今を去ること34年前。1985年。わたしは高校生になったばかりで、もう既に順調に映画オタクの道を邁進していたわけだが、その年公開された『THE TERMINATOR』という作品には大興奮したことを今でもよく覚えている。一緒に観に行ったのは当時一番仲の良かったO君で、今はもう跡形もなくなってしまった松戸の輝竜会館という映画館にチャリで観に行ったのであった。そしてその6年後、28年前の1991年には『TERMINATOR2:JUDGEMENT DAY』が公開され、当然劇場へ2回観に行ったほどである。1回目は錦糸町での先行オールナイト興行へ、2回目は有楽町マリオン11階にあった、今はもうなくなった日本劇場へ観に行ったのである。ちなみにその後、わたしはこの『2』を家で大迫力で観るために、レーザーディスクプレイヤーを買い、さらに当時最新鋭だったドルビー・プロロジックIIサラウンドを搭載したAVアンプやスピーカーなどを揃えて、大音響で夜中観ていたら近所から叱られたという逸話もある。要するに言いたいことは、わたしは『TERMINATOR』というIPには大変思い入れがあるということである。
 その後、シリーズは『TERMINATOR3:The Rise of Machine』が2003年、『TERMINATOR:SALVATION』が2009年、『TERMINATOR:GENESYS』が2015年と作られていくわけだが、どの作品も、つまらなかったとは言わないけど……やっぱり、正直それほど興奮しなかったというか……結局、いつも同じなんだよね……。なので、もうこれ以上は作らなくていいんじゃね? と思っていた。なお、わたしとしては、世間的に非常に評価が低い『3』は一番設定として正統(?)で、真面目に考えるとあのお話になってしまうと納得しているので、実はそれほど嫌いじゃない。つうかむしろ、『3』は非常に出来が良いと思っている。
 ところで、『1』と『2』に共通していて、そのほかの作品にないものは何か。それは実のところ明確で、原作者たるJames Cameron氏がクリエイションに関与していない、という点だ。言ってみれば二次創作なわけで、そりゃあ、オリジナルたる『1』『2』と比較するのがそもそも間違っていると思う。
 というわけで、『TERMINATOR』を冠する作品が公開されると、わたしとしては、まあ、観に行くけど、どうだろうなあ、という態度にならざるを得なかったわけだが、今般、とうとう原作者Cameron氏が製作総指揮にクレジットされる『TERMINATOR:DARK FATE』なる映画が公開されることとなった。というわけで、わたしとしてはその出来を確認すべく、劇場に行かざるを得ないわけである。
 ――が。観終わった今、感想を一言で言うと、び……微妙かな……やっぱり……。どうだろう、これは……ううむ……面白かった……のかなあ?? 何とも現状では評価できないというか……やはり本作もまた、完全に別モノというか……続編というよりも二次創作といった方がよいのではなかろうか……。。。

 物語はもう、いつもの通りである。
 未来で何かを成す、メキシコ在住のダニーなる女子がいる。そのダニーを殺そうと未来から送られてきた新型ターミネーターRev.9と、逆にダニーを助けるために未来からやってきた強化人間グレースが、ダニーをめぐって大バトルを繰り広げるお話である。
 本作で最も特徴的なのは、これまでのシリーズでは必ず出てくる、「スカイネット」と「カイル・リース」が一切登場しないことであろうと思う。
 「スカイネット」とは、軍事用人工知能(?)で、未来において人類を敵として殺しまり、そもそものターミネーターを過去へ送る存在である。そして「カイル・リース」とは、未来における対スカイネット戦争の人類側リーダー、ジョン・コナーが、1984年の過去に送られたターミネーターが狙う自らの母、サラ・コナーを救うべく遣わした未来人だ。
 この「スカイネット」と「カイル・リース」こそが基本で、これまでのシリーズにはほぼ必ず出てくるわけだが今回は、出番ナシ、である。
 思うに、この構造は、ある意味強固な縛りだったような気がする。というのも、(未来の)ジョンは、父親であるカイルを、死ぬとわかっていても1984年にどうしても送り込まないといけないからだ。じゃないと、自分が生まれないのである。そしてカイル・リースを過去に送るための条件という意味で言うと、「ジャッジメント・デイ」も、どうしても起こらないと困るのだ。「ジョンが生まれる=カイルが1984年にやってくる」ことが必須だとすると、そうなってしまうのである。
 なので、超名作と呼ばれる『2』で、泣けるめでたしめでたしエンドを迎えても、真面目に考えると「ジャッジメント・デイ」は回避できなかったという方向にしか脚本開発はできない。だから、あの『3』になったのだとわたしは考えている。アレはアレで、まったく正しいというか、ありうべき「続編」だったと思うのである。そういう意味では、わたしにとって「正当な続編」はやっぱり『3』であり『4』だ。『GENESYS』は……ちょっとアレかな。。。
 で。本作はこの最も基本設定となる「スカイネット」と「カイル・リース」は出てこない。この点はある意味ブレイクスルーと言えるような気がしている。カイルが1984年にやってきて、ジョンは生まれているが(=1と2の物語の出来事は起こったが)、『2』の出来事によって、カイルを1984年に送った未来はもう存在していない、けど、それでいいのだというスタンスである。
 これは、タイムスリップものの物語としては、実はアリ、だと思う。まあ、真剣に考えると全然違うけど、『END GAME』の設定と若干似ていて、「起こったことは変わらない」「ただしこれから起こる未来は、行動によって別の未来が生まれる」方針を取っているのだ。テキトーにパワポで図を作ってみると、こういうことだと思う。あくまでジャッジメント・デイは起こってしまったとする『3』はもうあり得なくなっちゃった(ただしカイル・リースを1984年に送ろうとする未来を描いた『4』は、ある意味『1』の前日譚としてまだ有効で、本作と矛盾しないと思う)。
Terminator02
 わたしとしては、本作のこの基本方針は全く非難しないし、アリだとは思う。しかしなあ……はっきり言って、「スカイネット」に代わる「リージョン」なるAI(?)の存在感は希薄だし、結局のところ「スカイネット」そのもので名前が変わっただけだし、最新ターミネーターRev.9もT-1000とあまり変わらないし、さらに言えば、そもそもダニーなる女子の魅力が薄口すぎて、どれほどリージョンを苦しめ、狙われる存在だったのかも、実は全く実感がわかない。結局のところ、レジェンドたるサラ・コナーとT-800モデル101を出したかっただけじゃね? としか思えなかったような気がするなあ……。
 というわけで、本作のポイントは以下の2つだけだったような気がします。
 ◆サラ・コナーとT-800モデル101のその後
 サラ・コナーは、『2』ののち、「ジャッジメント・デイ」を回避することに成功し、予言されていた1997年8月29日を無事に迎える……が、そのめでたい日に、ジョンがT-800に殺されるシーンから本作は始まる。まあ、実はスカイネットはいろんな過去へターミネーターを送っていた、という設定は、別に問題ないだろう。でも、前述のように、結局はほぼ同じである「リージョン」がダサすぎるというか……ジョンを失って絶望したサラをもう一度戦わせるために、無理やり作られた設定にしか思えなかったすね。
 さらに、ジャッジメント・デイにジョン殺害を成功させたT-800のその後も、これは若干『GENESYS』の設定をパクって、サイボーグなのに老化する、というのは許せるとしても、「目標達成後の機械」に妙な良心が芽生えるというのは、結局Schwarzenegger氏をもう一度登場させるための苦し紛れ設定のような気もしますなあ。。。おまけに、時間変位を感知できるってのはやっぱりチョイ乱暴というかとってつけた感があるよね。。。
 いずれにせよ、戦う本家サラ・コナーをオリジナルのLinda Hamiltonさんはカッコよく演じてくれたし、御年72歳のArnold Schwarzenegger氏も貫禄たっぷりで、お二人の演技には何ら文句はないっす。しかし、やっぱり『2』当時のサラは本当にカッコよく美しかったですなあ……。『2』の登場ファーストカットの、病室で一人トレーニングをしている時の腕の筋肉の美しさは忘れられないすね。あと、そうだ、『2』でジョンを演じたEdward Furlong君がCGで登場するのはびっくりしたっすね(※そのシーンには『2』当時にデジタル若返りしたLindaさんも出てきます)。まあ、今の彼はご存じの通りダメ人間のおっさん(42歳)になり果ててしまったのだが、『2』当時は本当に美少年だったすなあ……こういうCG出演って、どうなんでしょうか……。
 ◆強化人間グレース大奮闘
 わたしとしては、本作に登場する未来からやってきた強化人間、グレースは大変すばらしかったと思う。ただ、活動許容時間を過ぎるとオーバーヒートしちゃうのは、完全に超名作『UNIVERSAL SOLDIER』そのものでしたな。いっそ、ユニ・ソルのように全裸で氷風呂に入ってほしかったわ。演じたのは、去年の夏に観た『Tully』での好演も記憶に新しいMackenzie Davis嬢32歳。本作では非常に美しい、鍛えられた体でしたなあ。アクションも大変お見事でした。人間には出来ない動きが、やたらとカッコよかったすね。
 というわけで、わたしとしてはもう、新型Rev.9はどうでもいいし、狙われるダニーもどうでもいいので、演じた役者のことも以下省略です。
 ひとつだけ。監督についてメモしておくと、本作を撮ったのは、『DEADPOOL』で一躍名を挙げたTim Miller氏である。動きとカットの途切れない画面ワーク、それから銃や爆発の効果などはさすがすね。それほど残虐描写もなかったけど、別にそれを売りにされても困るし、大予算の大作として、非常に手堅くきっちりまとめられたのではないかしら。問題は脚本だろうな……もうチョイ、ダニーが狙われる理由をきちんと描いてほしかったすね。いっそ、リージョンの発明家で、逆に人類側がダニーを殺しにやってくる、そしてリージョン側がダニーを守ろうとターミネーターを派遣する、みたいな、まったく逆の構造も考えられたんじゃないかしら。でも、人類側はやっぱりダニーを殺せない、みたいに、『2』でダイソンを殺そうとしてできなかったサラの葛藤みたいなのが、今回再び描かれても良かったように思うす。わたしだったらそうしたね。その方が面白そうじゃないかな? どうでしょ?

 というわけで、もうさっさと結論。
 何度も繰り返し描かれてきた『TERMINATOR』の物語だが、ついに生みの親であるJames Cameron氏製作総指揮の元、再び新作『TERMINATOR:DARK FATE』なる作品が公開されるに至ったのでさっそく観てきた……のだが、結論としては、本作もまた、これまでの「続編」同様に、「二次創作」であったと言えるのではなかろうか。ただし、お話としては、ある意味シリーズの呪縛(?)だった、スカイネットとカイル・リースを無視していて、新しい別の未来を描いている点は、興味深い違いだと思う。思うのだが……それが面白く成功しているかというと、かなり微妙だったかな……と言わざるを得ないだろうな……。せっかく呪縛を破った新しい未来を描くなら、もうチョイやり方はあったような気がしてならないす。つうかですね、なんか、製作側から「3以降はなかったことに」とか言われると、実に腹立たしく思いますな。なかったことにできるわけないじゃん。そういう点が、わたしがFOXが嫌いな点ですよ。ホント馬鹿にしてるというか、不愉快極まりないことをいともたやすくやる(言う)のが頭に来るね。さっさとDISNEYの一部門として降るがいい! 以上。

↓やっぱり未だ色あせない名作ですなあ……最高です。あの頃はわたしも若かった……。。。
ターミネーター 2 審判の日 (字幕版)
アーノルド・シュワルツェネッガー