ここ1カ月ぐらい、わたしの周囲で大変悲しいことがいくつか立て続けに起こって、本当にもうなにもかもうんざりというか、生きる気力が枯渇しつつあり、おまけにわたしはとにかく暑いのが苦手なため、連日の猛暑に、あらゆる体機能が低下し、いよいよ精神・肉体ともに、この世からおさらばしたい気分が高まっている。
 こんな心身状態なので、夜はさっさと寝るに限るわけだが、わたしの場合、20時ぐらいには何もすることがなくなり、じゃあもう寝るか、と思っても、それはそれで激しくむなしくなるわけで、そういう時は、WOWOWで録画しておいた映画でも観ようか、という気になるものの……いかんせん暑くて、なんだか途中でどうでもよくなってきてしまう。
 というわけで、先日の夜、この世のすべてに対する興味を失いつつも、WOWOWで録画した映画をぼんやり観ていたのだが、珍しく最後まで、これはどういうオチになるのだろう……と固唾をのんで最後まで観た映画がある。まあ上映時間も94分と短めだったのも好都合だったのだが、なんつうか、非常にやるせない、今のわたしにはやけに心に重くのしかかる作品であった。
 その作品のタイトルは『AFTERMATH』。英単語としての意味は、「その後」とても訳せばいいだろうか? 辞書的には「(戦争や災害の後の)状態・余波」という意味らしい。このタイトルの意味は、最後までこの作品を観るとよーくわかると思う。実に救われないというか、つらいお話で、妙にわたしの心にグッと来てしまったのである。
 というわけで以下、決定的なネタバレまで書いてしまうと思うので、気になる方は読まないでください。わたしは途中で結末が予想できましたが、いっちばん最後のオチは、若干予想外だったので、知らないで観る方がいいかもしれないす。

 まあ、もうこの予告を観れば、どんなお話かは想像できるだろうし、実際その想像の通りだと思う。航空機事故によって家族を喪った男と、そしてその事故の原因となった管制官の男。この二人の心のさすらう様を描いた作品である。さっき調べてみたところ、この予告にも明確に表示される通り、本作は実際に起きた事件を元に作られた物語だそうだ。その事件は「ユーバーリンゲン空中衝突事故」としてWikiがあるほどで、わたしは全く知らない事件だったが、ひょっとしたら世間的には有名な事件なのかもしれない。このWikiの記述によれば、やはり事故は管制側に責任があるようだ。
 そしてこの事件の痛ましい点は、その事故の後(Aftermath of tha Plane Crush)、遺族のとある男がその管制官を刺殺するという事態にまで進展してしまったことにある。本作は、その悲劇に至る二人の心情をかなり丁寧に描いているのだが、もちろん全てを事実と思うのはちょっと危険だろう。本作はあくまで事実を元にしているだけで、舞台はUSA国内になっているし、そういう面ではフィクションであると言うべきだろうし、描かれるキャラクターの心情も、完全に一致しているとは思うべきではなかろうと思う。
 しかしそれでも、本作が描く二人の男の心情には、恐らく観た人なら誰しもつらいと感じるのではなかろうか。わたしとしては、家族を喪った男を演じたArnold Schwarzenegger氏も、事故を起こした管制官を演じたScoot McNairy氏も、渾身の演技だったように思う。お見事であった。
 そして、本作で一番すごいのが、本作では刺殺事件のその後(Aftermath of the Murder)まで描いているのだ。これは一番のポイントだと思うけれど……ネタバレだけど書いてしまうけれど……どうやら実際の事件においても、管制官を刺殺したのち、家族を喪った男はある種の情状酌量によって刑期を短縮され、釈放されているらしいのだが、本作でも、10年(11年?)の刑期を経て、Schwarzenegger氏演じる男は釈放される。そしてその釈放されたのち、刺殺された管制官の息子(航空機事故の当時は10歳程度の子供だけど10年経って青年に成長)が、父を殺した男の元に現れ、銃を突きつけるのだ。わたしは観ていて、あ、こういうことになっちゃうんだ、いわゆる復讐の連鎖は止まらないんだ? と猛烈に悲しくなってしまったのだが、最後に息子がどんなことを言ってどんな行動を取るのか、それは書かないでおきます。まあ、ここまでもったいぶって書くと、誰しも想像する通りかもしれないな。でも、なんつうか、Schwarzenegger氏の演技は抜群に良かったし、家族を喪った悲しみは痛いほど心に刺さったけれど、どう考えても管制官を刺殺したことは許されることじゃあないと、わたしとしては全力で否定したいと思う。やっぱり、それをやっちゃあおしめえよ、でしょうな。恐らく彼は、残りの生涯、心の安らぎは永遠に得られないのではなかろうか? おっそろしく、心にしみるエンディングだったような気がします。復讐とか敵討ちというものは、結局は亡くなった人のためではなく、今を生きる自分自身の気持ちの問題であって、その後(Aftermath of Revenge)に残るモノ・得られるモノは、実際なーんにもなく、むしろむなしさが募って、心がより一層痛んでいくんじゃなかろうか、と改めて思うに至ったのであります。憎しみの連鎖を断ち切れるかどうか、そこが人類にとって一番の問題なんじゃなかろうか……。
 というわけで、二人の主人公たるキャラを紹介して終わりにします。この二人以外は正直どうでもいいので。
 ◆ローマン・メルニック:飛行機事故で妻と娘(とそのお腹にいた子)を亡くした男。工事現場で真面目に働く労働者。飛行機会社(管制塔を運営する空港会社?)は、さっさと示談に応じなよと全く心無い対応で、ローマン激怒。観てるわたしも、あの弁護士どもの態度には吐き気がするほどのいやーな気分になったすね。でも、奴らも所詮は仕事をしてるだけの使い走りにすぎず、実際罪はないんだよな……でもあの対応はヒドイよ……。ローマンが望んだのは、ただ単に「謝罪」なわけで、欧米諸国は謝罪したら負けな文化なんすかねえ……だとしたら嫌な文化だなあ……。そして演じたのは前述の通り、ターミネーターT-800ことArnold Schwarzenegger氏。このところのシュワ氏は、ほんと疲れた表情のおっさん役がイイすね。もうその苦悩の表情がすげえ渋くて素晴らしかったす。
 ◆ジェイク:事故の原因となった管制官。彼は普通の男で普通の幸せを得て普通に仕事していただけだったのに、まあ、命を預かる仕事という自覚が足りなかったんだろうな……。事故後、苦悩に苦悩を重ねたのち、会社の弁護士の勧めで離職、氏名を変えて(USはそんなことが出来るんだと結構驚き)住所も変え、生きようとしていたがローマンに刺殺される。つうかですね、ジェイクの住所をローマンに教えたクソジャーナリストがやっぱり一番罪深いのではなかろうか。ジャーナリストってのはほんとロクなことしねえ……とも思ってしまいました。ジェイクを演じたのは前述の通りScoot McNairy氏だが、わたしはこの人、どっかで見たことある顔だ、けど、誰だっけ? とすぐには分からなかったのだが、さっき調べたら、『BATMAN V SUPERMAN』で、ウェインカンパニー社員で冒頭のメトロポリス大決戦で足に大怪我をし、以降車椅子となってレックス・ルーサーに利用されるあの気の毒な人を演じた方っすね。そうだ、あの顔だ、とさっき思い出したっす。
 ところで、さっきついでにこの映画の評価のほどをRotten Tomatoesでチェックしたところ、かなりの低評価だったことを知ったのだが、これはアレかな、やっぱりエンディングに対する評価なのかな……それとも、元々の事件がヨーロッパで起きたもので、US市民にはウケなかったのかな……ぞれとも、US市民にはやっぱりこういう重い話は敬遠されたのかな……。わからんけど、わたしとしてはそこまで低い評価にすることないじゃん、と無責任に思った。わたしとしては、観て良かった映画だと思う。

 というわけで、結論。
 実際の痛ましい事件を元にした映画『Aftermath』という作品をWOWOWで録画して観てみたのだが、まあとにかく、重くて暗ーい映画ですよ。それは間違いないと思う。救いがないと言ってもいいのかもしれない。しかし、二人の主人公を演じたArnold Schwarzenegger氏も、Scoot McNairy氏も、実に素晴らしい芝居ぶりだったと思う。お見事でした。この二人に敬意を表して、わたしの結論としては、この映画はアリ、です。観て良かった。しかしなんつうか、生きるってつらいすなあ……ほんと、生きてていいことなんてあるのかなあ……全くそう思えないわたしであります。出来ることなら、苦痛なく、生命活動が停止する日がさっさと来てほしい。それがわたしの望みっすわ。以上。

↓ ああそうか、なんか聞いたことがあると思ったら、STONESのアルバムタイトルか。
アフターマス
ザ・ローリング・ストーンズ
USMジャパン
2013-02-20