やれやれ。あっという間に2021年が始まってしまいましたなあ。。。
 さて。現在東京都は、緊急事態宣言が発出された状態だが、昨日、わたしは既に購入していたチケットがあったので、日比谷の東京宝塚劇場へ赴くことにした。今年一発目の観劇でありますが、一応自分的言い訳としては、完全防備体制及び滞在時間を最小限にする、という方針で出かけたのだが、やはり宝塚を愛する淑女たちの意識も高く、劇場内は静かで整然としていたような気がします。
 で。現在、東京宝塚劇場で公演中なのは宙組であります。そして演目は、ホントなら去年上演されていたはずの『アナスタシア』であります。
anastasia
 この作品は、もう説明の必要はないでしょう。元々はDisneyアニメーション(※追記:サーセン、間違えました。元々はFOX制作アニメでした。今のFOXはDisneyに買収されたのでDisney+で配信されてるけど、当時はFOXでした)で、それの舞台ミュージカル化作品なわけで、ブロードウェイで上演され、さらに去年は男性キャストも普通にいる通常版が日本で上演され……たのだが、残念なことにその通常版も途中で(?)中止になってしまい、かなり上演回数は減ってしまったのでありました。
 その宝塚版が、去年の暮れの宝塚大劇場での上演を経て、いよいよ東京へやってきたわけです……が、我々宝塚ファンにとって、ちょっと謎の、そしてちょっとタダゴトではない事件が起きたのである。それは、現在の宙組TOP娘役の星風まどかさんが、この公演終了をもって「宙組から専科へ異動になる」という、ズカファンを騒然とさせた発表であります。
 確かに、「ほかの組へ異動する」ことは、いわゆる「組替え」としてある意味普通なことではあるのだが(もちろんその内容によってファンは一喜一憂してしまうけど)、TOPの地位にいる方が組替えするのは、前例のあることとはいえ、かなり、相当、いやすっごく、稀なことなのである。
 今回のまどかちゃんに起きた異例の人事通知は、現在多くのヅカファンのハートをそわそわさせている事件で、花組でTOP娘役になるための布石なんじゃないかとか、いやいや月組かもよ、とか、まあいろんな憶測が飛び交っているのである。
 わたしとしては、まどかちゃんが最終的にどうなるか、はあまり気にしていないというか、どうなっても受け入れるけれど、それよりも、ずっと宙組で育ち、2018年に晴れて宙組TOP娘役に就任して頑張ってきたまどかちゃんが、こんなに急に異動になってしまうこと自体に、なんか淋しい想いがするし、きっとご本人の胸中もアレだろうなあ、とか余計なお世話な想像をしてしまうのである。まあ、退団するわけではないので、まだまだこれからも応援できるのだが、とにかく、そういった背景もあって、今回わたしとしては宙組最後のまどかちゃん渾身の『アナスタシア』を楽しみにしていたのであります。

 で。『アナスタシア』であります。本作は、いわゆるブロードウェイ・ミュージカルの日本語版という側面もあるので、とにかく歌が多く、歌率の高い作品でありました。その一部は上記に貼りつけた動画でお楽しみいただけるので、ぜひご覧いただきたいと思うのだが、お話としては、そのタイトル通り、いわゆる「アナスタシア伝説」をDisneyらしくアレンジした、プリンセス・ストーリーになっている。
 アナスタシア伝説ってなんぞ? って人はいないすよね? 軽く説明すると、1917年に勃発したロシア2月革命によって、時のロシア帝国皇帝ニコライ2世はその一族全員とともにぶっ殺されたのだが(処刑されたのは翌年1918年7月)、その娘であるアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァは実は生きていて……てな噂のことであります。まあ、そこからいろんな創作が行われてるし、実際に20世紀初頭はいろいろな騒動があったらしいけれど、どうやらソヴィエト崩壊後の科学調査でも、遺骨らしきものは見つかってるけど、絶対にアナスタシアの遺骨だと断定はできてない……みたいすね。
 で、少し余計な話をすると、ロシアの2月革命ってのは結構興味深い事件で、第1次世界大戦の真っただ中だったわけだけど、宝塚的に言うと、朝夏まなとさんの退団公演だった2017年の宙組公演『神々の土地』もまさしくその時のロシアのお話だし、そもそも1918年って、「スペイン風邪」が蔓延した年なんすけど、日本で言うといつぐらいか分かりますか? そう、大正7年のことで、それすなわち『はいからさんが通る』の冒頭と同じ時なのです。なので、というのも変だけど、いわゆる「亡命ロシア人」ってのは世界中にいて(例えばUSに渡った人もいっぱいいる)、一応「隣国」である日本にも結構入ってきた事実がありまして、その一例がまさしく『はいからさん』で言うところのミハイロフ侯爵なわけです。ついでに言えば、その20年後(1938年)のパリを描いた『凱旋門』でも、雪組TOPスター望海風斗さまが演じたキャラは亡命ロシア人だったし、もう一つついでに、ロシア革命の10年前のロシア(ウクライナだっけ?)の片田舎が舞台だったのが、『屋根の上のバイオリン』ですな。わたしはこういうつながりを想像するのが面白いと思うのですが、今回の物語は革命後10年を経た(=1928年ごろ?)レニングラードと、パリ、が舞台でありました。レニングラードは、もちろん革命前の帝都サンクト・ペテルブルグであり、ソヴィエト崩壊後の現在も名前が元に戻った、エルミタージュ美術館のある都市ですな。あ、そういやパリと言えば、この公演の前に上演されていた月組公演『ピガール狂騒曲』は1900年のパリが舞台でしたな。本作より約30年前、ってことになるすね。
 というわけで、どうでもいい前置きが長くなり過ぎたけど、わたし的な見どころは、もう当然、タイトルロールであり、物語の主役であるアナスタシアを、まどかちゃんがどう演じるか、にあったわけです。もちろん宝塚版なので、主役はTOPスター真風さんと見るのが正しいかもしれないけど、観終わってやっぱり思うのは、この物語の主人公は明らかにまどかちゃん演じるアナスタシアだったな、というものでありました。見事ですよ。本当にブラボーでしたなあ! わたしは、まどかちゃんに関してはTOP娘になる以前をあまり意識してなかったし、TOP娘に就任したときも、若干ロリ系のかわい子ちゃんキャラかな、とか思っていたけれど、もうその座について3年が経過し、いまや本当に素晴らしい技量を備えた、堂々たるTOP娘役に成長したと思えたっすね。歌も演技も抜群でありました。
 それでは、各主要キャラごとにメモしていくとします。と言っても、本作はいわゆる「大作」だけど、物語に関わる役が少ないんすよね……6人だけ、かな?
 ◆アーニャ=アナスタシア大公女:演じたのは散々書いている通り、宙組TOP娘役である星風まどかさん。お見事の一言っす。Disneyアニメ版とはかなりお話が違っていて、ラスプーチンは出てこないので、マジカルなファンタジー色は一切なく、アーニャのキャラクターも、もっと現実的であったと思う。そしてまどかちゃんの「芯の強さ」が光ってましたねえ! とっても良かったです。世の噂では、まどかちゃんは花組に移って『エリザベート』を演じるのでは、とか、まことしやかにささやかれてますが、本作を観て、ああ、たしかに、今のまどかちゃんなら確実に素晴らしいエリザベートを演じられるだろう、とわたしも思ったす。今年は宝塚エリザベート上演25周年だそうで、これはマジであるかもしれないすね……。
 ◆ディミトリ:若干その出自はよくわからなかったけど(いや、ちゃんと説明はあったけど詳細は忘れました)、革命から10年経た現在は詐欺師として街ではおなじみの青年。アーニャと出会い、おおっと、コイツをアナスタシア大公女に仕立て上げて連れて行けば、莫大な報奨金もらえるかもだぜ!?とひらめき、アーニャとともにパリを目指すことに。しかし、アーニャの真面目でまっすぐなハートに触れるうちに、改心して報奨金の受け取りを拒むイカした男に。なんか、わたしとしては、すごく強いて言うと『ZOOTOPIA』の狐のニック的なカッコ良さを感じたっすね。そして演じたのはもちろん宙組TOPスター真風涼帆さま(以下:ゆりか)。ゆりかちゃんは星組の下級生時代からずっと見ておりますが、超歌ウマではないにしても、TOPとして立派におなりで、ホント毎回、歌上手くなったなあ、と完全にお父さん目線で見ております。今回は歌が多く、大変だったでしょうなあ。なんか、このディミトリという役は、月組の珠城りょうさんでも観てみたい気がしたっすね。優しい感じが、たまさまっぽいというか似会いそうに思ったす。
 ◆グレブ:軍人家系(?)に生まれたボルシェヴィキ将校の青年。父はニコライ2世一家を処刑した官吏だったらしい。アーニャの正体を見極め、本物のアナスタシア大公女ならば、父のやり残した仕事としてオレが撃つ!という決意を秘めている。わたしのうすらぼんやりした記憶だと、アニメ版にはいないキャラ……かな?? でも、結末としては、とても優しい男でありましたね。すごく救われた感じがして、非常にグッと来たっす。そんなグレブを演じたのは宙組2番手スター、キキちゃんこと芹香斗亜さんであります。実際のところ出番はやや少なかった……けど、キキちゃんの歌や芝居はイイすねえ! キキちゃんも大変お見事でありました。
 ◆マリア皇太后:革命で処刑されたニコライ2世の母。わたしは全然知らなかったけれど、Wikiによるとラスプーチンとニコライ2世の妻(皇后)の接近を危険視して、さんざん忠告したり、クーデター計画なんかも練ってたみたいですね。最終的にはニコライ2世に追放され(?)、キエフへ赴き、革命が起こってから、キエフからクリミア経由でロンドンへ(ロンドンには姉がイギリス王太后として住んでいた)行き、甥のデンマーク王がいたコペンハーゲン(もともとマリア皇太后の生まれはデンマーク)に移り住んで、その地で亡くなったみたいなので、パリにいたことがあったのか、よくわからんす。第1次大戦中は赤十字活動にも熱心だったみたいで、活動的で精力的な方だったみたいですな。あ、マジかよ、2005年にはプーチン大統領とデンマーク女王との間で政府協定を結び、マリア皇太后の遺体は現在、サンクト・ペテルブルグに改葬されたんだそうな。へええ~。ま、これは歴史の話で、今回の物語ではパリに住んでたわけですが、とにかく、今回演じた宙組組長、寿つかささんが超素晴らしかったすね!! 普段は男役の組長ですが、マリア皇太后を超威厳あるお姿で演じ切っておられました。歌もとても良く、素晴らしかったの一言っす!
 ◆ヴラド:ディミトリの相棒で元下級貴族。パリに住むマリア皇太后の侍女、リリーの元カレ(?)。ディミトリのアナスタシア計画に協力する。演じたのは、公式3番手と言っていいのかな、宙組95期の桜木みなとくんでした。意外とソロ曲もあって、おいしい役でしたが……ヒゲが……つけヒゲ感満載で……なんか最後まで、若干違和感を感じたかも……うーーむ。。。
 ◆リリー:マリア皇太后の秘書のような役割で働く侍女。皇太后の前ではつつましい淑女だが、夜はパーッと飲みたいお方のようですw 演じたのは、わたしが宙組でいつも一番チェックする和希そらくん。そらくんもなんかここ数年、女性役が多いすね。ちょっと小柄で美人だから便利に使われちゃうのかな……でも本作はおいしい役が少ないので、リリー役にそらくんが起用されてわたしとしてはうれしいす。大変な美人でした。歌もちゃんと女声で良かったし、ちょっと驚いたことに、フィナーレのダンスでもずっと女装(※女性に女装というのは相当変だけどそうとしか言えない)で、目立ってたっすね。何度もこのblogで書いてますが、男のわたしから見ると、そらくんは女子としてとてもかわいいと思います。
 とまあ、以上の6人が、きっちり物語にかかわるキャラクターで、ヒドイ言い方をすればこの6人以外はその他大勢、でした。でも、その中でも、星組から宙組へ組替えしたばかりの紫藤りゅうくんはそこらじゅうでいろんな役で出て頑張っていたし、まどかちゃんの次に宙組TOP娘役就任が決まっている潤花ちゃんも、やっぱり抜群に目立つ美人ぶりで、いろいろな場面でチラッと出てきてもすぐわかるっすね。わたし、潤花ちゃんの美貌はよく知ってるんすけど、歌える方なのかよく知らないので、今後楽しみにしたいと存じます。
 
 とまあ、こんなところかな……もう書いておきたいことはないかな。。。
 さて、では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「お前は誰なんだ!」
 「わたしは、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァよ!」
 今回はやっぱりこの、アーニャの堂々たるセリフが一番しびれたっすねえ! この問いかけ、お前は誰なんだ、といいうのは、おばあちゃんであるマリア皇太后と、ボルシェヴィキのグレブの二人から問いかけられるのだが、答えるときのアーニャの心情は若干ニュアンスが違うんだけど、どちらのシーンもまどかちゃん渾身の気持ちがこもってたっすね! 実にお見事でした!

 というわけで、結論。
 今年一発目の宝塚歌劇を、緊急事態宣言下の日比谷で観てきたわたしでありますが、たしかにブロードウェー・ミュージカルの大作だけあって、歌率が高く、ことごとくいい歌で、これは久しぶりにライブCDでも買おうかしら、と思える作品でありました。やっぱり、わたしとしてはどう考えても主役はそのタイトル通り、アーニャことアナスタシアだったと思います。お話的には、結構トントン拍子というか、ご都合主義的でもあるかもしれない。そしてエンディングも、実にピースフルで、非常にDisneyっぽいすね。だが、それがいい!のであります。ホント、今はイイことなんで全然ない暗い世相だし、わたし個人もホントにアレな毎日ですが、やっぱり宝塚歌劇は最高ですよ! とても楽しめた2時間半でありましたとさ。はっ! そういえば、2階で東京宝塚劇場の新装20周年記念の展示をやってたのに、全然見てくるの忘れた!! だって混んでたんだよ……! 次回、雪組が取れれば、ちゃんとチェックして来ます。以上。

↓ まあ、予習の必要はないっすね。ただ、ロシア革命の流れは知ってた方がいいかも、す。
アナスタシア (字幕版)
Christopher Lloyd
2013-11-26