このBlogで、もうおそらく50回ぐらい書いているのだが、今回も敢えてこのセリフから始めよう。わたしがこの世で最も好きな小説家は、Stephen King大先生である!
 というわけで。2年間、35M$の予算で製作され、公開されるや全世界で700M$も稼ぎ、大ヒットとなった映画『It』。1USD=108JPYとして、37.8億円投資したものが756億円で戻ってきたわけで、莫大な利益をもたらした作品だが、King大先生のファンであるわたしは、公開前は結構懐疑的だったのである。なんで今さら「It」なんだ? そもそもあの長大な『It』が2時間で描けんのか? という感じで、ズバリ言うとほとんど期待はしてなかったのである。
 しかし!
 公開された『It』は、予想を大きく上回る面白さで、とりわけ、子供時代編と現代大人編の2つの時間軸がある原作を、その子供時代編だけに絞って切り取り、超見事に映像化されていたのであった。さらに言うなら画面のクオリティは極めて高品位で、特に「黒」の表現が非常に巧みであった。なるほど、現代最先端の技術を使うとここまで鮮明で見事な映画になるんだな、という当たり前のことが妙に新鮮だったのである。
 そして2年前に公開された『It』は、そのラストで正式?なタイトルとして『IT Chapter1』と堂々とクレジットされるに至り、おお、つまりこれは、「大人編」も作る気満々じゃねーか! とわたしは歓喜したのであった。
 というわけであっという間に2年の月日が流れ去り――とうとうその続編たる『Chapter2』が公開されたので、わたしもさっそく観てきたわけである。
 が……うーん、そうだなあ……まず一言で言うと、原作とかなり違う。正直わたしは原作小説のラストを明確には記憶していないけど、これは間違いないと思う。そして、原作はとりあえず抜きにしても、映画として、まず長い。そして、若干、あれっ!? というエンディングであったような気がしている。これは……なんかいろいろはしょられたというよりも、別物になっちゃったかな、という気がする。
 ただし、だからと言ってつまらなかったとは言わない。わたし的には、この映画には3つの見どころがあって、その点では非常に満足であります。大絶賛はしないけど、十分面白かったすね。可能なら、『Chapter1』をもう一度見て、すぐこの『Chapter2』を観るのが一番いいような気がするっすね。ちなみに本作『Chapter2』も、US本国及び諸外国では9月にもう公開になっていて、USでは245M$稼ぎ、全世界合計では456M$稼いで大ヒットとなっている。すげえなあ!

 ところで、前作でも書いたが、日本版タイトルには意味不明などうでもいいサブタイトルがついているが、まったくセンスを感じないのでゴミ箱行きでいいだろう。なのでその邦題サブタイトルは一切記載しない。
 というわけで、お話は『It』の27年後である。メイン州デリーという、King大先生の作品で非常によく出てくる街には、27年周期で大量殺人(というより行方不明者というべきか)が起きていて、前作『Chapter1』では1988年、そしてその27年後、2015年の出来事を描いたのが本作『Chapter2』だ。まあ、簡単に言うと、前作では「それ=It」に出会ってしまった少年少女たちは、超がんばって「それ」を撃退することに成功したものの、完全な駆除には至っておらず、今回、ケリをつけるというお話だ。前作では、スクール・カースト最底辺の「負け犬クラブ=Losers」のちびっ子だった彼ら&彼女は、今やすっかり大人となって、それぞれの生活をしている。が、一人だけ27年間デリーから離れずにいたマイクから、「アレがまた出た!」という電話を受けて、再集合するところからお話は始まる。
 ここでさっそく、わたし的見どころその1)を紹介しよう。
 そうなんです。今回の「大人編」は、前作でちびっ子時代を演じた子役のみなさんと、ことごとく似ている、面影のある役者で作られているのであります! まずはこのキャスティングがスゴイというか素晴らしい! とわたしは讃えたいと思う。
 さらに、わたし的見どころその2)も紹介しておくと、もうわたしは劇場で大興奮して、登場した時思わず、おおっと!? と声を出してしまったのだが、なんとなんと、Stephen King大先生ご本人がとあるキャラクターで登場するのであります!!! King大先生の顔を知っている人なら、すぐわかったはずだが、恐らく劇場の皆さんは全然気が付かなかったんだと思う。けど、マジでわたしはまさかのKing大先生登場に興奮したっすねえ!! しかも、台詞もあるし、何気に登場シーンが長い! ヒントは、主人公ビルがかつて自分が乗っていたチャリンコを発見して300ドルで買い取るシーンですよ! このKing大先生のまさかの登場からわかることは、つまりKing大先生もこの作品をとても気に入っているということで、原作とかなり違った物語だけど、全然アリ、King大先生納得済みということだろうと思う。
 で。物語的にわたしが残念に思ったのは、原作で(あるいはKingワールドで常に「善」を体現するものとして)登場する「亀」が物語に絡まなかったことだ。前作でも今回でも、「亀」はチラッと登場するけど、「It=それ=邪悪なる存在」と対になる「善なる存在」としての「亀」が物語に何の役割も与えられなかったことだけが残念だ。
 そして、どうしてもキャラクター一人一人の過去と感情を追わなくてなならない必要があるために、結果的に映画全体が長くなってしまう。本作は上映時間169分もあるのだが、仕方ないとはいえ、やっぱり長いし、それにしてはエンディングが結構あっさりしちゃっているので、その点もちょっとだけ残念だったかもしれない。
 しかし、そういった物語上のアレな点を帳消しにしてもいいぐらい素晴らしかったのが、わたし的見どころその3)、映像そのものの素晴らしさ、であろうと思う。とりわけ原作ファンでも大興奮できたのは、「It」の最終形態である「蜘蛛」型Itの映像化ではなかろうか。あれはもう、原作では想像するしかなかった姿を見事に映像化してくれましたなあ。若干エイリアン・クイーン的でもありましたが、原作を読んだ時のわたしの想像を超える見事な造形だったと思います。そして今回も、「闇」、とりわけ「黒」が見事でしたなあ! これは話題のDOLBY-シネマで観るべきだったと悔やまれますな。他にも映像的にはペニーワイズと風船なんかも、どのシーンでも非常にシャープというか鮮明で、実に映像として美しさすらあって、とても印象的でしたな。こういう映像力は小説の文字を超える力があると思うっすね。実にお見事でした。
 というわけで、最後に今回の「大人編」を演じた負け犬クラブの面々をメモして終わりにしよう。見どころ1)で書いた通り、子供辺と大人編ですげえよく似ている役者が起用されてるわけですが、その外見はもちろんなんだけど、キャラクターとして、きっちり似ているというか統一されてるというか、まさしくこの子が大人になったらこうなるっていうのが見事に表現されてたと思うっすね。
 ◆ビル・デンブロウ:演じたのはヤング・プロフェッサーXでお馴染みJames McAvoy氏。子供時代編を演じたJaeden Martell君に似てますな、やっぱり。どもりもすっかり治り、作家として活躍する大人ビルも、デリーに帰郷し、Itと対峙するとどもりが再発してしまうのだが、若干、McAvoy氏のどもり演技は不自然だったような……その点は子役のJaeden君の方が上手かったような気がしますね。
 ◆ベバリー:負け犬クラブ紅一点の勇敢な女子。演じたのはJessica Chastainさん。子供時代編を演じたSophia Lillisちゃんとはちょっと雰囲気が違うすね。今回唯一子役とイメージが違うような。目が違うのかな。。。
 ◆ベン:子供時代はデブで奥手ないじられキャラだった彼が、大人になってからはすっかりスリムなイケメンに成長。でも、ちょっと写真をよく比べていただきたい。大人編のJay Ryan氏と、子供時代編のJeremy Ray Taylor君、なんかね、似てんすよ、やっぱり。特に目が面影あるんすよねえ! 大人編のJay氏は、若干ドクター・ストレンジっぽいんすけど、やっぱベンなんすよ。これはお見事なキャスティングだったと思うすね。しかしベンも27年を経てやっとベバリーへの想いが通じてホント良かったね!!
 ◆エディ:喘息持ちで毒舌なエディも大人編を演じたJames Ransone氏とJack Dylan Grazer君は同一人物のようなキャラ同一性が保たれてましたな。ちなみにDylan君は、かの『SHAZAM!』でフレディを演じてくれたあの子です。アレも見事な演技でしたな。
 ◆リッチー:メガネの毒舌トーキングマシンなおしゃべりキッズ。しつこいけど、大人編のBill Hader氏と子供時代編のFinn Wolfhard君はホントによく似てます。
 ◆スタンリー:大人編のスタンリーはすぐに自殺してしまうので(これは原作通り)ほぼ出番はないですが、回想で出てくる子供時代編のWyatt Oleff君と大人編のAndy Bean氏はやっぱりホントに似てますね。ちなみにWyatt君は、かの『Guardians of the Galaxy』で地球から連れ去られる子供時代のピーター・クィルを演じてくれた彼っすね。
 ◆マイク:唯一デリーに住み続けて、「It」の謎を追い続けていたマイク。ホントしつこいけど、子供時代編のChosen Jacobs君と今回の大人編のIsaiah Mustafa氏はマジそっくりす。
 とまあこんな感じだが、最後に監督のAndrés Muschietti氏を称えて終わりにしよう。アルゼンチン出身の監督だが、わたしがほめたたえたいのは、その映像のシャープさと言えばばいいのかな、キレがあるんすよね。非常に高品位だと思う。目に鮮やかな風船の赤と真っ暗闇とか、やっぱり色のセンスなのかな? 色の対比、色彩設計が非常に見事だったと思う。そして音楽のつけ方もとても上品かつ効果的で良かったすねえ! 今後、どんな作品を取るのか知らないけどIMDbによれば、『Attack on Titan(=進撃の巨人)』ハリウッド版の監督に、なんてアナウンスされてるようで、非常に気になりますな! とても才能ある監督だと思います。

 というわけで、もうまとまらないので結論。
 2年前からずっと楽しみにしていた『IT Chapter2』がとうとう日本でも公開になったので、さっそく観てきたわけだが……原作と比較すると、かなり違いがあってもはや別モノ? という気もするし、とにかく2時間49分は長い! と思うけれど、一方では、とにかくキャスト陣が子供時代編とつながっている感が保たれた、似ている俳優ぞろいで実に興味深かったし、映像的にもとてもキレがあって、結論としては大変楽しめました。なにより、King大先生の大ファンとしては、King大先生がスクリーンに登場して、台詞も結構ある役を演じる姿に大興奮であります! このシーンだけでもわたしは楽しめました。ホラー映画?とカテゴライズするのが普通なんだろうけど、実際、物語を知ってても、うぉっと、やっべええ!! といちいちびっくりするような演出も楽しめたっす。素っ裸の老婆がベバリーを襲うシーンがわたしは一番怖かったす。アレはヤバかったすね! というわけで、原作とは違っていても、この映画はアリ! が結論です。以上。

↓ あーあ、2年も時間があったんだから、もう一度ちゃんと原作読んどくべきでした。アホだった……電子で全巻全館買い直しておいたのに。。。そしてもう一度『Chapter1』を見直しておくべきでした……。
IT(1) (文春文庫)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017-10-03