<最初に書いておきますが、キャスト陣の歌や芝居などはもう本当に超最高だったのですが、物語に関してはかなりネガティブ感想になってしまったので、感動した! という方は絶対に読まないでください。その感動を台無しにしてしまうのは全く本意ではありません。そしてネタバレが困る方も、読まずに退場してください。申し訳ないのですが、マジでお願いします>
 というわけで、今日は朝、ちらっと出社して65分ほど仕事をした後、日比谷に向かった。今日の目指す目的地は、いつもの東京宝塚劇場ではなく、その裏手というか日比谷公園側にある日生劇場である。そして観てきたのがこちら、現在絶賛上演中のミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』であります(※原題は「LOVE NEVER DIES」といわゆる三単現のsが付くので、ダイズ、ですな)。
LND
 本作は、知っている人は知ってるだろうし、知らない人は知るわけがないのだが、あの『オペラ座の怪人』の10年後を描いた続編、であります。作曲はもちろん、『オペラ座の怪人』を作ったAndrew Lloyd Webber男爵本人で、要するに正統なる続編、と言えるだろう。本作の日本初演は2014年だったのだが、わたしは以前も書いた通り、2014年はサラリーマン生活で最も忙しくてまんまと見逃してしまい、かなり平原綾香さんが好きなわたしとしては、くそ―、観たかったなあ、とか思っていたのだが、あれから5年、わたし的にはもう、超待望の再演となったのである。
 というわけで、本作はメインキャストがダブルキャストで複数の演者が演じることになっているわけだが、わたしが今日の公演を観に行こう、と決めたのは、キャストが以下の通りだからである。もう、ついでにキャラ紹介もしておこうかな。
 ◆ファントム:ご存知オペラ座の怪人。なんと、あの騒動の中、こっそりNYCに脱出していて、ブルックリンのコニーアイランドでサーカス的な一座の「謎のオーナー」として10年間過ごしていたのだのが、どうしてもクリスティーヌの天使の歌声とクリスティーヌ自身への執着を抑えきれず、クリスティーヌをNYCに呼び寄せる罠を張る。そしてまんまとやってきたクリスティーヌと再会するのだが……的な展開。今日の昼公演でファントムを演じたのは、藝大出身→劇団四季所属で主役を数多く演じ→現在はミュージカル界の大人気スターとしてお馴染みの石丸幹二氏53歳。石丸氏は、劇団四季版の『オペラ座の怪人』のラウル役でデビューしたお方なので、今回とうとうファントムを演じられて感無量と仰ってましたな。今回のパフォーマンスもさすがの技量で、素晴らしい歌声でありました。しかし……今回のファントムは……いや、あとでまとめて書こう。はっきり言って、物語はかなりとんでもなくて、びっくりしたっす。詳細は後ほど。
 ◆クリスティーヌ:音楽の天使に祝福を受けたかのような美声の持ち主。『オペラ座の怪人』ののち、ラウル子爵と結婚、一児をもうけるが、ラウルがかなりのだめんずで借金を抱え、いわばその借金返済のために、NYCへ公演にやってくる。ファントムの罠だと知らずにーーー的な展開。今日、クリスティーヌを演じたのはわたしが大好きなあーやこと平原綾香さん。いやあ、素晴らしい歌の数々でまさしくブラボーっすね。ちょうどいいむっちりボディーも最高です。孔雀の羽を模したセットと青い衣装で歌う「ラブ・ネバー・ダイズ」はもう圧巻のステージングで、まるであーやのコンサートのような見事なパフォーマンスでした。が、物語が……あれでいいのだろうか……。
 ◆ラウル子爵:フランス貴族。イケメン。酒とギャンブル漬けのだめんず。今日ラウルを演じたのは小野田龍之介氏27歳。この人は、わたし的には『テニミュ』出身の歌えるイケメンくんだが、そうか、まだ27歳なのか……わたしが彼を『テニミュ』で観たのは10年前ぐらいだから、あの時は10代だったんだな……その後さまざまなミュージカルに出演している実力派、になりつつある若者だ。
 ◆グスタフ:クリスティーヌとラウル夫婦の子供。そしてその出生の秘密が2幕で明かされるのだが、そのきっかけとなる、グスタフがとある歌を歌うシーンは、ちょっと鳥肌立ったすね。えっ!? まさか、そういうことなの!? と本作で一番びっくりしたっす。今日、グスタフを見事に演じたくれたのは小学生の熊谷俊輝くん。彼はうまかったすねえ! 一番うまかったと言ってもいいぐらい、本当にお見事でした。
 ◆マダム・ジリー:ファントムをフランスから脱出させて、10年間世話をみてきた女性。さんざん世話になったくせに、ファントムはまるで彼女に報いてやっておらず、いまだにクリスティーヌのことでウジウジしていて、そのことにだいぶご立腹の様子。そりゃそうだろうな……。なので若干気の毒だと思う。今日マダム・ジリーを演じたのは、我らが宝塚歌劇団星組出身の鳳蘭先輩。本作は、台詞部分も歌になっている箇所が多くて、鳳先輩の歌声も十分堪能できます。お見事でした。
 ◆メグ・ジリー:マダムの娘で、コニーアイランド一番人気の女子。クリスティーヌとも顔見知り。わたしが思うに、本作で一番気の毒な女子。今日、メグを演じたのは、元雪組TOP娘の咲妃みゆちゃん(以下:ゆうみちゃん)。わたしは石丸氏/あーや/ゆうみちゃん、の組み合わせが観たかったので今日を選びました。相変わらず可愛くて、歌も素晴らしいし、芝居も見事だし、なんか宝塚のレビュー的なダンスシーンも多く、とても優美で最高でした。さすがはゆうみちゃん、です。ほんと、ゆうみちゃんは声が可愛いですな。
 というわけで、演者の皆さんの芝居、歌、ダンス共にすべて高いクオリティで、もう本当に素晴らしかったのだが……問題は物語ですよ。これは、ちょっと……感動はできない話だと思うなあ……。
 以下はネタバレすぎるので、気になる方は本当に以下は読まないでください。
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 ズバリ言うと、わたしとしてはまるで想像していなかったお話であった。これってどうなんだ……と言う点が多くあるのだが……3人の行動に関して、ツッコミを入れようと思う。
 ◆ファントム……ちょっとダメすぎだろ……常識的に考えて……。
 わたしは本作を観る前は、勝手に、きっとファントムとクリスティーヌの再会は偶然か、あるいは、生活に困ったクリスティーヌの方から、ファントムに接近するのではなかろうか? とか思いこんでいた。が、物語は、10年経ってもクリスティーヌのことを忘れられないファントムの歌から始まるのである。その歌曰く、「いい曲を作っても、歌える人がいない、あのクリスティーヌ以外には!」だそうで、業を煮やしたファントムがクリスティーヌをNYCに呼びつける罠をかける、というところから物語は始まるのである。わたしはもう、のっけからファントムのそんな想いに、相当引いたっすね。10年経ってんだから、もう忘れなさいよ……と申し上げたい気持ちである。まあ、その異常ともいうべき執着が、すべての悲劇の元凶なのは間違いなく、それが「愛」とは、わたしとしては認めるわけにはいかないと思う。男ならさ、愛した女の幸せを、遠くから願うだけにしとけばよかったのにね……。
 ◆クリスティーヌ……なぜ歌ったんだ……そしてなぜ「秘密」を……
 クリスティーヌは、クライマックスで
 1)ファントムが作った歌を歌う(=ファントムを選ぶ)
 2)歌を歌わず、ラウルと共にフランスへ帰る(=ラウルを選ぶ)
 という強制的な二者択一を迫られる。まあ、実際のところ2)を選んでしまったらそこで物語は終了するので、1)を選んだことは物語的には理解できる。できるんだけど、短い時間の中では、どうしても1)を選ばなくてはならない、という気持ちは、わたしにはどうしても理解はできなかった。おそらくは、ファントムのつくった曲が素晴らしすぎて、魅了されたということなのだと思うけれど、それだと、The Angel of Musicではなくて、いわばDemon of Musicに憑りつかれてしまったということになってしまうのではなかろうか。そしてその歌った歌は、確かに超最高で鳥肌モンだったわけだし、クリスティーヌの堕天、というのはドラマチックでいいんだけど、それなら最後はきちんと、Demonたるファントムの呪縛から解放され、救われてほしかった……。
 また、ラウルもラウルで、クリスティーヌが歌ってしまい、自分が選ばれなかったことが分かった瞬間、しょぼーーーんと舞台から消えてしまうのだ。物分かりが良すぎるというか……そこで男らしさを出しても、おせえのでは……。
 そして大問題はラストシーンである。息絶える直前、クリスティーヌは、グスタフの出生の秘密を、よりによってグスタフ本人に教えてしまうのだ!! もうわたしは椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。なぜ!? なんで!? 教える必要あるか!?? むしろ教えちゃダメなのでは!? クリスティーヌとしては、そりゃ自らが抱えてきた秘密を話すことができてスッキリしたでしょうよ。でも、なにも愛する息子にそんな重荷を背負わせる必要ないじゃん!とわたしは感じたのである。アレはキツイよ……グスタフが気の毒でならないす……。
 ◆メグ……なぜ銃を……
 いや、正確に言うとメグが銃を持っていたことは、納得はできないけど理解はできる。そして、ファントムともみあいになる展開も、まあ、分かる。だけど、なぜ!? どうして!? 暴発した弾丸がクリスティーヌに当たらないといけないんだ!? あそこはファントムに当たるべきだったでしょうに!
 そう、わたしが思うに、あそこでファントムに弾が当たり、ファントムが死ぬというラストだったなら、ある意味全て丸く収まったように思う。そうすれば、「ファントムは死んでしまったけど、愛は死なない」的に話は落ち着いたのではなかろうか。だけど、あそこでクリスティーヌが死んでしまっては、「愛は死んだ、けど、ファントム・ネバー・ダイズ!」になっちゃったじゃんか!!
 アレはマズいだろ……。。。なんというか、グスタフのその後を考えると、とても悲しい気持ちになるし、ファントムもこの先どうやって生きていくのか想像できないし、事故とはいえ人を殺めてしまった哀れなメグのその後も、想像するに忍びないわけで、つまり後味は相当悪いエンディングだったとしかわたしには思えないのである。なんでこんな悲しいエンディングにしたんだろう……理解できないす。ホント、ファントムが死ぬエンディングだったらすべて解決だったのになあ……わからんす。作者の意図が。
 しかし、くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、演者の皆さんのパフォーマンスは本当に素晴らしく、歌はもう鳥肌モン出会ったのは間違いない。あーやもゆうみちゃんも、石丸氏も本当に完璧でした。最高だったす!

 というわけで、もうまとまらないので結論。
 2014年に観逃して、ずっと観たいと思っていた『ラブ・ネバー・ダイ』の再演が始まり、わたしは好みのキャストがそろう今日の昼の回を観に行ってきたのだが、まず、キャスト陣の素晴らしい歌と演技にはもう、手放しでブラボーである。石丸幹二氏、平原綾香さん、咲妃みゆさん、そして子役の熊谷俊輝くん、彼ら彼女らはもう、本当に最ッ高に良かった!! とりわけ、あーやの歌う「ラブ・ネバー・ダイズ」はマジで鳥肌モンの大感動でした! のだが……物語が微妙過ぎて、残念ながら感動はラストの展開にすっかりしぼんでしまったのが正直な感想である。あのエンディングは……マズいだろ……。。。どうしてこうなった? ホント、脚本家にその意図を聞いてみたい。ただ、会場の人々の感想を言い合う声に耳を澄ますと、どうやら大方、感動した的な意見が多いようなので、わたしが感じた「な、なんだってーー!?」というガッカリ感は少数派だったのかもしれない。でも、うーん、やっぱり、どう考えても理解できないす。歌が最高だっただけに、なんだか本当に残念で、悲しいす……以上。

↓ 平原綾香さんはホント可愛いすな。あ、思い出した!「風のガーデン」だ。このドラマにチラッと出演しているあーやが素晴らしいのです! そしてその主題歌「カンパニュラの恋」が泣けるんすよ……。