宝塚歌劇を初体験したのが2010年1月。あれからもう少しで11年になろうとしている。その初観劇が星組公演で、当時のTOPスター柚希礼音さんのあまりのカッコ良さに一発KOをくらい、以来、わたしは星組をイチオシとして、ズカ道に邁進してきたわけだが、あれはたしか2014年の『The Lost Glory』という作品だったと思う。そこで、既に新人公演主役を2回かな、抜擢されてこなしていた礼真琴さん(以下:こっちん)のことを意識したのであった。もちろん、それ以前から、やけに歌が上手い可愛い子がいる、として、こっちんのことは知っていたけれど、この時、まあはっきり言ってチョイ役だったのだが……とにかく歌が上手く、ダンスは超キレており、そして可愛い。と、とにかく、舞台上で目立っていたのである。
 しかし、「可愛い」というのは、宝塚歌劇団に属する男役スターにとっては、誉め言葉にならないかもしれない。むしろ「可愛い」ことは、男役にとってはマイナスかもしれない。それでも男であるわたしの目から見ると、こっちんは女子として普通に、いや、普通以上に可愛いのである。
 以来、わたしはこっちんのファンクラブに入り、ずっと応援してきた。ちなみにわたしは、こっちんのお父さん(有名なサッカー選手)とほぼ同じ年代であり、まあ、残念ながら(?)、わたしがこっちんを見守り応援する様は、完全にお父さんめいております。なのでお茶会などに参加しても、わたしは完全に浮いております……が、いんんだよそんなこたあ! こっちんが舞台上で輝き、その痺れる歌声で劇場を支配するのがわたしの喜びであり、至福の時であるのだから。
 で。そんなこっちんがとうとう、2019年10月14日付で星組TOPスターへ登極した。このように、贔屓のスタ―がTOPになることが、ズカファンにとって最大の喜びであり、わたしも勿論、とてもとてもうれしく、TOPスターとして舞台に立つ姿を早く観たいぜ! と思っておりました。その念願が、とうとうかなったわけですよ!
 というわけで、正式な星組TOPスターとして臨む大劇場公演は来年だけど、現在池袋に新たにオープンした東京建物Brillia HALLなる劇場において現在絶賛公演中なのが、こっちんプレお披露目公演である『ロックオペラ モーツァルト』という作品だ。
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 いやあ……もう既に数多くのズカファンの淑女たちがWeb上において絶賛しているTweetやBlogを見かけましたが、なるほど、確かに! コイツは確かに超最高でした!! 本当に観ることができて良かったよ。
 何度か書いている通り、わたしはチケットをほぼすべて、宝塚友の会の抽選で得ているのだが、この『モーツァルト』はいわゆる別箱公演(=宝塚歌劇団が所有する専用劇場以外での公演)なので、期間も短く、要するにチケットがとても数少なくて、こりゃあ観に行けないだろうな……と思っていたのだが、わたしは幸運なことに友会で普通に当選し、観に行くことができました。しかも10列目、センターブロックの上手側通路ぎわということで、大変良い席でした。
 そして新築のBrillia HALLは、まだうっすら木の香りが残るきれいな劇場だったけれど……まあズバリ言うと小さいし狭いね。音響もそれほどいいとは思えない、まあ、フツーな劇場でした。新築された日本青年館ホールとあまり変わらないかな。
 で。『モーツァルト』であります。物語としては、映画『AMADEUS』だったり、ミュージカル『モーツアルト!』でもお馴染みのものなので、詳しく説明はしません。「天才」と言われたモーツアルトの栄光と挫折、そして死が描かれるものだ。
 しかし、わたしは今回の『ロックオペラ』に対して素晴らしかったと絶賛したいけれど、それはあくまでこっちんのパフォーマンスや、他の演者たちのパフォーマンスに対するものであり、残念ながら物語としては相当問題アリだったように思っている。要するに脚本的にかなりマズイのでは? と思ったのだ。なぜなら、どうもお話の軸が微妙にブレているというか、お話の山場が明確でないように思えたのだ。
 映画『AMADEUS』は、わたしの生涯ベストに入るぐらい大好きな作品だが、あの作品の一番のポイントは、天才モーツアルトと秀才(?)サリエリとの対比にあった。そこに深いドラマがあったのである。しかし、本作『ロックオペラ』は、どうも軸がブレていて、天才VS秀才の軸も弱いし、おまけにコンスタンツェとの恋愛も、お姉さんとの関係もあって、かなり弱い。正直本作だけでは、サリエリのこともよく分からないし、なんでコンスタンツェと愛し合うに至ったのかについても、どうも一本筋が通っていない。さらにミュージカル『モーツアルト!』で大きな軸であった、お父さんとの関係も、本作では全然弱い。なんというか、ごった煮のようになってしまっていて、お話としてはかなりイマイチだったと言わざるを得ない、というのがわたしの結論だ。『AMADEUS』などの作品を観ていない人では、お話についていけなかったのではなかろうか。さらに言うと、セットがやけに簡素なのと、音響がイマイチだったのも、やっぱり残念だったすね……。
 しかし!
 しかしですよ!!
 こっちんが!!! すげえ!!!! のです!!!!!
 歌もダンスも、もう圧巻ですよ。この演目は、現在の宝塚歌劇団においては、こっちん以外に出来ないものだと断言していいと思いますね。もちろん、歌のパワーとしては、最強歌唱力の雪組TOPコンビには一歩譲るかもしれない。けれど、「モーツアルト」という少年の面影を持つ天才像は、こっちんにしか演じえないものだし、あの圧倒的なダンスと歌唱は、こっちんの持ち味全開の、最高のパフォーマンスだったと思います。素晴らしすぎて、ゾクゾクしたっすね。一応、Blu-rayは購入する気満々だけど、これはライブじゃないとダメだろうな……ホント、チケットが買えてよかったす。
 というわけで、以下、キャストと役柄を短く紹介して終わりにします。
 ◆ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト:1756年生まれで1791年、35歳で死去したご存知天才音楽家。本作でもちょっとだけ言及された通り、彼の生きた時代はまさしくフランス革命と被ってます。実際、少年時代にマリア・テレジアの前で演奏したり、マリー・アントワネット王妃と面識があったそうですな。そして今回演じたこっちんのパフォーマンスは、もう最強最高でした。歌、ダンス、そしてビジュアルも強力に輝いてましたね。「笑わないサリエリさんを笑わせよう!」のアドリブコーナーでは、そろりそろり……でカチャ先輩を爆笑させることができて良かったね! アレはわたしも笑っちゃったよ。こっちんのこれからの進化がホントに楽しみですなあ!
 ◆コンスタンツェ:モーツアルトの奥さんとなる女性。作品によって描かれ方がかなり違う。今回演じたのは、こっちんとともにTOP就任した、舞空瞳さん(以下:ひっとん)。102期生首席ということで、もちろんその技量はさすがの腕前だけど、わたしは今のところ、まだひっとんの凄さを十分には分かってません。上手いのはよくわかったけど、わたし的にはまだこれからっす。
 ◆アントニオ・サリエリ:イタリア人。ウィーンの宮廷楽長。演じたのは専科の凪七瑠海さん(以下:カチャ)。カチャさんも89期首席ということで、その実力は最強レベル。わたしは月組時代からカチャさんをずっと見てるし、「エリザベート・ガラコン」でエリザベートを演じているのも見てますが、今回ほど歌が上手い! と思ったことはなかったぐらい、素晴らしいパフォーマンスでした。現在の星組には、キーとなるサリエリを演じられる人材がいないよなあ……とか思ってたので、カチャさんの出演はとても良かったと思うす。見事でした。
 ◆アロイジア:コンスタンツェのお姉さんでモーツアルトの元彼女。演じたのは99期の小桜ほのかさんで、とても歌がうまくて良かった! 新公ヒロイン1回か、路線からは外れちゃってるのかな、でも歌だけでなく演技も非常に上質で素晴らしかったよ!
 ◆ゾフィー;コンスタンツェの妹。基本的に物語にほぼ関与せず。演じたのは、先日突然専科への異動が発表された美貌の星蘭ひとみちゃん。今回、客席降りでわたしの超すぐそばまで来てくれました。ホント美人。かわいい。超小顔! 新公ヒロインも2回やって、抜擢されていくのかと思ったけど……世間的に歌がちょっと……と言われ続けているのが残念す。わたしは十分アリだと思うんだけどな。。。母校の後輩だけに応援していたのだが……。専科に行って、どのような活躍をするのかさっぱり分からないけど、これからも応援しようと思うす。
 ◆ジュースマイヤ:元サリエリの弟子でモーツアルトに出会ってその才能に惚れこむ若者。演じたのは極美慎くん。極美くんは星組の新世代スターとして今後も活躍することでしょう。とにかくそのルックスは実にカッコ良し。芝居もいいと思う。後は歌を一層精進していただきたいすね。
 ◆ヨーゼフII世:モーツアルトを庇護する時のオーストリア皇帝にして、マリー・アントワネットの兄。演じたのは、こっちんの同期である95期第2位入団の実力者、ひろ香祐くん(以下:ひーろー)。今回のような外箱公演だと、普段台詞も少ない役を担うことが多いようなみんな、とりわけひーろーくんの存在感は俄然高まりますな。きっとこっちんが最も頼りにする同期なのではなかろうか。今回はいろんな役でちょいちょい出てましたね。編み込んだ髪型もカッコ良かったよ。歌も上等だし、こっちんの支えとして、ホント貴重な存在だと思うす。
 ほかにも、いっぱいメモしておきたい方がいるんだけど、最後に一人だけ、役名はないよう端役なんだけど、やっぱり雪華りらちゃんの可愛さは舞台上で目立ちますなあ! 今回は、ちょっとだけ狂言回しチーム的役柄もあって、台詞もあって、意外な大人声が非常にいいと思うす。やっぱり抜群に可愛いすね!
 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「敵が一人もいない奴は、味方も一人もいない!」
 今回は結構イケ台詞が多かったすね。その中でわたしが一番グッと来たのがこれでした。正確な言い回しは違ってたかもっすけど、なんつうか、すごく実感として胸に来たっすね。やっぱり、敵のいない奴は大したことないと思うす。こっちん、誰にでも好かれようとしなくていいんだぜ。優等生として、常に先頭を走ってきたこっちん。これからは、名実ともにTOPとして、こっちんの信じる道を全力で駆け抜けておくれ! アンチが出たって構うもんか! その後に、ちゃんとみんなついて来るから、心配しなくていいんだよ!
 
 というわけで、結論。

 わたしの愛してやまない宝塚歌劇団星組の礼真琴さんが、とうとうTOPスターへ登極した。そのプレお披露目公演『ロックオペラ モーツァルト』は、わたしとしては、まず第一に、お話的に微妙に軸がブレていてなんかアレだな、とは思った。が、しかし!! そのお話的なマズさを補って余りありまくるほどのパフォーマンスで、わたしとしてはもう、全世界に向けて、どうだ! 観たか! これが礼真琴だ!! と胸を張って大声で叫びたいぐらい素晴らしいものでありました。Web上のヅカ淑女たちが絶賛しているのも頷けますね。第1幕のエンディングの歌とダンス、あれはもう、本当にしびれたっすね。ホント、幕間で多くの方々が、「ヤバい」「すごい」と絶賛の嵐だったよ。わたしは俺を聞いて、完全にお父さん風に「観たか! これがおれの礼真琴だ!」と、心の中で誇らしくなったす。本当に今後も活躍が楽しみすね! まあ、とりあえずBlu-rayは買いますが、これは本当にライブで観られて良かったと存じます。最高でした。以上。

↓ いつ見ても最高です。記憶にある限り、劇場でわたしが泣いた初めての作品。高校生でした……。
アマデウス(字幕版)
F・マーリー・エイブラハム
2016-10-31