このBlogを始めた2015年8月。一発目の記事に書いたのが、わたしが世界で最も好きな作家Stephen King大先生による『Dr.Sleep』だ。この小説がUS本国で発売になったのは2013年でかなり前なのだが、日本語版が文春から出たのが2015年の6月?で、その年の8月に突然Blogでも書いてみるか、と思ったわたしが一発目に選んだのが、まさしくこの作品である。
 あれから4年数カ月が過ぎた。
 この4年で、まあわたしの人生にもいろんなことが起きた。4年前は全く想像してなかったようなことさえ起きた。この4年で、わたしの毛髪もマジでこれはもうヤバいことを隠せねえ、というレベルまで衰退し、まったく、ままならねえ人生だなあ、と思うことしきりである。
 とまあ、そんなことはどうでもいいとして、今般、その『Dr.Sleep』が映画化され、日本でも公開となったので、さっそく観てきたわたしである。
 まず、結論から言うと、結構面白かったと言って差し支えない。たしかに、原作とはだいぶ違うのは間違いない。もうはっきり言って別物、と言った方がいいのかもしれない。けれど、映画的な面白さというか、映像としてはきちんとクオリティの高い作品であると思うし……いや、つうかですね、ズバリ言うと、本作は原作小説『The Shining』の続編というよりも、Stanley Kubrick監督による映画版『THE SHINING』の続編だったな、と思う。
 ここが最大の問題だ。
 ちょっと前の映画『READY PLAYER 1』の中のなぞなぞにあった通り、原作者たるKing大先生はKubrick監督版映画『THE SHINING』を全く気に入ってないわけで、さっき改めて原作小説『Dr.Sleep』をぱらぱら読んでいて発見したのだが、King大先生はそのあとがきで、本作(=原作小説Dr.Sleep)は、あくまで自分の小説The Shiningの続編である(=間違ってもKubrick監督版映画THE SHININGの続編じゃない)という意味のことを書いてるんだよね。自作小説こそが「正史」だとさえ書いているのだから、たぶん今でもKubrick監督版はナシ、と思ってらっしゃるのかもしれない。
 とはいえ、わたしは原作小説『The Shining』は大好きだし、一方でKubrick監督版『THE SHINING』もアリというか好きなので、ちょっと微妙な立場なのだが、もう一度はっきり断言すると、本作、映画版『DOCTOR SLEEP』は、明らかにKubrick監督版『THE SHINING』の続編、という作りだったと思う。
 で、映画版『DOCTOR SLEEP』と原作小説『Dr.Sleep』のどちらが面白いか? と聞かれたら、まあ、そりゃ原作小説『Dr.Sleep』の方がずっと面白い、と答えますな。これも間違いないす。

 というわけで、もう物語については説明しません。詳しくはわたしが本Blog一発目に書いた記事を読んでいただきたいのだが、ざっとまとめると、『The Shining』の惨劇を生き延びたダニー少年がアル中のおっさんとなり果てた後のお話で(ダニーからダン、と呼ばれ方も変わっている)、実のところ本筋は『The Shining』とはあまり関係がなく、人間の「命気(Steam)」を吸うことで数百年だか数千年?生き続けている吸血鬼的な「True Knot」という邪悪な連中と、そいつらが狙う強力な「かがやき能力(=The Shine)」を持つ女の子の物語だ。ちなみに原作小説では「True Knot」は「真結族」と訳されていて(※映画字幕では「真の絆」と訳されていた)、より文学的というか美しい翻訳だと思う。
 そして本作映画版の『DOCTOR SLEEP』は、予告の通り完全にKubrick監督版のあの『THE SHINING』の続編! という方向性でプロモーション展開されている。おそらくそれは、正しいやり方だろうとは思う。
 どうしてその方向性が正しいと思うか。それは、全世界に衝撃を与え? 映画史史上でも超有名となったあのシーンが効果的に使えるからだ。何を言ってるかおわかりですね? そう、狂気にとらわれたJack Nicholson氏がドアを斧で叩き割って空いた穴から「おこんばんは~」と顔をのぞかせるあのシーンのことです。あのドアを、再び画面に登場させるインパクトはかなり大きいと思う。実際、わたしも、おお! とか思ったし。そしてそのためには、原作とは違う展開にせざるを得ないのだ。
 というわけで、決定的に原作小説と映画版で異なるポイントを2つだけメモしておこう。
 ◆あの「オーバールック・ホテル」の扱い
 実は、原作小説『The Shining』のラストで、あのオーバールック・ホテルは爆発炎上してしまっている。結果、その続編小説『Dr.Sleep』では、ファイナルバトルの地ではあるけど、跡地としてしか出てこない。建物自体はとっくになくなっているので。
 そして一方Kubrick監督版『THE SHINING』ではホテルは残っているため、今回の映画『DOCTOR SLEEP』ではファイナルバトルの舞台としてホテル自体も堂々の再登場となっている。TOHO日本橋で本作を観た方は、足元のじゅうたんに注目ですよ! 同じ柄なので!!
 ◆女の子とダンの関係
 King大先生が、自作を「トランス一家の正史」であると書いている通り、実は、原作小説『Dr. Sleep』において「真結族」に狙われる強力な「かがやき」能力を持つアブラという女の子は、主人公ダンの本当の姪、ということになっている。それが判明するのは物語の後半だが、ダンとアブラのお母さんは腹違いの兄妹で、さらに言うとその母であり、ダンの父、ジャック・トランスと子(=アブラのお母さん)をもうけた女性も、原作では重要な役割を担っている。そのあたりの設定も、本作映画版『DOCTOR SLEEP』ではバッサリとカットされてしまっている。これはとても残念で、とりわけラストが全然違ったものになっているのもとても残念だ。原作小説だと、最後にジャックの幽霊(?)が助けてくれて、結構感動的なのになあ……。
 とまあ、こんな大きな違いがあって、本作映画版『DOCTOR SLEEP』は明らかにKubrick監督版『THE SHINING』の続編であると結論付けるべきだろうと思う。そして、わたしとしては小説の方が面白かったと思うが、それでもやっぱり、映画版『DOCTOR SLEEP』もそう悪い出来ではなかったように思っている。それはやっぱり、映像の持つ、直接的な力なんだろうと思うわけだが、役者陣も大変すばらしかった。最後に、各キャラと演じた役者をメモして終わりにしよう。
 ◆ダン:少年時代ダニーと呼ばれていたが、『The Shining』の事件ののち、「一生雪は見たくない」と母とともにフロリダへ移り住む。が、そこでもダンの持つ「かがやき」能力のために、ホテルにいた幽霊たちが見えて困っていた。そんな時、『The Shining』事件で大いにダン(ダニー)を助けてくれた「かがやき」能力の先輩であるディックおじいちゃん(映画ではあまり活躍しないけど小説では大活躍する)が、「頭の中に鍵付きの箱を思い浮かべ、その中に封じ込んでしまっておくんじゃ」と対処法を教えてくれ、その後は明るく成長していくが――残念ながらアル中のおっさんとなってしまう。このアル中からの克服がダンにとって大きな物語なんだけど、これも映画版ではほぼカット。残念。そんなダンを演じたのは、マスター・オビ=ワンでお馴染みEwan McGregor氏48歳。大変な熱演で、非常に良かったと思います。ま、ズバリ言うと、本作映画版のラストでダンは殉職しちゃいますが、原作小説では死にません。あともうひとつ、さっきWikiで知ったのですが、Kubrick監督版『THE SHINING』でダニー少年を演じたDanny Lloyd氏は現在46歳かな? なんと今は生物学の大学教授なんですって。そして本作の野球場のシーンにカメオ出演してたらしいです。
 ◆ローズ・ザ・ハット:真結族のリーダーで年齢不詳。人の「命気」を吸って生きながらえる邪悪な存在で、とりわけ「かがやき」能力を持つ人間の「命気」が美味らしい。しかも、苦痛に苦しむ時が一番うまいらしく、拷問して命気を搾り取るのが恐ろしい。そしてこのローズが、映像として超最高でしたねえ!! 演じたのはRebecca Ferguson嬢36歳で、小説を読んでいるときはかなりのおばちゃんだとイメージしていたけれど、なんか超エロ美女で最高だったす。そして野球少年を拷問するシーンも、小説以上のショックはやっぱり映像の力でしょうな。あのシーンはもうほんとに痛ましく、やめろ!! と言いたくなるんだけど、映像的には最高に素晴らしかったすね。ちなみに、原作では野球少年の命気にもひとつ重要なポイントがあるのだが、全く触れられず残念でした。けど、とにかく映像で見るローズはやけにエロくて最高だったす。
 ◆アブラ:超強力な「かがやき」能力を持つ少女。彼女の能力発揮は映像的に良く描けてたように思う。けど、やっぱりいろいろと原作とは違ってました。が、まあ、アリだと思う。演じたのはまだほとんどキャリアのないKyliegh Curran嬢13歳(?)。この子は意外と美人に育ちそうな顔立ちですな。
 ◆ビリー:アル中となって街に現れたダンに優しくいろいろ世話を観てやる先輩元アル中の男。原作だと超大活躍で、もっとおじいちゃんレベルの年齢だったけど、今回の映画版では、結構いろいろな作品で見かけるCliff Curtis氏50歳が熱演。あの殉職シーンは超ショックでしたが、映像的に非常に良かったというか効果的だったと思う。彼も原作小説では死にません。
 ◆スネークバイト・アンディ:元々、人に催眠をかける「かがやき」能力を持つ少女だったが、ローズに発見され、この能力はいろいろ役立つ、ということで命気を搾り取られることなく、逆に命気を吹き込まれて真結族の仲間に。物語上ではあまり大きな役割ではないけれど、非常に印象に残りますな。それはおそらく、演じたEmily Alyn Lindちゃんがかわいいからだと思います。おおっと!? な、なんてこった! この子、Keanu先輩のトンデモ作「REPLICAS」の主人公の娘じゃないか!? 全然気が付かなかった!!
 ◆ジャック・トランス:ダンの父にして『The Shining』で狂気にとらわれるお父さん(※ありゃあ、正確に言うとアル中で幽霊に憑依された、というべきなのかも……)。原作小説では感動的に登場(?)するのだが、本作映画版でも、幽霊としてうっすら登場。そして! わたしは見ながら全然気が付いてなかったけど、なんと今回演じたのは、あの『E.T.』のエリオット少年でお馴染みHenry Thomas氏ですよ! なんと現在48歳か。最近話題の『E.T.』のその後、の動画も貼っときます。


 というわけで、もう長いし書いておきたいこともないので結論。

 わたしの結論としては、映画『DOCTOR SLEEP』という作品は、まぎれもなく名匠Stanley Kubrick監督の映画版『THE SHINING』の続編である。そして一方では、原作小説『Dr. Sleep』という作品は、著者であるStephen King大先生自ら、自作の小説『The Shining』の続編であると言っておられるわけで、結果、小説の『Dr. Sleep』と、映画の『DOCTOR SLEEP』は別モノである、ということでいいのだと思う。が、別物であっても映画『DOCTOR SLEEP』は十分面白かったと思います。あの「オーバールック・ホテル」が再びスクリーンに登場したことも、確かに興奮したし、とりわけローズが素晴らしかった! 何なのこのエロ美女! と大興奮したっすね。ただ、Kingファン的には敵が意外に弱いのが若干アレではあるし、King作品でお馴染みの(?)、ズタボロにされて超絶望、からの大逆転! という展開は、本作にはないすね。まあ、結論としては、わたしとしては原作小説の方がずっと面白いと思います。なので、映画は映画で十分アリではあるのだけれど、ここはぜひ、『The Shining』と『Dr. Sleep』の原作小説を読むことを強くお勧めします。以上。
  
↓ ぜひ! 読むべし!

シャイニング(上) (文春文庫)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2015-04-17

シャイニング(下) (文春文庫)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2015-04-17