英単語的に「Equalize」とは、端的に言うと「イコールにする」という意味で、「Equalizer」となると、「イコールにする人」という意味になる。で、何と何をイコールにするか? が問題なわけで、なんというかな、悪意によって害を受けた時に、その悪意を帳消しにする、と言えばいいのかな、つまりは「落とし前をつける」という感じだろうか? 一方に傾き過ぎた悪と善のバランスをとる人、みたいなイメージだ。
 わたしが今日観てきた映画『THE EQUALIZER 2』は、そんな悪党たちの悪事をEqualizeする、日本的に言えば「必殺仕事人」的な、凄腕の男の活躍を描いた作品の続編である。前作では、すっかり世捨て人的にひっそり暮らしていた主人公が、夜のカフェで知り合った娼婦の少女を救うためにロシアンマフィアと壮絶な殺し合いをする作品であったが、今回の『2』では、前作で登場した、主人公のかつての恩人が殺され、その「落とし前」をつけるお話である。
 結論から言うと、今回も主人公の強さは際立っていて、ほぼピンチに陥ることなく完璧な仕事ぶりで、正直あまりドキドキしなかったけれど、クオリティとしてはかなり上質なアクション作品としてまとまっていて、まあそれなりに楽しめた。しかし、ズバリ言うとわたしの好みとしては、前作の方が面白かったと思うし、本作はWOWOWでの放送を待ってれば十分だったかも、というのがわたしの感想であります。
 何故か分からないけれど、わたしは前作がとても好きだったので、とても期待して観に行ったわけだが、どういうわけか、TOHOシネマズに限った話かもしれないけれど本作は4DXの上映ばかりで普通の上映がほぼなくて、やむなく今日は日比谷のIMAXで観てきたのだが、ま、IMAXである必要はほぼゼロ、だったと思う。IMAXのおかげで音はすごかったけど。

 で。上記予告で描かれる、冒頭のアクションは、観ていてとても心スッキリするものだ。どうやら金持ちのクソガキどもが、インターンの女子を薬漬けにして集団レイプしまくったようで、心身ボロボロになった女子をたまたま自分のタクシーに乗せた主人公マッコールが、そのクソガキどもをぶっ飛ばす、ほぼ物語には関係ないシーンだ。
 しかし、実はこのクソガキ退治のアクションは、冒頭と言っても、3つぐらいの短いエピソードの後に描かれるもので、一番初めはトルコでの少女救出ミッション(これも物語に関係なし。伏線か?と思ってたのに全く関係なし)だったし、タクシードライバーとして働くマッコールの常連のお客さんであるおじいちゃんの話(これも本筋には関係ないけど、最後には救われるイイ話)などが描かれていて、ズバリ言うと、それだけで膨らませれば1本の映画になり得るような、マッコール大活躍のお話が冒頭に何個も描かれる。
 これらは物語には関係なくても、主人公がどんな男かについて明確にする役割があって、全く不要だったとは言わないでおく。実際、マッコールがバッタバッタと悪党をぶっ飛ばすのは気持ちいいし。どうやら主人公マッコールは、前作でロシアンマフィアから少女を救った後も、「身近な悪党をぶっ飛ばす身近な正義の味方」として活躍中らしいということがはっきりわかるわけだ。
 で、本筋は、予告にある通り、前作で助けてもらった元上官が、何者かに殺害され、その復讐をするお話だ。しかしながら、残念なことにこの話があまり面白くない。というのも、犯人は観ていれば誰でも、コイツがアヤシイと分かるだろうし、その犯人も、強いんだか弱いんだかわからないからだ。まあ、主人公マッコールが強すぎるんでしょうな。ラストは結構あっさり目にあの世に送られますので、予想通り過ぎて、若干物足りなかったと思う。前作は、なんか文学的な香りのする渋い作品だったのに、なんか今回は……そういう部分は全くなかったように思う。
 本作で、一番良かったのは、やはりマッコールの住むアパートの住人である黒人少年との心のふれあい的な部分だろうか。チャンスは必ずある。世の中のせいにするな、というマッコールの説教は、まあ、美しすぎてきれいごとすぎるとはいえ、やっぱり一番グッと来たっすね。何でもかんでも、人のせいにする世の中で、きちんと、自分の努力を第一として、必ずやってくるチャンスをつかめ、と励ますマッコールの姿は、やっぱりカッコ良かったと思う。
 というわけで、キャラ紹介と演じた役者を紹介して短めに終わらせよう。
 ◆ロバート・マッコール:主人公。元軍人→元CIA工作員。とある事件で爆死したと思われており、葬式も行われ、法的には「死人」だったと思う。そして前作では、ホームセンターに勤める真面目なおじさんとして仮の人生を送っている。自らが死んだと思われている事件で妻を亡くし、傷心のまま死んだようにひっそり生きていたが、不眠症の彼は毎夜、近所のカフェで読書をするのを日課にしていて、そこで知り合った娼婦の少女を救うためにロシアンマフィアと大喧嘩。この時、マッコールは米国内にやってきた幹部暗殺者との死闘を制し、さらに、元上官の情報網を使ってロシア本国の大ボスも突き止め、きっちり片を付ける。という話が前作。今回はタクシードライバーとして働いていました。タクシーと言っても、流しのタクシーではなくて、Uberのような、アプリで呼び出される方式のタクシーでした。もちろん超強い。強すぎるのが本作の弱点か。敵も強くないとね……。
 演じたのは、前作同様Denzel Washington氏63歳。まあ、やっぱり演技派ですな、このお方は。大変カッコイイと思います。
 ◆マイルズ:マッコールが住むアパートに母と暮らす少年。青年というより少年……だよね? 兄はボクサーだったが、強盗に銃殺された過去がある。本人は、美術に興味があって、イラスレーターを目指したい、けど、いかんせん周りの連中がギャングどもで……まあ、マッコールと出会えてホント良かったね。演じたのはAshton Sanders君22歳。ああ、『Moonlight』の主人公の少年時代を演じてたのか。そうか、順調にキャリアを積んでるみたいですな。
 ◆スーザン・プラマー:マッコールの元上官で現役CIAオフィサー。結構高官のはずなのに、あんな現場に出張ることがあるのだろうか……。演じたのは、勿論前作同様大ベテランMelissa Leoさん58歳。すごいイイキャラだったのに、退場は残念ですなあ……。しかし、本来ならば、犯人たちに殺害を依頼した、真の悪党がいるはずなのに、そちらはまるでスルーなのが大変残念。そっちの話に膨らませればよかったのにね……。
 ◆ブライアン・プルマー:スーザンの夫。この人も元高官だったと思うけど、現在は引退している設定。そして演じたのは、前作同様Bill Pullman氏64歳。この人と言えば、もちろん『INDIPENDENCE DAY』のホイットモア大統領ですな。今回も前回も、まあチョイ役です。
 ◆ヨーク:今回の悪党。マッコールの元同僚。イイ奴と思ってたのにね……。演じたのは、『KINGSMAN:GOLDEN CIRCLE』でアメリカのステイツマン「ウィスキー」を演じたPedro Pascal氏。本作では、髭がなくてわたしは全然気が付かず、パンフを読んで初めて、あ、コイツは! と知りました。
 そして監督は、もちろん前作から引き続き、Antoine Fuqua氏52歳。Denzel氏の盟友ともいうべき監督ですな。お話としてはイマイチだったけれど、やっぱりアクションのキレは一流ですよ。さすがのFuquaクオリティだったとその点は称賛したいすね。
 とまあ、こんなところかな。
 
 というわけで、なんかもう書きたいことがないので結論。
 前作が大変気に入っていたので、さっそく観てきた『THE EQUALIZER 2』だが、まあ、そりゃカッコいいし、アクションのキレは抜群だし、それなりに面白かったと思う、けど、やっぱり脚本に難ありでしょうな……前作にあった、何やら文学的な香りはなくなってしまっていたし、そもそも、真のラスボスに至らない展開は実に物足りないと思う。しかし、全く物語に関係ない、短い「人助けの仕事人」エピソードは実に様になってましたな。うーん、なんつうか、基本キャラ設定がイイだけに、もっと面白くできたような気がしてならないすねえ……。まあ、結論としては2つあって、1つは、IMAXで観る意味はほぼなかったこと(ほぼ、であって全くではないけど)、そしてもう一つは、WOWOW放送待ちで良かったかな、とまあ、この2つです。以上。

↓ 確実に、前作の方が面白いす。
イコライザー (字幕版)
デンゼル・ワシントン
2015-02-11