出番ナシ。
 ◆マイク・エヴァンズ:文潔と同様に、人類に絶望した男。文潔と結託し、ETOを設立し、父親から受け継いだ莫大な遺産で、タンカーを改造した「ジャッジメント・デイ号」を「第2紅岸基地」として運用し、場所に縛られない移動可能な送受信設備を使って宇宙と交信する。
 ◆林雲:丁儀の元カノで、丁儀の研究のカギとなる貢献をした人物で、軍人? らしいが、本作では姿を現さず、丁儀の台詞にだけ登場。今は「あるところに……もしくはあるいくつかの場所にいます」と言われていて、ひょっとしたら第2作以降登場するかもしれないのでメモっときます。
 はーーーーとりあえずこんな感じかな。もう書いておきたいことはないかな……。

 というわけで、結論。
 話題のSF大作『三体』の日本語訳が早川書房様から発売となったので、わたしもさっそく買って読んでみたのだが……ズバリ言うと、面白い! けど、ここで終わりかよ! 感がとてつもなく大きくて、若干ジャンプ10週打ち切り漫画っぽくもある。わたしとしては、ホント続きが早く読みたい!気持ちがあふれております。相当歯ごたえ抜群のSFであることは間違いないけれど、それ故に、まあ、万人受けするかどうかは相当アヤシイとも思う。特にラスト近くになってからの怒涛の展開は、かなりトンデモ世界で、ちょっとついて行くのが大変かも。そういう点では、普通の人には全然おススメ出来ないけれど、SF脳な方には超おススメです。つうか、続きは450年後の世界が舞台なんだろうか?? すげえ気になるっすなあ……! まあ、おれたちの早川書房様は確実に第2作、第3作を発売してくれるのは間違いないので、楽しみに待ちたいと存じます。いやー、スケールでけーわ。なんつうか、すげえ読書体験でありました。以上。

↓ 英語版はとっくに最後まで出てます。読む? どうしよう……。


 

 わたしはもはやすっかり電子書籍野郎となって久しいのだが、それでも本屋という存在は大好きだし、毎日はそりゃ行ってないけれど、少なくとも週1では本屋に行って、面白そうな本はねえかなあ……と渉猟している。そんなわたしだが、先日本屋の店頭で、えっ、うそ、マジ!? と驚き、すぐさま買って読んだ本がある。
 それは、寡作で有名なメリケン国の作家、Tomas Harris先生の新作『CARI MORA』という作品で、わたしはホントに、あのTomas Harris先生の新作が出ていることなんて全く知らなかったので、とても驚き興奮したのであった。
カリ・モーラ (新潮文庫)
トマス ハリス
新潮社
2019-07-26

 どうやら7月には発売になっていたようで、発売後1週間ぐらい経っていたのかもしれないが、さすがにわたしの大嫌いな新潮社である。まったく告知を見かけなかったので、売る気もほぼないんじゃないかと疑いたくなるほどだ。これがわたしの愛する早川書房様だったら、100%確実に電子書籍でも発売になっていただろうし(実際US版はKindle版も売っているのだから、Harris先生が電子を嫌がることはないはず)、そうであれば確実にわたしも気づいたはずだが……ホント、新潮社は使えないというか、おっくれってるぅーーー!である。
 ところで、Tomas Harris先生についてはもう説明の必要はないだろう。恐らく誰しもが知っている、『The Silence of the Lambs』日本語タイトル「羊たちの沈黙」の著者である。Harris先生は、あれほどのウルトラ大ヒット作品の原作を書いた小説家であるにもかかわらず、とにかく作品数が少ないことでもお馴染みなのだが、今まで全5作しか発表しておらず、その5作すべてが映像化され、その筆頭である『The Silence of the Lambs』は予想外のアカデミー作品賞すら受賞しており、その知名度は抜群だろう。しかし、最後の『Hannibal Rising』を2006年に発表して以来だから13年ぶりの新作ということになる。それが本作、『CARI MORA』だ。
 ただし、である。わたしはHarris先生のすべての作品を読んでいるし映画版も観ているのだが、正直、『HANNIBAL』『Hannibal Rising』の2作は相当イマイチだと思っている。映画も同じで、この2作はかなり微妙だった印象が強く、わたしとしては一番好きなのは、小説も映画も『RED DRAGON』なのだが、いずれにしても、もうレクター博士モノはいいんじゃね? とか思っていたのだ。なので、本作を本屋さんの店頭で発見した時は、Harris先生の新作であることにまず大興奮したものの、まーたレクター博士モノだろうか?とかいらない心配をしたのだ。
 というわけで、まず手に取り、おもむろにカバー表4を見て、さらに驚いたのである。そう、本作『CARI MORA』は、全く新しい、完全新作で、そのタイトルであるカリ・モーラという25歳の女子を主人公としたヴァイオレンス(?)小説だったのである。たしかHarris先生はもう、今頃70歳とっくに超えてるよな……? とか思いながら(後で調べたら御年79歳!)、マジかよ、完全新作とは恐れ入ったぜ! とレジに向かったあのであった。
 で。読んだ。読み終わった。
 一言で言うと、面白かった。ほんのりと、Harris先生っぽさもある。だけど、うーん、これが全く知らない作家のデビュー作であるなら、わたしは非常に面白かった! と言い切るだろうけれど、いかんせん、「あの」Tomas Harris先生の作品であるということを考えると、そうだなあ、フツーに面白いレベルにとどまるような気がする。キャラクターは抜群にイイんだけど……全然活躍しなかったり、ラストに全然絡まなかったりと、物語としてやや、スッキリしないというか……いや、最終的に一番悪いゲス野郎は見事昇天し、ヒロイン勝利になるからスッキリはするか。なんと言えばいいんだろうな……物語の本筋は、かつてのコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルがマイアミに築いた大邸宅に隠された金庫とその中に眠る3000万ドル相当の金塊を奪おうとする悪党どもが殺し合う、というものなのだが、キャラが多すぎて若干消化不良?な感じを受けた。もうチョイ、頭脳バトルが描かれればもっと面白かったのだが……。なんか結構、キャラクターが皆、筋肉バカだったような印象かも。
 そんな物語を彩る悪党どもばかりのキャラたちを紹介したいのだが、これはなあ……陣営をまとめて相関図を作った方がいいと思うんだけど……めんどくさいからもう文字でまとめてみるとしよう。
 ◆カリ・モーラ:物語のヒロイン。25歳。コロンビアからマイアミに逃れて来た移民。獣医を目指す真面目な美人。いとこのフリエーダとともに、その母の介護をしている。少女時代、コロンビアの反政府左翼ゲリラFARC(コロンビア革命軍)に両親を殺され、自らも拉致されて、ゲリラ兵としての訓練を受けていた過去がある。なので銃の扱いや、サバイバル知識なども身に付いたスーパーガール。彼女のそういった凄惨な過去も比較的丁寧に描かれているが、若干テンポが悪いというかアンバランスというか……うーん、まあ、とても魅力的なヒロインなのは間違いなく、彼女の活躍は今後も期待したいものですな。彼女を主人公に、何本もお話を作れそうな気がしますね。
 【十の鐘泥棒学校メンバー】
 この「十の鐘泥棒学校」というのは、コロンビアのドン・エルネスト配下の人間ということなのだが、エスコバルのお宝を狙う勢力の一つ。れっきとした悪党軍団だが、本作ではカリを助ける側の人々として、比較的イイ人っぽく描かれている。
 ◆キャプテン・マルコのチーム(マイアミ定住組)
 ・アントニオ:チームの中では若い元US海兵隊員で、現在はプール修理人。カリが大好きで、カリを守ってあげたいと思っているとてもいい奴なのだが、残念ながら中盤で惨殺され退場。
 ・ベニート:おじいちゃんでベテラン。今は庭師としてカリとも仲良し。
 ・キャプテン・マルコ:チームリーダーでカニ漁師。アントニオとベニートを配下として、ドン・エルネストの指令で金庫強奪をもくろむ。カリに好意を抱いていて、カリを何とか守ろうと奮闘(?)。イイ人。イグナシオ、ゴメス、エステバンという手下がいる。
 ・ファボリト:ラスト近くに登場する車いすの男で、元米軍(陸軍か海兵隊か不明)爆弾処理班在籍。35歳。イイ奴。マルコの依頼で金庫に仕掛けられた爆弾を処理する役を引き受ける。どうやら爆弾処理?で負傷したらしく、普段は入院していて、その病院でイリーナという元陸軍兵士に惚れてちょっかいをかけているナイスガイ。
 ◆エルネスト本隊
 ・ドン・エルネスト:表向きはビジネスマン、なのかな、コロンビア国内では人望がある(?)っぽい描かれ方。ただし、彼の目的はエスコバルのお宝であって、カリのことはどうでもいいと思っている。ラストも、カリを変態に売ってその代り金塊を手にすることに成功、したのかな? 若干消化不良。
 ・ゴメス:ドンの側近のゴッツイ男。言動が荒っぽく印象に残る男だが、ほぼ活躍せず。
 ・ビクトール/チェロ/パコ/キャンディのUS在住チーム:エルネストの命を受け、金庫強奪ミッションに派遣される男女チーム。変態野郎チームをあと一歩まで追い詰めるが、残念ながらやられ役として全員死亡。
 【変態野郎チーム】
 ・ハンス・ペーター・シュナイダー:ドイツ系南米人。つまりナチ残党の子孫ってことなのかな。全身無毛。人体を切り刻むのが大好きな変態で、臓器売買をしている。アルカリ溶液を使って人体を溶解するマシンで死体処理をする恐ろしい変態。この変態の描写がいちいち細かく、非常にキャラは立っているのだが、このどす黒い精神の持ち主は見事昇天しますのでご安心あれ。コイツのキャラはとてもHarris先生っぽさがあると感じられると思う。
 ・フェリックス:変態ハンスに雇われた不動産屋。エスコバル邸は映画やCMのロケとかに貸し出されていて、ハンスたちが金庫を掘り出すためにレンタルしているが、その手続きなどをやっている。カリは元々エスコバル邸の管理人であったため、フェリクスとも知り合いだった。見事使い捨てにされて死亡。
 ・ウンベルト/ボビー・ジョー/フラッコ/ホッパー/ボースン/マテオ:変態ハンスの手下ども。見事昇天。
 【故エスコバルの元配下】
 ・ヘスス・ビシャレアル:かつてエスコバルの指示で、マイアミの大邸宅地下に金庫を設置した老人。厳重なトラップの解除法を知る唯一の人物だが、その秘密を変態ハンスとドン・エルネスト双方に売ろうとするが……
 ・ディエゴ・リーバ:ヘススの顧問弁護士。ヘススの隠していた図面をドン・エルネストに渡すが、細工をしていて、本当の情報を知りたければ金をよこせと脅迫する小悪党。最終的にどうなったかよくわからん。
 【その他勢力】
 ・テリー・ロブレス:マイアミ市警の刑事。どうやら変態ハンス一味に自宅を襲撃されたらしく、妻ダニエラは一命をとりとめるも脳に障害を負い、自らも負傷して休職中。変態ハンスをとっ捕まえたいが……残念ながらほぼ活躍せず。
 ・イムラン:変態ハンスの臓器売買の買手で、人体加工収集家?の変態野郎、グニスという大富豪の代理人。グニスもハンスも変態だが、このイムランも狂った変態で、ハンスが納品した腎臓を我慢できずむしゃむしゃ食べちゃう狂人。まあ、この辺はレクター博士的なHarris先生っぽさ満載ですな。出番は少ないけど強烈な印象を残す。
 とまあ、主なキャラは以上かな……とにかくページ数がそれほど多くない割に、キャラは多いですが、お話は基本的に一直線で、チョイチョイ過去の回想が交じる程度なので、それほど混乱せずに読む進められるとは思う。
 そして主人公、カリ・モーラは大変魅力的なキャラクターなのだが、カリは現在合法的(?)にUS滞在が認められているけれど、その許可証は、ちょっとしたことがあればすぐに取り上げられてしまうようなもので、これは明確に現在のUS大統領の政策を反映した、あやうい立場であることが一つのカギとなっている。しかしまあ、USAという国家は、本当に、大丈夫じゃあないですな。密輸や殺人といった犯罪行為がいともたやすく行われており、どんなに真面目に暮らそうと思っても、そのすぐ横でこうした犯罪が日常茶飯事なのだから、どうにもならんでしょうな……と、平和な日本でぼんやり暮らすわたしは他人事のように、無責任に感じましたとさ。

 というわけで、もうクソ長いのでぶった切りで結論。
 「あの」Tomas Harris先生の10年以上ぶりの新作が、ポロっと発売になったので、さっそく買って読んでみた。その作品『CARI MORA』は、これまでのレクター博士モノとは全く別の完全新作で、そのこと自体には大変興奮したのだが、内容的には、多くの悪党がお宝をめぐって争奪戦を行う悪漢小説と言っていいだろう。それはそれで面白かったし、その争奪戦に翻弄?される主人公、カリ・モーラのキャラクターは大変魅力的だったのだが……なんつうか、若干消化不良のようなものを感じるに至った。おそらくそれは、多すぎるキャラクター全てを描き切れていない点に原因があるような気がする。もうチョイ、レクター博士とクラリスのような、そしてダラハイドとウィル・グレアムのような、頭脳バトルだったらもっと面白かったんじゃないかなあ……今回の悪党、変態ハンスがイマイチ頭が良くないのが残念です。主人公カリは、クラリスに匹敵するぐらい(?)魅力的な主人公だっただけに、残念感は強いです。以上。

↓ わたしとしては『羊』よりこちらの方が好きです。
レッド・ドラゴン (字幕版)
アンソニー・ホプキンス
2015-11-05

 わたしはもうほぼ完全(?)に電子書籍野郎にトランスフォーム完了しているわけで、いわゆる漫画単行本(=コミックス)は勿論のこと、小説に関しても、ほぼすべて、電子書籍で買って読んでいる。
 理由は様々あって、もちろんそりゃわたしだって、紙の本の方が圧倒的に好きだし、とりわけ小説の場合は、読んでいる分量が実感としてすぐわかること(電子は数値として分かるが実感に乏しい)、そして、すぐに、これって前に書いてあったな……とぱらまら前の方を参照できること(電子はページめくりがめんどい)、など、紙の本の方にもアドバンテージがあることはよく分かってはいる。
 だがしかし、現代の世の中において、わたしが電子書籍を選択する最大の理由は、「本屋の衰退」にある。どういうことかというと、おおっと新刊キタ!とかいう情報を得て、本屋に買いに出かけても、「マジかよ置いてねえ……!」という事態が非常に頻繁に起こるのである。
 そうなのです。わたしが電子書籍を選ぶ理由は、勿論「いつでもどこでも買えて便利だから」とか「買った本を置く場所がいらないから」という電子書籍のメリットも理由の一つだけれど、それよりなにより、「本屋に売ってねえから仕方なく電子書籍で買う」という理由の方が大きいのである。わたしは何でもかんでもAmazonで買うような人間ではない(そもそもAmazonはKonozamaを喰らって以来憎悪していると言ってもいい)し、本屋に行くことは大好きだ。だが、悲しいことに、街の本屋がどんどん衰退して、欲しい本が置いてない!! ことがあまりに頻繁に起きるのである。
 こんなわたしが、紙の書籍を買うのは、現状では2つの場合だけだ。1つは、最も愛するStephen King大先生の作品である。これはもう、本棚にずらりと並べて悦に入りたいからという理由以外にない。ちなみに電子でも買い直すほどの信者なので、これはもうどうにもならん習性だ。
 そしてもう1つは、もう単純に「電子では販売されていない」作品を買う場合だ。残念ながら未だ電子書籍に抵抗を感じている作家先生は存在しており、紙でしか販売されない作品もそれなりに多いのが現実である。
 というわけで、以上は前振りである。
 先日、わたしがずっとシリーズを読み続けている大好きな作品「ジャック・ライアン」シリーズの最新刊が発売になったので、よっしゃキタ! とさっそく本屋に出向いたわたしなのだが……。。。
 まず、わたしの大嫌いな新潮社という出版社は、きわめて電子書籍への対応が遅れており、おそらく近い将来、破たんするのではないかとにらんでいるが、「ジャック・ライアン」シリーズの版権を国内独占している新潮社は、当然のように電子書籍で販売していない。これはおそらく、担当編集が電子書籍の権利を獲得する努力をしてないか、獲れなかったか、あるいは新潮社の方針で最初から取得しないか、理由は謎だが、US本国では普通にKindle版が発売されているので、作家の意向(作家が電子はダメと嫌がる)では決してなく、単に新潮社の怠慢・無能・無策ぶりによるものであると推察する。
 なので、やむなく紙の本を買いに本屋に出かけたのだが……びっくりしたことに、最初に行った近所の一番デカい本屋では、なんと売ってなかったのだ。驚いたなあ……だって、新聞に広告が出てた当日に買いに行ったんだぜ? 信じられないよ。店員さんに聞いてみたら、平台にぽっかり空席があって、「ああ、すみません、売り切れてしまったようです……」だって。よっぽど配本が少なかった(=初版が少ない)んだろうな……。ちなみにこれは(3)(4)を買いに行った時の話だ。そもそも、いつも全4巻に分冊し、発売をズラす無駄な販売施策も実に気に入らないね。上下本同時発売で十分だろうに。
 というわけで、今回もまた、全4巻に分冊されて2カ月分割で発売されたジャック・ライアンシリーズ最新作が、『TOM CLANCY'S TRUE FAITH AND ALLEGIANCE』である。日本語タイトルは『イスラム最終戦争』とされている。まあ、完全に原題とかけ離れた日本語タイトルだが、分かりやすさとしては仕方ないので批判はしない。が、読み終わった今、やっぱり考えてしまうのは「真の信念(TRUE FAITH)」と「その信念に忠実であること(ALLEGIANCE)」の意味だ。
 本作では、3種類の悪党が登場するが、それぞれの思惑は完全に別物で、お互いを利用して自らの「真の信念」に「忠実」であろうと画策する。
 【1.イスラムジハーディスト】
 彼らは基本的に、いわゆるイスラム原理主義者でテロリストだ。わたしはその「原理主義」たるものに詳しくないので、彼らの行動がその主義とやらに忠実なのか、実は良くわからないのだが、憎しみと殺意に支配されている時点で、彼らを容認するわけにはいかないと思う。あまりに原始的すぎるというか……人類としてなんらかの進化が遅れているのではなかろうか。
 【2.ソシオパスのハッカー】
 そしてジハーディストたちに、US市民のパーソナルデータを渡すハッカー的人物の目的は、ズバリ「お金」である。幼少期の体験から、金こそすべてと思い込むようになり、USAという国家に深い恨みを抱いていて(その理由は自分にあるので完全なる逆恨み)、US国家を痛めつけることが最高に楽しいイカレたガキ。自らのことしか考えない完全なる反社会性パーソナリティー障害者。同情の余地は一切ナシ。
 【3.国家の利益のために暗躍するサウジアラビア人】
 彼は、ハッカー的人物からの情報をジハーディストに渡す仲介者なのだが、その狙いは実に単純で、現在US国家は石油を自家生産できるようになってしまい、アラブの油が必要なくなっちゃったわけで、原油価格は下落しているわけだが、サウジとしてはそれは(これまでのオイルマネーに守られた贅沢三昧の生活を続けるためには)死活問題なわけで、原油価格を吊り上げる必要があるわけだ。その手段として、USにはIS討伐のための全面戦争をしてもらい、イラク~シリアに地上部隊を派兵させたがっている。また、スンニ派のサウジにとってシーア派のイランは敵なので、US派兵はイランへのけん制にもなると。こうして考えると、国家戦略としてはまっとうのようにも思えるが、まあ、アウトですわな、世界の平和のためには。
 というわけで、これらの悪党どもに共通するのは、自らの「信念」に「忠実」であるためには、他人の犠牲は厭わない、つまり自分以外はどうでもいい、という思考だ。そういった自己の利益のみを追求し、あまつさえ殺人もいとわないという姿勢こそが、「悪」と定義せざるを得ないのだろうと思う。残念ながら現代の人類社会においては、容認できないものだ。
 そして一方、彼ら悪党と戦うのが、われらがジャック・ライアン大統領と「ザ・キャンパス」のごく少数のキャラたちである。本作およびこのシリーズを読んで、いつも思うのは、こんなたった数人のチームに守られているUSAって、どうなのよ? というぐらい、ダメ官僚が登場するし、明らかに違法というか超法規的な活動をするわけだが、ま、フィクションだし、読んでて痛快だから深く突っ込まなくていいんすかね。それにしても今回もまあ、数多くの人々が死んでしまい、大変痛ましいのだが……なんというか、本当にUSAという国はもうダメなんじゃないかと思うすね。
 しかし、彼ら正義の側と描かれる人々も、敵に対しては容赦なく、裁判なしでぶっ殺しまくるわけで、実は悪党どもと同じなんじゃないの? 何が違うの? という問いも当然投げかけずにはいられない。悪党は問答無用で殺していいのか? 単に信じるものが違うだけ、「信念」の違いだけで悪党どもを「悪」断罪し、自らを「正義」としていいのか?
 おそらく、彼ら主人公サイドの「信念」とそれに「忠実」であろうとする姿が一番の問題なのではないかと思う。そしてそれは何かと問われれば、わたしが思うに、彼らが信じるものは、たった一つで、「合衆国憲法に従うこと」がかれらの「信念」なのではなかろうか。
 実のところ、わたしは「合衆国憲法」を読んだことなんてないので、その内容は全く知らないのでその是非は問題としないが、少なくとも国際的に認められた国家であるUSAが定め順守している憲法は否定できないわけで、それを守り従うという「信念」もまた、否定できないし、悪とは思えない。
 そもそもUSAという国家は移民で成り立つ多民族国家なわけで、何をもってアメリカ人と規定するか、これって答えられますか? わたしは以前観た『BRIDGE OF SYPIES』という映画で、Tom Hanks氏演じる主人公がこう言ったのがとても印象に残っている。
 「アメリカ人とは、合衆国憲法を尊重・遵守する人のことを指すのだ」
 まあ、要するにそういうことなんだと思う。実際の行動は相当超法規的で「法律」からは逸脱しまくっているけれど、「憲法」は尊重し遵守しているからセーフ、なんでしょうな。ま、実にギリギリセーフというか若干アウトなのは大問題だけれど、人殺しを放置していいわけがなく、無責任な読者としては、悪党が殺られれば心の底からざまあとスッキリするわけで、そう言った点において、やっぱりエンタテインメントとして本作はとても面白かったと思う。
 というわけで、主なキャラをまとめて終わりにします。つうかキャラが多すぎるので、ごく少数にまとめたいけど無理かな……。
 ◆ジャック・ライアン:現役合衆国大統領。結構すぐにブチギレるけれど、まあ、ブチギレる事態が勃発しすぎてお気の毒です。どうやら任期もあと2年なのかな? 引退生活を待つ望むおじいちゃんキャラになりつつある。同盟国に圧力かけまくりで押し通すパワーは、US市民としては頼もしいのでしょうな。イランと中国とロシアが大嫌い。
 ◆ジャック・ライアン・ジュニア:大統領の長男で「ヘンドリー・アソシエイツ」に勤務する青年。かの名作『Patriot Games』事件の時、お母さんのおなかの中にいたのがコイツですな。基本的にゆとり小僧だが、前作でやらかして、現場工作員(戦闘員)からは離れ、本職のデータアナリストになるかと思いきや……本作でももちろん、戦闘に参加します。
 ◆「ザ・キャンパス」のメンバー:「ザ・キャンパス」とは、ヘンドリー・アソシエイツ(表向きは金融業)の真の姿で、政府機関に属さない独立諜報組織で戦闘行為も得意技。働いている人数は数百人(?)いるが、現場に出て工作活動(戦闘行為)に従事するのは、本作の開始時点では、クラーク、シャベス、ドミニク、ジュニアの4人で、クラークは指揮官として現場引退しているし、ジュニアもなるべく現場に出したくないので、実質的にはシャベスとドミニクの二人だけになっちゃった。元々はドミニクの双子の兄であるブライアン、それからブライアンの補充で入ってきたUSレンジャー(だっけ?)出身のサム・ドリスコルというキャラがいたのだが、二人とも残念ながら殉職してしまったのです。なので、本作では冒頭、人員補充が急務ということで二人の候補者が出てくる。なお、その候補者を挙げる時に、ジュニアはCIAのアダム・ヤオ君(米朝開戦などで大活躍したナイスガイ)を推薦するのだが、メアリ・パットと現CIA長官のキャンフィールドに、アダムはダメ、あげない! と拒否されたのが残念でした。というわけで、新たに「ザ・キャンパス」工作員チームに入ったのが……
 ◆ミダス:『米露開戦』かな、一度登場した男で、元US-Armyデルタフォースの指揮官。38歳。退役後、CIA入りを希望していたけれどポーランド系ということでCIAの身元調査が遅れていて、その隙にシャベスが推薦、クラークが直接スカウトに。本作では新人ということで活躍は控えめでしたが、かなり強そうな頼れる男っぽいすね。次回作以降の活躍を期待します。
 ◆アダーラ・シャーマン:ご存知「ザ・キャンパス」の運輸部長兼衛生兵兼兵站担当の超絶美人女子。ついでに言うとドミニクと付き合っているが、そのこともあってドムは本当は推薦したくなかったのだが……能力はもうずば抜けていることは我々読者にはお馴染みなので、とうとうアダーラも現場出動となってしまうのは、男としてはドムの心配もわかるだけに若干心配す。アダーラも今回はそれほど活躍せずでしたかね。
 ◆ISの悪党たち:普通の日本人的には驚きなのだが、今回、US国内でのテロを行うのは、ISのイエメン人に率いられた、れっきとしたUS市民なんだな。そいつらが原理主義に傾倒して、志願し、訓練を受け、テロリストとしてUS国内に戻って悪事を働くわけだが……その心理は全く理解できないすね。それはもちろん、わたしがここ日本で平和にボケっと暮らしているからなんだろうけど、彼らは例えば親しい隣人が巻き込まれることになっても、自爆ベストのスイッチを押せるものなのだろうか。わからない……とにかく、欧米諸国にはなるべく近寄らない方がいいんだろうな、としか思えないすね。誰がイカレたテロリストか分からないもの。まあ、無事に彼らは掃討されるので、良かった良かったということになるけれど、それにしても今回は犠牲者が多すぎますよ……。。。
 ◆アレクサンドル・ダルカ:ポーランド人。問題のソシオパス・ハッカー。まあ、「邪悪」と断ずるしかないでしょうな。でも、コイツは実のところハッカーではなくて、大量の個人情報ファイルをハックしたのは中国の依頼を受けた別の会社で、その会社からデータを盗んだのがこのダルカの勤めている会社で、ダルカは、そのデータをもとに、SNSなどの公開情報を使って、その人物の「現在」を割り出す作業をしていたわけですが、一番恐ろしいのは、SNSで自分や周りの人の情報を平気でさらし続けている一般ピープルなんだろうな、と思う。ホント、個人情報を平気でインターネッツに垂れ流し続ける人々の神経が理解できないですな。まあ、このダルカも無事にキッツイ運命に放り込まれたので、心の底からざまあであります。あのお仕置きはヤバいすね……どんなことになるかは是非本作をお読みください。
 ◆サーミ・ビン・ラーシド:サウジアラビア人。すべての元凶と言っていい悪党だと思うが、一方で前に書いた通り、自国の利益を最大化することに邁進しただけ、でもあって、そういう意味では有能な人物とも言えるかも。しかし現実世界では、USAとイランは超仲が悪いわけですが、サウジともいろいろあるんでしょうな。ジャーナリストを自国の大使館に拉致してぶっ殺す恐ろしい国だしね。この国にも行きたくはないですな。
 
 とまあ、この辺にしておきます。
 最後に、著者のMark Greaney先生について一言書いておくと、Greaney先生と言えば、わたしの大好きな『暗殺者グレイマン』シリーズの著者で、そっちの新刊もわたしは心待ちにしているのだが、なんと本作をもって「ジャック・ライアン」シリーズからは引退されるそうです。急逝されてしまった巨匠、Tom Clancy先生の後を継ぎ、ここまでシリーズを書き続けてくださって本当にありがとうございましたと申し上げたいすね。プレッシャーもすごかっただろうし、ホントにお疲れさまでした。ま、本シリーズは今後別の先生が引き継いで書いてくれることが確定しているので、そちらも楽しみにしつつ、Greaney先生の『グレイマン』新作も楽しみに待ちたいですな。『グレイマン』シリーズはわたしの大好きな早川書房から出ており、当然電子書籍版も発売されるので大変ありがたいす。また夏かなあ、次の新刊は。とても楽しみっす!

 というわけで、書いておきたいことがなくなったので結論。
 わたしがもう20年以上読み続けている「ジャック・ライアン」シリーズ最新刊『TOM CLANCY'S TRUE FAITH AND ALLEGIANCE』の日本語訳が『イスラム最終戦争』という捻りのないタイトルで発売になったので、さっそく買って読んだのだが、まあ、結論としてはちゃんと面白かったと思う。しかしなあ、もうライアン大統領は中国はやっつけたし。北朝鮮もブッ飛ばし、ロシアも片づけたわけで、今回のIS掃討が完了した後の敵はどこになるんでしょうかねえ。おおっと!? なんだ、もう本作の後に2作発売されてるじゃん!! ホント、新潮社の仕事はおせえなあ! しかもだぜ? 次作の『POWER AND EMPIRE』の相手はまた中国、そして舞台は今月開催のG20サミット(どうやら作中では大阪じゃなくて東京開催っぽいね)じゃねえか! 新潮社!! 今出さなくてどうすんだよ!! あーあ、さっさとシリーズの版権を早川書房様が獲得しないかなあ……というどうでもいい情報で終わりにします。以上。

↓こちらが次作、みたいすね。はあ……今すぐ読みたい。原書で読むしかないか……。

 はーーー……面白かった……。
 そして、もうくどいけど、何度でも言います。
 わたしが世界で最も好きな小説家は、Stephen King大先生である!
 というわけで、先週買って来たKing大先生の日本語で読める最新刊『REVIVAL』を実質4日で読み終わってしまった……はーー……ホント、終わりそうになると、もう終わりか……と悲しくなっちゃうわたしだが、もちろんのこと結末を読みたい気持ちに勝てるわけもなく、あっさりと最後まで読み切ってしまったわけだが、のっけから結論を言うと、超面白かった! けど、若干ラストの後味はビターというか、何となくモヤッとしているのがアレかなあ……と感じている。
 まずはもう一度、買ってきたときに興奮しながら張り付けた書影をのっけとこう。そして、以下は完全にネタバレに触れると思うので、まだ読んでいない人はここらで退場してください。
revival
 しかし、改めて思うに、この日本語タイトルは、極めて微妙というか、ギリギリOK、な気がしている。確かに、日本語として『心霊電流』といわれると「な、なんだそれ!?」と、とても興奮するのは間違いない。そういう意味ではいい日本語タイトルじゃん、とは思う。おまけに、最後まで読み終わった今となっては、たしかに内容には合致しているとも言えそうだ。
 でもなあ……US原題の『REVIVAL』から遠すぎるというか……まあ、対案が出せない言うだけ詐欺なので、タイトルに関してはもう何も言うまい。いずれにせよ、さっさと文春が日本語版を出してくれたことには感謝したいが、それでも、やっぱり遅いんだよな……ちなみに本作『REVIVAL』は、去年大興奮した『END OF WATCH』より前の2014年に刊行された作品で(END OF WATCHは2016年刊行)、既にもう長編は2作品発表されているし、今年の9月にもさらに新刊が予告されているので、文春でもどこでもいいから、さっさと日本語化してもらいたいものだ。つうか、やっぱり英語で読めってことかも知れないな……。
 ともあれ。
 本作『REVIVAL』は、久しぶりに(?)King大先生ワールドにかかわる若干ホラーチックな部分のある作品で、わたしとしては大変楽しめたわけだが、冒頭に書いた通り、エンディングは若干モヤッとしている。物語としては比較的単純で、本作は現在(2017年かな?)60歳を超えた男が、6歳のころからの人生を振り返る年代記的なものである。そして6歳の時に出会った牧師がその後何度も主人公の人生に現れ、謎の「電流治療」を行うことによって起こる、謎の現象が物語のキーとなるお話で、一体全体、この「電流治療」によって牧師は何を求めているのか、がカギとなっている。ちなみに牧師は、主人公と出会った3年後に牧師を辞めちゃうので、正確には牧師じゃない、つうか、神を憎むようになってしまうけど。
 で。わたしが読んでいてい一番困ったというか、むむ?? と何度も前に戻って確認してしまったのは、回想が結構飛び飛びに語られていて、え、じゃあ、アレはこの事件より後? とか、編年体で描かれていないのが若干読みにくかったような気もする。いや、読みにくさはないんだけど、サラッと読んでいると、ふと、じゃああれって……と、気になってしまうのだ。
 わたしは、つい頭にきて、おもわず年表を作ってしまったほどなのだが、その年表は、あとで乗せようと思います。その年表の前に、登場人物をまとめておいた方がいいと思うので、最初はキャラからまとめてみよう。
 ◆ジェイミー:主人公。5人きょうだいの末っ子。物語の冒頭の1962年時点で6歳(8月生まれなので冒頭の10月には6歳にすでになってる)。後にミュージシャンとなるも、ドラッグ漬けのダメ人間となるが、1992年にジェイコブス牧師と再会、謎の「電流治療」を受けてドラッグ依存から回復。その後音楽スタジオに就職するが、ジェイコブスとの縁は最後まで切れず、とんでもないエンディングへ……。
 ◆ジェイコブス:ジェイミーと初めて会った時は牧師。当時25歳ぐらい?らしい。そしてその3年後、大変な悲劇に遭い、信仰を捨てる。その後は、自らを魅了してやまない「神秘なる電気」の研究をしながら全米を放浪し、各地で見世物的な奇術師→インチキ霊能牧師となって多くの人を「治療」することで金を稼ぐ(そしてその金は全部研究につぎ込む)。そして、ついに稲妻の電流パワーと、自らの命を代償として「その先」を見ることに……。ズバリ、ネタバレですが、なんと「妖蛆の秘密」まで言及され、まごうことなきクトゥルフ展開となって超絶衝撃的!! 本作は冒頭に多くの作家への献辞がささげられてますが、もちろんラヴクラフト大先生の名もあって、まさかの展開でした。そして献辞の作家の筆頭に挙げられているのはメアリー・シェリー。もちろん、「フランケンシュタイン」ですな。その意味も、本書を読めば理解できます。
 ◆クレア:ジェイミーのお姉ちゃん。5人きょうだいの一番上。わたしの計算では多分8つ年上。美人でやさしいが、のちに悲しい運命に……(※ただしクレアの悲劇は本筋には関係ない)。どうでもいいけど、本書では「姉貴」と訳されていたけど、わたしなら「姉さん」と訳しただろうな……。みんなの自慢のお姉ちゃんなので、なんとなく雰囲気的に。
 ◆アンディ:ジェイミーの兄(5人きょうだいの2番目)。わたしの計算ではたぶん6つ年上。信仰心の篤い男。ほぼ出番ナシ。のちに51歳でガンで亡くなる。
 ◆コンラッド:ジェイミーの兄(5人きょうだいの3番目)。通称「コン」。4つ年上。兄弟では一番よく言及される。頭がイイし、運動神経抜群。のちにハワイの天文台勤務。最後まで存命。4つ上。
 ◆テレンス:ジェイミーの兄(5人きょうだいの4番目)。通称「テリー」。2つ年上。一番父になついていて、現在実家を継いで故郷のメイン州ハーロウに住んでいる。ちなみにハーロウは、King大先生作品でお馴染み「キャッスル・ロック」のすぐそば。
 ◆父と母:父は年齢不明だが80過ぎまで生きた。燃油販売業を興した人で、かつては貧しいこともあったがその後は裕福に。母は1977年ぐらい(?)に51歳でがんで死去。
 ◆アストリッド:ジェイミーの初恋の女子で初体験の相手。可愛く美人。結構イケイケ系。大学入学で付き合いは自然消滅。しかし2014年に約40年ぶりに再会することに……
 ◆ヒュー:ドラッグを克服したジェイミーが就職したスタジオの社長。実はヒューも、1983年にジェイコブスと出会って「治療」を受けていた。
 とまあ、主な重要人物としては、上記で十分かな。
 で、出来事を年表にまとめたのが以下です。どうTableタグを駆使してもスマホで閲覧するとガタガタになっちゃうので、頭にきてJPEG画像にしてみた。
REVIVAl_year_l
 USの学校は9月はじまりだし、誕生月の影響もあってか、どうもズレているような気がするけど、大体合ってるのではないかと思う。
 さて、もういい加減クソ長いので、以下にわたしが思ったポイントをまとめて終わりにしよう。そのポイントとは、ズバリ言うと「King大先生ワールドとの関連」である。
 1)JOYLANDとの関わり
 上記の表に書いた通り、なんとジェイコブスは一時期JOYLANDでも奇術師的なショーをやっていた模様。それがいつのことかは書いていなかったが、小説『JOYLAND』で主人公が学生時代に働いていたのが1977年だったと思うので、すれ違っていたかも、である。わたしは、ひょっとして『JOYLAND』にジェイコブスがチラッと出てたのかな? とか思って『JOYLAND』をパラ見してみたけど、どうも存在は確認できずであった。
 2)Itとの関わり
 どうやら、ラストに現れる謎の昆虫めいた存在は、「It」なのかもしれない。わたしはその展開に大興奮して、はっ!?と年代に注目したのだが(そのために上記年表を作ってみたともいえる)、『It』の子供時代編が1958年、大人編が1985年なので、ドンピシャでは全然なかった。そして1985年から「27年後」は2012年なので、これも若干ズレている。なお、2年前公開されてウルトラ大ヒットとなった映画版『It』は子供時代編が1988年に変わっていたけど、それとも一致せずでした。なので、だから何だという結論はないけど、なにも「It」がメイン州デリーだけにいたとは限定出来ないかもしれず、とにかくわたしとしては「It」の登場に、やっべええ!!と大興奮したっすね。
 3)その他の作品との関わり
 まあ、謎の邪悪な存在が「日常のすぐ隣にいる」的な世界観はKing大先生にはお馴染みの設定で、本作のクリーチャー的存在でわたしが思い出したのはやっぱり『The Mist』や『From a Buick 8』あたりの作品だ。そして本作で言及された『妖蛆の秘密』は、『Salem's Lot』での重要アイテムでもある。
 しかし、電流による覚醒(?)によって「何かが起こり」、その世界への扉が開いちゃう的な展開は、わたしとしては超最高だとは思ったものの、本作は開いた扉を慌てて閉じて、ふーーあっぶねえ……で終わってしまったわけで、その、ふみ込み具合がわたしとしては若干物足りないというか、モヤッと感じた最大の要因のような気がする。
 本来?と言うのもおかしいけれど、エピローグで語られる「治療」経験者たちのその後、の方が事件として興味深くて、主人公がそれを知って、探っていくうちに、少年時代のあの牧師の存在が明らかになって、その謎を解き明かしていく――的な流れもアリだったのではなかろうか。つうか、どうもエピローグで「その後」をさらっと流されちゃったのが、少し物足りないような気もするんだよな……。
 そして思うに、ジェイコブスは狂っていたとはいえ、誰だって、亡くした愛する者のREVIVAL=復活につながるなら、何にだってすがるんだろう。そもそも死者のREVIVALというモチーフは『PET SEMATARY』でもKing作品ではおなじみだし。ジェイコブスの場合は、たまたまそれが「神秘なる電流」だっただけで、おまけにそれが人の謎パワーを増幅して病気を治してしまうと知ったら、そりゃ使うだろう。たとえそこに、深刻な後遺症があっても。結局、本作ではその後遺症についての明確な解明はなかったように思える。一度でも「向こう側」と繋がっちゃったら、絶望して生きていけなくなるってことなのかな……わたしとしては、その後遺症をもうチョイ深く描いてほしかったような気がします。
 ま、とはいえ、やっぱりKing大先生の描く「少年時代の回想」というのはめっぽう面白かったので、結論としては大満足、であります。

 というわけで、もうクソ長いので結論。
 わたしが世界で最も愛する小説家、Stephen King大先生の日本語で読める最新刊『REVIVAL』(日本語タイトル「心霊電流」)が発売になったので、即買って読んだところ、結論としては超面白かったと言いたい。が、若干のもやもやが残るエンディングで、超傑作判定は出来ないかな……。ただ、この物語はとても映像映えすると思いますね。映画あるいはTVシリーズになるような気がします。なんつうか、わたしとしては若干ジェイミーのキャラに反感を感じたのかな……イマイチ好きになれない奴であったような気もする。むしろジェイコブスの方が共感しやすいような……宗教なんて、安心を与える生命保険と同じだ、というセリフには考えさせるものがありましたな。まあ、いろいろ書いたけど、結論としては、KING大先生のファンならば、今すぐ本屋へ行って買って読むべきだと思います。文庫化を待っても意味ないすよ。数百円しか違わないし、そんなの特急料金と思えば、今すぐ読んで興奮する方をお勧めします。わたしはすっかり電子書籍野郎に変身しましたが、本作は電子書籍だとさらにお安く買えます。が、わたしはKING大先生の作品は本棚に並べて悦に入りたいので、紙の書籍で買いました。ぜひ、紙でも電子でも、今すぐ読んでいただきたく存じます。以上。

↓ このところ、電子だと紙より200円以上安い本が多いんだよな……。お好みでどうぞ。
心霊電流 上 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2019-01-30

心霊電流 下 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2019-01-30

そしてすでに発売済み、だけど日本ゴミ翻訳はこちらの2作です。あらすじが超そそる……早く読みたい!!
Sleeping Beauties (English Edition)
Stephen King
Hodder & Stoughton
2017-09-26

The Outsider (English Edition)
Stephen King
Hodder & Stoughton
2018-05-22








 このBlogでもう30回ぐらいは書いていると思うが、今回も言おう!
 わたしが世界で最も好きな小説家は、Stephen King大先生である!
 そして日本語で読める最新刊が1/30(水)発売と、文春から発表されたときの喜びは極めて大きく、昨日本屋に寄ったら思いっきり売っていたので、さっそく買ってきたのであります! やったーー! 超嬉しい!!
 US原題は『REVIVAL』。わたしは今回、まったくどういう内容の作品か、あらすじすら読まずに買って、読み始めているのだが……相変わらずヤバイすねえ! この、日本語タイトルをご覧ください!
revival
 なんと文春から発売された日本語版は、『心霊電流』という、超そそる謎のタイトルになっております!! 心霊……電流……な、なんのこっちゃ?? US原題の『REVIVAL』と併せて考えると……復活的な? 電気でビリビリ的な……? と全く謎の妄想がわきますが、現在<上巻>の90ページほどを読んでいる段階で、とある人物が電気にやけに詳しいというか、電気に並々ならぬ興味をもっていて、そしてはやくも超悲劇が勃発しており、こ、こいつはページをめくる手が止まらねえ! 状態になりつつあります。
 というわけで、今日は、都内のデカい本屋さんならもう売ってるよ!の第一報まで。そして、ヤッバイほど面白そうな展開で興奮が止まらん! 状態であることのご報告でありました。

 というわけで、さっさと結論。
 わたしが最も愛する小説家Stephen King大先生の日本語で読める新刊『REVIVAL(日本語タイトル「心霊電流」)』が発売になっていたので、さっそく買って読み始めたわたしであります。実は、発売を知ったのは、わたしが愛用する電子書籍販売サイト「BOOK☆WALKER」から、新刊出ますよメールが先週届いたためなのだが(ありがとうBW!)、当然、King大先生の作品は紙で、単行本で、出たらすぐ!買うことにしております。なぜって!? そりゃあもう、早く読みたくて我慢できないからですよ! 文庫化まで待ってられんのです!! 特急料金として高くてもいいんだよもう。それではお先に堪能させていただきまーす! 以上。

↓ もちろん電子版は発売日がきっちり守られており、配信は明日1/30からです。そして電子版の方が200円以上安いみたいです。でもわたしは本棚に並べて悦に浸りたいので、King大先生作品だけは「紙」っす!
心霊電流 上 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2019-01-30

心霊電流 下 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2019-01-30

 いやーーー最高に面白かったすねえ!!
 というわけで、時間がかかってしまったけれど、やっと読み終わりました。なんのことかって? そんなのコイツのことに決まってるでしょう!! わたしが世界で最も愛する小説家、Stephen King大先生の、日本語で読める最新作、『END OF WATCH』のことであります!! ちょっともう一度、わたしが撮影した書影を貼っとくか。これっす!
endofwatch
 もう既にこのBlogで何度も書いていることだが、本作はKing大先生初のミステリー「退職刑事ビル・ホッジス三部作」の3作目であり、堂々の完結編だ。そしてお話は、前作『FINDERS,KEEPERS』のラストで示されたというか、予感させた通り、なんと! シリーズ第1作の『Mr. MERCEDES』でブッ飛ばしてやった犯人であるあのクソ野郎が大復活し、またもや邪悪な行為を開始するというものだ。そのメインプロットはもう最初から分かっていたけれど、かなり予想を超えた展開で、もうホントにハラハラドキドキが止まらない最高の物語でした。
 つうかですね、今回のラストは泣けたっすねえ……そしてタイトルの意味が最後に明確になるところでは、わたし、ホントに眼に涙がこみ上げてきちゃったすわ……。
 さてと。
 ところで、King大先生のファンならばもうお馴染みだと思うが、わたしはKing大先生の作品を、以下のような感じに分類できると思っている。それは、2つの軸によって4つに分けられるとわたしは考えているのだが、その2つの軸とは、「黒キング or 白キング」という軸と、「SUPER NATURAL要素アリ or ナシ」という軸だ。
 図にすると、要するにこういうことである。 
SUPER NATURAL
な存在・現象・能力
アリ
SUPER NATURAL
な存在・現象・能力
ナシ
黒キング作品
どす黒い「邪悪」
との対決物語
【A象限】
UNDER THE DOME
IT、THE STAND
DR.SLEEP など多数
【B象限】
MISERY
Mr. MERCEDES
FINDERS,KEEPRESなど
白キング作品
読後感爽やかな
感動物語
【C象限】
11/22/63
GREEN MILE など
【D象限】
THE GIRL WHO LOVED TOM GORDON、
JOY LAND
など
 まあ、上記の分類には、異論を抱く方もおられるだろう。実のところわたしも、この作品はここでいいのかな、とか、若干迷いながら書いたし。『JOY LAND』なんかは実際には【C象限】に含めるべきかもね……など、明確には分類できないとも思う。しかしわたしがなぜこんな分類をしてみたのかというと、明確な理由がある。それは、この「ホッジス三部作」は、1作目の『Mr. MERCEDES』2作目の『FINDERS, KEEPERS』の作ともにSUPER NATURAL要素ナシの【B象限】に属していたのに対し、第3作である本作『END OF WATCH』では、ついに! SUPER NATURAL要素が極めて重要な要素として混入してきたのである! しかも、敵は、まさしくウッドチャックのケツの穴並みに真っ黒な、邪悪の化身であるので、これはもう、明確に「黒キング」作品なのだが、前述のように、泣けちゃったほどの感動物語で、わたしとしては「白キング」作品にも入れたい、と思えてしまうのだ。こういう、SUPER NATURAL要素アリで、邪悪との対決を描き、ラストは感動で泣ける、という作品は、わたしとしては『THE DEAD ZONE』以来のように思えてしまい、そこにわたしは大変興奮しているのであります。いやあ、ホンットに面白かったす!!
 どうしようかな、物語を簡単にまとめておこうかな……まあ、物語は、シリーズを読んできた方ならば、既に上の方に書いた「あのメルセデス・キラーが大復活! そして再び邪悪な計画が実行に移される!」というだけで十分かもしれないな……。これまた上にも書いたことだが、第2作のラストで、その予告というか予感はさせていたのは、誰しも記憶していることだろう。前作ラストで、事件が終結し、主人公ホッジスがアイツの病室を訪ねた時の描写で、どうやらあのクソ野郎に謎の超能力が発現した……のかも!? 的エンディングは衝撃であった。
 そしてその予感は、本作で現実のものとなってしまったのです。第1作でホリーに頭をブッ叩かれ、脳に深刻なダメージを負って病院送りとなったメルセデス・キラーことブレイディが、なぜそんな謎能力に目覚めたのか。それは本作では明確? には語られない。脳がシェイクされて再組成された結果かもしれないし、バカな医者のバビノーによる新薬実験の結果かもしれない。しかし、原因よりも、あの邪悪なブレイディが念動力めいたパワーを得てしまったという結果がマズいわけで、もうこれはヤバいこと請け合いである。さらに、ちょっとしたものを動かせるだけでなく、他人の脳みそに入り込んで、「人間リモコン」として自由に動かせるようになっちゃうのだから、さあ大変だ! しかも、我らが主人公ホッジスは、もうかなり冒頭でガンに蝕まれていることも判明する。もう70歳直前という年齢のお爺ちゃんだし、ガンの痛みもあって、動きもままならない。果たしてそんな状態のホッジスは、「自殺の設計者」ブレイディを阻止できるのか―――!? というハラハラドキドキのストーリーであります。サーセン、ダメだ、ネタバレなしには書けないので、気にする方はここらで退場してください。
 というわけで、以下、キャラ別に思ったことを羅列していきたい。
 ◆ビル・カーミット・ホッジス:シリーズの主人公。元刑事。1作目の『Mr. MERCEDES』の最初の事件が起きた時は2009年で(物語自体は2010年ごろ?)、2作目の『KEEPRES,FINDERS』が2014年だったかな(※2作目では登場シーンも少なくそれほど活躍しない)。そして今回の『END OF WATCH』が2016年のお話である。まあ、ホッジスは退職後、燃え尽き症候群的な精神的どん底にあったところで、メルセデス・キラーから自殺を誘惑するような手紙がきて、再び闘志を燃やして生きる道を見つけたわけだから、ある意味、第1作目の事件が起きたことに救われたともいえるような気がする。
 今回は、既に69歳、体の異変が起きていて(そもそも第1作ラストでは肝心な時に心臓発作でブッ倒れていた。以後、ペースメーカー着用)、もうかなり序盤で、今回の事件をもってホッジスは天に召されるのだろう、というのは誰しも感じたことだろう。そしてその最後の命の炎も、メルセデス・キラーの再登場によって燃え上がったわけで、その最終的な決着には、まさしくタイトル通り、「END OF WATCH=任務終了」という言葉がふさわしいと思う。ラスト、ホッジスの墓標にそのEND OF WATCHという言葉が刻まれているシーンには泣けたっすなあ……見事な、まさしく、大団円、であったと思う。おそらく、本作は明確にドス黒い邪悪との対決が描かれている「黒キング」作品なのに、それでもこれはやっぱり「白キング」作品に入れたい、とわたしが感じるのは、このホッジスを中心とした「善」の側のキャラクターたちがとても生き生きしていて、そんな彼らが多くの困難ののちに明確に勝利し、爽快な読後感をもたらしているためではないかと思う。
 ◆ホリー・ギブニー:そして、その「白キング」感を一層高めるのに貢献しているのが、ホリーの存在だ。ホリーは第1作目で、ホッジスがイイ仲になる女性の姪で、40代なのだが、精神的に不安定で問題のある女性だ。そんな、超人見知りで、常にビクビクオドオドしていたホリーが、シリーズを追うごとに成長していき、どんどん魅力的になっていくのが読んでいてとてもうれしいんすよね。
 今回もホリーはホントに成長しましたなあ……そして得意技のPCスキルでもちゃんと活躍してくれるし、ホッジス亡き後の「ファインダーズ・キーーパーズ探偵事務所」は任せたぜ。ラストのジェロームとの会話は、ホント、グッと来たっすわ……。
 ◆ジェローム・ロビンスン:第1作の時点では高校生、そして第2作目でハーヴァードに進学した頭が良くて性格もイイ、完璧イケメンの黒人青年。ホリーが成長できたのはホッジスと君のおかげだよ。今回、ジェロームはハーヴァードを休学して、NGO活動をして遠くに離れていたのだが、妹のバーバラが狙われたこと、そしてホリーからホッジスのガンのことを聞いて急遽実家へ戻ってくる。なので出番は後半から。そしてラストでは、当然ここでジェロームの出番だろ、というタイミングで登場して、ホッジスとホリーを助けてくれるナイスガイ。まあ、君はモテるだろうけど、ホリーのことも見守ってやってくれよ……。とにかく、ホッジス&ホリー&ジェロームの三人組は、King大先生の作品史上、とても心に残る「善」のチームでした。ああ、もうこれから新作が出ないなんてホント残念す……。
 ◆ブレイディ・ハーツフィールド:悪名高き「メルセデス・キラー」。第1作のラストで、コンサート会場を爆破しようとした1秒前に、ホリーにボールベアリングを詰めた靴下(ホッジス愛用の武器「ハッピースラッパー」)で思いっきり頭をぶん殴られ、あえなく逮捕、そして昏睡状態のまま病院に拘留された。恐ろしく邪悪で、ドス黒い精神がねじ曲がったクソ野郎で、その後、第2作目では目を覚ましたことが描かれるけれど、完全に脳が破壊されて自力では動けない、言葉もしゃべれない、単に目を開けているだけの廃人、だったはずだが……前作ラストで、なにやら念動力めいた謎パワーを授かっていることが描かれ、我々読者としては、な、なんだってーー!? と大興奮したわけだ。
 今回、フレイディは「他人の脳みそに侵入して自由に動かす」謎能力で、またもや多くの人を自殺に追い込み、大量殺人を実行するのだが、第1作では、たとえばジェロームの家の愛犬をぶっ殺そうと、毒入りハンバーグを準備したのに、それをブレイディが唯一愛するお母さんが夕食に食べちゃって死ぬとか、意外とバカな男だったのに、今回のコイツの計画は、かなり手が込んでいて(何しろ計画を立てる時間だけは存分にあった!)、しかも、おそらくは科学的に立証するのが非常に難しため、こりゃあ、コイツが何かミスをしないと、ホッジス達に勝ち目はないのでは? と相当ドキドキ感は高かったと思う。実際、ブレイディの犯したミスは、フレディの死を確認しなかったことだけだろうし。まあ、最終的に、やっとコイツとの決着がついて、ホントスッキリしたよ。あばよ、悪党!ですな。
 ◆フェリックス・バビノー:ブレイディの謎パワーで精神を乗っ取られ、その肉体は主犯の実行犯「ドクターZ」として操られることになる医者。元々、ブレイディを被検体として新薬実験とかをしていた医師で、まあ、あまり褒められたところのない金持ちで嫌味なおっさん。なんとなく、ハンニバル・レクター博士を利用しようとしていたドクター・チルトンに似てますね。なので、大変気の毒なことになるけど、あまり同情する気になれないす。実際、嫌な人でした。
 ◆アル・ブルックス:「図書館アル」と呼ばれ、病院内で入院患者に本を配ったり雑用をこなしていた老人。彼は何の落ち度もなかったのに、ブレイディにちょっと優しく接していた?がために、精神を乗っ取られ、実行犯の一人「Zボーイ」に変身、そして散々な目に。彼はかわいそうな方でした。その最後も実に気の毒……。
 ◆フレディ・リンクラッター:名前からはイメージしにくいけど女性です。おまけにフレディとブレイディが名前が似ていて紛らわしい! 本人曰く「レズでタチ」ですが。彼女は第1作に出てきた、ブレイディの元同僚でPCオタク。今回、精神を操られながらも金目当てにブレイディの悪事に協力してしまう。その手口が凄くて、「ザビット」という倒産した会社が作っていた携帯ゲーム機を利用して、使用者の深層心理に働きかけ、精神をのっとり、自殺を促すという極めて邪悪なやり口。それを拡散する手伝いをすることに。そして最終的にはドクターZに撃たれるのだが、辛くも命は助かり、ホッジス達に情報提供することに。まあ、この人は操られていたとはいえ、善人ではないですな。
 ◆ピート&イザベラ:ピートは刑事時代のホッジスの相棒で、まだ現役だけど退職間近。そしてイザベラはピートの現相棒の女性だが、コイツがバカなんすよね……。この女刑事が有能なら、もう少し被害は少なかったのにね……。
 とまあ、主なキャラクターは以上かな。
 しかし、それにしてもKing大先生の旺盛な執筆欲旺盛な姿勢は、本当にすごいと思う。現在御年71歳。もうホッジスの年齢を超えるおじいちゃんなわけで、これだけの年齢&大ベストセラー作家という世間的名声があるにもかかわらず、執筆ペースは全く衰える様子もない。ホント、年に1冊以上ペースだもんなあ……これは、日本の作家にはまず見られないものだ。大御所になると、もう作品じゃなくて講演やらなにやらにかかりきりで、作家であることの証明=作品を発表すること、が完全に二の次になってしまう方が多い。そんな中でも、例えば日本で言うと、佐伯泰英先生のように、年に数冊ペースで新刊を発表してくれている立派な方ももちろん存在はしているけれど、基本的にシリーズもので、ゼロからの創作ではない場合が多い。しかしKing大先生は、この「ホッジス三部作」が例外的にシリーズものなだけで、基本的には1冊完結なので、ちょっと比べられないだろう。しかもそのページ数というかボリュームもMAXレベルだし。そしてその著作は次々と映像化され続けているし。この「ホッジス三部作」も、現在『Mr. MERCEDES』はTVドラマとして製作され続けてるし。ほんと、King大先生は偉大ですよ。King大先生とその作品はマジ最高っすわ!

 というわけで、結論。
 わたしが世界で最も好きな小説家、Stephen King大先生の日本語で読める最新作『END OF WATCH』が発売になったのですぐさま買い、むさぼるように読んだ。結果、超ハラハラの展開でページをめくる手が止まらず、おまけにラストはとても感動的で、わたしはうっかり涙を流しそうになったほどだ。どす黒い「邪悪」と敢然と立ち向かい、数々の困難を経ての完全勝利には、とても爽快で気持ちのイイ読後感が得られると思う。コイツは最高に面白かったすね。見事なシリーズ大団円だったと思います。ま、要するにですね、いやあ、Stephen King大先生は最高だぜ! ってことですな。以上。

↓ わたしは観てません。どうも、役者が読んでいた時のイメージと違い過ぎるし、そもそもホリーの設定が全然違うっぽいので。
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ブレンダン・グリーソン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2018-10-03

 わたしがこの世で最も好きな小説家は、ダントツでStephen King大先生であるッ!
 ということは、このBlogにおいてもう何度も書いてきたが、来ましたよ! King大先生の日本語で読める最新刊が! そしてそれは勿論! 「退職刑事ビル・ホッジス」シリーズ第3弾にして完結編の『END OF WATCH』(日本語タイトル:任務の終わり)であります! やったー!
endofwatch
 日本の出版業界の慣例として、書籍はいわゆる「公式発売日」の前日には書店店頭に並ぶことが多く(※都内ならば)、実のところ2営業日前には本屋さんに届いちゃう場合も多くて、わたしは文藝春秋社が公式にアナウンスしている9月21日発売という日付から、ひょっとしたら、今日もうおいてあるかもな、と昨日の会社帰りに本屋さんに寄ってみたところ、実はまだ棚には陳列されていなかったけれど、その近くの運搬用ワゴンにひっそり置かれているのを発見して(誰がどう見ても、もう客が手に取って買っていいような状態だった)、おおっと! あった! やった! わーい! と内心超ニヤニヤしながら、外面は超クールな顔をしてレジに向かい、購入し、さっそく帰りの電車内で読み始めたのであります。
 ズバリ言うと、ファンならもう、のっけから大興奮ですよ、これは。詳しい感想は読み終わってから記しますが、いやあ、コイツは相当面白そうすねえ! 物語には全く関係ないことですが、わたしはとにかくKing大先生のDirty Wordが大好きでありまして、今回、一番最初のp.9で、わたしとしてはもうホント最高だな! と笑っちゃったDirty Wordが二つも! あったのでメモしておこう。なお、まだ英語原文を当たっていないので、翻訳した白石先生の日本語訳です。
 「きょうの朝はウッドチャックのケツの穴並みに真っ暗で、時刻は夜明け寸前だったからだ」
 「(とある人物がマクドナルドの看板を見つけて)やったぞ! アメリカの黄金のおっぱいだ!」

 いやあ、こういう表現が大好物なんす、わたくし。夜明け前の真っ暗闇を「ウッドチャックのケツの穴並みに真っ暗」だとか、マクドナルドのM(ダブルアーチ)を「黄金のおっぱい」と表すなんて、King大先生以外にはいないすよ。ホントに最高すね! 
 そして現在上巻の120ページほどまで読み進めているわたしだが、コイツは相当ヤバいすねえ……! ホッジスは完全に大丈夫じゃなさそうですな。p.35というほぼ冒頭の描写からも、ああ、こりゃあきっと最後は……という予感がひしひしと伝わりますね。そしてタイトルの『END OF WATCH』というのがどういう意味なのかは、p.28に書いてあった。曰く、警官が退職することをEND OF WATCH(任務終了)というそうです。そしてこの言葉の本当の意味は、これからもっと深く明らかになると思うので、そうだなあ、上下巻で1週間はかかるかな、ゆっくりじっくり、味わおうと存じます。

 というわけで、さっさと結論。
 日本全国のStephen King大先生のファンが待ち望んだ『END OF WATCH』日本語版。いよいよ明日発売ですが、まあ、都内近郊なら、本屋さんに行けばもう置いてあるかもしれないすよ! そしておもむろに手にし、自動的にレジへ向かってください。そこには一切の思考は必要ありません。間違いなく今すぐ買いです。文庫になるまで待つのは、もうわたしはやめました。どうせ数百円しか違わないし、特急料金として、単行本ですぐに読む方がいいと思います。そして電子書籍は紙の書籍同様、明日から配信開始ですが、わたしはKing大先生の作品だけは、本棚にずらりと並べて悦に入りたいおっさんなので、さっさと紙書籍を買いました。ちなみに、電子書籍は紙書籍版より結構安い価格設定になってるようです。しかしなんつうか、いやー、やっぱりKing大先生は最高すね! 以上。

↓ ネット書店で買うのではなく、本屋さんへ行かれてみてはどうすか? いち早く読めますよ! たぶん! そしてアマゾンだと、紙版よりも200円以上、Kindle版の方が安いみたいです。
任務の終わり 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2018-09-21

任務の終わり 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2018-09-21






 はーーー……面白かった……。
 なんのことかって? それは、わたしの年に1度(?)のお楽しみである、『暗殺者グレイマン』シリーズの新刊が発売になったので、わーい!とさっそく買って読み、味わった読後感であります。わたしの愛する早川書房様は、紙の文庫本で出した1週間から10日後に電子書籍版をリリースするので、紙の文庫が8月21日に発売になって、わたしも本屋さん店頭にて現物を手に取って、くっそう早く読みてえ! けど、あとチョイ我慢だ! と歯を食いしばって耐え、その後8月31日になって電子版が配信開始されたので、すぐさまポチってむさぼるように?読んだのである。しかし早川書房様はホント素晴らしいですな。US発売が2月で、6カ月後にはもう日本語版を出してくれちゃうのだから、マジで他の版元も見習ってほしいものだ。内容的に時事問題が絡んでいるので、どっかの版元のように2年とか時間をかけていては話にならないのである。新潮社、アンタのことだよ!
 というわけで、わたしが待ちに待っていた新刊の日本語でのタイトルは、『暗殺者の潜入』。英語タイトルは『AGENT IN PLACE』という、Mark Greaney先生による「暗殺者グレイマン」シリーズ第7作目である。いやあ、結論から言うと今回も、コートの野郎は相当ヤバい目に遭うものの、ラストへの展開は気持ちよかったすねえ! エピローグは、若干今後への引きのような、ちょっとモヤッとしたエンディングだったけれど、大変面白かったです。おっとヤバイ! これだけでもうネタバレか? 今回はとにかくキッツイ状況で、本当に大丈夫かしらと心配しながら読んでいたのだが、まあ、そりゃあ、大丈夫っすわな。今回も非常に楽しめました。
暗殺者の潜入 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2018-08-31

暗殺者の潜入 下 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2018-08-31

 ところで今、わたしは思いっきり「面白かった」と能天気な言葉を書いてみたのだが、描かれている物語はまったくもって「面白い」じゃあすまされない、極めて凄惨で血まみれな状況である。なにしろ、今回の舞台は、現在世界で最もヤバイ国、シリア、である。この時点でもう、ヤバすぎることは想像に難くない。しかし、読み始めておそらく小1時間で、今回主人公のグレイマンことコートランド・ジェントリーが、何故シリアと関わるのか、何故単身シリアへ潜入するのか、が判明すると、我々読者としてはもう、正直、「コート、お前って奴は……」と若干呆れつつも、こりゃあヤバイことになってきたな……(ニヤリ)、と妙に心躍ってしまうのではなかろうか。
 そうなのです。もう、さんざんこのBlogで過去作の感想を書いている通り、本シリーズ「暗殺者グレイマン」という作品群は、その主人公に最も特徴があって、まあ、いわゆるハリウッド的な、超凄腕暗殺者であるグレイマン氏は、完全なる人殺しなのでBAD GUYであるはずなのに、おっそろしく人が良く(?)、妙な正義感、あるいは良心、のような「自分ルール」を持つ男で、しかもその自分ルールゆえにどんどんピンチに陥って、どんどん傷も負い、血まみれになっていく男なのである。
 なので、今回の作戦(というか依頼)も、常識的な判断からすれば、シリアに潜入するなんて選択はあり得ないだろうに、グレイマン氏は、何かと文句を言いながら、どちらかというと全く行きたくない、けど、もう、しょうがねえなあ! 的な心境を抱きつつ、死地へと赴くわけです。
 まあ、本作からいきなり読む人はいないと思うけれど、既にシリーズを読んでいる我々としては、グレイマン氏のそんなところに、痺れ、憧れちゃうわけだが、それがどんな読者でも感じるかというと、それはかなりアヤシイことだと思う。ふと冷静に考えるとかなり荒唐無稽だし。でも、こういう、グレイマン氏のような「自らの納得の元に行動する男」のカッコ良さ?は鉄板ですよ、やっぱり。
 あとこれは全くどうでもいいことだが、わたしは第1作目を読んだ時から、どういうわけか、グレイマン氏のビジュアルイメージとして、完全にセクシー・ハゲでお馴染みのJason Statham兄貴に固定されてしまっており、前作で、グレイマンはハゲじゃなかった!というわたしにとっては超残念な描写があったけれど、今回読むときもやっぱり、わたしの脳裏ではコート=Statham兄貴の公式は崩れませんでした。映像化するなら絶対、つうか、この世でコートランド・ジェントリーを演じられるのはStatham兄貴しかいないと思います。
 とまあ、わたしのジェントリー愛はこの辺にして、今回のお話を簡単にまとめておこう。
 物語は冒頭、かの悪名高きISIS団に捕らえられたグレイマン氏が、いよいよ射殺される1秒前の状況が描かれる。そして、どうしてこうなった? と、その1週間前にさかのぼると、舞台はヨーロッパ、フランスのパリのど真ん中?である。フランスのファッションショーに出演するスペイン人のモデル。なんと彼女は、シリアの大統領の愛人であり、おまけに男児を出産しているという恐らくはあり得ない設定だ。そして彼女を拉致し、彼女の持つ情報を利用しようとする亡命シリア人反政府組織の医者夫婦。この夫婦はまったくのド素人だが、夫婦を支援しているフランスの元情報機関の男が、とあるハンドラー経由でグレイマン氏を紹介し、グレイマン氏は、金のため、というのも勿論あるけど、ほとんど反シリアのボランティアめいた動機から、拉致の依頼を受諾し、あっという間にその依頼を果たす。しかし、シリアの情報機関に雇われているスイス人クソ野郎の魔の手は伸び、一方でスペイン人モデルは情報提供に協力してもいいけど、そうなったらシリアのダマスカスに残してきた赤ん坊がヤバいので、現地へ潜入し、無事に連れてきてくれたら協力する、という無茶難題を吹っ掛ける。そしてその無茶に、我らがグレイマン氏が、しょうがねえなあ、くそッ!と行動を開始するのだがーーーてなお話である。サーセン。超はしょりました。
 わたしが今回、一番マジかよ、と驚いたのは、グレイマン氏の心情だ。な、なんと! グレイマン氏は、前作でぞっこんLOVEってしまったロシア美女、ゾーヤのことが忘れられず、悶々としていたのであります!! なんてこった! コート、お前も男だったんだな……!!
 「これは2カ月ぶりの仕事だった。それまでずっと身を隠していた。(略) 精神面で一歩踏み外しているという不安があったからだ。精神を鈍らせていたのは、PTSDや振盪症や若年性痴ほう症ではなく……もっと心を衰弱させることだった。それは女だった。(略) だが彼女への思いは残っていて、彼女と会う前とは自分が変わってしまったのではないかという気がした。(略)ジェントリーはそれをくよくよ考えていた。」
 どうですか、このグレイマン氏の心情は! 最高じゃないですか! そんなことザック(元上官)に知られたら、「シックス、お前の純情に乾杯! でも、だからと言ってシリアに行くのはイカレてるぞ、きょうだい」って絶対言われるぞ!
 要するにグレイマン氏は仕事に没頭することで愛するゾーヤのことを忘れたい、そしてさらに言うと、グレイマン氏は「シリア政府に対抗する戦いを支援するために何かやりたいと、ジェントリーはずっと前から考えていた」ため、今回の物語となったわけです。ホントこの人、いい人すぎるわ……。
 で。問題はシリアの状況だ。今回の物語は、あとがきによれば本当に現在のシリアの泥沼をかなりリアルに描いているようで、数多くの勢力が入り乱れる、極めて複雑なSituationである。現実世界の、いわゆる「シリア騒乱」に関してはWikiを読んでもらう方がいいだろう。わたしもここで説明するのはもうあきらめた。一応簡単にまとめると、(本作では)一番の悪党がシリア大統領で、政府軍(SAA)を持っているし、さらにイランとロシアが支援していると。で、さらに数多くの私兵団(=いわばギャング組織)や、雇われている民間軍事企業が政府側にいて、一方の反政府組織は、自由シリア軍(FSA)やアルカイダ系の連中や、かのISIS団もいて、さらにISIS団をつぶそうとするクルド人たちもいて、アメリカやイスラエル、トルコ、フランス、イギリスなどが反政府側を支援しつつ、クルド人たちにはアメリカもロシアも支援している、ような状況である。ダメだ、説明しきれない。
 恥ずかしながらわたしが全く知らなくて、へえ、そうなんだ!? と驚いたのは、そもそものシリアという国に関してだ。シリアって、宗教的にはかなり寛容、つまり大統領はキッチリスーツを着て、ひげもスッキリ剃って、街行く人も普通にジーンズだったり、女性もヒジャーブを着用してない場合も普通に多いんすね。そして首都ダマスカスのビジネス街は近代的なビルが立ち並んでるんですな。まあ、だからこそイスラム原理主義からは攻撃対象になるわけだけど、考えてみれば当たり前、かもしれないけど、全然イメージと違っていたことはちょっと驚きであった。これはわたしがまるで無知でお恥ずかしい限りであります。そうなんすね……なるほど。
 というわけで、恒例のキャラまとめをしておこうかな。
 ◆コートランド・ジェントリー:主人公で我らがグレイマン氏。通称コート、別名ヴァイオレーター、あるいはシックス。今回、普通なら2回は間違いなく死んでます。今回のグレイマン氏のシリア潜入方法がすごかったすな。なんとドイツ人の民間軍事企業経営者に接触して、シリア政府側の傭兵(=契約武装社員=コントラクター、あるいは武装警備員=オペレーター)となってシリアに入国するわけですが、当然、ドイツ人経営者は、えっと、グレイマンさん、ウチの仕事は、あなた様向きじゃないっすよ……? あなたの「倫理の掟」は知ってるっすよ? どういういきさつで悪役に代わったんすか? と思わずグレイマン氏に質問しちゃうシーンがあったのがちょっと笑えました。なので、表向きは政府側なんだけど、それを出し抜いて赤ん坊誘拐も同時にやってのけてしまうグレイマン氏の大活躍は、大変お見事でありました。そして仲間となる傭兵どものイカレ具合も、グレイマン氏からすると容認できるものではなく、いつぶっ殺し合いになるんだろう……という緊張感も良かったすね。しかしなあ、次は是非とも再びゾーヤに登場してもらいたいですなあ……!
 ◆シリア大統領&正妻シャキーラ&愛人ビアンカ:大統領と正妻シャキーラの間にはもう愛情は薄いものの、大統領にとってシャキーラはスンニ派であるため、政治的重要性が高く、またシャキーラは、ロンドン生まれでヨーロッパで青春を送った女性で、社交性が高く、「砂漠のバラ」と呼ばれるほどの美貌で、そういう意味でも、大統領にとっては「使える駒」でもある。一方でシャキーラにとっては、大統領夫人としての社会的ステータスと経済的な富のためにも、大統領は欠かせないという関係性にある。のだが、男児に恵まれず、将来的な心配をしていたところに、愛人が男児出産という事態になって、このままでは自分の地位が……と焦っており、愛人ビアンカを殺したいと思っているわけだ。そしてビアンカは、元々シリア生まれだけどスペイン育ちでモデルとして活躍してるところをシャキーラの仲介で大統領と出会い、子をもうけてしまう。そしてシリアの内情には全く疎かったため、現状の泥沼を知って情報を渡してもいいというところまで行くけれど、その条件として赤ん坊の脱出を突き付ける、とまあそういう感じです。なんつうか、アレっすね、この3人の関係は、豊臣秀吉&北政所ねね様&淀君の関係に似ているような気がしますね。
 ◆セバスティアン・ドレクスラ:スイス人で世界各国で悪いことばっかりしていた悪党。現在はスイスのプライベートバンクに雇われていて、莫大な金をその銀行に預けているシャキーラを守るために、銀行がシリアに派遣した諜報員。よく考えると、このドレクスラも悪党だけど、一番最悪なのはこのプライベートバンクであるのは間違いなさそう。ドレクスラはシャキーラにビアンカを殺すことを命じられるが、一方で大統領からはビアンカを保護して無事にシリアに連れて帰れとも指令を受け、何とかして自分が生き残る道を模索するある意味苦労人の悪党。結構、計画は杜撰というか行き当たりばったりかも。ま、事態が流動的すぎてしょうがないか。しかし、ドレクスラの最期は……どうなんすかねえ……まあ、後の作品で復讐の鬼となってグレイマン氏の前に現れるのは確実のような気がしますなあ……。
 ◆ヴァンサン・ヴォラン:フランス人で元フランス情報機関の男。69歳だっけ?かなり年はいってる。亡命シリア人夫婦にグレイマン氏を紹介した男。ただし、見通しは甘いし、情報精度も低く、ドジを踏みまくって、グレイマン氏をカンカンに怒らせてしまう。悪気は全くなかったのにね……。よって、グレイマン氏としてはヴォランに対しても、殺意を持っているが、グレイマン氏の恐ろしさをよーく知っているヴォランは、サーセンした! と後半かなり頑張って、一応殺されずに済む。ラスト、グレイマン氏がヴォランに言うセリフがカッコ良すぎなんすよ……。もう二度と会うことはない。会うとしたら、おれが送り込まれたときだ、的な。
 ◆傭兵軍団:シリアでグレイマン氏の同僚となるコントラクターたち。一般人でも虐殺上等な、イッちゃってる人々。当然グレイマン氏から見ると外道。気の毒な運命に……。
 ◆マット・ハンリー:グレイマン氏が唯一信頼(?)している男。前作からCIA国家秘密本部本部長。下巻の超絶ピンチに、マットと連絡がついた時はもう、これからグレイマン氏の反撃のターンだぜ! とわたし的には大変盛り上がりました。
 ◆スーザン・ブルーア:CIA局員で現在のグレイマン氏の管理官(ハンドラー)。基本的にグレイマン氏のことが大嫌い。そしてグレイマン氏はもっとスーザンが嫌い。わたしも、スーザンは嫌いっす。なんか出世欲旺盛な嫌な女に見えるので……。今回は数行だけ、一番ラストで登場する。次回作はまたCIAの作戦なんすかね……。

 とまあ、こんなところかな。おおっと、もうクソ長いし、書きたいこともない……と思うので終わりにします。

 というわけで、結論。
 わたしの大好きなMark Greaney先生による「暗殺者グレイマン」シリーズ最新作、『AGENT IN PLACE』(邦題:暗殺者の潜入)が発売になったので、さっそく買い求め、上下巻やっと読み終わったす。電子書籍の記録によると、上巻423分、下巻319分だったらしい。結論としては、大変楽しめました。いやあ、グレイマン氏のゾーヤへの思いが、意外というか最高ですね! そしてシリアに関しては、本書を読んだことをきっかけにいろいろ調べてみたけれど、なんつうか……本当に人類は殺し合うしかないんだなあと思うと、暗澹たる気持ちになりますな。グレイマン氏を必要としない世界はやって来るんすかねえ……。まあ、現実世界にはグレイマン氏はいないけれど、いないことを喜ぶべきか、嘆くべきか、良くわからんすな。とりあえず、グレイマン氏にまた1年後、会えることを楽しみに待ちたいと存じます。もう、次が来年2月にUS発売されることは決まってるらしいすよ。早川書房様ならまた、来年の今頃、日本語版を出してくれるはず! よろしくお願いします! 以上。

↓ 状況が理解できるようななんかいい本ないすかねえ……池上さん、お願いしますよ!

 2年前、2016年の秋ごろに読んでみて、とても面白かった海外翻訳小説がある。一度死んでも、再び人生をリプレイしてやり直す男の、15回目の人生を描いた『The First Fifteen Lives of Harry August』(邦題:ハリー・オーガスト、15回目の人生)という作品だ。控えめに言ってもこの作品は超面白く、大傑作であるとわたしは認定しているのだが、この作品を書いたのは当時20代の女性で、なんでも10代で作家デビューしていて、そのペンネームも複数使い分けしているそうで、へえ、これはすげえ才能あるお方だなあ、とわたしは結構驚いたのである。
 そして先日、と言っても実は発売になったのは5月で、わたしが発売されていることに気が付いたのが先日、なだけなのだが、ともかく、Claire North先生の新刊の日本語訳が発売されていることに気が付き、うおっとマジかよ! 全然チェックしてなかった! 抜かってた! とあわてて買った本がある。それが、角川文庫から発売されている『TOUCH(日本語タイトル:接触)』であります。
接触 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA
2018-05-25

 おっ、Claire先生自身のWebサイトに、BOOK-TRAILERが置いてあるので、とりあえず貼っておくか。この動画は、英語をよく聞くときちんと物語のあらすじというか、どういう物語なのか想像できるものなので、ちょっとチェックしてもらいたい。YouTubeの設定で字幕自動生成をオンにすると、英語が苦手な方でも大丈夫だと思うな。

 物語はこの動画のナレーションから想像できる(?できないか)通り、人の中に「ジャンプ」して、その人に憑りつき?、誰にでもなることが出来る謎の存在のお話で、まあ、実際のところ今までも似たような作品はいっぱいあると思う。そして本作だが、ズバリ、非常に回りくどくて分かりにくく、読み終わるのにかなり時間がかかってしまった。文庫版で608ページのところ、わたしは電子書籍の記録によれば545分かかったらしい。なんつうか、ちょっとずつ読んだことも悪かったんだろうな、読んでいて、ええと? と何度も前に戻ったりしてしまい、どうもスッキリ頭に入らない物語だったような気がする。
 恐らくその要因は、基本的な設定というよりも、前作『ハリー・オーガスト』でもみられた通り、かなり頻繁に時と場所が移り変わって、場面転換が激しいからではなかろうかと思う。前作では、わたしは別に混乱することなく、物語を楽しむことが出来たのだが……本作においては、明確な「現在」が設定されていて、一本筋が通った物語があるものの、とにかくコロコロと回想が始まってしまって、本筋の進行が遅いのが、わたしの足りない脳みそではついていけなかったのではなかろうか。メインの筋が進みだすのは中盤以降で、そこまで我慢できるかが本作を味わう上でのハードルになっているような気がします。
 さて。どうしようかな、最初に、物語についてまとめる前に、主人公たる「ケプラー」に関して、基本的な設定を短くまとめておこうかな。
 ◆「ジャンプ」能力
 人の肌に直接触ると、その人の体に「ジャンプ」することが出来て、その人の体を乗っ取れるという謎能力。そして乗っ取られた人は、その間の記憶がない。物語の中では、ほんの数秒だったり、数十年の間乗っ取られた状態が続いたような例も描かれている。
 ◆主人公「ケプラー」
 どうやら女性だった、らしい。「ケプラー」という名も、本名なのか不明。もう既に自らのオリジナルの体は消滅していて、自分の体を持っていない。そして正確にはよくわからないが、とにかくもう数100年以上も生きている、らしい。体がなくて「生きている」と言えるのか良くわからないが、これまで、男にも女にもジャンプしてきたので、もはや自分が女だったことすら記憶があいまい、だそうだ。わたしは読み始めた時、どっかにオリジナルBODYは寝てるのかな? と思ったら、もう既に体は持たない存在でした。なので、「ゴースト」と自分で称していて、人にジャンプすることを、その人の体を「着る」と表現している。つうか、まさしくこういう存在を「幽霊」というのではなかろうか。
 ◆実は「同類」が世界にいっぱいいる。
 どうやら、主人公ケプラー同様に、他人の体に「ジャンプ」出来る同類のゴーストが世界にはいっぱいいる。ケプラーが、あ、自分と同じようなゴーストがいるんだ、と初めて知ったのは18世紀、1798年のことらしい。そしてケプラーは、そういったゴーストに、乗っ取る体(=曰く「不動産」)を紹介するエージェント業をなりわいとしていた。乗っ取る体の素性をきちんと調べ上げておかないと、乗っ取ったはいいけど、(元の体の持ち主の記憶がなく、まさしく中身は別人になってしまうため)すぐに周りの人々に、なんか変だぞ?とバレたり、持病があったりするとマズいので、事前調査がとても重要で、ゴーストたちからすると重宝がられていた存在だそうだ。なるほど。そして、ゴーストと契約して、主に短時間だけ、体を貸す協力者もいる。
 ◆彼らを「狩る者たち」がいて、天敵のような存在に追われている
 どうも、ずっと昔から彼らゴーストという存在はごく一部に認識されており、ゴーストを狩る者たちがいて、闘争を繰り返している、らしい。
 とまあ、ごく基本的な設定は以上かな。
 わたしはこの設定がだんだんわかっていく中で、なんだか、あまり売れなかったけどわたし的には結構好きな映画『JUMPER』を思い出した。あの映画では、単に空間移動の「ジャンプ」だけだったけれど、彼らジャンパーを狩る謎の連中が出て来ましたよね。そういう意味で、なんか似てると思ったのだが、本作はそこに『ハリー・オーガスト』的な「永遠を生きる存在」というスパイスが加わっていて、ちょっとした変化球となっている。
 というわけで、物語は現代、トルコのイスタンブールから始まる。「わたし」たる主人公「ケブラー」が銃撃され、瀕死のところで別の人間ににジャンプする。その体にはもう「わたし」がいないことが分かっているのに、襲撃者は「わたし」が「着て」いた人間にとどめを刺す。一体なぜ、自分と、自分が着ていた人間は狙われたのか。その謎を解明すべく、自らを銃撃した男にジャンプして、ヨーロッパを横断する逃避行(?)ののち、真のラスボスとの対決へ、という流れであった。
 その逃避行及び追撃の中で、「わたし」が今までにどんな人間を「着て」、どんな歴史を歩んできたのか、あるいは、同類のゴーストにどんな奴がいたのかなどが語られるわけだが、ほぼ本筋には関係ないようなエピソードが結構面白いのです。
 例えば、時は19世紀末、「わたし」はロシアにいて、とある貴族から、素行の悪い娘の体を「着て」、令嬢らしくしとやかな娘を演じてくれないか、という依頼を受ける。依頼期間は半年間。そして「わたし」は、その依頼通り、娘の体で貴族の令嬢にふさわしくふるまうことで、それまでの周りの悪評を払拭し、半年を過ごす。そして体を返却した後、それまでの半年の記憶がない娘と貴族の父はーーーみたいなちょっとグッとくる話だったり、他にも、同類のゴーストが「不動産エージェント」としての「わたし」に、「一度マリリン・モンローになってみたい」という依頼を持ち掛けて来て、ハリウッドのスタジオ関係者となってモンローへのジャンプを手引きする話だったり(しかも依頼期間が過ぎてもモンローの体を返そうとしないので、ちょっと懲らしめてやったり)、とか、まあ、そういったゴーストならではの不思議で興味深いエピソードがいろいろ描かれている。ただ、くどいけど、そういった面白話はほぼ本筋と無関係です。そこが若干問題と言えば問題なのかもしれないな……。

 というわけで、物語は複雑だし、キャラクターも多いので、その辺りを細かく説明することはもうあきらめた。ので、もう思ったことだけを書くことにする。
 おそらく……前作の『ハリー・オーガスト』と本作において、共通しているのは「人生一度きりじゃない」という状況だろうと思う。特に本作は、永遠ともいえる生を、ずっと過ごしているわけで、「死」を超越してしまっている。もちろん『ハリー』においては「死」が「リセット」のスイッチとして存在していたし、本作でも死の間際に周りに誰もいなくてジャンプする体がなければ死んでしまうんだけど(死にそうになっても誰かの体に逃げて死を回避できる、けどその逃避先の体がなければどうにもできない)、主人公のわたしことケプラーは一度も死んでいない。実際のところ、自らの体はすでになく(その意味では死んでいる)、精神憑依体として在り続けているので、生きていると言えるのかわからんけど。
 そんな状況で、数百年在り続けているわけだが、果たして、人間はそんな孤独の数百年間、正気を保っていられるのだろうか?? 普通に生きる普通人の我々には、ちょっと想像がつかない世界だ。人生についてもはや絶望しているわたしには、生きるというある種の牢獄に、永遠に囚われるなんて、むしろ願い下げというか、ぞりゃもう拷問以外の何物でもないんじゃね? という気すらする。
 たぶん、その永遠を過ごすためには、何らかの明確な「目的」が必要なのではなかろうか? やるべきこと、と見据えたなにか。そういったものが絶対に必要なはずだ。『ハリー』では、その目的がきちんと描かれていて、それ故面白かったと思うのだが、残念ながら本作では、主人公が生き続けるための「目的」が、正直良くわからないんすよね……どういうことだったのか……何のために存在し続けていたのか……絶対、100年もいたら飽きると思うんだけどな……これは、ちゃんと書いてあったのに、わたしが集中できずスルーしちゃっただけかもしれないけど、その辺りの説得力がわたしには感じられなかったのが大変残念だ。
 なんつうか、やっぱり「人生1度きり」でないと、ダメなんじゃないすかね、人間は。永遠の時を生きられる、しかも肉体的には(誰かの体をかっぱらうことで)永遠に若いままでいられる、としたら、普通は喜ぶべきなのかなあ……? わたしはもう、絶対に嫌ですな。無理だよ。絶対に飽きるし、無間地獄とすら思えるすね、わたしには。ふと考えると、ゲームみたいすね。『バイオハザード』でも何でもいいんだけど、ゲームクリア(=目的達成)のために、何度死んでもオープニングに戻るのが前作『ハリー』だったけれど、今回はそのゲームクリア、目的が明確じゃなくて、なんだかやっぱり途中で飽きちゃうすな。本作は、最終的なエンディングは若干のほろ苦エンドで終わるけれど、はたしてケプラーは、その後何をして、何を求めて在り続けるのか。その辺がちょっと想像できないす。

 というわけで、もう長いのでぶった切りですが結論。
 2年前に読んでとても面白かった作品の著者Claire North先生の日本語で読める最新作『TOUCH』が発売されていたので、さっそく買って読んでみたところ、ズバリ言うと若干イマイチ、であったように思う。それは時と場所が入り組む複雑な構造に起因するというよりも、結局はキャラクターの問題ではなかろうか、というのがわたしの結論だ。わたしの浅い脳みそでは、主人公ケプラーに対してどうにも共感を得ることが出来なかった。それはケプラーに、生きる(存在する)意義というか、目的を見出すことが出来ず、どうしてまたコイツは数百年、正気を失わずにいたんだろうというのが実感としてよくわからなかったためではないかと思う。恐らくケプラーは、単に死ねないから存在し続けただけだし、死にたくない(=消えたくない)という、生命の根源的な衝動に従っていただけなんだろうと思う。わたしだって、散々この世に未練はねえなあ、とか思っていても、死の間際には、絶対に「死にたくない」とそれこそ生にしがみつこうとするのは間違いないだろうし。そういう意味では、まあ結局のところ「にんげんだもの」というみつお風な結論なんでしょうな。それが面白いかどうかは別として。はーーしっかし長かったわ……次は、1年ぶりの発売となったわたしの大好きな「グレイマン」シリーズ最新作を読んで、頭を空っぽにして楽しみたいと存じます。以上。

↓ こちらは超傑作です。
ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA/角川書店
2016-08-25

↓そしてこちらを次に読みます。電子書籍版は来週ぐらい発売かな……?
暗殺者の潜入〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2018-08-21

暗殺者の潜入〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2018-08-21

 ふああ……長かった……。
 わたしはおとといの夜、読んでいた海外翻訳小説を読み終わったのだが、読み終わっての偽らざる第一声である。そしてその読み終わった本とは、6日前に買ってきた、コイツのことです。
FIREMAN


 買ってきた6日に前に書いた通りだが、Joe Hill先生による最新長編『THE FIREMAN』であります。わたしとしては、この才能ある作家Joe Hill先生が全然日本で紹介されていないのが本当に残念に思う。かの世界的大ベストセラー作家であり、わたしがこの世で最も大好きな小説家、Stephen King大先生の次男長男(姉と弟がいる第二子)で、なんでも、本人としては、King大先生の息子であることで、ちやほやされるのが嫌でJoe Hillというペンネームを使い出したらしいが、現在ではもう、King大先生の息子であることはまったく隠しておらず、世に知られている。しかし、ここ日本ではさっぱり知名度は低く、その作品が非常に面白くて、優れた才能の持ち主であることは、King大先生の息子であるということを知らなくても、作品を読めば一発で分かると思うのだが……ほんともったいない。もっともっと売れてほしいのだが、いかんせん日本の版元である小学館にはまったくやる気がなく、ほぼ埋もれているのが現状だ。ホント腹立たしいわ。
 それはともかく。まずは『THE FIREMAN』の物語をざっとまとめてみよう。
 物語は、冒頭、学校の保健室から外を眺めた主人公が、「燃える人間」を目撃するシーンから始まる。そしてあっというまに、その人体発火の病気(?)が地球を覆い、一転して世界はディストピア的状況に陥る。まあ、欧米人はディストピアものが大好きですな。で、主人公は「感染者」の押し寄せる病院へ看護師として働くようになるのだが、自らが妊娠していることが判明、こんな状況で妊娠するとは……と若干途方に暮れていると、ついに自らも発症してしまい、そのことで(頭のイカレた)夫にぶっ殺されそうになる。そんな大ピンチを救ったのが、消防士(FIREMAN)の格好をした謎の男と、なぜかキャプテン・アメリカのマスクを着用した少女だった。辛くも難を逃れた主人公は、二人に連れられて、自宅から数kmにあるキャンプ場に集まる「感染者」たちの集団に合流する。しかし、そのキャンプも、その場を仕切る「ファーザー」はいい人だったが、やがて妙な狂信めいた集団心理が醸成されていき、ファーザーが殺されかけ、意識不明に。代わってリーダーとなった女、ファーザーの娘のキャロルは、とんでもない狂信で人々を支配していくのだが……てな展開であります。
 こういう物語なので、Kingファンとしては、なんとなく『The STAND』(超インフルエンザで人類の大半が死に絶えた世界の話)や、『UNDER THE DOME』(謎の隔離バリア空間に閉じ込められた人々の話)、あるいは『The MIST』(謎の霧にスーパーマーケットに閉じ込められた人々が狂信によってイカレていく話)など、父たるStephen King大先生の作品を思い出すのではないかと思う。
 しかし、Joe Hill先生は、一番最初の序文で思いっきりこう表明している。
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 インスピレーション
 J・K・ローリング――その数々の作品が、ぼくに本書の書き方を教えてくれた。
 P・L・トラヴァース――僕に必要な薬をもっていた。
 ジュリー・アンドリュース――その薬を飲みやすくするスプーン一杯の砂糖を持っていた。
 レイ・ブラッドベリ――本書の題名を盗んだ。
 わが父――題名以外のすべてを盗んだ。
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 まあ、こうも堂々と宣言されたら、なんつうか、むしろ期待が高まりますね。ハリー・ポッターとメリー・ポピンズ、それから『華氏451度』と父King大先生に対する敬意をもって書かれたわけで、とりわけ、父からは題名以外の全てを「盗んだ」と記すのは、わたしにはある種の決意表明のようにも感じられる。読者たるわたしとしては、その意気やよし! 父を超えてみせてくれ! とワクワクが止まらない見事な序文だったように思う。
 というわけで、わたしはこの長~~い物語を実質4日間で読み終えてしまったのだが、まあ、やっぱりちょっと、冒頭に記した通り、長げえよ……とぐったりしてしまったのは確かだ。とりわけキャンプでの日々が長いよ……。中盤ぐらいから犯人捜し的なミステリー風味が加わって来て、一体だれが、なんのために?的な興味もわいてきて、面白いことは間違いないのだが、キャラクターも多いし、そしてどんどんと主人公及びファイアマンが心身ともにボロボロになっていく過程は、正直読んでてつらかったす。この辺りのボロボロ具合、もうこれ、逆転できないじゃん!? ぐらい追い込まれていくのは、実に『UNDER THE DOME』っぽさが炸裂してたように思う。そして後半の逃走劇は、なんだか『MAD MAX2』あるいは『MAD MAX:Fury Road』的でもあったように思う。完全にヒャッハー世界ですよ。恐ろしいことに。
 わたしが本作を読んで少し残念に思ったのは、肝心の『FIREMAN』があまり活躍しないんすよね……そして弱い……。まったくもってスーパーヒーローではなく、心身ボロボロで、これでもかというぐらいやられていく様は、ホントつらかったす。
 で、次に、本書でのカギとなる病気についてまとめてみよう。こういうことだと思う。
 ◆竜鱗病<ドラゴン・スケール>:正確には病気というよりも、「竜様発燃性白癬菌」というカビの一種の菌類に寄生された状態。この菌に寄生されると、肌に竜の鱗のような模様がタトゥーのように現れる。そして燃える。発生元は不明だが、温暖化で溶けたシベリアの永久凍土から数万年の休眠から目覚めたという説もあるらしい。そして、保菌者と接触しても感染することはなく、どうやら胞子を含む「灰」が媒介しているようで、菌はその灰を生成して広く増殖するために宿主を燃やす、らしい。
 しかし、この菌と共生する方法があって、燃えないでいられる状態を維持することも可能。それは、脳から分泌される「幸せホルモン」でお馴染みのオキシトシンを感知すると、菌はこの宿主は安全だ、と思うらしいのだ。面白いよな……こういう設定。キャンプでは皆が歌って心を一体化することで、体のスケール(鱗)が発光し、「ブライト(Bright)」と呼ばれる恍惚状態になり、精神的なテレパシーめいたもので「繋がってる」意識を持つ(=こういう人と繋がっている状態が人にとって最も幸せな状態=オキシトシン分泌、らしい)ため、燃えない、ということらしい。この「ブライト」というのも、Kingファンとしては「輝き(Shining)」能力を思い起こさせますな。そして問題は、燃えないだけでなく、炎を自在に操るジョン=FIREMANは一体どうやっているのか? ということになるのだが、これはある種の修行的な訓練で身に着いたそうです。この訓練のくだりはちょっとアレだけど、まあ、とにかくよくできた設定であると思う。そしてどうでもいいけど、<ドラゴン・スケール>というネーミングはセンス抜群すね。
 で、最後に、キャラについてだが、本作は小学館文庫版で<上>が660ページ、<下>があとがきなど含めて637ページ、合計1297ページと膨大で、キャラクターもそれなりに多いので、まずはわたしがパワーポイントでテキトーに作った人物相関図を貼りつけておこう。
FIREMAN
 ◆ハーパー:主人公の女性。30代後半だっけ? 年齢は忘れました。学校の保健室の先生だったが、「竜鱗病」蔓延後は看護師に。彼女の問題点は、果たして何もなく平穏な世界のままだったら、夫の本性に気が付けていたのだろうか? という点だろうと思う。ある意味平均的US家庭の奥様で、保健室のメリー・ポピンズとして厳しく、優しく子供相手に過ごせていたはずで、まさか夫があれほどクソ野郎だったことには気が付かずに終わっていたのではなかろうか。そして、それはそれで、まったくの幸せな人生だったのではないだろうか? そう考えると、若干ハーパーというキャラに対する共感は薄れてしまうような気もするけど、まあ、人間だれしもそうなんでしょうな。普通の人代表として、そして異常事態でも変わることのない善良な魂の持ち主として、主人公の資格を持っていたと思うことにしよう。なんつうか、善良さによるものなのかどうか分からないけど、ハーパーはかなりあっさり人を信用するし、好きになっちゃうという、フツーの女性だと思う。そして妊婦なのに、無茶しすぎだよアナタ……。
 ◆ジョン:元菌類学者のイギリス人。現FIREMAN。消防士の格好をしていて、炎を操る男。フツーの人なので、肋骨は折るわ手首は脱臼するわと、満身創痍。中盤ほとんど出番なし。キャンプにはおらず、すぐそばの小島で一人ひっそり暮らしていて、「ブライト」状態で人と繋がることを拒否している。その理由は―――まあ、書かないでおきます。読んでお楽しみください。
 ◆セーラ:すでに故人。焼け死んだ。が、実はジョンの小屋のかまどの火の中にーーな方なので、わたしは勿論『ハウル』のカルシファーを思い出したっす。
 ◆ファーザー・トム・ストーリー:キャンプの主導者。元学校の先生。セーラとキャロルの父。まあ、なんつうか、いい人なんだけど……あまりに無防備というか、ちょっと危機感が足りなかったのではないかしら……。
 ◆キャロル:セーラの妹で超奥手な女。何歳か忘れたけど処女。ファーザー襲撃&昏睡ののち、どんどんとおかしな方向へまっしぐらなイカレたお方。この人も、この異常事態ではなく、普通な世ならば、普通に生きて行けたかもしれないのに……。たぶん、本人には全く罪悪感のかけらもなく、正しいと思ったことをしただけだと思う。恐ろしい……。
 ◆アリー:セーラの娘。16歳だっかな、絶賛思春期の扱いの難しい娘さん。ジョンを慕っていて、ジョンのFIREMAN活動のサイドキック(相棒)的に、キャプテン・アメリカのマスクをかぶって活躍。しかしキャンプでは、周りに影響されやすいのかな、コロコロと態度が変わる、ホント難しい娘さんですよ。
 ◆ニック:セーラの息子でアリーの弟。聾唖で、読唇術を身に付けていないため(作中で曰く、読唇術なんて映画の世界のモノで、出来っこない)、手話か筆談で意思疎通する少年。しかし「菌」の扱いが実は非常にうまく、2代目FIREMANになれるレベル。基本的に、甘えっ子です。
 ◆ジェイコブ:ハーパーの夫。公務員だが、実はずっと人々をバカにして、オレが世に認められないのはクズどものせいだと世界を憎んでいた。ついでに妻のハーパーに対しても、内心ではこのアホ女め、とずっと見下していて、それを小説に書いてストレス解消していたクソ野郎。ハーパーが感染したことで、自分ももう保菌者なんだと血迷って無理心中しようとするアホ。そしてその際、ハーパー&FIREMANにこっぴどくやられて、ずっとハーパーとFIREMANと感染者をぶっ殺すことを生きがいにする。でもまあ、ジェイコブもまた、平穏な世界であれば、それなりに平穏に生きて行けたんでしょうな……。
 ◆ルネ&ドン:最後までハーパーの味方のいい人。ルネは黒人のおばちゃん、ドンは元軍人のおじいちゃん。詳しくは相関図参照
 ◆ベン:元警官で、コイツはいい人かな? と思っていたけど、どんどんと元警官の血が騒いだのか、圧制側に回ってキャロル陣営へ。「ブライト」中のトランス状態でハーパーのケツをもみまくる変態おやじ。読んでいて、ついドンとベンが、どっちがどっちだかわからなくなるので、気をつけよう!
 ◆マイクル:アリーが大好きな少年で、コイツもいい人だと思ってたのに……単に、ヤリたくてしょうがない男子高校生(童貞)でした。
 ◆ハロルド:既に故人。キャンプでは嫌われ者のキモオタデブの変態野郎。しかし実は、一番事態を把握している賢い奴で、日記を残しており、数々のヒントを残す。なので、実は大変かわいそうな野郎でした。
 とまあ、主なキャラはこんな感じかな。他にもいっぱいいろいろなキャラが出てきますが、彼らに共通するのは、平穏な世界ならば、誰しもが普通の人であったはずだという点で、この「菌」が、あらゆる人に、ある意味平等に、その人の本性をむき出しにする事態へと突き落としたわけで、なんつうか、恐ろしいというか、こういう事態でも変わらない自分でありたいと願わずにはいられないすな。いや、変わらない、というのは違うか? 変わったように見えてもその人そのものなわけで、仮面を無理矢理剥されたってことなのかな……その仮面があまりに別物だと、なんかゾッとするっすね。おれは果たして大丈夫なんだろうか……という怖さは、とても強く感じるに至ったす。

 というわけで、もう長いのでぶった切りだけど結論。
 US発売から2年(?)。待ちに待ったJoe Hill先生の最新作『THE FIREMAN』の日本語翻訳が発売されたので、さっそく買い求め、むさぼるように読んだわたしである。読み終わって、まず第一に、長い! 疲れた! という感想が一番最初にわたしの口から洩れたのは確かだし、実際、途中ちょっとダレるかも……とは思うけれど、それでもやっぱり、結論としては面白かった! と申し上げたい。少なくとも、Kingファンならば絶対に読むべき物語であり、Kingファンに対しては絶対のおススメだ。ただし、Kingファン以外の人々に対しては……どうかなあ……最後まで読み切る気合は必要だと思います。そして、わたしは偶然、今年上演された『メリー・ポピンズ』の舞台を観に行ったし、その予習として映画版も見直しておいたのだが、本書は数多く『メリー・ポピンズ』を知らないと困る描写が多いような気がする。なので、読む前に、ぜひ! 映画版『メリー・ポピンズ』を観ておくことを推奨します。知っていると、ニヤリとしてしまうような場面がいっぱいありますよ! そんなところも、わたしとしては大変楽しめました。つうかですね、King大先生のDNAは確実にHill先生にも受け継がれているのは間違いないですな。すごい才能ですよ。次の新作が楽しみです。以上。

↓ マジで観ておいた方がいいと思います。映画としても最高に楽しいしね。若き頃のジュリー・アンドリュースさんはホントかわええっすな……!

 もうこのBlogではおなじみのフレーズだが、何度でも言うッ!
 わたしが世界で最も好きな小説家はStephen King大先生であるッ!!
 まあ、King大先生の作品の、日本語で読める最新刊は、すでに9月21日発売が予告されている『END OF WATCH』(日本語タイトル「任務の終わり」)なわけだが、そちらは当然もう、今から早く読みたくてたまらないわけで、大変期待しているわたしである。
任務の終わり 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2018-09-21

任務の終わり 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2018-09-21

 しかし、以前もどこかで書いた通り、どういうわけかここ日本においては、King先生の知名度はそれなりに高く、作品の人気もそれなりに高いはず、なのに、本自体は正直、あまり売れていない。ま、それは単に出版不況と呼ばれる構造的、あるいはもはや、若年層における小説を読む習慣の欠如という文化的?な時代の変転によるものと思わざるを得ないのだが、そんなことはある意味どうでもよく、わたしが極めて残念に思っていることは、King先生には、まさしくそのDNAを継承した、おっそろしく才能のある息子がいて、その息子の作品が超絶に面白い!ことがまるで日本で紹介されていないことである。
 この点に関しては、明らかに日本における版元である小学館の責任であり、その惰弱な営業活動のもたらした罪、とわたしとしては断言したい。これが例えばKing作品を継続して刊行している文藝春秋社からの刊行であれば、恐らくはもっと父King作品に絡めた宣伝告知などが可能だろうし、もっともっと売れているはず、ではないかと推察する。まあ、ひょっとすると父Kingがらみの七光り的扱いはNGと禁じられている可能性はあるが、わたしが営業担当者だったら、今の部数の10倍以上売る自信はあるね。残念ながら小学館には何の期待も出来ない。実に残念だ。
 その才能ある息子(※ちなみに次男姉と弟がいる第二子です)の名前はJoe Hill。1972年生まれの現在46歳。この野郎の作品が、まあとにかく面白い! のである。読んで絶対損しないと思う。少なくともKing大先生のファンならば。そのJoe Hill氏の新作が今日、やっと日本でも発売になったので、わたしはもう大急ぎで買って来て、これから読もうと思っております。US発売からもう2年かな? もう日本語版は出ないんじゃないかと心配していたけれど、ようやくの発売だよ! それほどわたしは待っていたのです!
 そしてその作品がこちら。小学館のくせに、いいカバーデザインじゃんか! なかなかかカッコイイので撮影してみた。ズバリ帯が邪魔だったので、外して下に置いときました。
FIREMAN
 タイトルは『THE FIREMAN』。あらすじを、小学館の使えないWebサイトから勝手にパクって貼っておこう。
-------<上巻>--------------------
世界の終わりに現れた炎を操る謎のヒーロー
 全身に鱗状の模様が現れたのち、発火現象を起こして火だるまになり焼死する--人類にとってまったくの未知の疾病が急速に広がり、世界の終わりが迫っていた。感染者隔離施設で看護にあたっていた元学校看護師のハーパーは、妊娠と同時に感染が発覚。錯乱した夫に殺されそうになった彼女は、間一髪のところをキャプテンアメリカの姿をした少女と消防士姿の謎の男〈ファイアマン〉に救われ、迫害された感染者達が身を寄せ合う山中のキャンプに導かれる。外の世界では社会不安が広がり、自警団組織が感染者狩りをしてまわるようになり、やがてハーパーの暮らす弱者たちのコミュニティの中でも不穏な動きが……。
 ニューヨークタイムズ・ベストセラー1位、『トランスポーター』の監督ルイ・レテリエによる映画化進行、ベストセラー作家による傑作エンタメ超大作!
-------<下巻>--------------------
 全人類を滅ぼさんとする未知の疾病〈竜鱗病(ドラゴンスケール)〉に冒された妊娠中の看護師ハーパー。夫に命を狙われたところを消防士姿の男〈ファイアマン〉に救われ、迫害された感染者たちが身を寄せ合うキャンプに避難するが、新たなリーダーの登場でコミュニティもまた不穏な状態に。一方、外の世界では感染者狩りがますます激化し……。
本当の敵はどこに?生き残るのは誰か?全人類が追い詰められた極限の中で、愛する人を守るため瀕死の傷を負いながら闘う炎の使い手〈ファイアマン〉を描く、傑作エンタメ大作、超スペクタクルな完結編!
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 どうすか、結構ネタバレかましてくれてるような気もするけど、超面白そうじゃあありませんか! なんか、Kingファンとしては『The Mist』や『UNDER THE DOME』あるいは『THE STAND』を思い起こさせるような気がしますね! まあ、この説明文が果たして適切なのかどうか。これから読んで確かめたいと思う。

 というわけで、結論。
 待ちに待った、Joe Hill氏最新作、『THE FIREMAN』が発売になったぞ―――! わーい! さっそく読み始めます! やっばいすねえ! 上巻が660ページ、下巻が620ページ。コイツは歯ごたえあるぞ……! 超ワクテカが止まんないす! 以上。

↓ 腹立たしいことに、Kindle版は出ているのに、わたしの愛用するBOOK☆WALKERでの電子書籍の発売はナシ。ホント小学館にはイラつくわ。【2018/8/8追記:昨日の発売日は一切なかったのに、今朝見たらB☆Wに8/17配信開始と告知されていた。その情報の遅れも、紙から10日遅れで電子を出すという方針も、共に話にならん。結論として小学館はさっさと資産食いつぶして、どこかに身売りすれいいのにと思う】


 わたしは昭和の男として、いまだ新聞をちゃんと毎朝読む男なのだが、たまに、新聞の書評を見て、へえ? と思った本を買って読むことがある。そういう場合は、まあ、ほぼ100%小説なのだが、1カ月ぐらい前かな、たしか作家の宮部みゆき先生の書評を読んで、かなり好意的だったので、じゃあ、買って読んでみるかと思った作品があった。
 それはどうもドイツミステリーらしく、わたしはドイツ語で修論を書いた男なので、現代ドイツ文学(文学、というのもアレかな)を読んでみたいと思う気持ちは、おそらく普通の人よりずっと高い方だろう。なので、本屋で探してみたのだが、まるで見当たらず、本当に最近の本屋さんはアレだなあ……と思っていたら、ごくあっさり、電子書籍で発売していることを発見し、さっそく購入、読み始めた。それはこの作品であります。
乗客ナンバー23の消失 (文春e-book)
セバスチャン・フィツェック
文藝春秋
2018-03-28

 著者のSebastian Fitzek氏は一応日本語Wikiがありますな……わたしとしてはこの方の他の作品も読んでみようかと思ったものの、どうも柏書房なる版元から出ている本はことごとく品切れ重版未定みたいすね……amazonによると。あ、早川書房から出ている本は買えるっぽいな……。まあ、いずれにせよ、この著者は1971年生まれのドイツ人で、新作は映画化もされるようで、それなりに有名らしいすね。全然知らなかった。ベルリン生まれのベルリン育ち……西出身ってことでいいのかな……。
 お、ちょっと検索したら文春のツイートに宮部先生の書評のリンクがあるからこれをのっけとこう。

 で、ズバリのっけから結論を言うと、宮部先生のオススメには申し訳ないのだが、はっきり言ってかなりイマイチであったようにわたしには感じられた。最後まで読み通す自信が全然わかず、電子書籍の便利機能である読了タイム計測によると、わたしは338分かかってこの本を読み終えたらしい。紙の本だと377ページあるのかな? なので、読んだスピードはわたしの標準速度だったようにも思うが、実感としてはスゲエ時間がかかった、という気がしてならない。そして今から感想を書こうとしているのだが、実は読み終わったのもだいぶ前で、なんか……なんか書くことがあんまりないんすよね……。うーむ。
 まず、物語を簡単に説明すると、豪華クルーズ船において起きた失踪事件を、刑事が解決するものである。わたしにはかつて、元海自潜水艦乗り→陸自レンジャーという経歴の男が部下でいたため、そいつからいろんな話を聞いたことがあるのだが、そいつも言ってたことで、本書にも出てくることなのだが、外洋船から落ちたら、100%助からないんだそうだ。それはもう簡単な理屈で、100%見つからないから、らしい。なぜなら、船が止まる(静止する)のに要する距離が我々の想像を超えていて、本書に出てくる豪華客船は数km必要らしいが、落ちたその瞬間を目撃したとしても、あっという間に見失うものらしい。元部下の元自衛官曰く、マジ無理っす、だそうで、実際、フェリーから海に身を投じることは確実な自殺手段としても有名らしい。あと、船によるんだろうけど、客船の場合は海面まで高さが数10メートルある場合もあり、下手に落ちれば当然骨折もするだろうし、その点でも、もう海に落ちたら完全アウト! だそうだ。
 というわけで、本書では、以下のような、非常に多い登場人物が入り乱れる(?)お話であった。ちなみにわたしは、とにかくキャラ数が多いし、それぞれにエピソードが多くて、次々に視線が移っていくし、しかもあまり本筋と関係なく、なんかうんざりした。なんでStephen King大先生の作品ではそういうことにならないんだろうな……キャラ多いのに。ま、そこがKing先生のすごいところかもしれないすね。とにかくキャラが多いので、全員は紹介しません。
 ◆マルティン・シュバルツ:主人公。刑事。おとり捜査での潜入捜査官。オープニングの事件はすごい話でビビるが、物語本筋にはほぼ関係なし。凄腕、らしいが、凄腕……どうだろうそれは……。心理学的教養・知識がある。そして重要なポイントは、舞台となる「海のスルタンIII」という豪華客船で、5年前に妻と息子を亡くしていることで、この事件は公式に自殺として解決済みだが、その裏には……的なお話。そしてその裏を知っても、彼にはあまり同情しないし共感も出来ないすなあ。
 ◆ボンヘーファー船長:「海のスルタンIII」の船長。未だにマルティンからはお前が妻子を見殺しにしたんだと逆恨みを喰らっている気の毒なおっさん。訴訟も喰らい、そのせいで一時期停職処分となったが再び船長に復帰。結論から言うと、この人はほぼ悪事に加担してません。実際、むしろ単なる被害者ではという気がする。
 ◆ユーリア:船長の友人の女性で看護師かな。ただ、かなりひどい女で、娘の担任の先生と絶賛不倫中。頭の具合はかなり悪い。
 ◆リザ:ユーリアの娘。ゴス系パンク女子高生。なにやら援助交際疑惑があり、動画が流出し、学校に居場所ナシ、な女子。ほぼ同情の余地なし。
 ◆アヌーク:マルティンの妻子同様、消えた乗客(=船で行方不明になった乗客を、業界用語で「乗客23号」というんですって)のはずだったが、ひょっこり姿を現し、保護された女の子。何歳だったか忘れましたが幼稚園・小学生レベルのちびっ子。しゃべらない。精神的にイッちゃった模様。母親であるナオミは依然行方不明、だが実は……的な展開。
 ◆エレーナ:船医。アヌークを保護しつつ、マルティンにも一応協力的(?)。終盤、え、そういうことなの? 的な秘密の暴露はかなりいきなりだし、読んでて想像がつきっこないじゃんレベルのように感じた。
 ◆ゲルリンデ:「海のスルタンIII」の部屋を分譲で購入し、住み着いているおばあちゃん。船での行方不明ネタでミステリー小説執筆中。何気にいろいろヒントらしきものをくれる。この人が一番まともというか、常識人だったような気がします。
 まあ、もっと登場キャラは多いけれど、メインキャストとしてはこの程度で十分だろう。そして、ことごとく、キャラに共感できないのがわたしには致命的であったように思う。なので、主人公と一緒に、行動し、考えたくなるようなことにならなかったのが、わたしをして「イマイチ」と思わせた最大要因であろうと思う。メインのお話自体も、若干無理があるような……抽選であなたに豪華客船のクルーズ旅行が当たりました! なんてメールか何かで連絡が来たとして、それにやったー!と素直に応じる奴なんているのだろうか?? まあ、いるんだろうな、きっと、とは思うものの、わたしは100%そんなのには引っかからないので、重大な秘密の暴露も、え、なるほど? うっそお? とか思ってしまったのも残念でありました。
 というわけで、わたしとしてはお話に関してはそれほど面白いとは思えなかったものの、そこかしこにちりばめられたトリビア的面白知識には、いちいち、へえ~と思ったわけで、わたしが全然知らず、初めて知った面白知識を二つほど書いて終わりにしよう。
 ◆豪華客船=一つの町である。なのに、警官なんていない。当然暴力沙汰や盗難なんかも普通に発生するわけで、まあとにかく大変、なんだそうだ。へえ~。確かに言われてみりゃそうすね。なるほど。おまけに、乗務員も1,000人レベルで乗っているため、もめ事も絶えないし、なんとセックス用連れ込み部屋なんてのもあるんだそうだ。この連れ込み部屋は、乗務員だったり、客だったり、フル活用されてるんですと。なんつうか、すげえ生々しくて知りたくなかったすね……。なんか、客の知らない裏側は汚らしいというか、不潔なイメージが頭にこびりついちゃったす。なお、不潔=精神的なものじゃなくて、実際的にきったねえ、バッチイという方向の不潔です。
 ちなみに、著者本人のあとがきによると、乗客は、乗船と同時に国外に身を置くことになり、船上での犯罪は、基本的に「船籍港の属する国の機関」の管轄下に入るのだそうだ。そして、アメリカはそれを問題視していて、アメリカ人に関して何か起きた時は、沿岸警備隊とFBIが捜査権を行使できるようになってるんですと。へえ~ですな。日本人は大丈夫なのでしょうか。まあ、大丈夫じゃないでしょうな、きっと。
 ◆豪華客船=一つの町である。てことは、膨大な廃棄物が発生する。本書の豪華客船の場合、発生するゴミのたぐいは1日9トン、屎尿なんかは1日28,000リットルですって。まあ、そりゃそうだわな。そして、それをどうしてるか知りたいすか? 本書では、基本垂れ流し、が現実なんだと書いてありました。本書の客船にはゴミ焼却装置がついているのにぜんぜん使われておらず、何故ならヨーロッパ圏の港は全て分別とリサイクルに理解がなく、ごみ収集施設がまったくないか、廃棄費用が高額か、という理由から、全部海に投棄されてるんですってよ。まあ、実際それで海が汚染されるとかそういうことはきっとないんだろうけど、なんかゾッとする事実にわたしはびっくりしたっすね。まあ、飛行機も上空で屎尿をぶちまけているという話も聞いたことがあるし、今更かもしれないけれど、28,000リットルというその膨大な量には、やっぱり驚きっす。

 というわけで、もう書いておきたいことがなくなったので結論。
 新聞の書評で知ったドイツミステリー『PASSAGIER 23』を読んでみたところ、どうもわたしの趣味には合わず、イマイチだった、としか言いようがない状態である。わたしとしては、登場キャラクターたち全員に共感を得られず、なんだかつまんない奴らというか、彼らが何をどうしようと、どうでもいいというか、関心を抱くことが出来なかったのがわたしの敗因だろうと思う。だって、なんつうか……頭の具合が悪いというか、冴えてないというか……とても友達になりたいと思うようなキャラはいなかったす。でも、まあ、いわゆる豪華客船に関する面白知識はそれなりに得られたので、その点だけは良しとしておきたい。なんかなあ……6時間チョイの読書はあまり楽しくなかったす。以上。

↓ つうわけで、こちらが愛する早川書房から出ている作品です。どうもまだ電子化されていないっぽいので、電子化されたら買うかも、ぐらいな感じかな……。ドイツ語原題は『Der Augenjäger』すね。
アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)
セバスチャン・フィツェック
早川書房
2012-04-06

 はーーーなんだかあっという間に読み終わってしまった。もちろん、わたしが大好きな「ジャック・ライアン」シリーズの新刊のことであります。日本語で読める最新刊『欧州開戦』の(3)(4)巻がやっと発売になり、わたしは5/27の日曜日に買ったのだが、ごくあっさり翌月曜と火曜の2日間で読み終わってしまった。
欧州開戦3 (新潮文庫)
マーク グリーニー
新潮社
2018-05-27

欧州開戦4 (新潮文庫)
マーク グリーニー
新潮社
2018-05-27

 今回のお話は、シリーズではおなじみのロシア大統領ヴォローディン氏がやらかす顛末なわけだが、一方でわたしとしては、いつも人の言うことを聞かないでやらかすジャック・ジュニアのその後にも大変注目していた。ジュニアは、かなり命令を聞かず、独断で行動するゆとり小僧だけれど、いつも結果オーライになるし、結果オーライどころかジュニアの独断が世界を救うことも多く、まあ、今までは特にキツイお咎めなどはなかったのだが、本作のラストでは、まあ、そうなるよな、というジュニアへの処分もあって、今後のシリーズ展開はどうなるのだろう、という期待?と不安?の残るエンディングだったように思う。なお、以下ネタバレにも触れると思うので、気になる方はここらで退場してください。

 それではまず、本作の物語をざっとまとめておこう。ロシア大統領ヴォローディン氏は、度重なる失敗で、ロシア国内での地位が脅かされている状態にあった。そのため、原油価格上昇を目論んでいて、世界各地で工作活動を行わせつつも、万一の時に備えて、自らの個人資産80億USドルを洗浄して隠ぺいしようとしており、それを我らが「ザ・キャンパス」の面々が阻止する、てなお話である。サーセン、超はしょりました。
 まあ、ズバリ言って本書(というかジャック・ライアンシリーズ)に描かれていることを素直に信じる人はいないと思うけれど、読むと実際面白いので、わたしとしては内容がメリケン万歳であっても別にどうでもいいと思っている。というわけで、本書の中で、わたしがこれは面白い、と思った点を列挙していこう。ストーリーの順番は無視して、面白かった順に書き連ねます。
 ◆NATO首脳の対応が愉快。
 本書では、ロシアが(親ロシアであるベラルーシを経由して)リトアニアへの侵攻を狙っていて、それに対してNATO(北大西洋条約機構)としては「第5条」の「集団的自衛権」を発動するかどうかが一つのカギになっている。要するに、NATO加盟国であるリトアニアへの侵略はNATO全体への侵略とみなし、それをNATO全体が全力で阻止する、というものなのだが、まあ、結論から言うと、NATOは集団的自衛権の発動には至らないで、何もしないで終わる。なので、ライアンUS大統領はUS単独でリトアニアに派兵するのだが、この、コペンハーゲンで開催されるNATO首脳会議での各国の対応がものすごく面白いんだな。これは、恐らくこうなるだろうな、という点では結構リアルなのではないかと思う。
 ■集団的自衛権発動に賛成派:イギリス・ドイツ・ポーランド・リトアニア
 ■集団的自衛権発動に反対派:フランス・オランダ・デンマーク・スペイン・イタリア
 このグルーピングは、地理的な要因も大きいように思える。つまりロシアと近いか遠いか、の話で、リトアニアが侵攻された後、でも十分だと思うかどうか、がカギになっているように見える。また「集団的自衛権」の行使には、「攻撃を受けた後」でいいのか「攻撃を受けそうでヤバイ状態」も含まれるのか、という点もポイントで、勿論、本作でのライアン大統領は、後では取り返しがつかなくなるから言ってんだよ、という立場。

 で、まずフランス大統領の主張をまとめると「ロシアが腐敗してるからと言ってそれをけしからんと言うのは内政干渉で、経済制裁がうまくいってるんだから外野の我々はそれ以上手出しすべきじゃない。それに、まだ侵攻は始まってない(=集団的自衛権発動要件に達していない)」というある種の正論ではある。しかしそれと同時に、いざ戦争となったら、フランスの負担が大きいのでヤダ、それにまだ先の話だろ、とも思っている。まあ、フランスがUS/イギリス/ドイツの意見に賛成することはないでしょうな。なお、本作執筆時の現実世界のフランス大統領はオランド氏かな。
 オランダは、本作登場する首相が「40代後半のハンサムな男」として描写されていて、その主張は「まだ何も起きていないので、派兵する義務はない」とし、そもそもオランダにそんな戦力はないっすよ、戦車なんて1台も持ってないし、と若干開き直り気味。ちなみに現実世界のオランダ王国の首相マルク・ルッテ氏は本作執筆時はまさしく40代後半で、2010年から長期政権運営中だそうですが、わたしは全然知らない人でした。
 デンマークは、本作ではヒステリックな女性首相が登場する。これは、現実世界でのヘレ・トーニング=シュミット女史のことで(首相歴2011/10~2015/06)、基本的に中道左派のお方。2015年に中道右派に負けてすでに辞職しているお方だが、まだお若いすね。現在51歳ってことは本作執筆時は40代中~後半ですな。で、本作ではとにかくライアンUS大統領が大嫌いな人として登場。彼女の主張は、ヴォローディンなんぞ古い軍隊を持っているだけの取るに足らん奴であり、ライアン大統領こそ反動的狂信者だ! と思いっきりケンカを売る。ここは読んでて笑っちゃいました。しかし、デンマークは北海/バルト海に突き出た要所でもあるわけで、そんな態度で大丈夫なのか心配ですな。
 スペインは、ドイツが「NATOが何もしないかどうかをロシアは探っていて、何もしないんだな、と分かれば即リトアニアに進軍する(ので、ライアンの言う通り行動に移すべき)」という発言の後で、「それじゃあ、やるぞ、おれたちは本気だぞ、遣ったらマジで報復するぞ、と言い続ければいいじゃない。それでロシアは引っ込みますよ。本当に軍を動かすのは挑発しすぎでしょ」とまあ、果てしなく呑気な態度で、ここもなんだか笑えました。現実世界での時の首相はマリアーノ・マホイ・ブレイ氏で、このお方は現在も首相ですな。
 そして一番最後に発言するイタリア首相がもう最高なのです。曰く「彼(ヴォローディン)が侵入してきたら、われわれは引き下がればいい。あるいは、もともと係わりにならないようにすればいい。そう……わたしとしては最初からかかわりにならないようにするという方を強く望みますね」と、もう軍事同盟であるNATOを完全否定。笑っちゃった。そして「もちろん外交的に、ひょっとしたら経済的にも、干渉はするわけです。そしていまはそんな野蛮なことをする時代ではないと言って諭し、こちらのほうが道徳的に優れていることを行動で示すのです」とまるで宗教指導者のようなことを抜かすに至る。これは、現実世界の当時の首相はマッテオ・レンツィ氏かな? ドイツのメルケル女史が大嫌いで有名な、超若いお方(1975年生まれ)すね。
 とまあ、こういった反対派の反応が、わたしとしては本書では一番面白かったかも。ちなみに、ロシアは、なんと作品世界の中においては、かつて中国と戦争した時に一時的にNATOに加盟したこともあったのですが(『大戦勃発』にて)、その後ヴォローディン氏の政権となってあっさり脱退したみたいすね。
 ◆ヴォローディン氏……やることなすこと失敗だらけで人生終了の巻
 ズバリ、ネタバレですが、最終的にロシア大統領ヴォローディン氏は、ロシア国内を牛耳る「シロヴィキ」に殺られます。残念ながら。わたしは、最悪、シロヴィキの刺客から逃れるために、まさかのUS亡命とか、そんな展開を妄想していたのだが、そんなことにはなりませんでした。しかもこれまた残念なことに、ヴォローディン氏がなぜ殺されたかというと、政策や戦争の失敗ではなく、自分だけ自分の金を洗浄して安全な口座へ避難させていたこと、がバレたことにある。それすなわち「シロヴィキ」を裏切ったということだ。本書の中では、「シロヴィキ」なる連中は、端的に言えば「国家の富を自分の財布に入れる泥棒」に過ぎず、ならず者なわけで、ヴォローディン氏亡き後にロシア大統領となった人物も、まったく同じ穴の狢で、ライアンUS大統領としてはまだまだこの国はダメだな、と思って本作は終わる。
 で、当然読者たる我々としては、ヴォローディン氏=現実世界のプーチン大帝という図式になるわけだが……まあ、プーチン氏が独裁者なのは間違いないし、想像を絶する恐ろしいお方であるのも、きっと間違いないでしょうな。しかし、今のプーチン氏を見ていると、プーチン氏を脅かす存在(=本書でヴォローディンが恐れたシロヴィキ連中)がいるのかどうかは、もうさっぱり想像もつかないですな。どうなんでしょうか、その辺は。ま、まだまだ当面はプーチン大帝の独裁はかわらないでしょうよ。世界で怒らせてはマズい人ナンバーワンレベルの恐ろしいお方であるのは間違いなさそうですな。
 ◆いけいけ僕らの USS-James Greer!
 今回、北海(いや、バルト海だっけ)において、合衆国海軍のイージス艦と、ロシア海軍の秘密兵器である原潜のバトルが勃発するのだが、この一連のシーンはとてもワクワクしたっすね! とりわけ、わたしを含めシリーズのファンとしては、そのイージス艦の名前がUSS-James Greerという点にもう大興奮というか、うれしくなっちゃいますな。もちろん、James Greerというのは、ライアン大統領の師匠であるグリーア提督のことで、初期のシリーズでは重要人物だったのだが、もうかなり前にガンで亡くなってたんすよね。その名を冠したイージス艦の大活躍は、ファンにとってはホントに「分かってる」配慮で嬉しかったです。どうやら艦長は次回作ではテロの標的として登場するみたいなので、楽しみですな。命を狙われるので、楽しみってのはマズいか。生き残れるのかしら? くそう! 早く読みたい!
 ◆ザ・キャンパスは今後どうなる問題
 (1)(2)の感想をサラッと書いた時も記したように、本シリーズの「正義の味方」である「ザ・キャンパス」は、現在深刻な人手不足の状況にある。前作でベテランのサム・ドリスコル兄貴が殉職し、さらに本作ラストではとうとうジュニアにも処罰が下り、これでもう、現場工作員としてバリバリに戦えるのはシャベスとドムの二人しかいなくなってしまった。そんな人手不足の折、本作ではすっかり年老いたクラークも現場に出張るわけだが、結構あっさり失敗して殺されかけ、その後、これまたあっさりリベンジする展開だが、まあ、ちょっとアレだったかもしれない。ご都合主義というかありえないというか……。今回も、クラークのピンチは、超有能な美女アダーラ・シャーマン嬢のバックアップで乗り切るわけだが、本作では一切描かれていないけれど、アダーラ嬢は実はドムとこっそりイイ仲に進展してるし、アダーラ嬢の現場工作活動への動員率も上昇中である。ジュニアはジュニアでゆとり恋愛脳だし……。もうちょっと大人になってほしいすなア……彼には。
 なので、わたしはそろそろザ・キャンパスに新人が入ってくるのではと期待したのだが、本作では結局それもナシ。もう、ほんと深刻にヤバい状況だと思う。なんでも、訳者によるあとがきによれば、すでにUS本国では発売されている次回作で「ザ・キャンパス」シリーズは完結になるのだとか。まあ、もう厳しいよな……本作でも人手不足が原因で起こるピンチが多く、ホントにギリギリの闘いでした。そのせいで、本作はもう(4)巻の冒頭ぐらいまで、全く事件の行方が分からず、(4)巻中盤ぐらいからあれよあれよと解決に向かって片がついていく展開になっており、正直に言うとかなりバタバタしているというか、結構あっさり悪い奴らは退治されちゃった感がありましたな。その点では、ちょっとあっさり感漂うエンディングだったと言えそうです。
 どうやら次回作はUS国内が舞台のようで、大変楽しみなのだが……極めて残念なことに、われらがCLANCY先生の後継者、Mark Greaney先生もまた、次の作品でお別れだそうです。マジかよ……でもまあ、Greaney先生には、わたしの愛してやまない「グレイマン」シリーズに集中していただきたいすね。「ジャック・ライアン」シリーズ自体は、また別の先生が引き継ぐそうなので、そちらは心配ないようです。わたしとしては、今後もシリーズが続く限り、やっぱり読んでしまうと思うし、楽しみにしたいと思います。

 というわけで、まとまらないのでもう結論。
 新刊が出ると必ず買って読む「ジャック・ライアン」シリーズの、日本語で読める最新作『TOM CLANCY'S COMMANDER IN CHIEF』~トム・クランシー ジャック・ライアンシリーズ『欧州開戦(3)(4)』が発売になったので、即買って読み、楽しませてもらったのだが、まあ、面白かったけど、若干あっさりと事件は収束してしまった感はありますな。そしてついにライアンUS大統領の天敵(?)、ロシアのヴォローディン大統領はあの世に逝っちまいました。しかしそれでもロシアという国は全く変わることなく、代わりに別の悪党が出てきただけで、なんつうか、永遠に人類は殺し合うんでしょうなという無常感漂うエンディングでした。ついでに、独断専行で世界を救ってきたジュニアにもお灸が据えられ、今後のシリーズ展開に大きく影響を与えそうな気がしますね。というわけで、ますます次の作品が早く読みたいのだが、古臭い気質の新潮社はどうせ次作も電子書籍は出さないだろうし、紙で出るのもまた1年ぐらいあとなんでしょう。恐らく新潮社の決算は年々加速度的に悪化していると思うが、ま、滅びていくんでしょうな、そういう会社は。さっさと別の版元が版権を握ってほしいと思います。以上。

↓ 次回作はもう2年前にとっくに発売されてます。つうか、久しぶりに原書で読もうかしら。電子ならすぐ手に入るし!

 約1年ぶりに新刊が発売となりました。何のことかって? そんなの、わたしが大好きな「ジャック・ライアン」シリーズの新刊のことに決まってるでしょうが! と半ばキレ気味に始めたいのだが、なぜわたしが若干キレ気味かと言うと、版元の新潮社に対して軽くイラッとしているからだ。
 というのも、本書『TOM CLANCY'S COMMANDER IN CHIEF』(邦題は「欧州開戦」となかなかセンスのないダサいものになっている)がUS本国で発売になったのはもうかなり前で、ようやくの日本語版発売だし(つまり遅せえ)、おまけにいまだに新潮社は、相変わらず電子書籍では全然発売する気がないようで、今回も紙の書籍(文庫本)でしか発売されなかったためである。そしてもう一つついでに言うと、初期「ライアン」シリーズのように文春から出版されていたならば、きっと本書は上下巻の2冊(あるいは上中下の3分冊)で出されたであろう分量なのに(そして電子版も同時に出していただろう)、F〇〇K'n 新潮社はまたしてもうっすい文庫4分冊、しかも(1)(2)を出した1か月後に(3)(4)を出すという、読者のことを全く考えない営業戦略をとっているのも実に腹立たしいと思っている。以上のことに対して、わたしはイラッとしているわけだが、もちろんのことながらこれは、一言で言うと完全なるいちゃもんであり、言いがかりも甚だしいので、普通の人は何も感じないだろう。ホントになあ……新潮社はおっくれってるー、だぜ。やれやれ、はーーー書いたらスッキリした。
 さて。というわけで、本当は(3)(4)が発売されて読み終わってからまとめて感想をしたためようと思っていたのだが、恐らく、年々記憶力が低下しているわたしとしては、少しメモをしておかないと完璧忘れてしまうのが目に見えているため、こうしてキーボードをたたいているのである。なお、今回の(1)(2)巻は4月末に発売され、GW中にとっくに読み終わっておりました。くっそう、続きが早く読みてえ!
欧州開戦1 (新潮文庫)
マーク グリーニー
新潮社
2018-04-27

欧州開戦2 (新潮文庫)
マーク グリーニー
新潮社
2018-04-27

 というわけで、「ジャック・ライアン」シリーズの日本語で読める最新刊、である。本書は、もうUS版発売時から、次は「眠れる熊」としてシリーズではおなじみの、ロシア大統領ヴォローディン氏がまたやらかすお話として、わたしは早く読みたいなあ、と願っていた物語である。端的に言うと、「ライアン」世界では、ロシアは4作前の「米露開戦(原題:Command Authority。日本語訳されてないJrの単独スピンオフと日本語訳されてるドム単独スピンオフ含めて4作前)」でコテンパン(?)にやられており、ヴォローディン大統領はロシア国内を支配する「シロヴィキ」層からかなり厳しい態度をとられていて、経済政策の失敗(と言っていいのかな?)も重なり、いよいよヤバい状態にあり、ならば殺られる前にせっせと溜めた個人資産80億USドルを安全なオフショア経由で「洗浄」して、クリーンな金として分散させよう、という意図をもって悪だくみをする、てなお話である。サーセン。かなりはしょりましたし、(3)(4)巻でどう展開するか分からないままテキトーなことを言いました。わたし的には、その「洗浄」の手段としてビットコインを利用する展開にはかなり興味深く物語を見守っている段階であります。
 なお、「シロヴィキ」とは、「ライアン」世界の言葉で言うと、要するにソヴィエト崩壊時にちゃっかり多くの利権と権力を握って現在もロシアを裏から支配する「情報・治安機関か国防機関」出身の人々のことで、つまりは元KGBと元軍人を主体とする悪い奴らだ。ソヴィエト崩壊からもう30年、当時若かった彼らももう60代70代に入りつつあり、ほぼあらゆる国営企業の株をごっそり持っていて、いまだロシアを裏で支配しているという設定になっている。
 そしてもう一つ、設定として、対するGOOD GUYチームである「ザ・キャンパス」の状況をメモしておくと(※もうザ・キャンパスなる組織が何者かの説明はしません)、日本語訳での前々作『米朝開戦(原題:Full Force and Effect )』で、ベテランのサムが殉職し、皆かなりしょんぼりな状況である。
 というわけで、さっそく読んで、あっさり読み終わった(1)(2)巻だが、初めて知って、へえ~?と思った点と、現代の現実世界との関わり、それから、各キャラについて思うことをメモしていこうと思う。
 ◆ロシアの飛び地「カリーニングラード州」
 わたしはまったく無知で知らなかったのだが、↓この地図で、ポーランドの北とリトアニアの間に、バルト海に面した国境に囲われてる部分があるでしょ?

 ここは、カリーニングラード州という、ロシアの領土(飛び地)なんですって。これって常識? 全然知らなかった。地図をもっと引いてみると、モスクワとの位置関係が良くわかると思う。で、リトアニアの東にあるベラルーシは、最後の独裁国家と言われている通り親ロシア国家で、ロシアとしては、ベラルーシを通って、NATOに加入した裏切り者リトアニアを進軍してカリーニングラードへの回廊を築こうとしている、というのが本書でのロシアの軍事ルートだ。そしてリトアニアは、もういつ戦争が始まってもおかしくないヤバい状況にさらされているのに、どうせNATOはグズグズして、集団的自衛権が発動されてもまるで頼りにならないため、戦争が大好きな(と思われている)ライアン大統領としては、NATO首脳会議に合わせてリトアニアへの軍派遣を承認してもらいたいと思っている。そして、シリーズではおなじみのメアリ=パットDNI(国家情報長官)は、それに先立って、どうしても要員の足りないCIAを援護してもらうため、直接「ザ・キャンパス」を訪れ、その要請を受けてシャベスとドムの二人が先遣隊として情報収集のために現地リトアニアへ飛び、CIAリトアニア局長と行動を共にしている状態、が(1)(2)巻だ。なんかもう、我々日本人的には全然お馴染みではないけれど、読んでいるともうすごいリアルというか有り得そうな展開が恐ろしいですな。
 ◆眠れる熊ことロシア大統領ヴォローディンの狙い
 もう既に上の方で書いた通り、ヴォローディン大統領は、ロシアを裏で支配しているゼーレ的な「シロヴィキ」会議において、かなり立場が危うくなっている。その原因は、経済政策の失敗によるもので、要するにゼーレの連中は、自分の金を心配しているわけだ。原油価格の下落、主に東欧圏のエネルギー(天然ガス)を支配していたのに、ロシア離れが進んでいること、等によるロシアの影響力の低下はお前のせいだ、と責められてるわけです。
 なので、ヴォローディン氏は、実際殺されるかも、ぐらい心理的に不安な状況で、彼が取る行動は2つある。まず第一に、80億USドルもの個人資産を「洗浄」して、保全しようとしている。要するに完全なる私欲ですな。そしてもう一つが、原油価格をつり上げるような、危機の演出、だ。(1)(2)巻の段階では、様々な破壊活動や軍事行動で世界を不安定にしようとしているわけだが、ついでに、裏切り者のリトアニアもブッ飛ばして領土を広げようとも思っている(ようなポーズを取っている)。さらには、ヴォローディンの天敵ともいえるライアンUS大統領に対する脅しを強化するためにも(?)、現在、最新鋭原子力潜水艦をUS東海岸直近へ派遣・潜航させており、(1)(2)巻の段階では「最新技術で姿を消した」ミサイル原潜が大西洋を南下しつつある状況だ。ヤバし。
 まあ今のところ、わたしにはヴォローディン氏の一番の目的は80億USドルもの資産を安全に隠す(そしてハッピーな引退生活を暮らす)こと、そして何より「シロヴィキ」に殺されないことにあるように思えるので、あくまで「危機を演出」出来れば十分で、実際に戦火が始まる始まらないに関係なく、戦争を本気でやろうとは思っていないのではないかという気がしている。
 しかしそうなると……最終的にはまさかのUS亡命もあり得るんじゃないかと今後の続きをとても楽しみにしております。「レッドオクトバー」や「カーディナル」のように、ヴォローディンが亡命したら面白いのにな。でもその時には、たぶん金は全部取り上げられちゃうか……? でもまあ、ロシアに残っても命の保証はなさそうだし、金より命を取る可能性はナシじゃないような気がしている。ホント続きが楽しみす。
 ◆人材不足の折、ゆとりJrは全く困った奴よ……。
 「ザ・キャンパス」の人員は減ってしまい、シャベスとドムは現場に出ている中で、一方のライアン大統領の長男(Jr.)は、まずローマにて得意の金融情報の調査のために活動しているところから物語は始まる。のだが、まーたこの小僧は仕事をしながら女とイチャつくゆとりを見せ、余裕でヘマをやらかすのはもう読んでてアホかコイツとしか思えなかった。コイツは、そもそもまだガキなので、仕方がないと認めるにやぶさかではないですが、まあ、いまだに(大統領の子息という)立場をわきまえず、現場の工作仕事をしたがるし、女も大好きだし、実際のところ、かなり足手まといなのでは? という気がしてならない。確かに頭が非常にいいし、戦闘力もまずまずだけど、Jr.でなくてはならない理由は、ほぼないと思う。さっさとヘンドリー・アソシエイツはもっと経験豊富で、強くて、頭のイイ男をリクルートした方がいいと思いますね。あるいはアダム・ヤオ君あたりをキャンパスに入れちゃえばいいのにな。いや、彼は頭と度胸は超一流だけど戦闘力は低いかもだし、そもそもメアリ=パットが離さないか。『米朝』で使い捨てられたヴェロニカが生きていればなあ……。まあいずれにせよ、ザ・キャンパスの人材不足はかなり深刻で、人員補充が急務なのは間違いないと思う。
 あ、そういえば、本作では「レインボー」時代のクラークの知り合いが一人出てきて、なかなか良いキャラでした。おばちゃんなので戦闘力はないけど、そういや「レインボー」出身者をリクルートすればいいのにね。それが出来ない理由があるんだっけか?
 ◆ところでDPRK=北朝鮮って……
 まったく本作には関係ないけれど、ライアン世界では、前々作でついにUS大統領の直接暗殺という暴挙に及んだ北朝鮮。しかし現実世界ではまさかの米朝会談開催も見えてきつつあるほど、世界はあっという間に変化してしまった。これは、Tom Clancy大先生がご存命だったら予測しえてのだろうか……Clancy先生が生きてたら、今の情勢は驚いただろうなあ……
 ◆というわけで(2)巻ラストは……
 お話としては、シャベスとドムのいるリトアニアはいよいよキナ臭くなってきており、そしてヴォローディン大統領の資金洗浄のために、手下がビットコイン取引をしようとしている英領ヴァージン諸島には、クラーク直々に、超有能なアダーラ嬢とともに乗り込んでおり、ヘマをやらかしたゆとりJr.はDCに強制送還された状況にある。そしてヴォローディン大統領はお抱え国営テレビで何やら発表しようとしており……というところまでで、要するに、早く続きが読みてえ! という感じです。今のところ。

 というわけで、もうクソ長いので結論。
 いや、もう結論は上記の通り、早く続きが読みたい! の一言に尽きます。もちろんClancy先生ではなく、わたしの大好きな「グレイマン」シリーズの著者Greaney先生による物語だけれど、今のところわたしとしては不満はないです。はい。しかし、ホントJr.はなあ……なんつうか、もっと慎重に行動していただければと思います。そしてヘンドリー・アソシエイツの人材不足はかなり深刻ですよ。サムを亡くしたことは勿論痛いけれど、あと5人ぐらいは必要でしょうなあ……まあ、とにかく、しつこいですが早く続きが読みたいです。以上。

↓ 実はもう、US本国ではかなりシリーズの先の方まで発売になっている。本編は下の1作だけか。テロ系の話みたいすね。他は単独スピンオフかな。新潮社よ、早くしてくれ! 出来ないなら版権を文春辺りに譲れ!



 先日、インターネッツなる銀河の片隅にある、わたしの愛用する電子書籍販売サイト「BOOK☆WALKER」において、何かおもしれえ小説ねえかなあ、とあてどなく渉猟していたところ、ふと1冊の作品に目が留まった。なんでも香港の作家による「華文ミステリー」なんだとか。へえ? と思い、とりあえずあらすじをチェックして、試し読みをしてみたところ、面白そうだったのでまずは買って読み始めることにした。 
 それがこの作品、『13・67』という小説である。
13・67 (文春e-book)
陳 浩基
文藝春秋
2017-09-30

 著者の陳 浩基先生は、日本語読みなら、ちん こうき、中華読みならチェン ハオジーと発音するらしいが、どうやら世間的?にはサイモン・チェンと名乗っておられるようだ。ま、わたしの知り合いの香港人や台湾人のみんなは英語名を使っているので、そういうものなのだろう。1975年生まれの香港人。敢えて中国人ではなく香港人と言っておく。えーと、1997年の返還当時は22歳か。ゲームの企画や漫画の編集者などの経験もあるそうな。まあ、くわしいことはWikiでも見てもらうとして、今年の誕生日で43歳となるチェン先生だが、ところでこの作品は、本屋でどんな扱いを受けているのだろう? と読み終わった昨日、実際の書店を回ってみたところ、なかなか華々しいPOPがついて置かれていたりしていた。わたしは全く知らなかったけれど、書店店頭に並んでいた紙の書籍に巻かれた帯によると、本作は去年の「このミス」の海外部門2位だったそうな。おまけに文春のミステリーベストにも入っていたらしい。へえ~。わたしは「このミス」なんぞに全く興味はないが、本を売る立場としては有り難い追い風だろう。奥付をチェックすると、わたしが見た本は既に2刷と重版もかかっているようで、こういう作品が売れるのは、とても喜ばしいと思う。実際に売れているか知らないけれど。
 あ、チェン先生自身が本作についてインタビュー受けてる記事があるからURL貼っておくか。先生自身のお写真もあるのでご興味あればどうぞ。正直記事自体はあまり大した内容ではないす。
 香港ミステリーの超ヒット作『13・67』はこうして書かれた 陳浩基氏が「香港返還」をあえて淡々と描いたワケ
 さてと。何から書くか……。本作は、発売になったのが去年の9月なので、かなり今さらなのだが、既にもうそこら中であらすじやネタバレが書かれている通り、香港の警察官を主人公とした、事件解決ミステリーで、短編連作の形をとっている。一つ一つの短編は、名探偵的な頭脳明晰な男による「本格」ミステリーである。そして全体としてみると、その男の年代記であり、同時に激動の香港史、という「社会派」ミステリーにもなっているという面白い構成だ。
 陳先生自身によるあとがきに詳しく書いてあるので、そちらを読めばわかることだが、もともと「安楽椅子探偵」というお題の元、第1話を書き、そのうちにその男の生涯について書きたくなり、膨らんでいったのだそうだ。また一つ一つの短編は、それぞれ香港においては重要な年を舞台としていて、当時の香港の空気も感じられて、なんか、勉強になった。わたしの知ってる香港人はみんな英語が達者だけど、この作品を読んで、ああ、そういうことなのか、というのも良くわかった。
 なお、香港のある程度の地理が分かっていると物語はより一層イメージしやすく理解しやすいと思う。例えば「旺角」ってわかりますか? これ、香港について知っている人ならちゃんと「モンコック」と読めるだろうし、場所もあの辺、と分かるはずの有名な場所だけど、尖沙咀(チムサーチョイ)とか、中環(セントラル)とか、香港島と九龍(カオルーン)を結ぶ海底トンネルとか、ちょっとした香港知識があった方がより一層楽しめると思う。
 それでは、まずは本作の構造と登場人物についてごく簡単にまとめておこうと思う。まずは、構成についてだが、既にさんざん書いちゃったように、本作は6つの短編からなる作品で、特徴的なのは、「段々時間が遡っていく」点であろうと思う。どういうことかは、下の表を見て下さい。また、主人公がその時何歳なのか、香港でどんなことがあった年なのか、も、メモしておこう。
 なお、ネタバレには一切配慮しないので、未読の方はこのへんで退場いただいた方がいいと思います。
章タイトル キャラ年齢
第1話 黑與白之間的真實
(黒と白のあいだの真実)
2013年
クワン:67歳
ロー:44歳
雨傘運動(反中デモ)の前年
第2話 囚徒道義
(任侠のジレンマ)
2003年
クワン:56歳
ロー:34歳
SARS流行、中国との自由貿易協定締結、治安条例反対50万人デモ勃発の年
第3話 最長的一日
The Longest Day
(クワンのいちばん長い日)
1997年
クワン:50歳・定年の日
ロー:28歳・CTB異動直後
香港返還の年
第4話 泰美斯的天秤
The Balance of Themis
(テミスの天秤)
1989年
クワン:42歳
ロー:20歳
天安門事件の年
※初めてクワンとローが出会う
第5話 Borrowed Place
(借りた場所に)
1977年
クワン:30歳
※警察をはじめとする公務員汚職根絶のために「廉政公署」が発足して3年後
第6話 Borrowed Time
(借りた時間に)
1967年
クワン:20~21歳?
文革の翌年で、左派による反英暴動(六七暴動)のあった年
 ※年齢は本文にある時はそのまま、ない時は、記述から逆算。
 ※誕生日前か後かで1歳の誤差があるかも。それが累積して2歳誤差もあり得る。
 ポイントとしては、主人公のクワンは1997年の香港返還の年に定年を迎え、六七暴動のあった年に、人生の転機となる大きな事件に遭遇したという点なのだが、これは最後まで読むと、また最初に戻って読みたくなるという非常にお見事な構成になっているように思えた。もちろん、もうお気づきのことと思うが、本作のタイトル『13・67』は2013年から1967年、ってことですな。1967年の暴動は反英(その背後には左派=中国の影響)、2014年の雨傘運動は反中(=学生による民主運動)なわけで、香港は、その支配に対して、常に闘ってきたという激動の歴史の対比はとても興味深いと思う。まあ、雨傘は実質学生側の負けというべきなのかなあ、残念ながら。
 さて。次にキャラ説明をごく簡単にやっておこう。
 ◆クワン:漢字で書くと「關 振鐸」。クワン・ザンドーがフルネーム。時代時代によって階級が違う。17歳(1963~1964年ぐらい)で警官に。第6話で描かれる1967年の出来事がきっかけになって、イギリスへ留学。香港の警官としては異例?の出世コースに。ホームズ的な推理力は抜群。なんでも、香港の警察は50歳で定年なんだそうだ。その後クワンは嘱託としてある意味自由なコンサルタント的な立場となって警察機構に属することに。定年時は本庁CIB(Criminal Intelligence Bureau=捜査情報室)Bセクションの課長。上級警視。「名探偵」と呼ばれるスーパーコップ。彼の手法は、すべてが清廉潔白な捜査ではなく、時に違法?な、グレーなものでもあるけれど、それはクワンの、警官として一番重要なことは市民を守ること、という信念に基づいているため、主人公の資格を失うことなく明確に「正義」の味方として描かれているとわたしには思えた。
 ◆ロー:駱 小明。ロー・シウミン。生真面目。クワンの22歳年下の愛弟子。実際クワンの部下だった期間は半年しかないが、クワンを「教官」と呼び、子供のいないクワンは彼を子供のようにかわいがった。第2話では西九龍/油尖地区の凶悪犯罪捜査係・第二小隊隊長。第5話と第6話には登場しない(まだ全然子供だったり生まれてないので)。
 ◆阮 文彬(げん ぶんひん)&王 冠棠(おう かんしょう):第1話において阮は豊海グループ総帥であり殺害された男。そして王はその親友であり執事であり被疑者。ネタバレすぎるから、これ以上は書きません!
 ◆左 漢強(さ かんきょう)&任 徳楽(じん とくらく):二人とも第2話で出てくるマフィアのボス。もともと二人とも「洪義聯(こうぎれん)」というマフィアの幹部だったが、年下の冷徹な左が跡目を継ぎ、年上で、「極道の仁義」を守る任は「興忠禾(こうちゅうか)」という組織を作って脱退した。どんどん勢力は左が率いる「洪義聯」に食われ、あと数年もすれば「興忠禾」は消滅するといわれている。左の表の顔は芸能プロダクション社長で、一般社会的には全く極道とは関係ない人物、と思われている。
 ◆ツォウ:曹 坤(ツォウ カン)。第3話に出てくる警視部長、クワンが「ツォウ兄」と呼ぶ4歳年上の警察幹部。50歳で引退を決意したクワンに、破格の条件で「顧問」として残ることをオファーする。
 ◆石兄弟:第3話と第4話に出てくる凶悪犯罪ブラザーズ。石 本添(せき ほんてん)が兄。非道卑劣な頭脳派。石 本勝(せき ほんしょう)が弟。まばたき一つせず人を殺す冷血な武闘派。
 ◆コー:高 朗山(コー ロンサン)。第4話に出てくる警部部長。クワンの3歳年下。名探偵として既に名高く、検挙率抜群であったクワン(この時クワンは既に警視)に若干嫉妬心アリ。ネタバレだけど、彼はイイ人です。不器用な男ですが。
 ◆TT:鄧 霆(タン ティン)。そのイニシャルから「TT」と呼ばれるハッスルデカ。銃の腕は抜群だが、クワン曰く「頭も体も切れるが、あまりにも性格が粗暴すぎる」男。第4話時点でのローの上官。ちなみにこの時、ローは警官3年目で念願の刑事になったばかり。
 ◆グラハム・ヒル:第5話で登場するイギリス人。3年前に出来た「廉政公署」の捜査官。イギリスではロンドン警視庁所属の警官だった。イギリス本国ではオイルショックに続く景気低迷で借金を抱え、にっちもさっちもいかなくなっていた時に、「廉政公署」設立のための人員募集を見て応募し、香港へやってきた。これもネタバレだけど書かせて! 実は、クワンのイギリス留学時代の教官(!)。
 ◆私:第6話の主人公。これが誰だかは超ネタバレなので書きません! よーく読めば気付けたのかもしれないけど、わたしの想像とは違う人物で驚き! こう来たか!とやられた気分です。
 ◆アチャ:「私」が出会う生真面目な制服警官。識別番号4447。そのため「私」は彼を「阿七(アチャ)」と呼んでいた。彼の正体については予想通りでした。が、ラストは全く予想外でこれまた驚き。そういうことがあったんすね……なーるほど……的な。そしてそのことを知ると、第1話をもう一度読みたくなります。

 とまあこんな感じかな。そして各話のお話については……やっぱりネタバレすぎるので詳細に書くのはやめておきます。ごく簡単ににまとめると……
 第1話:とある企業グループの総帥が殺された! 身内に犯人がいるとにらんだローは一計を講じて犯人をあぶりだすのだが……的なお話で、なんか若干SFチック。
 第2話:古き「極道の仁義」を守る親分と、冷血で暴力によって勢力を増している親分の話。冷血親分の表の顔である芸能プロダクションの売り出し中の女の子が殺され、仁義親分の息子が犯人じゃないか、と思いきや、実はそこには……的な話で、全く想像外の展開で、とても面白い。
 第3話:かつてクワンが逮捕した凶悪犯が脱走し、追跡する話。実は巧妙なトリックで犯人は……! 的な展開で、ちょっとだけ偉くなったローはクワンの推理に仰天する話で、わたしも読んでて仰天した。
 第4話:第3話の凶悪犯の弟を逮捕しようとした時のお話。そこには計算された警察内部の陰謀が……的な話で、もちろんとても面白い。刑事になったばかりのローとクワンが出会うきっかけでもある。
 第5話:イギリス人捜査官の息子が誘拐された! 果たして犯人の狙いは!? 的なお話。ラストの展開は、そういうことだったのか! と膝を叩きたくなったす。
 第6話:反英暴動のさなか、狭い下宿に住まう「私」は爆弾テロの計画を聞いてしまい、顔なじみの制服警官「アチャ」にその話を伝え、「私」と「アチャ」が大追跡する話。非常に面白く、「私」と「アチャ」がいったい誰なのか、が最大のポイント。そしてラストはかなりグッときます。たぶん。

 というわけで、わたしは第1話から第2話あたりまでは、これは要するにホームズとワトソンのようなバディものなのかな? と思いながら読んでいたのだが、話が進むにつれてそうでもなく、非常に独特な物語だったように思う。最初は、なんだか日本の刑事もののテレビドラマのような気がしていたし。「相棒」的な。第6話なんかは、ジャッキー・チェン的なアクションもあるし、第4話なんかは『インファナル・アフェア』的などっしり重い空気感もあって、それぞれが独立した雰囲気があると思う。いずれにせよ、やっぱり主人公クワンのキャラがとても良く、しかもそのキャラ誕生のきっかけとなった話もきちんと第6話で描かれていて(しかもそれが非常にほろ苦い!)、最後まで非常に面白く読むことができた。ホント、面白かったす。

 というわけで、結論。
 ふとしたきっかけで読んでみた華文ミステリー『13・67』という作品は、まず第一にとても面白かった。恐らくわたしはこういった華文ミステリーを読むのは初めてだったと思う。正直、香港にこんな真面目で有能な刑事がいたんだ、なんて失礼な感想すら抱いてしまった。それぞれの話のトリックは実に巧妙で、ズバリ、わたしが読みながら想像した結末とはどれも違っていて、すべての話で、な、なんだってーー!?と驚くことになったのである。お見事、でありました。そして香港のこれまでの歴史も知ることができて、とても勉強になった作品で、そういう意味でも、読んでよかったと思う。作者の陳先生は相当なワザマエですね。なので、さっそく陳先生の日本語で読める別の作品も読んでみようと思います。こういう時、電子書籍は便利ですなあ。本屋で探したけど見つからなかったので、次も電子で読みます。たのしみっす。以上。

↓ で、こちらがその、陳先生の日本語で読める別の作品です。あらすじを読むかぎり、こちらも超面白そう! 第二回島田荘司推理小説賞受賞作だそうで、楽しみっす。
世界を売った男 (文春e-book)
陳 浩基
文藝春秋
2016-08-19

 けっこう前に、とある小説の映画化のニュースを見て、へえ? と思い買った本がある。それはもう撮影風景の写真入りのニュースで、ふーん、じゃあ、原作小説を読んでみるか、という気になったのだが、出だしを読み始めて、どうも世界に入って行けず、そのままほったらかしていたのだが、確か12月ごろにいよいよ予告も公開され、それを観て、やばい、さっさと読まないと、という気になった。その作品とは ↓これのことです。

 ご覧の通り、主役と思われる女性を演じているのは、クイーン・アミダラでお馴染みのNatallie Portman女史で、おう、もう36歳か……相変わらずお美しいのはいいとして、どうやらその旦那?と思われる男を、猪突猛進なダメパイロット、ポー・ダメロンでお馴染みのOscar Isaac氏が演じているようだが、わたしとしては、最初のニュースで主演がNatallie女史であることを知っていたものの、この予告を観て、これはまた一体どういうお話なんじゃろか? ということが真っ先に気になり、なのでまあ、さっさと原作を読んでみるか、という気になったわけである。
全滅領域 (サザーン・リーチ1)
ジェフ・ヴァンダミア
早川書房
2014-10-24

 この本を買うときに調べてみたところ、我が愛する早川書房から2014年にとっくに原作小説は発売になっていて、おまけに調べればすぐわかる通り、「サザン・リーチ」というシリーズ3部作、である。作者のJeff VanderMeer氏のことは全く知らなかったし、この3部作のことも全く知らなかったが、とりあえずあらすじも読まずに3冊をカートにぶち込み、すぐに電子書籍で買ってみた。
 そしてすぐに読み始めたのだが……これがまた恐ろしく読みにくく、いや、というより恐ろしく分かりづらく、最初の30ページぐらいで一度放置してしまったのは冒頭に記したとおりである。で、年始にまた読み始め、およそ4日ぐらいかかってやっと読み終わった。最初の1巻目、だけですが。
 一応自分用記録としてメモしておくと、電子書籍に備わる便利な機能、「読書ノート」に記録されたログによれば、330ページの作品を、わたしは281分で読み終わったんだそうだ。へえ? もっと時間がかかったような気がするけど、そんなもんか。つうか、集中して一気読みしたのではなく、ホント少しづつ読んでたんだなあ。なるほど。
 で。読み終わった感想をズバリ言うと、かなりイマイチ、であった。1巻目を読み終えて、すぐに2巻目に入っているのだけれど、冒頭から、えっ!? じゃあ1巻目の主人公は……ああ、そういうことか? という展開で、まだ24ページしか読んでおらず、またもや、1巻目の最初と同様に、なんだか先に進めずにいる。何故そんな感想になってしまったかを、少しまとめておこう。
 まず、物語である。
 なお、ネタバレを気にせず書くので、気になる方はここらで退場してください。
 恐らく、この小説を読んだ人が、冒頭に貼りつけた映画の予告映像を観ると、ほほう、結構雰囲気出てるじゃん、と感じると思う。つまり大体は、冒頭の予告映像から想像できるような物語だ。ごく簡単にまとめると、なにやら、謎の「エリアX」なる謎空間が地球上に発生、その境界線を超えて、謎空間を探索に行くお話である。どうやらその謎空間探索は、これまでも何度も行われているものの、消息不明になったり、ある日突然自宅に帰ってきたり(その帰還経路の記憶ナシ)、と、どうもロクな成果はないらしい。そして第11次?探索隊から帰ってきた夫が、まるで別人のようになってしまったため、その妻たる主人公が、第12次探索隊に出動する、てなお話である。
 なので、わたしとしては、きっとその謎空間に秘められた秘密が一番のポイントだろうし、その謎空間で主人公の出会う驚愕の出来事がいろいろてんこ盛りなんだろう、と適当な予想をしていた。
 おそらく、古い映画オタクであれば、すぐにАндрей Тарковский(=Andrei Tarkovsky)監督の『Сталкер』(英語タイトル:Stalker、日本語タイトル:ストーカー)を思い出すだろう。わたしも勿論観ている作品なので、思い出しはしたのだが、あの映画のような、キャラクターたちの議論は本作にはほぼない。いや、あるにはあるのだが、なんというか……雰囲気が違うんすよね……何といえばいいのかな……哲学的な雰囲気はなく、もっと現実的で、事件もきちんと明確に起こるのだが……なんかふわっとしているんだよな……。なので、そういう意味では、基本設定は似ていてもまるで別もの、だと思う。そして、実はわたしが真っ先に思い起こしたのは、なぜかジャンプの『HUNTER×HUNTER』なのだが、本作は明確な敵や能力、あるいは頭脳バトルなんかも描かれず、全くわたしの想像していた『HUNTER』の「暗黒大陸編」的なものとも違っていて、実に独特? な展開であった。
 わたしが思うに、まず、本作の一番の特徴は、「一人称」の物語であることだ。本作には、主なキャラクターは4人しかいない。そして1人はすぐ殉職するので実質3人だし、残りの二人もほぼ活躍しないし、実のところ、本作は主人公の一人語りが延々とつづられていて、おまけに言うと、情景の説明よりも主人公の内面や過去の説明がメインである。故に実に分かりにくく、おまけに残念ながら、いろいろ語られる主人公のキャラクターにはまったく共感できない。
 なお、一人称語りである点には、一応の理由があって、どうやらその謎空間には、電子機器のようなものは持ち込めず、記録をとにかくノートに書くしかない、ということになっているためだ(でもなぜか銃器は持ち込みOK。理由はわかりません)。要するに読者は主人公の綴ったノートを読んでいる、ということになっている。正確に言うと主人公がノートに綴っているという場面は少ないので、違うけど、まあとにかく独白あるいは心情の吐露をずっと聞かされることになる。
 わたしはこの主人公を最初から最後まで信用できなかったので、実は読み終わった後でも、果たしてこの物語は事実が描かれていたのか、よくわからない。妄想、とまではいわないけれど、相当な主人公フィルターを通じての世界描写なので、なんだかもう、よくわからんのだ。
 わたしが主人公を信頼できない、共感できない、と感じたのは、とにかく主人公の方こそ、誰も信用していないからだ。ズバリ言えば夫でさえ、信頼していないともいえると思う。どうも、孤独を愛し、自らの世界に浸って妄想するのが好きなボッチ・ガールであって、心の扉を閉ざしているらしい。その理由は、実にふわっとしていて、散々過去が語られる割には、ああ、だからなのか、という納得できる情報もない。なんなんだ……としか言いようがないんすよね……。
 というわけで、4人のキャラだけ紹介しておこう。 
 ◆生物学者:そうなんです。本作は、各キャラは名前が明示されないのです。役割というか、肩書だけなのも、ナシではないだろうけど、どうにも物語に入り込めない要因の一つであろうとは思う。何故名前で呼ばないか、については、結構冒頭の部分で語られます。が、わたしとしてはその理由に、なるほどとはあまり思えなかった。一応主人公がこの「生物学者」で、前述の通り夫が第11次探索隊に参加している。かなりクセのある女子だが、いろいろと、なぜ彼女がそういう行動をするのか、なぜ彼女だけが「塔」だと思ったのか、など、さっぱり不明。強いて言うなら、主人公だからでしょう、としか言いようがない点が多く、どうにも共感できない。わたしは初め、こりゃあ最近流行のWeb小説から書籍化されたパターン=いうなればド素人の著者の作品かと思ったが、どうもそうでもなさそう。とにかく、好きにはなれないタイプだし、彼女もまた誰も好きにならないので、普通に考えればあまり主人公向きのキャラではない、と思う。要するに、世界に居場所がないと思っていた彼女は、この謎空間こそ我が家、と思ったのかな……。なお、キーとなる「塔」の謎は2作目以降でちゃんと解明される模様。
 ◆心理学者:第12次探索隊のリーダー女史。そして、第2巻の冒頭で明かされるが、この探索隊を派遣する組織「サザン・リーチ」の責任者、らしい。設定として、隊員は異世界である謎空間に侵入するにあたっては、恐怖心を抱かないためとかいろいろな理由から、この心理学者による催眠・暗示を事前に受けていて、実は心理学者には反抗できないような心理的ロックがかけられている。が、なぜか主人公はそのロックが解除されている。何故か、と言っても確かちゃんと理由が書いてあったような……もともと催眠術にかかりにくい体質だったんだっけ? 余りに都合よすぎて、ちゃんとした理由は忘れました。この心理学者というキャラは、とにかく謎が多すぎて、彼女の行動もさっぱり理解不能です。
 ◆測量技師:元軍人の女子。銃器の扱いはナンバーワン。心理学者の催眠暗示下にあるものの、状況判断は一番常識的、だとわたしには思えたが、残念ながらラストまで生き延びられず、主人公の生物学者に射殺される運命に。その展開がかなり意味不明。測量技師の死にざまはわたしには全く納得できなかった。主人公ひどすぎです。
 ◆人類学者:結構序盤であっさり行方不明に。そしてあっさり変わり果てた遺体で発見される。元々かなりのオドオド女子で、弱気な感じであったが、どんな人か分かる前に退場。残念す。

 とまあ、こんなキャラクターしか出て来ない。生物学者と夫の過去が結構な分量で語られるけれど、そこも、どうもピンと来ない。何でこんなに合わない二人が結婚したんだ? もうさっぱり分からん。
 というわけで、物語は、謎空間での、謎事件が、謎心象風景を交えて描かれ、ラスト近くには謎生物も登場し、とある出来事が起こるのだが、それら数多くの「謎」は一切説明なし。そもそも、謎空間の説明もほぼなし。結論としては、なんなんだ……と若干ぽかーん、である。
 まあ、どうやら3巻目まで読み切れば、すべての謎は解けるらしいので、結論としてはさっさと先を読め、ってことかもしれない。でもなあ……なんか先を読みたい気持ちにならないんだよな……ま、3巻まで既に買ってあるので、ぼちぼち読み進める努力はしてみます。
 
 というわけで、もう、一番わからねえのはお前だよ! と怒られそうなので結論。
 映画化と聞いて興味を持ち、買ってみた小説『ANNIHILATION』(日本語タイトル:全滅領域)を読み終わったのだが、非常にすっきりしない物語であった。まあ、実際のところ三部作となっていて、最終的には3巻目の最後まで読まないと分からないという仕掛けはアリと言えばアリだが、とにかく延々と語られる主人公「生物学者」の過去話や考え方には全然共感できず、最初から最後まで腑に落ちない残念な281分であった。今のところ、映画もあまり見たいとは思っていないけれど、監督・脚本は、あの『Ex Machina』を撮ったAlex Garland氏なので、ちょっと期待できそう、ではあります。Garland氏は、三部作であることを知らないで(2作目3作目の発売前に)脚本を書き始めたらしいので、どうやら映画は1作でちゃんと完結しているみたいすな。てことは、もっときちんとスッキリするお話に生まれ変わってるかもしれないす。うーん、てことはやっぱり観に行けってことかな……つうか、ちゃんと日本で公開されるのか、今のところよくわからんす。パラマウント作品か……? てことは日本では東宝東和の配給かな……。ま、そのうち続報が出るのを待ちますか。まったく切れが悪いけど、以上。

↓ 2作目3作目もとっくに発売されてます。買ったはいいけれど……進まない……
監視機構 サザーン・リーチ
ジェフ ヴァンダミア
早川書房
2014-12-29

世界受容 サザーン・リーチ
ジェフ ヴァンダミア
早川書房
2015-02-27

 スウェーデンの作家、Stig Larsson氏は2004年の11月に50歳で、心筋梗塞により亡くなってしまったが、良く知られているように、その亡くなった時点では、作家デビューをしていなかった。その後、出版された処女作『Millennium』シリーズが世界的ベストセラーになるわけだが、そのことを知らずに、逝ってしまわれたのである。何とも残念で大変悲しいことだが、遺された作品の面白さはもう世界的にお馴染みであり、わたしも2008年に出版された日本語版を読んで大興奮した作品であった。
 そして、これもまたすでに知られていることだが、発売された第3巻まではいいとして、実はその続きがかなりの分量で未完成原稿として残っていたのである。我々読者としては、もう大変気になるというか超読みたい気持ちが募るわけだが、これまた大変残念なことに、おそらくは、今後永遠に(?)、我々はLarsson氏の遺稿を読むことはできない見通しだ。というのも、Larsson氏が長年パートナーとして苦楽を共にした女性(結婚していなかった)と、Larsson氏の親兄弟(加えて出版社)が、その遺稿の版権を巡って法廷闘争が行われてしまったからだ。わたしはその闘争の結末をよく知らないのだけれど、普通に考えれば、一緒に生活していたパートナーの女性の元にLarsson氏のPCがあって、そのHDD内に未完成原稿は残っているはずだし、実際の執筆にあたっても、その女性は大きな役割を果たしたのだろうと想像できるわけで、円満にちゃんとそれを発表できる体制が整えばよかったのだが……まあ、世間はそうままならぬものであり、残念ながら封印されてしまったわけである。
 しかし。
 2年前の2015年の暮れに、日本では第4巻となる「ミレニアム4:蜘蛛の巣を払う女」が発売になり、我々読者は再び、シリーズの主人公リスベット・サランデルに再会することができたのである。それは、出版社がたてた作家が創作した作品で、おそらくは現存しているという噂の遺稿をまったく考慮しないものであるはず、だが、その内容は非常に面白く、わたしとしては正直、遺稿の物語が反映されていない(であろう)ことには残念に思いながらも、再び各キャラクターたちに会えることには大歓迎で、大変楽しませていただいた作品であった。
 その、新たな『Millennium』シリーズを書いたのは、David Lagercrantz 氏。元々Larsson氏と同じくジャーナリストだそうだが、想像を絶するプレッシャーの中での執筆は、余人には計り知れないものであったはずで、わたしとしてはLagercrantz氏には惜しみない賛辞を贈りたいと思っている。
 というわけで、以上はいつも通りの無駄な前振りである。
 あれから2年が経ち、いよいよ待ちに待ったシリーズ第5弾、『Millenium5:Mannen Som Sökte Sin Skugga』(日本語タイトル:ミレニアム5 復讐の炎を吐く女)が発売になったので、わたしはもう大喜びで買い、読み始め、大興奮のうちに読み終わったのである。
ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 上 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 下 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

 ズバリ、結論を先に言ってしまうと、今回は予想に反して、宿命の敵、であるリスベットの妹は登場せず、であり、リスベット本人の物語としてはそれほど進展はなかったような気がする。ただし、なぜリスベットが「ドラゴン・タトゥー」を背中に入れているのか、そしてなぜリスベットと妹のカミラは幼少期に離れ離れになったのか、という点は明確な回答が得られ、わたしとしては確かな満足である。また、今回シリーズではおなじみのキャラクターが1人退場してしまう残念な事件も描かれ、十分読みごたえアリの作品であったと思う。
 というわけで以下ネタバレに触れるはずなので、まだ読んでいない方は今すぐ立ち去ってください。確実に、知らないで読む方が面白いと思います。
Millenium05-02
 というわけで、上記はわたしがうちのダイニングテーブルで撮影した書影だ。なぜこれを載せたかというと、帯の「全世界9000万部突破!」という惹句に、すげえなあ!と激しく思ったからだ。仮に、1冊1000円としよう。そして印税が10%だとしよう。すると、1,000円×10%×90,000,000部=90億円ですよ。すっげえなあ、本当に。そりゃあもう、遺族との版権争いも起きますわな……。これはどんなに善人でも、心動いちゃう数字ですよ。亡くなったLarsson氏本人はどんな思いでしょうな……。
 ま、それはさておき、とうとう「ミレニアム」の第5巻、ここに見参、である。まずは物語をざっと説明すると、冒頭はいきなりリスベットが刑務所に入っている状態から幕開けする。どうやら、前作で大活躍のリスベットだったが、その際に犯した、いくつかの罪で逮捕されたのだとか。もちろん、周りのみんなはそんなバカな、であり、ミカエルも、妹で弁護士のアニカも、そして警察のブブランスキー警部さえリスベットが刑務所に入る謂れはないと思っているが、当のリスベットは、まったくどうでもいいという態度で、おとなしく刑務所務めである。そんなリスベットが、現在注目しているのは、同じく収監されているバングラデッシュからの移民の女性ファリアだ。どうやら彼女は、兄を窓から突き落とした殺人罪で収監されているらしい。しかし、そんな超美人のファリアを気に入ったのか?、刑務所内の女性囚人を支配している牢名主的な女ギャング、ベニートが、ことあるごとにファニアにちょっかいをかけ、あまつさえ暴力も日常的に振るっている。そんな状況下で、我らがヒロイン、リスベットが黙っているわけないすよね? なによりもリスベットが嫌いなのは、「女の敵」なわけで、対決は不可避なわけです。
 一方、リスベットは、シリーズではおなじみの、元・リスベットの法定後見人だったホルゲルおじいちゃんが面会にやってきて、とある話を聞く。なんでも、かつて幼いリスベットが入院(という名の監禁)させられていた時の病院の院長、の秘書をしていたという老婦人が訪ねてきて、診察記録を置いて行ったらしい。リスベットはその話を聞いてすぐさま行動開始するが刑務所内なので思うように進められず、面会に来たミカエルに、一人の男の名を告げ、調査を依頼するのだった―――てな展開である。
 というわけで、本作は2つの物語が交互に進んでいく感じである。
 一つはファリアとギャングのベニートの話。もう一つが、ミカエルが調査を進めるレオという男の話だ。ズバリ結論を言うと、2つの物語は別に交差したりしない。正直あまり関係もない。しかし、ともに非常に興味深く、とりわけ謎の男レオの話はリスベットが過去受けた「処置」に直結するもので、非合法(当時は合法なのか?)な調査研究により、双子をそれぞれ全く正反対の環境に置いたらどういう大人になるか? というある意味非人道的な実験が語られてゆく。つまり、リスベットと同じ目に遭った双子が、他にもいっぱいいたらしい、ということで、このレオという男を調べていくうちに、「一番悪い奴は誰なんだ」ということがだんだん分かる仕掛けになっている。
 もうこれ以上のストーリー説明はやめて、キャラ紹介に移りたいが、本作も、かなり多くの登場人物が出てくるので、早川書房は親切にもキャラクター一覧を別紙で挟み込んでくれている。しかし、実際物語的に重要なのは、結構少数で、ほんの少しだけ、紹介しておこう。
 ◆リスベット・サランデル:ご存知物語の主人公。超人的ハッキング技術や映像記憶力、あるいはボクシングで鍛えた攻撃力など、かなりのスーパーガール。あとがきによれば、リスベットがどんどんスーパー化するのを抑えるためにも、刑務所に入っててもらって自らが動けない状況にしたのではないか、とのこと。ホントかそれ? 今回、確かにリスベット本人の大活躍は、若干、抑え目、かも。
 今回わたしが一番なるほど、と思ったのは、背中の「ドラゴン・タトゥー」の由来で、これはストックホルム大聖堂のとある像を幼少期のリスベットが観て、自らの背中にタトゥーとして背負ったものだそうだ。詳しくは読んで味わった方がいいと思います。わたしは非常にグッと来た。リスベットのハッカーとしてのハンドルネーム「Wasp」に関しては、前作でまさかのMarvelコミックが由来という驚きの理由が明かされたが(Waspとは、Ant-Manの相棒の女性ヒーロー)、今回はもっとまじめというか、極めてリスベットらしい思いが込められて、ちょっと感動的でもあった。
 なお、本書のスウェーデン語のサブタイトルMannen Som Sökte Sin Skuggaは、日本語訳すると「自分の影を探す男」という意味だそうで、確かに内容的に非常に合っていることは、読み終わればよくわかると思う。そして「復讐の炎を吐く女」という日本語のタイトルは、若干仰々しさはある、けれど、このリスベットのタトゥーの意味を知ると、なるほど、と誰しもが思うような気がします。実はわたしは、また全然スウェーデン語の原題と違うなあ、とか思っていたけれど、読み終わった今では、いいタイトルじゃあないですか、とあっさり認めたい気分です。
 ◆ミカエル・ブルムクヴィスト:ご存知本作のもう一人の主人公。ジャーナリスト。何故コイツがこんなにモテるのか良くわからないほどの女たらし。リスベットも、一応信頼している。
 今回、複数の事件が同時多発的?に起こるので、肝心な時にミカエルは別のことをしていたり、と若干のすれ違いがあって、活躍が今一つか? というような気がする。ミカエルは基本的には謎の男レオの調査にかかりっきりだったとも言えそう。
 ◆レオ・マンヘイメル:とある証券会社の創業者(?)の息子で、相続を受けて現在自分が筆頭株主兼共同経営者兼チーフアナリスト。実際のところ、すぐに姿は現れるし、社会的な有名人でもあるので、散々「謎の」という形容をわたしは用いたが、実のところ謎の人物、ではない。ただし、行動が謎、であって、果たしてコイツは一体何を? というのがポイント。まあ、たぶん誰でも、下巻の冒頭辺りで、ははーん?と謎は解けるはず。ただし、作劇法として、レオの過去が別フォントを使って語られるパートがチョイチョイ出てくるのだが、ここが日記とか独白のような1人称ではなく、他と同じ3人称のままなので、誰が語っているのか良くわからず、おまけに結構いきなり、下巻の冒頭で秘密の暴露に繋がる第三者の描写に映るので、若干の違和感は感じた。なんか……若干まどろっこしさもあるような気がする。
 ◆ホルゲル・パルムグレン:リスベットの元法定後見人としてシリーズではお馴染みのおじいちゃん。元弁護士。リスベットがかつて唯一信頼していた人。いい人。それなのに……今回で退場となってしまって、とても残念です……そして、体の自由が利かない今のホルゲルおじいちゃんの苦しむさまが非常にリアルというか……。つらいっす……。
 ◆ファリア・カジ:バングラデッシュからの移民の美女。家族はイスラム原理主義の過激思想に染まっていて、非常に危険。そんな環境の中、抑圧され虐待され、という気の毒な女子。ただまあ、若干ゆとり集が漂っているのは、年齢からすればやむなしか。彼女のエピソードは、正直あまりストーリー本筋には関係ないとも言えそう。
 ◆ラケル・グレイン:今回のラスボス。このラスボスであることは結構前の方で明らかなので、書いてしまったけれど、なかなか怖いおばさま。何歳だったか覚えてないけれど、かなりの年配で、すでにガンに体は蝕まれている。しかし、常にキリッとしていて、威圧感バリバリな方。まったく記憶が定かではないが、すでにシリーズに登場してたような気もする。リスベットを「過酷な環境」に放り込んだ張本人。リスベットとしては不倶戴天の敵と言えそうな人。彼女の行った「実験」は、確かに人道的に許されるものではない。それは間違いないとは思う。しかし、同じような学問を研究している人なら、一度やってみたいと思う実験なのではなかろうか。故に彼女には罪悪感ゼロ。怖い。

 というわけで、本作のシリーズの中における位置づけとしては、正直それほど重要ではないような気がする。リスベットは、本作で「倒すべき敵」を一人始末したわけだが、その代償としてホルゲルおじいちゃんを失ってしまったわけで、それはわたしには結構大きなことのような気がする。
 ま、いずれにせよ、再びミカエルの所属する雑誌「ミレニアム」は部数を伸ばせそうだし、意外と結末は良かった良かったで終わるが、うーん、若干物足りなかったような……。
 やはり、踏みつけられ、槍で体を串刺しにされたドラゴンは、起死回生のドラゴン・ブレス=「復習の炎」をぶちかましてやろうとあきらめていないわけで、リスベットは果たして、最大の敵である妹カミラをぶっ飛ばせるのでしょうか。まあ、そりゃあきっとぶっ飛ばせるでしょうな。しかしその代償はおそらく重いものになるという予感はするし、そして勝利した後のリスベットは、いったい何を世に求めるのか。なんか、もうやりたいことがなくなっちゃうような気もしますね。いわゆるひとつの「復讐は何も生まない」説は、きれいごとではあっても、結構真実だろうしな……。わたしとしては、リスベットがいつか心からの笑顔を見せてくれる日が来るのを楽しみにしたいと思います。

 というわけで、もう書きたいことがなくなったので結論。
 世界的大ベストセラー『ミレニアム』シリーズの第5弾、『Millennium5:Mannen Som Sökte Sin Skugga』の日本語版が発売されたので、さっそく買って読んだ私であるが、本作は若干物足りなさを感じたものの、わたしとしてはリスベットに再会できただけで大変うれしく、結局のことろ毎日大興奮で読み終えることができた。サブタイトルも、スウェーデン語の原題「自分の影を探す男」も大変内容に添ったいいタイトルだと思うし、意外と日本語タイトル「復讐の炎を吐く女」も、読み終わるとなんだかしっくり来るいいタイトルだと思います。亡くなったLarsson氏の後を引き継いだLagercrantz氏も大変だと思いますが、次の第6弾、楽しみにしてます。予定では2年後らしいすね。毎回、『STAR WARS』の公開と同じ時期なので、覚えやすくて助かるっす。以上。

↓ 正直、スウェーデンには今までほとんど興味がないというか、行ってみたいと思ったことはぼぼないのだが、リスベットが幼き頃に見上げた、ストックホルム大聖堂のあの像は観てみたいすね。

昨日の帰り、本屋に寄ったら、2年ぶりの新刊が出てたので、やった、待ってたぜ!と喜び勇んで買った本、それがコイツです。
Millenium05-02
 かの世界的大ベストセラー、『ミレニアム』シリーズの最新第5巻であります。
 スウェーデン語の原題は「Mannen Som Sökte Sin Skugga」といい、これをWeb翻訳にかけると「自分の影を探していた人」という意味が出た。Sökteは探す、検索するという動詞Sökaの過去形?のようで、Sinは人称代名詞で「彼の(=自分の)」、Skuggaは影、だそうだ。なるほど。
 そして英訳タイトルは「The Girl Who Takes an Eye for an Eye」というそうで、これは日本語訳すると「目には目をの女」てな意味になるんだろうと思う。
 そして日本語版のサブタイトルは、「復讐の炎を吐く女」となっています。それぞれ違いますなあ。
 というわけで、昨日の夜から読み始め、上巻の150ページほどしか読んでいないけれど、いきなりリスベット in Jail、で刑務所に入っているリスベットから始まる物語に、既にもう大興奮で読み進めております。まだ事件の全容はさっぱり見えてこないけれど、どうもまた過去と対決するお話のようで、大変楽しみですな! 今のところ、リスベットは前作ではまだ邪悪な妹との決着はついていないわけで、当然妹の暗躍も出てくる? と予想されるけれど、どうも本作は、そもそもリスベットの超絶能力はどうして身に着いたのか、的な、オリジンの話になる予感です。なので、今のところわたしとしては、母国スウェーデン版のサブタイトルが一番内容に合っているような気がしています。日本語のサブタイトルは、英語版に合わせたのかな。
 ま、その予感は全然テキトーなもので、読み終わったら全く違ってた、となるかもしれず、とにかくもう、ページをめくる手を、落ち着け! 今日はここまでだ! となだめるためには非常に強力な意志力が必要ですよ。

 というわけで、わたしは大変興奮して読み始めましたことを、以上ご報告申し上げます!

↓ 電子では明日発売のようですな。わたしは、読み終わったら友人に差し上げる予定なので、さっさと紙の本で買いました。電子の方が、いくばくか、お安くなってるみたいすね。2年後ぐらいに発売になるであろう、文庫版まで待つ理由は一切ないと存じます。
ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 上 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 下 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

 いやーーーやっぱり最高でした。とても面白かったっす。
 何の話かって? そりゃあ、わたしが世界で最も大好きな作家、Stephen King大先生の日本語で読める最新作『FINDERS, KEEPERS』のことに決まってますよ! 先週、<上巻>を大興奮のうちに読み終わり、この<下巻>はもうじっくり味わって読むぞ! と思ってたのに、実は2日で読み終わってしまっていました。でも今週は忙しかった……はあ……というわけで、やっと感想を書こうと思っているところであります。もう一度、書影を張っておこうかな。
 なお、<上巻>の感想はこちらです→Stephen King『FINDERS, KEEPERS』_<上巻> スティーヴン・キング「ファインダーズ・キーパーズ<上>」
finderskeepers

ファインダーズ・キーパーズ 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-09-29

ファインダーズ・キーパーズ 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-09-29

 すでに電子書籍でも絶賛発売中であり、おまけに本作はなぜか電子書籍の方が300円ぐらい? 紙の本よりも安いです。いつでもどこでも読めるという点では、電子書籍に分があるような気もしますが、わたしはKing大先生の作品に関しては、まずは紙で買うことにしています。その理由は<上巻>の感想を書いた時のとおり、本棚に並べて悦に入りたいからです。それだけ。文庫化まで待つのは、ほぼ意味ないと思いますよ。文庫化で安くなる分を特急料金として払ってでも、読みたいときに読むべきです。
 で。<下巻>であります。<上巻>の時も書いた通り、ある意味<上巻>は、壮大なプロローグであるとわたしは思っていましたが、今となっては、それはちょっと違ったかも、という気がしています。なんというか、重大な出来事はほぼ<上巻>で語られており、<下巻>はとにかく展開が早く、事件の終息まで一直線で、それゆえわたしは、「じっくり読もう」と思っていたにもかかわらず、ぺ、ページをめくる手が止まらねええええ!という事態となったのでありました。
 なので、物語についても、<上巻>の時に書いた以上のことはもう書けません。
 1978年、一人の有名(だけど隠棲していた)作家が強盗に殺害されるシーンから始まるこの作品ですが、その犯人の一番の目的であった、「膨大な未発表原稿」の行方がこの物語の一番中心にあります。犯人は、まずその「未発表原稿」をこっそり土中に埋める、そしてまったくの別件で逮捕されて終身刑に。その後、2010年にとある少年がそれを発見、しかし一方で犯人も35年ぶりにシャバに戻ってくる、というわけで、この犯人と少年の出会いが確定し、そこに、少年の妹のつながりで、この「ビル・ホッジス」三部作の主人公である元刑事のホッジスが登場したところまでが<上巻>で描かれました。
 なので、おそらくは<下巻>で、我らがホッジスおじさんが大活躍するのだろう、と思って読み始めたわけですが、その読みはちょっと外れていたといわざるを得ないでしょう。そうなんです。ホッジスおじさんは今回、ほとんど何もしないまま事件は終わりを迎えるのです。
 まあ、何もしない、というのは言い過ぎかもしれません。実際、ホッジスがいなければいろいろマズいことになってたでしょうし。しかし、ある意味後手後手に回り、事件の解決にはほとんど寄与していないとはいえそうです。その代わり、原稿を偶然見つけた少年ピーターくん(作中ではピートとも呼ばれている)が一人テンパりながら、妹のために頑張り、そしてホッジスの助手となっていたホリー(前作『ミスター・メルセデス』の下巻で大活躍した若干精神に問題を抱えている女性)も、機転を利かせて頑張りました。さらに、<下巻>ではジェローム君(同じく前作で大活躍したホッジスの近所に住む青年)も、今回はなんとハーヴァードに進学した大学生となってさっそうと(?)登場し、盛り上げてくれましたね。というわけで、わたしとしては大満足だったわけですが、ここで<下巻>でのポイントをいくつか挙げておこうと思います。
 ■最終的な「原稿」の行方について
 最後、どうなるかはあえて書きません。いや、えーと、ごめん、嘘です。ダメだ、書かないと説明できないな。わたしとしては、最終的な原稿の運命には、やっぱりとても残念というかもったいないと思いました。我々のような小説好きならば、自分の好きな、既に亡くなった作家の「未発表原稿」が存在し、おまけにそれが自分の大好きなシリーズの「真の完結編」であったなら、もう、どんなことをしてでも読みたいと思うだろうし、それが存在したのにもうこの世にはない、なんてことを知ったら、どれだけ悔しい思いをするだろうか。相当つらいエンディングだったと思う。
 ただ、作家を殺してでも、とはもちろん思わないし、その原稿を入手するために人殺しをしようとはもちろん思わないのが普通でしょう。しかしそれでも、やっぱり読めないなんてつらすぎますよね。そういう意味では、物語的にはめでたしめでたし的な感じではあるけれど、小説ファンとしてはもう、これは大変な悲劇的エンディングだったとわたしは思いました。人類の宝が……とわたしは結構呆然というか、本と読んでいてつらかったっす。
 ■「Finders, Keepers=見っけたもん勝ち」のアメリカ。
 まあ、最終的に、少年ピーターくんは、「僕が見つけたのが間違いだったんだ、僕が見つけなければよかったんだ、僕が最初から図書館に寄付とかしてればよかったんだ」と深く後悔し、事件を巻き起こしてきしまったことに反省をするわけですが、本作の状況で、素直に警察に届けるとか、そういう行為を我々日本人でもできたかどうか、実にあやしいだろうと思う。我々日本人は、まあ、大金だったりすごいお宝を見つけたら、それをネコババしようという気持ちには、あまりならないかもしれない。ただそれは、最初は独り占めしようと思うにしても、結局はその「秘密を抱えることの重圧」に耐えられないが故、なのではないかとわたしは考えている。道徳心というよりも、心理的プレッシャーが我々を動かすんじゃなかろうか、という気がするのだ。でもまあ、その心理的プレッシャーを我々の心に生み出すものこそ、いわゆる道徳心なんだとも言えるのかもしれない。幸いなことに、日本では落とし物は届ける、というのが身についているので、「見っけたもん勝ち」という思想は、ちょっと恥ずかしい考えと誰もが思っているようにも思う。
 でもなあ、自分の大好きな作家の、幻の原稿を見つけてしまったとしたら、金よりもそっちはもう、とりあえず読むよね。間違いなく。そしてそのあとで届ける、かな、わたしだったら。でも、わたしが思うのは、わたしだったら、絶対にそれを独り占めしたいとは思わないという気がしてならない。これは全世界に発表すべきだ、と考えちゃうような気がする。ピーターくんも葛藤したけれど、さっさと原稿だけ、世界に発表しちゃえばよかったのにね。金はネコババしていいからさ。
 ■作家を主人公とするKing作品
 って、かなり多いすよね、話はいきなり変わりますが。『MISERY』もそうだし、『DARK HALF』もそうだし、そのほかにもいっぱいありますな。まったく根拠はないけれど、King大先生は、作家を主人公とする作品を最も多く書いている人なんじゃないかとすら思う。おまけに、たいていの場合、作家と読者、の関係が重要なんすよね。作家は書きたいものを書く、けど、それが読者の望むものと一致しているかどうかは別の話なわけで、『MISERY』の場合は、作家を監禁してまで「自分の思う通りの作品」を書かせるというおっかない読者、自称「世界一のファン」の物語でした。今回の犯人であるモリスも、まあ、『MISERY』に近い、ある意味狂った読者ですわな。しかし、世間一般的には明らかに狂っているし、作家本人から見てもそりゃあ狂っているとしか思えないだろうけれど、モリスやミザリーほどでないにしても、我々のようなわがままな読者、は、相当数存在しているし、結局、作品が売れていればより一層、そういう読者も多くなるはずで、上手く表現できないけれど、いわば「作品」は作家の手を離れてしまうんだろうな、という気がする。しかし、生み出した作家本人からすれば、大変迷惑な話で、作家と作品と読者、という関係は、役者と役柄とファン、の関係と等しいようにも思えます。うーーん、上手く整理できないなあ。要するに、役者と演じた役柄は、同一のようで全く別物だろうし、作家と作品も、やっぱり同一視されても困るものなんだろうと思うわけで、King先生にもそういう区分ができない困ったファンが多くて、きっと日々様々に、なんだかなあ、と思うことが多いんだろうな、という気がします。ダメだ、何を言いたいか自分でわからなくなってきた。
 ■真の物語は―――
 わたしは、事件の結末を見届けて、なんか今回はホッジスおじさんはあまり活躍しなかったなあ、と感じ、それは上の方でも述べた通りなのですが、実は―――この「ビル・ホッジス三部作」第2巻にあたる本作の、真のエンディングは、もう大興奮のヤバい出来事が描かれていました。そうです。前作『Mr. Mercedes』の犯人、ブレイディ・ハーツフィールドの超ヤバい「その後」がチラ見せされて終わるのです。これには本当にもう、やっばい、次! 早く次を読ませてくれ! とKing先生のファンならもう誰もが興奮すること間違いなしだと思います。ちょっとどう展開するのかは想像できませんが、どうやら、ブレイディが次の3作目で、再びホッジスおじさんの前に立ちはだかるのは、もう確定的に明らかなようですね! ちなみにUS本国ではとっくに発売になっており、マジで文春が本気を出して早く刊行してくれることを祈るばかりです。でもどうせ文春だから、来年の今頃だろうなあ……。↓ これがUSペーパーバック版です。
End of Watch
Stephen King
Hodder Paperback
2017-03-28

 くっそう! 今すぐ読みたい! Kindle版で677円か……ちくしょー買っちまおうかな……どうも、これは全くのわたしの妄想ですが、ブレイディが「謎の能力」を身につけたっぽいんですよね……ここにきてとうとう、King先生の真骨頂たるSUPER-NATURAL要素が投入されるのでしょうか!? これはもう、超期待ですなあ!!
 はあ……わたしの元部下のA嬢はNYCで働いていたことのあるバリバリの英語遣いで、わたしの影響?でKing先生の作品をKindleで英語版をバリバリ読み始めた女子なのですが、もうとっくに3作目まで読んでいるようで、実に悔しい限りです。うらやましいというか実にけしからんですな!
 ■おまけというかメモ
 わたしは、King先生の作品の何が好きって、とにかく会話に現れるDirty Wordsが大好きなのですが、やっぱり今回はこれでしょうね。
 Shit don't mean Shit。文春版日本語訳では、「クソはクソの価値もない」と訳されているこのフレーズですが、これをメリケン人の前でボソッとつぶやきたい……! そういえば、このフレーズは、King大先生の『DREAM CATCHER』で何度も出てきた「SSDD」(Same Shit, Different Days)に似てますね。まあ、大変Dirtyな言葉ですが、その意味するところは深いわけで、そういう点がわたしは大好きです!

 というわけで、もういい加減にして結論。
 わたしが世界で最も好きな小説家であるStephen King大先生による、日本語で読める最新作『FINDERS, KEEPERS』を上下ともに読了した。その感想はもう、最高でした!の一言に尽きます。とてもとても面白かった。そして、シリーズを読んできた方なら、その「真のエンディング」に、な、なにーーーー!? と驚愕すること間違いなしだと思います。いやあ、本当にもう次の3作目が楽しみですなあ! 早く発売してくれないかなあ……! 文春よ、「文藝」春秋社を名乗るなら、どうでもいい週刊誌なんかで稼ぐより、こっちを早く出してくれ! 頼むよ! いやーーそれにしても、Stephen King大先生は最高ですね! 以上。

↓ わたしはこっちも読みたいのだが、わたしの大嫌いなFuck'n小学館が一向に発売してくれません。早く、どこか別の出版社が、Joe Hill先生の版権を買っていただきたい! なお、ご存知の通りJoe Hill先生は、King大先生の次男です。超天才作家。そしてこちらもA嬢はとっくに読んだというのだから腹が立つ! 英語力の低い自分に!

 先週の水曜日、わたしが世界で最も好きな作家であるStephen King大先生の日本語で読める最新刊『FINDERS, KEEPERS』がもう店頭に並んでねえかなあ(正式発売日は金曜日の9/29)、と神保町の一番デカい本屋さんに行ってみたところ、1階の新刊書・話題書のコーナーには見当たらず、ちょっと早すぎたか、とガッカリしたのだが、いつ入荷するんだろうな、と思って店内検索機で探してみて、ひょっとしたら入荷情報とか載ってるかも、と期待を込めて検索したところ、ごくあっさり、「店内在庫アリ」と出てきた。な、なんだってー!? と興奮し、良く見ると2階の文芸の棚にあるという表示なので、マジかよと慌てて2階に行ってみたところ、検索機の表示する番号の棚にきちんと置かれていた。というわけで、すぐさまGetしたのだが、まず、わたしが家で撮影した↓この画像を見てもらいたい。
finderskeepers
 ま、要するに、上下巻で、並べるとカバーイラストが1枚の絵になるわけだが、実に嘆かわしいというか残念なことに、その本屋さんは、思いっきり、上巻を右、下巻を左、にして平台に置いていたのである。意味わかりますか? タイトルも絵も、つながらないんすよ、それでは。わたしはこの一事をもって、やっぱりもう本屋は衰退するしかねえんだなあ、と悲しくなった。誰がどう考えたって、ちょっと気を利かせてちゃんと上記画像のように置くよね? そういう気が利かないというか、忙しすぎてそこまでの余裕がないんだろうか。それとも、そんなのどうだっていいという判断なのだろうか。しかしこれは、まったくどうでもいいことじゃあない。そういうことしてちゃ、ホント、なんだかなあという気持ちになってしまう。実にしょんぼりである。
 まあ、以上は全くの余談であるが、もう一つ余談を加えておくと、わたしはすでに電子書籍野郎に変身しており、漫画はほぼ100%電子書籍へ移行しているのだが、小説の場合は、電子で買えるなら電子で買うし、電子で発売されていなければ紙で買う、という状態になっている。そして本書は、実は電子書籍と紙の本が同日発売なので、通常のわたしであれば、本書も電子書籍で買うのだが、こと、Stephen King先生の作品に関しては、「紙」の「単行本」で買うことにしている。
 何故なら。まず、「紙」の書籍で買う理由だが、それは単に、本棚に並べて悦に入りたいからである。それだけ。しかし、さっき調べてびっくりしたのだが、なんと本作は、紙の書籍が1800円+税、電子書籍だと1481円+税と値段が違っていた。まあ、別に319円の違いぐらいどうでもいいけど、紙と電子で値段が違うのは初めてのような気がする。そういう時代なんすねえ……。ますます紙で買う理由がなくなっていくなあ……。
ファインダーズ・キーパーズ 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-09-29

ファインダーズ・キーパーズ 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-09-29

 そしてもう一つ、「単行本」で買う理由は、もう、単純に文庫化されるまで待てないからだ。かつては、わたしも文庫化されるまで待つ派だったのだが、King先生の作品の場合は、文庫化されても上中下とか分冊されるのは確実なわけで、おまけに昨今は文庫本でも高いものは高く、結果的に文庫化されてもどうせ1000円程度しか値段が違わないことに気づいたため、その差額はいち早く読める「特急券」として納得することにし、さっさと単行本で読んだ方がいい、と判断したためである。そもそも、読みたくてたまらないし!
 というわけで、さっそく木曜日から読み始め、さきほど上巻を読了したので、まずは上巻の感想を以下にしたためていこうと思う。なお、いつもどおりネタバレ全開になる可能性が高いので、知りたくない人は今すぐ立ち去ってください。自己責任でお願いします。
 さてと。
 本作は、もうファンならご存知の通り、King大先生の初めての本格ミステリー(?)三部作「ビル・ホッジス」シリーズの第2巻であり、『Mr.Mercedes』の続編である。US本国では最終巻までもうとっくに発売になっているが、日本語ではようやく2作目が読めるというわけだ。
 しかし、読み始めて意外だったことに、なんと、上巻は313ページあるが、主人公ホッジスが登場するのは第2章、223ページからである。つまり、第1章はまるまる二人の別のキャラクターの現代にいたるまでの過去が交互に語られる形式となっており、いわば長いプロローグなのだ。しかし、その長い前振りがめっぽう面白く、ははあ、この二人が現代で出会ってしまうんだな……という予感で、わたしとしてはもう、読んでいて超ドキドキというかワクワクである。
 まず語られるのは、今回の悪党であるモリス・ベラミーというクズ野郎が1978年に犯した犯罪の記録だ。このクソ野郎はとにかくなんでもすべて自分のせいじゃないと思いたがる下衆野郎で、36年前(※現在時制は2014年みたい)に、とある超有名な老作家の家に侵入し、作家と強盗仲間をぶっ殺して現金と「未発表原稿」を奪っていく。そしてその金と原稿を川べりの木の根元に埋めたところで、不安から酒を飲んで酔っ払い、レイプ事件を起こして終身刑を喰らうという展開になる。
 そしてもう一人語られるのが、2009年、あの就職フェアに並んでいたために「メルセデス・キラー事件」に巻き込まれ、重傷を負った父親を持つ少年のお話で、こちらの少年は実に賢く、ある日偶然、モリスが30年前に埋めた「地中に眠る現金と原稿」を発見し、その金でせっせと家族を助けながら、一方では原稿にも夢中になって、すっかり文学青年成長していく過程が描かれる。
 そして第1章ラストでは、2014年、ついに現金が尽きた少年は、原稿を売れば金になるかもしれない、と思いついてしまい、「人生最大のミス」を犯してしまう少年の様子が描かれ、一方ではついに仮釈放が決定してシャバに戻ることになったクソ野郎が、とにかく早く埋めといた原稿を読みたくてたまらないぜ、と行動を起こしそうになるところ、すなわち二人の出会いが運命づけられてしまったところで終わる。
 どうすか? もう読みたくてたまらなくなりませんか? わたしはもう、この時点でページをめくる手が止まらないほど、やっべえ、こりゃあマズイことが起きるに違いないぜ? とワクワクしてました。ホント、King先生は最高ですなあ!
 で、第2章から、我らが主人公、ビル・ホッジスの登場である。冒頭から驚いたことに、何とホッジスは「メルセデス・キラー事件」の後に探偵事務所を開業していて、あの超人見知りのコンピュータ遣いのホリーが助手として事務所を切り盛りしているのだ。事務所の名前は「ファインダーズ・キーパーズ探偵事務所」。なんでも人探し専門の探偵らしい。わたしは、本書の『FINDERS, KEEPERS』というタイトルから、きっと、「見つけたもん勝ち」、すなわち、期せずして何かヤバいものをGetしてしまったキャラクターのもとに、そのヤバいものの本来の持ち主が取り返しに来る、みたいなお話で、きっとホッジスはそのGetした人物に依頼されて事件に巻き込まれるのだろう、と予想していた。なのでその予想は、今のところどうやらほぼ正解だったわけだが、まさかホッジスの探偵事務所の名前だとは思わなかったので驚いた。
 というわけで、上巻での重要人物のキャラ紹介をしてみよう。
 ◆ジョン・ロススティーン:隠棲している老作家。『ランナー』という戦後アメリカ文学を代表する名著の第3巻までを書いて引退、世捨て人と世間では思われている。しかし隠棲後もほぼ毎日手書きでノートに小説や詩などを書き溜めていて、『ランナー』シリーズの未発表原稿がどっさりあり、実は『ランナー』シリーズにはその先があった、のである。冒頭でモリスに撃たれて死亡。まあ、なんというか、こういうアメリカ作家はサリンジャーとかそういう人を思い起こさせますな。1978年の死亡時で79.5歳(半年後に誕生日)だった。
 ◆モリス・ベラミー:前述のとおりクソ野郎。要するにコイツは、大学教授の母に厳格に育てられるも、そのことで結局クズ野郎に成長したわけで、見事な教育失敗作なわけだが、10代で『ランナー』シリーズにドはまりするも、3巻目の結末に納得がいっておらず、やきもきしていた。ある日、古本屋の店員の友達に、実はその続きがあるらしいぜ、という話を聞いてロススティーンの家に強盗に入り、原稿と多額の現金を奪取。ついでに引き上げる際に一緒に強盗に入った仲間二人も撃ち殺し逃亡。早く原稿を読みたくてたまらないものの、作家殺害が全国ニュースで流れる事態となって、まずは金と原稿を埋めてほとぼりを覚まそうとしたが、どうやらこいつは酔っぱらうと記憶をなくす質のようで、本人は全く記憶にないものの、レイプ事件を起こして逮捕、終身刑で刑務所にぶち込まれる。その後、2014年に仮出所。現在、とにかく原稿が読みたくてうずうずしている、けれど、保護観察官の目があるので、とにかく慎重にやらないと、と大人しくしている状態。今のコイツは、原稿を読むことと、かつて友達だった元古本屋の友達(あいつのせいだと逆恨み中)に復讐することしか考えてない危険人物。1978年当時20歳そこそこのクソガキ。現在59歳。しかし、アメリカ人ってアル中が多すぎというか……アレなのかな、生理化学的にアルコール耐性が低いのかな? やたらとこういうアル中を映画や小説で見かけるけど、なんなんだろう。日本にもいっぱいいるけどわたしの周りにいないだけなのか?
 ◆アンディ・ハリディ(通称ドルー。アンドリューが正式名):1978年当時は20代のただの古本屋バイトだったが、2014年現在は自分の店を持つ店主。ただし、コイツもクソ野郎で、過去に盗品売買をして逮捕されそうになったことも。まあ、要するにまっとうな男じゃあない。わたしの予感では、下巻で死亡するような気がしている。それはそれでざまあではあるけど、どうなるかな。
 ◆ピーター・ソウバーズ:2010年に、埋められていた現金とロススティーンの原稿を偶然発見した少年。その時14歳(かな?)。父は2009年の「メルセデス・キラー事件」に巻き込まれ、重傷を負って障害がのこった。元々父は2008年のリーマンショックで不動産屋での職を失い(なので、あの就職フェアに並んでいた)、母も同じく不景気で、学校の先生だったがパート扱いの非常勤講師に格下げされ、家計がどん底に苦しく、夫婦げんかが絶えず、ピーターは子供ながらにこりゃあうちの両親は離婚まっしぐらだと悲しんでいた。そんなとき、大金を手にしたため、定期的に自宅へ500ドルを匿名で郵送することで、家計を助けてきた。その後景気も回復し、父は自分の会社を立て、母も安定的な収入を得られるようになったところで、埋まっていた金も使い果たす。が、かわいい妹ティナの学費や、自分の大学進学資金を出せるほどの余裕はなく……悩みぬいて、原稿を売ろうと決意、よりによってクソ野郎のアンディの店に持ち込むという「人生最大の過ち」を犯してしまう(ピーターとしては、過去に盗品売買をしていた事実を知り、コイツならこのヤバい原稿にも興味を持つだろう、と完全に藪蛇を突っついてしまった)。なお、ピーターは、埋まっていた原稿を読むことで文学に目覚め、成績も優秀で大学は英文学科に進んで文学研究をしたいと思っている。ポイントは、どうやら妹のティナにあるらしく、ティナはピーターから見ると若干頭の悪い今どきガール、のようだが、実はもっと頭のいい女子中学生なのではないかという予感。なぜなら、この妹は、最近お兄ちゃんが変なの、と気が付いており(ついでに言うと記憶力抜群で、家に500ドルを送っているのはお兄ちゃんだろうとほぼ確信している)、そして、あの「メルセデス・キラー事件」をホッジスとともに解決したジェローム君の妹の友達で、様子のおかしいお兄ちゃんの相談を受けたジェローム君の妹から、ホッジスにつながるという展開のようだ。なお、ティナも、本当ならあのメルセデス・キラーが爆破しようとしていたアイドルコンサートに誘われていて、一緒に行く予定だったが、お金がなくてあきらめた経緯があるらしい。ちなみに、このソウバーズ家が現在住む家は、40年前にモリス・ベラミーが住んでいた家であり、あのメルセデス・キラーことフレイディ・ハーツフィールドの住んでいた家のご近所らしい。
 ◆ビル・ホッジス:前作の主人公の元刑事。現在は前述のとおり私立探偵。事務所は前作の後半で大活躍したホリーが切り盛りしている模様。上巻の段階では、二人ともほとんど出番なし。なお、ジェローム君はすでに大学生となって、どこか遠いところに行っている模様。
 とまあ、上巻では上記の人々だけで十分だろう。とにかくわたしとしては、もう今すぐ下巻に突入したいのだが……焦るな……時間はたっぷりある……ぜ。こいつはじっくり味わうんだ……クックック……という我ながら意味不明の心理状態にあるため、ゆっくり読もうと思っております。
  あと最後に備忘録:P.239にある「夜郎自大の下衆男」って……誤植か? と思ったら、ちゃんとした日本語だった。クソ、わたしも大したことねえなあ、と恥ずかしくなったっす。夜郎自大=自分の力量も知らず威張っている、という意味のたとえ、だそうです。使ったことねえなあ、この言葉は。

 というわけで、もうこれだけでも長いのでさっさと結論。
 わたしが世界で最も大好きな作家、Stephen King大先生の日本語で読める最新刊『KEEPERS, FINDERS』(日本語タイトルはそのままファインダーズ・キーパーズ)が発売になったので、さっそく読み始めたのだが、上巻読了の段階で、早くもかなり面白い展開である。下巻が楽しみだなあ! そして、本書は完全なる『Mr. Mercedes』の続編なので、いきなり本書を読むのはやめた方がいいと思います。しかし……メリケン人にとっては、見つけたもの勝ち、は常識なんだろうな。やたらと、日本では落とし物や忘れ物が帰ってくる、感動した! という外国人の声を耳にしますが、我々日本人であっても、ピーターくんのような状況で、見つけたお宝を素直に警察に届けることが出来るかどうか……その辺を考えながら、下巻を読もうと存じます。以上。

↓ もし読んでいないなら、今すぐ読むべきでしょうな。大変面白いす。そして今のところ、この第2巻『ファインダーズ・キーパーズ』の方が面白い予感です。
ミスター・メルセデス 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-08-22

ミスター・メルセデス 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-08-22

 先日、待ちに待った最新刊発売のニュースを見つけて、よーし!新刊キタ! とやおら興奮した作品がある。が、ちょっと調べたところ、紙の本が8月24日に発売になるのはいいとして、電子書籍版の発売に関しては一切何も書いていなかったので、ちょっとマジかよ……またお預けか? としょんぼりしていたところ、紙の発売の1週間後には電子書籍版も発売となり、喜んですぐさま購入した。さすがわたしの愛する早川書房さまである。
 というわけで、本Blogの読者にはお馴染みの(たぶん)、「暗殺者グレイマン」こと、コート・ジェントリー氏が約1年ぶりに帰ってきた! のであります。日本での邦題は『暗殺者の飛躍』。英語タイトルは『GUNMETAL GRAY』という、Mark Greaney氏による「暗殺者グレイマン」シリーズ第6作目にして最新刊がようやく日本で発売になったのでありました。やったー!
暗殺者の飛躍 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2017-08-31

暗殺者の飛躍 下 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2017-08-31

 もう、のっけから結論を申し上げると、今回も大変面白く、実に興奮いたしました。あのジェントリー氏が、作戦中に出会ったロシアSVR要員のウルトラハイスペック美女と本気LOVEですよ! マジかよコート! お前、大丈夫か!? といろいろな点で心配になったし、こりゃあこの美女には完全に死亡フラグ立ってんじゃねえかなー、とか、下衆な勘繰りをしながら読んだオレのバカ! と自分をののしりたい気分です。
 最終的には、ややほろ苦い結末ではあったけれど、実に見事なエンディングで、大変面白かった。つか、あれっ!? サーセン、いきなりいろいろなネタバレをブチかましてしまったような気がするけれど、以下もネタバレ全開になる可能性が高いので、気になる方はまず本作を読んでからにして下さい。自己責任でお願いします。
 さて。まずはこのシリーズについては、もう軽い説明でいいよね? 今までの1作目から5作目まではこのBlogに散々書いてきたので、そちらをご覧ください。一応、直近の5作目の記事のリンクだけ以下に置いておきますので。
 ◆グレイマンシリーズ第5弾『BACK BLAST』(邦題:暗殺者の反撃)はこちらへ
 お話は、元CIAの準軍事工作員だったコート・ジェントリーという男が、ある日CIAから「目撃次第射殺=Shoot on Sight」指令を下されてしまい、逃亡、その後、裏社会で「グレイマン」と呼ばれる凄腕のアサシンになって活躍するお話で、前作の第5弾で、とうとう「そもそも何故CIAはジェントリーを殺したいのか」の謎が明かされ、なんとかその窮地を脱して、非公式にはそのSoS指令は解除、晴れてお咎めなし、の身に戻ったところまでが描かれた。
 そしてこのシリーズの最大の特徴は、主人公のジェントリーというキャラクターが大変おかしな野郎だという点にある。彼は、超凄腕かつ超冷酷なんだけれど、妙な正義感というか良心を持ち、そのイイ人であるがゆえに、いろいろピンチに陥ったりするという、読者からすると純然たる人殺しなのに、妙に憎めない野郎である。そしてその「グレイマン」のあだ名の由来は、会って話をしても、後に「あいつどんな顔してたっけ?」と思い出せないような平凡かつ存在感の超薄い男であるため、「姿なき暗殺者」という意味で「グレイマン」と呼ばれているわけだ。
 で。今回のお話は、実際第5巻の続きで、晴れて自由を得たグレイマン氏が、今度は古巣であるCIAから仕事を引き受け大活躍するお話である。早川書房様のWebサイトにあるあらすじを勝手にパクって貼っておこう。要するにこんなお話だ。
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 <上巻>黒幕を倒し、CIAのグレイマン抹殺指令は解除された。彼はフリーランスとしてCIAの仕事を請け負うことになり、逃亡した中国サイバー戦部隊の天才的ハッカー、范の行方を突き止める任務を帯びて香港に赴く。囚われの身となっていた元雇い主に再会したグレイマンは、中国の目を欺くため、元雇い主を通じて中国総参謀部から范を暗殺する仕事を引き受けることになるが……
 <下巻>香港犯罪組織との乱闘の末、ベトナムのギャングが天才的ハッカー、范をかくまっていると知ったグレイマンは、ホーチミン市に入る。だがロシアのSVR(対外情報庁)の秘密精鋭部隊も范を拉致すべく、密かに行動していた! 范をめぐりグレイマンとSVRは、ベトナム、さらにタイのギャングと争奪戦を繰り広げる。そして、CIAの作戦の裏に隠された衝撃の事実が! 新たな展開でますます白熱する冒険アクション!
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 というわけで、以下、いつものようにキャラ紹介しながら、ストーリーもごく簡単にメモしておこう。全員は紹介できないので、わたしが印象に残った人々だけです。
 ◆コートランド・ジェントリー:作中ではコート・ジェントリーと名乗る場合が多い。我らが主人公グレイマン氏に関しては上記に述べた通り。今回、ジェントリーの性格を良く表している文章はこれかな。
「ジェントリーの道義心は、そばに味方がいないような状況で、フィッツロイが一人で死ぬようなことを許してはならない、と告げた。フィッツロイのために戦おう。CIAがそれに不賛成だというなら……CIAなどクソくらえだ」
 そう、今回、グレイマン氏は、フィッツロイおじいちゃんのために奮闘するのであります。フィッツロイおじいちゃんは、第1作目でのジェントリーのハンドラー(雇い主)で、とてもいい人で信頼関係も厚かったのだが、おじいちゃんの愛する孫娘を人質に取られ、ジェントリーを断腸の思いで敵に売ったことがあって、ジェントリーとしては、まあ状況的にしょうがないと思いつつも、もう仕事はできない相手、と思っていたのです。でもその後、2作目で助けてもらって、ジェントリーとしては「借りのある男」なわけですよ。今回は背景が超複雑で、作戦も込み入っていて回りくどくて、グレイマン氏は今回も大変な目に遭います。しかし、まさかグレイマンin LOVEとは驚いたなあ! グレイマン氏は、第3作目で、メキシコで出会った旧友の妹に一瞬本気LOVEとなるも、ラストではその女子に対して、俺はなんて言って別れを告げたらいいんだ……とかくよくよしてたらあっさり、「わたし、修道女になるわ!」と先制パンチを喰らい、あえなく、お、おう……と振られてしまったことがあったけれど、今回は、完全に両想いというか超お似合いの殺し屋カップルの誕生で大興奮です。なお、わたしはいつも読んでいるとき、ジェントリーのビジュアルイメージとしてセクシーハゲでおなじみのJason Statham兄貴を思い浮かべているのだが、本作では久しぶりに(?)ジェントリーの容姿に関する描写がチラッとあって、どうやらハゲではないようです。むしろ若干イケメンなのかも。えー!w
 ◆ゾーヤ・ザハロワ:ロシアSVR所属。身長170cmほどで、超美人で、身体能力も非常に高く、スナイパー訓練も受けていて、実際かなり強い女子。SVRの「ザスロン」という屈強な男たちの軍事チームの統制官だったのだが、チームの荒くれ者たちは女子の言うことなどまったく聞かず、おまけに作戦の失敗を押し付けられ、無能な男たちにうんざりしていたところで、ジェントリーに捕まり、中国や現地ヤクザを間に挟んだ敵の敵は味方、ということで、二人の愛の炎が燃え上がっちゃう展開です。しかし、グレイマンがまた非常にお優しいため、ラストではゾーヤはCIAのアセットとなることを承諾し、グレイマンとはお別れとなってしまう。非常にもったいないけど、ジェントリーも、オレと一緒にいたら不幸になるぜ的な想いが強くて、カッコつけて別れるラストは結構グッと来たすねえ! 彼女には是非とも今後のシリーズでまた会いたいですな!
 ◆氾 講(ファン・チアン):中国サイバー部隊のハッカー野郎。見た目普通のオドオド青年。今回は彼の争奪戦で、中国、CIA、ロシアSVR、そしてベトナムやタイの現地ヤクザ軍団、さらにはイタリアの「ンドランゲタ」というマフィアまで絡んできて、壮絶な氾くん争奪戦の殺し合い繰り広げられる。で、肝心の氾くんは、まあ基本ゆとり小僧なのだが、実際気の毒な青年で、彼の亡命の動機は、中国は恐ろしい国、ということを読者に刻み込んでくれるおっかないものであった。本当かどうか知らないが、「家族抵当」というものがあって、軍の機密情報を扱う人間になると、家族を上海の施設に強制移住させられるそうで、待遇としてはとてもいいので喜ぶ家族もいるんだけど、実際のところ完全な人質であり、何かあれば家族が殺される、みたいなことになっているらしい。で、范くんは、両親が死んだことで「家族抵当」を失ってしまったため(ただし両親の死はイギリスSISが仕組んだものだった)、「あいつは家族抵当がないから裏切るぞ、ならその前に殺してしまおう」と見なされることが確実になり、亡命を決意する。しかし范くん自身は、中国に敵対するような仕事はしたくない、むしろ愛国心があるぐらいで、アメリカもロシアも行きたくない、僕は台湾に行きたいんだ、という、まぁ完全に甘ちゃんな主張をするに至る。台湾に行ったって確実に中国に殺されるだけなのにね。で、我らがグレイマン氏は、この范くんの気持ちに痛く同情して、じゃあ台湾に連れてってやるよと言うぐらい仲良くなるのだが、ラストではそれが叶わず、ほろ苦いエンディングになってしまったのはこの辺の事情であります。でも、確実に氾くんは、この結末が唯一の生きる道だったと思うな。
 ◆CIAの人々:今回出てくるのは、シリーズではお馴染みのマット・ハンリーと、前作でグレイマンを狩るチームの指揮を執った、若干クソ女のスーザン・ブルーア。今回はスーザンがグレイマンのハンドラーとして作戦の指示をし、報告を聞く立場にあるのだが、前作でもわたしはこの女が嫌いだったけれど、今回もやっぱり好きになれそうにありません。望むのは自らの出世だけなんだもの。そして、グレイマン氏唯一の味方でもあった、マットは、前作のラストに大出世してしまったため、今回ジェントリーと、お前はそんな奴だったのかよ! 仕方ないだろ、この立場ではこうするしかないんだ! 的な口論も発生する。実は今回の作戦は、元をたどると、前作のラスボスたる悪党のカーマイケルがやりかけていた仕事で、マットとしてはどうしてもそのしりぬぐいというかケリを付けなきゃならない立場にあって、俺だってこんな作戦は嫌だ、と思っている。そしてCIAといえば……当然、ジェントリーの元上官でお馴染みのザック・ハイタワーも出てきますよ! どこで出てくるかは書きません。そして出てきた時はわたしは大変興奮しました。完全にグレイマン側の視点で読んでいる読者としては、ザックのいつも通りの態度が超イラつく!
 ◆中国人民解放軍の人々:今回、中国は虎の子のハッカーには逃げられるは、人民解放軍の精鋭たちは殺られるわで、実際かなり損害は大きい。そんな人民解放軍チームの司令官が戴 龍海(タイ・ロンハイ)というおっさんで、彼が無能なのか、状況が厳しすぎたのか、グレイマンにいいように騙されたのか、判定は微妙だけど、戴自身もかなり冷血な男なので、若干ざまあ、ではある。ただ、彼もこんな失敗続きでは粛清されるのは間違いなく、要するに中国人は、常に失敗したら殺される、という恐怖を抱いているわけで、それは実際気の毒ではある。ラストは華麗なる転身(?)で良かったねw
 ◆ロシアSVR強襲チーム「ザスロン」の面々:ヴァシーリーという男がリーダーで、まあ頭の堅いおっさん。ただし超強いのは間違いなく、要するにCIAのSADチームのリーダー、ザック・ハイタワーのロシア版的な人物であった。彼らももう、散々な目に合う。
 ◆現地ヤクザども:今回、ベトナムの「野生の虎」と名乗るヤクザ団体と、タイのチャムルーン・シンジケートというのが出てくる。双方ともに、結局は痛い目に合うのだが、恐ろしいのは、おそらく表の顔は普通にビジネスマンで、地方自治体や軍とも完全癒着していてやりたい放題な連中という点だろう。まあ、やっぱりわたしはベトナムもタイも行きたい国じゃあないかな……たとえ呑気な観光客としてでも、ほんの1本裏に行けば恐ろしいというのがちょっとリアルに怖いすね……。いや、でもまあそれは日本でも同じで、我々が知らないだけのことかもなあ……。

 はーーー長く書きすぎた。それだけ興奮して楽しんだということで、お許しいただきたい。しかし、なんというか、日本で平和に日々をぼんやり送っている我々読者としては、恐らくはきっと、日本国内でもこういう諜報活動が行われているんだろうな、ぐらいの想像しかわかないが、どうなんだろうなあ、日本でも実は派手なドンパチが行われていて、それを一般人はまったく知らされていないんでしょうかねえ……。いずれにせよわたしが思うのは、CIAもSVRも人民解放軍も、それぞれのキャラクターはそれぞれの自国の利益のために戦い、死んでいったわけで、実際のところ誰が悪者だとか、言えないような気がするんすよね。まあ、そりゃあ地元ヤクザ連中は純粋に金や自分自身の利益のためなので、悪党と言って良さそうだけれど、やっぱり人類は争いや戦争を克服することは未来永劫にないだろうな、と思うわたしでありました。

 というわけで、いい加減に結論。
 約1年ぶりの新刊、Mark Greaney氏による「暗殺者グレイマン」シリーズ待望の新作『GUNMETAL GRAY』(邦題:暗殺者の飛躍)が発売になったので、やったーーと喜び勇んで買い求め、さっそく読み終わったのだが、実に今回も楽しめる作品であった。前作でようやくCIAによる殺害指令が解かれた主人公グレイマン氏は、義のために戦うちょっと妙な凄腕アサシンだが、今回も大変な大活躍であった。あ、そういえば、いつもボロボロに傷だらけ&血まみれになるグレイマン氏だが、そういえば今回はそれほど深刻な怪我はなかったすね。そしてなんといっても、グレイマン in LOVEな展開は実に楽しめましたな。お相手のゾーヤも大変良いキャラで、どうか今後も登場してほしいと思う。そして、やっぱり中国は恐ろしい国! 以上。

↓ 次のGreaney氏の日本での新刊は、きっと「ジャック・ライアン」シリーズのこれかな。眠れる熊でお馴染みのロシア大統領ヴォローギン氏がやらかすお話のはずです。

 わたしが世界で最も好きな作家がStephen King大先生であることは、もうこのBlogで何度も書いている。そしてこれも、何度も書いたが、確かに大好き、ではあるけれど、すべての作品が超最高だとはもちろん思ってはいない。たまーに、これはちょっとなあ……という作品もあるのは残念ながら認めざるを得ない。しかし、それでもやっぱり、わたしはStephen King大先生の小説が大好きであり、新刊が出れば、もう文庫化まで待たずに即買って読む、という方針を採っている。理由は簡単で、我慢できないから。早く読みたくて堪らないから、である。
 ところで。Kingファンの方にはもはや言わずもがな、であるが、King大先生のライフワークともいうべき超大作『THE DARK TOWER』シリーズは、第1巻がUS本国で発売されたのが1982年だそうで、日本においては1998年かな、角川文庫から発売になった。たぶん、このタイミングでの日本語版刊行は、US本国において第4巻が1997年に発売されたことに合わせて、だったのだと想像する。その後、角川文庫はその第4巻までを刊行した(わたしの記憶では第3巻だったような気がしたけどさっきWikiを見たら4巻まで刊行してたそうです。そうだっけ?)―――のはいいのだが、なんと肝心のKing大先生の筆は止まってしまい(→ご存知の通り1999年6月19日に、King大先生はすさまじい交通事故に遭ってしまい、瀕死の重傷を負って本当に死にかけた)、第5巻のUS発売は2003年まで、つまり6年後まで待たなければならないことになった。そしてなんと、角川書店は、4巻目までで刊行をやめちゃったのである。まあ、待てなかったんだろうし、実際売れなかったんだろうな、とその状況は今となっては確かに想像できる。
 しかし、である。当時の我々King大先生のファンにとっては、その角川書店及び角川文庫は、「ダーク・タワーへの旅を途中リタイヤした裏切り者」として嫌われることになったのである。ええと、サーセン。これはわたしだけかもしれないので、「我々」というのは若干嘘ですが、とにかくわたしは当時、猛烈に頭にきて、もう角川文庫なんて買ってやるもんか!ぐらい腹が立っていたのは間違いない。その後、2005年になって結構突然第1巻から新潮文庫が出し直しを敢行し、最後の第7巻(※ただし、それぞれすげえ長くて、上下巻や上中下巻と分割されているので、新潮文庫で言うと全16冊かな)までを発売してくれたので、わたしも最初から全巻買って読み、大いに感動して主人公たちの旅の最後を見届けたわけである。これも今思えば、USで最終巻までの発売を見届けてから、新潮文庫は刊行スタートしたわけで、ある意味、横取りというかかっさらった的なズルいやり口ともいえるのかもしれない。
 ともあれ。わたしは今でもよく覚えているが、新潮文庫から最終巻が発売されたのが2006年の年末で、その年末年始の休みに読み終わり、その壮大な旅のラストに大感動し、明けた2007年の4月から、わたしは会社を一日も休まず土日だけを利用してお遍路の旅に出たのだが、最後の88番目のお寺が見えた時(丁度坂になっていて、えっちらおっちら登って徐々に見えてくる)は、本当に物語の主人公、ローランド・デスチェインのような心境になって、とうとうオレはここまで来た、とやけにジーンとしたものである。まあそれはどうでもいいか。
 で。わたしにとってKing大先生の『THE DARK TOWER』シリーズは忘れられない大傑作となったのだが、なんと! 今年2017年1月から、あの「裏切り者」である角川文庫から、ふたたびシリーズ全巻が発売されることが決定したのである。恐らくこの、普通に考えて有り得ない出し直しという(いい意味での)暴挙の背景にあるのは、ハリウッドでの映画化である。

 既にUS本国では先週末からいよいよ映画版が公開になっているが、まあ、それに合わせての、まさかの角川版出し直し、ということだろうと思われる。わたしとしては、かなり今さらかよ、という思いが募るが、まるでその贖罪かのように、シリーズ完結後(新潮版もすべて完結後)にUS発売になった幻の外伝『The Wind through the Keyhole』(4巻と5巻の間のお話で、4.5巻目にあたる物語)も角川はちゃんと出すというのだから、その決意やよし、貴様の謝罪は確かに受け取った! とわたしはあっさり許すことにし、この機会に、電子書籍ですべて買い直すこととした。おまけに、すべて描き下ろしのイラスト表紙がやけにカッコイイじゃあないか! サンキー・サイ・カドカワ!

 現在、新装・角川版は第5巻『Wolves of Calla(カーラの狼)』まで発売されており、問題の幻の4.5巻はとっくに発売になっている。そしてわたしは、全巻購入完了してから、最初から順番に読み直そう……と思っていたのだが……ついうっかり、どうしても4.5巻を読みたくてたまらなくなり、ちょっとだけ、最初だけ……とか思ってたらまんまとその面白さに引きづり込まれ、昨日読み終わっちゃったのであった。だが結論から言うと、やはりもう一度、最初から読み直すべきであろうという思いは強まっている。何故なら、この第4.5巻はやっぱり抜群に面白かった! のは間違いないものの、結構忘れていることが多く、このキャラってまさか……というような点が残念ながらわたしの低レベル脳では味わいきれなかったのではなかろうか、という思いというか不安?が強いからだ。
 というわけで、恐らく今後、初めから読み直すのは間違いないので、今回読んで思ったことやひょっとして、と思ったことをまとめておき、後に、ああ、オレはバカだったなあ、という確認をするために今現在のわたしの感想をここに記すことにする。しかしなあ……この『THE DARK TOWER』シリーズは、完全にラーメン二郎の大、トッピングもマシマシにしちゃったくらいのウルトラハイカロリーなので、味わい尽くすにも準備がいるからなあ……でも、それでもオレは読む! 「カ」の導きに従って!

 さてと。本作は、散々もう書いた通り、Stephen King大先生による一大叙事詩『THE DARK TOWER』シリーズの第4巻と第5巻の間に当たるお話で、通称第4.5巻と呼ばれている。4巻までにどんな事件があったか、また、そもそもこの『THE DARK TOWER』ってなんぞ? といった説明はもう書かない。それだけでわたしは軽く5時間しゃべり続ける自信はあるが、文字に起こすと恐らく25万字ほど費やすことになることは確実なのでやめておく。今のところは。
 なので、この第4.5巻のことだけを書くことにするのだが、非常に興味深いことに、本作は3つの物語が入れ子構造になった、いわゆる枠小説の形式をとっている。カタカナ好きな小僧が使いそうな表現で言うと、いわゆるメタフィクションという奴だ。簡単にまとめると、
【本筋】
 主人公たち「カ・テット」の4人+1匹が、第4巻での「狂えるなぞなぞ列車・ブレイン」との熾烈ななぞなぞバトルを終え、次なる地へと向かって旅を続けている。もちろん、次なる地は第5巻の「カーラの狼」の舞台であるカーラ、である。そこへの道中、主人公たちは、スターク・ブラストという嵐に遭遇し、とある小屋で一夜を過ごすことに。そしてその小屋で、ローランドは若き日に父から指令を受けて「スキンマン」という謎のシェイプチェンジャー(獣とかに変身できるバケモノ)を退治しに行った時の話をみんなに聞かせる。
【若き日のローランド(15歳)の話】
 第4巻後半で語られた、若き日のローランド(14歳)の悲恋と母殺しの傷がまだ完全には癒えていない頃のお話。ガンスリンガーとして認められたローランドは、父の指令によりデバリアで起こっている謎の連続猟奇殺人事件の捜査へ、友のジェミーと二人で派遣される。犯人とされる男は、人間ではあるものの、獣に変身して人を襲うシェイプチェンジャーらしい。そして惨事から辛くも生き残った少年ビルを保護したローランドは、おびえるビルに、かつて母から読み聞かせてもらって大好きだった物語「鍵穴を吹き抜ける風」を語って聞かせるのだが――。
【鍵穴を吹き抜ける風】
 後に伝説のガンスリンガー「豪気の」ティムと呼ばれることになる少年ティムの冒険物語。ティムは父をドラゴンに殺され、母は再婚するが、この再婚相手がクソ野郎でとんでもないDV野郎だった。そして彼らの住む森に年に1度現れる徴税士、黒衣の「契約者の男」と出会い、父の死の真相を知ったティムは母をいやす魔法を得るために森の奥へ旅に出るのだが――。

 という3つの物語から成っている。【鍵穴を吹き抜ける風】も、【15歳のローランドの捜査ミステリー】も実に面白く、とりわけ15歳のローランドの話の結末は、シリーズ前作(第4巻)を読んでいる人なら確実に泣けるお話で、いや、わたしは泣きはしなかったけど、深く激しく感動した。これは第4巻の真のエンディングだとわたしは大いに興奮しました。ここで、母からローランドへの愛が語られるとは……! しかもそれが「ハイ・スピーチ語」で記述されていて(我々には全く読めない!)、ファンならもう超胸が熱くなること請け合いであろうと思う。その、母からの最後の言葉を、一番ラストで、ぼそっとスザンナだけに伝えるシーンはもう大感動ですよ。
 まあ、シリーズを読んでいない人には、わたしが何を言っているかさっぱりわからないだろう。だが、読んでいる人ならば、これだけで相当興味が魅かれるのではなかろうか。

 もういい加減に長いので、本作だけ(?)に出てくると思われるキャラについて、備忘録としてメモしておこう。もう「カ・テット」の4人+1匹については説明しませんし、「カ・テット」とは何か知らない人は、まあ、今すぐシリーズを読むか、退場してください。

 ◆ジェミー:若きローランドと同年代のガンスリンガーになりたての少年。アランとカスパート(4巻で語られる過去話に出てくるローランドの親友)の二人は今回出番なし。代わってジェミーという新キャラが今回の相棒として登場。ただ、ひょっとしたら彼も既に第4巻に登場していたのかもしれないけど、既に覚えてません……ガンスリンガーなので当然腕は立つ頼れる仲間で、ローランドの信頼も厚いが、とにかく無口で真面目な童貞ボーイ。結構カッコイイ。★2018/02/11追記:おれのバカ!! 現在、1巻目から読み直しているところですが、思いっきり1巻からジェミーは登場してました。鷹のデイヴィットを使ったコートとの対決の時、仲間の一人としてジェミーはいましたね。ごめんよ、すっかり忘れてた!
 ◆ティム:「鍵穴を吹き抜ける風」というおとぎ話(?)の主人公の少年。12歳。スーパー勇気のあるガッツあふれた少年で、この冒険譚がすさまじく面白い! そしてローランドも彼にひどく感情移入して語られており、実に興奮する物語となっている。
 ◆契約者の男:ティムの勇気を認め、とある魔法で真実を突き付けるのだが、実は単に事態を面白がっているだけ? のようで、しかもどうやらシリーズ最大の悪「クリムゾン・キング」の手下、なのかもしれない。この物語当時の「黒衣の男」=「ランドル・フラッグ」的な存在らしい。ただし、物語の中ではそれほどの悪党ではなく、むしろティムを気に入り、一応は手助けしてくれたともいえる、ちょっと理解が難しいキャラ。彼も、以前に登場していることをわたしが既に忘れちゃってるだけかも。
 ◆ダリア:ティムが旅の途中で手に入れるディスク型ポータブルナビゲーションの機械。どうやらGPS搭載でティムの旅を何気にサポートしてくれる。もちろん「ノース・セントラル・ポジトロニクス社」の製品。この社名だけで、わたしは興奮できます。シリーズを読んでいる人なら同意してもらえると思う。ダリアは「指令19」というものに縛られているようで、ティムの質問に回答できないこともあるのだが、King大先生のファンならば、「19」という数字だけで軽く3時間は議論が出来ますな。意味の分からない人はもう帰ってください。
 ◆北の森クノックに建つドガン:ティムの冒険の終着地点。どうやら<獅子のビーム>の塔らしい。元々の守護者はライオンの「アスラン」のはずだが、どうやらアスランは生きているとすれば遥か彼方にある雪の途絶えない国にいるらしい。これって……まさしく「ナルニア国物語」のアスランのことですな。他にどんなビームの塔があって、それぞれの守護者の動物がどんなだったか、もう忘れちゃったよ……第3巻冒頭の、殺人サイボーグ熊「シャーディック」との激闘が懐かしい。ビームの塔が6本あるのは確かなのだが、くそう。ちゃんと読み直さないとダメだ! ファン失格! コートならば確実に落第を言い渡すであろう!
 ◆虎:魔術師マーリンが転生させられ、ドガンに拘留されていた時の姿。いい魔術師で、ラストではティムの活躍で虎の姿から元に戻り、母の目をいやす魔法を授ける。このマーリンも、これまでの物語に出てきたか覚えてない。ただ間違いなく、いわゆる「アーサー王物語」に出てくるあの魔術師マーリンであることは確実。一応言っておきますが、エルドのガンスリンガー(=主人公ローランド)はアーサー王の末裔という設定です。

 はーーー。本当に興奮したわ……マジ最高です。  
 まあとにかく、Stephen King大先生による『THE DARK TOWER』は、その長大さに普通の人は絶対に手に取らない、相当ハードルの高い物語だとは思うけれど、少なくとも、Stephen Kingファンを名乗るならば絶対に避けて通れないイニシエーションであろうと思う。わたしは読み終わった時、本当に胸に深い感動を覚えたわけで、それを共有できる友が当時一人いたことを、当時のわたしは本当に嬉しく思ったものだ。わたしは今でも、その友とはサンキー・サイ、と言い合う仲だし、メールの文末は必ず、「長い昼と快適な夜を(Long Days and Pleasant Nights)」という言葉で結んでいる。鹿児島に住む彼とはもう2年ぐらい会ってないなあ……また会いに行くか……と思ったわたしであった。分からない人には全くわからないと思うが、シリーズを読んだ人なら、わたしの気持ちが伝わるものと信じたい。

 というわけで、結論。
 わたしがこの世で最も好きな作家は、ダントツでStephen King大先生である! それは動かしようのない厳然たる事実だ。そして、かつてわたしを裏切った角川文庫が、今年に入って突如、『THE DARK TOWER』シリーズ全巻の新装出し直しを開始し、あまつさえ、日本語未翻訳だった幻の外伝第4.5巻『鍵穴を吹き抜ける風』をも刊行してくれたので、抗いがたい誘惑に負け、ついその4.5巻だけ読んでしまったわたしであるが、その物語の面白さに興奮し、かつて共に物語を旅したお馴染みの「カ・テット」に再会することができて、実にわたしは嬉しく思う。いやー、最高ですよ。ホントに面白かったす。以上。

↓ そしていよいよ来月発売が決定! 偉いぞ文春! 『Mr.Mercedes』の続巻です! 一日も早く読みたい!!!
ファインダーズ・キーパーズ 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-09-29

ファインダーズ・キーパーズ 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-09-29



 はーーー暑い……そして湿気が不快だ……やっぱり寒い方がわたしは耐えられるのは間違いなかろう。夏はなんというか……酸素が足りないというか……すべての体機能が低下しているような気がする……。
 というわけで、昨日に引き続き、Isaac Asimov先生の『FOUNDATION』シリーズ最初の三部作、の3作目『SECOND FOUNDATION』について今日は書こうと思う。

 まずは、昨日も書いたおさらいをコピペしておくか。手抜きサーセン。
 今から数万年後の遠い未来、「帝国」が1万2千年の長きにわたって広大な銀河を統治していた。が、その長大な歴史は停滞をもたらし、崩壊が迫っていることを一人の男が警告を発する。その男の名は【ハリ・セルダン】。そしてセルダンは、人類の英知たる知識を保管・管理するために、【銀河百科事典第1財団】=【第1ファウンデーション】を、帝国の首都星【トランター】から遠く離れた辺境の星【ターミナス】に築き上げることに成功する(※第1巻時点ではほぼ謎に包まれているが、「セルダンは、銀河の反対側に第2ファウンデーションを設置した」ことも知られている)。その目的は、何もしないと、帝国滅亡後、人類は3万年にわたって無政府状態の闇に陥ることになるが、その3万年の闇を、1千年に縮めるために、ファウンデーションを設立したわけである。セルダンの主張はセルダンが編み出した【心理歴史学】という、統計科学を用いた複雑な方程式によって数学的に導かれたもので、第1巻は、そこから300年にぐらいの間に起きた、3回の重大な【セルダン危機】=ファウンデーションに降りかかる重大なピンチ、を描いたものである。
 そして続く第2巻では、冒頭に銀河帝国の滅亡に繋がる事件と最後の皇帝について描かれ、その後、【セルダン・プラン】の唯一の弱点である「イレギュラー」、【ザ・ミュール】と呼ばれるミュータントの出現により、セルダンの予言は初めて外れ、とうとうファウンデーションはミュールに占領・征服されてしまう。そしてミュールに唯一対抗することができる可能性として、第2ファウンデーションの謎を解くために人々は行動するが、その謎が解かれる寸前で、大事件が起きて―――というエンディングであった。
 で。本書、第3作目にあたる『SECOND FOUNDATION』は、冒頭のプロローグにおいて、Asimov先生直々に、次のように物語が紹介されている。
 「こうして謎の第2ファウンデーションが、みんなの探し求めるゴールとして残った。ミュールは銀河系征服を完遂するために、それを発見しなければならなかった。第1ファウンデーションの生き残りの忠誠心のある者たちは、まさに正反対の理由でそれを発見しなければならなかった。だが、いったいどこにあるのか? それは誰も知らなかった。というわけで、これは第2ファウンデーション探索の物語である」

 <第1部:ミュールによる探索>
 この第1部で描かれるのは、そのタイトル通りミュールによる【第2ファウンデーション】探索の物語である。第2巻のラストから5年後、第2巻で出てきた【ハン・プリッチャー】がミュールによって探索の命を与えられ、新キャラの【ベイル・チャニス】を引き連れて旅立つのだが、その宇宙船には追跡機が付けられており、ブリッチャーは疑心暗鬼の中で混乱する中、ついにミュールと第2ファウンデーションは対面する―――! という展開になる。そして第2ファウンデーションが告げた、ミュールに対する宣言とは! というのがお話の筋で、構成として特徴的なのは、短い章が次々連なる中で、第2ファウンデーションでの【第1発言者】たちの会議の模様?が交互に挿入されている点である。ラストでこのミュール側の話と第2ファウンデーション側の話が交わる形になっていて、ラストは、えええ―――!! という驚きの展開でした。
 主な登場人物と地名をまとめておこう。
 【カルガン】:ミュールの本拠星
 【タセンダ】:チャニスが怪しい、と目を付けた星系
 【ロッセム】:タゼンダに属する冬の惑星。1年のうち9カ月雪が降っており、かつては監獄星でもあった。
 【ミュール】:ミュータントであり、人間の感情をコントロールすることができる特殊な能力を持っている。そのため、ミュールによる征服は、一切戦闘が起きない。ミュールに反抗する心(だけ)を消されてしまうため、本人的には何も変わっていないように思えるけれど、ミュールに反抗できない状態になる。現在ミュールは、銀河系の1/10を支配して【世界連邦】を築き、その【第1市民】と名乗っている。痩せこけていて手足は棒のようで、5フィート8インチ(=172.7cm)、120ポンド(54.43㎏)に満たず、鼻が3インチ突き出ているそうで、まあ、異形、と描写されている。つーかですね、身長と体重はわたしとほぼ同じなんですけど! ちょっと笑えました。
 【ハン・プリッチャー】:第2巻にも出てきた、元ファウンデーション国防軍の諜報部員。現在は、ミュールに【転向】させられ、ミュールの第一の側近的な存在に。役職的には将軍に任ぜられている。真面目だけど、結構気の毒な人。ミュールの敵だったころのことを明確に覚えている。
 【ベイル・チャニス】:カルガン出身。ハンサムで頭が良い、28歳の若い男。【非転向者】であるが、ミュールの統治に不満はない模様。ミュールは、チャニスのコントロールされていない生の野心を第2ファウンデーション探索に必要なものと見込んで(※ミュールは、何者かが転向者に対して精神コントロールをしようとしていることを知っており、プリッチャーを100%信頼できずにいたため、非転向者が必要だった、ということらしい)、プリッチャーに同行させる。しかし、ミュールがチャニスを起用した真意は別のところにあり、さらにチャニスにも秘密があり、そして事態はミュールやチャニスの意図さえも超えて―――というラストの展開は大興奮でありました。
 【第1発言者】:謎の第2ファウンデーションの幹部的存在(?)。行政評議会の構成員。彼らの会議は、独特のもので、談話(声)をもって行うのではないらしい。Asimov先生の地の文の解説によると「ここに集合している人々の精神は、おたがいの働きを完全に理解する」そうで、説明不能だそうです。
 【ナロビ】:ロッセムの農夫。その上に【長老】がいて、さらにその上に【タゼンダ】から派遣されたロッサムを治める【総督】がいる。彼らはみなほぼチョイ役。

 <第2部:ファウンデーションによる探索>
 この第2部は、第1部から1世代分時間が経過している。すでに、第1部ラストでミュールは第2ファウンデーションに完全敗北し、ミュールの創り上げた世界連邦もほぼ崩壊している。そんな世界で、【トラン・ダレル】博士を中心とするファウンデーションの小グループは、「電子脳写」という技術で人の精神や感情がどうも「何者」かに操られている、人工的な精神状態にある、ということを発見し、これは【第2ファウンデーション】によるコントロールなのではないか、という結論に至る。そしてその謎を解くために、かつてミュールが本拠地としていた【カルガン】でミュールの記録を調査するために、仲間の一人をカルガンへ送り込む。しかしその船には、ダレル博士の一人娘、アーカディアもこっそり乗船していた――――という展開で、さらにカルガンを現在治める【ステッティン】という男や、ちょっとした戦争まで勃発し、果たしてダレル博士は第2ファウンデーションの謎を解けるのか、そしてアーカディアは無事に父の元へ帰れるのか、という活劇タッチで物語は描かれる。なお、ラストでとうとう、第2ファウンデーションの謎は完全に明らかになります。ちょっと意外な、そうきたか、というものでわたしは大変楽しめました。
 主な人物は以下の通り。
 【トラン・ダレル】:42歳。第2巻第2部の主人公、ベイタの息子。科学者。妻は死別。ターミナス在住。結果的に第2ファウンデーションのすべてを解き明かすことに成功する。
 【アーカディア・ダレル】:14歳。ベイタの孫娘。家にこっそり盗聴器を仕掛けて、父たちの計画を盗み聞きし、第2ファウンデーション捜索のためにカルガンへ向かう宇宙船に密航。結果的にはすごい大発見をして大活躍する。主人公の一人と言って過言ではない。
 【ポリ】:ダレル家に仕える家政婦のおばちゃん。
 【ベレアス・アンソーア】:若き科学者。トランのかつての共同研究者の最後の弟子として、トランのグループに参加してくるが、その正体は―――!! というラストがかなり驚きの展開。
 【ホマー・マン】:トランのグループのメンバー。図書館司書のおじいちゃん。すごい気弱でどもり癖もあるのに、ミュール研究の第一人者だったため、カルガン調査にはあなたが適任だ、と任命され、しぶしぶ1人で行くことに。そしてアーカディアが密航していることに気づいて大混乱するも、現地では意外と活躍する。
 【ジョウル・ターパー】:トランのグループのメンバー。報道記者。ほぼ役割ナシ。
 【エヴェレット・セミック】:トランのグループのメンバー。物理学教授。ほぼ役割ナシ。
 【第1発言者】:第1部に出てきた第1発言者の後継者で、同一人物ではない。この第2部も、第2ファウンデーション側の会話が交互に現れる構成になっている。
 【若者】:第1発言者の会話相手。評議会入りを控えた有能な若者らしい(?)。わたしはコイツこそが実はアンソーアなのかと思っていたのだが、どうも違うみたい。
 【ステッティン】:ミュール亡き後のカルガンを治める君主。ただしまだ在位5カ月の新米。完全にセルダン・プランは崩壊したと思っていて、第2ファウンデーションのことも信じていないのか、どうでもいいと思っているのか、良くわからないけど自分がミュールに代わって銀河を征服する、とかアホな野望を抱いている。ほぼ何も活躍せず、無駄にファウンデーションに戦争を吹っ掛け、あっさり敗退。
 【カリア】:ステッティンの正妻。カルガンにやってきたアーカディアを保護する。しかしその正体は―――! という意外な展開になるけれど、実際物語上の役割はそれほど大きくない。アーカディアに余裕で見抜かれるし。
 【プリーム・パルヴァー】:荒廃したトランターで農業を営む男。たまたま仕事でカルガンに来ていたが、アーカディアのカルガン脱出を手伝い、トランターの自宅へ彼女をかくまう。しかし、本作の一番最後の文章で、彼こそが実は―――!! という超驚きの正体暴露があって、売っそ、マジかよ!! とわたしは非常にびっくりした。

 はーーー。なんかまとまらない。要するにこの第3巻は、まず前半でミュールのその後が描かれ、後半ではとうとう第2ファウンデーションの謎が解かれ、というわけで、大変スッキリする完結編、と言っていいと思う。ただ、ホントに読みづらい、という印象は最後まで薄れなかったのが我ながら良くわからない。これは……翻訳の日本語文章の問題ではないと思うのだが……やっぱり、時間軸が長くて場面転換も多くて、キャラクターも多い、ってことなんだろうか。しかし、ふと思ったけれど、やっぱり『スター・ウォーズ』の元祖、みたいなことを言われるだけあって、確かに展開やキャラ造形は『スター・ウォーズ』を思わせる要素はいっぱいあるような気がしますな。基本的には、一人の主人公が、難問に対して頭脳で勝負する展開が多く、ほとんどの場合、主人公自身は戦わない。あくまで背景として戦争があるため、戦闘描写はほぼないという点も非常に独特ですな。大変面白かったです。
 わたしが非常に痛感したのは、
 1)超人、という個人に頼る体制はやっぱり永続しえない
 2)超人のスーパーパワーより組織の方が強い。
 ということです。そして第2ファウンデーションはなんというか、「ブギーポップ」シリーズでお馴染みの「統和機構」みたいすね。
 ちょっと関係ないけれど、わたしはいつも思うのだが、たとえば北の三代目将軍様は、ある日突然イイ奴になるかもしれないし、あるいはあの世に消え去るかもしれず、そうなったらあの国はガラッと変わり得る、けど、彼を支援してきた強大なGNP2位のあの国は、完全に組織として強固で、はっきり言えば誰がTOPになっても大きく変わることはなく、常に同じなんだろうな、ということも、なんとなく本作を読んで思い出しました。

 というわけで、もういい加減にして結論。
 時間がかかってしまったが、やっとSFの名作と呼ばれる『FOUDATION』三部作をずべて読み終わった。非常に長大な物語で、その規模は第1巻の冒頭から第3巻のエンディングまでは400年ぐらい経ってるのかな? 非常に読みごたえのある作品でありました。様々なSF宇宙モノの元祖、みたいなことを言われる古典作品だが、これはやっぱり読んどいてよかったわ。というのがわたしの最終結論です。以上。

↓ 次は、とうとうコイツを読みます! ずっと日本語訳を待ち望んでいたぜ! 昨日やっと電子書籍で買いました。昨日はコインバックフェアがあったので。
ダークタワー IV‐1/2 鍵穴を吹き抜ける風 (角川文庫)
スティーヴン・キング
KADOKAWA / 角川書店
2017-06-17


 はーーーやっと読み終わった……。そして面白かった!
 6月の末に、わたしはIsaac Asimov先生のSF古典ともいうべき作品、『FOUNDATION』を読んだのだが、これがめっぽう面白く、(最初の)3部作はもう全部読むしかねえ、と続く2巻目3巻目をせっせと読んでいたのだが、今日の朝の電車内でやっと全部読み終わった。超満足です。
 で、2冊まとめてレビューしようと思ったけれど、分量的にかなり長くなるような気がするので、やっぱり1冊ずつ取り上げることにした。
 ちなみに、わたしは電子書籍で読んだのだが、わたしの読んだフォーマットは46文字×24行で、2巻は276ページある。それをわたしは333分かかって読んだと記録が残ってました。3巻目は同じフォーマットで277ページで、362分だったようです。そう、読むスピード自体はそれほど遅くないんだけど、途中で別の本を読んだりしてたので、結構時間がかかっちゃったな……。
 まあというわけで、まずは2巻目を今日、そして3巻目は明日、書こうと思う。そしてその第2巻はこちらの『FOUNDATION and EMPIRE』(日本語タイトル「銀河帝国興亡史(2) ファウンデーション対帝国」)であります。

 すでに基本的な世界観は、1巻目を書いた時に散々書いたので、もう短くまとめるが、今から数万年後の遠い未来、「帝国」が1万2千年の長きにわたって広大な銀河を統治していた。が、その長大な歴史は停滞をもたらし、崩壊が迫っていることを一人の男が警告を発する。その男の名は【ハリ・セルダン】。そしてセルダンは、人類の英知たる知識を保管・管理するために、【銀河百科事典第1財団】=【第1ファウンデーション】を、帝国の首都星【トランター】から遠く離れた辺境の星【ターミナス】に築き上げることに成功する(※第1巻時点ではほぼ謎に包まれているが、「セルダンは、銀河の反対側に第2ファウンデーションを設置した」ことも知られている)。その目的は、何もしないと、帝国滅亡後、人類は3万年にわたって無政府状態の闇に陥ることになるが、その3万年の闇を、1千年に縮めること、であり、そのためにファウンデーションを設立したわけである。セルダンの主張はセルダンが編み出した【心理歴史学】という、統計科学を用いた複雑な方程式によって数学的に導かれたもので、第1巻は、そこから300年にぐらいの間に起きた、3回の重大な【セルダン危機】=ファウンデーションに降りかかる重大なピンチ、を描いたものである。そしてラストでは、いよいよ帝国の滅亡間近、までが描かれていた。
 そして第2巻である。
 第1巻が5つの章からなり、それぞれの章の間には結構な時間経過があって、登場人物も移り変わっていくのが形式的な特徴であったが、今回の第2巻は、大きく分けて二つの章で構成されているという微妙な違いがあった。それでは、それぞれの章を簡単にまとめていくとしよう。
 <第1部:将軍>
 この第1部で描かれるのは、【帝国サイド】からの物語である。とある帝国の将軍が、「魔法使い」の噂を耳にし、【ファウンデーション】の存在を知り、帝国臣民としてファウンデーションの技術を奪うために長征を仕掛けてくるが、展開としてはファウンデーションVS帝国の戦争が勃発し、帝国有利で進むものの、最終的には帝国内の意志が統一されていない・つまらん勢力争い(?)といった状況を利用され、帝国はある意味勝手に破れ、1万2千年の歴史に幕が閉じられる、ということになる。これまたセルダンの計算通り!的な流れですな。
 主要人物は以下の通り。
 【ベル・リオーズ】:帝国の軍人(将軍・34歳)で、「帝国最後の臣民」と後に呼ばれることになる、なかなか頭のいい男。ドゥーセム・バーから聞いた「魔法使い」の話を確かめるために最初は単独遠征、そしてのちにVSファウンデーションの戦火を開くことに。実際のところ、全然悪者ではなく、むしろ、帝国に忠誠心の篤い真面目な男。可哀想な運命に……。
 【ドゥーセム・バー】:隠棲していた彼のもとにリオーズがやってくるところから物語が始まる。彼は第1巻ラストで、【ホバー・マロウ】と取引した【オナム・バー】が言っていた「6番目の息子」のことらしい。なお、どうやら時の経過としては、第1巻のラストから40年(か50年)が経っている模様。そしてカギとなる個人用フォース・フィールド発生機も、第1巻ラストでマロウが取引に使ったアレ、が50年を経て重要な役割を果たす。
 【クレオン2世】:帝国最後の皇帝。まったくファウンデーションのことを知らず、現状を分かっていないおじいちゃん。実際無能。
【ブロドリック】:クレオン2世の一番の寵臣。若き野心家。下賤の生まれのくせに可愛がられていて、と宮廷内で憎まれている。リオーズの遠征に皇帝名代として同行。しかしその野心をファウンデーション側に利用されてしまい……
 【ラサン・デヴァーズ】ファウンデーションの貿易商人。リオーズの艦隊に捕らえられ、ドゥーセムと出会い、かつて50年前にマロウと取引したオナム・バーの息子であることを知って、ドゥーセムが帝国に対して抱く憎悪を利用して、帝国打倒に協力する。そして、リオーズとブロドリックの関係に注目し、工作を始めるのだが……実質的にファウンデーションを救う一番の功労者になる。
 【セネット・フォレル】ファウンデーションの貿易商人。チョイ役と思いきや、どうやらデヴァーズを派遣した商人協会のお偉いさん、なのかな? 実は良くわかりませんでした。
 【モリ・ルーク軍曹】帝国の軍人。リオーズの忠実な部下だが、デヴァーズの看守として見張っている間に、デヴァーズからちょっとしたモノをもらったり話を聞いているうちに……

 <第2部:ザ・ミュール>
 どうやら帝国滅亡から80年が経過している時代が舞台。とうとう帝国は滅亡し、自由世界が広がる、かと思いきや、ついに【セルダン・プラン】に予定されていない突発事件が起こり、「プラン」崩壊の危機に陥るという超ヤバイお話。その、セルダンをもってして予期できなかったイレギュラー、それが【ザ・ミュール】と呼ばれる一人のミュータント(=超能力者みたいなもの)で、セルダンの「心理歴史学」が、あくまで総体としての人類の行方を計算したものであり、個人の動向を予知できない、という唯一の弱点を突いて、ファウンデーションは史上最大のピンチを迎える―――!!! というのがお話の筋。
 主な登場人物と地名は以下の通り。
 【ヘイヴン】:辺境の洞窟惑星
 【ターミナス】:第1ファウンデーションの母星
 【トランター】:旧帝国の首都星
 【カルガン】:保養地として有名な、リゾート惑星。ファウンデーション陣営の星だが、ミュールに(たった一つの戦闘もなく)征服され、ベイタとトランは新婚旅行を装って潜入する。
 【ベイタ】:ホバー・マロウの子孫で活動的な女子。24歳。歴史学専攻。ファウンデーション(ターミナス)出身。今回の主人公。セルダン危機が迫っていると考えている。なかなか賢く勇敢な女子。
 【トラン】:ベイタの夫。ヘイヴン出身。
 【フラン】:トランの父。59歳。貿易商人。事故により隻腕。ヘイヴンの商人の顔役的な存在。ファウンデーションのヘイヴン侵攻に不安を抱えているが、ここ1,2年、銀河に流れているミュールの噂に、ファウンデーションにミュールをぶつけることで有利な交渉ができるのでは、と考えている。
 【ランデュ】:トランの叔父。父の弟。
 【ハン・プリッチャー】:登場時は大尉。43歳。アナクレオン出身。ファウンデーション国防軍の秘密諜報員。非常に有能で「私の義務は国家に対するものであり上司に対するものではない」と言い切って無能な上司をぶん殴って軍を辞め、カルガンで小船員として働いていたが、ミュールの到来でカルガンが征服されたことをいち早くファウンデーションに報告した男。ベイタとトランの二人にカルガンで出会い、二人の脱出に手を貸す。が……のちにミュールに心理操作され、ミュール軍の大佐に(※第3巻では将軍として登場)。
 【インドバー市長】:現在のインドバーは三代目。初代インドバーは残忍かつ有能な市長で、市長職を世襲にした。2代目インドバーは残忍なだけの世襲市長。現在の三代目は残忍でも有能でもなく、生まれる場所を間違えた簿記係に過ぎない、と言われている。組織とお役所仕事が大好きな無能。
 【マグニフィコ】:ミュールに仕えていたという道化師。なんかちょっと良く分からない謎人物で、手足がひょろ長くその容貌も異様。そして唯一、ミュールの姿を見たことのある人間として彼の争奪戦が起こる。ベイタに懐き、ベイタにつき従うが、その正体はーーー多分誰でも、結構早い段階で正体に気付けると思う。わたしも想像した通りでラストはそれほど驚かなかった(※ただし、ラストのベイタの決断には超驚いた)。
 【エプリング・ミス】:第1ファウンデーションで唯一、事態を正確に洞察していた科学者。インドバー(三代目)市長にもずけずけモノが言える人物。ミュールの支配がファウンデーションを覆った後半、ベイタ・トラン・マグニフィコとともにターミナスを脱出し、ヘイヴンで一時避難したのちに、トランターへ。帝国の残骸と化した荒廃したトランターで、ミュールに唯一対抗できるのではないかと推測した【第2ファウンデーション】の謎をついに解明するが、その時、大変なことが起きる――!

 はーーもうきりがないのでこの辺にしておこうかな。とにかく、この第2巻での山場は間違いなく第2部の【ザ・ミュール】にあるといっていいだろう。一体全体、何者なのか。これがこの第2巻の最大の謎であろう。また、ターミナスがミュールによって占領、陥落する直前に出現したセルダンのホログラムも、これまですべて正確な予知のもとに、状況に合う「セルダン危機」に対する話をしていたのに、今回は全く予測がずれてしまったシーンも非常に印象深い。
 かくして、第2巻はミュールによるファウンデーション陥落と、ミュールの天敵、と思われる【第2ファウンデーション】の謎が示されて終わる。実に次が気になる終わり方で、果たして銀河はミュールによって支配されてしまうのか、それとも、ついに【第2ファウンデーション】が姿を現すのか、というドキドキな、2作目にふさわしいエンディングだとわたしは非常に感動?さえした。三部作モノはいっぱいあるけれど、これ以上ない「第2作目」のエンディングだと思うな。例えていうと、やっぱり、『帝国の逆襲』のエンディングに近いような気さえしますね。いやー、本当に面白かった!

 というわけで、結論。
 Isaac Asimov先生による『ファウンデーション』シリーズ第2巻、『FOUNDATION and EMPIRE』を読み終わったとき、わたしが真っ先に思ったのは、「2作目のエンディングとして完璧」という思いであった。本作はかなり時間軸も長いし、若干の冗長さもあるような気がするし、キャラクターも多いので、実は結構読みづらいかも、という気はする。しかし、ついに予言が外れた「セルダンプラン」と謎の「第2ファウンデーション」の存在をほのめかすエンディングは完璧であり、読み終えた瞬間に第3作目を読みだしたくなることは間違いないと思う。これは面白い! というわけで、明日は第3作目について書きます。以上。

↓ いやーーー実は第3作目も最高でした。詳しくは明日!

 もうだいぶ前の話で、たぶん去年の暮れの頃だったと思うが、本屋さんの店頭で、とある漫画のお試し版を読んで、へえ、これは面白いかも、と思った作品がある。書店店頭では、プロモーション動画を小さい液晶パネルで流していて、それを見て、へえ~?と思った作品なのだが、さっきちょっと探してみたら思いっきりその動画がYou Tubeにアップされていたので、まずはその動画を貼っておこう。

 そうです。かの有名なSF界のレジェンド、Isaac Asimov先生による『FOUNDATION』の完全漫画化、であるらしいことを知って、わたしは結構驚いた。どうやら(3)巻の発売が去年の12月だったんだな。なるほど。まあ、とにかく、それじゃあ買って読んでみるか、と思ったものの、すっかり電子書籍野郎に変身しているわたしは、とりあえずその場ですぐ買うことはせず、まずは電子書籍で買えるのかしら? ということを調べてみた。のだが、結論から言うと電子化されていないようだったので、ま、電子化されたら買うか……という忘却の彼方に消えてしまっていたのである。そもそも、版元はよくわからん小さな出版社のようで、連載媒体は持っていないみたいなので、まあ描き下ろし単行本ということなんだろう。出版社というより編プロ的なのかな。よくわからん。
 というわけで、わたしは全くこの作品のことを忘れていたのだが、つい先日、わたしの愛用する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて、還元率の高いフェアがあった時になんかおもしろそうなのはねえかな~、と、大好きな早川書房の作品をあさっている時に、原作小説であるAsimov先生の『FOUNDATION』が売っているのを見かけ、よし、じゃあまず、原作小説を読もう!と買ってみたのである。ええ、実はわたし、原作未読なもので……。てなわけで、さっそく読みはじめた。

 結論から言うと、やっぱり面白い! のは間違いないのだが、キャラクターは多いし時間軸としても非常に長い期間のお話なので、こりゃあちょっと、最初からちゃんとキャラとか物語をメモっとかないと、後で訳が分からなくなるかもな……と思ったのである。
 というわけで、もはやわたしのBlog恒例のキャラ紹介というか、ざっと筋をまとめておこうと思います。まず、わたしが買ったのは最初の三部作、のようで、今日取り上げるのは一番最初の(1)巻である。そしてその(1)巻は、全5章で構成されていて、それぞれ前の章の30年後、とか、かなり時間が経過して登場キャラクターも入れ替わっていく、けど、肝心のキーキャラはそれぞれの時代で伝説的に語られる、みたいなつながりがあって、まさしく年代記的なお話でありました。なので、各章ごとにちょっとまとめてみるか。
 【本編の説明の前に、時代背景について】
 本作で語られる物語は、どうやら遠い未来のお話のようで、銀河は巨大な帝国が統べている。膨大な数の人類が銀河の隅々まで広がって生きているらしい。そして、もはや「人類の起源」がどの惑星であったか、すらもう忘れ去られていて、中にはウチが人類の起源たる聖なる惑星じゃ、と言い張っている星もあるみたい。ちなみに、銀河帝国は1万2千年続いているらしく、総人口はゼロが18個、だそうで、1京、ってことかな? 1万兆かな? もう良くわからんぐらい多いってことですな。
 【第1部:心理歴史学者】
 この第1部で語られるのは、本作の最大の(?)ポイントである「心理歴史学」についてである。それは、人間集団の行動を、一定の社会的・経済的刺激に対してどう反応するか、について心理学的(?)に究明することで、未来を予測する(=計算する)ことを可能にした統計科学の学問で、まあちょっと説明が難しいのだが、特徴的なのは、「個々人の動き」や未来は予測不可能なんだけれど、その総体である「人類」の進む(であろう)道は計算できる、という点がポイントだ。
 で、この第1部では、「心理歴史学」の開祖である【ハリ・セルダン】というおじいちゃんが銀河帝国の首都星である【トランター】という星にいて、その助手として就職が決まった【ガール・ドーニック】という若者がトランターにやってくるところから始まる。しかし、セルダン博士は、その心理的歴史学によって、銀河帝国の滅亡を予言していて、公安委員会ににらまれており、セルダン博士も、そしてドーニック君も到着して数日後には逮捕されてしまう。ちなみに逮捕されることも全てセルダン博士の計算通りで、実はセルダン博士は、とあるプロジェクトを18年かけて計画し、とうとう実行の時が来た、という話になる。そして尋問に掛けられるのだが、そこでのセルダン博士の話が非常に面白い。曰く、人々の心理歴史学的な流れは、極めて強力な慣性をもっているそうで、それを止めるのは膨大なエネルギーが必要になる(=要するに止められない)、銀河帝国の衰退と滅亡は確実、だが、その後の無政府状態に陥る期間は、3万年続くはずで、その3万年ののちに「第2銀河帝国」が勃興するであろう。しかし、自分のプロジェクトを実行するならば、その3万年の闇を1000年まで短縮することが可能になる。突進してくる巨大な出来事の塊を、ほんのわずか逸らす。それがプロジェクトの目的だ、ということだそうだ。そしてそのためにやることは、「人類の知恵を救う」ことで、社会の崩壊とともに科学知識も断片に分裂・消滅してしまうので、それを防ぐために「あらゆる知識の集大成=銀河百科事典」を作る、それがプロジェクトの内容だとセルダン博士は語るのであります。これは面白い考えですなあ!
 かくして、帝国の官吏たちはこのおっさん何言ってんだ? と思いつつも、じゃあ銀河の片隅で事典編纂でもやってな、と、世間を騒がせた罪でセルダン博士を【ターミナス】という辺境の惑星に追放することを決定する。しかし―――実はセルダン博士はそれすらも予測していて、ターミナスへの追放も博士が仕組んでいたのであった―――という感じで第1部は終わる。
 【第2部:百科事典編纂者】
 ターミナスへ移住させられた、第2世代(?)の【百科事典第1財団=第1ファウンデーション】の物語。移住開始から50年が経過しており、当然セルダン博士はとっくに死んでいる。そしてターミナスという惑星には金属鉱物が一切ない星として描かれており、要するに自給自足できない星であるというのが一つポイントになっている。そして、現在【アナクレオン】王国と緊張関係にあるらしい。なお、銀河帝国はまだ存在していて、緩やかに滅亡への道を進んでいるが、だれ一人気づいておらず、またターミナスも銀河の「辺境」にある=帝国からすっげえ遠い、こともポイント。【アナクレオン】【スミルノ】【コノム】【ダリバ】の4つ辺境星系を「4王国」と呼ぶらしい。
 この第2部での主人公は【サルヴァー・ハーディン】という男で、年齢ははっきりわからないけどまだ青年で、ターミナス市長に就任している頭のいい男である。ターミナスの運営は、基本的に「百科事典委員会の理事会」が権限を持っているのだが、アナクレオンとの緊張関係に、【ルイズ・ピレンヌ】というおっさんを理事長とする理事会は全く対応できず、アナクレオンの全権大使【アンセルム・オー・ロドリック】がターミナスを訪れ、軍事基地設置を要求してきた時も、ほぼ無力。理事会は、あくまで「皇帝直轄地」でありファウンデーションは国家公認の科学機関として要求をつっぱねようとするが、まあそんな主張は通りませんわな。この交渉でハーディンは、既にアナクレオンが【原子力経済】を持っていないことを確信する。そうなんです。なぜか、この物語では「原子力」が重要なキーになっているのです。どうやらこの世界ではあらゆる動力として原子力が使われていて(超小型の原子炉なんかもある)、原子力を持っているかどうか、が文明や軍事力において大きなアドバンテージになっているらしい。持っていても、原理的にきちんと理解している人間は少なく、ロストテクノロジーというか、オーパーツ的な扱いになっているのが非常に興味深い。もちろん、ターミナスの科学者たちはきちんと技術継承しているので、その点がターミナスの優位点にもなっている。
 で、この「アナクレオン危機」と呼ばれるターミナスのピンチも、実はセルダン博士によって予見されていて、ターミナス50周年イベントに、セルダン博士はホログラムで登場し、ついにファウンデーションの真相を告げるに至る。まず第一に、「百科事典財団=ファウンデーション」とは皇帝から勅許状を引き出し、必要な人員10万人を集めるための欺瞞であり、全て計算通りに進んでいる、そして、今後も危機に遭遇するが、必然的に一つのコースをたどることになる、と。
 第2部は、この秘密の暴露で終了する。事態がどのように展開したのかが語られずまま、このセルダン博士のホログラムによって理事会のおっさんたちが、くそっ!ハーディンの言うとおりだったのか……としぶしぶ認めて終わりだ。そして第3部でどうなったのかが分かるようになっている。
 【第3部:市長】
 いきなり第2部の終わりから30年が経過している。ハーディンはその30年間市長として、ある意味独裁してきた模様。そして、前回の「アナクレオン危機=第1セルダン危機」がどのようにクリアされ、そして今また危機に陥っている状況が描かれる。あ、冒頭にこの時のハーディンの年齢が62歳って書いてあった。てことは第2部では32歳だったってことか。なるほど。
 この第3部では、ハーディンと次の世代の【セフ・サーマック】という青年とのやり取りがメインのお話になる。そしてその話の中で、ハーディンがどのようにこの30年をかじ取りしてきたが分かる仕掛けになっている。サーマック青年は、ハーディンの30年間を否定し、辞任を要求するのだが、要するに彼の主張は、ハーディンが30年行ってきた、アナクレオンへの原子力技術の供与を止めろ、そんなのは相手を強大にするだけだ、今こそターミナスは自身を武装し、先制攻撃をもって戦いに臨むべきだ、というものだ。
 つまりハーディンは、どうやらアナクレオンとの危機を、ターミナスから歩み寄ることで回避し、それを軟弱な宥和政策だとサーマック青年は怒っているわけである。しかし! 実はハーディンの30年間には隠された意図があったのだ――!! という展開で、実に面白い!
 結論から言うと、ハーディンは、技術供与はしていたけれど、「銀河霊」というものを設定して、原子力技術を宗教にまで昇華させているのだ。特殊な技能は「聖職者」だけが扱えるものとし(ちなみに聖職者も、経験的に扱えるだけで、全然技術者ではない)、神聖なものという仮面もかぶせており、実は全然技術供与はしておらず(その結果としての武器などは与えていても)、技術自体はターミナスで独占されていることが判明する。そして、ターミナスに害成すものは「銀河霊」の怒りに触れる、的な迷信をアナクレオン人たちの間に敷衍させることによって、戦争一歩手前まで関係悪化した際に、アナクレオン人の平民兵士たち自身に反乱を起こさせ、ターミナスを守り、おまけにアナクレオン王国を乗っ取ることにまで成功してしまうのである。要するに、宗教家による洗脳、ですな。ハーディンの座右の銘「暴力は無能力者の最期の避難所である」が明確になる最後の大逆転が超爽快です。さっすがハーディンさん!カッコイイ!
 この第3部では、アナクレオン王の【レオポルド王】という若者と、その叔父であるキレ者の【ウェニス】という男がハーディンの前に立ちふさがる脅威として登場するが、レオポルドは既に洗脳にかかっているので、「しかし……心配だなあ……何か冒涜的な感じがするのだ……ファウンデーションを攻撃するなんて……」という調子なので、まあ要するに、全て計算通り!ということになってしまう。
 こうして、「第2アナクレオン危機=第2セルダン危機」も回避されるが、第3部のラストは再び30年ぶりに起動したハリ・セルダン博士のホログラムで終わる。そしてまたもやすべて、セルダン博士が80年前に計算した通りであることが判明するが、セルダン博士のホログラムは、消える前に2つ、重要なことを語る。ひとつは、これでやっとファウンデーションに対する攻撃をそらすことはできた、けれど、「こちらから攻撃」するには全く十分でないこと。そしてもう一つが、「銀河系の反対側に、もうひとつのファウンデーションが同じ80年前に設立されていること」を忘れるな……というメッセージだ。ホログラムは、ああしろ、こうしろという策は一切与えてくれない。いわば答え合わせ的な存在にすぎず、ハーディンも、まあ、生きてる間はもう現れないだろうな、やれやれ、といったところで第3部は終わる。
 【第4部:貿易商人】
 この第4部は【リマー・ポエニッツ】という宇宙貿易船の船長の元に、ファウンデーションから一通の指令が届くところから始まる。曰く、惑星【アスコーン】に収監された仲間の【エスケル・ゴロヴ】の身柄を確保せよ、という指令だった。実は二人とも、商人という表の身分に隠れて、ファウンデーションのエージェントでもあって、なにやらファウンデーションの秘密の活動があるらしいことがほのめかされる。
 どうも時間的にどのくらいたったお話なのか良くわからないが、どうやらすでにファウンデーションは「4王国」はもう支配下に置いているらしいが、この【アスコーン】はまだそうではなく、原子力を売りつけることで「銀河霊」の宗教的コントロールに置こうとしているらしい。で、アスコーンが欲しいのは、金、GOLDのAuだ。それをポエニッツは良くわからない錬金術原子力マシーンであっさり量産できるようにしてあげるのだが、アスコーンの太守は、邪教のまがい物として受け付けない。そこで、ポエニッツは、太守の後継を狙う若い【ファール】に目を付け、まんまと罠にかけてマシーンを売りつけることに成功し、アスコーンの原子力化=ファウンデーションの技術なしにはいられない状態にすることに成功するのだった―――てな感じで幕を閉じる。
 【第5部:豪商】
 この第5部の主人公は、【スミルノ】出身の【ホバー・マロウ】という男だ。そしてマロウが、現市長の秘書【ジョレイン・サット】から一つの極秘任務を受けるところから話は始まる。曰く、ファウンデーションの船が3隻、【コレル共和国】星域で消息を絶った。原子力で武装している船が姿を消す、それはコレルも原子力テクノロジーを保有しているのではないか。その調査に当たれ、というもので、マロウはスミルノ出身であるため、どうも生粋のファウンデーション人として信用されていないような雰囲気である(※どうやらすでに4王国は「ファウンデーション協定」を調印し、既に実態はなくなっている模様。よって4王国のひとつであるスミルノも、とっくにファウンデーション化されているため、そういった旧4王国出身者はかなりいるらしい)。あ、時間経過が書いてあった。どうやら、第3部の「第2セルダン危機」から75年経過しているのかな。つまりファウンデーション設立から155年、ってことか。なるほど。で、サットは、このファウンデーション以外に原子力科学を持つ敵が現れたのではないか、ということに対して、これは「第3のセルダン危機」なのではないかと心配するが、一方のマロウも、その危機を感じ取っていた。そしてコレルへ向かったマロウは、サットに仕組まれた罠をかいくぐり(罠であったことはだいぶ後で判明)、コレルの主席(コムドー)【アスパー・アーゴ】と「自由貿易」を行う提案をする。ここで、これまでファウンデーションが「宗教」を武器に勢力を増してきた方針から、「経済」によって影響力を強めようという方針に変わる転換期を迎える。第4部で語られたアスコーンを引き合いに出しながら、今や完全にファウンデーションの組織の一員に成り下がったようなことは、まっぴらごめんだ!と主張するアスパーに対して、マロウはあっさり、わたしは主任貿易商であり、金がわたしの宗教だと言ってのけるのである。「宗教はわたしの利益を削るものだと、はっきり申し上げておきます」と言い切ることでマロウはアスパーの信頼を得る。しかし、同時にマロウは、アスパーの護衛が持っている銃に気が付く。そこには、「宇宙船に太陽」の紋章が!それはまさしく「銀河帝国」の紋章であり、コレル共和国にも「原子力科学」が残っていることを知るが、調べてみるとそれはもう時代遅れなもので、技術継承もされておらず、ただ在るだけで別に脅威にならないことを確認し、マロウはファウンデーションへ帰還する。そしてマロウは裁判にかけられるがサットの陰謀を暴いて失脚させ、見事大逆転し、まんまと市長の座を手に入れる。が、その後、コレルと戦争が始まってしまう。それは、コレルが得たファウンデーションの製品を、買うのではなくてもう星ごと奪っちゃえばいいじゃん、という考えから始められたもので、失脚していたサットは、それみたことか、とマロウに告げる。だから言っただろ、貿易じゃダメなんだよ、宗教じゃないと。そうサットはマロウに政策変換を迫るが、マロウは聞き入れない。「いいかい、これはセルダン危機だ。我々はそれに直面しているのだ。この危機は、その時どきに入手可能になった力で解決されるはずなんだ。今の場合は、貿易だ! まあ見てろよ、コレルは我々が供給した機器に依存しまくっている。戦争でその供給が止まったら……戦争はやむさ」みたいなことを言って、結局その通りになるわけで、大変痛快でありますね。
 最後に、マロウはこんなことを言う。ファウンデーションの本拠星であるターミナスは、金属資源がない。だから、原子炉も親指サイズまで小さくなくてはならなかった。そのための新技術を開発しなくてはならなかった。それは帝国が追従できない技術だ。なぜなら、帝国はもはや真に生命力のある化学的進歩をすることができる段階を超え、退化してしまっているからだ。だから、彼らは艦艇を丸ごと守るのに十分な原子力フィールドを作れたけれど、一人の人間を守るフィールドはついに作れなかった。おまけにもはや自分の巨大技術すら理解できなくなっている。このマロウの演説に関しては、訳者あとがきで、まるで戦後日本の復活劇のようだ、と評されている。本書が書かれたのは、1942年から49年にかけて、つまり第2次大戦の真っただ中の期間であり、訳者Asimov先生の先見の明を大層ほめたたえているわけだが、まあ、なんというか、人類は1万2千年経ってもあまり変わらないようですな。私は本書を読んで、そんなことを深く感じました。

 はーーーー長くなっちまった……これでも大分はしょったのだが……まあ、とりあえず大変面白かったので、続巻が実に楽しみであります。サブタイトルからすると、いよいよVS帝国との闘いかしら、と非常にワクワクしますな。最後に、本作の一番最後のマロウのセリフを引用して終わりにしよう。
「未来など、おれの知ったことか? セルダンが予見して準備してあるに違いない。今、宗教の力が死んだように、将来、金の力がなくなった時にまた別の危機が発生するだろう。今日のおれがそのひとつを解決したように、それらの新しい問題は、おれの後継者に解決させるがいい」
 このセリフは、無責任では全くないと思う。頭脳を駆使して戦った男の本音として、わたしは非常に気に入りました。
※2017/06/29追記;昨日この記事を書いた翌日の今日、驚きのニュースを見た。なんとこの『FOUNDATION』が映像化されるんですって! おおっと! まさかこれも、心理歴史学的に計算通りなのか!? とビビったっすw →http://tv.eiga.com/news/20170629/1/


 というわけで、もういい加減にして結論。
 ふとしたきっかけで購入し、読み始めたIsaac Asimov先生による伝説的名作『FOUNDATION』を読んでみたところ、これは非常に面白かった。確かに、『STAR WARS』や『銀河英雄伝説』の元祖といわれるだけある凄いスケールで、続巻を読むのが大変楽しみです。そして、今後きっと出てくるであろう「銀河の反対側にあるもう一つのファウンデーション」の動向も大変気になりますな! ただ一つだけ、翻訳がやっぱりちょっと古いんすよね……なので若干読みにくいかもしれないけど、めげずに読み進めたいと存じます。以上。

↓ よーし、次は(2)巻に突入だ!

 わたしは海外翻訳小説をかなり読む男だと思うが、基本的にはわたしは映画オタクであり、非常に高い頻度で、「映画化のニュースを見て、じゃあその原作を読んでおくか」という経緯で本を買って読むことがある。要するにわたしはネタバレを全く苦にしないのだが、先に小説を読んでおこうと思うのは、わたしとしてはごく普通の行動で、その元の小説がどんな風に映像化されるのか(されたのか)について、わたしは結構楽しみにするのである。そして、映画化のニュースを知って読み始める場合は、たいてい、そのキャストも同時に発表になっている場合も多いので、まあ、脳内妄想もしやすいかもしれない。
 というわけで、ちょっと前に、わたしの大好きなJennifer Lawrence嬢主演でとある小説が映画化されることを知り、へえ? と思って買った作品がある。タイトルは『RED SPARROW』といい、現代を舞台としたスパイ小説で、なんと著者のJason Matthews氏は、30年以上CIAに勤務し、海外支局長まで務めた本物の元エージェントだそうだ。まあ、そんな本物に小説を書くことが許されること自体がなんだか驚きだが、まあそういうことらしい。というわけで、さっそく読み始めた。
レッド・スパロー(上)
ジェイソン・マシューズ
早川書房
2013-10-29

レッド・スパロー(下)
ジェイソン・マシューズ
早川書房
2013-10-29

 ちょっと探したら、著者のMatthews氏の動画があったので貼っとこうMatthews氏はこんな風貌の男のようだ。結構おっさんですな。

 さてと。本作は上下本で、記録によるとわたしは、上巻:517ページ/359分、下巻:465ページ/366分で読み終えたらしい。これはわたしとしては結構意外で、体感的には後半の展開が早くて下巻の方が早く読み終わったかと思っていたのに、全然そんなことはなかったようだ。へえ~。なんか不思議。
 で。まずお話を簡単にまとめると、CIAの若手エージェントであるネイトは、とあるロシア高官をCIAのスパイとして管理運用しているのだが、それが誰なのかを見破りたいロシアが、SVR(=ロシア対外情報庁)の女性エージェントであるドミニカをネイト攻略のために送り込む。が、お互いの立場を超えて恋に落ちてしまうお話が基本ラインだ。
 それだけだと、確かにハリウッド的で、なんかつまらなそうなお話になってしまいそうだけれど、ドミニカの背景が非常に詳しく書いてあって、キャラとしてとても共感できるし、CIAサイドの、情報提供者を絶対に守るという、ある意味嘘くさいけれど美しい心意気も、読んでいて大変好ましい。正直、男主人公であるネイトは若干ダメな若造なのだが、とにかくネイトの二人の上官と、ネイトが運用するスパイのロシア高官のおじいちゃん、そしてなんといってもドミニカが大変すばらしく、結論から言うとても面白い小説であった。まあ、ちょっとCIA側の描き方が美しすぎるのと、ロシア側の描き方が相当ひどい人たちばかりなので、若干鼻につくとは思う。でもこれは映画向きだね、確かに。と思うような物語であった。あ、あと、FBIが超無能な奴らが多い的な描写もあって、きっとMatthews氏はFBIには苦労させられたんだろうな、というどうでもいいことも感じた。
 文章としては、わたしが編集者だったら一つだけ注文を付けるかも、という点があった。それは、地の文における登場人物の呼び名が結構コロコロ変わることで、名前だったり、苗字だったり、あだ名だったり、といちいち変えるのは読んでいて一瞬誰だっけと思うような、阻害要因になっているような気がした。ま、下巻に行く頃には慣れるけれど、統一してもらいたかったような気はした。この作品はMatthews氏の処女作だそうで、各章の終わりに必ずその章に登場した料理やお菓子のレシピが載るなど、なんか妙なこだわりは感じられた。
 というわけで、わたしのBlogで恒例のキャラ紹介をしながらいろいろまとめてみよう。
 ◆ドミニカ・エゴロワ:大学教授を務めた父、元バイオリニストの母を持つ超絶美女。子供のころから、「人の感情が色で視える」という特殊能力がある。また映像記憶的な記憶力の持ち主。バレエダンサーを目指していたが、あまりに完璧すぎるために嫉妬を買い、練習中にわざと足を踏まれ、足に大怪我を負わされてしまいバレエの道を断念。その後、彼女の美貌は叔父でありSVRの第1副長官を務めるワーニャ・エゴロフの目に留まってしまい、SVRのハニートラップ要員として、フランス外交官を誘う役に抜擢され、目の前でその男が殺される現場に立ち会う。結果、その事件の情報秘匿の意味も含め、SVRに強制入隊。「スパロー・スクール(※スパロー=スズメ、ですな)」と呼ばれるSVRの女工作員養成学校へ放り込まれ、女性の尊厳を踏みにじるようなSEX教育を受けさせられる。その地獄を気合で乗り切ったドミニカは、祖国への愛国心はあるものの、SVRのクズたちへの復讐心を心に抱きながら、SVRエージェントに。実は両親も腐敗した体制には反骨の心を持っていて、「生きてこそ」「信じられるのは自分だけ」をドミニカに伝え、そののことが後にCIAへの協力を決意するきっかけにもなる。で、運命の男、ネイトと出会い―――的な感じ。映画版で演じるのはJennifer Lawrenceちゃん。
 ◆ナサニエル・ナッシュ:通称「ネイト」。弁護士一家のおぼっちゃん。堅苦しく自由のない親の決めたレールに乗った人生に嫌気がさし、敢えてロースクールに行かず、大学ではロシア文学を専攻。そのロシア語力で、CIAを就職先として選び無事に入省。モスクワ勤務となる。モスクワでは<マーブル>というコードネームの老スパイを運用する役を与えられ、<マーブル>との信頼関係も築いていたが、ある日<マーブル>との密会をSVRに察知され、何とか逃げ切るもモスクワ勤務の任を解かれ、ヘルシンキへ左遷される。がっかりするネイトだったが、ヘルシンキでは支局長のフォーサイスと、副支局長のゲーブルという凄腕の師匠ともいうべき男たちに迎えられ、<ネーブル>担当も継続することができて一安心。そして<ネーブル>との活動を続けるが、SVR側には<ネーブル>(=SVR側では「もぐら」と呼ばれている)をネイトが運用していることはバレていて、もぐら探しのためにネイトに付け入るんだ!という任務を帯びて現れたドミニカと出会う。もちろんネイトもドミニカがSVRの放ったハニートラップ要員だとわかっていて、緊張の中にも二人の間にはきずなが生まれてしまうのであったーーー的な感じ。まあ、基本的にこのネイトという小僧は、キャリアのことばかり考えるゆとり小僧で、無能ではないし誠実な善人だけど、結構、無力ですな。映画版で演じるのは、どうやらJoel Edgerton氏。わたし的には、『STAR WARS:EPIII』のラストで、赤ん坊のルークを預かった若き日のオーウェン・ラーズを演じた彼ですな。EPIIにもアナキンの義兄弟としても出てきたね。
 ◆ウラジミール・コルチノイ:SVR第一部部長。結構なお爺ちゃん。上巻ではチラッとしか出てこないが、ドミニカにちょっとした情報を渡して援助するなど、冒頭からイイ人なキャラで、あ、この人が<ネーブル=もぐら>なんだな、というのはきっと誰でもわかると思う。下巻でそれは明確に明らかになるのだが、ネイトにも、ドミニカにもとてもやさしく、きわめて善人。彼がCIAのスパイになった動機は、海外赴任中に妻が重病を患っているときに、その国の医療を受けさせれば治ったのにロシア政府がそれを許してくれなかったために亡くしてしまい、体制への忠誠も同時に無くしたため。下巻での彼の決意と行動が結構泣かせる!そしてラストが超悲しい……! 映画版で演じる予定なのは、オスカー俳優Jeremy Irons氏。これはきっとかっこいいぞ!でもロシア人に見えねえ……。
 ◆トム・フォーサイス&マーティン・ゲーブル:ネイトが左遷されたヘルシンキ支局長と副支局長のコンビ。ベテランの現場主義で本部(ラングレー)の官僚嫌い。ネイトを導くメンター。実は、ネイトがなかなか優秀な若者であることを知り、ヘルシンキへ異動するよう手をまわした人たち。ゲーブルはネイトに、エージェントは自分のアセット(資産=スパイ)を絶対に守ることが一番重要だと教える。後にドミニカがCIAのアセットとなった後は、ネイトよりもゲーブルをドミニカは信頼するほどに。ドミニカはゲーブルを親しみを込めて「お兄さん」と呼ぶ。映画版のキャストには、フォーサイスしかないな……ゲーブルは出てこないのかな……どうやらフォーサイスは映画においては女性に変更されている模様。Sakina Jaffreyさんという方らしいが、わたしは知らない人だなあ……。
 ◆イワン(ワーニャ)・エゴロフ:ドミニカのおじに当たるSVR第一副長官。SVRのTOPになることをずっと目標に、SVR内のもぐら探しに躍起になる。悪役だが、まあ、冷静に考えると職務に忠実なだけの男と言えるかも。演じるのはMatthias Schoenaerts氏。知らないなあ……そしてずい分若いな……おじさん設定はないのかもしれない。
 ◆サイモン・ベンフォード:CIA本部の防諜部部長。ちょっと変わり者のおじさん。下巻で活躍。下巻では、US国内勤務に戻されたネイトの上司に。<ネーブル>との厚い絆で、なんとか<ネーブル>を守ろうとするが……。CIAは国内での捜査・逮捕権がないのがポイント(なので、役立たずのFBIを使うしかない状況に)。映画版キャストにないので、カットか? うっそぉ……。
 ◆ステファニー・バウチャー:カルフォルニア州選出のUS上院議員で、ロシアへ無邪気に情報漏洩を続けるイカレた女。SVRワシントン支局長直々にバウチャー上院議員をスパイとして運用するが、SDRはまったくやらないし、とにかくいうことを聞かない強欲な女。映画版で演じるのは、Mary-Louise Parkerさんらしい。
 ◆セルゲイ・マトーリン:SVRの暗殺者。怖い。ラストは意外と弱かった……。

 とまあこんなキャラクター達なのだが、わたしは事前に、ドミニカをJenniferちゃんが演じることは知っていたけれど、読みながらJenniferちゃんを意識することはほぼなかった。だって! Jenniferちゃんとドミニカが結びつかないんだもの! ドミニカはバレエダンサーだぜ? 絶対スリムでクールな超美人に決まってるよね? でもJenniferちゃんと言えば、そのむっちりボディが魅力なわけで、どう見てもバレエダンサーには見えんわなあ……。身長も180以上あるし(2018/01/23追記:いつのまにかWikiの記載が修正されてた。171cmだそうです。それならバレリーナに普通にいらっしゃるかも。とはいえ、Jenniferちゃんがバレリーナに見えない説は取下げません!先日劇場で見た予告では、またエッロイ水着着てましたなあ)……どうなんでしょうか……ついでに言うと、ナッシュを演じるEdgerton氏も、まったくイメージに合わない。つーか年取りすぎだし、小僧感がないし。まあ、上下巻の比較的長いお話だし、各キャラの過去とかの掘り下げもあるので、映画は結構大幅に原作をバッサリ斬ってしまうのかな……FOX製作だし、日本で公開されるのかどうかもちょっと怪しいかもしれないすね。ちなみに、映画版の監督はFrancis Lawrence氏だそうで、Jenniferちゃん主演の『THE HUNGER GAMES』で「2」以降の3本を撮った方なので、Jenniferちゃんの信頼も厚いんでしょうな。
【2018/04/03追記:つうわけで、映画版が公開 になったので観てきたところ……Jenniferちゃんごめんよ! 冒頭のバレエシーンは超良かったです! 相当特訓したそうで、実にお見事でした! けど……かなり原作から縮小圧縮された物語になってて、ちょっとアレかなあ……ネイトがおっさんでガッカリす……】

 というわけで、結論。
 映画化される、と聞いて、それじゃあ原作小説を読んでみようと思って買った小説『RED SPARROW』は、まずまず面白かった。若干美しすぎるような気もするけど、小説として、そしてデビュー作としては十分以上に楽しめた。が……映画化は、どうなんだろうなあ、と言う気がしてならない。第一主演のJenniferちゃんと小説のヒロインであるドミニカがどうも結びつかないのだが……まあ、映画を観て、Jenniferちゃんごめんなさい、オレが間違ってました!という事態になってくれた方が嬉しいす。そして、さっき初めて知ったところによると、この小説は続編があるようで、第2巻はとっくに発売中、そして完結編(?)となる3作目は、来年発売、らしい。そうなんだ、続きがあったのね。でもまだ日本語訳は発売されていないようで、愛する早川書房が出版してくれる日を待ちたい。一応、続編は読みたいと存じます。あ、そうだ、ひとつ忘れてた。この小説には、なんとプーチン大統領閣下が実名で登場します。超おっかないキャラで、スーパーヤバい人物として描かれています。その辺も、我々の知らない真の姿?かもしれなくて、かなりドキドキますよ。おそろしあ! 以上。

↓ こちらが2作目。早く読みたい……早川書房様、よろしくお願いいたします!

Palace of Treason
Jason Matthews
Penguin
2016-01-28

 ちょっと前に電子書籍版を買ったものの、しばらく読む時間が取れず、記録によると5/24(水)から読み始めた本を、昨日の朝の通勤電車の車内で読み終わった。読了タイムは518ページを372分。あ、そんなにページ数あったんだ。意外とボリュームのある作品だったんだな。と今初めて気が付いた。
 邦題は「忘れゆく男」という作品で、著者Peter May氏に関しては、わたしは全く知らなかった。単純に、あらすじを見て、面白そうだな、と思って購入した次第である。
忘れゆく男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ピーター メイ
早川書房
2015-03-20

 しかし……わたしは早川書房を愛してやまない、翻訳小説が大好物の男なわけだが、今回はホント抜かっていたことが判明した。何が抜かっていたかというと―――わたし、読み終わって、面白かったぜ、と思ったのはいいのだが、あとがきを読んだらですね……な、なんと!この作品はシリーズ物の第2作目だった!!! ことが判明したのです。オイィ!早川書房さんよぅ!そういうことはちゃんとあらすじの最後に【シリーズ第2弾!!】とか入れといてくれよなあ……。まあ100%わたしのうっかりミスだが、どうにもやりきれないというか、愛する早川書房に責任転嫁したい気分である。くっそう! 知っていればちゃんと1作目から読んだのに!もーーー!!
 というわけで、わたしはあとがきを読んで、せっかくの読後の心地よい余韻が台無しになってしまったのだが、調べてみるとその第1作目も電子書籍になっていたので、即座にカートにぶち込んだ。そして、今回はすぐさま購入せずに、若干の早川書房への当てつけの意も含め、次のコインバックのフェアでまで待ちだな、と決意した。しかしである。一応あとがきには、「本作単独でも楽しめます」的なフォローがあったので、何とか心の折り合いをつけたのだが、どうやら3部作なのに、3作目はまだ日本語訳されていないことを発見してしまい、またしても愛する早川書房にイラっとしてしまったので、ちょっと今、落ち着け……と自らに言い聞かせているところである。

 ふーーーー。よし。落ち着いた。それではさっそく、本作『THE LEWIS MAN』について書こう。まず物語であるが、あらすじは早川書房作成の文章をそのままパクッて無断で貼っておこう。こんなお話である。
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 ここはどこだ、なぜ自分は家ではなくここにいる? 重度の認知症のケアをする施設に入ったトーモッド。孤独な彼のもとを元刑事フィンが訪れる。フィンはトーモッドの娘の元恋人だった。その頃、泥炭地からは身元不明の遺体が発見されていた。被害者はトーモッドの血縁関係者だという。フィンは事件を調べ始めるが、明らかになったのは、家族も知らないトーモッドの秘密だった…忘れゆく男の記憶と想いをめぐるミステリ。
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 ちょっと補足すると、舞台はスコットランドの北西岸から船でミンチ海峡を渡って3時間かかるルイス島である(※原題のLewisはこの島のこと)。そこでは、泥炭が暖房の燃料として使われていて、冒頭は現代、その泥炭の切り出し作業中に、一人の遺体が見つかるところから始まる。わたしは知らなかったけれど、そういう泥炭地帯から、完全な形で体組織が保存されたミイラが発見されることがあるんですって。有名なのは「トローン・マン」という遺体(ミイラ)があるそうで、これはリンクをクリックしてNAVERまとめを参照してみてほしい。超そのままというか、2000年以上前に、どうやら何らかの宗教儀式?の生贄として殺された男らしい、と言われているミイラだ。
 まあとにかく、そういった完全な形で保存された遺体が冒頭で発見され、こりゃまた何千年も前の遺体か?と鑑定してみると、なんと肩にプレスリーの刺青があり、どうやらおよそ60年ほど前に「殺された」遺体であることが判明し、DNA検査の結果、今現在、完全に痴呆症となってしまったとある老人の親族であることが明らかになる。遺体は推定10代後半から20代前半の男。ならば、その犯人はまだ生きている可能性がある――てな始まりである。
 そして、上記あらすじにある「元刑事のフィン」が、シリーズ3部作の主人公だそうで、本作ではエディンバラの警察を辞め、故郷である島へ帰ってくる話が並行し、フィンが元恋人とその父である痴呆症の老人と再会し、いったい、ミイラとなって60年ぶりに発見された遺体は何者なのか、そしてなぜ殺されたのか、だれが殺したのか、そしてそもそも、痴呆症の老人は、いったい何者なのか、といった謎をフィンが解き明かしていくお話である。
 というわけで、恒例のキャラ紹介を4人だけやっておこう。
 ◆フィン:元エディンバラ市警の刑事、だが、本作冒頭で退職。どうやら交通事故で息子を亡くし、妻とも別れて帰郷を決意した模様。その経緯がきっとシリーズ第1作で描かれているのではなかろうか?
 ◆トーモッド:現在痴呆症が進み、たまに記憶が鮮明になるが、基本的には恍惚の人。フィンの島時代のご近所さん。泥炭採取現場から発見された60年前の遺体と血縁らしいが……トーモッドの過去にどんなことが起き、今に至っているのかが本作の一番のポイント。また、痴呆症の人間の心理がやけに生々しく、なんか……正直わたしは怖いというか、ゾッとした。痴呆だけにはなりたくねえなあ……でもこればっかりはどうにもならんだろうな……。長生きしていいことってホントあるんすかねえ……。
 ◆マーシャリー:トーモッドの娘であり、フィンの幼馴染で元彼女。フィンの親友アーシュターと結婚するも死別(?)。現在は息子が、大学へ行くか、妊娠出産させた彼女と子供を育てるかでフラフラしていて、大変困っている。自分自身もグラスゴーの大学に入って勉強しなおそうと考えていたのに。どうも、マーシャリーやフィンの親友アーシュターも、第1作に出てくるんじゃなかろうか……分からん。
 ◆ケイト:トーモッドが少年時代を共に過ごした初恋の相手。今どこでどうしているのか不明。実に活発な、おそらくは相当な美少女。生きていれば80歳ぐらいにはなっているはずだが……

 ズバリ言うと、遺体の正体は、読者には結構すぐに想像がつく。しかし謎なのは、なぜ殺されたか、誰が殺したのか、という部分である。ポイントとなるのが、重要なカギを握っている老人トーモッドが痴呆症で、いかんせん話も聞けないし、記憶も失われているという点にあり、ほんの些細な手がかりからフィンが地道に調べを進める一方で、痴呆症の老人の心の中で語られる過去がクロスして物語は進むのだが、その、誰にも語られず、あくまで老人が薄れゆく意識の中で思い返す回想部分が、実に壮絶というか、過酷なのだ。
 そういった凄惨な過去を、一切封印して生きてきた老人。それがラストは美しい再会とともに事件の解決をみる構成となっていて、読後感は大変上質であろうと思う。
 まあ、日本の我々からすると、戦後の昭和20年代後半ぐらいかな、その老人の若き頃の話は。だから、実はそれほど遠い昔ではないのだが、わたしの印象に強く残ったのが、舞台となるスコットランドの北に位置する島の荒涼とした風景で、非常に描写としても脳裏に描きやすかった。寒そうで、風が強そうで、きっと土地も痩せていて、豊かなイメージは一切沸かない。ホント、人類はどうしてまたそういう地に住み付こうと思ったんでしょうなあ。先祖が住んでいたから、とか言われても、じゃあその先祖はなぜ? という点にわたしは非常に興味がありますね。きっと、明確な理由があるはずで、それは現代人の我々には理解できないことかもしれないけれど、ぜひ知りたいものです。冒頭でミイラが出てきたからかもしれないけれど、なんかそういった、人類学的な好奇心も、わたしは本書を読んで掻き立てられたのであります。
 一方で、キャラ描写の方は、心理的な部分は全く問題なく物語に入って行けるけれど、具体的な容姿に関しては、イメージがつかめず、いったいどういう顔をした少年だったんだろうとか、映像化するとしたらフィンは誰が演じたらいいかな、といった部分ではいまだにちょっと想像がつかない。うーん、だれが演じたらハマるかなあ。そうだ、あと、キャラクターたちは、スコットランドの西側の人間としてゲール語が話せるし、ゲール語がちょっとしたキーになっているのも、わたしとしては興味深かった。ゲール語というと、わたしは決まって「モ・クシュラ」という言葉を思い出す。その言葉の意味が知りたい方は、わたしが劇場でうっかり号泣した映画『Million Doller Baby』をご覧ください。わたしの大好きなClint Eastwoodおじいちゃんの三大名作の一つですので、絶対的なおススメです。

 というわけで、さっさと結論。
 ふとあらすじを読んで面白そう、と買って読んだ『THE LEWIS MAN』(邦題:忘れゆく男)は、なかなか面白かった。スコットランドの北のLewis島か……一生行くことはないだろうな……でも、行ってみたくなりますね、こういう作品を読むと。しかし、本作がまさかシリーズ物の第2作目とは……超ぬかってたわ……くそう。おっと!まさに今日の夜、大きいコインバックフェアがあるらしいので、さっそく買って読むとするか。でも、ちょっとほかの本がたまってきたから、順番待ちだな。おそらく第1作は、主人公フィンについてもっと理解が深まるはず、です。以上。

↓ というわけでこちらが第1作。先にコイツを読んでいたら、本作はもっと面白かったのかもな……くそう!

 昨日の朝、行きの電車内で、ひとつ海外翻訳小説を読み終わった。電子書籍なので自動的に記録される読書ログによると、129分での読了。実のところ、これはわたしの読むスピードが速いわけでは決してなく、わたしも、アレッ!? もう終わり! と思うほど、分量的に短い作品で、わたしの読んでいるフォーマットで47W×21L×139Pしかなかったことに、読み終わる直前に気が付いた。
 その作品は、いわゆる「北欧ミステリー」の 『Blod på snø』という作品で、その原語たるノルウェー語の意味は、Blod=blood=血、på=英語のon、 snø=snow=雪だろうから、Blood on snow ということで、「その雪と血を」という日本語タイトルとなって早川ポケットミステリーから発売されている作品である。しかしポケミスはホント高いなあ……この分量で1,500円超か……まあ部数はわたしが想像するよりきっと少ないだろうから、仕方ないか……でもこのページ数だと、ポケミスのフォーマットだと相当薄い本なのではなかろうか……。現物を見てないのでわからんす。
 というわけで、以下、ネタバレに触れずには何も書けないので、気になる方は読まないでください。結末までのネタバレに繋がるかもしれないので。
その雪と血を (ハヤカワ・ミステリ)
ジョー ネスボ
早川書房
2016-10-15

 わたしが本書を買って読んでみようと思った理由は、例によって例のごとく、わたしが愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERで約半額のコインバックフェアがあった時に、なんかねえかなあ……と渉猟していて、出会ったためで、そのカバーデザインのCOOLさと、あらすじが面白そうだったから、というだけである。結論を言うと、なかなか個性的なキャラで結構面白かった。が、やっぱりちょっと短いというか、短編~中編で、もう少し複雑な展開で読みごたえがあったらなあ、と言う気はした。ただし、逆に言うと、実にストレートかつスピーディーに展開するお話は、これはこれでアリかもな、と言う気もするので、要するに、結構面白かった、という結論に間違いはない。
 物語は、オーラヴという、とある殺し屋(始末屋)の男の一人称語りで、ボスに、どうも浮気をしているらしいボスの若い奥さん(後妻)を殺せ、と命じられたオーラヴが、監視をしているうちに奥さんにちょっと惚れてしまって(?)、命令を無視して浮気相手の男をぶっ殺してしまい、ボスに、奥さんじゃなくて相手をぶっ殺しました、と報告したところ、バカモーーーン!それはわしの息子じゃぞ!と激怒されてさあ大変、というなかなか面白い展開であった。え? 意味が分からない? 要するに、奥さんはボスの息子=義理の息子と浮気してたってことです。
 本書の最大のポイントは、主人公オーラヴというキャラクターで、これがまたかなり変わっているというか興味深い人物で、わたしは最後まで本書を楽しめたのである。
 オーラヴは、最初の方でなぜ現在「始末屋」稼業をしているか、自ら語るのだが、その言葉によると、オーラヴにはできないことが4つあるらしい。曰く――
 1)逃走車の運転はできない
 車の運転はできるが、どうしても、職質を受けないで済む目立たない運転の仕方が分からない、らしい。
 2)強盗ができない
 なぜなら、強盗に遭うという経験をすると人は精神に問題を抱えることになるそうで、そんな罪悪感には耐えられん、らしい。
 3)ドラッグがらみの仕事もできない
 とにかく無理、だって俺は意志薄弱で、依存してしまうもの(宗教・ボス、兄貴タイプの人間、酒にドラッグ)をつい探してしまうし、計算もできないし、そんな俺がドラッグを売ったりツケを取り立てたりしようなんて馬鹿げている、それはもう火を見るより明らか、だそうです。ここは読んでて笑っちゃった。
 4)売春――ポン引きもできない
 女がどんな方法で金を稼ごうと構わないけれど、女に惚れやすいし女に暴力をふるうことも、暴力を振るわている現場を見ることも、どちらも無理、だそうで、かつて配下の売春婦にひどいことをしていた上司たるポン引きを殴り倒したこともある。
 そんなわけで、主人公オーラヴは始末屋と呼ばれる殺し屋稼業をやっている。変な奴だな~と読み始め、最後までオーラヴは変な奴であった。彼の過去としては、母親にDVをかましていたクソ親父をスキーのストックで刺し殺したこともあり、なかなか凄惨な少年時代を過ごしていたようなのだが、ちょっとポイントになるのは、実はオーラヴは結構な読書家で、妙な豆知識に詳しかったりもする。本人は、識字障害があって、本は多少は読むが、知識はろくにない、と語っているけれど、どうしてどうして、やけに博学なのである。このギャップがオーラヴを妙に愛嬌があるというか、興味深い人物にしており、それ故に破滅へ至るわけで、物語の筋道はちょっとおかしくて、その実なかなか悲しい、読者としては少し同情してしまうような物語となっていた。殺し屋なのに。また、主人公の一人称語りという形式は、ちょっと往年のハードボイルド風でもあって、どうにも憎めない雰囲気があって、大変良かったと思う。

 で。著者やこの作品については、あとがきに結構詳しく載っていたので、情報をまとめておこう。
 まず、著者のJo Nesbø氏だが、ノルウェー国内ではなかなかのベストセラー作家らしいですな。おまけにロックバントを率いるボーカリスト兼ソングライターでもあるんですって。へえ~。どうも、もう10冊ぐらい出版されている有名な刑事ものシリーズが一つと(その中の7作目が今度ハリウッド映画化もされるみたい。しかもMichael Fassbender氏主演!)、幾つかの単発モノを書いていて、本国ノルウェーではかなり人気者らしい。日本語訳も、集英社文庫や講談社文庫辺りでぽつぽつ出ているみたい……だけど、ダメだこりゃ。今年出た作品以外はどうやらことごとく「品切れ重版未定」という名の絶版ぽいな……amazonに在庫がないだけか、ちょっと分からんな……あ! なんだ、今年発売の本のプロモーションで来日もしてたみたいだな。へえ~。でもその本、日本発売は今年の2月だけど、本国では2003年発売、14年前だぞ……集英社も良く呼べたもんだ。著者本人のWebサイトFacebookではかなりプロモーション関連は熱心に告知しているようだけれど、来日の件は全く触れられてないな……。今さら過ぎたのだろうか。
 ところで、ちょっと面白いのが、本書『その雪と血を』が生まれるきっかけだ。どうやら本書は、作家を主人公としたとある作品があって(※その作品はまだ刊行されてない)、その作品の中でその主人公が書いた作品、という設定らしいんだな。だから短いのかもしれない。なので、本書はそのキャラの名前で出版しようと思ったんだけど、どうやら弁護士にそれはダメ、と言われたそうで、結局自分名義での出版になったらしい。へえ~。面白ですな、作者自身も。

 というわけで、もう結論。
 ふとしたきっかけで買って読んでみた、ノルウェーの小説『Blod på snø』(英題「Blood on Snow」邦題「その雪と血を」)は非常に短いが展開によどみがなく一直線で結構面白かった。そのキモは主人公たるオーラヴというキャラにあり、短いながらも大変楽しめました。しかし著者のJo Nesbø氏もなかなか面白そうな方ですな。シリーズの途中の巻を読んで面白いのかわからないけれど、ちょっと興味が出てきたっす。以上。

↓ これが日本語で読める新刊、だけど、これ、本国では2003年刊行のシリーズ5作目みたい。うーん……。
悪魔の星 上 (集英社文庫)
ジョー ネスボ
集英社
2017-02-17

悪魔の星 下 (集英社文庫)
ジョー ネスボ
集英社
2017-02-17

 はーーーー。やっと読み終わった。
 わたしの小説を読むスピードはそれなりに速い方だと思うが、上下巻のとある翻訳小説を読むのに通算22日間かかってしまった。なんでそんなに正確に分かるかというと、電子書籍で読んだわけだが、わたしが愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERには、「読書ノート」という機能があって。勝手に記録してくれるからなのです。まあなんて便利な世の中なんでしょう!
 ちょっと面白いから、細かい記録もここに記しておこう。その「読書ノート」によると
 3/21(火)21ページ/11分・3/22(水)54ページ/59分・3/23(木)30ページ/26分・3/28(火)23ページ/12分・3/29(水)18ページ/22分・3/30(木)39ページ/30分・4/5(水)39ページ/34分・4/6(木)3ページ/3分・4/7(金)22ページ/21分・4/9(日)22ページ/28分・4/11(火)47ページ/25分【これで上巻読了】14ページ/3分【下巻へ】・4/12(水)61ページ/58分・4/13(木)16ページ/8分・4/14(金)68ページ/61分・4/15(土)25ページ/13分・4/16(日)10ページ/6分・4/17(月)28ページ/25分・4/18(火)103ページ/75分【下巻読了】※日付の穴は読まなかった日です。
 なんでこんなに時間がかかってしまったのか、そしてなんでまたこんなデータを書いておこうと思ったか。それは、非常に最初はとっつきにくくて、なかなか進まず、おまけにほかの作品を読みだしたりととにかく時間がかかった。しかし、下巻の真ん中あたりでとある事実が判明してからはスピードが上がり、ラスト付近はもう、やっべえ!すげえ展開になってきた! と興奮しながらわーっと読んでしまったのがデータ的に明らかかな、と思ったからである。トータルだと何ページで何分だろう? えーと足し算すると……上巻が318ページ272分=1.17ページ/分、下巻が315ページ/243分=1.29ページ/分という速度になるんだな。ちなみに、『ビブリア古書堂』の最新7巻は、同じデータで調べてみると352ページを220分でフィニッシュしているので、1.6ページ/分だったわけで、やっぱり今回は結構遅かったというか時間がかかったのは間違いないな。つーか1日にかける時間も短いし、なんか集中できなかったんだろうな。
 というわけで、合計515分かけてわたしが読み終わった作品は、この小説であります。


 かつて、わたしが大変はまっていた作家、Stephen Hunter先生による、「切り裂きジャック」の物語である。タイトルもイイすね。『I, RIPPER』。アシモフの『I, ROBOT』のパクリというか、『I, なんとか』みたいなタイトルを映画のタイトルでもたまに見かけますな。
 まずは初めに、作者であるStephen Hunter氏について書いておこう。恐らく、海外翻訳小説が好きな人なら、誰もが知っている作家であろうと思う。一番有名なのは間違いなく『極大射程』だろう。元の原題を「Point of Impact」というこの作品は2000年(?)の「このミス」海外部門で1位になって一躍有名になったとわたしは認識しているが、勿論わたしは「このミス」なんてものは大嫌いなので無視しており、わたしが「極大射程」を読んだのは、映画オタの作法に則って映画化されるというニュースが聞こえてきた頃である。だから、ええと、映画版は日本では2007年公開だから、たぶんわたしが読んだのは2006年とかその辺りだと思う。随分後ですな。しかし、読んでみて、こりゃあ面白い、とハマり、映画も実にうまく原作の時代やキャラ設定を変えて面白く仕上がっていたし、同じ主人公のシリーズ作品があるなら読んでみよう、と、いうわけで、「ボブ・リー・スワガー」シリーズとして有名な作品群を読み、別のスワガーの父が主人公のシリーズとか単発モノとか、とにかく片っ端から読んだのである。
 しかし……。それぞれの作品は確かに面白かった。けれど、そもそも主人公のボブ・リー・スワガーはベトナムで活躍した伝説のスナイパーであり、映画ではうまく設定を現代化していたけれど、実際のところ、今やすっかりおじいちゃんレベルなんだな。それでもスーパー大活躍する凄腕なのだが、ちょっとですねえ……スーパーマンすぎるというか……日本に来てチャンバラまでしちゃう展開にもなって(『47人目の男』という作品で、スワガーの父が硫黄島から持ち帰った日本刀を巡るお話で、スワガーが日本にやって来るのです!)、はっきり言って飽きちゃったのです。たぶんわたしが最後に読んだのは、2010年の『デッドゼロ』だと思う。その『デットゼロ』でも、なんとスワガーの息子に当たる新キャラが結構いきなり登場したりして、なんというか……とんでも話めいた感想を持ってしまったんだなあ……。
 というわけで、Hunter先生は非常に精力的に、結構早いペースで作品を発表しているにもかかわらず。ここ数年、つか7年、新刊を本屋さんで見かけるたびに、ま、今度でいいやと見送っているうちにHunter先生の作品とはすっかり疎遠になってしまっていたのである。
 そんなわたしであるが、先日、BOOK☆WALKERにて還元率の高いフェア開催中に、何か面白そうなのはねえかしら……と探していた時に見かけたのが、本書『我が名は切り裂きジャック』である。最初、これもまた「スワガー・シリーズ」の新刊か?と思い、あらすじをチェックしたところ、なんとあの、本物の「切り裂きジャック」を扱う19世紀末ロンドンを舞台とした物語であった。ので、これは読んでみたいかも……と思って買ってみた次第である。
 本書は、その構成の特徴として、切り裂きジャック本人の日記?と、ジャックを追うジャーナリストの回想録が交互に語られる形式になっている。ジャックが犯行を犯す記録、そしてその場に駆け付けたジャーナリストが取材する話、という繰り返しで、わたしは最初、どうも物語に入り込めなかった。時代のせいや、文体のせい、ではないと思う。本作は、文体(というか、使われる形容詞とか文章そのもの)が非常に凝った、19世紀末の人間が書きそうな文章になっていて、これは翻訳でも非常に感じられる特徴だ。しかしそういうのは、古典小説を散々読んでいるわたしには別に苦ではない。
 問題は、ジャックは自らの犯行を克明に記しており、その生々しさは伝わるのだけれど、いったいなぜ、ジャックは娼婦を切り刻むのか、その動機がなかなか実感としてわかりにくいのだ。まあ、異常者の動機が分かるわけない、かもしれないけれど、核心に迫らないというか、ある意味淡々と語られるし、一方のジャーナリストの回想録も、なかなか進展を見せない。まあ、いまだ未解決事件なのでそりゃ進展しないわけだが、どうも若干ノンフィクションめいていて、そういった点もなかなか物語として入りにくいような気はした。
 「切り裂きジャック」の犯行は現代でもマニアックに調べ続けている人もいるほど、有名な事件だが、まだ現代のような科学捜査手法も確立していない時代なので、現代人の我々からすると相当多くの証拠を犯行現場に残していることが読んでいると良くわかる。恐らく、現代であればDNA検査で一発アウトで即解決、だと思う。本作では、そういう科学的物証を追う展開は勿論ないのだが、非常に面白いことに、事件の起こった1888年のロンドンは、まさしくSir Arther Conan Doyle先生による『A Study in Scarlet』(=緋色の研究=シャーロック・ホームズ第1作)が出版された直後なんですな、時代的にいうと。なので、登場するジャーナリストは当然「緋色の研究」を読んでいるわけで、「推理」をもって事件に迫ろうとするのだが、自分にはその才能がない、とがっかりしているところで、とある音声学の教授と出会い、まさしくこの教授こそ、探していたホームズだ!というわけで、教授と一緒になって「犯人像を推理する手法(=まさしく現代の我々が知る「プロファイリング」ってやつ)」で、容疑者を絞り、ジャックに迫っていく。この教授が出てきてからが非常に面白く、はっきり言ってわたしはすぐに、結末にピンときた。ネタバレ過ぎるので書かないけれど、本書では、ジャックの正体が判明します。もちろんHunter先生による創作なので、事実かどうかは分かりませんが。
 しかし、わたしが本作で一番興奮したのは、ジャックに迫る過程ではないのです。もう、これは完全にネタバレだけど、書かずにはいられないので書きますが、なんとなんと、このジャーナリストがですね、我々が知る大変有名な作家の若き頃、であることが下巻の中盤で判明するのです。誰かは書きません。ヒントは、ノーベル文学賞を受賞した人で、主に戯曲を多く書き、ブロードウェーミュージカル化された後にハリウッド映画化もされた(その映画は誰でも知ってる有名作)、19世紀末から20世紀半ばまで活躍したアイルランド人の超有名人です。本作では、「ジェブ」というペンネームを名乗っているのですが、その「ジェブ」の由来が明らかになって、彼が何者か分かるくだりに、な、なんだってーーーー!!!? と一番興奮しました。しかも、その有名作品を書く動機となったのがこのジャックの事件だった、というラストはかなりもうゾクゾクと痺れましたね。
 
 というわけで、もうまとまらないので結論。
 「ボブ・リー・スワガー」シリーズでお馴染みのStephen Hunter先生による切り裂きジャックの物語『I, RIPPER』を読んでみたところ、最初はどうにもノンフィクションめいた世界に入り込めず、とにかく読了に時間がかかってしまったが、下巻の後半はかなり興奮して読み進め、ラストの意外(というか予想通り)の展開に大興奮したわたしであった。ズバリ言うと、あまり万人にお勧めの作品ではないような気がするけれど、わたしは最終的には大変楽しめた。雰囲気はまさしくビクトリア期のロンドンで、非常にホームズ的世界観を感じることができると思うので、ホームズファンにはおススメできるかも。大変な力作だと存じます。以上。

↓ 「スカーペッタ」シリーズでお馴染みの、コーンウェルおばさんも、なんと7億円もの費用をかけて、現存する「ジャック」関連の遺留物を徹底的に現代科学で検証しています。こちらは小説じゃなくてノンフィクションですな。わたし、コーンウェルおばさんの「スカーペッタ」シリーズも、大好きだったんだけど、どうやら読んだのは14作目までかな……はっきり言って飽きました。ベントンが実は生きてた――という展開辺りから、ちょっとついてけないす。あと、ルーシーの組織もなあ……。
切り裂きジャックを追いかけて (Kindle Single)
パトリシア・コーンウェル
AmazonCrossing
2015-06-23



 

 

 世界的ベストセラー作家、Tom Clancy氏が亡くなってもう3年半。突然の訃報に、われわれ「ジャック・ライアン」シリーズのファンは大変なショックを受けたわけだが、シリーズは無事に、次世代の作家に受け継がれ、すでもう数作品が、ひどい言い方をするなら「何事もなかったかのように」発表され続けていることは、このBlogでも何度か取り上げている通りである。そしてそのバトンを受け取った、Mark Greaney氏のオリジナルシリーズである「暗殺者グレイマン」の方も、全巻読んでみて、このBlogでも感想を書いたが、これがなかなか面白く、わたしとしてはClancy氏の逝去にあたっては大変残念に思うが、作品はMark Greaneyという若い才能に引き継がれたことについては大変安心した次第である。まあ、ファンが全員Greaney氏の新ジャック・ライアンを肯定しているのか知らないが、わたしは全くアリだと感じている。
 で。先週の末だったか、本屋さんの店頭で、いきなりそのジャック・ライアンシリーズの新刊が売っているのを見かけ、おおっと、マジか!と何にも確認せずにレジへ向かい、とりあえず確保し、早速その日の帰りの電車内で読み始めたのだが、やっと昨日の帰りの電車内で読み終わった。読み終わるのに、上下本で5日間かかってしまった。 
 その邦題は「機密奪還」という作品で、なんと驚きの(?)、シリーズの中のとあるキャラクター一人の活躍を描いたスピンオフ、いわゆる「外伝」であった。
機密奪還(上) (新潮文庫)
マーク グリーニー
新潮社
2017-03-29

機密奪還(下) (新潮文庫)
マーク グリーニー
新潮社
2017-03-29

 あとがきによると、実は外伝は初めてではないそうで、確かに「クラーク」を主人公とした外伝『容赦なく』はわたしも読んだので、その点は知っていたけれど、すでに「ジャック・ライアン・Jr.」を主人公とした作品は2つ発表されていて、日本語訳されてないだけなんだそうだ。そして、今回の主人公は、なんと「ザ・キャンパス」の若きイタリア野郎でおなじみの、ドミニク・カルーソー君、通称「ドム」であった。わたしは結構、ドムは好きなキャラというかJr.よりは好きなので、ほほう、こりゃあ面白そうだ、と期待を込めて読み始めた。ええと、もうクラークとかザ・キャンパスとかJr.とか、いちいち説明しませんよ? 以下はもう、シリーズを読んできた人にしかわからないことだらけだと思います。あ、そうだ、シリーズについて、すっげえ長い記事を書いたことがあったので、わからない人はそっちを読んでください。そうだよ、ちょうど1年前の今頃書いたんだった。忘れてた。そして以下、ネタバレが多いと思うので気になる方は読まないでください。自己責任でお願いします。
 さてと。まずドムは何者か、を軽くまとめておくと、現在の「ライアン・シリーズ」本編の中心となっている、「ザ・キャンパス」の作戦要員の一人で、FBI出身である。出身、と言っても、本作で何度も語られるように、実はまだFBIに正式な籍があって、出向だか何だかよく憶えていないけれど、現在は「ザ・キャンパス」に身を寄せている設定である。そしてドムを語る上で忘れられない点が一つ。それは、ドムは双子で、元海兵隊の兄貴がいたんだな。彼もまたザ・キャンパスに参加していたのだが、もう結構前の作品で殉職してしまったのである。しかもドムの腕の中で。なので、ドムはずっと、それに苦しんでいて、あの時オレがもっとああすれば……的な想いを心の奥底に抱いているキャラだ。そしてドムは、現大統領であるジャック・ライアンの甥にあたるのかな? ともかく一応血縁であり、それすなわち、現在ほぼ主人公的扱いのライアン・Jr.の従兄弟に当たる人物で、もちろんJr.と仲良しの32歳の若者である。Jr.は、大統領の直接の長男であり(Patriot Gamesの際に妊娠中のお母さんのお腹の中にいたのが彼)、まあ、はっきり言ってお坊ちゃん育ちのゆとり小僧である一方で、ドム(と双子の兄のブライアン)はきっちりと訓練された男なわけで、大変頼りになるハンサムガイ、それがドムことドミニク・カルーソー君という男である。
 というわけで、以上を踏まえて(?)、今回の物語をざっくりまとめると、冒頭、ドムは単身インドの西海岸のとある村で、元イスラエル国防軍(IDF)大佐の男の下で6週間の訓練に来ていた。それは格闘術の習得のためで、毎日キッツイトレーニングをこなしながらも、その先生となっている元IDF大佐の家族とも仲良く、ある意味平和に過ごしていたのだが、ある朝突然、その家族に悲劇が降りかかる。そして、その悲劇は、NSC(国家安全保障会議)の小役人のクソゆとり小僧が漏洩した情報が源にあって、九死に一生を得たものの、先生家族を殺されたドムは、そのNSCのクソゆとり小僧を「復讐」のためにぶっ殺しに行く――てな物語が本筋だ。そしてサイドではそのNCSの小僧が何故情報を漏洩させたのかという物語が語られ、その裏にはイランの謀略があったり、あるいは漏洩を調査するFBIの動きがあったり、また、ITP(国際透明性計画=International Transparency Project。実在しているのか、調べきれなかった……これのことかな?)というクソジャーナリストどもの愚かで無意識の悪意があったり、と大変読み応えのある物語になっている。
 なので、わたしにとっては、問題となるのは以下の二つの点であった。
 1)ドムの動機は明確に「復讐」である――これはアリかナシか?
 2)イランに利用されるITPなるクソジャーナリストに正義はあるのか?
 というわけで、順に思ったことを書き連ねてみよう。
 まず、ドムの復讐についてである。
 ドムは、前述のように兄をその腕の中でなくすという経験をしており、いわゆる「サバイバーズ・ギルド」を抱えている。簡単に言えば、生き残ってしまった自分への罪悪感だ。オレが死ぬべきだったんじゃないのか、オレがもうちょっとうまくやれば兄貴は死なずに済んだんじゃないか、どうしてオレだけ生き残っちゃったんだ、という奴である。そんな想いをどうしても心の奥底に抱えるドムなのに、またしても、目の前で、師匠とも友人とも言える元大佐一家(奥さん&二人の幼い子供含む)を殺されてしまったら、そりゃあ、怒りと自らのふがいなさにはらわたが煮えくり返りますわな。
 まあ、結論から言うと、復讐は何ももたらさないという理屈は全く正しいと思うけれど、わたしすらも、情報漏洩したNSCのクソゆとり小僧をぶっ殺したくなった。なので、ドムの復讐をわたしは肯定したい。たぶんこの作品の読者なら、当たり前だろうと思う。おまけに、語られてゆくNSCの小僧が、ホントにクソ野郎なんすよね……実にゆとり溢れたクソガキで、わたしとしてはこのガキはキッツイお仕置きが必要だぜ、場合によっては死んでいただきたい、とすら思いながら読み続けました。
 で、次に問題となるのは、ゆとり小僧をある意味誘惑した、ITPというクソジャーナリストどもについてだ。下巻の訳者あとがきにもある通り、いわゆる「スノーデン事件」や「ウィキ・リークス」「パナマ文書」のようなもので、ITP(国際透明性計画)とは、政府情報を隠さず公表するんだ的な狂った信念を持った連中である。わたしは彼らを狂ってると思うが、これは、世間的にはきっと逆で、彼ら、スノーデンのような連中を正義だと認める人々の方が多いような気もする。しかし、わたしは会社員として、長年「会社側」の人間として仕事をしてきた方が長いので、わたしの思考は多分に「国家側」であることも影響しているのは間違いなく、会社や国家が、社員や国民に「敢えて知らせない」ことが山ほどあるのは当たり前だと思っているし、その理由も理解できる。それを隠蔽と言われても全く良心は痛まない。「腐敗」と呼びたければどうぞそう受け取ってくれたまえ、とさえ、わたしは思うこともある。だって、どう考えても「知らせる」ことの方が会社や国家の利益にならないことが多いもの。
 本作で描かれるITPの連中は、イランのスパイに利用されていることをまったく気が付かず、「その情報が人を殺す」ことにもまったく無頓着で、余裕で情報漏洩する。NSCの小僧も、まさかイランに情報が渡るとは全く思わずに、ITPへ情報漏洩し続けていたのだが、ほんと読んでいて「駄目だコイツ……早くなんとかしないと……」でお馴染みの夜神月くんの顔が頭にちらついてたまらなかったす。なので、わたしには漏洩する人間を正義だとは思えないし、最終的な結果には大変スッキリして満足である。まあ、正直ざまあ、とさえ思ったわたしこそ、人間のクズかもしれないな。

 というわけで、わたしの本書の感想としては、大変スッキリして面白かった、というものであるが、ちょっと、普通の人が読んで面白いのかどうかは、実のところ良くわからない。少なくともシリーズを読んできたファンならば、今すぐ買って読んで損はないと思う。
 そうだ、本作でドム以外に大変キャラの立っていたキャラクターを何人か紹介しておこう。ちなみに本作は、「ザ・キャンパス」の他の連中は一切出て来ません(親分のヘンドリーだけ電話の相手として出てきます)。
 ◆アダーラ・シャーマン:シリーズを読んできた方なら絶対にご存知の、ザ・キャンパス所属の後方支援担当士官の女子。原題のSupportは彼女を意味しているかもしれない。彼女は元海兵隊員で元衛生兵。アフガンでの過酷な戦場経験アリ。いつもながら超有能なクールビューティーで(ザ・キャンパスの隊員は、ヘンドリーから、彼女に手を出したらぶっ殺す、と言われているそうです)、今回大活躍。そしてどうやらドムとイイ仲に。ドムよ、ヘンドリーのおっさんにぶっ殺されるぞお前。ちなみにどうやら本作は、時系列的にはシリーズ本編の『米朝開戦』の前に当たるそうで、『米朝開戦』には本作の顛末を踏まえたドムとアダーラの関係がちらほら出てくるそうで、どの部分がそうなのか、下巻の訳者あとがきに詳しく載ってます。わたしとしては、もし映像化されるなら、彼女の役を是非とも、ワンダーウーマンでお馴染みのGal Gadot様に演じていただきたい!!! 読んでいる最中はずっとGal様のお姿をイメージしてました。
 ◆ダレン・オルブライト:FBIマンとして、「法に則って」情報漏洩したNSCの小僧を追う正義の味方。完全に法を無視するドムにイラつきながらも、味方してくれるイイ奴。このキャラは今後も登場してもおかしくないと思う。わたしが読みながら頭に浮かべていたのは、ブラックパンサーでお馴染みのChadwick Boseman氏だ。黒人という描写があったかまったく覚えていないけれど、どういうわけかわたしは、Boseman氏のイメージで読んでいた。スーツが似合って正義感ぽくて強そう、みたいな感じであろうか。
 ◆イーサン・ロス:お坊ちゃん育ち。アイヴィー・リーグ卒のインテリクソ野郎。こういう奴、日本にもいっぱいいますね。実際のところ利用されただけの哀れで愚かなガキだが、尊大で無駄なプライドばかり高く、自らを常に正しいと思うような、エリートクズ野郎。自らの行動がもたらす結果を考えることができない、想像力の欠如した典型的ゆとり小僧。無事にあの世へ送られてスッキリした。ちなみに、ITPの首領的なスイス人女性も出てくるが、とんでもなくうかつなノータリンで、彼女もあの世へ直行するのでご安心を。

 最後に、訳者あとがきからいくつか情報をメモしておこう。すでに、「本編」はUS国内で2作出版されていて、現在鋭意日本語翻訳作業中だそうだ。まずひとつが、シリーズではおなじみのロシア大統領ヴォローディン氏との戦いだそうで、まったくもって、眠れる熊は懲りないですなあ……。楽しみですね。そしてもう一つは、なんとUS国内でISによるテロが続発して、すさまじい戦いとなる物語だそうだ。両作ともに日本語で読める日が来るのが楽しみですな! しかし、アクチュアルな物語なんだから、もう少し早く翻訳出版していただきたものだが、ま、新潮社じゃあダメだろうな。あの会社はもう古すぎるというか、電子書籍で出してほしいのにまったく手つかずだもの。もう相当売上も利益も落ちてるだろうな、と、根拠なく想像しますね。

 というわけで、結論。
 「ジャック・ライアン」シリーズ外伝『機密奪還』をさっそく読んでみたところ、なんと主人公はドムことドミニク・カルーソー君であった。これはシリーズを読んできたファンは大変楽しめると思うのだが、一方で、このシリーズはアメリカ万歳であり、完全に法を犯しているわけで、真面目な人が読んだら眉を顰めることになる可能性は高い。でもいいんです、それで。だってフィクションだし、エンターテインメントだもの。いまさら真面目な指摘しても何の意味もないと思います。わたしは大変楽しめました。以上。

↓ これが現在翻訳作業中の、次の「本編」かな。ヴォローディン大統領……アナタ一体何回痛い目に遭えば気が済むんすか……。 邦題がどうなるかも気になるすね。「米露開戦」は使っちゃったし。
 

 なんというか、最近、小説や映画で良く見かける形式として、現在時制の出来事と、過去の出来事が交互に語られるような作品がやけに多いような気がする。いやいや、全然最近じゃないか。むしろ使い古されているといった方がいいか。まあ、とにかくわたしとしては、妙に最近よく見かける気がしたのでそう書いたのだが、要するに、現在時制が勿論メインであるものの、主人公あるいは重要人物の過去が、だんだんわかって来て、ああ、そういういことだったのか、と分かるような仕掛けの物語で、マジか!やられた!と驚きの面白さを提供してくれる場合もあれば、なーんだ、でがっかりな作品も多い。
 ある種の叙述ミステリーと言えばいいのかもしれないけれど、そういう作品でつまらない結果となると、なんだか腹立たしくなるのはわたしだけだろうか。 わたしが昨日読み終わった小説『STONE BRUISES』(邦題:出口のない農場)は、残念ながら読み終わって腹立たしくなる方の、残念話であった。

 思うに、これは完全にわたしの好みだが、わたしの場合、主人公がバカだと、まるで物語に入れず、イライラするだけで、こりゃつまらん、と判定してしまう傾向がある。バカな主人公は、とにかく行動が、「確実にオレならそうしない」方向の行動をとり、そしてやっぱり痛い目に遭い、だけど何故か最終的には何とかなる。何とかならないと、お話にならんすわな。その、何とかなる様子が、なるほど、と思わせてくれるならまだ許せるのだが、たいていは、うっそお、そりゃないだろ、コイツ超ラッキーというか、これぞまさにご都合主義か!と思いたくなるような場合が多い。まあ、そりゃ誰でもそうだと思うけれど、とにかく、主人公はバカでは勤まらない、というのがわたしの持論である。
 本作の主人公、ショーンは、実にバカなゆとり青年だ。このショーンが、どうやら何かをやらかし、ロンドンからフランスへ逃亡し、フランスの片田舎で車を乗り捨てるところから物語は始まる。金もろくにないショーンは、ヒッチハイクであてもなく逃亡を図ろうとするが、とある森にさまよい、そこで動物捕獲用の罠にまんまと足をがっちり噛みつかれて大けがを負い、その場で気を失う。そして気が付くと、なにやら農場に運ばれ介護されている状況であることを知る。そこは、美しい姉妹と、なにやらいわくありげなおっかないオヤジが住む農場であり、ショーンはそこで傷をいやしつつ、その家族と交流しつつ、家の修理などを手伝い始めるのだが、どうもこの農場も何やらいわくがあって――というのがメインで、この現在時制の農場暮らしと交互に語られるのは、ショーンがロンドンにいた頃の話である。どうやらショーンは、彼女と問題があって、彼女は麻薬にはまってしまったらしいお話がぶつ切りに明らかになっていく。
 というわけで、問題は、まずロンドンで何が起こってショーンは逃亡しているのか、という点と、怪しすぎる農場一家は、一体に何ゆえに周辺コミュニテイーから疎外されているのか、という2点に集約されると言っていいだろう。ショーンも過去に何かあった、そして農場一家も何やら秘密を抱えている、というわけで、お互い秘密を抱える身ということで、お互い警察とは距離を置きたいという奇妙な利害の一致があり、ショーンはある意味のんきに農場生活を送るわけだが、実になんというか……イライラする。日本語タイトルは「出口のない農場」だが、実際のところ出口は普通にあって、いつでも出ようと思えば出られるのに、単にショーンがグズグズして出ていかないだけの話だ。何度か、ショーンはもう出ていくんだ!と決断するのだが、そのたびに、いや、まだ足痛えし、とか、なにかと言い訳を編み出して居座るわけで、実にぶっ飛ばしたくなるゆとり青年である。
 わたしのイライラは、第一にショーンが頭が悪いことによるものだが、もう一つはやっぱり、交互に、小出しに語られるロンドンでの過去が実にしょーもないし、また、大したことない話なのにもったいぶっているというか……ぐずぐずしているというか……とにかく展開が遅いのだ。全編通じて、話のテンポは遅い。その点もわたしのイライラを募らせる原因だったように思う。
 たぶん誰もこの物語を読んでみようと思う人はいないと思うので、ズバリ、ラストのネタバレを書いてしまうが、最終的にショーンはロンドンへ帰り、実は誰もショーンがフランスへ行っていたことなんて気が付いておらず、友達も、あれ、お前最近見かけなかったけどどっか行ってたの? ぐらいのノリで、実にあっさり、ショーンは、なんだ、逃げる必要なかったじゃん、と普通の生活に戻るのだ。わたしはもう、お前いい加減にしろこのバカガキが!と、もう読むのをやめようとしたら、ちょうどそこで物語は終了したので、もう唖然というか……何だったんだ一体……というやるせなさで読了に至ったのである。
 ただ、農場での姉妹の姉、に関しては大変キャラが立っていて、その点だけは良かったと思う。というわけで、キャラ紹介をまとめてさっさと終わりにしよっと。
 ◆ショーン:主人公のイギリス人。ゆとり青年。推定20代中盤。映画が大好きだけど別に何をすることもなく定職もなく、ぶらぶらしているふざけたガキ。彼女を麻薬付けにしたヤクザを殺ってしまい逃亡中、だが、完全ノ―プランで捕まらなかったのは単にラッキーか、イギリス/フランスの警察が無能なだけ、と思っていたら、実はロンドンではまったくそんな殺人に誰も注目しておらず、単にヤクザのごろつきが一人くたばった、としか思われておらず、全然捜査も行われていなかったことがラストで判明。
 ◆アルノー:ショーンが逃げ込む農場の主。養豚がメイン事業。どうやら過去に、とある男と組んで悪事をもくろんでいたが、その男は失踪中であり、周囲からはアルノーがその男をぶっ殺して豚に喰わせたんじゃねえか、と思われている。
 ◆マティルド:アルノーの娘。美女。幼子を抱えた寡婦。その幼子の父は、アルノーが組んでいた男で、失踪の理由を知っているんじゃねえかと、これまた周囲に疑われている。実に可哀想な女子。
 ◆グレートヒェン:アルノーの娘でマティルドの妹。美人。なにかとショーンを誘惑しようとするエロ系女子。天真爛漫というよりも、若干頭が弱いとしか思えない。いつも指図ばかりする姉が嫌い。そして彼女の出生には秘密があって、実際気の毒な人。
 ◆クロエ:ショーンのロンドンでの彼女。ドラッグにはまっていた過去がある。立ち直ったからこそショーンと付き合っていたはず、なのに、ある日ショーンを捨て、勤め先のバーに現れたヤクザの元カレのもとへ走る。非常に微妙だが、クロエとしてはショーンをヤクザから守るために別れた、というのが正しいのかな? ショーンはそんなことも気が付かず、クロエに捨てられたと思っている大バカ者。そしてクロエは大変気の毒な運命に……。
 他にも多くのキャラクターが登場するけれど、実際どうでもいいというかたいした役割もないので、省略。うーん、なんかもはや書くことがない。そうだ、最後に著者のことをメモしておこう。
 著者は、Simon Beckett氏というイギリス人だそうで、「法人類学者ディヴィット・ハンター」という大ベストセラーシリースを書いている方だそうだ。ヴィレッジブックスから日本語訳が出ているらしいです。ええと、これか。
法人類学者デイヴィッド・ハンター (ヴィレッジブックス)
サイモン ・ベケット
ヴィレッジブックス
2009-02-20

 おっと、絶版か? どこも品切れだな……これじゃあ読めないな……残念。こちらの評価は非常に高いそうで、なんでも、理由は分からないけどドイツで大ヒットしたらしいです。CSI的な、スカーペッタ的なお話かなあ。そして今、本書『出口のない農場』のAmazonレビューを見て驚いた。みんな大絶賛してるんだ……うそだろ……マジか……絶賛するポイントがわたしにはさっぱり分からんす。ま、いいや。

 というわけで、結論。
 電子書籍のコインバックフェアで、あらすじを読んで面白そうだと思ったので買った本書『出口のない農場』だが、まったくわたしの好みに合わず、実にイライラしっぱなしの読書体験であった。原題の『STONE BURISES』も、ちょっと意味がピンと来ない。bruisesって「あざ」とか「傷」「傷跡」だよね? うーん……いや、やっぱり良くわからんす。わたしがあらすじを読んで、これは? と思ったのは、「ケガを負った青年がとある農場に監禁され……」的な部分は、ひょっとしたらわたしの大好きなStephen King氏による『MISERY』的なお話かしら? と期待したのだが……残念ながらその期待は完膚なきまでに粉々に打ち砕かれました。やれやれ……だぜ。以上。

↓ 良くわからないけど、「法人類学者」シリーズの2巻3巻は普通にまだ買えるみたいすね。営業がちゃんと仕事してるのか、実に怪しい。
骨の刻印 (ヴィレッジブックス F ヘ 5-2)
サイモン・ベケット
ヴィレッジブックス
2012-03-19

骨と翅 (ヴィレッジブックス)
サイモン・ベケット
ヴィレッジブックス
2014-02-20

 先日、わたしの愛する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて、還元率の高いフェアをやっているときに、早川書房で絞り込んで、何か面白そうな小説はねえかなあ、と渉猟していたのだが、ふとそのタイトルに魅かれて、あらすじをチェックしてみたところ、なかなか面白そうだったので買った本がある。
 日本語タイトルは『幸せなひとりぼっち』 といい、原題はスウェーデン語で『En man som heter Ove』というらしい。意味としては、あとがきによれば「オーヴェという名の男」ということらしいが、ちょっと調べてみたらなんと映画も去年公開されていたそうで、わたしは全然知らなかったけれど、原作も映画も本国スウェーデンでは大ヒットした作品だそうだ。というわけで、へえ、そうなんだ、と思いつつ、さっそく読み始めてみた。
幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)
フレドリック バックマン
早川書房
2016-10-21

 そして、のっけから結論を言うと、わたしは猛烈に感動してしまい、これはもっともっと売れてほしい!と強く思う次第である。よって今回は、大絶賛の方向で本書の内容をまとめつつ、万人にお勧めしようと思う。
 たぶん、まずは映画の予告編を見てもらった方が、どんなお話か伝わるかもしれないので、こちらをさっそく貼っておこう。

 ん……んん……ちょっとアレだなあ、自分で貼り付けておいてなんですが、ズバリ、原作の方が面白い、かもしれないなあ……原作を読んだ今、上記予告で描かれるシーンがどういうシーンか、分かるところと分からんところがあるのはちょっと驚いた。映画は原作通りじゃないのかもしれない。まいいや。ちょっと、まずは簡単に物語を紹介しよう。
 主人公・オーヴェは59歳。妻に先立たれ、会社を「早期退職」という名のリストラで放り出されたおっさんである。彼は、いわゆる「頑固おやじ」で、周囲には相当煙たがられている。それは、オーヴェには明確な「自分ルール」がいっぱいあって、それを忠実に守って生きているためで、決して妥協しない、口論上等、超けんか腰な、はたから見ると恐ろしくやっかいな、なるべく関わり合いになりたくないおっさんだ。ただ、しつこいけれど何度でも言うが、オーヴェにはオーヴェの理論があって、自分がまともであって、周りがおかしい、と本人は思っている。
 そんな彼が、妻を亡くし、仕事を失くした今、実行しようとしていることは、ズバリ自殺だ。もはや生きている理由はない。そして、愛する妻のもとへ行きたい。ならば死ぬだけ、というわけで、彼はすべての準備をきっちり、まさに一部の隙もないほど死後のことを手紙にしたため、妻の好きだったスーツを着用し、死のうとする――が、どういうわけかその度に邪魔が入り、ことごとく失敗する。例えば、さて、準備OK。さ、死ぬか、と思った矢先に、きっちり手入れした庭にへったクソな運転で車が入って来たり、よーしじゃあ、ガレージで車の中にマフラーから排ガス入れて死のう、とすると、ガンガンガンとガレージを叩く音がして誰かがやって来るし、別の日、じゃ、しょうがねえ、電車に飛び込むか、と思って駅へ行けば、後はもう轢かれるだけ、というタイミングで、ホームで卒中を起こしてぶっ倒れる奴がいて、思わず助けちゃってヒーローとして新聞記者がやってくるし、とにかくもう、ことごとく、ああもう!なんなんだよ! 死なせてくれよ! という展開が繰り広げられる。
 しかし、そんな出来事が続くうちに、煙たがっていた周りの人々は、あれ?このおっさん、実はすげえんじゃね? 何でも直せちゃうし、何でも超詳しいし、と気が付いて、どんどんオーヴェを頼りとし、オーヴェもまた、この馬鹿もんが!と怒鳴りつけながらも、どうにも放っておけない。それは、亡き妻が生きていたなら、絶対に、「あなた、助けてあげなさいな」と言ったに決まっているからで、死んでからあの世で妻に再会した時に、大好きだった笑顔を向けてくれないのではないかと思ってしまうからだ。
 とまあ、そういうわけで、本作は、超偏屈親父の生き様と、それに感化されていく周りの優しい人々を描いた物語だ。形式としては、短いエピソードが連なる短編連作(全39章からなる)と言ってもいいかもしれないが、その短いエピソードが非常に濃度が高くて、実に毎回面白い。そして作中では、時折オーヴェの生い立ちから妻との出会いも描かれ、それがなかなか美しく心に迫るものがあって、とても読後感は爽やかだ。
 実はわたしは、最初のうちは、オーヴェというおっさんが全く好きになれなかった。ただのイカレたクレーマー親父か? 老害もいい加減にしとけよな……みたいなヒドイ感想を持ってしまい、最後まで読み通せるのか心配になったほどだ。
 ところがですよ。最初の1/4ぐらいからもう、あれっ? このオヤジ……なんだよ、面白いな……と思い始め、ついにはわたしもオーヴェに好感を持ち、ラストはもう泣ける展開で、実に楽しめたのである。
 思うに、わたしはオーヴェに自分を見たのではなかろうか。59歳なんて、日本ではまだ全然おじいさんじゃないすわな。まだ普通に働いていている人の方が圧倒的多数だろうし。でも、オーヴェのように、「ひとりぼっち」でいる男は、ごまんと日本にもいると思う。そして実に残念なことに、まさしくわたし自身もそうなりそうな気配濃厚だ。そして、さらに残念極まりないことは、オーヴェをものすごく幸せでうらやましい、とさえ思ってしまったのだ。オレ……絶対こんな幸せな人生を生きられねえだろうな……と思ってしまい、自分が情けなく悲しくなってしまったのである。はあ……まったくもう、いやになるわ……何もかも。わたしも、きっと相当偏屈な親父と思われているだろうし、わたしの若者を見る目は、まさしくオーヴェ的だ。たぶん、わたしのことを知っている人がこの本を読んだら、マジでわたしのことを思い出すんじゃないかってくらい、十数年後の自分が描かれているようにさえ思った。やっばいなあ……どうしたらいいんでしょう……。
 ま、もはやわたしの人生はどうにもならんので、物語の各キャラクターを自分用備忘録としてメモしておいて、記憶が失われたときのヒントを残しておこう。
 ◆オーヴェ&ソーニャ夫妻
 オーヴェは、幼少期に母を喪い、少年期に父を喪った孤独な男。以後、黙々と働き続け、ひどい扱いを受けて過ごす。そのせいで、役所は大嫌いだし人も信用しない。作中の言葉を引用すると「人を信用しないただの偏屈屋だと一部の人から思われていることは、オーヴェもよくわかっていた。だがはっきり言ってそれは、信用すべき理由を他人から示されたことがいまだかつてなかったせいだ。」そんな彼は、一部の人からは、超真面目に仕事をきっちりやる男として評価を受けていたし、気に入られてもいたので、何とか最低限の暮らしはできていたし、いろいろな技能を教えてもらって生きていたのだが、青年期にソーニャに出会い、恋をする。この恋がまた不器用でイイんすよねえ……。ちなみに、オーヴェは頑固に「SAAB」以外の車は乗らないし認めない。同じスウェーデンのVOLVOもダメ。BMWやAUDIなんてありえない。トヨタ車なんておもちゃ同然。フランスのルノーを買おうなんて気が狂ってるし、韓国のヒュンダイはもう論中の論外という持論を持つ。このあたりの車の話は、車好きのわたしには大変笑えるポイントでした。
 そして妻のソーニャは、対照的に明るく社交的で超美人。周りからは、なんでまたあんな男と? と反対もされていたのだが、ソーニャはオーヴェの、「正義、公正、勤勉な労働、正しいものが正しくある世界、それを守ることでメダルや卒業証書や誉め言葉がもらえるわけではないが、それが物事のあるべき姿だという理由で、信念を貫く」姿に惚れ、「そうした男がもうあまりいないことを、ソーニャはちゃんと理解していた。だからこそ、この男をしっかりつかんだ」のだそうです。まったく、世の女子たちもこういう男を見る目を養っていただきたいものですよ。
 しかし、こんな幸せな二人も大変な不幸に襲われる。妊娠中に事故に遭い、子どもは流れソーニャは一生を車椅子となってしまう。幼少期からの辛い暮らしやこの事故によって、オーヴェは完全に神を憎悪する男になってしまうが、しかしそれでもソーニャは明るく楽しい女性だった。先生として数多くの生徒を育て、「ねえ、オーヴェ、神さまはわたしたちから子供を奪ったわ。でも、千人ものほかの子供を与えてくれた」と言うぐらい、いい先生として晩年まで過ごした。ほんと、ソーニャに関する記述は非常に泣けるイイ話が多い。
 ◆パトリック&パルヴァネ夫婦&七歳児&三歳児(ナサニン)の姉妹
 オーヴェのお向かいに引っ越してきた一家。まず夫のパトリックはかなり呑気な男で、極めて不器用かつスットロイ。車の運転も絶望的にヘタ(愛車はどうもトヨタ・プリウスらしい)。ちなみに名前が判明するのは結構あとの方で、ずっとオーヴェは「うすのろ」と呼んでいた。序盤で、オーヴェから梯子を借りて家の窓の修理をしようとして転落、以後、ずっと松葉杖のまさしくうすのろだが、性格は穏やかなイイ奴。そして妻のパルヴァネも、そんな夫にイラついていて、オーヴェに車を入れ直してもらったことから(一方的に)仲良くなる。イランからの移民。かなりオーヴェと気が合う。オーヴェに車の運転を習う。オーヴェが怒鳴っても負けない気合があって、オーヴェが認める、ほとんど唯一の人。妊娠中。ラスト近くで三人目の子を出産します。
 で、この夫婦の子供が二人の姉妹で、上の子が通称「七歳児」。名前が出てきたか全然覚えにない。ずっと七歳児と呼ばれている。おしゃまな子で、偏屈なオーヴェを最初のうちは嫌っているが、徐々にその心も溶けていき、最後はもう、かなり泣かせるとってもいい子。そして妹の通称「三歳児」はちゃんと「ナサニン」という名前が出てくる。この子は三歳児らしい天真爛漫なかわいい子で、最初からかなりオーヴェが大好き。この子がまたかわいいんすよ……。
 ◆猫
 名前のない猫。オーヴェの家の前で傷だらけで雪の中で半分凍えていたところを、オーヴェ&ご近所のみんなに助けられる。ちなみにオーヴェは全く猫が好きではないけれど、ソーニャが猫好きだったし、パルヴァネ達もうるさいので介抱してあげただけ、と本人は思っている。ちなみにその時、パトリックはネコアレルギーで病院行き。本当に使えないうすのろですよ。(間違えた!)猫アレルギーはイミーだ。オレの腹で温めよう!と言ってくれたはいいけど猫アレルギーで発疹ができちゃうんだった。なお、この猫は非常にオーヴェに似た、確固たる意志を持っているようで、実にその似た者同士振りが笑いを誘う重要キャラ。
 ◆ルネ&アニタ夫婦
 オーヴェ&ソーニャと40年前の同じころに新興住宅地に引っ越してきた夫婦。ルネは、昔はオーヴェの数少ない友の一人だったが、とある出来事がきっかけで仲は決裂、以後数十年、不倶戴天の敵として数々のご近所バトルを戦ってきたが、数年前からアルツハイマーを患い、戦線離脱。オーヴェはそのことが何気に淋しいと思っている。車はVOLVO派で、SAAB派のオーヴェとは何かと対立していたが、ある日BMWを買ったことで完全にその溝は埋まらないものに。日本でも、トヨタ派、日産派の、それ以外を認めようとしないおっさんっていますよね。この車の話はとても面白い。
 そしてアニタは、ずっとソーニャの一番の友人だった優しい女性だが、現在、体が弱り、ルネの介護も難しくなってきていて、在宅介護をちょっと申請してみたところ、あなたに介護能力なし、とお役所に判定されてしまって、ルネをホームに入れるよう勧告されてしまっている。このお役所バトルも本筋の一つ。しかし、福祉先進国として有名なスウェーデンも、こういうやりすぎ福祉というか、おせっかいともいえるお優しい現実があるんだなあ、と勉強になった。
 ◆アドリアン
 郵便配達員。郵便配達だけじゃ収入が心もとないので、カフェでバイトもしている。ゆとり青年。もともと、彼女の自転車を直してやろうと、自転車放置禁止の場所に自転車を置いていたことで、オーヴェに説教を喰らうが、その自転車をオーヴェが直す手伝いをしたことで急速に「オーヴェさんすげえっす!」と懐いてくる。実は、ソーニャの元教え子であり、オーヴェはそれを知って、このガキに冷たくしたらソーニャが怒るだろうな、と思って、手助けしてやっただけ。最初はルノー車を買おうとしていたけど結局トヨタ車を買った。オーヴェ的には、ルノーやヒュンダイに比べれば、まだ許せるみたい。
 ◆ミルサド
 アドリアンのバイトするカフェの店員。ゲイ。そのことを父親に言えずずっと苦しんでいる。オーヴェは、お前……あっちの人間か? という反応で、だからどうした、と特に差別意識はないようで、そのあけっぴろげな質問にミルサドはオーヴェを信頼し、後にカミングアウトするに至る。
 ◆アメル
 ミルサドの父。カフェオーナー。息子がゲイであることを知って大激怒。ミルサドを家から追い出す(そしてミルサドはしばらくオーヴェの家に居候する。オーヴェはうちはホテルじゃねえ!と激怒するもちゃんと泊めてやる)。しかし、オーヴェがカフェにやって来て、めったに飲まないウイスキーをアメルと二人で吞み、男同士の話し合いをすることでやっとアメルの心に息子を理解しようとする気持ちが芽生える。
 ◆イミー
 オーヴェのご近所に母親と一緒に住む、汗っかきのデブ。ITオタク。アプリ開発者。凍えた猫をその腹で温めてやる活躍を見せる。だけど猫アレルギーで病院行き。笑っちゃった。また、七歳児への贈り物(iPad)の買い物にも付き合ってくれたり、かなりイイ奴。後にミルサドと同性婚を挙げる。
 ◆アンデッシュ
 オーヴェのご近所さんの一人。オーヴェの家の前でいつも小便をする小さいわんこを連れた、通称「金髪の棒っきれ」というヒステリックな女と付き合っている。Audiに乗る「かっこつけ」と呼ばれていた。しかし女が「あの偏屈じじい、あたしの犬のことを「毛皮のブーツ」なんていうのよ、キ―――ッ!!!」と怒った時に、「毛皮のブーツ、最高じゃん、わっはっは!!」と大爆笑したことで破局。以来、オーヴェに好意を抱いたらしい。トレーラー会社経営で、ラスト近くでちょっとした活躍をする。
 ◆レーナ
 新聞記者。偶然オーヴェが駅で助けた男の話を聞いて、取材にやって来る。オーヴェとしてはずっと相手にしていなかったけれど、最終お役所バトルで活躍。のちにアンデッシュと結ばれる。

  とまあ、こんなキャラクター達が見せる、とても暖かいお話で、読後感はとても爽やかだ。今、ふと思ったけれど、そういえばこの物語は、なんとなく有川浩先生の『三匹のおっさん』に通じるものがあるような気がする。TVドラマも3シーズンまで作られた人気作なので、ご存知の方も多いだろう。そして、『三匹のおっさん』が人気になるこの日本においては、本作『幸せなひとりぼっち』も、大いに受け入れられる素地はあるのではなかろうか。ぜひ、ぜひ読んでいただきいたいとわたしは心から願います。最高でした。
 最後に、作家について備忘録としてまとめておくと、日本語で読める記事がインターネッツ上にほとんどないので良くわからないのだが、あとがきに結構詳しく書いてあった。なんでも、元々は雑誌などのライター出身で、ブロガーとして人気者になった人だそうだ。そのブログで人気を集めたのが、偏屈で頑固なおっさんの話をオーヴェという架空のキャラにのせて面白おかしく書いた記事だったんですって。で、その面白ブログがウケて、小説に仕立て上げたのが本作、ということらしい。2012年に発売になったらしいですな。へえ~。そして人口990万のスウェーデンにおいて80万部売れ、全世界でも注目されたんですと。そうか、スウェーデンって、日本の人口の1/10もいないんだ……てことは日本の感覚で言えば数百万部ってことか。それはすごいや。本作の後にも、年1作のペースで作品を発表しているそうで、他の作品も読んでみたいですな。宝塚に遠征した新幹線内で、いつもわたしはグースカ寝てしまうけれど、今回はずっとこの作品を読んでいました。いやー、ホント楽しかったよ。


 というわけで、結論。
 ふとしたきっかけで読んでみたスウェーデンの小説『幸せなひとりぼっち』という作品だが、最初のとっかかりは、若干イラッとするような、嫌なおっさんの図が描かれるけれど、まあとにかく読み進めてみてくださいよ。きっと、いつのまにか、この超偏屈なオーヴェというおっさんが好きになっていると思います。 つーかですね、やっぱり映画版も観ないとダメかなあ……先ほど調べたところでは、来週から新宿で上映があるみたいなんだよな……行くしかねえか……。よし、観に行こう!決めた! 以上。

↓ なるほど、英語版はタイトルがそのまんますね。邦題の『幸せなひとりぼっち』。読み終わった今思うと、なかなかいいタイトルじゃあないですか。。
A Man Called Ove: A Novel
Fredrik Backman
Washington Square Press
2015-05-05

 

 先日電子書籍で安くなっているのを見かけて買った本があるのだが、実は読み終わったのはもう1か月ぐらい前で、このBlogに感想を書こうかどうしようか、迷って放置していた作品がある。
 なぜ迷っていたか? ズバリ、のっけから結論を言うと、あまり面白くなかったから、である。しかしそれでも、やっぱりなにか書いておこう、と、さっきふと思い立った。特に理由はなく、単に、このBlogが自分のための備忘録である、という存在意義を思い出したからだ。
 というわけで、その本とはこれです。

 愛する早川書房から出ている、いわゆる翻訳ミステリーで、原題は『THE BONES OF YOU』といい、邦題として「誰がわたしを殺したか」という日本語タイトルがついている。わたしがこの本を買った理由は、わたしが愛用している電子書籍販売サイトで、早川書房、で絞り込み、リリース順に並べたときに上位に来ていたというだけで、ああ、最近出たばっかなんだ、ふーん……まあ、古典的なミステリーかな? とそのタイトルだけしか手掛かりがないまま、とりあえずポチって見た次第である。
 で、さっそく読み始めてみた。お話はごく単純で、そのタイトルの通り、誰がわたしを殺したのか、をめぐるお話である。わたしがタイトルから想像していたのは、「誰がわたしを殺したか」ということは、要するに「わたし」はもう殺されているわけで、てことは、「わたし」以外の誰かが殺人を捜査することになるのか、はたまた「わたし」が幽霊にでもなって捜査するのか、まあきっとどっちかなんだろうな、と思っていた。
 しかし実際は、殺された女子高生(=わたし)が幽体?的な存在となって幼少期から殺されるまでの決して幸せではなかった人生を語り、そして現世では、その殺された女子高生と少しだけ(ホントに少しだけ)仲の良かった近所の主婦が、その殺された女子高生の母親の心のケアをしつつ、あれこれと犯人は……と、結構見当違いの想像を巡らせながら、いろいろな人々の話を聞いて様々に思うところを語る、とういうように、語り手が交互に入れ替わって進むお話であった。ちなみにその主婦は、別に積極的な犯人探しをするわけではなく、ほんと、傍観者と言っていいような存在である。そして最終的には、女子高生を殺した犯人は当然明らかになるのだが、正直わたしとしては、ああ、やっぱりね、な道筋で、別にな、なんだってーーー!? と驚くほどでもなく、そりゃあ消去法的にはそうなるよな、まあその動機は最後の方までわからないけど、みたいな感想しか抱けず、なんか……要するにあんまりおもしろくなかったのである。
 一応、わたしのBlogにおいて恒例となっているキャラ紹介だけしておきます。
 ◆ケイト:殺された女子高生のご近所の主婦。ガーデンデザイナーで園芸のプロ(なんか作家本人もそうらしいです)。小さな牧場(?)も経営していて馬が大好き。娘と殺された女子高生が同級生で、たまに馬の世話の手伝いに、殺された女子高生も来ていたので、よく知ってる間柄。善意の人間、として描かれているが、わたしは結構、こういった、何も真相を分かっていないのに、人が良くて誰の言うことも信じかけてしまうような、いわゆるNaiveな人は苦手。非常に人の言うことに影響されやすく、危ないというか、むしろ無意識の悪意、すら感じる。わたしは最初、この人が犯人で、そのことを自覚してないのでは、とさえ思った。
 ◆アンガス:ケイトの夫。常識人。
 ◆グレイス:ケイトとアンガスの娘。頭は空っぽなゆとり女子高生→大学生。彼女は、殺された女子高生を友だちだと思っている。
 ◆ロージー:殺された女子高生。とにかく親が最悪だということが中盤以降判明する。ロージーから見れば、グレイスは同級生だけど別に好きでも何でもないというか、むしろ嫌いな人種なのでほぼ友達とは思ってない。また、ケイトに対しても、善良な人だとは思っていたけれどそれ以上ではなく心を開いた覚えはない。ケイトのところに通っていたのは、馬に魅かれただけ。
 ◆ジョー:ロージーの母親。主婦。依存体質の頭のおかしい女性。ドM。
 ◆ニール:ロージーの父親。世間的には有名なTVリポーター。金持ち。しかし本当の顔はPCにごっそりエロ動画をため込んでいるド変態。そして支配体質でドS。
 ◆アレックス:庭師。ロージーと付き合ってた疑惑アリ。しかし、実際にはロージーはアレックスのことはたいして好きではなかった模様。単に読者やキャラをミスリードするためだけの役割と言えそう。
 とまあこんなキャラクターたちが出てきます。
 わたしは、この小説を読みながら、この映画のことを思い出していた。

 そうです。かの『The Lord of the Ring』で世界を熱くさせたPeter Jackson監督による『The Lovely Bones』です。この映画は、当時14歳か15歳のSaorise Ronanちゃんがウルトラ可愛い一方で、お話は超暗く、そして後味も超悪い作品で、わたしも観終って、なんだかしょんぼりというか悲しくなっちゃったことをよく覚えている。この映画では、殺された少女が、自分を殺した犯人を知らせようと、幽霊的存在ながら非常に積極的に、家族に何とかコンタクトを取ろうとするのだが、犯人が恐ろしく陰鬱というかいや~~な野郎で、最後は犯人に対しては明確な裁きが下るんので、その点ではすっきりしてざまあ、なんだけど、結局殺された少女の遺体は見つからず、すごいエンディングが待ってるんすよね……。あれはつらい終わり方だったなあ……
 ともあれ、映画『The Lovely Bones』は、殺された女の子がとても魅力的で、その点はとてもいいのだが、今回読んだ小説「誰がわたしを殺したか」においては、ほぼどのキャラクターにも共感は抱けず、しかもなーんだで終わってしまい、結論としてはあまり面白くなかったとしか言いようがありません。

 というわけで、短いですが結論。
 いや、結論も何も、もうさんざん書いた通り、Debbie Howell女史による小説『THE BONES OF YOU』はイマイチでした。なんかこの作家は、もともと電子書籍で自費出版してたところを注目されて商業デビューした人みたいですね。やっぱり、ちゃんとした編集者がついてないと、こうなっちゃうんじゃないかしら。そういう意味では、以前読んだ「アトランティス・ジーン」同様、素人作家ですな。以上。

↓ たしかWOWOWで放送したのを録画して持ってたはず……久しぶりにちょっと観たくなってきた。
ラブリーボーン [Blu-ray]
マーク・ウォールバーグ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2012-01-13







 

 はーーー。なんというか……超後味が悪い小説を読んでしまった。
 先日、わたしの愛用する電子書籍販売サイト「BOOK☆WALKER」にて還元率の高いフェアがあったので、何か面白そうな小説はねえかしら、と渉猟していた時、あ、これ、この前予告が公開されてた映画の原作じゃん? と思って買った作品がある。その映画は、主役にハーマイオニーでお馴染みの、そして来年の春には『Beauty and the Beast』のベルとしてきっとお馴染みになるであろうEmma Watsonちゃんを迎え、Tom Hanks氏も出るというので、へえ、と思ってチェックしていたのだが、どうやら原作小説があるということはそのとき知ったものの、愛する早川書房からとっくの昔に翻訳が出ていたことは知らなかった。なので、たまたま見かけたので、電子書籍で買って読み始めたわけである。
ザ・サークル
デイヴ エガーズ
早川書房
2015-01-29

 タイトルは『The Circle』。邦題もそのまま「ザ・サークル」である。とあるSNSをWeb上で提供しているIT巨大企業を舞台としたお話だ。こちらがその映画の予告編です。まだ日本語字幕はないっす。

 まずはごく簡単に物語を紹介しよう。ズバリ単純だ。ネタバレもあると思うので、気になる人は即刻立ち去るか、自己責任でお願いします。
 US西海岸――どうやらSan Franciscoのようだが――に、SNS「Circle」を運営する「Circle」という会社がある。主人公メイは大学時代の3つ年上の友人アニーが勤務する「Circle」に、コネで採用される。夢に見た素敵な会社に転職できてうれしくてたまらないメイ。そして、最初はカスタマーサポート部署に配属され、優秀な仕事ぶりで次第に認められていく。しかし、この会社及びSNSは、その巨大な資金力と技術力で、次々と新しいサービスを展開してゆき、ついにはそこら中にカメラを設置して誰でもどこでもライブ映像が見えるようになり、他にも、子供の誘拐防止のため、という名目で子供に電子チップを埋め込んだり、と暴走してゆき、とんでもない事態になっていく。そしてその中心に主人公メイが巻き込まれて(というか自ら進んで入り込んで)いき、狂気の事態に……てなお話である。
  わたしは、読みながら、そして読み終わった今も、実に腹立たしく気持ち悪い思いでいっぱいだ。はっきり言って、読まなきゃよかったとさえ思っている。実に不愉快な結末に、怒りの持って行きようがない。
 ただし、これは、確実に、作者による確信犯だ。作者は、あえて読者を怒らせ、不愉快にすることで警鐘を鳴らしていると解釈すべきだろう。間違いなく、この物語を肯定してほしいと思っていない。こうなるかもしれないから、SNSなんかで「繋がってる」とか言ってちゃ、ヤバいんじゃねえの? という問題提起として受け取るべきだろうと思う。 その問題提起には、わたしも全く同意なので、LINEのアカウントすら持っていない「繋がってない」わたしとしては、現代の世に溢れている「なんでも共有したがる」気味の悪い人々にはぜひ読んでもらいたいと思う作品であった。
 そういう意味で、主人公メイは、典型的な「意識高い系」女子そのものだ。気にするのは他人による評価だけであり、常に不安を抱え、深刻な精神疾患を患っているとしか思えない女子である。まず、彼女のプロフィールを簡単にまとめておこう。
 ◆出身はCiscoから車で2,3時間(?)ぐらい離れた、西海岸の田舎らしい。両親は健在だが、父はとある重病を患っている。元カレは地元でインテリア製造なんかをやっていて、それなりにデザインセンスはあるらしい。とっくに別れているが、両親と元カレは今でも仲がいいようだ。ちなみにメイは一人っ子。そして大学卒業後は、地元の電気水道局(?)で地味に働くも、周りのおっさんたちにうんざりしていて、「わたしが働く場所はここじゃない」と妄想していた。まあ、おっさんのわたしから言わせれば、そんな君の居場所なんてこの世のどこにもないよ、と申し上げておこう。
 ◆大学でアニーと出会う。アニーは金持ちの娘で思考も行動もブッ飛び系だが、妙に気が合う友として大学時代を共に過ごした。そしてメイは、何不自由ないアニーに対して、ずっと心の奥底で嫉妬している。そしてアニーが働く「Circle」に口利きしてもらって入社できることになり有頂天。「こここそあたしの働く場所よ」的な感じ。そしてその転職に両親も大喜び&鼻高々。これまたわたしに言わせれば、コネ採用で喜ばれてもなあ……と申し上げたい。
 ◆基本的に脊髄反射で生きている。貞操感覚ゼロ。好きでもない男と「淋しいから」余裕でSEXする。つーか、どこでもSEXする、ある意味性欲旺盛肉食女子。謎の男とトイレでヤッたり、元カレとはかつてグランドキャニオンの崖っぷちでヤッたこともある。まあ、確かにEmma Watsonちゃんとイイ感じになったら、愛はなくても断れねえっすね。なお、謎の男に関しては、登場3回目ぐらいでその正体の想像がつくのだが、物語的には最後の最後で正体が判明して、メイもその時初めて正体を知る。ちょっと考えればわかるので、全く驚きはなかったし、いまさら何やってんだコイツ、と思った。出てくるの遅すぎでもはや全て手遅れになって、最悪のエンディングで幕切れとなる。
 ◆基本的に自分がない。故に影響されやすい。実に愚か。この点がわたしは一番許せない。
 あーイカン。もうわたしはこういう女子が大っ嫌いなので、憎しみがこもってきてしまうのでこの辺にしておこう。たぶん、一番のポイントは、「想像力の欠如」だと思う。自らの行動がどのようなことをもたらすのか、がまるで意識に登らない(故に脊髄反射とわたしは評した)ので、考えが浅すぎるのが致命的だ。また、自分の狭い視野にしか思いがよらず、他者の気持ちや考えに想像が及ばない。この様相は、「自ら(の浅はかな考えで)閉じている」という意味においては、逆説的ではあるが、新種の自閉症と言っていいのではなかろうか。コミュニケーションが取れているようで、その実、全く成立していない。これは、現代のゆとりKIDSたちの特徴だと常々わたしは指摘しているが、経験のなさが問題ではなく、単に、「ごく近視眼的に浅~くしか考えてない」だけなんだと思う。そういう意味では、そこらにいっぱいいそうで実にリアル、ではあると思った。

 そして、何より恐ろしいのがCircleというSNS&会社そのものだ。わたしがゾッとしたというか、気持ちわりぃと思った点はいっぱいあるのだが、いくつか紹介しよう。
 ◆超ナーバスな気持ち悪い人々
 たぶん、一番最初の出来事は、メイがとあるコミュニティーからの誘いを放置していたところ、このコミュ主が、オレ、嫌われてるのかなあ、どう思う? もう人間不信だよ……みたいなクレームをメイの上司に突き付け、上司立会いの下で、メイ、君はひどいんじゃないか? いえいえ、ごめんなさい、そんなつもりはなかったの、と仲直りさせてそれをSNS上で和解宣言させる出来事だろう。回答を強要する「お優しい」世界。つねに100を望む、ほんの少しの拒絶も耐えられない、実にもろいハート。最悪ですね、ホント気持ち悪い。ちなみに、この回答の強要と、少数意見の排除はどんどんエスカレートしていきます。
 ◆「透明化」という名のプライバシーの放棄
 メイは、シーカヤックが好きなのだが、会社から「なんでその経験をみんなと共有しないの?体が不自由でカヤックなんてできない人にその体験を伝えないのは、むしろそういった体が不自由な人の楽しむ権利を奪ってると言えないか?そのために当社が開発した超高性能小型カメラがあるじゃないか!どうして使わないんだ!?」と言われ、ええ、そうですね、わたしが間違ってました、次からは必ずカメラを身に着けていきます、と約束しちゃう。
 さらに、メイは黙ってカヤックを借りて海に出て、帰ってきたところで全てがそのボート屋に設置されていたカメラで見られていたために、(無断借用で)逮捕されそうになる。そして翌日、会社でつるし上げられる。
 「どうしてそんなことをしたんだ」
 「……常連だし、誰も見てないからいいかなって……」
 「じゃあ、君はカメラにすべて写っていると知っていたら、あんなことはしなかったかい?」
 「……はい、そうですね、しなかったと思います」
 「ほらみろ、当社のカメラは犯罪防止につながるんだよ!」
 「そうですね。素晴らしいと思います。じゃあ、もうわたし、24時間カメラを身に着けます!」
 という展開になる。ここに至るには、既に政治家がどんどん24時間すべてを公開し始めたという背景もあって、「秘密は嘘。分かち合いは思いやり。プライバシーは盗み」と大勢の前で宣言する羽目になってしまう。この宣言は、実際に物語を読まないとピンと来ないかもしれないけれど、とにかく恐ろしい事態になり、わたしはこの時点で、本書を読むのをやめようとさえ思った。しかもメイは、その時本気でそう思っているからタチが悪いというか愚かしい。
 結局、物語はどんどんエスカレートして、完全に「プライバシーは悪」という風潮になっていく。風潮、という言葉じゃあ生ぬるいな、常識、あるいは当たり前のこと、というニュアンスかな。これはもはや、完全に「洗脳」と言っていいだろう。たとえば、メイはうっかり両親のエッチ現場を撮影してしまうのだが、周りのみんなは、「いやあ、エッチは誰でもする当たり前の行為なんだから、恥ずかしいことじゃないよ!」とあっさり丸め込まれて、確かにそうね、とその映像を普通に公開しちゃったりもする。極めてタチが悪いことに、耳障りのいい言葉ばかリで、明確に反論・反証・論破するためには、かなり高度な頭脳が必要な点であろうと思う。完全に誘導尋問であり、回答に気を付けないと、主人公メイのように、誰しも「アッハイ、そうすね」と答えてしまう危険性は極めて高いと言えるかもしれない。
 そしてCircleの会員数は10億を超え、世界中で、Circleのカメラで覗けない場所がほぼなくなっていく。そして極め付けが、メイの元カレ(彼は物語の中でほとんど唯一まともな考えで、Circleの危険性を訴え続けていたが、もはやどうにもならんと絶望し、山奥に隠棲していた)を探しだそう、いえーい的なイベントの標的とされてしまうくだりだ。そしてそのイベントはとんでもない悲劇に終わるのだが、メイは全く反省しないし危険性も認識しない。むしろ、Circleを拒否した元カレの罪だ、とさえ思うようになる。もう完全に狂ってますな。

 わたしは、この愚かな人間(たち)が最後はどんなひどい目に合うのか、出来れば自殺か殺されるか、そういう悲劇を期待することだけをモチベーションに最後まで読んでみたわけだが、ラストはもう本当に気分の悪い、いやーな終わり方であった。ホント最悪でした。
 ただ、幸いなことに、この物語のようなことが、実際に起こるかというと、おそらく現状では技術的な問題と法的な問題の両面から、NOであると言えそうだ。
 まず、簡単な技術面で言うと、おそらくカメラについてはバッテリーの問題が現状の技術では解決不能だろうと思う。その点の説明は一切ない。寝るときに充電していると仮定しても(そんな記述はないけど)、ペンダントサイズで、24時間365日駆動し、HD動画を通信し続けられる小型カメラは無理だ。そして、通信インフラの問題もあるだろうし(世界の10億台の高画質24時間365日ストリーミングを支えることはどう考えても無理では?自前衛星をもってしてもとても無理だと思う)、そして膨大なデータを処理するプロセッサ及びサーバー容量も、非現実的なのではないかと思う。ただ、これはわたしが無知なだけで、実は実現できるのかもしれないな。
 あと、ソフトウェア的な詳しい話は一切出てこないので、AIについては全く言及がないのも、物語を若干ライトなものにしているようにも思う。おそらく作中で描かれる各種サービスは、高度なAIに支えられているものと想像できるが、おそらくはそういった部分は全く人々に意識されることがないために、何も書かれていないんだろうと思う。でも、どうだろう、本作で描かれている各種サービスは実現できるのかなあ。よく分からんです。
 それに、そもそも完全実名でしか参加できないCircleというSNSサービスも、まあ、ちょっと無理でしょうなあ。どうやって実名&本人確認するのか、書いてあったかどうか、もうよく覚えてません。
 そして法的問題で言うと、これはまずありえなかろうと思う。元カレに起きた悲劇は、たぶん簡単に犯罪行為として刑事告発可能であろうし、裁判となれば有罪間違いなしではなかろうか。そしてプライバシーの問題でも、たぶん数多くの違法行為があるし、そもそもCircleの収入源である広告事業も、たぶん違法行為を前提にしていると言えそうだ。あくまで、現状の法においては、だけど。
 わたしは、Googleのサービスを様々に享受しているし、実際便利だと思ってる。けれど、ふと訪れたWebサイトで、勝手に自分の住んでいる街のマンションの広告が表示されたりするのは、正直ぞっとするし、amazonで「あなたにお勧め!」とか言われると、うるせーよ、と嫌悪感を感じてしまう。しかし、残念ながらというか恐ろしいというか、そう思う人間はどうやら圧倒的に少数派で、むしろ普通の人はそれを便利で有り難いと思ってさえいる。たぶん、この、わたしによるどうでもいいBlogにも、そういう機能はついているので、お前が言うなと怒られそうだけれど、実際、得体のしれない不気味な世の中ですわな。
 これはわたしとしては、ほぼ確信に近いのだが、この物語で描かれたような世界が現実のものとなったとしたら、おそらく、わたしはもう生きていたくないと願うと思う。もはやそんな世には何の未練もないし。絶望とともに死ぬだろうな。ちょっと想像すれば、それがどれだけ恐ろしいか、すぐわかることだと思うのだが、残念ながらメイにはその想像力は備わっていなかった。まさしく全体主義。物語の中で、メイたちは「完全な民主主義、全員参加の真の民主主義が実現した」と浮かれているのだが、ホント、狂ってるとしか言いようがない。そんな世には、わたしのようなおっさんに生きる場所はねえですよ。死ぬしかないでしょうな、もはや。NO Place for Old Man、ですよ。
 そして物語のエンディングで描かれた世界は、まさしくわたしが生きていない世だろう。まったくもってソーシャル乙。あっしはお先に失礼しまーす、とでもほざいて、さっさとわたしはあの世へ行くだろうな、と思った。まあ、どんな映画になるか、非常に楽しみです。

 というわけで、まとまらないしもう長いので結論。
 Dave Eggers氏による小説『The Circle』は、実に最悪な世界を描いた恐ろしい物語であった。もちろん、Eggers氏は、この物語を、警鐘として描いているはずだろうと思う。でも、ここまで極端ではないにしても、確実に世界はこの物語で描かれている世界に近づいているわけで、実にゾッとしますな。残念ながら、Eggers氏にも、わたしにも、この流れを変えることは出来ない。もはや流されるだけ、かもしれない。まあ、長生きはしたくないですな。この先いいことがあるとは、残念ながら思えないすね。たぶんこの小説は、読み終わって怒り狂うのが正しいというか、Eggers氏の望むリアクションだと思います。以上。

↓ この著者が、他にどんな作品を書いているのか、少しだけ興味があります。おっと?この作品もTom Hanks氏主演で映画化されてるんすね。読んでみようかしら……。
王様のためのホログラム (早川書房)
デイヴ エガーズ
早川書房
2016-12-31

↓こちらが予告です。なんか面白そうじゃん。これは観たいかも。

 先日、Simon Urbanという作家の『PLAN D』という小説を読んで、まあすげえ読みにくいし内容もイマイチだなあ……と思ったことをここで書いたが、同時に、電子書籍で買ったのが、本書『The First Fifteen Lives of Harry August』(邦題:ハリー・オーガスト、15回目の人生)という小説である。結論から言うと、こちらは超・面白くて、読んでいる間中ずっとドキドキし、ハラハラし、大変興奮したわけであります。いやー、この小説は面白い!!!
ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA / 角川書店
2016-08-25

 この小説は、いわゆるリプレイものである。『僕だけがいない街』にも通じるような、輪廻転生的な、SF界ではある意味使い古されたモチーフのアレである。死んでも、それまでの記憶を保持したまま、もう一回生まれ変わってやり直し、的な。けど、一つ特徴的なのは、一度死んで、生まれ変わると、まさしく自分の誕生からやり直し、リプレイになる点で、生まれたばかりの段階では当然前世の記憶はなくて、3歳ぐらいからだんだん思い出し始めるという設定になっている。
 主人公「ハリー・オーガスト」は1919年、北イングランドの辺鄙なところの駅のトイレで産み落とされ、母はその時の出産状況がひどくて失血死(?)してしまう。背景としては、母はとある上流階級のメイドだったが、そこの主人にレイプされて主人公を身ごもり、当時の社会的通念からしてスキャンダルなわけで、お屋敷を追い出され、一人孤独に出産、という感じである。
 で、その後、そのお屋敷に仕える夫婦が養子として養ってくれ、大人になる。で、最初の人生は普通に、困難はあっても、まあある程度の幸せを得て1980年代後半に死ぬと。で、気が付くともう一度生まれていて、2回目の、同じ人生を送りつつあることに気が付き、10代になる前から精神がおかしいと周りからみなされてしまって、精神病院に送られ、10代前半で自殺に至る。
 そして3回目の人生は、ようやく自分の謎に気付き始めて、おとなしく平穏に暮らすと。宗教に回答を求めて世界を放浪したりもする。そして未来を知っているのでそれなりに財もなし、エンジニアとして知識も増やしていく。そしてまた死を迎える。
 で、4回目の人生が最初の転機になる。1回目3回目の人生では、ともに自分は70歳に近くなるとがんにかかって死ぬことになっていたので、医者になって4回目の人生を送るのだが(3回目の人生でいかなる宗教=いかなる神も答えをくれなかったので、今回は医学生理学に答えを見つけようともした)、とあるひどい目に遭うことで、どうやら自分と同じく、何度も死んでは生き返る、を繰り返している人々がこの世にはいて、どうやらそういった人々が「クロノス・クラブ」なる組織を設立・運営しているらしいことを知る。
 この「クロノス・クラブ」が出てきてから、俄然物語は面白くなってくる。言葉では説明するのが非常に難しいのだが、メンバーは、「伝言ゲーム」で過去や未来と情報のやり取りができるんだな。つまり、主人公ハリーは1919年生まれで、場合によっては21世紀初めまで生きるわけだが、例えば2001年以降に死ぬとすると、911を体験しているわけだ。で、その記憶を再度生まれ変わった時に、たとえば1930年ぐらいに、その時80歳(=つまり1850年生まれ)になっている同類のクラブメンバーAさんに、「2001年のNYでは大変なことが起きるんだよ」と伝えると、そのAさんが死んでまた生まれ変わった1850年に、その時代にもう死にかかってる先輩メンバーBさんに同じことを伝えられるわけだ。で、Bさんはまた80年ぐらい前の自分の生まれた頃に戻って、1770年頃の同類に、「いやー、2001年のNYは大変な目に遭うらしいぞ」と伝えられるのです。同じように、過去からも伝言が来るというわけです。
 で、クラブの掟は、「歴史に干渉しないこと」。これは、遠い昔に(だっけ?)、歴史を変えようとした奴がいて、一度世界が破滅しかかったことがあるかららしい。要するに、未来の科学知識なんかが入ってきてしまうと、人はそれをどんどん吸収して、歴史が加速してしまうわけだ。便利なものを使わないわけないからなあ、その辺は何となく、理解できるような気がする。作中でも、1970年代にもう今の我々が使っているようなPCや携帯が発達してしまう世界が出現してしまうけれど、まあ、一度便利なものを使ってしまったらもう、取り返しがつかないというか、決してよりよい世界になるとは考えられないようには感じますな。直感的に。
 なので、クラブは歴史に干渉せず、が基本で、主人公ハリーの2回目の人生のように、事情が分かっていないで混乱している子供を探して保護すること、が一番のメインミッションになっているらしい。もちろん未来が分かっているメンバーは金を稼ぐのは簡単なので、それなりに金を持っている場合が多く、そういった財を成したメンバーからの寄付でクラブは運営されているそうだ。
 こういった、主人公のような人々は、自らを「カーラチャクラ」あるいは「ウロボラン」と呼んでいる。巻末の大森望氏の解説によると、「カーラチャクラ」とはサンスクリット語で「時の輪」を表す仏教用語だそうだ。主人公ハリーが、 自らの謎の答えを求めて様々な宗教の修行・勉強をするのも、チラッとしか語れないけれど読んでいてとても面白いポイントだ。
 2回目の人生は、自らの謎を受け止められず自殺、3回目の人生は宗教・神に答えを求めるも、キリスト教→イスラム教→ユダヤ教→ヒンドゥー教→仏教と渡り歩いてもダメ。4回目の人生では医学を学んで医者になっても、途中で大変な事態に遭い、結末としては自殺。ただし、クロノス・クラブとの接触に成功。6回目の人生では物理学の勉強も始める。みたいな感じで、なんというか、かなり真面目な生き様がわたしは読んでいて大変好印象を持った。
 そしてその6回目の人生では、23歳までに最初の博士号を取り、若くして「マンハッタン計画」にスカウトされるもその誘いを断り(なにをどうしようと原爆は完成してしまうし投下れてしまう。おまけに施設に監禁されるし、当時の放射線知識は十分でなく管理も杜撰なので断った)、ケンブリッジの専任講師を務めていたのだが、そこでのヴィンセントという一人の男との出会いが、その後15回目までの人生に大きく影響することになる。
 ヴィンセントも、「カーラチャクラ」であり、そしてクラブの「何もしない」方針を嫌悪していて、自ら未来を変えようとする男で、このヴィンセントと主人公ハリーの、何度も人生を繰り返しての闘争(?)が、この物語の主軸だ。まあ、ヴィンセントの野望は、正確に言うと未来を変えることでは全然なく、「量子ミラー」なるものを作って万物の謎を「自分が生きているうちに」解きたい、その結果未来が変わってもどうでもいい、というもので、実際、主人公ハリーも、一時ガッツリ協力したりもする。ヴィンセントとハリーとの、推定数百年、8人生分(9かも?)をかけた関係は、非常に読みごたえバッチリだ。唯一の親友であり、不倶戴天の敵。一方が善で他方が悪、というわけでもない。純粋に、「互に相容れない」二人。共に天を擁くことはない。こういうある種の冷徹な関係性はやっぱり鉄板の面白さですね。
 また、サイドで語られる、主人公ハリーと、養父・実父との関係も、非常に冷徹ではあるけれど、少なくともわたしには感覚的に非常に共感できるもので、非常に大きなポイントであるように思えた。何度人生を繰り返しても、結局許せないものは許せない。そして、やがてもうどうでもいいことになってしまう。何度も同じ結果になる虚しさを抱えて、人は数百年生きるとしたら、もうそれは、いわゆる無間地獄なのではなかろうか? そんな長大な時を過ごす主人公ハリーの心中は、とてもわれわれ「1度きりの人生」しか送れない普通人には、到底想像も及ばないものだろうと思う。陳腐な言葉だけれど、人生ままならねえもんですな。ホントに。
 
 というわけで、書き始めると止まらないので、もうこの辺にしておくが、とにかく、本作は設定が非常にしっかりしており、破たんもなく、また、時系列が若干飛び飛びの記述になっているけれども、かと言って混乱することなく読める構成になっていて、非常にレベルが高い作品だと思う。主人公ハリーのキャラ描写も非常にいい。生き過ぎた主人公が、数百年以上生きてきたことで、何を得て、何を失ったのか。哲学的でもあって、わたしとしては読後感も非常に良かったと思う。カタルシスという意味でのすっきり感も、ラストは非常に満足である。
 最後に、作家について記しておこう。これは巻末の大森望氏の解説を読んでもらえば十分だろう。わたしもインターネッツという銀河に捜索の手を放ってみて、だいたい同じことを知ったが、なんと著者であるクレア・ノース氏は、27歳の女性である。なんでも、14歳でライトノベルデビューをしていて、既に結構作品を発表している作家さんで、今回は名前を変えて本作の執筆にあたったそうで、それはライトノベル作家の名前では、その名前だけで作品を正当に評価されないかも、という思いがあったそうだ。本人のWebサイトのFAQの3番目にも書いてありますな。なるほど、編集者からの助言もあったわけか。大したもんだなあ、というのはおっさんとしてのわたしの感想だけれど、この作家は本物だと思います。これは本物の才能だとわたしとしては断言したい。すげえや。

 というわけで、結論。
 クレア・ノースなる女性作家による『The First Fifteen Lives of Harry August』は、大傑作である。これは超おススメだ。映像化される可能性大だろうけど、まずは原作をきっちり読んでおいた方がいいと思います。間違いなく楽しめる、と思う。そしてこの著者の他の作品も読んでみたいですな。特に、2002年の14歳当時のデビュー作(?)『Mirror Dreams』は日本語訳もちゃんと出てたみたいですな。あーこれは読んでみたい!! 以上。

↓ これっすね。当然絶版なわけです。すげえ気になるわ……。
ミラードリームス
キャサリン ウエブ
ソニーマガジンズ
2003-02

ミラードリームス〈2〉目覚めのとき
キャサリン ウエブ
ソニーマガジンズ
2004-04

↓そしてこちらが最新作みたいですな。あらすじは面白そうです。誰の記憶にも残らない――両親でさえ存在を忘れた――少女、のお話らしいですな。

 

 先日、わたしが愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて大きなフェアがあり、買った電子書籍の値段の40~50%をコインバックする的なフェア(会員ランクによって返還率はまちまち)だったので、よーし、ごっそり買ってやるぜ!! と鼻息荒く、品定めをしていたわけだが、そういう時は普段はちょっと高くて気が引けるようなハードカバー単行本や、漫画のシリーズ一気買いなどをするのが、大人のたしなみである。ま、洋服バーゲンの時なんかも、普段手が出ない高いモノを買う、のが定石ですな。
 そんな中、わたしが大好きな早川書房から出ている翻訳モノで、なにか目ぼしいものはないかしら……と探していて目に留まったのが、ドイツミステリーの『プランD』という作品である。
プランD
ジーモン・ウルバン
早川書房
2016-06-09

 今年の初めに、「壁」によって分断されたベルリンを舞台とした映画『BRIDGE OF SPIES』のレビューをこのBlogで書いた時にも記したが、わたしは大学でドイツ語を専攻していて、おまけに1989年当時まさしく大学生だったわけで、「ベルリンの壁」の崩壊はリアルタイムで体験した世代だ。あの時は、当時わたしの周りにいた西ドイツ人の教授(おっさん×2+おばちゃん)も、スイス人の非常勤講師(綺麗な若い女子)も、オーストリア人の若い講師(冴えないあんちゃん)も、ドイツ語を母国語とするみんなは揃って、「東西統合はあり得ない」と、壁崩壊の直前まで断言していた。わたしはもう、この流れは止まらない、統合はあり得ると主張する一団に属して、何度も西ドイツ人たちと論争をしたのだが、戦車で人民をひき殺すようなどっかの国のような強硬手段に出ない限り、統合は止められない、と我々が主張しても、西ドイツ人(及びスイス人・オーストリア人)は、いや、東はまさしくそういうことをしかねない国だ、と結構ひどいことを言っていたことを覚えている。懐かしいというか、あれからもう26年、あっという間のような、遠い昔のような、わたし個人としてはなんだか妙な感慨がある。
 本作は、あの「統合」の後、再び「東」が門を閉じ、統合はなされなかったというIF世界を舞台としている。あらすじは、もうめんどくさいから、早川書房のWebサイトから勝手にパクって貼っておくとしよう。
1990年に東西ドイツが統一されなかった世界。そこでは東ドイツは〈再生〉という改革を経て、社会主義国として生き残っていた。2011年10月、東ベルリンの郊外で西側出身の教授が殺される。その手口は廃止されたはずの秘密警察のものだった。おりから経済的窮地を脱する決め手となる東西交渉が始まろうとしている。交渉の障害になることを怖れ、事件を速やかに解決すべく東西合同の捜査が開始される。だが捜査にあたる刑事の前には、不可解な壁が立ちはだかった……あり得たかもしれない世界を舞台に描く、異色のサスペンス。
 というわけで、当時のことを鮮明に覚えているし、Deutsche Demokratishe Republik=ドイツ民主共和国、略してDDR(デーデーエル)、通称「東ドイツ」の当時の事情を、おそらく普通の人よりも知っているわたしとしては、このあらすじを読んで、こ、これは面白そうだ!! と思い、購入に至ったわけである。全然関係ないけれど、先日TVで池上彰氏が、「国名に<民主>と入っている国は、たいてい民主的な国家じゃない」的なことを言っていて、その時わたしはまさしくDDRのことを思い出した。
 で、さっそく読んだ。
 ……のだが……これがまた超・読みにくい。この読みにくさは、主に3つの点から生じている。
 1)そもそもの文章が癖がありすぎ。
 これは、翻訳のせいではない、と言えるもので、おそらく原文がかなり癖があるものなんだと思う。日本語訳は、ある意味直訳になっていて、逆に元のドイツ語の構文が透けて見えるような翻訳になっている。なので、おそらく原文を読みながら、参考書としてこの翻訳を手元において確認しながら読む、といった、ドイツ文学科の学生には大変重宝する翻訳だと思うが、実際、単なる日本人読書好きとしてこの作品を読むと、まあとにかく読みにくい。
 文章的に、一つの名詞や動詞につながる形容詞的・副詞的な関係代名詞がすっごく数が多くて、つぎつぎつ積み重なっていて、一つの文章が、単純なのに妙に長い。これはもう、日本語には非常にしにくいというのは容易に想像がつく。ドイツ語として想像すると、意外とこういった関係代名詞や分詞構造の修飾語が連なるのは、普通によく見かけるのだが、それにしても長ったらしいし、はっきり言って読みにくいし、ズバリ、ストーリー展開を阻害していて、素人っぽいようにも感じる。わたしが専攻して、卒論と修論を書いた作家でHeinlich von Kleistという18世紀末~19世紀初頭の作家がいて、そのKleistという作家も、とにかく文章が長くて読みにくいことで、ドイツ文学を学んだ人ならおなじみなのだが、なんだかわたしは懐かしくKleistのことを思い出した。似てるとは言えないけど……読みにくいと言う点で。
 2)とにかく、固有名詞が分からねえ。
 これはどういうことかというと、商品・製品・地名・人名といった固有名詞が非常に多くて、人なんだかモノなんだかさっぱりわからないのだ。説明もほぼない。分からないまま読み進めていくと、ああ、なんだ、これはスマートフォンの商品名か、とハタと分かったりするような感じで、とにかく分からなくてイライラする。親切な翻訳なら、訳注を入れてくれることだろうと思うが、本書には一切そういった親切な訳注は付されていない。まあ、入れたら入れたでうるさすぎるのかな。また、実在の人物なんかも数多く登場するわけで、「分かっている人には分かっている」という暗黙の了解のように、訳注は入れなかったのだろう。ひょっとしたら、著者から訳注は付けるなという指示もあった可能性がある。
 ひとつ面白かったのが、現在の「ドイツ」のアスリートには、「東」出身の選手が結構いて(※もう若い世代は統一ドイツ出身ばかりなので、40代前半ぐらいの引退した選手に多いか)、例えばわたしの大好きな自転車ロードレースでも90年代終わりから2000年代に活躍し、1997年のツール・ド・フランスで総合優勝したJan Ulrich選手なんかも「東」出身なわけだが、本作には何度か名前だけ、サッカーのMichael Ballack選手の名前が出てくる。彼も「東」出身で、本作の世界では、Ballack選手はどうやら「東」の人民らしい。本作は2011年の刊行で、物語も同じく2011年なのだが、本作世界では2006年のドイツ・ワールドカップは開催されたんすかね。なんか一言ぐらい言及してほしかったな。
 しかし、それにしても、だ。とにかくわからんわけで、読者としてはイライラするし、非常にストレスだ。ほんと、最後まで読むには相当の気合が必要だと思う。わたしも、先日このBlogで書いたけれど、とにかく読了に時間がかかってしまった。途中で投げ出さなかっただけ、自分的には頑張ったと言えるかも。
 3)主人公の内面描写が多くて物語が進まねえ!
 読みにくさの最後、これは物語自体の問題だ。ズバリ、ストーリーが進まない。これがやっぱり一番キツイ! もちろんそれは、わざとであり、DDRの何もかもが霧の中、的な状況を反映してのことであるので(好意的に言えば、です)、文句を言う筋合いはないのだが、とにかくもう、イライラである。ある意味、Kafkaの作品のような不条理感が漂っていて、わたしはなんだか『Der Prozess』や『Das Schloss』のことを懐かしく思い出した。
 しかし、主人公の内面は、Kafkaのような文学的なものではなく、かなり多くを占めるのが、別れた彼女に対する未練たらしい想いだ。しかも主人公は、太鼓腹で髪もヤバくなりつつある56歳の警部である。そんなおっさんがずっと、別れた彼女への未練を抱きながら、エロ妄想ばかりしているわけで、正直、わたしはもう何度投げ出しそうになったことか……。そして描写が現実なのか警部の妄想なのか判別しにくい部分もあって、肝心の謎解きも、とてもついて行くのが難しい。正直に告白すると、わたしは電子書籍で読んだので、今、自分がどの辺を読んでいるのかの意識がなく、あとどのくらいで終わるのかも全く意識せず読んでいたために、ラストの部分を読んでページをめくったら、ここで終わり、と最終ページだったことに唖然としたほどだ。アレッ!? 終わり? ここで? うっそーーー!!? と、ホントにびっくりした。ちなみにラストは、森の中で拘束された警部がおしっこを我慢できなくて漏らしてしまって気を失うところで終了である。マジかよ……もうホント何なのこの物語!! と思うのもやむなしと、お許しいただきたい。

 というわけで、わたしにとっては非常に長くつらい読書だったわけだが、上記のようなわたしの指摘する問題点は、訳者あとがきでも触れられていて、どうやらこの作品を読んだ人なら誰しもが感じるものらしい。
 が、訳者は言う。
 「この(わたしが論ったような)批評は少し的外れの感がある」
 オイオイ……マジかよ……的外れと言われても……そう感じちゃったんだからしょうがないじゃない。たしかに、訳者の言う通り、「たぐいまれな空想力、創造力」であることは、まったく同意したいけれど、エンタテインメントとしてはどうかなあ……と、誰でも感じるのではなかろうか。まあ、訳者に対しては別に何も言いたいことはないので、どうでもいいのだが、訳者の言う「知識のない読者にも十分楽しめる作品に仕上がっている」かどうかは、わたしとしては相当怪しいと思うな。

 あーもう長いので、最後に作家であるSimon Urban氏について書いて終わりにします。でも、調べてみても、あまり情報がないというか、本作『PLAN D』の著者である以外の情報はあまりないすね。こんな方みたいです。

 どうやら本作が初めてのメジャー作品のようで、1975年西ドイツ生まれの現在41歳か。ドイツのナンバーワン(?)週刊新聞「Die ZEIT(=英語で言うとThe TIME)」のオンライン版でエッセイかな、なんか記事の連載を持ってるみたいですな。まだ小説ではほとんど作品はないみたいすね。今後の活躍はどうなんでしょうな……。まあ、まだまだ若いし、書き切る筆力は本物だと思うので、もっと、なんというか、物語がダイナミックに動く作品をお願いしたいと思います。まあ、単なるわたしの好みですけど。

 というわけで、結論。
 ドイツミステリーの『PLAN D』という作品を衝動買いして読んでみたところ、ひじょーーーに読みにくく、実際難しい作品であった。わたしとしては読了までに大変時間がかかってしまったわけで、全否定はしたくないけれど、この作品が面白かったかどうかで言うなら、正直イマイチ、としか言いようがない。興味深い作品であることは間違いないのだが……interessant ではあっても、Das macht mir Spassではなかったすね。ま、次回作にも期待します。以上。

↓ 続いてこちらを読んでいます。こちらは大変読みやすく、そしてかなり面白い!!
ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA / 角川書店
2016-08-25



 

 先日、なんか面白そうな本はねえかなあ、と、常日頃愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERを何の気なしに渉猟していたわたしだが、海外文芸コーナーの「人気順」の上位に、早川書房から発売されているとある作品が目についた。なんでも、かの『The Martian』(邦題:火星の人)と同様に、いわゆる「セルフ・パブリッシング」でAmazon Kindleにて自費出版され、大いに売れた作品らしい。要するに、ド素人が初めて書いたインディーズ作品というわけである。
 なので、普段のわたしなら完全スルーなのだが、『The Martian』の面白さはもう全世界が認めており、わたしも映画しか見ていないがとても興奮したので、本作に対しても、ふーん? と思って、とりあえずあらすじを読んでみたところ、非常にトンデモ科学SF的な臭いがプンプンするものだった。
 というわけで、どうしようかしら、と、19秒ほど悩んだ後、まあ、読んでみなきゃ始まらんわな、と、まあ、じゃあ買ってみるか、と購入し、読んでみた。 そして先ほど読み終わったわけだが、結論から言うと、想像以上のトンデモ・ストーリーで、こりゃあ、またどうせ映像化されるんだろうけど、映像化には相当金がかかるぞ……とどうでもいい心配をするに至ったのである。ズバリ、スケールは大きいが、お話としてはかなり……なんというか、ラノベですな、これは。
 タイトルは『The Atlantis Gene』。日本語タイトルは「第二進化 アトランティス・ジーン1」という作品である。「1」とついていることから想像できるように、どうやら本作は、メリケン国ではお約束の「三部作」になっているそうで、その第1巻というわけである。


 著者のA.G.Riddle氏については、ほとんど情報がない。本人のWebサイトによると、フィクションを書くんだ―!! という自身の真の情熱を追及するために会社を辞める前は10年ほどネット企業で働いていたらしい。現在は何歳がよくわからないけど、まあ、まだ30代ぐらいとお若いんでしょうな。
 要するに、日本でいうとラノベ作家になるんだ―的な情熱に駆られて念願のデビューを果たした的なサクセスストーリーで、実際、そのデビュー作である『The Atlantis Gene』は、キャラクターこそおっさんだけれど、物語の設定や流れはもう完全にラノベである。
 なので、読んでいても、かなりの無茶や妙なロマンスが入ってきたり、場面転換や異常に長い説明セリフなど、正直なところかなり苦笑せざるを得ない部分が多い。たぶん誰でもそう思うと思う。
 だが、それでも読ませる熱量は高く、氏が自ら言う情熱なるものは十分に感じられ、その点は非常に好ましいので、この作品は比較的若者向けと思った方がいいような気がする。そのノリについてこれるかどうか、が、本作の評価を分かつ指標のような気がした。

 こんな風に、本人のTweetでも熱心に営業しているし、どうやらBookTrailerも製作中のようですな。で、どんなお話かというと、もうまとめるのが面倒くさいので、早川書房の公式サイトからあらすじを勝手にパクっておこう。こんなお話である。

CBSフィルムズ映画化予定! 人類進化の謎を巡るSFスリラー三部作、開幕

人類進化の謎を巡るSFスリラー三部作、開幕!  南極の氷中で発見された、ナチス潜水艦と「アトランティス」の遺跡。それが事件の始まりだった……。対テロ組織工作員デヴィッドは、世界的企業を隠れ蓑にしたテロ組織イマリを調査するうちに、疫病で人口を激減させ、人類の次の進化を強制的に引き起こそうとする計画の存在を知る。何者かから送られた暗号には南極、ジブラルタル、ロズウェルの地名が記されていたが――個人出版発、驚異のSFベストセラー三部作開幕!

 どうですか。かなりいい感じに中二病が発症してますね。本作では、9.11すらも謎組織によるもので、主人公は9.11で恋人を亡くしている設定で、そこから対テロ組織「クロックタワー」の工作員になったらしいのだが、この「クロックタワー」の設定が、非常に甘いというか半端で、若干なんだそりゃ感はある。しかし、本筋は、謎の「アトランティス遺伝子」の方なので、その点は別にどうでもいいかもしれない。かなり長大な歴史の背後に常にあったという脅威と、それに対抗しようとしていた勢力の長年の研究なんかも出てきて、さらにはナチスドイツの陰謀も混ざり、とにかくまあ、一言でいえば中二病的妄想SFである。正直、科学的、とはちっとも思えないので、SFというよりファンタジーと分類すべきかもしれないが、作中ではトンデモ理論がきちんと設定されているので、その点ではれっきとしたSFと呼んでいいと思う。
 また、後半、主人公とヒロインが逃げ込んだチベット奥地の僧院で入手する「日記」が、ヒロインの出生の秘密や敵役の正体に迫る物語のカギとなるのだが、これがまた随分と時代がかったラブロマンスとなる。読んでいるうちは、一体この日記に書かれていることがどうつながるんだろう、と思うわけで、それが終盤で、な、なんだってーーー!? そういうことなの!? というかなりあっと驚くというか唖然とする展開は、物語の手法としては古典的すぎるし説明ばっかりだけど、十分な説得力はあって、実はこの作品は結構面白いんじゃないか? と最終的には思うに至った。
 冒頭に書いた通り、本作は三部作の第1作目なので、本作のエンディングは、極めてハリウッド的な、「ここで終わりかよ!?」というのと同時に、「な、なにーーー!?」という終わり方で締めくくられる。
 だからまあ、この先が気になる人は続きを読んでね、ということになるし、そもそも本作は三部作全体として評価するのが正しいのだろう。わたしとしては、気にはなる、けれど、すぐにもう興奮のうちに次を買うぜ、とまではいかないかな、というのが現在の結論である。

 というわけで、結論。
 いや、もう結論は上に書いた通りです。本作『The Atlantis Gen』は、かなりのトンデモストーリーだけど、確かな熱量は間違いなく存在している。少なくとも、上記に記したあらすじを読んで、へえ? と思った方には、十分楽しめると思う。わたしも散々なことは言ったがそれなりに楽しめた。しかし、あらすじを読んでピンとこない方には、最後までピンと来ないと思います。しかし……冒頭にも書いたけれど、これを映像化するのは相当な金がかかるぞ……スケールはかなり壮大です。以上。

↓ こちらが2作目です。3作目はまだ日本語訳が発売されてないみたいですな。


 はあ……もうページをめくる手が止まらなくて……読み終わってしまった……次がもう楽しみすぎてつらい……。何の話かって? そんなの『Mr. Mercedes』の話に決まってますよ。木曜日の夜から、ちょっとずつちょっとずつ、と思いながら読んでいたのに、昨日の火曜日の夜、読み終わってしまった……。以下、ネタバレがかなりあると思うので、ネタバレが絶対に困る人は、今すぐ立ち去ってください。サーセン。いや、だってネタバレせずに書けっこないすよ。
ミスター・メルセデス 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-08-22

ミスター・メルセデス 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-08-22

 というわけで、わたしが最も好きな作家であるStephen King氏による、日本語で読める最新刊、『ミスター・メルセデス』の下巻も読み終わってしまった。結論から言うと、もちろん面白くて最高だったものの、正直に告白するが、『11/22/63』的なラストの感動(?)のようなものだったり、『Under the DOME』的なラストの超すっきり感(?)のようなものは若干薄くはあった。
 まあ、それもある意味当然の話で、今回の作品は今までよりもスピーディーな展開だし(時間経過も短い)、敵キャラも意外と弱く、主人公は孤独ではなく味方がいるので、いつものような、一人で戦う主人公が、これでもかという超絶ピンチにズタボロになるわけではなかった。いつものKing作品の主人公は、もう本当に読んでいてつらいほど、心身ともにズタボロになり、もうやめたげてーー!! と言いたくなるくらいにひどい目に遭うので、その点では、Kingファンには不足を感じても、普通のミステリー愛好家には標準的だったのかもしれない。良くわからないけど。まあ、その分、サブキャラも魅力たっぷりで、わたしとしては大変楽しめました。

 さて、何から書くか……。キャラ説明や簡単なストーリー概況は昨日の記事を見て下さい
 そうだ、まず、昨日書いた、事件に使われたメルセデス・ベンツの話からにしよう。
 ◆ベンツ「SL500」の謎。
 わたしは昨日、「SL500」についての違和感を書いたのだが、そのあとですぐに、Amazon Kindle版の試し読みで少し原文を読んでみたところ、明確に「SL500」と書いてあり、「セダン」であることも明記されていたので、間違いないようだ。しかし……「SL」の「セダン」はあり得ないんだけどな……メルセデスのセダンは、TOPグレードが「S」シリーズという奴で、昨日も書いた通り「S500L」ならあり得る。ただし、「SL」と「S」は明確にキャラクターが違う車で、「S」シリーズというものは、基本的には「運転手に運転させて自分はリアシートにどかっと座る」車だ。そして「SL」は、リッチなアメリカ人が自分で運転する車としては最高レベルの車で、おしゃれでもあり、確かに、本作で描かれたオーナーが自分で運転していても全く違和感はない。だから、「SL500」で間違いないはずだ。でも、セダンじゃないんだよな……。しかし作中で3人で乗るシーンがいくつかあるので、セダンでないと困るわけで、「SL」のような2シーターはあり得ないのだが……ま、これはマジで、US仕様の、2004年モデルにはわたしが知らない車種があったと思うしかなかろう。わたしがこだわっているのは、「SL」と「S」では車のキャラクターがまるで違うし、車重も結構違うはずなので、事件の被害規模も変わっちゃうんじゃないかな、と思ったからなのだが、ま、細かいことはどうでもいいか。
 いずれにせよ、メルセデスをはじめ、今現在はもう多くの車でもそうだが、暗号化されたチップを搭載した正規のキーがないと、エンジンがかからないのが現代の車だ。なので、不正規にドアを開けようとしただけで、警報が鳴り響くし(わたしの車も、ちょっと飛び上がるぐらいけたたましいホーンが鳴り響くのでビビる。おまけにすぐさま、携帯に「なにかありましたか!?」と電話がかかって来る)、エンジンも、アメリカ映画で良く見るスターター直結なんてことは、基本的に不可能なわけで、犯人は一体どうやってこの車を盗めたか、という点も一つのポイントとなる。ただ、この点は、ごくあっさり解かれるというか、ちょっとしたガジェットを使ったというだけで、特にトリックはないので、大きな驚きはないのだが、それよりも、盗まれたオーナーの主張を、誰も信じなかったという事実がわたしはかなりゾッとした。日本で、盗まれた車が多くの人をひき殺す犯罪に使われたら、その車のオーナーはこんなに叩かれるものだろうか? どうだろう、わたしは不謹慎ながら、秋葉原のあの痛ましい事件を思い出してしまったが、あれはたしかレンタカーだったよな……その時、なんであいつに車を貸したんだ!! というような、レンタカー会社を叩くような世論は出たんだっけ? 本作では、そういったオーナー叩きの世論を醸成するのに警察が手を貸してしまった的な流れで、それもあって、主人公ホッジスは贖罪の意味も込めて犯人探しに取り組むわけで、この流れは、非常に恐ろしい話だけど、説得力と言うか納得性は高かったように思う。
 ◆下巻で大活躍のホリー・ギブニー!!
 昨日は上巻について書いたので、登場しなかったのだが、下巻から登場するホリー(43歳だったっけ?)のキャラクターがとてもイイ。本格的に活躍し始めるのは下巻の後半以降だけれど、最初の登場時からは全く想像していなかった活躍ぶりでした。とあるキャラクターのまさかの退場で、代わって頑張るホリーは大変良かったです。彼女は、今後もシリーズに登場するみたいですな。今後の活躍を楽しみにしたいと思います。完全に『ミレニアム』シリーズのリスベット的な、社会不適合なパソコンに強い女性なので、わたしが読みながら脳内に想像したビジュアルイメージは、完全にNoomi Rapaceさんでした。ちょっと若すぎるか?
 ◆毒餌……まさかの展開!!
 上巻の最後の章は「毒餌」という章タイトルがついていて、下巻とまたぐ形になっている。そのタイトル通り、≪メルセデス・キラー≫が主人公ホッジスを苦しめるために、ホッジスの友達のジェロームの家が飼っているわんこに、毒入りハンバーグを喰わせて、苦しみながら死ぬ姿を見て、お前も苦しむがいい!! とひじょーに回りくどい邪悪な攻撃を仕掛けてくるのだが、これがなんとも意外な、えええっ!? という展開になってびっくりした。お前……何やってんだよ……ほんと、愚かな男ですな、犯人は。いやー、わんこが無事でよかったw
 ◆データ天国へ昇天……w
 わたしが今回、大変気に入ったフレーズがこれです。PC上のデータが完全に削除されている様子を表現したフレーズなのですが、わたしはやけにウケました。わたしは、こういうKing作品独特の表現が大好きなので、その点では、本作はもう完全にれっきとしたKing作品だといえると思う。他にも笑える表現がいろいろありました。これは、原文をあたって、英語表現を確認したいすね。わたしが今までのKing作品で一番好きなフレーズは、『ドリームキャッチャー』での「SSDD」とか(Same Shit Different Days=違う時代でもクソはクソ)とか、これも同じ『ドリームキャッチャー』だと思うけど、確か新潮文庫の日本語訳では、「参った参った、参ったバナナは目に染みる!」みたいな変な訳になっていて、原文を読んでみたら、「Jesus Bananas!」と実に簡単なフレーズだった。そしてこの言葉、珍映画として有名な映画版では、「そんなバナナ!」という字幕がついていて、なんて素晴らしい字幕なんだと思ったことがあります。わたしはこういう下品なフレーズがすごく好きで、日常会話でも「Jesus Bananas!」は超頻繁に使ってますw 本作冒頭部分の、ホッジスがテレビを観ながら思う下ネタバリバリの下品な表現は最高ですね。冒頭部分だけでも英語で読んで、わたしの全く役に立たないボキャブラリーを増やそうと思います。「射出速度は弾丸にも負けない」……笑える……英語でなんて言うんだろうか……w
 ◆上巻にあったネタ
 そう言えば昨日書き忘れてましたが、上巻に、2回、Kingの他の作品をネタに使った会話がありました。まず、上巻のP104にある「下水道にひそんでいるピエロの話のテレビ映画」は、もちろんKingファンなら誰でも知っている『It』のことだし、 もうひとつは、場所が思い出せないのだが、確か、『Christine』をネタにした部分があったと思う。まあ、だから何だと言われると何でもないのですが、最近、King作品は自作をネタにする場面をたまに見かけるような気がしますね。

 というわけで、まったく取り留めなく無駄な文章を書き連ねてしまったが、結論。
 わたしがこの世で最も愛する作家は、ダントツでStephen King氏である。そして日本語で読める最新作『ミスター・メルセデス』はやっぱり相当面白かった!!! と、昨日と全く同じ結論です。もしKingファンでまだ読んでいない方は、今すぐ読んで楽しむべきです。文庫まで待つ? それ……あんまり意味がないと思いますよ。たぶん、文庫まで待っても、文庫1000円として、上中下の3冊になれば3000円でしょ? 本書は2冊買って4000円弱。その差額1000円は、文庫化までの3年間(?)をすっ飛ばす特急料金ってことで、十分払う価値ありだと思います。置き場に困る? じゃあ、今週末配信開始の電子書籍でいいじゃないですか。文庫より場所は取りませんよ!! そして主人公ホッジスのビジュアルイメージですが、そういえば、意外とMichael Keaton氏なんかアリじゃね? と電撃的にひらめきました。年齢はちょうどいいし、太鼓腹になりつつあるし、どうでしょう、ちょっと顔が怖すぎるか……? 誰かこの役者がピッタリ、と思う方がいれば教えて下さい。以上。

↓ 今日も貼っておこう。実は、もう観たくて観たくてたまらない……。
 
そしてこちらの文庫は単行本が出てから3年経っての発売です。3分冊みたいすよ。最強面白いす。
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-10-07

スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-10-07

スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-10-07

 というわけで、わたしが超・楽しみにしていたStephen King氏による(日本語で読める)最新作、『Mr.Mercedes』を鋭意読んでいるわたしであるが、まあ、とにかくイイですな。これは面白い。
 現在、まだ下巻の半分辺りで、いよいよ物語はクライマックスへ突入しそうな予感がしているけれど、とにかく面白くて、1回の記事にしてしまうのはちょっともったいないので、先に、上巻についての備忘録を書いて、2回の連載記事にしようと思い、さっさと書き始めることにした。なるべくネタバレにしないようにするつもりだけど、ネタばれてたらサーセン。絶対ネタバレは嫌な方は、どうぞ立ち去ってください。
 しかしこの作品は、かなり今までのKing氏の作品と違うような気がするし、King初心者の方でも全く問題なく楽しめると思うな。今のところ、ですが。超・面白いっす。※ちなみに電子書籍はこの週末から配信開始だそうです。それまで待てず、わたしは紙の本を買いました。
ミスター・メルセデス 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-08-22

ミスター・メルセデス 下
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-08-22

 ちょっと、上に貼った画像ではわかりにくいから、先週このBlogに貼った、わたしが撮影した書影をもう一度、貼っておこう。
MrMerzedes
 というわけで、本作は、King氏初めての「3部作」であることは、もうとっくに明らかにされていて、おまけに、実際のところUS本国では既に第3部まで、刊行されて完結している。読んでいないから、「完結」してるのかは知らないけれど、まあそういうことです。
 そして、本作が、King氏初めての「捜査ミステリー」であることも、もう散々取り上げられているので、Kingファンにはお馴染みだろう。下巻の帯にも、上記写真に思いっきり書いてあるよね。
 ≪退職刑事VS卑劣な殺人鬼≫
 実際、物語はその通りだし、わたしも、読む前からその知識はあったので、わたしはその主人公たる≪退職刑事≫がメインで、捜査を行い、徐々に犯人を追い詰めるお話かと思っていた。それはそれで間違いないのだが、ちょっと違っていたのは、冒頭といってもいい70ページ目で、もう犯人が出てきて、どういう人間か分かって来ると言う点だ。まあ、ちょっと違うけれど、言ってみれば「刑事コロンボ」的というか、「古畑任三郎」的というか、要するに、我々読者は犯人を知りつつ、主人公と犯人の心理バトル(?)を味わうことができる構成になっている。ただし、「コロンボ」や「古畑」のように、直接お互い面と向かって話すことはなく、主人公はずっと犯人が何者か知らないまま、一方犯人は主人公を認識している、というハンデバトルになっているので、その意味ではちっとも「コロンボ」的でないし、「古畑」的でもない。また、古典的なハードボイルド小説のお約束である「一人称」でもなく、ある意味、「普通」のミステリーと言っていいような気がする。いかにもKing的なSupernatural要素もないし。ただ、ひとつ気付いた点としては、動詞の時制がほとんど現在形で、過去形での語りではないのは、これは……ミステリー小説の流儀なのかな? そこまでわたしは詳しくないのでわからんですが、ちょっと特徴ある文章のように思った。
 なので、Kingファン以外の方が読むと、実に普通に面白い小説、という評価で終わってしまいそうな気がするが、我々Kingファンには大変おなじみというか、わたしだけかもしれないがとにかく、キャラクターの会話に現れるDirty Wordsが最高なのです。そして、やはりキャラクターも最高だし、段々と主人公サイド・犯人サイドの話が積み重なって、とうとうそれが交わり、一気にクライマックスへ!! という流れは、やはりいつものKing節のような気がします。とにかく今は、まだ全部読み終わっていないので、「~ような気がする」としか書けないのだが、わたしとしては現状、超面白くてたまらない状態です。
 では、自分用備忘録として、物語の簡単な流れとキャラクターを4人だけ、紹介しておこう。あー、サーセン、ここから先はもうホントにネタバレなしで書く自信がありません。
 本作の冒頭に描かれるのは、就職フェアの開場を待つ失業者たちの列に、メルセデス・ベンツが突っ込み、多くの死傷者が出た事件の詳細だ。ここは非常にKing作品っぽいキャラクター造詣で、とてもイイ。いや、描かれている内容は気の毒な話なので、良くないんですけど。なお、本作は舞台となる街の明確な地名描写はなく(あったっけ?)、中西部としかわからない。いや、どうもシンシナティ、みたい(自信なし)。時は、これは冒頭に明記してあったが、2009年4月に起きた事件だそうだ。
 それから、これはまったくどうでもいいのだが、犯行に使われたメルセデスは、『SL500』の2004年モデル(事件の5年前に購入とあるのでたぶん2004年モデル)と書かれており、おまけに「セダン」という描写もある。これは、車の大好きなわたしにはかなり違和感があって、メルセデスの「SL」というのは車好きなら誰もが知っている、2シーターオープンカーなので、「セダン」という点で、わたしは「ん!?」と思った。メルセデスのセダンなら、「S」シリーズの恐らくはLongボディタイプの、「S500L」が正しいと思う。また、「V12気筒エンジン」という描写もあったが、SL500(あるいはS500L)はV8エンジンだと思うので、そこもちょっと「アレッ!?」と思った。V12気筒が正しいならSL600だし、セダンが正しいなら、SシリーズのLongボディのS600Lが正しいはずなんだが、まあ、まさかKingの編集チームがそんな些細なミスを残したままのわけはないと思うので、US仕様では別なのかな? と思うことにした。もちろん、白石先生の誤訳ということもまずあり得ないだろうし。なお、表紙カバーに描かれているのは、誰がどう見ても、作中に出てくる2004年モデルのSL500ではありえない。2004年モデルであれば、CクラスもEクラスもSLも、有名な「丸型ライト」の時代で、現行型とは全然ライトやフロントグリルの形が違う。強いて好意的に言えば、最新モデルの現行型のSL500には、ちょっと似てるけど、ま、文春の編集チェックはそんなもんだろうということで、別にどうでもいいや。
 そして場面は変わり(事件からどれぐらいの時間が経過したかは正確には良くわからない)、半年前に警察を退職した主人公の元に、≪メルセデス・キラー≫から手紙が届く。主人公が恐らくは最後に手掛けた重大犯罪で、未解決のまま退職したわけで、主人公にとって≪メルセデス・キラー≫は「やり残した」仕事なわけだ。そういった不完全燃焼な気持ちや、すっかり燃え尽きたような気持ちを日々抱え、退職後はもう何もやる気のなかった主人公は、自殺すら考えるほどの精神状態だったのだが、その手紙を読んで再び闘志を燃やし、ある意味生きがいを再び見出す事になってしまう。「なってしまう」、と書いたのは、その手紙で≪メルセデス・キラー≫は主人公を役立たずのゴミ人間と精神に傷をつけることで、さっさと自殺でもしちゃえよ、という意図で手紙を送りつけたわけで、つまりその意図と全く逆の効果をもたらしてしまったためだ。こんな感じに、冒頭から犯人のイカれ具合と実はたいして頭が良くない(?)点や、ホッジスのキャラクターが分かるような始まり方になっている。そしてその戦いは、基本的に頭脳バトルで、読みごたえはもうバッチリである。
 というわけで、重要キャラクターとして、その主人公と犯人、それから主人公を支える二人の人物、の合計4人を簡単に紹介しておこう。
 ◆ビル・ホッジス退職刑事:どうやらこの物語の現在時制は2010年らしいが、主人公ホッジスは62歳。太鼓腹。バツイチ。娘は30歳(元・妻も娘も一切登場しない)でサンフランシスコに住んでるらしい。極めて有能な刑事だった(らしい)。愛車はトヨタのおんぼろセダン。読んでいた時のわたしのビジュアルイメージでは、もうちょっと若くて、2014年に若くして亡くなってしまったPhillip Seymour Hoffman氏のような感じだったのだが、映像化するとしたら、誰が適役かなぁ……60代で太鼓腹でしょ……うーーん……下巻を読み終わるまでにまた考えておきます。
 ◆ブレイディ・ハーツフィールド:≪メルセデス・キラー≫として知られる異常者。ミスター・メルセデスとも呼ばれる。普段は全く普通の平凡な20代の若者で、とあるショッピングモールに勤務している。PCの出張修理だったり、アイスクリームの移動販売なんかを担当していて、街ではむしろ好青年だと思われている。が、超邪悪なイカれた精神の持ち主。わたしのビジュアルイメージは、どういうわけか最初からずっと、Nicolas Hoult君な感じ。『MADMAX』のニュート役だったり『X-MEN』のビーストだったり、現在とても人気の高い彼っすね。なんかピッタリだと思うな。イカレた男を演じるのもとても上手だし。
 ◆ジェローム・ロビンスン:ホッジスの近所に住む、唯一(?)の友人。まだ高校生。非常に性格が良く、大学もハーヴァードでもどこでも行けるほど頭が良い優等生。ホッジスのPCはいつも彼が直してくれるし、ホッジスの家の芝生が伸びてるな、と思うと、言われなくてもきっちり綺麗に刈ってくれる気が利く男で、黒人だけれど、そのことを別に気にしていない爽やかな未来ある若者。わたしのビジュアルイメージは、これまた理由は我ながらさっぱり不明だけれど、オリンピックで活躍したケンブリッジ飛鳥君なんだよな……。彼はほんと爽やかイケメンで性格も良さそうすよね。ジェロームにぴったりなイメージです。
 ◆ジャネル・パタースン:≪メルセデス・キラー≫が犯行に使ったベンツSL500の持ち主、の妹。姉であるベンツオーナーは、世間から「お前がベンツを盗まれたからあんな事件が起きたんだ!!」というバッシングにさらされてしまって、自殺してしまった。実はその自殺の裏には、犯人からの執拗な精神攻撃があり、姉の汚名を雪ぐために、ホッジスに捜査を依頼する。美人。44歳。バツイチ、子どもナシ(?)。わたしとしては、ぜひとも愛するCate Blanchettさまにこの役を演じていただきたい!! のだが、ちょっとイメージは違うかもな……。もうちょっと世慣れた、疲れた空気感があるので……20年前のKim Basingerさんあたりがピッタリなんだけどな……。

 というわけで、実はこの記事をちょこちょこ書きながらも読み進めていて、極めて大変なことが起きたり、超ヤバい展開がもうどんどん進行していて、イカン……もう今日の夜には読み終わっちゃいそうだ……頁をめくる手が止められない……もったいない……そして面白い……!!
 ※追記:というわけで今日の夜「下巻」も読み終わってしまった……「下巻」の記事はこちらへ。最高でした。

 というわけで、とりあえず現状の結論。
 わたしがこの世で最も愛する作家は、ダントツでStephen King氏である。そして日本語で読める最新作『ミスター・メルセデス』はやっぱり相当面白い!!! だけど、やっぱり、今までのKing作品とはかなり空気感が違いますな。Supernatural要素は今のところ全くなく、実にまっとうな、ド・ストレートのミステリーです。はあ……いま、クライマックス近くのどんどん作中テンポが速く加速しているところで、もう、ホントにページをめくる手が止まらないです!!! 以上。

↓ 現在、STAR-Chanelで鋭意放送中、ですが、わたしは観てません。つーか、愚かなことに第1回を録画しそこなっちゃった……ちくしょう……Blu-rayが出たら買うからいいもん!! 原作小説は、最強に面白いです。


あっ!? もう文庫出るんだ。単行本出たのはもう3年前か……もう文庫化の頃合いですな。文庫では(上)(中)(下)の3冊構成みたいすね。ふーん……。
スティーヴン・キング
文藝春秋
2016-10-07

 4月から5月にかけて、わたしはMark Greaney氏による「暗殺者グレイマン」シリーズを立て続けに読んでとても興奮し、楽しく(?)読ませていただいたわけだが、この度、そのシリーズ最新作が発売になり、さっそく購入し、おととい読み終わった。いやー、大変興奮する物語で、とても面白かった。
 一応、今までの経緯をおさらいしておくと、かの有名な「ジャック・ライアン」シリーズが、その生みの親であるTom Clancy氏の早すぎる逝去に伴い、巨匠からバトンを引き継いで、「ライアン」シリーズを現在書いているのがMark Greaney氏である。で、「ライアン」の最新作から、完全にGreaney氏単独クレジットで発売され、読んでみたところ大変面白かったので、この新しい著者、Greaney氏とは何者なんだろう、と調べたら、わたしの大好きな早川書房から「暗殺者グレイマン」シリーズと言う作品を発表していることを知ったので、じゃ、読んでみるか、という事になったのである。
 で、読んでみた。ら、わたしのようなハリウッド・アクションが大好きな人間は大変楽しめる、非常に面白い作品だったのである。このBlogで取り上げた記事のリンクと、いつも冒頭に書いている基礎知識を自分用に貼っておこう。手抜きでサーセン。
 1作目『暗殺者グレイマン』の記事はこちら
 2作目『暗殺者の正義』はこちらの記事へ。
 3作目『暗殺者の鎮魂』の記事はこちら
 4作目『暗殺者の復讐』の記事はここ
 上記記事内でも何度も書いている通り、このシリーズの最大の特徴は、主人公コート・ジェントリーこと暗殺者グレイマンのキャラクターにある。彼は、数々の伝説的な仕事をやってのけた凄腕殺し屋として諜報業界=Intelligence Communityでは誰もが知る有名人なのだが、スーパー影の薄い、印象に残らない男ゆえに、その正体は業界的には謎に包まれている。で、元々は、CIAの軍補助員工作員で、どういう理由か不明なまま、Shoot on Sght=「目撃次第射殺」の指令が下ってしまって、5年にわたってCIAから逃げているという設定になっている。だけど、妙な正義感があって、悪党しかその手に掛けないという「自分ルール」を持っていて、変にいい人過ぎるが故にどんどんピンチに陥り、血まみれになりながらなんとか勝利するというのがどうもパターンのようだ。冷徹なんだか、いい奴なんだか、もう良くわからないのだが、読者から見れば、その「自分ルール」故に、まあとりあえず応援はしたくなるという不思議な男である。そして最終的に事件はきっちり解決し、読後感としてはいわゆるカタルシス、すっきり感があって大変面白いとわたしは思っている。
 そしてこれも何度でも書くが、外見的な描写はあまりないのだけれど、わたしは彼のビジュアルイメージとしては、勝手にJason Statham兄貴か、Mark Strong伯父貴をあてはめ、絶対マッチョのセクシーハゲだと確信している。ピッタリだと思うな、たぶん。

 というわけで、5作目となるのが、おとといわたしが読み終わった最新作『暗殺者の反撃』である。
暗殺者の反撃〔上〕 (ハヤカワ文庫 NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

暗殺者の反撃〔下〕 (ハヤカワ文庫 NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2016-07-22

 さてと。本作は、前作のラストシーンからの続きで、ジェントリーがとうとう逃げることをやめ、過去と対決するためにUS本土に降り立ち(ずっと世界中を逃げていたので、帰国したのも5年ぶり。しかも今回の舞台はほぼずっと、Washington DC)、ずっとシリーズ最大の謎とされていた、何故CIAは、ジェントリーに対して「目撃次第射殺」の指令を下したのか、の答えが出る物語だった。なので、わたしとしてはもう、超興奮しながら読んだわけです。
 今回は上下本で、過去最大ボリューム。そしてジェントリーは今回、ほとんど失敗しないで比較的ストレートに話は進む。実は今までの物語は、お人良し故にピンチになったり、信じたばっかりにひどい目に遭ったり、せっかくの目的地に到着してもまるで無駄足だったり、と、読んでいて、お前何やってんだよ!! と思わず突っ込みたくなるぐらい、まあとにかくひどい目に遭ってばかりだったので、実は若干読んでいてストレスを感じていたというか、イライラすることもあったのだが、もう今回はそういう失敗はほぼなくて、非常に気持ちよかったですな。

 じゃ、今回も、主要人物をあげて、いつかすっかり内容を忘れたときのための備忘録とするか。
 ◆コート・ジェントリー:フロリダ州出身。30代。裏社会では「グレイマン」と呼ばれ恐れられているが、CIAでのコードネームは「シエラ6」。主に「シックス」と呼ばれていた。そして現在のCIAのターゲットネームは「違反者(ヴァイオレーター)」。とにかく、本人的には正義を遂行しているだけで、悪党は基本的に即ぶっ殺す、恐ろしい男。今回、深夜のコンビニ勤務の黒人女性を守るために、自らが危険になるとわかっていても悪党をあっという間に3人殺したりする。そのせいで隠れ家がばれてしまうリスクがあるのに。そんな奴ですよ、グレイマンは。実に律儀でまじめな男です。本作では、前作(第4作目)で貸しのできた、モサドの手引きで5年ぶりに合衆国の土を踏む。あと、今回初めて、父親が登場する。そしてその父が登場する場面が結構グッとくるというか、泣ける!! 
 ◆ザック・ハイタワー:次に紹介するのは誰にしようかと悩んだけど、この人にしよう。この人は、ジェントリーのCIA時代の所属部隊「Golf Sierra」、通称「Goon Squad(=特務愚連隊)」のチームリーダー。コードネームは「シエラ1」あるいは「ワン」。彼はシリーズ第2作目にも登場した男で、ジェントリーの腕も人柄も一番よく知っている、けど、ジェントリーを殺せという指令が出たならそれを遂行するまで、という態度のプロフェッショナル。勿論、ジェントリー並に強い(はず)。第2作目でジェントリーに助けられてはいるんだけど、かなりひどい目に遭っていて、その2作目の任務のめちゃくちゃぶりからCIAを解雇されてしまっていたが、腕を見込まれてCIAのヴァイオレーター狩りに召集される。彼は敵なのか味方なのか!? というのも本作のポイントの一つ。元上官だけあって、わたしは二人の会話が好きで、特にザックがジェントリーに「・・・だぜ、きょうだい」と平仮名で呼ぶのが非常に好き。わたしのザックのビジュアルイメージは、完全にStephen Lang氏ですね。あの、『Avatar』の悪党の大佐です。
 ◆マット・ハンリー:ジェントリーたちGolf Sierraを運用していたCIAの元上司。第3作目で、メキシコで危うく殺されそうになったジェントリーを単身助けた(ただし、助けたことがCIA内部で彼を窮地に陥らせてしまうので、ジェントリーはマットの腹を撃って、仲間じゃないと見えるようにした。未だに撃たれたことに怒ってる)ことがある。ジェントリーの実力も人柄もよくわかっている唯一の味方といってもいい男。元軍人だが、今は太鼓腹。そして現在ではCIA特殊活動部(SAD=Special Activities Division の略か?)の部長にまで昇進している。カーマイケルが大嫌い。なお、マットはジェントリーに対する「目撃次第射殺」の原因を、正確には知らない。わたしのマットのビジュアルイメージは、若いころのOliver Platt氏ですね。
 ◆アンディ・ショール:ワシントンポストのDC担当記者。本作で一番最初の事件を偶然取材。かわいそうな青年。
 ◆キャサリン・キング:ワシントンポストのベテラン調査報道記者。誠実?な女性。アンディがネタを持ち掛け、以後二人で取材に駆け回る。そして最終的に非常に大きな役割を担う。もし映画化されるならキャサリン役はぜひとも、我が愛しの女神ことCate Blanchettさまにお願いしたいですな。
 ◆デニー・カーマイケル:CIA国家秘密本部本部長。政治任命されるCIA長官よりも現場の実権を握るラスボス。ジェントリーに「目撃次第射殺」指令を出した張本人。彼がなぜ、ジェントリーを殺そうとしているのか、が、本作最大の謎。非常に面白かった。
 ◆ジョーダン・メイズ:カーマイケルの手下の副本部長。実際のところ、彼はジェントリー抹殺の本当の理由を知らず、使われただけの可哀想な人。
 ◆スーザン・ブルーア:ヴァイオレーター対策グループの作戦指揮官として今回初登場の女性。有能、だけどずる賢いと言っていいのでは? 好きになれそうもない。が、端々に、とにかくいい女であるような描写をされている。彼女は悪党一派だと思うんだけどなあ……彼女の最終的な立ち位置だけが、わたしとしては本作の唯一の不満点。
 ◆ムルキン・アル・カザス:サウジアラビア王国の諜報機関のアメリカ支局長。どうやらカーマイケルとは密約があるようで……ヴァイオレーター狩りにサウジの勢力も参戦。
 ◆リーランド・ハビット:第4作目で執拗にグレイマンを追った民間軍事企業の社長。前作でジェントリーにこっぴどくやられた人。基本的にとんでもない悪党だけれど、かわいそうな運命に……。

 まあ、主要なキャラクターは以上かな。
 今回は、いつものわたしの記事のようにネタバレ満載で物語を紹介すると、ちょっともったいないというか興味がそがれる恐れがあるので、やめておきます。とにかく、いきなり本書を読む人はいないだろうから、あくまでシリーズを読んできたという前提で書きますが、今回の話で、ジェントリー=グレイマン=ヴァイオレーター=シックスは、長年の謎が解けてスッキリするのは間違いない。けれど、その秘密を知る過程で、何度もくじけそうになり、あるいは不完全な情報を得て、心が折れそうになったり、おまけに今回もかなり早い段階で大けがを負うのでまたもボロボロですが、それでも、いつもの不屈の精神力で何とか切り抜けていく様子は大変楽しめます。
 とくに、ラストのミッションはもうワクワクものですよ。非常にカッコイイし、映像映えすると思う。一番最後のアレって、『The Dark Knight』で出てきたアレですよね? いや、アレじゃわからんと思うけれど、読み終わったらわたしが何を言ってるか、分かると思います。もうホント、すげえ男ですよ。大変楽しめました。

 最後に、わたしの大好きな早川書房へ感謝を述べておきたい。電子書籍版を紙の本の発売から1週間とすぐに出してくれてありがとうございました。でも、せめて自社ページで、電子版はいつ発売、って告知ぐらい打っといてください。もう、何度、本屋さんの前で、紙で買っちまおうか……と悩んだことか。いや、早川ならオレの期待に応えてくれる!! はず!! と何の根拠もなく信じてよかったす。
 それから、シリーズを読んできたファンの皆さんに、これだけはネタバレだけど言わせていただきたい。確実に、シリーズは新たな展開でまだ続く可能性大ですよ!!! 楽しみすね!!

 というわけで、結論。
 「暗殺者グレイマン」シリーズ最新作は、とうとう最大の謎が判明する注目の作品です。シリーズを読んできた方は、今すぐ、本屋さんに行くか、どこかでポチッて下さい。読まない理由は何一つありません。最高です。
 以前も書いた通り、Greaney氏のWebサイトには
 A feature film adaptation of The Gray Man is in development by Columbia Pictures, with Joe and Anthony Russo of Captain America, Winter Soldier, to direct.
 とありますので、映画化を心から楽しみに待つのが、正しいファンの姿だと思います。監督がルッソ兄弟なんて、もう傑作になることは間違いなしですな。超楽しみですが、ジェントリー役は、絶対にJason Statham兄貴でよろしくお願いします!!! 以上。
 
↓ 一応、Kindle版のリンクも貼っときます。わたしは愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERで買って読みました。
暗殺者の反撃 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2016-07-31

暗殺者の反撃 下 (ハヤカワ文庫NV)
マーク グリーニー
早川書房
2016-07-31

 もう何度も何度もこのBlogに書いていることだが、わたしがこの世で最も好きな小説家は、ダントツでStephen King氏である。そしてこれも何度も書いているが、そりゃあ、たまに、「これは……ちょっとなあ……」と思う作品もなくはない。が、それでもダントツに、わたしはStephen King氏の作品が大好きである。
 というわけで、先日、朝、新聞を読んでいたところ、わたしの嫌いな出版社のTOPクラスである文藝春秋より、いきなり文庫で新刊が出ることを発見した時のわたしの喜びは極めて大きく、くっそう、文春め、誉めてやってもいいぞ、と極めて上から目線で思い、発売日に即、本屋さんへ出向いて買って来たのである。
 その新刊のタイトルは『JOYLAND』。日本語タイトルもそのまま「ジョイランド」である。わたしはこのタイトルを見て、おっと、こっちが先に出るんだ、と大変うれしくなった。
ジョイランド (文春文庫)
スティーヴン キング
文藝春秋
2016-07-08

  というのも、この作品がUS本国で刊行されたのは結構前で、2013年のことである(執筆されたのは2012年らしい)。しかも、珍しく「ペーパーバック」描き下ろしであり、ハードカバーは後に出るという珍しい展開であったし、この作品の後に出た(と思われる)『Dr. Sleep』の方がもう日本語訳が発売になっていたので、次に日本語で読めるのは、『Dr. Sleep』の次に書いた『Mr.Mercedes』の方かと思っていたからだ。まあ、ペーパーバック書き下ろし作品だから、文春も気を利かせて文庫で発売したのではないかと思うが、大変分かっている配慮であり、これは悔しいが誉めてしかるべきだろう。文春よ、お前、分かってるじゃあないか、と。しかも、帯の表4(背中側)には、「近刊予告」として、『Mr. Mercedes』も「2016年晩夏に日本上陸!」とあり、実にファンを喜ばせる、大変うれしいお知らせ付きである。つか、「晩夏」っていつなんだよ!? と担当編集を軽く問い詰めたい気分だ。9月まで出なかったら許したくないですな。
 ま、『Mr. Mercedes』に関しては、King氏初の3部作シリーズであり(USではもう3部作全部刊行済み)、初のハードボイルド・探偵モノであり、期待は高まるばかりであるが、詳しくはその「晩夏」以降語ることとしよう。まずは、本作『JOYLAND』である。

 ところで。実はちょっと前、たしか6月の終わりごろ、わたしの愛する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERで、なんか面白そうなのねえかなあ……と探している時に、文藝春秋から