宝塚歌劇団の公式Webサイトの言葉をそのまま引用すると――
 「1996年の初演以来、独創的なストーリーと、美しい旋律で彩られたミュージカル・ナンバーで多くの人々を魅了してきた『エリザベート』。上演回数は1000回を超え、観客動員数240万人を記録するなど、名実ともに宝塚歌劇を代表する人気ミュージカルとなりました」とのことで、ヅカ歴8年目となったわたしも、すでにこの『エリザベート』という作品は、2014年の花組Ver.と2016年の宙組Ver.の2公演を観に行っている。また、この作品は東宝・帝劇ミュージカルとして男性キャストも交えた「普通の」ミュージカルVer.もたびたび上演されており、わたしも2015年のVer.を帝劇で観ている。
 わたしが言いたいことは2つあって、一つは、つまり『エリザベート』という作品はとても人気が高いということ。そしてその結果、おっそろしくチケットを入手するのが難しいのである。そしてもう一つは、これまで何度も上演されているものの、基本的な歌やセリフはずっと変わっておらず、演じるキャストによってかなり印象が違ったり、歌い方がさまざまで、何度観ても飽きないし、毎回、新しい発見のようなものがあって、過去の上演と比較するのもまた楽しい。それが、『エリザベート』という作品である。
 というわけで、今年もまた『エリザベート』が宝塚歌劇団によって上演されることとなったわけだが……今回は、現在の月組で6年の長きにわたってTOP娘役に君臨してきた愛希れいかさん(以下:ちゃぴ)の退団公演でもあって、まあとにかくチケットが取れない。わたしは東京は全滅で、結局わたしをヅカ道へ導いてくれた師匠に11月のチケットを1枚譲ってもらったので、とりあえずは何とかなったのだが、わたしとしては、ちゃぴの最後の雄姿を目に焼き付けるべく、宝塚大劇場、すなわち兵庫県宝塚市に存在する本家総本山へも観に行きたいとの希望を持ち、こちらは自力で何とか1枚、購入することができ、昨日は朝から新幹線のぞみ号をぶっ飛ばして、一路大劇場へ遠征してきたのである。日帰りで。
 もはやムラ遠征(=東京に住まう我々が宝塚市の大劇場に遠征すること。由来は実は知らないんだけど、ファンは大劇場のことを「ムラ」と呼ぶのです)は、既にヅカ道黒帯を取得しているわたしからすると、もはや普通のことである。そして、もはや観光するような気もなく、日帰りでさっさと帰るのも、ある意味もう全然普通のことだ。しかし昨日はちょっとキツかった……なぜなら、わたしは昨日、大劇場で『エリザベート』を観た後、続けてバウホールにて絶賛上演中の『CHALLENGER:ザッツ北翔テイメント』も観てきたからだ。この、「北翔テイメント」に関しては明日別記事にするので、ここでは書きません。一言でいうと最高すぎて、内容が濃すぎて、はっきり言って『エリザベート』の印象は吹っ飛んじゃうぐらい最高だったんすけどね。
 ともあれ、『エリザベート』である。

 わたしが思うに、『エリザベート』の魅力はその歌である。実は、物語的にはかなり、ううーむ?という部分があって、いろいろと、ええと……? とキャラの心情が謎な部分が多いのだ。ツッコミ甲斐があるというか、とにかく、実はストーリー的に、なんか変、だとわたしは思っている。ただ、そういった部分も、もはや気にならないほど圧倒的に歌が素晴らしくて、なんだかよくわからないうちに、胸にグッと来て感動してしまうのである。
 そして、今回の月組公演にあたってのわたし的見どころは、以下に総括できるとわたしは思っていた。
 1)ちゃぴのラストを飾るシシィの完成度や如何?
 2)たまトートはどうなのよ?
 3)みやフランツは渋いんでしょうなあ、きっと?
 4)れいこルキーニは、そりゃあきっとカッコいいでしょうねえ……。
 5)新世代ヒーローおだちんルドルフはどうだろうか?
 6)愛するうみちゃんの、渾身のヴィンディッシュ嬢はきっと素晴らしいに違いない!
 どうですか。上記6点について、何の解説もなく意味が分かるようなら、ヅカ道初心者レベルはクリアしていると思うけれど、ズバリ言って、普通の人には全く意味不明だろう。というわけで、以下、解説しながら、感想を連ねてみたい……のだが、なんと、超残念というか、超心配でならないのだが……おとといから月組2番手スター美弥るりかさん(以下:みやちゃん)が体調不良のため休演となり、急遽、役の変更がなされることとなったのである。みやちゃん……どうか東京公演までに戻ってきておくれ……心配だよ……とても……。
eliza2018
 ◆ちゃぴシシィはパーフェクト。ちゃぴ渾身の退団公演は伊達じゃない!
 そもそも、宝塚歌劇の演目は、どうしても男役TOPスターが主役なのだが、本作『エリザベート』に限っては、そのタイトル通り、明確に主役は娘役TOPが演じるエリザベート(=幼名というか愛称「シシィ」)であるとわたしは考えている。幼いシシィがハプルブルグ家に嫁ぎ、超おっかないお姑さんとの嫁姑バトルを勝ち抜き、皇后としてその地位を勝ち取っていくものの、マザコン浮気野郎の旦那との確執などから愛する息子を失い、心さすらう人生の、その最期までが描かれる、明らかにエリザベートという女性を中心に据えた物語だ。
 男のわたしの視点では、シシィの行動は結構理解しがたく、とりわけ息子ルドルフを助けなかった理由がさっぱりわからんのだが、まあ、そういった謎はこの際どうでもいい。芝居としての見どころは、やっぱり、冒頭の天真爛漫だったシシィが、いかにして皇后として堂々とした姿となるか、ある意味計略家として生きていこうと決意し、そしてその後、絶望に身をやつしながらいかにして晩年を過ごすか、という激動ともいえる心と体の変化にあるとわたしは思う。そして、そういったその時々の心情は、ミュージカルなんだから当然、「歌」で語られることになるわけで、極めて高いレベルの「演技」と「歌唱力」が必要となる役柄であろう。
 結論から言うと、わたしは、今回シシィを演じたちゃぴこと愛希れいかさんは、わたしが今まで見た3人のシシィの中で、完全に1歩も2歩も上を行く完璧なシシィだったと絶賛したい。本当に素晴らしかった。わたしは、ちゃぴの魅力はなんといってもダンサーとしての魅力が一番だと思っているけれど、芝居力もダンス同様に素晴らしく、また歌も当然極めて高いレベルにある。じゃなきゃ6年もTOP娘の看板を背負えないよね。いやあ、本当に素晴らしかった。11月にまた東京で会えることを楽しみにしているよ。きっと、さらにまた高みに登っていることでしょうな。退団後の活躍も楽しみですなあ。きっとちゃぴなら、退団後も素晴らしいキャリアを築いてくれることでしょう。東宝版のシシィもぜひ演じてほしいですな。ちゃぴ、君は本当に凄いよ。最高です。
 ◆たまトートは、想像以上に素晴らしくて、同時に今までとは違うトートだった!
 トートとは、ドイツ語のDer Tod=英語のThe Death、すなわち「死」であり、要するに冥界の王なわけで、ズバリ言えば人間ではない。こういう、「死」の擬人化は、例えばミュージカル『ロミオとジュリエット』なんかにも出てくるように、まあ、西欧作品にはよくあることなのだが、本作『エリザベート』では、その「死」が、人間であるエリザベートにぞっこんLOVEっちゃうことに最大のポイントがあって、しかもそのトート様が、やけに純情チェリーボーイなのが笑っちゃうというか、ドラマチックなのである。
 で、一方、今回トート様を演じる月組TOPスター珠城りょうさん(以下:たまきちくん)は、わたしの印象は上品で育ちのいいおぼっちゃま、であり、等身大スターであり、なんつうか、健康優良児、なんすよね。たとえて言うならゴールデンレトリーバーのような、完全なる「陽キャラ」なのがたまきちくんの魅力だとわたしは思っているのだが、その健康優良児たまきちくんが、宝塚の演目きっての「陰キャラ」であるトート様をどう演じるのだろうか、というのがわたし的見どころであったのだ。
 まず、ビジュアルだが、やっぱりたまきちくんのデカい体はとても堂々としているし、話題の「金髪」トート像も、わたし的には全く問題ナシであったと思う。むしろかなりイイじゃん! と称賛したいぐらいだ。一方で歌は、今まで聞いたことがないような感じで、若干の、んん? というポイントもあったのは事実だけど、それはまあ、ちゃんと演出の小池先生がチェックしていることだろうから、わたしが口をはさむことでもないだろう。アリ、だと思う。そして、わたしが一番グッと来たのは、その表情であったように思う。なんつうか、妙に生命力あふれていて、感情が分かりやすいのだ。そう、「死」なのに、妙に人間臭いんすよ! これはたまきちくんの持ち味である「陽キャラ」がにじみ出しているんだとわたしは理解した。なるほど、こういうトートもアリなんですなあ、と新発見したような気分になって、わたしは非常に面白いと感じましたね。その結果、「最終審理」でトート様がフランツに感じる嫉妬のようなものが妙に生々しかったし、お話も分かりやすくなったように思う。わたし、今回の、妙に人間臭くダイレクトに嫉妬するたまトート様のお姿を観て、ああ、そういうことだったんだな、と妙に腑に落ちたすね。なので、たまトートは断然アリ!です。最高でした。
 ◆みやフランツ無念の休演。そして急遽代役に立ったれいこフランツは……
 現在の月組では、若きTOPスターを支える2番手スター、みやちゃんこと美弥るりかさんの存在意義は極めて大きくて、TOPのたまきちくんもみやちゃんへ絶大な信頼感を寄せているし(※みやちゃんはたまきちくんより5学年も上の先輩)、二人の関係性は現在の月組になくてはならない要素だと思っているのだが、無念の休演となってしまったことがとても残念だ。もちろん、みやちゃん本人が一番残念に思っているだろうし、もう、身を引き裂かれんばかりにつらい思いをしていることと思う。どうかきっちり体調を整えて、また舞台に復帰してほしいと思う。東京で待ってるよ。おれはみやちゃん、あなたのフランツが観たいんすよ!
 で。今回、おそらくはほぼ稽古も積んでいないであろう、月城かなとさん(以下:れいこ)が急遽、重要な役であるフランツを演じてくれることとなり、まあ、ヅカファンとしては、れいこフランツを観られたのは、ある意味においては大変幸運だったとは言えるかもしれない。たしかに、れいこフランツは、まずのそのビジュアルからしておっそろしく美しいし、歌も超がんばっていたのは間違いないのだから。
 しかし、れいこさんの頑張りは称賛して余りある素晴らしいものであったけれど、いかんせん、準備の時間がなさ過ぎたのではなかろうか。もちろん、その時間がない中でのれいこフランツは、もう大絶賛したいのは間違いない。でもわたしはやっぱり、れいこルキーニが観たかった。それに、比較するのは失礼であるのは承知しているけど……この後に観た『北翔テイメント』でのみっちゃんフランツがやっぱり凄すぎて……やっぱりフランツはこうでなきゃ、とか思っちゃったんすよね……みっちゃんはマジ最高すわ……。
 ともあれ、11月の東京でのみやちゃん復帰を心から祈っております。どうか、くれぐれも焦らず、お大事になさってくださいませ。東京で待ってるからね!
 ◆れいこルキーニは観られず、急遽おだちんルキーニ登板!
 というわけで、当初予定されていたれいこさんのルキーニは観ることができなかった。ルキーニという役は、『エリザベート』という作品でも、極めて目立つし狂言回しとしても大変重要な役柄で、そのノリノリで観客をあおるようなキャラクターは、作品の中で一番おいしい役と言ってもいいぐらいの大切な役である。わたしとしては、2014年の望海風斗さん(以下:だいもん)が演じたルキーニが歴代最高だと思っているが(帝劇で観た山崎育三郎氏Verよりも凄かったと思う。だいもんルキーニはもう完全に男でした)、それを今回、月組随一の美形、れいこさんでやるなんて超楽しみだぜ! と期待していたのである。
 しかし今回の代役によって、新人公演でルキーニを演じている風間柚乃さん(以下:おだちん)が、本公演でもルキーニを演じることとなったのだが……ズバリ言うと、新公レベルでは全く素晴らしかったと思うけれど、やっぱり本公演としては、まだまだ、鍛錬と熟成が必要なんだろうな、と思うに至った。おだちんが、スーパー超がんばってるのは間違いない。けれど、やっぱり余裕がないのだと思う。ルキーニという役は、もう観客をあおって空気を変えていくことが求められるし、なんつうかな、ヘっ……チョロいぜ!的な、飄々とした?余裕が絶対的に必要なんすよね……まだ4年目かな、おだちんにはまだ、無理ですよ。これはいい悪いの問題ではなく、無理なものは無理なんだから。しかしそれでも、そんな状況でも頑張り抜いたおだちんは、もちろん賞賛に値するし、今後の活躍が本当に楽しみなお方だということはよくわかりました。アレっすね、意外と背が低いように感じたっすね。わたし、おだちんはもっとデカイかと思ってた。
 ま、いずれにせよ、東京ではれいこルキーニが観られることを強く願ってますし、おだちんルドルフの回は観られないけど、おだちんの今後にも注目していきたいと存じます。
 ◆というわけでおだちんルドルフは観られず、ありちゃんでした。
 わたしが『エリザベート』という作品で一番好きなのが、皇太子ルドルフとトート様の「闇が広がる」という歌で、そういう意味でもルドルフ皇太子の、悲しく切ない歌声は見どころの一つだと思っている。わたしとしては帝劇で観た古川雄大氏のルドルフが過去観た中では一番好きなのだが、今回は本来はおだちんルドルフの回だったけれど、代役によって暁千星さん(以下:ありちゃん)のルドルフを観ることとなった。もともと今回の公演では、ルドルフ役はありちゃんとおだちんのWキャストだったので、本来通りのありちゃんルドルフだったと言えるのだが、まあ、ありちゃんは月組のスーパー御曹司でもうこれまでも抜擢が続いているし、新人公演ではトート様を演じる次世代スターなわけなので、その実力は全く問題ナシ、である。なので、ええと……サーセン、特に書くことないです。
 ◆うみちゃん渾身の涙に、わたしのハートは持っていかれました……
 うみちゃん、とは、わたしがずっと応援してきた月組が誇る美貌の娘役、海乃美月さんのことである。わたしとしては、ちゃぴ去りし後のTOP娘はうみちゃんで決まり、とか思っていたのに、残念ながらそうはいかず、後輩にその座を譲ることとなってしまった。わたしはいまだにその決定を残念に思っているし、おそらくは、うみちゃんの本人の心中たるや、凄まじい葛藤があるのではないかと想像する。普通に考えて、ずっと頑張ってきて、部長に昇進する直前で後輩に抜かれたら、もう心折れて退職したっておかしくないぐらいだと思うし、サラリーマンのような平凡な道ではなく、厳しい芸の世界のことなんだから、そりゃあもう、うみちゃんが流した涙は1リットルじゃあすまないと思う。
 でも! わたしが今回いっちばん感動したのは、うみちゃんの作品に対する姿勢だ。わたしは今回、うみちゃんが舞台に出てくると、ほぼずっと双眼鏡でその姿を追っていたのだが、名もなき群衆の一人として、スポットライトの当たらない舞台の端の一人であっても、全力でうみちゃんは芝居をしていたし、2幕で、ソロ歌のあるヴィンディッシュ嬢という精神を病んだ女性を演じている時も、最高に素晴らしく、最高に美しかった! とりわけ、ちゃぴエリザベートに抱かれながら、ほほを一筋の涙が伝うシーンは、もうその涙のタイミングも完璧だったし、その時の正気を失くした女性の表情も、今回のベストアクトだったとわたしは大絶賛したいと思う。最高だったね! 双眼鏡で、うみちゃんの左目から本物の涙が一筋流れるのを見て、マジで鳥肌立ったよ。うみちゃん、どうかこれからも、がんばってください。わたしもずっと応援するよ。そして、いつかTOPに就けることを、わたしは全然諦めてないし疑ってもいないぜ! 絶対、報われる日が来る! と信じてます……!

 はーーー……こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「死は逃げ場所ではない!」
 今回は、宝塚版『エリザベート』ではもはやお約束のトート様のこのセリフを選びます。今まで、わたしはこのセリフを聞くと、おいおい、さんざんエリザベートの死を願ってたんじゃなかったのかよ、とかツッコミたくなっていたのだが、今回の、妙に人間臭いたまトートのこのセリフは、すごい気持ちが伝わりました。死にたいってお前、それじゃダメなんだよ、おれのことを愛してくれなくちゃ!! という感情が、今回のたまトートで初めてわたしに伝わったすね。ホント、トート様……あなた純情ボーイですよ……。たまトート、相当キてます! イイ!

 というわけで、結論。
 今回は結論を箇条書きにしておこうと思います。
 ◆ちゃぴシシィ:最高。オレ的歴代最高シシィ。東京大千秋楽まで駆け抜けておくれ!
 ◆たまトート:イイ! やけに人間臭いトート様、はじめていろいろ理解できた。
 ◆みやフランツ:本当に観られなくて残念。東京で待ってるからね!
 ◆れいこフランツ:急な登板を考えるとお見事でした。美しさは歴代ナンバーワンかも。
 ◆れいこルキーニ:観たかった……! 東京で待ってます。
 ◆おだルキーニ:余裕はどうしても経験から生まれるので、あと4~5年後に期待します。
 ◆ありルドルフ:超安定・超安心のルドルフでした。
 ◆うみヴィンディッシュ嬢:最高! うみちゃん! あなた最高です!!
 とまあこんな感じです。しかし、やっぱりムラはいいですなあ……テンション上がるっすよね……東京宝塚劇場よりデカイし。東京ももうチョイキャパがあれば、チケットも少しは取れやすく……ならねえか。ホント、もうチョイチケットが買いやすくなるといいのだが……つうかですね、ムラの変身スタジオ、男はお断り!なのは悲しいす。オレ……アンドレ衣装着てみたいんすよ……メイクはいらないので。以上。

↓ おお、今はPrime Videoでも配信しているんですなあ。みりおトートはそのビジュアルは最強レベルだし、だいもんルキーニはもう完璧に男、そしてみっちゃんフランツはわたしとしては歴代最強(特に歌)だと思います。