先週も書いたが、わたしの青春時代は明らかに80年代であり、中学生から高校生当時のわたしのヒーローと言えば、これはもう『北斗の拳』の漢たちと、Sylvester Stallone氏で決まりなのであります。おそらくわたしは、Stallone氏の80年代~90年代ムービーはすべて劇場に観に行ったし、今でももちろん、Stallone氏はカッコいいと思っている。
 そんなわたしは、1982年の夏、中学の期末テストを終えた日、そのまま有楽町へ向かって今はマリオンが建っている地に存在した「丸の内ピカデリー」の地下にあった「丸の内松竹(だったと思う)」という映画館へ『ROCKY3』を観に行ったのであった。そして、観終わって大興奮で、何の用があったのかまるで記憶がないけど、日比谷方面へふらふらと行き、今はシャンテの建っている地点に存在した「日比谷映画」と「有楽座」の界隈で、その年の冬に公開される予定の、次のStalloneムービーのポスターを見て大興奮したのである。
 多分わたしは、うおお、もう次の映画があるのかよ、やっべえ、超楽しみだぜ!! という勢いでその映画の前売券を買ったのだが、その映画こそ、後に伝説的(?)シリーズとなった『RAMBO(※原題はFIRST BLOOD)』だ。
RAMBO
 わたしはクソオタなので、余人には全く理解されないようなゴミ、であろうとも、何でも保管しておく習性がある。そのため、こういう前売券の半券も、無駄にごっそり持っているわけですが、くっそう、探したけど『3』は見当たらなかった……前売券買わなかったのかな……記憶にない……。。。
 ともあれ、この『RAMBO』シリーズは、前作である20年ぶりの新作『JOHN RAMBO』において非常に印象的で、うっかりすると泣けそうなぐらい美しい完結を迎えた……はずが、なんと「その後」を描いた新作『RAMBO:LAST BLOOD』がこの度公開されるに至ったので、わたしとしてはもう、コイツはもう絶対観ないといけないという思いが強く、さっそく土曜に観てきた次第であります。
 結論から言うと、なんか、もういろいろとマジで泣けちゃいそうになるぐらい、やっぱり最高でしたなあ!! タイトルもイイっすねえ! 最初のFIRST BLOODと見事に対になっていて、素晴らしいと思うっす! なんつうか……とにかくもう、感無量っつうか……50歳近辺のおっさんは、今すぐ劇場へGO!でお願いいたします!!

 さてと。まず、ズバリ言うと、物語はもう、この予告の通りであります。この予告通りどころか、もっと凄惨で悲しく、つらいお話でありました。大切な家族の少女を救うために、メキシコのヤクザどもと戦うわけなんですが、一体どうしてそうなった? に関する過去をちょっとだけ解説しておこう。
 おそらく、この『RAMBO』シリーズの「1」~「3」に関しては、もう説明はいらんと思うので割愛するけど、問題は「3」の公開から20年後の2008年に公開された前作『JOHN RAMBO』(邦題:最後の戦場)のラストだ。この映画は映連の資料によると、興収10億以上作品に載ってないので、要するに日本ではまったく売れず、よほどのマニアじゃないと観ていない可能性が高く、物語を知らない人の方が圧倒的に多いのではなかろうか。
 「最後の戦場」では、相変わらずタイの奥地でひっそり暮らしていたランボー氏のもとに、キリスト教系NGOの連中が、BURMA(日本語で言うミャンマー)の少数民族であるカレン族(=彼らはキリスト教徒)が虐待・虐殺されているのを助けたいということで、タイから潜入しようとしていて、ランボー氏にガイドを頼みに来るわけです。
 ランボー氏は全く気が進まないながらも、善良な彼らをとりあえず潜入させ、自分の仕事は終わったとまたタイに戻るんだけど、ミャンマーに潜入したNGOたちは、まんまと暴虐&残忍な軍(事実に即した描写なのかは知らんす。とにかくヒドイ残虐描写)に取っ捕まってしまう。
 その救出チームとして傭兵軍団が組織され、傭兵軍団に頼まれて加わったランボー氏も一緒に現場に急行するのであった……てなお話なんだけど、まあ、実際のところその救助のメインストーリーはどうでもいいとして(いや、どうでもよくないけど)、なんと、全ての事件が終息し、仕事を終えたランボー氏は、故郷のUSAアリゾナに帰ることにするんだな。
 ラストシーンは、両親の暮らす実家の牧場に、うっすらと笑み?を浮かべ、一人歩いていくランボー氏の姿で終わるわけで、第1作目の、あの寒々しい中を一人うなだれてしょんぼり歩く姿と対照的に、太陽の降り注ぐ中を、しっかりと前を見据えて家路につくその姿には、我々観客としては、ああ、とうとうランボー氏にも安息の日々が訪れるんだ、よかったよかった、永かったねえ……ゆっくり休んでください。。。てなエンディングに、わたしはマジでなんか泣けそうになったのである。しかも! そのエンディングにはあの名曲「It's a long road」が流れてくるわけで、マジで泣けるわけですよ。本当に永い道のりを戦い抜き、ついに心安らぐゴールについたんだね、と。
 そして今回のお話は、そのエンディングから11年が経過している。どうやら両親はすでに他界しており、旧知の女性とその孫娘と暮らしていて、劇中の説明ではよくわからなかったけど、パンフによるとその孫娘とは養子縁組もしているらしい。そして善良なUS市民として、周りからも信頼を受けている。「追跡のプロ」として地元警察に依頼された遭難者を探す冒頭のシーンは、もうのっけから最高でありました。
 しかし、極めて残念ながら、ランボー氏に再び悲劇が降りかかってしまう。
 かわいいかわいい娘の身に、これ以上ないぐらいのひどい悲劇がもたらされてしまうのだ。まあ、本作はその復讐話なわけだが、わたしは観ながら、やっぱりどうしてもランボー氏に感情移入してしまうし、ランボー氏の行動に関して非難することはできないのである。
 実際のところ、「復讐」は何も生まないし、むなしさが募るだけだ、という正論は、理屈として分からんでもない。しかし、本作でランボー氏は明確に、「俺は復讐したいんだ」と言い放つ。ここをどう見るかで、本作の受け取り方が違うのではないかと思う。
 わたしは、悪党が改心するとは全く思っていないので、本作でランボー氏がやってのけた復讐には、もうよくぞやってくれたという思いの方が強い。本作の悪党は、メキシコの人身売買組織だが、女性をドラッグ漬けにして凌辱しまくり、売春要員として飼うような連中が、法による裁きで善良な人間に変化しうるだろうか? それって、ほんとにありうるのか? そりゃあるんだろうけど、本作に登場する極悪人には、どう考えてもそんな変化は起こらないと思うし、そういった悪党に対して、人権を認めるわけにはいかないのではなかろうか。文字通りの「人でなし」であり、生きる価値があるとは思えない。また、生かしておいても、同じ悲劇を味わう女性が増えるだけだ。ならばやはり、「駆除」するしかないのではなかろうか。
 だからわたしは、ランボー氏の行動を肯定できる。本作でランボー氏が悪党を狩る姿は、まさしく害獣を「駆除」する狩人そのものだ。この映画を観て、やりすぎだと思う人とは恐らく永遠に分かり合えないだろうと思う。
 で。
 やっぱりわたしとしては、Stallone氏を最大級に賛美したいと思う。あまり世の中的な評価を受けていないような気がするけど、Stallone氏は監督もするし脚本も書く、そしてなにより、演技が実に渋くて秀逸で、実に多彩なインテリだというのがわたしのStallone評だ。
 本作では、まず第一に、いまだPTSDに苦しむ男としてのランボー像を見事に表現してましたなあ。どうしても克服できない傷をもつランボー氏は、精神安定剤(?)的な薬が手放せないし、いまだ、心地よいベッドで寝ることもできず、夜な夜な敷地内に地下トンネルを掘って、その中で暮らしている。この設定も秀逸で、その地下トンネルが後半の害獣駆除の罠となるのも最大の見どころの一つだろう。さすがにStallone氏本人も脚本に関与してるだけあって、クオリティはきちんと担保されていたと思う。
 また、ここ10年ぐらい、Stallone氏は、自らの老いにもきちんと向き合っていて、あのランボー氏がボッコボコにやられるシーンもあったりする。そりゃそうだ、いくらランボー氏でも、スーパーマンじゃないわけで、リアルでかつ、痛ましかったですなあ。ハリウッド映画だと、拉致された娘も比較的無傷&救出する側も無傷、なんてことも多いけれど、そんなことがあるわけもなく、女性なら100%凌辱されるのは間違いないし、本作では目を覆いたくなるような地獄絵図で、ランボー氏の怒りと復讐は、わたしにはどうあっても否定できないと感じたっすね。そんなランボー氏を演じたStallone氏の表情は、実に演技として上質でお見事だったと思います。
 しっかし、ランボー氏はこの後、どのようにして生きてゆくのだろうか……。せっかく前作ラストで感動的に終わったのに、今回のお話は必要だったのかという気もする。けれど、やっぱり世には悪党がいっぱいいて、心休まる日々はなかなか訪れないのかなあ……だとしたら、ホントに悲しい世の中ですなあ……。つうかですね、本作での一番の悪党は、娘の実父であり、友達である娘を組織に売ったクソ女の二人だと思うのだが、あの二人のクソ害獣をそのままにしたことだけが、ちょっぴり残念す。まあ、小虫以外の何物でもない小悪党だけど、そういう小悪党こそ、駆除すべきだったかもしれないすな。。。ともあれ、ジョン・ランボー氏の今後に、安らぎの日々が訪れんことを心から祈ります。。。
 
 というわけで、結論。

 伝説の戦闘マシーン、ジョン・ランボー氏が今再び戦う映画、『RAMBO:LAST BLOOD』は、現在50±5歳近辺のおっさんならば今すぐ劇場へ観に行っていただきたい作品でありました。わたしはなんか悲しくなるぐらい心震えましたが、客観的に観れば相当残虐で、あまり人には薦められないような気もします。しかし、わたしは悪党が改心することがあるなんて全く信じていないし、人でなしに人権を認めるわけにはいかないので、駆除されて当然の害獣だと思いました。獣を狩るには入念に準備した罠が必要なわけですが、大変胸のすく戦いぶりだったと存じます。おれたちのStallone氏は、やっぱり演技も秀逸っすね。大変すばらしいスターだと思います。以上。

↓ とりあえず前作は絶対に観ておくべきだと思います。一応つながってるので。
ランボー 最後の戦場 (字幕版)
グレアム・マクタビッシュ
2013-11-26