いよいよ20th Century FOXがDISNEYに買収されることが本決まりとなり、かくして今後はFOXが映画化する権利を保有していたMARVEL COMIC作品も、DISNEYが展開するMCU、マーベル・シネマティック・ユニバースに参加する障壁がなくなったわけで、わたしとしては大歓喜となったわけだが、残念ながらFOX買収以前から企画開発が進行していたFOX版『X-MEN』は数作品残っていて、どうやら1本は企画がポシャった?ようだが(※『THE NEW MUTANTS』のことだけど、ホントに来年公開されるんだろうか??)、残念ながらもう1本は企画が生き残り、FOX JAPANの宣伝惹句によると「(FOXによる)最後のX-MEN」と銘打たれた映画が公開されることとなった。 
 そのタイトルは、『X-MEN DARK PHOENIX』。ま、そのタイトルを聞けば、X-MENファンならもう、すぐにピンとくる物語であるし、実のところこの物語は2006年に公開されたX-MEN:The Last Stand』(邦題=ファイナル・デシジョン)でも扱われた原作モチーフで、X-MENの中でも相当強いキャラの一人であるJean Greyが、ダークサイドに堕ちる話である。物語としてはもう、それ以上の説明は不要だろう。
 だが問題は、わたしがこのBlogで何度も批判しているように、もうFOX版X-MENは完全に破たんしているというか、おかしなことになってしまっていて、超問題作X-MEN:Days of Future Past』(邦題=X-MEN:フューチャー&パスト)で過去が書き換えられてしまい、おまけに前作X-MEN:APOCALYPSE』で決定的に、もう惰性で作っているとしか思えないような、浅~~い映画となり果ててしまったのである。なので、わたしは何度も、FOXはもうX-MEN映画を作ることを放棄して、DISNEYに権利を返してくれないかなあ、と書いてきたのだが……一方ではなんと、完全にパラレルワールド的にこれまでの歴史を無視したLOGANという映画で、超見事にWolvarineの最期を描き、完璧なる「X-MEN最終作」というべきウルトラ大傑作を世に送り出したのである。
 いやあ、アレはホントびっくりしたなあ……本当に『LOGAN』は素晴らしい映画だった(※『DEADPOOL』はわたしとしてはどうでもいいというか、まあ、面白かったけどちょっと別腹ってことで今回は触れません)。『LOGAN』がわたしにとって「FOX最後のX-MEN」であることはもう揺るがないし、そもそも「X-MEN」の物語は今後確実にDISNEYによって描かれることになるので、全くもって今回の『DARK PHOENIX』が「最後」では決してない。ちゃんと「FOX最後の」って言ってほしいもんだ。FOXのそういう点がいちいちわたしをイラつかせる理由でもある。
 そんなことはさておき。
 というわけで、FOX版「最後のX-MEN」と銘打たれた本作を、わたしは正直全く期待していなかった。なにしろわたしにとってはもう、『LOGAN』こそがFOX版「最後のX-MEN」なので、はっきり言って、今さらだし、内容的にも、今さら、であるのだから。そして実際に観てきた今思うことは、ホント今さらだったな、で終了である。じゃあなんで観に行ったかって? そりゃあアレですよ、惰性ってやつです。

 なんつうか……FOX作品の予告はいつもどうしようもないけれど、今回は非常にイイ感じだと思った……のだが、残念ながら本編は、いつものFOXクオリティで、はっきり言って相当問題アリだと思った。ただし、一方的にダメと切り捨てるのももったいないぐらい、超素晴らしく、良かった点もあるので、その点にもちゃんと触れようと思う。
 【ダメポイント:決定的にキャラ付けがマズイ】
 まずもって、この映画を観た人の中で、ある意味主人公のJeanや、Professor Xに共感できる人がいただろうか? そう、全く、1mmも共感できないキャラとして描かれちゃっているのは、もう根本的にマズい点だったと思う。
 まず、Jeanに関しては、幼少期からその能力の暴走が起きていて、ついうっかり、母をぶっ殺してしまい、それがトラウマとなっているのは、まあ分からんでもない。だけど、その忌まわしき記憶を封じたProfessor Xの処置を、責められるだろうか?? 「わたしをだましていたのね!!」と激怒して、怒り狂い、あまつさえMystiqueことレイブンをぶっ殺してしまうとは!! おまけに恩のあるレイブンをぶっ殺しても反省なしでバックレてどっか行っちゃうって、もう絶対ナシだよ、脚本的に。仮にこの点を100万歩譲ってアリだとしても、その後、彼女が嘆くのは、私はなんてことを……やっちまった……という後悔ではない。ただひたすら、自らの不幸についてのみ、ああなんて私はかわいそうなのかしら、という自己憐憫のみだ。なんなんだこのガキは!? とわたしはもう席を立ちたくなったぐらいである。
 というわけで、本作は強大な力を持つ子供を、大人たちがオロオロしながらなだめるお話であると言わざるを得ない。この映画には、「ガタガタ言ってんじゃねえぞこのクソガキが!」と、ぶん殴ってくれる大人がいないのだ。実はその「叱ってくれる大人」こそが、旧シリーズでのWolvarineの役割で、Wolvarineがジョーカー的に機能して事態を解決してくれていたからこそ、物語として成立していたのだが……残念ながらこの映画には登場しない。この映画では、新キャラの謎の勢力が、Jeanに取り込まれた謎のウルトラパワーを奪取しようとして、Jeanに耳障りのイイことを吹き込んで取り込もうとするのだが、残念ながらこの謎キャラ勢力が完全に滑ってしまったのも脚本的にいただけないポイントだろう。
 以下、キャラと演じた役者をメモしながら、各キャラの行動をチェックしておこう。
 ◆Professor Xことチャールズ・エグゼビア:わたしの眼には、チャールズの行動はなんら問題はなかったように思える。異端であるミュータントと人間の共存のためには、チャールズのような行動が必要だったと思うし。でもまあ、ちょっと調子に乗っちゃったということなのかな……。今回、さまざまなキャラから、「お前が悪い!!」と責めまくられるチャールズだが、じゃあどうしたら良かったんだよ!? とチャールズが思うのも無理ないと思う。演じたのはヤングProfessorでお馴染みのJames McAvoy氏40歳。
ホントお気の毒な役どころでした。
 ◆Mystiqueことレイブン:チャールズが若干調子に乗って、テレビに出てちやほやされたり、そのために仲間を危険にさらしたことを激怒している。しかし、チャールズの描く、人類との共生、ある意味でのミュータントの生存戦略もまた意味があることなので、いったんは怒りを鎮めるが……チャールズがかつてJeanの記憶を封印したことに激怒。そして、Jeanちゃん、かわいそうだったね、よしよし、大丈夫よ……と宥めようとして、あっさりJeanに殺されるというヒドイ目に遭うことに。確かに、脚本的にレイブン殉職はナシではないだろうけど……はっきり言って犬死だったのではと思えてならないすね。演じたのは当然、オスカ―女優Jennifer Lawrenceちゃん28歳。まさかこんな形で退場とは……彼女もまた大変お気の毒でした……。つうか、そもそも、この物語は『Days of Future Past』のエンディングを無視してるよね。そういう点が本当にガッカリというか、腹立たしいす。
 ◆Magnitoことエリック・レーンシャー:歴史が塗り替わったのちのこの世界では、US政府に居留地?的な安住の地を与えられていたようで、そこに、はぐれミュータントたちとともに住んでいたのだが、愛するレイブンの殉職を聞いて大激怒。あのガキはぶっ殺す!と立ち上がる! 本来ならエリックがWolvarine的な「叱ってくれる大人」の役割を演じてほしかったのだが……残念ながら本作ではJeanが強すぎて、ほとんどやられキャラとなり下がり、あまり活躍できずだったのが超残念。演じたのはMichael Fassbemder氏42歳。実にカッコ良く渋かったすねえ! ちなみに、Magnitoの息子であるQuicksilver君は、今回前半でJeanにやられて負傷、ほぼ出番ナシ、であった。
 ◆Beastことハンク・マッコイ:いつもチャールズの行き過ぎた?行動を押さえつつ、いろいろ無茶ぶりをかまされて、大忙しとなるハンクだが、今回はレイブンが大好き(だけどレイブンからはつれなくされる)キャラとして、レイブン殉職に大激怒。チャールズに反旗を翻し、恋のライバルであるエリックとともにJean討伐隊に加わることに。演じたのはNicholas Hoult君29歳。彼もホントお気の毒でした。
 ◆Cyclopsことスコット・サマーズ:兄貴のHavocことアレックスは前作『Apocalypse』で殉職してしまったので、今回は淋しく単独出演。Jeanと愛し合っていて、今回暴走するJeanを必死で止めようとするのだが……残念ながら全く聞く耳を持ってもらえず。それでもJeanを守るために、仲間であるはずのハンクたち討伐隊と戦うことに……演じたのはTye Sheridan君22歳。彼の行動は実に分かりやすく、理解できます。でも、やっぱり
ホントお気の毒でした。
 ◆Jean Grey:残念ながら本作では、どう見ても単なる問題児であり、困ったガキなのだが……恩師の言うことも聞かず、恋人の言うことも聞かず、ただただ暴走に身を任せる困ったちゃんにしか見えなかった。わたしが本作で最も驚いたのは、本作の決着が、Jeanの超上から目線からの、「わかった、許してあげるわ……」で収束するという結末である。あれって、アリなんすか? ま、その結果、お星さまとなったJeanだけど、それで贖罪がなされたと言ってもちょっと認めたくないですな……。演じたのはSophie Turnerちゃん23歳。わたしの趣味ではないので以下省略。
 ◆謎の女ことヴーク:本作での説明によると、Jeanの身に宿ったのは惑星を滅ぼすほどの謎のエネルギー(生命体?)で、ヴークたちはそれを追って地球にやってきたらしいのだが……その設定に問題はないと思うし、破たんもないのだが……ラスボスとしての存在感が希薄で、前作のApocalypse同様に、よくわからんキャラになってしまったのが超残念です。なんか、本当はスクラル人(=CAPTAIN MARVELに出てきた変身が得意な宇宙人)の設定にしたかったらしいけど、NG喰らっちゃったらしいですな。演じたのはJessica Chastainさん42歳。いつの間にか年取ったなあ? もっと若いと思ってた。Jessicaさんはとってもお綺麗でした。
 とまあ、以上がメインキャラで、残念ながらそのキャラ付けが、わたしにはかなり問題アリだったと思う。そして、一方では素晴らしいと賞賛したいポイントも当然ありました。
 【素晴らしい!! と思ったポイント(1):役者たちの演技は完璧!】
 上記の通り、ざんざんキャラに対してダメ出しをしたけれど、演じた役者たちの演技ぶりは極めて上質で素晴らしかったと思う。とりわけX-MENのみんなは、全員が深く「苦悩」しているわけです。その悩める姿は(悩める理由はともかくとしても)実にそれぞれ素晴らしかったと絶賛したい。とりわけ、わたし的には今回やられキャラになってしまったMagnitoことエリックを演じたFassbender氏、それから目をバイザーで隠されているにもかかわらず、つらい苦悩を上手に表現していたTye Shelidan君の二人がとても良かったすね。もちろんほかのメンバーもとても素晴らしい演技でした。
 【素晴らしい!! と思ったポイント(2):音楽がイイ!】
 今回は冒頭からずっと、何やら不穏な空気が感じられる音楽がとても効いているようにわたしは感じたのだが……誰が担当したんだろうとずっと謎に思っていて、エンドクレジットでその謎が解けた時、わたしは本作で一番、おお、そうだったんだ、とスッキリしたっすね。そうです。今回の音楽を担当したのは、なんとHans Zimmer氏だったのです! X-MENシリーズ初参加じゃないかなあ? 耳に残る明確なメロディはないんだけど、とにかく物語にマッチする不穏な曲、というか音、はとても巧みだったと思うすね。わたしとしては、この映画のMVPにしてもいいと思います。
 あとは、演出に関しても、シリーズに脚本やプロデュースで参加してきたSimon Kinberg氏が、初監督とは思えないいい仕事をしていたとは思います。画的にとても良かったすね。しかし、なんでUS映画の葬式シーンはいつもどしゃ降りなんですか? まあキャラの心の中はどしゃ降りな心情なんだろうけど、不自然なんすよね……。

 というわけで、もう書きたいことがなくなったので結論。

 FOX JAPANによる「最後のX-MEN」というキャッチで公開された『X-MEN DARK PHOENIX』を観てきたのだが、まず第一に、間違いなく「X-MEN」というIPは今後もDISNEYによって映画になるはずなので、「最後の」では決してない、というのが一つ。そしてようやくFOXの手を離れ、MCUへの参加ハードルが消滅し、本作をもってFOX版X-MENが最後になるのはファンとしては大変うれしい限りだ。しかし、内容的には……正直問題アリだと思った。なにしろ……Jeanにまったく共感できないし、大人たちの対処も、マズかったでしょうな……。。。こういう時は、本当ならWolvarineの一喝が必要だったのだが、それができる大人がおらず、なんだかみんながみんな、気の毒に思えた。ただし、そのキャラたちの苦悩は実に見事な演技で支えられており、クオリティはとても高かったと思う。今回は音楽もとても良かったです。ま、とにかく今後のMCUには期待しかありませんな! 楽しみだなあ! そしてFOX版が終わったのは何よりめでたいす。以上。

↓ オレ的FOX版最高傑作は『LOGAN』ですが、こちらも実に素晴らしい出来栄えでした。この映画は最高です。