わたしは宝塚歌劇をたしなむ世間的には珍しい男だが、まあ、最近は劇場に男の姿も結構見かけるようになっており、「珍しい」とは言えなくなりつつあるような気もする。
 そんなわたしは、2010年に一番最初に観た宝塚歌劇が当時のTOPスター、レジェンドと呼ばれる柚希礼音さん率いる「星組」であったため、ずっと星組をイチオシで応援している。
 以来、ズカ用語でいうとわたしのファン歴は「研10」なわけだが、星組以外の他の組の公演も可能な限り観に行っているわけで、もうこの10年で数多くのTOPスターの卒業を見送ってきたのだが、今年は2人の稀代のTOPスタ―が退団を表明しており、わたしとしては非常に淋しいというか、しんみりな心情なのであった。
 一人は、現在本拠地である宝塚大劇場(以下:大劇場)で退団公演中の、花組TOPスター明日海りお(以下:みりお)さんだ。みりお氏については、11月に東京で見送る予定なのでその時書くとして、既に大劇場にお別れを済ませ、現在東京宝塚劇場(以下:東宝)にて退団公演を上演中なのが、我が星組の紅ゆずる(以下:紅子先輩)さんである。
 紅子先輩は、わたしのズカ歴10年の中でもかなり特異なTOPスターで、カッコいいのはもちろんとして、その最大の持ち味はコメディエンヌとしての笑いのセンスだ。それは紅子先輩のオンリーワンの才能であり、悪ぶっているけど泣かせる、冗談ばっかり言ってるけど泣かせる、というキャラが多くて、いつも紅子先輩は、散々笑わせた後で、最後には泣かせてくれるのだ。
 その紅子先輩がとうとう卒業の時が来た。そして演目は、その設定やポスター画像からして、なんじゃこりゃ!? と思わせるようなコメディ作品であり、わたしとしては、もう行く前から、笑い、そして泣く準備は完了しており、昨日は日比谷へ赴いたのである。

 どうすか。もう、控えめに言って最高だよね。かなりトンデモストーリーで、腹を抱えて笑っちゃいました。そんな面白物語をまとめてみると、まず冒頭は、ヒロイン・アイリーンの幼き頃である。アイリーンは子供のころから、有名な孫悟空ではなくて、そのライバルでアンチヒーローである紅孩児(こうがいじ・牛魔王と鉄扇公主の子供)が大好きな活発な女子だった。一方天界では、その紅孩児が暴れて、どうやら現世へ……となったらしい。そして時は過ぎ、カワイイ大人に成長したアイリーンは、シンガポールで屋台経営をしていたが、そこは巨大資本の手によって地上げで立ち退きを迫られており、その資本系列の三ツ星シェフ、ホンと出会う。だがホンはなかなかの俺様ぶりで煙たがられており、巨大資本から追い出され、落ちぶれてしまう。そして行きついた先はアイリーンの屋台で、二人は屋台を守るために巨大資本に立ち上がるのだが、実はホンこそが天界から転落(?)してきた紅孩児だった―――的なお話であった。サーセン。いつも通りテキトーにはしょりました。
 まあ要するに、反目し合う男女がやがて恋に落ちて、一緒に巨大な敵と戦う、そしてラストは見事勝利して、めでたしめでたし、となるような、ある種のテンプレめいたお話なのだが、今回は随所に退団公演という空気感が織り交ぜられており、まさしく笑って泣いて、ハッピーなエンディングは湿っぽくはならず、笑ってお別れを告げるという紅子先輩の本領発揮、であり、実に紅子先輩の退団公演らしい作品であったと思う。非常に面白かったすね!
 というわけで、見どころとしては、当然、以下の4名の方々にあったわけですが、やっぱりそれぞれ皆さん素晴らしかったですなあ! なんか、ホントにこれで紅子先輩と一緒に退団するTOP娘役の綺咲愛里(以下:あーちゃん)さんとお別れかと思うと、マジで淋しいっすね……。
 ◆紅ゆずるさん:紅子先輩。当然演じたのは主人公のホン・シンシン。やっぱり最高でしたな。絶対この役は紅子先輩にしかできない役だったね。とにかく笑ったし、最後は泣かせる見事な卒業公演だったと思います。退団後は、変にテレビとかに出ないで、舞台中心で活躍してほしいな……紅子先輩はトークができちゃうので、バラエティ方面に行ってしまわないか、ちょっと心配す。大の仲良しであるちえちゃんと、ゆっくりランチを楽しんでください!
 ◆綺咲愛里さん:あーちゃん。演じたのは当然ヒロインのアイリーン。あーちゃんはとにかく可愛いし、今回のような、ちょっと強気で後半デレるような、いわゆるツンデレ的キャラが一番似合うような気がしますね。何度もこのBlogで書いているけれど、あーちゃんは地声が低いので、その意外な低音ヴォイスがとてもイイす。そして今回の衣装の奇抜さというか、トンデモ衣装は、絶対あーちゃん以外には着こなせないと断言できるね。あーちゃんだからこそのコスプレ的ファッションは本当に最高に可愛かったよ。退団後は、ちゃんと大きい事務所に入って、様々な方面で活躍してほしいす。ミュージカルに出ることがあれば、また会いに行くよ、必ず!
 ◆礼真琴さん:わたしがファンクラブに入って一番応援しているお方。わたしは勝手にこっちん、と呼んでます。こっちんが今回演じたのは、ホン打倒のために大資本がトップシェフに抜擢した真面目系男子シェフ、リー・ロンロン改めドラゴン・リー。今回は、いよいよ紅子先輩の後を継ぎ、次期TOPスターとなることが決まっているため、若干自虐めいた、僕がトップシェフなんて……的な部分も多かったすね。次に「星を継ぐもの」として、これでいいのかw? と笑わせるようなセリフも、やっぱり紅子先輩だから許されるんでしょうな。でも間違いなく、こっちんなら大丈夫だし、ヅカファン全員がこっちんがTOPスターとなって、大きな羽を背負って階段を下りてくるシーンを待ち望んでいると思うよ。まあ、恐らく、その時にはオレ、泣くね。確実に。ホント感無量っすわ。
 ◆舞空瞳さん:通称ひっとん。次期星組TOP娘役就任が決定している。花組からやってきて今回星組生デビュー。今回演じたのは、ちょっとしたスターでリーと最終的にラブるセレブ。ま、役どころとしてはほぼお飾り的な、なくてもいいようなものと言ったら失礼だけど、大きな役割ではなかったけど、明確にこっちんとのツーショットが多く、台詞的にもこれからよろしくね的なものもあって、いわば星組ファンの我々に対する顔見世的な登場でした。わたしは、正直ひっとんについて何も知らなかったのだが、この人はさすがに102期生首席だけあって、歌える方なんすね。なんとなく、妃海風ちゃんを思い出す歌ウマぶりで、歌は大変結構でした。95期首席である超歌ウマなこっちんとの並びも、文句ないす。ただ、どうやら世間的にはダンスの人という評判を聞いていたけれど、わたしの目には、ダンスはまだまだ、特にショーでのボレロを紅・こと・あーちゃん・くらっち(=有紗瞳ちゃん)・ひっとんで舞うシーンでは、あーちゃんとくらっちが完璧にシンクロしていた一方で、ひっとんは手の角度とか動きが若干甘いように見えたす。わたしとしては、今のところ、くらっちの方が数段上だと思うすね。今後に期待いたしたく存じます。しかしこのボレロのシーンは美しかったすなあ……そしてあーちゃんが、やっぱりTOP娘として、技量も高く、放たれるオーラも一番輝いていたのは印象的だったすね。
 はーやれやれ。ホント最高でした。
 そして後半はショー『Éclair Brillant』ですが、こちらもTOPコンビである紅子先輩とあーちゃんの二人の退団、そして次期TOPコンビであるこっちんとひっとんのお披露目的場面、それから、今回の公演で退団されるれんさん(=如月蓮さん)、まおさん(=麻央侑希さん)たちの場面など、今回特有の事情をきちんと踏まえた、華やかでとてもいいショーだったと思います。惜しくもTOP娘役に選ばれなかったくらっちもとても輝いていたし、せおっち(=瀬央ゆりあさん)もホントに歌が上手くなりましたなあ。わたしが何気に応援している華雪りらちゃんも、がんばっていたし、それから星組が推している若手のぴーすけ君(=天華えまさん)ときわみ君(=極美慎さん)の二人は謎の女装場面もあって、これはちょっとびっくりしたすね。くらっちとひっとんに混じって、あれっ!? あのデカい女子はぴーすけときわみ君じゃね? と目を疑ったすわw 
 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「星なんていらない!! お前にくれてやる!! 俺は、俺はアイリーンが笑顔ならそれでいいんだ!!」
 今回は、まあどう考えてもこの、「星」を「お前(=リー=こっちん」に譲り渡す場面でしょうな。なんか真面目に考えると、それでいいのか?という気がするけれど、紅子先輩からこっちんへのバトンリレーは、これでいいんでしょうな。わたしとしてはセリフ後半の、俺はお前の笑顔があればそれでいい、という部分にグッと来たっすね。ま、前回の『エルベ』のカールもそうだったわけだし、男というものはそういうもんですよ。しかし今回は、エンディングもハッピー&ピースフルでホント良かったすね。紅子先輩とあーちゃんのこれからを、心から応援いたしたく存じます。

 というわけで、結論。
 ついに来てしまった星組トップコンビ、紅ゆずるさんと綺咲愛里さんの退団。そして年末にはついに訪れる、わが愛しの礼真琴さんのTOP登極。ファンとしては淋しさとうれしさが入り混じる感情の中で、星組公演『GOD OF STARS―食聖― / Éclair Brillant』を観てきたわけだが、やっぱり紅子先輩は稀代のコメディエンヌとして最高の舞台を見せてくれたし、あーちゃんは本当に可愛くて強い女子を熱演してくれました。これでわたしは二人が宝塚歌劇の舞台で輝く姿を見納めてしまったわけだが、退団後の二人に幸あらんことを強く望みたいと思います。そしてこっちん、とうとうその時が来ちゃったね! そしてTOPに登極するということは、まさしく終わりの始まりであり、間違いなく数年後にこっちんも卒業となることが確実なわけで、わたしとしてはこっちんの最後の時まで、全力で応援いたしたく存じます! なんか、どうでもいいような過去Tweetがニュースになってたけど、いいんだよそんなこたあ! 「星を継ぐもの」として、こっちんのこれからに超期待いたします。しっかしプレお披露目のチケット、全く取れる見込みがないんですけど、どうしたらいいんでしょうか……!! 行きてえなあ……! そして、急遽星組にやってくることになったあの方を、ファンとしてどう受け止めればいいんでしょうか……せおっち2番手でいいじゃん……ダメなんでしょうか……。以上。

↓ こちらもまったくチケットが取れず観に行けなかった……Blu-ray買わないとダメかもな。。。